16
- - 1 この文書は、「情報:農業と環境」No.30(2002年10月公開)に掲載した技術記事をPDF化 したものです。 最新の研究成果については、化学環境部のページ( . . . . . )あ http://www niaes affrc go jp/envchemi/index html るいは農業環境研究成果情報( . . . . . )などをご覧ください。 http://www niaes affrc go jp/sinfo/result/result html 水稲のカドミウム吸収抑制のための対策技術 (独)農業環境技術研究所化学環境部重金属研究グループ 1.はじめに 農林水産省では、コーデックス委員会において食品中のカドミウムの新基準案の検討に対応するた め、水稲をはじめ、ダイズ、麦等の主要畑作物、野菜等のカドミウム吸収抑制技術の開発を平成12 年度から開始した。これを受けて、 独 農業環境技術研究所は、独立行政法人の農業関係研究機関、 ( ) 県農業試験場、大学、民間等と協力し合って、主要な農耕地土壌中のカドミウム分布実態の解明、作 物ごとの土壌カドミウム可給性の解明、作物汚染リスク予測技術の開発とマッピング手法の確立、そ れらに基づくカドミウム吸収抑制技術の開発等の研究を相次いでスタートさせた。研究は、本格的な 取り組みを始めた段階で、具体的な成果は本年度以降の研究に依存するところが大であるが、米のカ ドミウム軽減化対策の緊急性を考え、現時点で公表が可能なデータを用いて「水稲のカドミウム吸収 抑制のための対策技術」を作成した。本対策技術の作成のために、各県が既に実施しているカドミウ ム吸収抑制のための対策技術を参考にさせていただいた。ここに感謝の意を表したい。本対策技術は、 今後新しい研究成果を付け加えて定期的にバージョンアップを図っていく予定である。 なお、本稿は、主にカドミウム対策に携わる技術者の方々を対象にしたものであり、その内容は専 門的である。一般の方々のためにわかりやすいマニュアルを農林水産省のホームページ( . http://www . . . )へ掲載したので、適宜利用されたい。 maff go jp/cd/index htm 2.カドミウムの生産と消費 カドミウムは周期表の 属に属し、青みがかった+2価の金属で、リン酸、ケイ酸、炭酸、硝酸、 IIB イオウなど様々な陰イオンと化合物をつくる。主なカドミウム鉱物は硫化カドミウム鉱( )であ CdS るが、産出量は少ない。カドミウムの大部分は亜鉛製錬の際の副産物として生産している。最近では、 海外鉱の輸入や、廃棄物からの回収も増えている。世界の年間生産量は約 万トンであり、その内、 2 わが国では %弱が生産されている。消費量も生産量とほぼバランスがとれており、世界で 万ト 15 2 ン近く消費するが、わが国が全体の 割強を消費している。消費の %以上は、ニッケル-カドミ 4 80 ウム電池の製造用である。 3.カドミウム低減化技術開発の必要性 コーデックス委員会食品添加物汚染物質部会において検討されている米のカドミウム基準値は、精 米で である。また、その他の農作物等に対しても、それぞれ基準値案が提案されている。 0.2 mg/kg 一方、わが国では食品衛生法に基づいて玄米で1 の基準値が制定されている。(カドミウムの ppm 基準値に関する詳細な情報は、農林水産省のホームページのトピックス欄の「食品中のカドミウムに 関する情報」を参照されたい。) 水稲などのカドミウム汚染の問題は、土壌中に植物に吸収されやすいカドミウムが多く含まれてい

水稲のカドミウム吸収抑制のための対策技術--3 図1-2.稲の栽培に伴う土壌酸化還元電位の変化( 年)2001 (3)カドミウム吸収抑制のための効果的な水管理

  • Upload
    others

  • View
    2

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

- -1

この文書は、「情報:農業と環境」No.30(2002年10月公開)に掲載した技術記事をPDF化

したものです。

最新の研究成果については、化学環境部のページ( . . . . . )あhttp://www niaes affrc go jp/envchemi/index htmlるいは農業環境研究成果情報( . . . . . )などをご覧ください。http://www niaes affrc go jp/sinfo/result/result html

水稲のカドミウム吸収抑制のための対策技術

(独)農業環境技術研究所化学環境部重金属研究グループ

1.はじめに

農林水産省では、コーデックス委員会において食品中のカドミウムの新基準案の検討に対応するた

め、水稲をはじめ、ダイズ、麦等の主要畑作物、野菜等のカドミウム吸収抑制技術の開発を平成12

年度から開始した。これを受けて、 独 農業環境技術研究所は、独立行政法人の農業関係研究機関、( )県農業試験場、大学、民間等と協力し合って、主要な農耕地土壌中のカドミウム分布実態の解明、作

物ごとの土壌カドミウム可給性の解明、作物汚染リスク予測技術の開発とマッピング手法の確立、そ

れらに基づくカドミウム吸収抑制技術の開発等の研究を相次いでスタートさせた。研究は、本格的な

取り組みを始めた段階で、具体的な成果は本年度以降の研究に依存するところが大であるが、米のカ

ドミウム軽減化対策の緊急性を考え、現時点で公表が可能なデータを用いて「水稲のカドミウム吸収

抑制のための対策技術」を作成した。本対策技術の作成のために、各県が既に実施しているカドミウ

ム吸収抑制のための対策技術を参考にさせていただいた。ここに感謝の意を表したい。本対策技術は、

今後新しい研究成果を付け加えて定期的にバージョンアップを図っていく予定である。

なお、本稿は、主にカドミウム対策に携わる技術者の方々を対象にしたものであり、その内容は専

門的である。一般の方々のためにわかりやすいマニュアルを農林水産省のホームページ( .http://www. . . )へ掲載したので、適宜利用されたい。maff go jp/cd/index htm

2.カドミウムの生産と消費

カドミウムは周期表の 属に属し、青みがかった+2価の金属で、リン酸、ケイ酸、炭酸、硝酸、IIBイオウなど様々な陰イオンと化合物をつくる。主なカドミウム鉱物は硫化カドミウム鉱( )であCdSるが、産出量は少ない。カドミウムの大部分は亜鉛製錬の際の副産物として生産している。最近では、

海外鉱の輸入や、廃棄物からの回収も増えている。世界の年間生産量は約 万トンであり、その内、2わが国では %弱が生産されている。消費量も生産量とほぼバランスがとれており、世界で 万ト15 2ン近く消費するが、わが国が全体の 割強を消費している。消費の %以上は、ニッケル-カドミ4 80ウム電池の製造用である。

3.カドミウム低減化技術開発の必要性

コーデックス委員会食品添加物汚染物質部会において検討されている米のカドミウム基準値は、精

米で である。また、その他の農作物等に対しても、それぞれ基準値案が提案されている。0.2 mg/kg一方、わが国では食品衛生法に基づいて玄米で1 の基準値が制定されている。(カドミウムのppm基準値に関する詳細な情報は、農林水産省のホームページのトピックス欄の「食品中のカドミウムに

関する情報」を参照されたい。)

水稲などのカドミウム汚染の問題は、土壌中に植物に吸収されやすいカドミウムが多く含まれてい

- -2

ることが原因である。現在、カドミウムの土壌汚染を除去する方法として客土が、唯一実用的な方法

である。したがって、今後、疫学調査などに基づくカドミウムの健康影響に関するリスク評価結果を

踏まえて、国内外の基準値の見直しの動向を考慮すると、土木的手法以外の農作物中カドミウム低減

化技術の研究開発は不可欠である。研究開発の推進にあたっては、日本人の食品由来のカドミウム摂

取量の約 %を占める米に関するカドミウム低減化技術の開発に重点をおいて進めている。50

4.水稲のカドミウム吸収抑制のための基本技術

1)水管理

(1)土壌の酸化還元電位を規制する因子は?

一般に、水田では移植後、継続的な湛水により土壌の還元化が急激に進む。土壌の還元速度と還元

の程度は、水管理の方法(常時湛水、間断灌水、出穂前後湛水など)、土壌の種類(土壌有機物含量、

粘土含量、粘土鉱物の種類、pHなど)、投入される有機物量及び質 生藁、堆肥、畜産廃棄物、他(の有機資材など 、さらに、地温(有機物分解に関与する土壌微生物の活性に影響)などにより大き)な影響を受ける。

(2)土壌の種類と土壌酸化還元電位の変化

図1-1は、平成 年夏にポット試験でカドミウムの吸収を調査した土壌の 変化を生育12 Eh(mV)期間にわたって調べた結果である。湛水開始後一ヶ月程度で 種類のいずれの土壌(グライ土、黒3ボク土、灰色低地土)も がマイナス 近くまで下がった。しかし、8月 日に落水を開始Eh 200mV 22すると、この が一週間ほどでプラス 以上に上がり、強度の酸化状態になった。 種の土Eh 500mV 3壌間で酸化還元電位の変化に差があり、谷和原水田グライ土壌が還元気味に推移したのに対して、婦

中の灰色低地土は酸化還元電位が湛水開始後もなかなか下がらず、落水とともに急激に酸化状態を回

復した。この傾向は、平成 年度に行った同様な試験でも再現され、秋田の黒ボク土では、水管理13による 変動が顕著であった(図1-2)。Eh

図1-1.稲の栽培に伴う土壌酸化還元電位の変化( 年)2000

-300

-100

100

300

500

700

0 20 40 60 80 100

0

Eh(mV)

経過日数

A:谷和原(グライ水田土)  D:安中(表層腐植質黒ボク土) E:婦中(灰色低地土)  

AD

E

落水開始

- -3

図1-2.稲の栽培に伴う土壌酸化還元電位の変化( 年)2001

(3)カドミウム吸収抑制のための効果的な水管理

表1は、北陸農業試験場で行われたポット試験の成績である。幼穂形成期以降落水した処理区は、

常時湛水区に比べて 倍量ものカドミウムを吸収している。穂揃期以降落水した区も湛水区の 倍5 3程度のカドミウムを吸収し、出穂前後の湛水がカドミウム吸収抑制には欠かせないことを示している。

この表から、カドミウムの吸収抑制には穂揃期前後に、既に土壌の酸化還元電位が十分還元状態に保

たれている必要があることが分かる。この試験では、農環研の結果と比べて土壌 の下がり方が少Ehない。前述のように、土壌 は様々の要因により影響を受けるのでカドミウムの吸収抑制には、どEhの程度の酸化還元電位が、どの生育時期に必要かを断定するのは困難である。

しかし、出穂期を中心にカドミウム吸収に敏感な時期が存在し、この時期の適切な水管理がカドミ

ウム吸収を抑制する重要なポイントになる。

表1.水管理の時期と玄米中カドミウム含量の関係

水田の水管理の相違が玄米中のカドミウム濃度及び土壌の酸化還元電位に及ぼす影響 

落水時期 酸化還元電位(Eh6 mV) 玄米重 玄米中

(月日) 6.23 7.05 7.08 7.14 7.21 8.02 8.10 8.23 9.01 (g/pot) Cd ppm分けつ盛期(7.4)~幼形期(7.13) 308 350 243 -1 -49 29.3 0.36幼形期(7.13)以降 250 460 159 301 309 28.5 1.07穂揃期(8.9)以降 187 164 30.4 0.64乳熟期(8.23)以降 94 30.2 0.25常時湛水 185 -1 28.8 0.21常時湛水(Cd無添加) 387 251 151 185 206 -12 -41 -4 4 29.4 0.04

(ポット試験)注:1)供試土壌、グライ低地土(北陸農試)   2)Cd添加量,3ppm 3)玄米重は水分14% 4)Cdppmは乾物あたり 5)黄色部分は落水期間を示す。

-300

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

700

2001/7/6

2001/7/9

2001/7/10

2001/7/11

2001/8/10

2001/8/29

2001/8/30

2001/9/3

2001/9/4

2001/9/5

2001/9/6

2001/9/7

2001/10/10

秋田 落水3

新潟 落水3

落水:2001/8/21 秋田:黒ボク土、新潟:グライ土

- -4

(4)カドミウム化合物と酸化還元電位の関係(簡単な化学のおさらい)

表 .簡単なカドミウム化合物の溶解度2(g/100gH O)カドミウムの形態と水に対する溶解度 2

化合物 ℃ ℃ ℃ ℃ ℃0 10 20 25 30CdCl 47.3 50 53.1 54.7 57.42

CdNH Cl 29.3 32.1 34.4 35.5 36.64 3

Cd(NO ) 52.1 56.1 57.5 61.3 64.53 2

CdSO 43 43.1 43.3 43.4 43.54

-8CdS 2.11×10(化学便覧)

Cl NO表2は化学便覧より引用したカドミウム化合物の溶解度を示している。アニオン側として 、

、 を想定しているが、いずれの化合物も溶解度が高すぎて土壌中に安定して存在することは考3 4SOえられない。ただ、強還元状態で生成される と が反応して出来る硫化カドミウム( )だS Cd CdS2- +2

けが、十分低い溶解度を有し、土壌中で安定して存在すると考えられる。 の生成には、 の存CdS S2-

在が必須で、このために湛水条件下でカドミウムの吸収抑制が起こる要因の一つは、 生成によCdSる不溶化であると考えられる。

pe+pH pe pH土壌中の酸化還元やpHが関与する反応は、 という尺度を使うと表わしやすい。 は、

Ehと同様にエレクトロン濃度の逆対数で値が小さくなるほど還元度が強くなる。Ehとの間には、

の関係がある。土壌中のほとんどの反応は、水溶媒中で起こるので、以下の二つの酸化(mV)=59.2pe還元反応式の間で行われる。

(還元側)H + e- = 1/2H (gas) --------------------+2

pe + pH = 1/2logH (gas) ----------------(1)書き直すと、 - 2

(酸化側)H + e- + 1/4O (gas) = 1/2H O ---------+2 2

pe + pH = 20.78 + 1/4logO (gas) ------(2)書き直すと、 2

( )、( )式ともに、水素及び酸素の分圧を 気圧とすると、それぞれ1 2 1pe + pH = 0 ------------(1)’pe + pH = 20.78 ------(2)’

と簡単になる。すなわち、 の値は、最も還元側でゼロ、一方最も酸化状態で であり、pe + pH 20.78通常、土壌中で起こると思われる もしくは、土壌 と の範囲は、 から 程度である。pe+pH( pH Eh) 2 17このように、 を使えば、土壌中の酸化還元電位及びpHに依存する様々な反応を簡単に表わpe + pHすことができる。

例えば、硫酸根濃度は石膏( )の溶解度により規制されていると考えると、土壌中では、硫酸CaSO4

イオンが最も安定で硫酸カドミウムの生成が一番考えやすいが、この化合物は溶解度が高すぎ土壌中

に安定して存在することは困難である。一方、 の生成は、 付近から酸化度が増すにつS pe+pH=42-

CdS(greenれて急減する。よって、硫化カドミウムの生成には、強い還元状態が要求される。ここで

を生成するのに必要な条件を土壌カドミウム平衡濃度( )を使って計ockite) pe+pH=5.10+0.12logSO4

算すると、

- -5

表3-1. ( )の生成に対する と の関係(土壌 と平衡)CdS greenockite pe pH Cd

pe pH Eh(mV)1.73 3 102.40.73 4 43.20.27 5 16.0- -

1.27 6 75.2- -

2.27 7 134.4- -

3.27 8 193.6- -

4.27 9 252.8- -

がカドミウムの濃度を規制していると仮定すると - の式に従い、CdCO (octavite) (pe+pH=6.69 0.25pH)3

表3-2. の生成に対する と の関係( と平衡)CdS pe pH octavite

pe pH Eh(mV)2.94 3 174.01.69 4 100.00.44 5 26.00.81 6 48.0- -

2.06 7 122.0- -

3.31 8 196.0- -

4.56 9 270.0- -

すなわち、いずれの平衡式を用いても通常の稲栽培では、土壌p は微酸性から中性付近にあるのHで、湛水管理により をマイナス 以下に管理すれば、硫化カドミウムが生じてカドミウムEh 100mVは水に不溶となる。このように、水稲のカドミウム吸収抑制のためには、栽培期間を通じて湛水状態

(土壌が還元状態になる)に保つことが求められる。しかし、水稲の健全生育の確保や収穫作業の容

易さを考慮すれば、水管理の微妙な調節が重要となる。

(5)カドミウム吸収抑制のための水管理の要点

(1)適齢苗の早期移植で生育を促進させ、中干しを行う前に十分な茎数 本 を確保する。(25 )(2)中干しの期間は ~ 日前後で強くは行わない。強度の中干しは土壌の酸化状態を強める7 10ので、カドミウムの吸収を促進する。特に、排水が良好な水田では、軽めに行う。土が湿って

いて、足跡がつく程度でとどめる。

(3)溝切りを実施して、コンバインの刈り取り作業を容易にする。溝切りは、中干し開始後 日3程度で、田面が固くなり溝の泥が崩れなくなったら行う。 条に 本の割合で溝を切り、10 1縦・横の溝が途切れないようつながっていることが肝心である(図2)。

- -6

図2.溝切りの方法

(4)溝切り後の間断かん水と出穂期間の水管理には、とくに注意する。土壌表面が乾燥するような

水管理は行わない。

(5)出穂期前後6週間は、水稲にとって生理的にも十分な水を必要とするだけでなく、カドミウム

吸収が盛んであることを踏まえて、常時湛水に保つ。

(6)出穂期に用水不足が懸念される地域、あるいは乾燥しやすい気象条件下では、中干し・溝切り

後は連続して湛水を行う。

(7)落水時期は、高品質・良食味の米生産、さらに現地の土壌条件と収穫作業を考慮して、出穂後

3週間以降を厳守する。

(8)収穫期の土壌は、ひび割れがなく、足跡がわずかに残る程度に硬い状態とする(地耐力を保

つ)。

水口

水尻

十条ごとに溝を切る、溝は縦、横途切

れないように確実につなぐ

溝は水口、水尻に直結し効率よく

灌水、排水を行う

排水路

- -7

図 .湛水管理による稲のカドミウム吸収抑制3

図 に示したように溝切りを行い、灌水と排水を効率よく行える体制を整えてから、土壌表面が3乾かない程度に中干しを実施する。また、稲のカドミウム吸収にとって最も重要な時期である出穂期

前後 週間は、しっかりと湛水管理を行い土壌の酸化還元電位を還元側に保つ。このような湛水管3理区では、中干し後間断灌水により土壌を酸化的に推移した慣用管理区に比べて、稲のカドミウム吸

収が 程度まで減少した。1/10図4に茨城農業試験場で行われた大変興味のあるデータを示した。 年代の 月の降水量と玄1970 7

米中のカドミウム濃度の関係を調べたものである。両者間には、はっきりとした負の相関があり、降

水量が増すと玄米中のカドミウム濃度が減少する。茨城県下の稲作では、平均的に 月の初めに幼7穂形成期、 月初旬に出穂期を迎える。したがって、 月は幼穂形成期から出穂期にかけて、最もカ8 7ドミウム吸収の旺盛な時期に当る。カドミウムの吸収抑制には、この時期に土壌を乾かさない水管理

の重要性を述べたが、このデータは、そのことを証明する貴重なものである。

0

0 .2

0 .4

0 .6

0 .8

1

1 .2

1 .4

慣 行 管 理

堪 水 管 理

堪水管理

慣行管理

出穂中干し

溝切り

中干し

間断灌水

出穂前後三週間堪水

玄米中Cd濃度(ppm) カドミウム濃度 4.5ppm

の土壌で栽培した玄米

中の Cd含有量の事例

- -8

図 .年次別の7月降水量と玄米中のカドミウム濃度との関係4図中の数字は調査年次を示す。(茨城県農業試験場 ),1983

(6)沖積砂質水田に対するベントナイトのカドミウム吸収抑制効果

表4.沖積砂質水田におけるベントナイトの増収効果

沖積砂質水田に対するベントナイトの効果

収 穫 調 査

試 験 区 わ ら 重 玄 米 重 同 指 数

kg/1 0 a kg / 1 0a

対 照 区 ( ベ ン ト ナ イ ト 無 施 用 ) 573 4 2 2 1 0 0

ベ ン ト ナ イ ト 1.9t施 用 区 729 5 0 8 1 2 0

注) 灰褐色土壌砂土型 (群馬農試,1954)

砂質等の漏水型水田では湛水状態を保つことが困難である。カドミウムの吸収抑制には、ベントナ

イト等の施用により、漏水防止対策を徹底し湛水管理を行うことが重要である。ベントナイトの施用

方法は、耕起または荒代前に あたり ~ トンを全面施用し、ロータリー耕により作土とよく10a 1 2混合する。なお、ベントナイトの持続効果はそれほど長くないので、 ~ 年を目標に再施用する必3 5要がある。表4は、ベントナイト施用により水稲の収量が %増大した例を示す。このように、土20壌改良資材としてのベントナイト施用は、同時にカドミウム吸収抑制にも多大な効果がある。

- -9

2)施肥によるカドミウム吸収抑制

(1)土壌pHと稲のカドミウム吸収

重金属元素は、モリブデンを除いて土壌中pHが酸性になると溶解度が高まる。カドミウムも土壌

pHの低下とともに溶けやすくなるので、アルカリ性の肥料を施用し、土壌が酸性化するのを防ぐこ

とが大切である。

図6.葉鞘中 と玄米中 との関係(伊藤ら、1976)Cd Cd

図5に土壌 と水稲の茎葉部に吸収・蓄積されたカドミウム量の関係を示している。土壌 のpH pH上昇とともに稲のカドミウム吸収が急減し、 以上では吸収されない。図6に葉鞘中のカドミウム7.5濃度と玄米中のカドミウム濃度の相関を示しているが、両者間には極めて高い相関関係が見られる。

この関係を使えば、茎葉中のカドミウム濃度から玄米中に含有されるカドミウム量の推定が可能にな

る。

図5. 土壌pHと茎葉部のカドミウム濃度の関係

0

5

10

15

20

5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 8.0 8.5

土壌pH

茎葉部のカドミウム濃

度(ppm)

- -10

表5.施肥による玄米カドミウム濃度の変化

新潟農総研で行われたアルカリ性肥料のカドミウム吸収抑制効果に関する試験結果を表5に示す。

この試験では、同時に水管理の影響についても検討している。図5の結果から判断すると、各種肥料

投与による土壌 は、カドミウム吸収抑制に十分なレベルまでは上がっていない。慣行区の穂揃期pHは、最高でも熔リン施用で までしか上がらず、他の肥料では、せいぜい6を少し上回った程pH 6.6

度である。この 領域では、玄米中のカドミウム濃度を 未満に下げるのは困難である。一pH 0.4ppm方、アルカリ性肥料の施用に水管理を組み合わせると、同じ土壌 でもはるかに抑制効果は高いpH湛水区 。土壌 調整だけでカドミウム吸収を抑制しようとする場合は、少なくとも 以上にあ( ) pH pH7げることが望ましい。肥料の 上昇効果以外のカドミウム吸収抑制効果については、次の節で述べpHる。

(2)土壌pH変化に対する緩衝作用に関する簡単なおさらい

既に述べたように、水稲のカドミウム吸収抑制の一つとしてアルカリ性肥料の施用が考えられる。

土壌 が 程度にならないと吸収抑制効果が少ない。一方、 を上げすぎると鉄、マンガン、亜pH 7 pH鉛等必須微量要素が欠乏する恐れがある。アルカリ性肥料は土壌の「緩衝能」を十分に理解して適正

に施用する必要がある。

図7は希望する土壌p に持っていくために必要な石灰の量を計算するための考え方を示したもHのである。横軸には土壌に添加する酸またはアルカリの量、縦軸はそのとき得られる土壌 を示しpHている。腐植質土壌の初期 は で、 まで上げるためには、アルカリが約 必要であpH 5.2 pH6.5 7meqる → → )。 一方、モンモリロナイト質土壌の初期 は、腐植質土壌とほぼ等しい であ(A' B' C' pH 5.3るにもかかわらず、水酸化ナトリウムの必要量は約 である( → → )。この違いは土壌の5meq A B C「緩衝能」-酸またはアルカリを加えた時の 変化をやわらげる働き-の大きさに起因する。腐植pH質土壌はモンモリロナイト質土壌より土壌の「緩衝能」が大きいため、 の矯正にはより多くの肥pH料を要する。また、カオリナイト系や砂質土壌では、緩衝能が小さいか、ほとんど無いので、ごく少

量のアルカリを添加するだけで、容易に目標とするpHが得られる。

施肥が土壌pHと玄米カドミウム含量に及ぼす影響 (新潟県農総研)

湛 水 区 慣 行 区試 験 区    土壌pH 玄米Cd    土壌pH 玄米Cd

分けつ期  穂揃期 含量(ppm) 分けつ期 穂揃期 含量(ppm)ALC500kg 6.6 6 0.84 6.6 6.1 1.2ALC1000kg 6.6 6.4 0.43 6.6 6.3 0.82ケイカル500kg 6.5 6.3 0.72 6.3 6.2 1.26ようりん500kg 6.7 6.6 0.38 6.6 6.6 0.65無 施 用 6.4 6.2 0.87 6.3 6.2 1.49

注):1)幼穂形成期~乳熟期において湛水管理を行う区を湛水区、中干しを行う区 を慣行区と呼ぶ。 2)玄米のCd含量は、玄米水分15%での値を示す。 3)供試土壌は中粗粒強グライ土。

- -11

図7.土壌 を目標値に上げる 下げる ために必要な酸・アルカリ量pH ( )

石灰質肥料の施用によるカドミウム吸収抑制効果が、必ずしも一定しないのは、この土壌の「緩衝

能」の違いを考慮しないで、一律に アール当たり何百kg施用という指導が原因のひとつと考え10られる。実際に適正な石灰質肥料の施用量を算定する場合は、次のように行う。圃場から少量の土壌

をコニカルフラスコ等に秤取し一定量の水を加える。これに石灰質肥料の量を数段階変えて加え、よ

く混合する。ゴム栓などで蓋をし、これを数日放置後、土壌の を測定して石灰質肥料の施用量とpHとの関係を作成する。この関係から、対象圃場の土壌 を目標とする まで上昇させるのにpH pH pH

必要な石灰質肥料の施用量を決定する。

(3)ケイカル、熔リンなど土つくり肥料のカドミウム吸収抑制効果

カドミウムは、土壌中で様々な陰イオン、特に燐酸イオンや炭酸イオンと反応して水に溶けにくい

化合物を生成する。図7に示したようにいずれの化合物も土壌pHの上昇につれて急激に溶解度が減

少する。

本図中の に対する溶解度曲線は、土壌中の 分圧が 気圧であるとして計算していCdCO CO 0.0033 2

る。同様に は、土壌 ( )と平衡していると仮定しており、 の溶解度は、CdSiO Si logK=-3.10 Cd (PO )3 3 4

土壌燐酸濃度が ・ と 土壌 、 により規制されると想定しFePO 2H O(strengite) Fe(OH) ( Fe logK=2.70)4 2 3

て計算を行っている。酸性側では、燐酸カドミウムが重要な役割を果たし、pHの上昇につれて炭酸

カドミウムがより安定な化合物を生成することが考えられる。

ケイカルや熔リンなどの土作り肥料は、水田土壌をアルカリ性にしてカドミウムの吸収を抑制する

効果があるといわれている。表5から分かるように効果が見られる場合もあるが、肥料施用だけでは

その効果は顕著ではない。

- -12

図8.土壌中のカドミウム化合物の溶解度とpHの関係

図 のカドミウム化合物の「溶解度-土壌 ダイアグラム」から明らかなように、これらの資8 pH材には二つの効果が考えられる。一つは、主要な成分である燐酸、炭酸、珪酸などとカドミウムが不

溶性の化合物を生成し、イネが吸収できなくなる。もう一つは、 の上昇によりカドミウムの溶解pH度が減少する効果である。しかし、前者のカドミウム化合物の溶解度も、また土壌 の影響をうけpHるので、土壌 が相乗的に効いてくる。pHいずれにしても、施肥によるカドミウム吸収抑制は、水管理との併用により一段と効果を発揮する

180kg 6と考えられる。吸収抑制のための効果的な肥料の施用として、秋田県ではケイカル と熔リン

、新潟県では熔リン 、富山県ではケイカル が推奨されている0kg 500kg 600kg

5.肥料、灌漑水などによるカドミウム負荷の可能性

1)肥料、汚泥堆肥等によるカドミウム負荷

表6.市販肥料資材中のカドミウム含有量

( 2001 )平均値、mg/kg乾物当り、 年

全 含 量 ク 溶 性 含 量 水 溶 性 含 量Cd Cd Cd0.01 0.01 0.01窒 素 質 肥 料 尿 素 < <

0.01 0.01 0.01硫 安 < <

0.01 0.01 0.01カ リ 質 肥 料 塩 化 カ リ < <

0.06 0.02 0.01硫 酸 カ リ

4.10 1.50 1.00燐 酸 質 肥 料 過 燐 酸 石 灰

0.02 0.01 0.01熔 成 リ ン 肥 < <

5.50 1.80 0.10重 過 燐 酸 石 灰

3.00 2.00 0.33複 合 肥 料 高 度 化 成

2.50 1.40 0.26普 通 化 成

-7-7-7-7-7-7

土壌pHとCd化合物の溶解度の関係

-16

-14

-12

-10

-8

-6

-4

-2

0

2

5 6 7 8 9 10土壌pH

土壌中のCd濃度(対数モル)

CdCO3

CdSiO3

Cd3(PO4)2

Soil-Cd

- -13

市販されている各種肥料資材を集め、その代表的なものについてカドミウム含有量を分析した結果

を表6に示す(農業環境技術研究所化学環境部 。窒素およびカリ系の肥料ともほとんど無視できる)量のカドミウムしか含んでいない。しかし、リン酸を含む肥料は、比較的多くのカドミウムを含み、

平均で であった。4mg/kgこのリン酸質肥料を年間 施用すると、土壌中のカドミウム濃度は、計算上 土壌20kg/10a 0.4μg/kg増加する(作土厚 、土壌の仮比重1として計算)。仮に作物による吸収や雨、農作業等による20cm流出がないとしても、化学肥料資材施用による農耕地のカドミウム負荷は、問題にならないレベルで

ある。

事実、兵庫県中央農技センターと農業環境技術研究所で行われている肥料の連用試験区では、いずれ

の場合もリン酸質肥料のカドミウム負荷の影響は、見られなかった 図9 。( )

図9.リン酸質肥料施用の土壌及び玄米 濃度への影響Cd

しかしながら、汚泥肥料の中には、高濃度に重金属元素を含むものがあり、多量施用や連年施用は、

土壌中にカドミウムなどの重金属類を蓄積するおそれがあり、土壌診断に基づいて施用量を調節する

必要がある 図 。( 10)

図10.汚泥肥料の連用に伴う土壌中カドミウム濃度の変動

(大分、褐色森林土、1993)

00.1

0.20.30.4

0.50.6

Cd濃度(mg/kg)

無肥料 無リン酸 三要素

施肥処理

兵庫農土壌

農環研土壌

兵庫農玄米

農環研玄米

- -14

2)用水によるカドミウム負荷

表7.用水路の底質および用水中の 濃度と水田への推定蓄積量Cd調査地区・水源 底質 用水(ppm) Cd流入量 Cd蓄積量

(mg/kg) 5月中 8月上 平均 (g/10a・年) (mg/kg/30年)

Y 13.0 0.0020 0.0023 0.0022 3.225 0.645

H 4.1 0.0009 0.0020 0.0015 2.175 0.435

M 3.0 0.0005 0.0009 0.0007 1.050 0.210

O_Y川 19.9 0.0073 0.0118 0.0096 14.325 2.865

O_T堰 0.5 0.0000 0.0002 0.0001 0.150 0.030

非汚染26地点 0.0001 0.075 0.015

平均* (実際の数値は、0.00005)

*2002年測定値 **年間用水量を1500トンとして、作土深15cm、仮比重1で計算

表7の 地区 川から灌漑水を得る場合、年間14.3g 10 のカドミウムが水田に流入する(水持O Y / aちの良い水田で10 当り2000トン、悪い水田で1000トン、平均して約1500トンの灌漑水を使用したとa仮定して計算を行った (0.0096 1000000) 1500 1000000 14.3 10 )。したがって、30年間/ x x = g/ aこの水を用水として使用し続けると、単純計算で土壌中のカドミウム濃度は、約3 上昇する(14.ppm3 30 (15 1000 100 100)。この 地区 川のカドミウム濃度は、現在の水質基準値( ,0.x / x x x O Y Cd01 )以内である。ppm

補遺

1)土壌中のカドミウムの存在形態と作物の吸収について

カドミウムの農用地土壌対策は、玄米のカドミウム濃度により対策地域の指定を行っており、土壌

のカドミウム濃度はカドミウム汚染米を生産する農用地周辺にさらなる汚染農用地があるかどうかを

判断するための目安として測定されているにすぎない。この事実は、カドミウム汚染米を産出しない

ために土壌、水、栽培等管理を的確に行うことを大変困難にしている。何故、土壌のカドミウム濃度

の相違に基づく農用地土壌汚染地域の線引きが行われないのだろうか? 理由は簡単である。土壌のカ

ドミウム濃度と作物によって吸収されるカドミウム量の間には、必ずしも正の相関関係が成立しない

からである。土壌中のカドミウム濃度が一定でも、吸収されるカドミウム量は、気象、土壌の種類、

作物の種類、品種、栽培方法、栽培場所、栽培時期など多くの要因によって異なる。このような相違

が生じる原因の一つは、土壌中のカドミウムが、どのような形(化学形態)で存在し、どの形のカドミ

ウムが作物に吸収されるのかが、必ずしも明らかになっていないことにある。カドミウムに限らず、

昔から多くの養分について作物に吸収される形態(可給態)について研究が行われてきた。カドミウム

についても、可給態の実態を明らかにし、その量に基づいて効果的な吸収抑制対策を講じることが大

切である。

土壌中のカドミウムの化学形態分析には、種々の溶媒で土壌を抽出する分別抽出法が一般的である。

カドミウムの分別抽出法としては が土壌中の銅の分別に用いた方法やその改McLaren and Crawford良法などがある。これらの方法で分析した結果から、カドミウムの土壌中での存在形態は銅、亜鉛な

どに比べて水溶態および交換態が多く、土壌中の全カドミウム量の30 60 を占めることがわかって- %

- -15

いる。1作あたりイネが吸収するカドミウム量は、土壌中の全カドミウム量の約3 程度であり、土%壌中の水溶態および交換態カドミウムだけでイネへの吸収量を十分賄える。

可給態カドミウムの測定によく使われ、比較的相関の高い抽出溶媒には、水、1 硝酸アンモニMウム、0.1 塩化カルシウム、 、0.1 ピロリン酸などがある。しかし、これらも、その有M DTPA M効性が畑土壌に限られ、水田土壌では正しい評価が難しい。農業環境技術研究所化学環境部では、土

壌溶液中のカドミウムは作物に直接吸収される画分であることに着目し、水田土壌に適用できる新し

い可給態カドミウムの測定法を提唱している。稲のカドミウム吸収量予測は、玄米へのカドミウム吸

収・移行が盛んな幼穂形成期から穂揃い後期にかけて、土壌溶液中のカドミウム濃度を数回測定し、

測定値を適切に処理することにより可能であると考えられる。ただし、土壌溶液中にカドミウムはご

く微量(μ ~ )しか含まれていないので、分析には採取容器や保管容器への吸着、使用するg/L ng/L試薬の純度、分析精度、標準試料によるトレーサビリティの確保など超微量分析に関する充分な知識

と技術が要求される。

2)カドミウムに関する用語解説

・ コーデックス(Codex)委員会

の合同食品規格委員会が正式名称であり、国際的な食品規格などの作成を行う国FAO/WHO際機関である。本委員会は世界中の消費者の健康を保護し、食品の健全な貿易慣行を確保し、

国際貿易を促進することを目的に1962年に設立された。なお、わが国は1966年に加盟した。

・ 食品添加物汚染物質部会(CCFAC)

コーデックス委員会の部会の一つで、食品添加物や汚染物質の食品規格などの検討を行う。

・ ppm

濃度を示す単位の一つで の各頭文字をとったもの。1 とは1 の物体parts per million ppm kg(たとえば玄米)中に1 の物質(たとえばカドミウム)が存在する状態を表し、ごく微量mgの化学成分の存在量などを示す場合に用いられる。

・ pH

pH pは溶液中の水素イオン濃度を表す単位である。水素イオン濃度の逆対数で表し、これを

と呼ぶ。H・ Eh(酸化還元電位)

は土壌の酸化還元の強さを表す単位である。 の値が大きいほど土壌は酸化状態にあり、Eh Eh小さいほど還元状態にあることを示す。通常、畑土壌では 600~700 であるが、水田状態+ mVでは 300~ 200 程度に変動する。なお、 は によって変化するので、通常 6のと+ - mV Eh pH pHきの値に換算して、 として表示する。Eh 6

・ 溝切り(溝掘り)

水田が速やかに乾いて、収穫期のコンバインの稼働が容易になることや水田への入水作業が容

易で、圃場の水回りが速やかであることねらって、表土に適度な溝を切る。本作業は、中干し

開始後3日程度で、田面が硬くなり溝の泥が崩れなくなったときにおこなう。

・ 中干し

土用干しともいい、出穂前30~40日頃、3~7日間落水して、田面にわずかに亀裂を生ずる程度

に土壌を乾かす作業をいう。

・ 間断かんがい

3~4日ごとに半日程度落水したり、3日ごとにかん水する水稲栽培における水管理法をいう。

・ 落水

- -16

収穫に備えて水田に張りつめた水(湛水)を、水尻等から一斉に排水する作業をいう。落水時

期は一般的には、穂が傾き終わった頃を標準とする。

・ ようりん

ク溶性リン酸約20 、ク溶性苦土約15 、アルカリ分約50 を含む弱アルカリ性を呈する塩基% % %性リン酸肥料である。

・ ケイカル(鉱さいケイ酸質肥料)

可溶性ケイ酸10 以上の他に、アルカリ分35 を保障するケイ酸質肥料である。% %・ ALC(軽量気泡コンクリート粉末肥料)

可溶性ケイ酸及びアルカリ分をそれぞれ15 以上含有する、多孔質ケイ酸カルシウム肥料で%ある。

・ ベントナイト

主要な成分は粘土鉱物の一種であるモンモリロナイトで、アルミニウムの板を上下から2枚の

ケイ酸の板で挟んだような構造をしているため、2:1型と呼ばれる。アルミニウム板とケイ

酸板の間に大量の水を吸水し、著しく膨潤する。その優れた吸水力のために砂質土壌など水分

を十分保持できない土壌の漏水防止に使われる。また、アルミニウム板中のアルミニウムがマ

Hグネシウムと入れ替わることにより生じるマイナス荷電は、永久荷電と呼ばれ、土壌のp

が変化しても荷電量は変わらない優れた性質を持っている。この荷電量のことを陽イオン交換

容量とも呼び、肥料成分の保持などに重要な役割を果たしている。また、ケイ酸成分の補給に

も有効である。このように、ベントナイトは、水分・肥料成分の保持能力の向上や有効成分の

補給など幅広く使われている土壌改良資材である。