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球面的モンテシノス絡み目の幾何 川口 悠太 (近畿大学附属広島高等学校・中学校 東広島校) * 概要 二重分岐被覆空間 M が球面構造を持つモンテシノス絡み目 L を球面 的モンテシノス絡み目と呼ぶ.このとき,(S 3 ,L) L を錐角 π の特異 集合とする球面的軌道体の構造を持ち,さらに構造は一意的である.特 に,特異集合 L のチューブ半径(L r-近傍がソリッドトーラスの非交 和となる正実数 r の上限),及び,チューブ半径を実現する (S 3 ,L) 内の (最短)弧のイソトピー類は,L の位相不変量となる.本報告では,全て の球面的モンテシノス絡み目に対して,そのチューブ半径を与え,また 二橋絡み目に対して,チューブ半径を実現する(最短)弧を記述する. 1 イントロダクション 定義 1.1. モンテシノス絡み目 L = L(b;(α 1 1 ), ··· , (α r r )) とは以下の図に示 された S 3 内の絡み目である.ここで, r, b, α i i r 0i 0, g.c.d(α i i )= 1 (1 i r) を満たしている. email: [email protected]

球面的モンテシノス絡み目の幾何 - Nihon Universityichihara/Knots2019/...∗email: [email protected] 命題1.2. モンテシノス絡み目L = L(b;(α1,β1),

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Page 1: 球面的モンテシノス絡み目の幾何 - Nihon Universityichihara/Knots2019/...∗email: gucci.gucci-gucci@outlook.jp 命題1.2. モンテシノス絡み目L = L(b;(α1,β1),

球面的モンテシノス絡み目の幾何

川口 悠太 (近畿大学附属広島高等学校・中学校 東広島校) ∗

概 要二重分岐被覆空間 M が球面構造を持つモンテシノス絡み目 L を球面

的モンテシノス絡み目と呼ぶ.このとき,(S3, L) は L を錐角 π の特異集合とする球面的軌道体の構造を持ち,さらに構造は一意的である.特に,特異集合 L のチューブ半径(L の r-近傍がソリッドトーラスの非交和となる正実数 r の上限),及び,チューブ半径を実現する (S3, L) 内の(最短)弧のイソトピー類は,L の位相不変量となる.本報告では,全ての球面的モンテシノス絡み目に対して,そのチューブ半径を与え,また二橋絡み目に対して,チューブ半径を実現する(最短)弧を記述する.

1 イントロダクション定義 1.1. モンテシノス絡み目L = L(b; (α1, β1), · · · , (αr, βr))とは以下の図に示されたS3内の絡み目である.ここで,r, b, αi, βiはr ≧ 0, αi ≧ 0, g.c.d(αi, βi) =

1 (1 ≦ i ≦ r)を満たしている.

∗email: [email protected]

Page 2: 球面的モンテシノス絡み目の幾何 - Nihon Universityichihara/Knots2019/...∗email: gucci.gucci-gucci@outlook.jp 命題1.2. モンテシノス絡み目L = L(b;(α1,β1),

命題 1.2. モンテシノス絡み目L = L(b; (α1, β1), · · · , (αr, βr))に沿って分岐するS3の二重分岐被覆空間M2(L)はザイフェルトファイバー空間S(−b; (α1, β1), · · · , (αr, βr))

であることがMontesinos [2]によって示されている.但し,このザイフェルトファイバー空間の底軌道体は S2(α1, · · · , αr),即ち底空間が球面 S2で錐角2π/α1, · · · , 2π/αrの特異点を持つ 2次元軌道体である.

定理 1.3. r ≦ 3 のときモンテシノス絡み目 L のイソトピー類は以下の 2 つのデータによって決まる.

(i) Z を法とする有理数の組 (β1/α1, · · · , βr/αr) ∈ (Q/Z)r .但し,巡回置換と反転を法とする.

(ii) オイラー数 e(η̄) = 12(b−

∑ri=1 βi/αi) ∈ Q.

定義 1.4. 二重分岐被覆 M2(L) が球面的多様体ならば,モンテシノス絡み目が球面的であるといい,このとき以下の命題は同値である.

(i) L が球面的モンテシノス絡み目.

(ii) M2(L) が球面構造を持つ.

(iii) π1(M2(L))が有限.

(iv) 次のいずれかが成り立つ.

1. r ≦ 2 で L が (p, q) 型の二橋絡み目.

2. r = 3 かつ e(η̄) 6= 0 のとき,1

α1

+1

α2

+1

α3

> 1.

つまり,(α1, α2, α3) = (2, 2, n), (2, 3, 3), (2, 3, 4), (2, 3, 5).

2 球面的モンテシノス絡み目の球面構造L を球面的モンテシノス絡み目,M を L で分岐する S3 の二重分岐被覆空間,τ を M の被覆空間とすると,τ は M の等長変換として実現される.このため,(S3, L) = (M,Fix τ)/τ は L を錘角 π の特異集合とする球面的軌道体の構造を持つ.この軌道体を O(L) で表す.このとき以下の定理が成り立つ[5, Theorem 3.4].

Page 3: 球面的モンテシノス絡み目の幾何 - Nihon Universityichihara/Knots2019/...∗email: gucci.gucci-gucci@outlook.jp 命題1.2. モンテシノス絡み目L = L(b;(α1,β1),

定理 2.1. Lを球面的モンテシノス絡み目とする.このとき軌道体 O(L)には球面構造が一意に定まる.すなわち,O(L) ∼= S3/ϕ(Γ̄) となる部分群 Γ̄ < S3×S3

が共役を法として唯一存在する.さらに,Γ̄ は次で与えられる.

Type 1. L = (p, q) 型二橋絡み目のとき

Γ̄ = 〈(ωq+1, ωq−1), (j, j)〉 (但し,ω = eπip )

Type 2. L = L(−b; (2, 1), (2, 1), (α, β))のとき,m = (b+1)α+β,√ω2 =

eπi2α とおく.

(i) g.c.d.(m, 2α) = 1 のとき,

Γ̄ =

{〈Z∗

m ×D∗α, (j,

√ω2j)〉 (α は奇数 )

〈Z∗m ×D∗

α, (j, j)〉 (α は偶数 )

(ii) m は偶数で g.c.d(m,α) = 1 のとき,

Γ̄ = (∆(Z∗2m ×Dα), (j,

√ω2j))

Type 3. L = L(−b; (2, 1), (3, β2), (3, β3))のとき,m = 6b+3+2(β2+β3)

とおく.q2 ∈ EO とする.

(i) g.c.d.(m, 12) = 1 のとき,

Γ̄ = 〈Z∗m × T ∗, (j, q2)〉

(ii) m は奇数で m ≡ 0 mod 3 を満たしているとき,

Γ̄ = 〈∆(Z∗3m × T ∗), (j, q2)〉

Type 4. L = L(−b; (2, 1), (3, β2), (4, β3)) のとき,m = 12b+6+4β2 +

3β3 とおく.q2 ∈ VO ∪ EO とする.

Γ̄ = 〈Z∗m ×O∗, (j, q2)〉

Type 5. L = L(−b; (2, 1), (3, β2), (5, β3))のとき,m = 30b+15+10β2+

6β3 とおく.q2 ∈ EI とする.

Γ̄ = 〈Z∗m × I∗, (j, q2)〉

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3 測地線 L̃ の幾何S3 内の向きづけられた測地線全体の集合を G̃ とおく.このとき以下の関係式が成り立つ.

G̃ = {S3内の向き付き測地線 }= G̃2(R4) = {P ⊂ R4|向きのついた 2次元部分空間 }

R4 内の向きづけられた平面 P ∈ G̃2(R4) を考える. {u, v} を P の向きを定める順序付き正規直交基底とする.このとき,外積 u∧ v は正規直交基底の取り方によらず一意に定まる.この外積を ωP とおく.このとき以下の補題が成り立つ [1, Lemma 5.2].

補題 3.1. G̃2(R4) �� //

∼= ))SSSSSSS

SSSSSSSS

S Λ2R4 = E+ ⊕ E−

S2 × S2

但し,E± は ∗ 作用素の ±1 固有空間.

今,R4 内の向きづき平面 P に対して,それが誘導する向きを持った直交補空間を P⊥ とする.このとき,Λ2R4 上の ∗ 作用素 ∗ : Λ2R4 → Λ2R4 を次で定める.

∗ : Λ2R4 → Λ2R4 : ωP 7−→ ωP⊥

例えば,R4 の正規直交基底 {e1, e2, e3, e4} を選ぶと以下が成り立つ.

∗(e1 ∧ e2) = e3 ∧ e4

∗(e1 ∧ e3) = −e2 ∧ e4

この作用素の ±1 固有空間 E± を考える.E± は以下の通り.

E± := {x ∈ Λ2R4| ∗ x = ±x}

q ∈ S3 ⊂ H ∼= R4 ( 但し,H は四元数体 ) により,e+q , e−q ∈ Λ2R4 を以下で定

める.

e±q =1

2{(1 ∧ q)± ∗(1 ∧ q)}

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このとき,E+ と E− はそれぞれ {e+i , e+j , e+k } と {e−i , e−j , e−k }( 但し,i, j, k は

四元数.)ではられておりそれぞれが長さ1√2の正規直交基底をなす.ここで,

S2+ と S2

− を E+, E− 内の半径1√2の球面とする.P ∈ G̃2(R4) に対して

ωP+ =1

2(ωP + ∗ωP )

ωP− =1

2(ωP − ∗ωP )

と定めると,(ωP+ , ωP−) は S2+ × S2

− の点を定め,次の補題を得る (再掲 )[1,

Lemma 5.2].

補題 3.2.

G̃2(R4) −→∼= S2+ × S2

−∼= S2 × S2

P 7−→ (ω+P , ω

−P )

定義 3.3. L を球面的モンテシノス絡み目とする.q : S3 → M を普遍被覆,r : M → S3 を L で分岐する S3 の二重分岐被覆とする.これらの合成写像p : S3 → S3 による L の逆像 p−1(L) を L̃ で表し,L から定まる測地的絡み目と呼ぶ.

S3 q //

p

M

r // S3

⊂ ⊂

L̃ := p−1(L) // L

このとき,L̃ の要素はどれも (S3, L) の二重分岐被覆の被覆変換 τ のリフトで位数が 2 の等長変換 τ̃ の固定点となっている.今,m ∈ N に対して Cm = {ωrj|0 ≦ r ≦ m− 1} 但し,ω = e2πi

mとする.ま

た,S0 = {i,−i} とする.正八面体群 O に対して以下の図に表される非交和E

(r)O (r = 0, 1, 2) を考える.

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このとき,次の定理が成り立つ [5, Theorem 5.3].

定理 3.4. モンテシノス絡み目に L に適切に向きをつけ,L̃ にはそれが誘導する向きを与える.このとき向きづけられた測地的絡み目 L̃ は以下の S2

+ × S2−

の部分集合によって記述できる.

Type 1. {(ω1rj, ω2

rj | 0 ≦ r ≦ p− 1)}

但し (ω1, ω2) =(e

π(q+1)ip , e

π(q−1)ip

)Type 2 (i). Cm × {C2α ∪ S0}

Type 2 (ii). {C2m × C2α} ∪ {√ωC2m × {i}}但し ω = e

πim

Type 3 (i). Cm × EO

Type 3 (ii). {Cm×EO(0)}∪{ωCm×EO

(1)}∪{ω2Cm×EO(2)}但しω = e

2πi3m

Type 4. Cm × {EO ∪ VO}

Type 5. Cm × EI

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4 R4 内の 2 平面の距離定義 4.1. 球面的モンテシノス絡み目 L から定まる球面的軌道体 O(L) に対して特異集合 L のチューブ半径 TR(L) を以下で定義する.

TR(L) := sup{r ∈ R+||NO(L)(L, r)| ∼= ×D2}

補題 4.2. モンテシノス絡み目のチューブ半径に関して以下の式が成り立つ.

TR(L) =1

2md(L̃)

但し,md(L̃) := min{dS3(K,K ′)|K,K ′ は L̃ の成分 }

補題 4.3. P,Q ∈ G̃2(R4) に対して

θ+ = arg(ω+P , ω

+Q), θ− = arg(ω−

P , ω−Q)

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とする.このとき平面 P,Q の距離は以下の式で与えられる.

md(L̃) =1

2|θ− − θ+|

5 主定理定理 5.1. 球面的モンテシノス絡み目 Lのチューブ半径 TR(L)は次で与えられる.

Type 1. L = (p, q)型 2橋絡み目のとき.

TR(L) =π

2p

Type 2. L = L(−b; (2, 1), (2, 1), (α, β))のとき.

TR(L) =π

4|m|α

Type 3. L = L(−b; (2, 1), (3, β2), (3, β3))のとき.

(i) g.c.d.(m, 12) = 1のとき.

TR(L) =π

12|m|(ii) mがm ≡ 0 mod 3を満たす奇数のとき.

TR(L) =π

24|m|Type 4. L = L(−b; (2, 1), (3, β2), (4, β3))のとき.

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TR(L) =π

16|m|

Type 5. L = L(−b; (2, 1), (3, β2), (5, β3))のとき.

TR(L) =π

20|m|

6 計算

6.1 Type 5. Cm × EI

この報告集では Type 5. の場合で計算をしてみる.以下の図のように正二十面体のある辺の中点から e0 から等距離にある辺の中点を結ぶ等高線を引き, e0 に近い線から 1©, 2©, 3©, 4©, 5©, 6© と番号をふる.任意の元の対のS2 × S2 における Isom+ S2

+ × Isom+ S2− を法とする相対的位置関係は,(j, e0)

と (ωlj, ek) ( 但し,1 ≦ k ≦ 6 の整数 ) の相対的位置関係と同じである.以下では等高線の番号とその代表元を用いてそれぞれの距離を測っていくこととする.また,g.c.d.(m, 60) = 1 なので,m = 60m0 ± 1,m = 60m0 ± 7,m =

60m0±11,m = 60m0±13,m = 60m0±17,m = 60m0±19,m = 60m0±23,m =

60m0 ± 29 (m0 ∈ Z) とおく.

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(Case 1) P (j, e0)と P (ωrj, e0)の間の距離 d1は

θ+ =2πr

m,θ− = 0

であるから次を得る.

d 1 =1

2

∣∣∣∣∣0− 2πr

m

∣∣∣∣∣ = π

2

∣∣∣∣∣2rm∣∣∣∣∣

ここで r = 1としたとき分子は最小値 1をとるので,P (j, e0)と P (ωrj, e0)の間の最小の距離は次で与えられる.

d 1,min = min

{d 1(m, r) | 0 ≦ r ≦

m

2

}

|m|

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(Case 2) P (j, e0)と P (ωrj, 1©上の点)の間の距離 d2考える.まず, 1©の元e1をとる.

θ+ =2πr

m,θ− =

π

5

であるから次を得る.

d 2 =1

2

∣∣∣∣∣π5 −2πr

m

∣∣∣∣∣ = π

2

∣∣∣∣∣m− 10r

5m

∣∣∣∣∣ = π

10m|m− 10r|

以下の符号はすべて複合同順とする.

a) m = 60m0 ± 1のとき

|m− 10r| = |60m0 ± 1− 10r| = |10(6m0 − r)± 1|.

従って r = 6m0のとき,d 2,min = min

{d 2(m, r) | 0 ≦ r ≦

m

2

}=

π

10|m|b) m = 60m0 ± 7のとき

|m− 10r| = |60m0 ± 7− 10r| = |10(6m0 − r ± 1)∓ 3|.

従って r = 6m0 ± 1のとき,d 2,min = min

{d 2(m, r) | 0 ≦ r ≦

m

2

}=

10|m|c) m = 60m0 ± 11のとき

|m− 10r| = |60m0 ± 11− 10r| = |10(6m0 − r ± 1)∓ 1|.

従って r = 6m0 ± 1のとき,d 2,min = min

{d 2(m, r) | 0 ≦ r ≦

m

2

}=

π

10|m|d) m = 60m0 ± 13のとき

|m− 10r| = |60m0 ± 13− 10r| = |10(6m0 − r ± 1)± 3|.

従って r = 6m0 ± 1のとき,d 2,min = min

{d 2(m, r) | 0 ≦ r ≦

m

2

}=

10|m|e) m = 60m0 ± 17のとき

|m− 10r| = |60m0 ± 17− 10r| = |10(6m0 − r ± 2)∓ 3|.

従って r = 6m0 ± 2のとき,d 2,min = min

{d 2(m, r) | 0 ≦ r ≦

m

2

}=

10|m|f) m = 60m0 ± 19のとき

|m− 10r| = |60m0 ± 19− 10r| = |10(6m0 − r ± 2)∓ 1|.

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従って r = 6m0 ± 2のとき,d 2,min = min

{d 2(m, r) | 0 ≦ r ≦

m

2

}=

π

10|m|g) m = 60m0 ± 23のとき

|m− 10r| = |60m0 ± 23− 10r| = |10(6m0 − r ± 2)± 3|.

従って r = 6m0 ± 2のとき,d 2,min = min

{d 2(m, r) | 0 ≦ r ≦

m

2

}=

10|m|h) m = 60m0 ± 29のとき

|m− 10r| = |60m0 ± 29− 10r| = |10(6m0 − r ± 3)∓ 1|.

従って r = 6m0 ± 3のとき,d 2,min = min

{d 2(m, r) | 0 ≦ r ≦

m

2

}=

π

10|m|

これを P (j, e0)と P (ωrj, k©上の点) ( 但し,3 ≦ k ≦ 6 とする.) の間の距離

dk+1 を考える.すると Type5. で表される測地的絡み目 L̃ の成分間の距離について以下を得る.

d 1,min =π

|m|

d 2,min =

π

10|m|(m = 60m0 ± 1, 60m0 ± 11, 60m0 ± 19, 60m0 ± 29のとき)

10|m|(m = 60m0 ± 7, 60m0 ± 13, 60m0 ± 17, 60m0 ± 23のとき)

d 3,min =π

6|m|

d 4,min =

π

5|m|(m = 60m0 ± 1, 60m0 ± 11, 60m0 ± 19, 60m0 ± 29のとき)

5|m|(m = 60m0 ± 7, 60m0 ± 13, 60m0 ± 17, 60m0 ± 23のとき)

d 5,min =π

4|m|

d 6,min =

10|m|(m = 60m0 ± 1, 60m0 ± 11, 60m0 ± 19, 60m0 ± 29のとき)

π

10|m|(m = 60m0 ± 7, 60m0 ± 13, 60m0 ± 17, 60m0 ± 23のとき)

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d 7,min =π

2|m|

そしてこのときの最小の距離md(L̃)は以下で与えられる.

md(L̃) := min{d i,min|i = 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7}

10|m|

よってこのときのチューブ半径は

TR(L) =1

2md(L̃)

=1

2・

π

10|m|

20|m|

謝辞講演の機会を与えてくださった日本大学の市原一裕先生,茂手木公彦先生には心よりお礼申し上げます.指導教員の作間誠先生には問題の示唆をはじめ熱心にご指導いただきました.この場をお借りして,深く感謝申し上げます.執筆にあたって,丁寧かつ熱心に推敲していただいた先輩の片山拓弥さん,坂井駿介さんには深く感謝申し上げます.

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