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From the scene of development 幼い頃、壊れてしまったお気に入りの電動玩具を 器用に修理してくれた伯父がとても頼もしく見え、電 気工作に興味を持ち始め、気がつけば大学 で電気工 学を専攻していました。就活では大手電機メーカー にターゲットを絞り会社訪問を続ける中で、大学OB が数多く活躍しているOCM に出会い、その自由な 社風や明るい雰囲気の職場環境に魅力を感じ入社 を決意しました。 そして、入社直後に配属された無線機器開発を行 う部署で、防災消防無線の端末開発に携わっていま した。実は、大学では発電所システムなどの強電分野 を研究していたため、無線に関しては全くの素人。多 難なスタートを覚悟していたのですが、意外なくら い違和感もなく馴染め、開発を進める過程で無線技 術の奥深さや面白さを実感することができました。 その後、アスリートの運動解析や医療分野でバイタ ルデータを測定する小型ウエアラブル端末開発に携 わるようになった際、端末の電源確保が小型化など のボトルネックとなっていることを痛感し、環境発電 の検証にも着手。そして、現在はBluetoothやWi-Fi、 サブGHz帯のLPWA(Low Power Wide Area)無 線によるIoT機器開発を統括する傍ら、SEとして自 社開発技術のプロモーションにも携わっています。 今回、本編でもご紹介した「環境発電を利用する メンテナンスフリー無線技術」は、私たちのチームが 手掛けた技術開発の成果のひとつです。まず、環境 発電とは、太 陽 光 や照明などの 光、振 動、熱、電磁 波 など、身の回りの環境に存在するエネルギーから微 弱な電力 を発生させる発電技術。そして、LPWAは 低消費電力、低ビットレート、広域カバレッジを特徴 とする無線技術です。この二つの技術を組み合わせ、 無線端末に環境発電の電源回路を実装することで、 電池交換や充電などのメンテナンスが不要なセン サーネットワークの構築が可能です。現在、私たちは、 この技術を電源の確保や電源ケーブルの敷設が困 難なシーン、具体的には人体に装着するウエアラブ ル端末から、橋梁やビルなど高所建造物の劣化遠隔 監視、大規模倉庫内での在庫管理、広大な田畑・温室 での環境遠隔監視(IT農業)、さらには衛生面での配 慮からケーブル削減のニーズが寄せられている医療 機器分野などでの利用を想定し、実証実験を進めて います。 開発に際しては、目に見えない電波を扱うため、問 題発生時の対処に苦慮しました。特にウエアラブル 端末の場合、人体は電波を通しにくいため、ほんの少 し動いただけでデータの取得が途絶えてしまうこと があり、多くの検証データから原因分析を行う必要 があるからです。幸い、OKIグループには長年培って きた無線分野における豊富な経験とノウハウの蓄積 があり、個々の問題をチームワークで解決できる環 境が整っています。また、個人的なことですが、入社 直後、先輩社員から「電波が見えるようになったら、 無線技術者として一人前だ」と言われたことがありま す。当時は懐疑的でしたが、経験を重ねた結果、今で は、アンテナを見ると電波が放射されているイメー ジが浮かぶようになったことに、自身の成長を実感し ています。 今後は、この技術を更にブラッシュアップすると 同時に、多くのお客様にIoT領域における環境発電無 線端末の有用性と、OKIの優位性をアピールし、ビジ ネスとして成功させたいと思っています。 これもまた私事ですが、最近、趣味でゴルフを始 めました。当然、初心者なのでコースではロストボー ルになることが多く、「環境発電無線機能搭載のゴ ルフボールができないか…」などと、製品構想を練 りながら練習に励んでいるところです。もっとも、 ロストボールしないゴルフの腕の上達が先決かも しれませんが 。 外部電源不要のメンテナンスフリー無線端末を開発 外部電源不要のメンテナンスフリー無線端末を開発 開発の現場から OKIコミュニケーションシステムズ 技術部 高橋 季之 環境発電+LPWAで、 IoTの用途拡大を図る。

環境発電+LPWAで、 IoTの用途拡大を図る。 · 2020. 5. 20. · 線によるiot機器開発を統括する傍ら、seとして自 社開発技術のプロモーションにも携わっています。

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Page 1: 環境発電+LPWAで、 IoTの用途拡大を図る。 · 2020. 5. 20. · 線によるiot機器開発を統括する傍ら、seとして自 社開発技術のプロモーションにも携わっています。

From the scene of development

 幼い頃、壊れてしまったお気に入りの電動玩具を器用に修理してくれた伯父がとても頼もしく見え、電気工作に興味を持ち始め、気がつけば大学 で電気工学を専攻していました。就活では大手電機メーカーにターゲットを絞り会社訪問を続ける中で、大学OBが数多く活躍しているOCM に出会い、その自由な社風や明るい雰囲気の職場環境に魅力を感じ入社を決意しました。 そして、入社直後に配属された無線機器開発を行う部署で、防災消防無線の端末開発に携わっていました。実は、大学では発電所システムなどの強電分野を研究していたため、無線に関しては全くの素人。多難なスタートを覚悟していたのですが、意外なくらい違和感もなく馴染め、開発を進める過程で無線技術の奥深さや面白さを実感することができました。その後、アスリートの運動解析や医療分野でバイタルデータを測定する小型ウエアラブル端末開発に携わるようになった際、端末の電源確保が小型化などのボトルネックとなっていることを痛感し、環境発電の検証にも着手。そして、現在はBluetoothやWi-Fi、サブGHz帯のLPWA(Low Power Wide Area)無線によるIoT機器開発を統括する傍ら、SEとして自社開発技術のプロモーションにも携わっています。 今回、本編でもご紹介した「環境発電を利用するメンテナンスフリー無線技術」は、私たちのチームが手掛けた技術開発の成果のひとつです。まず、環境発電とは、太陽光や照明などの光、振動、熱、電磁波など、身の回りの環境に存在するエネルギーから微弱な電力 を発生させる発電技術。そして、LPWAは低消費電力、低ビットレート、広域カバレッジを特徴とする無線技術です。この二つの技術を組み合わせ、無線端末に環境発電の電源回路を実装することで、電池交換や充電などのメンテナンスが不要なセンサーネットワークの構築が可能です。現在、私たちは、

この技術を電源の確保や電源ケーブルの敷設が困難なシーン、具体的には人体に装着するウエアラブル端末から、橋梁やビルなど高所建造物の劣化遠隔監視、大規模倉庫内での在庫管理、広大な田畑・温室での環境遠隔監視(IT農業)、さらには衛生面での配慮からケーブル削減のニーズが寄せられている医療機器分野などでの利用を想定し、実証実験を進めています。 開発に際しては、目に見えない電波を扱うため、問題発生時の対処に苦慮しました。特にウエアラブル端末の場合、人体は電波を通しにくいため、ほんの少し動いただけでデータの取得が途絶えてしまうことがあり、多くの検証データから原因分析を行う必要があるからです。幸い、OKIグループには長年培ってきた無線分野における豊富な経験とノウハウの蓄積があり、個々の問題をチームワークで解決できる環境が整っています。また、個人的なことですが、入社直後、先輩社員から「電波が見えるようになったら、無線技術者として一人前だ」と言われたことがあります。当時は懐疑的でしたが、経験を重ねた結果、今では、アンテナを見ると電波が放射されているイメージが浮かぶようになったことに、自身の成長を実感しています。 今後は、この技術を更にブラッシュアップすると同時に、多くのお客様にIoT領域における環境発電無線端末の有用性と、OKIの優位性をアピールし、ビジネスとして成功させたいと思っています。 これもまた私事ですが、最近、趣味でゴルフを始めました。当然、初心者なのでコースではロストボールになることが多く、「環境発電無線機能搭載のゴルフボールができないか…」などと、製品構想を練りながら練習に励んでいるところです。もっとも、ロストボールしないゴルフの腕の上達が先決かもしれませんが 。

外部電源不要のメンテナンスフリー無線端末を開発外部電源不要のメンテナンスフリー無線端末を開発

開 発 の 現 場 か ら

 OKIコミュニケーションシステムズ技術部

高橋 季之

環境発電+LPWAで、IoTの用途拡大を図る。