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document.doc Editoin (20 pages in all) 2000-Sep-24(Sun) 21:03
細菌学各論I~ まとめ ~
文責:T.Hattori / 服部武裕
★ グラム陽性 球菌
■ Staphylococcus の一般性状
・グラム陽性球菌・普通寒天培地でよく増殖・ブドウの房状集塊を形成。黄色ブドウ球菌の集落は黄色(他の菌種は白/レモン色)・鞭毛(-) → 非運動性・芽胞(-)・通性嫌気性・カタラーゼ(+)・高濃度(3~10%)の NaCl 加培地でも増殖可能(耐塩性)・ブドウ糖を発酵(OF 試験:F)
■ Staphylococcus aureus (黄色ブドウ球菌)と同属菌の性状の鑑別点
+:90%以上が+ -:90%以上が- d:+90%以下/-90%以下
S.aureus S.intermedius
S.epidermidis
S.hyicus
コアグラーゼ + + - dマンニット分解 + - - -α-トキシン + d - -Dnase + + - +VP 試験 + - + -疾病 牛の乳房炎・
鶏のブドウ球菌症犬の外耳炎・膿皮症
羊の膿瘍? 豚の滲出性/壊死性皮膚炎
鶏のブドウ球菌症敗血症型内臓感染型皮膚感染型(浮腫性皮膚炎 バタリー病)骨髄感染型(骨髄炎 ヘタリ病)
■ ブドウ球菌( Staphylococcus )に関係のあるその他の項目
・プロテイン A S.aureus と一部の S.hyicas の細胞壁にある蛋白質。食菌作用を阻害する。 いくつかの免疫グロブリンを介して特異抗原と結合するため,免疫学的診断として重要な試薬となる。
・MRSA メチシリン耐性黄色ブドウ球菌。β ラクタム抗生物質に耐性となった黄色ブドウ球菌のこと。
人の院内感染の主要原因菌。
■ ブドウ球菌( Staphylococcus )の菌体外酵素と菌体外毒素
○菌体外酵素・ コアグラーゼ:? S.aureus、S.intermedius、S.hyicus(一部)が作る。 [血漿を凝固する酵素] 血漿中の CRF(Coagulase Reaction Factor)に作用して、トロンビン様物質に変え、フィブリノーゲン→フィブリンにする⇒血漿をゲル化する。 定着性に関与(食菌作用及び食細胞内での消化分解の阻止[菌体周りをゲル化して宿主との自己化をはかる]、感染病巣の周りに繊維素の壁を作り菌を保護[化膿])。・Clumping Factor: 菌体細胞壁表面に存在するコアグラーゼで CRF の存在を必要としない。 繊維素を析出してコアグラーゼと同様に付着因子として作用。・ ヒアルロニターゼ:
動物細胞間結合物質ヒアルロン酸を分解し、細菌の進入をしやすくする。・ フィブリノリジン:
コアグラーゼの作用とは逆で、生成されたフィブリンを分解する酵素。黄色ブドウ球菌による病巣の形成や拡大に関与。
・ プロテアーゼ: タンパク分化酵素? 鶏の浮腫性皮膚炎に関与。S.aureus のみ産生する・ Dnase(デオキシリボヌクレアーゼ):
DNA に作用して、ヌクレオチド間のリン酸のジエステル結合を加水分解し、オリゴヌクレオチドやモノヌクレオチドなどを生成する酵素(エンドヌクレアーゼ・エキソヌクレアーゼに大別される)。
○菌体外毒素・溶血毒:
α(溶血)毒素:ウサギ(ヒツジ)赤血球に作用し細胞膜を破壊して溶血する。多量にあるときは、組織の壊死・致死作用を示す(ウサギの致死、ヒトの皮膚壊死因子)。
ほかに、β、γ、δ、ε溶血毒がある・白血球毒 Leucocidin: M φやWBC を特異的に傷害。 SとFの2成分からなる。・ 腸管毒 Enterotoxin:?S.aureus の半数が産生する。ヒト・サルの食中毒(下痢・嘔吐)の原因毒素。炭水化物や蛋白質の多い食品で菌が増殖した
ときにできる。耐熱性(100℃30 分)で、消化酵素の作用を受けない。抗原性により7種類(A1、B1、C1、C2、C3、D、E)に分類。
・表皮剥離毒素: 人の皮膚の剥離の原因物質。細胞間物質のデスモソームを開裂 S.aureus が産生。 A型(プラスミド支配)・B型(染色体 DNA支配)がある。・毒素ショック症候群毒素(TSST): ヒトの発熱、ショックなどの原因。S.aureus が産生
★グラム陽性 球菌
■ Streptococcus (連鎖球菌)の一般性状
○形態・グラム陽性球菌・連鎖状 or 双球状・芽胞(-)・一般に、莢膜(+)・まれに、鞭毛(+)
○性状・通性嫌気性菌・血液/血清加培地で増殖する(栄養要求性が厳しい=普通寒天培地では発育しにくい)。・6.5%NaCl 加培地で、発育しない・カタラーゼ(-)・オキシダーゼ(-)・ブドウ糖を発酵(OF 試験:F)
■ Streptococcus (連鎖球菌)の分類
・溶血性と,Lancefield の多糖質性群抗原 が多用されてきた。・近年,細胞壁組成・DNA相同性・16S リボソーム RNA で分類。
○溶血性...血液寒天培地のコロニーで、周囲に特有の溶血環を作る。
α溶血性連鎖球菌:不完全溶血を示し、コロニーの周囲に半透明で緑色(メトヘモグロビン)を帯びる溶血環を持つ。
β溶血性連鎖球菌:完全溶血を示し、コロニーの周囲に無色透明の溶血環を示す。γ溶血性連鎖球菌:溶血しない。
ただし、使用する血液によっても、溶血性は異なる。ex. S.suis は、 ヒツジ血液加寒天培地 では、 α溶血。
ウマ 〃 β溶血。
○培養性状・生態・病原性から 4 つに分類
名前 化膿性連鎖球菌 緑色連鎖球菌 糞便連鎖球菌 乳酸球菌溶血性 β α γ α種類 S.agalactiae St.mutans Enterococcus
faecalisLactococcus garviae
宿主 牛 牛・豚 鶏 魚病名 乳房炎 心内膜炎 連鎖球菌症 連鎖球菌症
○血清学的分類
・Lancefield の血清群: 細胞壁に存在する C多糖体の加熱抽出抗原に基づいた沈降反応で、連鎖球菌を分類。 (I,J,R,S,T を除く)A~V群の 17 種に分けられる。 熱塩酸処理(0.1M で 30 分)&熱ホルムアルデヒド処理&オートクレーブ処理(121℃,15 分) で C多糖体を抽出 ⇒ 兎に注射してできた血清と抗原とを毛細管で混ぜる[毛細管沈降反応]。
牛 馬 豚 犬
菌種 S.agalactiae S.equi subsp. equi S.suis S.canisLancefield B C D G溶血性 β/非溶血 β α,β β疾病名 連鎖球菌性乳房炎 腺疫(鼻炎) 連鎖球菌症(髄膜炎,
関節炎,敗血症)犬の連鎖球菌症
(敗血症・流産)
■ Streptococcus (連鎖球菌)の病原性
○菌体外酵素
・菌の細胞内侵入を助ける・フィブリノリジン・ヒアルロニダーゼ・Dnase etc
○菌体内毒素
・ストレプトリジン O と同S(溶血毒素)O は蛋白質で抗原性があり、容易に酸化・不活化するが、還元剤により再び活性を得る。S はリポ蛋白質で、抗原性はないが酸化されにくい。・発赤毒(発熱毒素) しょう紅熱を起こす(全身に湿疹)
○CAMP 因子
・β溶血毒素と反応して,より強い溶血性を示す。・S.agalactiae が産生する
CAMP テストの図・CAMP テスト
S.agalactiae と他の連鎖球菌との鑑別に用いる。材料: 羊脱繊維素血液加寒天培地
ブドウ球菌(β溶血毒を産生するもの)披験菌
方法: 1. ブドウ球菌を血液寒天培地に画線培養。2. 披験菌を血液寒天培地に画線培養3. 培養
判定: S.agalactiae の産生する CAMP 因子と β溶血毒との相乗作用によって、溶血性が増幅される。
○M 蛋白
・菌体表層に存在する蛋白抗原で、S.pyogenes・S.equi・S.porcinus に存在する。・抗原性を示し、好中球の食菌作用を阻止する。
★グラム陽性芽胞形成桿菌(バシラス属・クロストリジウム)
■ 炭疽菌( Bacillus anthracis )の一般性状
○形態・グラム陽性の大型桿菌・竹櫛状(生体内で)?、長連鎖状・炭疽菌は鞭毛(-)(一般にバシラス属は周毛性鞭毛を形成する)・生体内で莢膜(+)・芽胞(+)(耐熱性)
楕円形/卵円形で中立位/遍在性であるが、動物体内では形成せず、空気に触れると形成。芽胞型として,土壌中に生存し、長期に渡り感染性を保持。
高温多湿な条件で形成され、熱 乾燥 消毒に強い抵抗性。・ ・○性状・好気性 or 通性嫌気性・普通寒天培地での好気性培養でよく発育
普通寒天培地で、長連鎖状。(35~37℃,16~24hr 培養で、灰白色の縮毛状(Rough 型)コロニー形成)
液体培地では、(培地全体を混濁させずに)線毛状に沈殿して発育。・カタラーゼ(+)・溶血能(-)
■ 炭疽菌の病原因子とプラスミド の関係について
○病原因子(アンダーラインが病原性)
・60MDa プラスミド支配 → 非天然型 D-グルタミン酸ポリペプチド性莢膜の形成・110MDa プラスミド支配 → 外毒素(浮腫因子・防御抗原・致死因子)の産生
温度感受性プラスミドで、42~43℃で脱落=弱毒化浮腫因子(EF)防御抗原(PA)致死因子(LF)
EF 及び LF は、単独では病原性がないが、それぞれに PA が加わると強い活性を示す。 PA は細胞内に EF・LF が入るためのレセプターの役割をする。
○抗原性莢膜のD-グルタミン酸ポリペプチド・菌体の多糖体・感染防御抗原
■ 炭疽菌( Bacillus anthracis )の細菌学的 血清学的同定法・
○1.莢膜染色・血液 脾臓の塗抹標本を莢膜を・ Rabiger法やメチレンブルー法で染色し鏡検。・生体内で莢膜形成。
○2.アスコリーの熱沈降反応・診断用炭疽沈降素血清を用いて耐熱性特異抗原(莢膜抗原:グルタミン酸ポリペプチド)を検出する。・沈降反応重層法を用いる⇒室温で 15min 以内に血清と抗原液との間に白濁した沈降線(抗原抗体複合体)ができる=陽性。
・炭疽汚染材料(血液・脾臓)を 5~10倍の乳剤とし、10~20min煮沸⇒冷却・抽出した濾液を抗原(耐熱性特異抗原:莢膜抗原)とする
+同量の炭疽沈降索血清を同じ試験管に入れる⇒静置・15min 以内に両液の接触面に沈降線ができたら陽性。
○3.分離培養・普通寒天培地の好気性培養――――――――――→莢膜形成なし・10~20%血清加寒天培地上で 10%CO2下培養 ―→莢膜形成
○4.パールテスト・ペニシリン 0.5~0.05 IU/ml含有普通寒天培地で、37℃3~4 hrs 培養⇒桿状菌体が真珠状膨張=陽性。・ペニシリンの細胞壁合成阻害を利用。
○5.ファージテスト・普通寒天培地に菌を塗抹し、その中心部に γ ファージ液を滴下⇒普通寒天培地で 37℃8~18hrs 培養⇒溶菌斑を形成(滴下したところで炭疽菌が発育しない)=陽性。・炭疽菌が、(B.anthracis に特異的に感染する)γ ファージの感染により溶菌する事を利用。
○6.動物接種・マウスに皮下注射 ⇒ 24hrs 以内に敗血症死。
モルに ⇒ 36hrs 以内。
■ 炭疽菌生ワクチン
・昔は、パスツールワクチン(生ワクチン)が使われていた。・現在は、Sterne の 34F2株(無莢膜弱毒変異株)の芽胞ワクチン(生ワクチン)が使われている(PA産生性が安定している)。
弱毒株を 50%血清加寒天培地 30%CO2で、37℃1週間 培養⇒ 60MDa プラスミドが脱落し、莢膜形成能はなくなる。
110MDa プラスミド支配は保持され、免疫原性は保たれる。&外毒素は残っているので病原性もある。
★Clostridium■ Clostridium の特徴、培養法、3つの菌種とその病原性
○特徴・グラム陽性大型桿菌。ただし、24時間培養菌=G(-)・偏性嫌気性(C.histolyticum と C.perfringens は、O2耐性)・一般に栄養型は周毛性鞭毛(+)。C.perfringens(-)・莢膜(-)(生体内 血清加寒天培地で・ C.perfringens:+)・芽胞(+)(卵円形~球状・偏在性/端在性)→芽胞形成部は、膨大して胞子嚢を形成・オキシダーゼ(-)・H2S産生(+)
○培養法・ GAM 寒天培地でガスパック法(酸素除菌法)ローラ-チューブ法…混合ガス(N2 85%、H2 10%、CO25%)などで置換。
・チオグリコール酸塩培地(還元剤が添加してあり、酸化還元電位を調節してある)
○菌種と病原性
C.tetani ヒト/動物の破傷風 強直性けいれんC.perfringens 悪性水腫 筋組織の浮腫、壊死C.botulinum 食中毒 弛緩性麻痺
■ 急性敗血症死した動物血液 / 組織中に存在する、以下の菌の形態上の鑑別点
菌名 炭疽菌 ウェルシュ菌 悪性水腫菌 気腫疽菌Bacillus anthracis
Clostridium perfringens
Clostridium
septicum
Clostridium novyi
Clostridium chauvoei
連鎖 1~数個 1~2個 長連鎖 1~2個鞭毛 - - + +莢膜 + + - -芽胞 + + + +
limberneck(首たれ)・レシチナーゼ中和試験:・C.perfringens の同定反応。
・レシチン==[加 水 分 解
ホスホリパーゼC]==⇒ホスホコリン+グリセリド==⇒不溶性のため沈殿==⇒乳白
色・中央にウェルシュ菌抗毒素血清ろ紙を埋め込んである卵黄加 CW基礎寒天培地+ろ紙と直角に
披検菌を画線培養====⇒ろ紙上の乳光反応阻止=陽性
■ Clostridium 属の毒素産生性 / 組織侵襲性による3分類 とその活性機序
┌ 毒素産生性 ─┬ 組織非浸襲性 ── 神経毒 ───── 破傷風菌・ボツリヌス菌┤ └ 組織浸襲性 ─── ガス壊疽菌群 ── 気腫疽菌・悪性水腫菌└ 腸管毒血症(エンテロトキセミア)───────── ウェルシュ菌
C.tetani C.botulinumC.chauvoe
iC.septicu
m ?C.novyi C.perfringens毒素産生性・組織非侵襲性 毒素産生性・組織侵襲性 腸内毒血症・食中毒馬牛ヤギ豚犬 ミンク鳥人 Ru 牛羊馬豚 牛羊破傷風 ボツリヌス中毒 気腫疽 悪性水腫 エンテロトキセミア
毒素は菌体内にプロトキシンとして形成され、菌体の融解後、毒素活性を現す。組織には入り込まない。毒素のみで発症。
毒素は菌体内で産生されると同時に活性型として菌体外に放出される。組織に入り込んで病巣を作る。ガス壊疸菌群
食品内で増殖された菌⇒経口⇒腸内で芽胞を形成&エンテロトキシン放出⇒小腸下部の粘膜上皮に結合して膜障害。
■ Clostridium tetani と Clostridium botulinum との違い
Clostridium tetani Clostridium botulinum毒 破傷風毒素
(破傷風けいれん毒 tetanospasmin)ボツリヌス毒素(A~G の 7 型)
作用機序
45MDa のプラスミド支配による痙攣。毒は末梢神経から脊椎前角/延髄の神経細胞のガングリオシドに結合↓一部、細胞内に入る↓Ach の分泌増加⇒
毒素を腸管で吸収↓血流↓神経-筋接合部に作用↓コリン作動性シナプスからの Ach遊離を抑制⇒
症状強直性痙攣 視神経麻痺・筋肉麻痺などの弛緩性麻痺
⇒呼吸,嚥下,発声困難⇒致死他 毒素1mg で1千万匹のマウスを致死予防にトキソイド、治療に抗毒素血清溶血毒 tetanolysin も産生する。鳥類は強く抵抗。
毒素1mg で1億匹のマウスを致死細菌毒素の中で最強。バクテリオファージ or プラスミド支配下で産生人 ミンク 鳥類に感受性強い・ ・
・トキソイド 毒性は低くなっているが、抗原性のある外毒素。破傷風の予防に用いられる。
・抗毒素血清 破傷風の治療に用いられ、免疫血清を投与する。 効果は短期間しか持続しないが、即効性がある。
★グラム陽性無芽胞桿菌
■ Erysiperothrix rhusiopathiae と Listeria monocytogenes との違い
Listeria monocytogenes Erysiperlothrix rhusiopathiae
性状 G(+)、短桿菌、通性嫌気性芽胞・莢膜(-)
G(+)、細小桿菌、通性嫌気性芽胞・莢膜(-)
鞭毛:4本の周毛性鞭毛。20~25℃培養で発育良好。37℃で発育悪い
莢膜様構造物 (豚丹毒のみ)=病原性有鞭毛(-)
普通寒天培地 小露的状集落 発育悪い。小露的状集落1.5 % ゼ ラ チン
穿刺線に沿って繊維状発育 穿刺線に沿って試験管ブラシ状発育
0.75%半流動 雨傘状発育溶血 β溶血(L.ivanovii も)=病原性の菌 α溶血運動性 + ―4~5℃発育 + ―カタラーゼ + ―VP テスト + ―H2S産生 ― +ブドウ糖発酵 F FGC含量 36~38 モル% 36~40主要感染症 リステリア症 豚丹毒・鳥羊の豚丹毒菌感染症・類丹毒病原性 (Ru→化膿性肺炎・流産)
豚・ウマ→敗血症・早流産・膿瘍羊・山羊→旋回病・リステリア脳炎・早流産鳥類→敗血症ヒト→敗血症・髄膜炎・流産
豚→豚丹毒A型菌→急性敗血症B型菌→蕁麻疹・関節炎
・心内膜炎・リンパ節炎ヒツジ→蹄葉炎・関節炎鳥類→敗血症ヒト→類丹毒(敗血症 心内膜炎)・
感染防御 弱毒性菌(細胞性免疫) 血清抗体(液性免疫)免疫原性 生ワクチン有効 生ワクチン(アクリフラビン耐性弱毒生
菌ワクチン)・不活化ワクチン有効血清あり
その他 ペニシリンの感受性が高い。普通寒天培地に血液 ブドウ糖・ ・Tween80を添加すると発育が良くなる
○Listeria monocytogenes の性質(上記のほかに)
溶血 CAMP-S CAMP-R ラムノース産生 キシロース産生 宿主 病名
L.monocytogenes + + (+) + - Ru 脳炎
L.ivanovii +++ - + - + 牛羊 流産
溶血性:馬赤血球。CAMP-S:Sta.aureus。CAMP-R:Rhodococcus equi との相乗的な溶血作用。
・単球増多症 リステリアを家兎の耳静脈内に接種すると数日内に単球が増える。人 Ru では必発ではない。 L.monocytogenes の命名の由来となった現象。
・通性細胞内寄生性 L.monocytogenes・結核菌・サルモネラ ブルセラ・ etc マクロファージ内で殺菌されずに増殖できる菌。 感染防御には細胞性免疫によるマクロファージの活性化が必要。
・listeriolysin溶血毒 L.monocytogenes の通性細胞内寄生性に関与する溶血素。 血液寒天培地で溶血毒素産生株を培養すると β溶血を示す。 MW:58,000 の蛋白質で、溶連菌のストレプトリジン O と抗原性が一部交差する。?食細胞の内膜を溶解して脱出
・試験管ブラシ状発育 豚丹毒菌を、ゼラチン培地で培養したとき、穿刺線に沿って見られる(コロニーの)発育状態。 豚丹毒菌の同定に用いられる。
・生菌発育凝集反応 生菌を抗原とし、液体培地を希釈液として用い、豚丹毒菌の凝集抗体を測定する。
・erysipeloid(類丹毒) 人が、創傷感染で豚丹毒菌に感染することによって起きる、紅斑を呈する皮膚病変。 家畜や魚介類と接触する機会の多い職業の人に多く見られる。
・アクリフラビン耐性弱毒株 豚丹毒菌をアクリフラビン加寒天培地で継代させ、アクリフラビンの耐性獲得に伴い病原性が減弱した生菌ワクチン。 豚丹毒の予防に用いられる。
★放線菌関連菌
■ Corynebacterium の特徴、牛の尿路感染症を起こす菌3つと、その鑑別点
○特徴・グラム陽性桿菌(分岐状/松葉状に配列し、多形性を示す)・通性嫌気性・芽胞・鞭毛・莢膜(-)・非抗酸性・異染小体を持つ(メチレンブルー単染色で観察。菌体の両端が丸く染色される)。・カタラーゼ(+)・オキシダーゼ(-)(C.bovis は+)・OF テスト(F)・VP テスト(-)
○牛の尿路感染を起こす菌
・血液加寒天培地で培養(普通寒天培地でも OK)
C.renale C.cystitidis C.pilosum硝酸塩還元 ― ― +
カゼイン分解 + ― ―キシロース ― + ―CAMP反応 + ― ―?寄生部位 外陰部・膣前庭 包皮腔 renale+cystitidis?腎盂腎炎以外 - 牛の膀胱炎 出血性膀胱炎
・外陰部⇒尿道⇒膀胱に進入⇒膀胱炎を起こす。さらに尿管⇒腎臓に進入⇒腎盂腎炎を起こす。・病原性は、 線毛(膀胱上皮細胞に付着)
ウレアーゼ(腎臓 尿中で増殖し、アンモニアを産生し泌尿器障害を起こす)・ 。
○仮性結核
・宿主:羊 山羊・・原因菌:C.pseudotuberculosis(細胞内寄生性)・症状:創傷感染・経口⇒付近のリンパ節に化膿巣⇒肺・肝臓に病巣⇒病巣の緑色を帯びた膿汁の水分が吸収され淡黄色の乾酪性膿瘍となる。・病原性:外毒素・細胞壁の脂質・分離培養:血液寒天培地で培養(弱い溶血環を作る。Rhodococcus equi によって増強)・培養上清にはヘモリジンが産生され、マウスに対して致死活性を示す。・診断:ELISA
・宿主:マウス・ラット(ハムスターは不顕性感染)・原因菌:C.kutscheri・症状:肝臓 腎臓 消化管などに多数の小膿瘍。・ ・
■ Mycobacterium bovis と Mycobacterium paratuberculosis の培養法・病原性・免疫反応
Mycobacterium bovis Mycobacterium paratuberculosis
培養法
培地Tween80 加小川培地
ハロルド培地マイコバクチン加ハロルド培地
温度 30~37℃ 37℃O2 好気性 好気性期間 2week 1~2ヶ月以上
病原性
宿主 特に牛 牛・羊・山羊病名 結核病(法定家畜伝染病) ヨーネ病
病変リンパ節や実質臓器の結核結節
(肺・肺付属リンパ節・腸間膜リンパ節)腸粘膜肥厚による脳状皺を形成(極めて長い潜伏期間を経て発症する)
症状 肺結核 慢性下痢
免疫反応
ツベルクリン反応ツ ベ ル ク リ ン 0.1ml を 皮 内 接 種⇒72hrs⇒+:腫脹差5mm 以上・硬化を伴う-:腫脹差3 mm 以下・硬化を伴わないBCG
ヨーニン反応・補体結合反応・ELISAヨーニン反応ヨーニン 0.1ml を皮内接種⇒72hrs⇒+:腫脹差2mm 以上(ただし結核牛も (+)となる⇒症状で区別)CFT多糖体を検出し、補体結合反応を見る。発症しているものに有効
・抗酸菌 石炭酸フクシンのような塩基性アニリン色素で加温染色したあと、酸性アルコール(3%HClアルコール)処理しても容易に脱色されない性質(抗酸性)をもつ細菌の総称。
・ミコール酸 抗酸菌は他菌より多量(全体の 40%)の脂質を含み、そのうち蝋成分が最も多いが、その中にミコール酸という特殊な脂質が含有している。 抗酸性に関与する。(脱色に抵抗)
・小川培地 結核菌の分離用培地。 M.tuberculosis の場合、グルタミン酸 グリセリン マラカイトグリーン 全卵液からなる小川・ ・ ・培地を用いる。M.bovis はグリセリンによって発育が阻害されるので、培養するときはグリセリンの代わりに Tween80 を加える。
・ツベルクリン反応M.tuberculosis・M.bovis の液体培地の培養濾液の濃縮液。多量の蛋白質が含まれている。結核診断に使用される。
・BCG
M.bovis の弱毒変異株(を胆汁 ジャガイモ グリセリンの入った培地で培養してできた乾燥・ ・生菌から作られる)。
ヒトの結核予防に使用。
・マイコバクチン加ハロルド培地 Mycobacterium avium subsp.paratuberculosis(ヨーネ病菌)の分離培地。 ヨーネ病菌は、鉄取り込み能を持っていないため、一般の結核用培地では発育できない。M.phlei の死体 or そのアルコール抽出物(マイコバクチン)を培地へ添加。鉄キレート剤の役割を果たす。
マイコバクチン・ペプトン 牛肉エキス グリセロール・卵黄・マラカイトグリーンを含み、発・ ・育は 1~2ヶ月と遅い。
・ヨーニン反応 ヨーネ病の診断に用いられる。? ヨーネ菌の培養濾液の濃縮液。 ヨーニン 0.1ml を皮内接種⇒72hrs⇒腫脹差2mm 以上=陽性
■ 牛の放線菌( Actinomyces bovis )の原因菌と診断
○形態・性状
・G(+) 桿菌。多形性(ジフテロイド様/分岐を持つ/フィラメント状を呈する etc)を示す。・通性嫌気性だが、嫌気性で発育良好・芽胞・鞭毛・莢膜(-)・抗酸性(-)・カタラーゼ・オキシターゼ(-)・OF 試験(F)
○病原性
・宿主:牛・病名:放線菌症・症状:下顎骨に腫瘍・病変:原因菌が口腔 etc の創傷部位から進入⇒下顎骨に肉芽腫(化膿性増殖性炎)を形成。
肉芽組織中に硫黄顆粒(光顕下、中心部に菌糸・周りに棍棒体が並んだ菊花弁状物)
○診断法
・分離培養:血液寒天培地にて嫌気性(10%CO2)で 37℃ 3~5day 培養⇒白色微細コロニー(V/Y字型・長糸型菌体)の検出・化膿性増殖性炎・膿汁に硫黄顆粒 膿汁一滴と 10%水酸化ナトリウムを混合し、圧迫標本として菌塊とロゼットを検出。
膿汁中の顆粒を塗抹 グラム染色により膿汁を検出・?・同定:ロールチューブ法(絶対嫌気培養)による分離培養を行い、グラム染色して検鏡で上図のようなドリューゼを検出。
■ Erysiperothrix 属と Listeria monocytogenes と Actinomyces pyogenes の鑑別性状
菌名 Erysiperothrix rhusiopathiae
Listeria monocytogenes
Actinomyces pyogenes
形態 細小桿菌 短桿菌 小桿菌5℃での発育 - + -
運動性 - + -溶血性 α β β
カタラーゼ - + -H2S産生 + - -VP 試験 - + -
サリシン分解 - + -エスクリン加水分解 - + -
疾病名 豚丹毒 旋回病 A.pyogenes 感染症(豚膿瘍)
・equi 因子Rhodococcus equi が産生するホスホリパーゼ(レシチナーゼ)。菌体外酵素。
ブドウ球菌・C.pseudotuberculosis・L.monocytogenes に対して相乗溶血活性を示す。 Rhodococcus equi の簡易同定に利用。