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平成28年3月12日
気仙沼市国際リニアコライダー推進協議会
CERN視察報告 (平成27年5月18日~20日)
ILCまちづくり講演会
1
目次
I. ILCとは ・・・ P2 ~ P4
II. 視察概要 ・・・ P5 ~ P11
III. 視察報告
i. 視察1日目 ・・・ P13 ~ P31
ii.視察2日目 ・・・ P33 ~ P41
iii.視察3日目 ・・・ P42 ~ P48
IV. まとめ ・・・ P49 ~ P55
V. さいごに ・・・ P56 ~ P59
2
I.ILCとは(1)
International = 国際的な Linear = 直線の Collider = 衝突型加速器
3
国際リニアコライダー(International Linear Collider)とは
I.ILCとは(2)
地下約100m、全長31~50kmのトンネル内に設置される大型の素粒子実験施設。 ほぼ光速まで加速させた電子と陽電子を、加速器の中心部で衝突させることで、宇宙誕生(ビックバン)から1兆分の1秒後の世界を再現。
質量の起源とされる「ヒッグス粒子」の性質の解明や、未知の粒子が発見され、宇宙創成の謎の解明につながることが期待されている。
世界に一つだけ建設
3 ILC Scheme | © www.form-one.de
4
ILC計画予定ルート
I.ILCとは(3)
気仙沼市 一関市
奥州市
資料提供:一関市
5
Ⅱ.視察概要(1)
CERN視察のねらい(1) 政府による国際リニアコライダー(ILC)誘致判断の表明は、平成27年度内と言われています(※)。※最後に最新の動きを報告します
気仙沼市は建設に必要な資機材の陸揚げ基地、機械類の一次組立工場や検査拠点、研究者とその家族の居住地、豊かな食資源等を背景とした休暇の場としての役割が期待されています。
平成27年
1月14日
三陸新報
平成27年1月13日 LCC リン・エバンス最高責任者など幹部8名が来市
6
Ⅱ.視察概要(2)
CERN視察のねらい(2)
スイス ジュネーブ近郊にある欧州原子核研究機構(CERN)は、発足から60年が
経過しつつも、各国から1万人以上の研究者が参集し、素粒子物理学の国際共同
実験が行われています。
CERNでは、研究者の様々な参加形態に応じ、広大な敷地内には学校や幼稚園、
医療施設、レストラン、レクリエーションなど、生活や休暇に必要な施設が備えられ
ています。また、CERNは、近隣自治体の発展にも影響しています。
ILC誘致が正式決定した場合、受入態勢に係る取組・施策立案を有効かつ適切に
進める必要があることから、市内産・学・官で構成する気仙沼市国際リニアコライダ
ー推進協議会のメンバーにより、上記先行事例であるCERN及び関連企業、近隣
自治体を視察しました。
7
Ⅱ.視察概要(3)
視察メンバー № 団体名称 役 職 氏 名
1 気仙沼市 市 長 菅原 茂
2 気仙沼市教育委員会 教育長 白幡 勝美
3 気仙沼市議会 議 長 守屋 守武
4 気仙沼市議会 (国際リニアコライダー(ILC)事業推進気仙沼市議会議員連盟)
議員 (会長) 熊谷 伸一
5 気仙沼商工会議所 会 頭 菅原 昭彦
6 本吉唐桑商工会 会 長 菅原 和幸
7 気仙沼青年会議所 理事長 宮井 和夫
8 宮城県建設業協会気仙沼支部 支部長 小泉 進
9 本吉企業連絡協議会 会 長 星 要一
10 気仙沼市立学校長会 前会長 豊田 康裕
11 気仙沼造船団地協同組合 代表理事 木戸浦 健歓
12 気仙沼鉄工機械協同組合 副理事長 小野寺 卯征
13 気仙沼船舶無線工業会 会 長 昆野 龍紀
14 気仙沼市(震災復興・企画課) 係 長 菅野 拓哉
15 気仙沼市(震災復興・企画課) 主 事 阿部 貴之
※視察当時の役職名
8
Ⅱ.視察概要(4)
視察行程
■5月18日(月)視察 CERN(欧州原子核研究機構) 19日(火)視察 CERN関連企業 20日(水)視察 CERN近郊自治体 (サン・ジュニ・プイイ市)
CERNのメインキャンパス メイランサイト(KEK近藤教授資料提供)
9
Ⅱ.視察概要(5)
CERNの加速器LHCは、フランス(写真手前)とスイス(写真奥)の国境をまたいで建設されている。LHCは周長約27kmの円形加速器で、施設本体は地下約100mにある。実験施設や検出装置として、ATLAS、CMS等が設置されている。レマン湖(写真左上)畔にジュネーブ、その近郊にコアントラン空港がある。 ※LHC =ラージ・ハドロン・コライダー
資料提供:CERN
フランス
スイス
10
Ⅱ.視察概要(6)
(参考)気仙沼市役所から直径9km=周長27kmの円を描くと…
11
Ⅱ.視察概要(7)
資料提供:CERN (報告者加筆)
CMS
メイランサイト
サン・ジュニ・プイイ市
(テクノパーク)
プレヴサン サイト
CERNのメインキャンパスはメイランサイトであり、プレヴサンサイトにはコントロールセンターが置かれる。 CERNでは、ATLASとCMSという2大実験グループがあり、今回双方のビジターセンター(研究紹介施設)を訪問。近隣自治体であるサン・ジュニ・プイイ市と、工業団地であるテクノパークへは3日目に訪問。
フランス
スイス ATLAS
12
Ⅲ.視察報告
ATLAS ビジターセンター前にて
13
Ⅲ.視察報告
5/18(月) CERN視察 1日目
① 8:45 リン・エバンス氏(LCC:リニアコライダー・コラボレーション ディレクター)挨拶 CERN概要説明(KEK・近藤敬比古名誉教授) ATLAS ビジターセンター見学 (KEK・近藤敬比古名誉教授) メイラン
サイト
② 10:00 Large Magnet Facility 超伝導関連施設 (KEK・山本明特別教授)
③ 11:00 加速器コントロールセンター (KEK・山本明特別教授)
プレヴサン サイト
④ 12:00 リン・エバンス氏主催昼食会
メイラン サイト
⑤ 13:30 CERN幼稚園、診療所、消防署
⑥ 15:00 CMS(地上ビジターセンター、地下コントロールルーム) ※メイランサイトから往復約40分
CMS
技術開発拠点
生活関連施設
加速器関連施設
加速器関連施設
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Ⅲ.視察報告 1日目①
リン・エバンス氏(LCC:リニアコライダー・コラボレーション ディレクター※)挨拶
CERN概要説明 (KEK 近藤敬比古名誉教授※)
ATLAS ビジターセンター見学 (KEK 近藤敬比古名誉教授)
※LCC:リニアコライダー・コラボレーション
・リニアコライダー計画を検討する国際的な
研究者組織。
・リン・エバンス氏はCERN/LHCの元加速
器責任者であり、現在LCCの最高責任者を
務めている。
※KEK 高エネルギー加速器研究機構
15
Ⅲ.視察報告 1日目① CERN概要説明(KEK・近藤敬比古名誉教授)
CERNは、欧州の加盟21カ国、職員2,512名、年間予算1,500億円程度で運営。CERNを利用する研究者は、年間10,482人(平成26年)。これは、世界の高エネルギー実験研究者の約半数にあたる。
日本・米国等は、オブザーバー国として、個別のプロジェクトに資金拠出し参加している。なお、日本が主に参加をしているのは、「ATLAS」と呼ばれる実験。
現在のLHCは2035年まで運転する計画。平成27年4月5日に再稼働を始めたLHCは、当初想定の13TeVというエネルギー領域を達成し、成果を挙げている(現在は「統計をためている」)。
次期加速器(CERN将来計画)として、周長100kmのFCC(Future Circular Collider)を検討中。
LHCとILCでは役割が異なり、両加速器とも必要である(円形加速器はCERN、線形加速器は日本)というのが、研究者の共通の考え。
16
Ⅲ.視察報告 1日目①
ATLASビジターセンター、コントロールルーム見学 (KEK・近藤敬比古名誉教授) CERNは税金で運営されているため、情報は全て公開するという考え方。
コントロールルームは、3交代勤務制。基本的にはコンピューターコントロールが行われる。
実験メンバーは、20~30代の若手研究者が多い。若い研究者は移動することが比較的容易であり、CERNを将来へのステップにしてもらっている。CERN経験後に物理研究以外の分野に進む人が半数以上。
日本企業はCERNの技術に大きく貢献し、古河電気工業(超伝導)、新日鐵住金(特殊ステンレス材)、東芝(超伝導磁石)、浜松ホトニクス(半導体)等多くの企業が活躍している。
17
Ⅲ.視察報告 1日目①
※参考 地下実験室で建設中のATLAS検出器(平成17年11月) KEK近藤名誉教授資料提供
18
Ⅲ.視察報告 1日目②
Large Magnet Facility 超伝導関連施設 (KEK・山本明特別教授)
19
Ⅲ.視察報告 1日目② 超伝導関連施設 (KEK・山本明特別教授)
当施設はCERNの直営工場として、粒子ビームの軌道コントロールに使われる「超伝導電磁石(マグネット)」技術を開発する拠点となっている。
超伝導とは、ある物質を極低温に冷やすと電気抵抗がゼロになる現象。超伝導状態では、高いエネルギーをもった粒子を曲げることが可能になるため、ILCにおいて非常に重要な技術。ILCの超伝導技術は研究開発が進んでおり、確立まで10年というところまできているとのこと。
超伝導を実現するための技術は日本企業の貢献が大きい。また、開発設計段階では、KEKが中心的役割を担っている。
CERNと言えども研究開発の予算は限られているため、予算やエネルギーを節約する工夫(組み立て技術等)を随所にしているとのこと。なお量産化をする場合は、民間企業に技術移転し、製造してもらうこととなる。
古河電気工業 超伝導ケーブル
新日鐵住金 超伝導マグネット用非磁性鋼
川崎製鉄
東芝 収束用超伝導四極電磁石
カネカ 超伝導ケーブル用ポリモイド絶縁体
IHI 低温ヘリウムコンプレッサー
浜松ホトニクス シリコン飛跡検出器、光電子増倍管
川崎重工業 カロリーメーター用低温容器
LHC建設に貢献した主な日本企業(近藤名誉教授資料抜粋)
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Ⅲ.視察報告 1日目③
加速器コントロールセンター (KEK・山本明特別教授)
コントロールセンターは、4つのグループ(島)から構成され、CERNの加速器の稼働をモニターでチェックし、監視をしている。
LHC( Large Hadron Collider) 大型ハドロンコライダー(LHC)の制御部門 SPS( Super Proton Synchrotron ) スーパー陽子シンクロトン制御部門 PS(Proton Synchrotron ) 陽子シンクロトン制御部門 TI ( Technical Infrastructure ) 電力、空調、安全装置などの技術インフラを管 理する部門
なお、コントロールセンター内は全て公開されている。
21
Ⅲ.視察報告 1日目③
コントロールセンターがあるのは、フランス側のプレヴサンサイト。自然環境や地元住民に配慮し、周囲に溶け込ませ、目立たないよう建設された。
センター脇にある岩には、「神の数式」とも呼ばれる標準理論の方程式が彫られ、CERNを象徴する場所の一つになっている。
加速器コントロールセンター(2)
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Ⅲ.視察報告 1日目④
リン・エバンス氏主催の昼食会
CERNより、リン・エバンス氏(LCC:リニアコライダーコラボレーション ディレクター、平成27年1月本市来訪)、ロルフ・ホイヤー氏(CERN所長)、バーバラ氏(LCCコミュニケーター、平成26年2月・平成27年4月本市来訪)、KEK山本教授、近藤教授が出席。
菅原市長より、今回の視察対応及び復興支援への御礼を述べた。
また、平成27年度中に予定されている政府による誘致の正式表明について、「安倍首相に対し、政府の正式表明を早急に決断するよう、本市から強く訴えたい。次回お会いする際は、ILC計画に関する具体的な打合せを行いたい」と強いメッセージを伝えた。
リン・エバンス氏からは、日本でのILC実現に期待する旨返事があった。
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Ⅲ.視察報告 1日目⑤
CERN幼稚園
幼稚園には4か月から6才までの子ども149名が在籍(8クラス)。親のどちらかがCERNで勤務していることが入園条件。
スタッフ(40名、交代制勤務)は保育士もしくは保育士補佐の資格を有する。土日閉園。
施設はスイス側に立地していることから、ジュネーブ州の許可を得た私立の保育園(4か月以上~4才未満)+幼稚園(4才以上~6才未満)という位置づけ。※義務教育はフランスは6才から、スイスでは4才からと異なる。
施設で使用される言語はフランス語。子どもは言葉を早く理解するため、2か国語、3か国語をできる子どもも多い。授業参観というものはなく、毎日参観できるオープンな施設運営が行われている。
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Ⅲ.視察報告 1日目⑤
CERN診療所
診療所はCERNが設立。診療時間は8:30~17:30(土日休診)。CERNの職員・研究者でなくても受診可能。
1階が応急処置、2階が診療室となっている。精神心療内科も、週に2回開設。
CERN職員は、2年に一度の健康診断が義務付けられ、予防に力を入れている。
3週間以上病欠をしたCERN職員には、カウンセリングを義務付けている。
診療所ではジュネーブ州立大学と平成27年5月に協定を締結し、大学付属病院との提携を開始。緊急の場合等は、大学附属病院へ搬送される。
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Ⅲ.視察報告 1日目⑤
CERN消防署
加盟国により共同で運営されており、フランス・ポルトガル・イギリスを中心に、10か国から58名の消防士が結集している。24時間態勢で常時7名の消防士と1名のオペレーターが勤務。
消防士は各国で5年以上の職歴のある者が派遣される。CERNでは5年間の勤務。
CERN消防署が対象とするのは、専らCERN関係の施設であるが、スイス・フランスにまたがる地域であるため、地域の消防署と連携して対応している。安全基準も両国で異なるため、それぞれの法律に則って対処する。
地下施設での作業は誰もが未経験であるため、CERN派遣後に特殊訓練を受ける。スイス・フランスの普通(地元)の消防士も地下施設に入ることがあるが、指揮をとるのはCERNの消防士。
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Ⅲ.視察報告 1日目⑤ CERN消防署(2)
CERNは世界最大のヘリウム保有施設であり、また放射線管理施設であることから、安全と物理学研究を両立させるため、研究員にも消防の研修を義務付けている。
消防署(本部)の他に、各計測施設の近くには消防支所を設置し、消火機械を備え付けている。各消防支所は、それぞれ対象となる研究施設のリスクを理解し、9,000か所でモニタリングを行っている。
1年に10回程度のアラームがあるが、出動実績はほとんどない。CERN地下施設は元々燃えにくいもので設計・建設され、火災等のリスクを低減させている。
CERN消防士は国際公務員であり、消防車も外交官用のナンバープレートになっている。オペレーター含め、消防士は2か国語(英語・フランス語)を使用。
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Ⅲ.視察報告 1日目⑥
CMS(地上ビジターセンター)にて
28
Ⅲ.視察報告 1日目⑥
CMS(地上ビジターセンター、地下コントロールルーム)
CMS(Compact Muon Solenoid)実験は約40か国で運営され、ATLASと並ぶ国際共同プロジェクト。LHCが稼働中であるため、地下100mにあるCMS測定器は見学できないが、地上部にあるビジターセンターで、研究の成果や、周辺環境との共存について説明を受けた。
CMSは、ジュラ山とジュネーブの中間(GEX地域)に位置し、周囲は豊かな環境が広がる。スキー等レジャーが盛んで、滞在型の観光客も多い。周辺観光とCMS視察をセットでPRしている。
なお、CMSでは新しいビジターセンターの建設が予定されている。昨年、CERN全体の来訪者が10万人に対し、CMSには34,000人が訪れた。検出器を描いた実物大のポスターも好評。
CMSの建設時には検出器を設置するため土砂を掘削したが、周囲の景観を守ることに最大限配慮した。建設時に発見されたローマ時代の遺跡も、保全しているとのこと。
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Ⅲ.視察報告 1日目⑥
※参考 CMS建設当時(1999年)の様子。
全ての掘削土砂は周囲の景観整備に用いられ、現在は景観が保全されている。
CERN 提供資料より
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Ⅲ.視察報告 1日目⑥ CMS(地上ビジターセンター、地下コントロールルーム)
CMSでは、地域住民向けに見学会(コミュニケーション)を随時行っており、よい関係を築いている。相互理解を深めることが、研究者と住民双方にとってメリットがあるとの考えから。
CMSは、地上ビジターセンターのほかに地下90mの地点も視察した。ここにはコントロールルームが置かれ、地下100mにある測定器からの信号をフィルタリングする(データ選別)装置を設置している。装置を地下に設置することで、処理のリードタイムを短縮させ、1秒間に6億回の現象を処理しているとのこと。
また、CMSではGreen Accelerator(緑の加速器)という取組を進めている。これは、研究施設を環境に配慮した省エネルギー等のモデルになるように設計するということ。CMSでは、LEDや太陽光パネルを導入し、エネルギー回収に取り組んでいる。
31
1日目小括
Ⅲ.視察報告
CERNを代表する両実験(ATLAS・CMS)のビジターセンター・コントロールルームを始め、全ての施設が徹底した情報公開(説明・発信)の下で行われていることを理解した。地域住民との相互理解を重視し、CERNと地域が共存することが大前提にある。
CERN直営の幼稚園や診療所、消防署では、各国の研究者やその家族が安心して研究できる環境づくりの重要性を認識させられた。これは、ILCにおいても同様であり、生活基盤や受け入れ体制の整備は重要なテーマであると感じた。
LCC責任者であるリン・エバンス氏らにもお会いし、ILCに対する期待の大きさを感じた。
32
Ⅲ.視察報告
レマン湖を見下ろす丘の上のホテルに宿泊。中心部から離れていますが、自然豊かな環境が広がる。また、ジェックス地域はスキー等のアクティビティも盛ん。
CERN
ホテル
ジュネーブ
(ジェックス地域パンフレットより)
33
Ⅲ.視察報告
5/19(火) CERN視察 2日目
① 9:00 CERNとビジネスをすること (CERN・Cristina Lara調達部長)
メイラン サイト
② 10:20 ALTEAD社 (ALTEAD社Stanislas Maridat支店長)
テクノパーク
③ 10:50 メインワークショップ (CERN・Said Atieh機械加工・メンテナンス部長)
メイラン サイト
④ 12:00 昼食
⑤ 13:30 Proton Synchrotron Area 放射線管理 (ACTEMIUM社・Gerard Fontanini 氏)
⑥ 14:30 SM18 冷却システム (SERCO社)
⑦ 15:30 ISOLDE (CERN・Jérôme Pierlot氏、 EMTE社・Emilio Camarero氏)
立地企業
技術開発拠点
技術開発拠点
34
Ⅲ.視察報告 2日目①
CERNとビジネスをすること (CERN・Cristina Lara調達部長) CERNでは、プロパースタッフ(約2,500人)、派遣契約スタッフ(約1,500名:フェロー、協力研究者、学生など短期雇用者)の他、委託先の民間企業社員が働いている。
外部委託費(年間約630億円)のうち、製品発注は約400億円、サービス委託は約170億円。施設の維持管理運営等は民間企業に委託され、様々な技術分野で民間企業と連携。
CERNとの契約が可能なのは原則加盟国の企業であり、その出資比率によって発注(受注)の規模が決まる。これは出資国への公平な配分を実現するというルールに基づくもの。加盟国以外(日・米)の企業は、プロジェクトの実験費用負担に応じて、入札に参加可能。上記ルールと同様、負担割合以上の契約は取れない。
CERNとの契約は4年契約を基本とし、最長7年とすることで、新規参入企業を生み出している。受注企業に技術者がヘッドハンティングされることはよくあり、技術系人材が循環している。
35
Ⅲ.視察報告 2日目②
ALTEAD社 (ALTEAD社Stanislas Maridat支店長)
ALTEAD社は、フランスを中心とした特殊輸送、工場内の特殊運搬、組立等を得意とする企業。平成25年の全世界売上は、2億4千万ユーロ(約320億円)であり、そのうちCERNにおいては、1,800万スイスフラン(=約23億円)の売上がある。平成19年からCERNとの仕事を開始。
CERNとは、運送に関する契約や、FSC(Field Support Units)と呼ばれる特別なメンテナンス業務を受託している。繁忙に合わせて人数の変動(40~80名)があるため、人材の確保に苦労している。テクノパーク(工業団地)に立地しているが、CERNとの契約が4年契約ということもあり、契約に合わせて、規模を縮小させたり、拡大したりしているとのこと。
CERNとは日ごろからコミュニケーションを重ね、CERNの課題やニーズに努めているとの話があった。
36
Ⅲ.視察報告 2日目③
メインワークショップ(CERN・Said Atieh機械加工・メンテナンス部長)
CERN直営のワークショップ=作業工場を訪問。ここは、民間企業だけでは研究開発が難しいものについて、CERN研究者、学生、民間企業の3者で共同開発する場となっている。量産化をする場合は、民間企業へ製造委託をすることとなる。
つまりCERNのための工場ではなく、開発された技術を、民間企業を含めた加速器研究に広く利用してもらうための施設。
工場内でも、日本企業の技術貢献が説明され、新日鐵住金の特殊鉄が超電導コイルの支持部品に全量(約1万2千トン)使用されていること等が紹介された。
工場内には、高精度なズレを測定することが可能な3次元測定器等、世界でも最高レベルの機器が設置されている。研究者も、ヨーロッパを中心に世界各国(日本含む)から集まっている。
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Ⅲ.視察報告 2日目④ 昼食(メイランサイトには2つ、プレヴサンサイトには1つレストランあり)
メイランサイト内のレストランは、常時300~500人程度(※目視確認)が食事可能な広さ。 食事は野菜や肉類が幅広く並び、メニューに飽きさせない工夫や、各国の食事習慣への配慮が見られた。
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Ⅲ.視察報告 2日目⑤
Proton Synchrotron Area (ACTEMIUM社・Gerard Fontanini 氏)
放射線量の安全管理(CERNの加速器LHCの安全性と、作業員の安全性及び適格性)を行う施設を訪問。ここでは、フランスVinciグループのACTEMIUM社が受託し、業務を行っている。
CERNの加速器LHCは、フランス・スイス両国の原子力庁より安全性を認められ稼働している。放射線量は常時測定され、データはプレヴサンサイトのコントロールセンターに送られる。
放射線の基準(※追加被ばく線量)は、フランスでは20mmシーベルト/年、CERNでは6mmシーベルト/年。※追加被ばく線量=自然被ばく線量及び医療被ばくを除くもの。日本は1mmシーベルト/年。
4年前に放射線管理の新システムを導入するなど、厳重な運営管理がなされている。
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Ⅲ.視察報告 2日目⑥
SM18 冷却システム(SERCO社)
SM18とは、超伝導を実現するための冷却技術装置の研究開発拠点である。
SM18の管理運営を行うSERCO社は、イギリスを拠点とする専門的な人材派遣会社であり、全社の社員数は5万人。CERNでは、技術者以外にも、運営に関するスタッフの派遣をしている。
SERCO社は、テクノパークに事務所を置き、社員は百数十人程。技術を会社内の若手に伝承することや、CERN研究者とノウハウを共有することに重点を置いているとのこと。CERN周辺からの「地元採用」も極力心がけてるとのこと。
なお、超伝導技術は、KEKや日本企業の貢献が大きい分野。SM18にも、KEK製造の「超伝導四極マグネット」(=強力な磁場をつくり、衝突点に向かって陽子ビームを1点に絞るための装置)が展示されていた。
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Ⅲ.視察報告 2日目⑦
ISOLDE (CERN・Jérôme Pierlot氏、EMTE社・Emilio Camarero氏)
ISOLDEは、放射性同位元素(RI:ラジオアイソトープ)を高性能なビームとして発生させ、各実験に供給する施設。
ISOLDEの管理運営を行うEMTE社は、スペインに本拠を置く配電・配線・電気専門会社である。EMTE社では、3年前にCERNと仕事を始め、現在30名の技術者と120名のスタッフが働いている。このうち、10~25%はCERN周辺地域の人を雇用している。
スペインと、フランス・スイスでは、言語も異なり、電気や配電の規制も異なるため、当初は困難もあったということだが、現在はCERNにEMTE社の技術が認められているとのこと。
EMTE社員は物価の安いフランス側に居住。住宅の確保は個人が独自に行っている(会社やCERNは斡旋しない)。現在CERN周辺は、人口増に住宅供給が追い付いていない状況とのこと。
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2日目小括
Ⅲ.視察報告
2日目は技術開発拠点や加速器関連施設を訪問し、CERNと連携し活躍する民間企業について理解を得た。
訪問したのは、特殊輸送、測定・機械加工、放射線管理、極低温冷却、情報通信分野の世界最先端の現場であるが、ここで開発された加速器関連技術は広く応用されているとのこと。
また、CERN周辺には、関連技術を開発、利用する企業が立地し、地元の雇用拡大にもつながっている。ILCにおいて、気仙沼は部品の海路の窓口、組み立て工場の役割として期待されているが、長期的視点に立つと、派生技術の開発拠点とそれを応用した産業群の創出が期待される。
42
Ⅲ.視察報告
5/20(水) CERN視察3日目(最終日)
① 9:00 サン・ジュニ・プイイ市(フランス)訪問
② 10:30 テクノパーク訪問
テクノパーク
市庁舎
CERN
メイランサイト:スイス
【サン・ジュニ・プイイ市資料より】
43
Ⅲ.視察報告 3日目①
サン・ジュニ・プイイ市訪問(対応:ベルトラン市長)
【まちづくり】 サン・ジュニ・プイイ市は、60年前は人口約1,000人程度の通り道のような村だったが、CERNの誕生によって大きく生まれ変わった。現在の人口は約9,000人。
市圏域では、グランドジュネーブと呼ばれる新しい広域都市計画プロジェクトに取り組んでおり、自然豊かな環境を保護しながら、住宅や学校等インフラ整備を進めている。
市の大きな役割は、CERNで働く世界各国の最先端の研究者を受け入れることであり、この中にはノーベル賞を受賞するような研究者もいる。現在では100か国以上の国籍の住民がいるが、文化的な問題は全くなく、現地の人々と融合した生活を送っている。これは、市のイメージアップにもつながっている。
44
Ⅲ.視察報告 3日目① サン・ジュニ・プイイ市訪問(対応:ベルトラン市長)
【まちづくり】 CERNで働く人々は地域の文化にすぐ馴染む。その理由は、彼らは科学をベースとするオープンマインドの精神をもっているから。
研究者のために住宅だけを供給すると寝るだけの町になってしまう。インフラを整え、研究者が快適に過ごせる場をつくることが大切。ただし研究者のための特別なコミュニティはつくってはいない。若い研究者は小さな子供がいるが、学校で親同士が知り合いになることで、スムーズに交流することにつながっている。研究者やその家族が、地域の各種組織に自由に参加できるようにもしている。
サン・ジュニ・プイイ市は人口構成が若い。これは移動を苦にしない研究者や関連企業社員が住んでいるため。自国に帰らずそのまま住みつく方もおり、市をよい環境だと感じてもらえている。
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Ⅲ.視察報告 3日目①
サン・ジュニ・プイイ市訪問(対応:ベルトラン市長)
【教育】 まちづくりと同様、研究者の子供たちが自由に学べる場が重要。子供がつなぎ役となり、研究者の知識が地域に浸透することにもつながる。地域の合同事業として、インターナショナルスクールも設置している。
学校は子供の社交性や寛大さ、認め合う力を深め育てる場所。CERNがあることで、小さい頃から異なる文化、多様性に触れることにもつながっている。
市庁舎裏には市で初めての保育所が建設された 運動公園などの整備も計画されている
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Ⅲ.視察報告 3日目①
サン・ジュニ・プイイ市訪問②(対応:ベルトラン市長)
【経済効果】 CERNのメインキャンパス自体は主にスイス側にあるが、市への経済効果として、市に住む研究者からの住民税や、立地する関連企業からの法人税が増加する。住民の25%は、CERNの研究者や関連企業の社員。また、50%の人々は国境を越えてスイス・ジュネーブ側で働いている。
市では、当初はCERNの最先端の技術を受け入れる体制はなかったが、現在では、アン県及び政府と連携し、テクノパークの運営や起業支援等に取り組んでいる。
【加速器の安全確保策】 加速器はフランスやスイスの安全規制に従っており、市としての安全協定等は特段結んでいない。
加速器は、建設した当時から、政府の安全規制に則り認められたものであり、放射能や安全性を心配する反応は特になかった。
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Ⅲ.視察報告 3日目②
テクノパーク訪問
テクノパークは、サン・ジュニ・プイイ市にある工業団地であり、CERNの関係企業(110社1,000名)が入居している。
テクノパーク内には、CERNの技術移転を受け起業するための、起業支援機関(インキュベータ)が設置されている。なお、CERNでは、欧州各地に起業支援のためのネットワークを確立しており、テクノパークは6か所目となる。
起業支援のプロジェクトの名称は「イノジェックス」と呼ばれ、CERN、フランス政府、ペイドジェックス(※)、アン県の4者の協定を基に運営されている。
※サン・ジュニ・プイイ市は、プレヴサンサイトがあるプレヴサン・モエン市とともに、ペイドジェックス(Pays de Gex)という地域を構成している。
48
Ⅲ.視察報告 3日目②
テクノパーク訪問
特徴ある起業支援プログラムとしては、CERNの最先端技術を利用するプロジェクトを募集し、年間3件支援することが挙げられる。
選定されたプロジェクトは3年間の支援を受けられ、テクノパーク内の施設の利用や、起業のための専門家による人材支援、財政支援が用意されている。
財政支援では、3万ユーロの補助金(市場調査費用等)の他、金利0%での融資を受けられる。起業までの3年間と、起業後の2年間の合計5年間の継続的な支援が行われる。
現在、テクノパークに立地する企業は110社、1,000名が働いているが、全体の20%、3万m2
が空きの状態である。
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Ⅳ.まとめ
路面電車「トラム」と「グローブ」と呼ばれる見学交流施設(高さ27m木製ドーム型)
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Ⅳ.まとめ
CERN視察を終えて
CERNを中心として、地域が発展を続けている様子は、私たちに大きな印象を与えた。
世界各国から研究者やその家族が集まる国際プロジェクトであることから、周辺自治
体では、国や県を巻き込み長期的なまちづくりが行われている。
まちづくりの視点は、地元住民と研究者及びその家族が共存する「多文化共生」。地
域に溶け込んだかたちで、誰もが暮らしやすい生活環境を実現することが重要。
サン・ジュニ・プイイ市庁舎の前で サン・ジュニ・プイイ市の将来計画も紹介された
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Ⅳ.まとめ
CERN視察を終えて(2)
CERNの研究者は国際的なプロジェクトを実現するために、住民への情報公開等を
重要視しており、研究施設の一般公開や住民説明会が積極的に行われている。大
型実験施設の成功のためには、住民の理解を得ることは不可欠。
ILCの計画についても、研究者とともに市民の理解を深めていくことが重要であり、
多様な機会を通じて、関心を高めることを行いたい。
今回の視察で大変お世話になった先生方(左:KEK山本特別教授、右:近藤名誉教授)
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Ⅳ.まとめ
子供や若者にとって、身近で最先端研究が行われ、科学への興味を深める場が存在
することは非常に幸運なことであり、教育にもよい影響を与えていると感じた。CERN
では若い研究者も多く、子供にとっては科学者になるという将来をイメージしやすい。
ILCの実現により、気仙沼からノーベル賞を目指す子供たちが育っていくという大きな
希望や夢にもつながっていく。
欧州全域からの学生が見学に訪れる
CERN視察を終えて(3)
CERNでは若い研究者も多い
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Ⅳ.まとめ
研究施設や加速器関連企業が立地することで、地元企業や新産業の発展につながっ
ている。テクノパークでは、技術移転を促進するための起業支援等の取組が行われ、
数々のチャレンジが生まれている。
ILCにおいても、長期的には派生技術の開発拠点とそれを応用した産業群の創出が
期待される。ILCを地域経済の活性化にいかに取り込むか、波及させる取組が重要。
テクノパーク起業支援センター
CERN視察を終えて(4)
国際連携による製品開発。関連技術も幅広い
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Ⅳ.まとめ
CERN視察を終えて(5) CERNにおいては、自然環境や景観の保全に細心の注意が払われている。
ILC計画においても、「ILCと地域が共存する」ことが非常に重要であり、CERNは先行
事例として大いに参考となった。
また、CERN近郊では地域の風土が活かされており、本市においても、豊かな自然環
境や海とともに生きる暮らしを活かす工夫が鍵となる。
レマン湖周辺の田園風景。右奥がCERN CERN周辺にはぶどう畑が広がる
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Ⅳ.まとめ
CERN視察を終えて(6)
ILCに対する大きな期待はCERNでも感じられ、今回気仙沼からの訪問は、東北(北
上サイト)の熱意を伝える場ともなった。
本市においては、今後ともILC誘致を推進するため、視察の成果を活かし、受け入れ
態勢の検討や、その取組を展開することが重要。
CERNではLCCディレクターのリン・エバンス氏が先頭に立ち迎えてくれた
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Ⅴ.さいごに ILCについて(1)
H27.6.26(金) 岩手日報
ILC実現に向けた動き(1)
文部科学省
「ILCに関する有識者会議」 開催
設置期間 平成28年3月31日まで
(延長可能性あり) 委員構成 学識経験者13人
検討内容
(1)ILCの建設費や運転コスト、
国際的経費分担
(2)建設期や運転期に必要な人員・ 人材確保の見込み
(3)ILCによる技術的・ 経済的波及効果
等について、作業部会を設置し検討。
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Ⅴ.さいごに ILCについて(2)
H28.3.4(土) 岩手日報
ILC実現に向けた動き(2)
東北ILC推進協議会 「ILC準備室」 設置
→平成29~30年頃 誘致決定した場合、
研究所の建設が速やかに行われるよう
受け入れ態勢の課題解決に取り組む。
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Ⅴ.さいごに ILCについて(3)
西暦 スケジュール
2013年 (H25)
・ILC国内候補地が北上サイトに決定(世界の候補地) 2~3年かけて詳細調査、政府間交渉(費用負担等)
2017 ~2018年 (H29~30)
・国の結論(日本への誘致の是非) ・調査事業、詳細設計等(~2018年) 工事・調査関係者が徐々に増加
2018年頃 (H30)
・ILC建設工事着手(主にトンネル工事) 工事・調査関係者のピーク(~2022年)
2020年 (H32)
※東京オリンピック開催
2022年頃 (H34)
・ILC加速器インストール ILC関連施設(キャンパス、会議場、交通システムなど)整備 研究者・技術者などの生活環境(住宅、病院、学校、道路など)整備 国内・海外からの転入者が徐々に増加
2027年頃 (H39)
・ILC実験研究開始 海外からの転入者の生活が本格化 ⇒ 地域との交流が活発化 国内・世界各地から施設見学者が増加
(注)上記の「スケジュール」はあくまでも推測です。
今後のスケジュール(推測)
建設
10
年程度
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Ⅴ.さいごに ILCについて(4)
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お問い合わせ先
気仙沼市国際リニアコライダー協議会 事務局
(気仙沼市震災復興・企画課政策・調整係)
電話 0226-22-3408 (直通)
E-mail [email protected]
ご清聴
あ り が と う ご ざ い ま し た 。
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