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北海道開発土木研究所月報 №627 2005年8月 29
乳牛スラリー原液およびその発酵液の圃場散布に伴う窒素動態におよぼす散布条件の影響
Effects of Application Conditions on Movement of NitrogenCompounds after Application of Raw or Digested Cattle Slurry
横濱 充宏 * 中川 靖起 **
Mitsuhiro YOKOHAMA and Seiki NAKAGAWA
北海道開発土木研究所が運営するバイオガスプラントから採取した嫌気発酵消化液(以下、消化液)および乳牛スラリー原液(以下、原料スラリー)と後者を室内ファーメンターにより好気ないし嫌気発酵させた好気発酵消化液(以下、曝気液)および消化液を得た。これらを圃場散布し、窒素動態におよぼす散布条件の影響を調べた。その結果、以下のことが明らかとなった。①気温が高いほどスラリー散布後のアンモニア揮散は多くなった。②散布量およびスラリー中の固形分が多いほどスラリー散布後のアンモニア揮散は多くなった。③スラリーの水による希釈はスラリー散布後のアンモニア揮散を効果的に抑制し、3倍希釈で十分な効果が得られた。④溝切り散布法によるスラリー散布は農家慣行法に比べて遙かにアンモニア揮散量が少なく、約1/7であった。⑤アンモニア揮散を抑える散布適量は通常は3t/10a 以下であった。⑥大量散布、大希釈散布、溝切り散布といった、散布による窒素成分の下方浸透が懸念される散布条件下においても、散布による窒素成分の根圏下への移動は認められなかった。⑦肥料成分の不足分を化学肥料の補助施用によって補った場合、いずれの供試液(原料スラリー、曝気液、消化液)の施用も、化学肥料単用の場合と遜色ない牧草収量をもたらした。⑧3年の試験期間内では、いずれの供試液も、毎年の施用による連用効果は判然としなかった。《キーワード:乳牛スラリー、曝気液、消化液、アンモニア揮散、窒素》
The authors collected raw cattle slurry (raw slurry) and anaerobically-digested slurry from the biogas plants which were run by Civil Engineering Research Institute of Hokkaido and made aerobically and anaerobically digested slurries from the raw slurry on a laboratory level. And investigated the effects of application conditions on movemant of nitrogen compounds after application of the above-mentioned slurries. Conclusion was as follows:① The higer temperature was, the more ammonia emission after slurry applicaiton was.② The increase of application quantity and dry matter content brought acceleration of ammonia emission after slurry application.③ The dilution of applicated slurry effectively suppressed ammonia emisssion after slurry application. The treble dilution was enough to get the favorable effect. ④ The ammonia emission followed by the open-slot application method was considerably repressed and was seven-fold less than that followed by the ordinary one.⑤ The optimum applicaiton quantity to control ammonia emission was 3t/10a.⑥ No applicaiton condition which the authors tested caused nitrogen movement beyond root area.⑦ When the shorted nutritions were supplemented by the chemical fertilizer co-application, the applications of the tested three slurries (raw slurry, aerobically-digested slurry, and anaerobically-digested slurry) brought the same grass yield achieved by the single application of chemical fertilizer.⑧ No cumulative effect on the pasture yield seem to be generated by the repeated applications of tested slurries . 《Keywords:Cattle slurry, Aerobically-digested slurry, Anaerobically-digested slurry, Ammonia emission, Nitrogen》
報 文
30 北海道開発土木研究所月報 №627 2005年8月
1.はじめに
最近、北海道において乳牛スラリーを原料とした嫌気発酵(メタン発酵)プラントがいくつか稼働するようになり、乳牛スラリーの嫌気発酵消化液(以下、消化液)が液肥として草地に還元されるようになってきた。北海道においては、乳牛スラリーを発酵処理しない新鮮なスラリー(以下、原料スラリー)ないし曝気処理を行った好気発酵消化液(以下、曝気液)の形で草地還元している例も多い。このため、北海道において合理的な乳牛ふん尿の資源循環利用体系を確立するためには、これらの性状の差を明らかにし、それぞれの最適な圃場施用法を確立することが重要となる。しかし、これらの成分と施用による環境負荷の比較検討はほとんどなされていない。そこで、独立行政法人北海道開発土木研究所が2000 ~ 2004年度に実施した「積雪寒冷地における環境・資源循環プロジェクト研究」で使用した別海および湧別バイオガスプラントのうち、別海バイオガスプラントの受入槽から採取した同一の原料スラリーから室内ファーメンターにより曝気液および消化液を作成し、その成分を比較するとともに、これらを両バイオガスプラントの草地圃場に散布したときのアンモニア揮散および土壌中窒素成分の挙動と各種散布条件の関係を比較検討した。また、湧別バイオガスプラントの発酵槽から採取した消化液を用いて、各種散布法がアンモニア揮散および土壌中窒素成分の挙動におよぼす影響を調査した。
2.試験の概要
1)供試液の作成 後述の圃場散布試験のうち、散布適量決定試験、適正希釈率決定試験および連用試験の供試液は下記のように作成した。 別海バイオガスプラントのスラリー受入槽から採取した原料スラリー約80L を室内大型ファーメンターにより40日間、嫌気または好気発酵させて、消化液および曝気液を作成した。嫌気発酵では液温を36℃に保った。好気発酵では発酵期間中、樋元ら1)に従って液中に0.45Lmin-1DMkg-1になるように空気を通気し、液温が20℃以下にならないように温度管理を行った。また、採取した原料スラリーを20L容ポリタンクに室温で保存しておいたものを原料スラリーとして供試した。所定の発酵ないし静置期間を経過した後、すべての供試液を7℃の恒温槽内に圃場試験開始まで静置保存した。 圃場散布試験実施5日前に各供試液について下記の
分析を行った。 ① pH(H2O):ガラス電極法(試料:蒸留水=1:1)、②電気伝導度:電極法(試料:蒸留水=1:1)、③全固形分(TS):炉乾燥法(105℃)、④全窒素:ケールダール法・水蒸気蒸留法、⑤アンモニウム態窒素・硝酸態窒素:水蒸気蒸留法、⑥全燐酸:過塩素酸分解・アスコルビン酸還元法、⑦全カリウム:過塩素酸分解・原子吸光法。 後述の圃場散布試験のうち、散布法試験に限り、湧別バイオガスプラントの発酵槽から採取した消化液を用いて実験を行った。なお、この試験に用いた消化液の性状分析はしなかった。2)圃場散布試験の概要(1)散布適量決定試験 散布量の違いがアンモニア揮散および無機態窒素の下方浸透に及ぼす影響を解析するため、原料スラリー、曝気液および消化液の各供試液を散布量が1t/10a、3t/10a、5t/10a になるように試験区に散布し、散布後のアンモニア揮散および土壌中の無機態窒素の垂直分布を調査した。なお、試験区は各々、1㎡1区画とした。 試験は別海試験圃場では、2004年の春(5月)と1番刈り後(7月)の2回、湧別試験圃場では2004年の1番刈り後(8月)の1回行った。アンモニア揮散試験開始の前日に施用前の土壌試料の採取を行った。試料の採取は0~ 2.5、2.5 ~5、5~ 10、10 ~ 15、15~ 20cmの5層に分けて行った。 アンモニア揮散試験の実施当日は、各試験区に所定量の各供試液を散水栓を取り除いたじょうろを用いて手撒きした。散布後ただちにチャンバ-法により揮散アンモニアの捕集を行い、捕集液を水蒸気蒸留・滴定法により分析し、アンモニア揮散量を算出した。揮散試験は24時間行い、捕集液の交換は開始直後は1、2、3、5、7、10、24時間後に行った。 また、チャンバー内の結露による揮散アンモニア吸着の影響を補正するため、試験区の近傍に捕集装置を設置し、チャンバー枠内に0.25㎡のステンレスバットを地表面から10cmほど浮かせて設置し、原料スラリー試験区(1t/10a、3t/10a、5t/10a)の施用窒素と同量の窒素を含む硫酸アンモニウム溶液の所定量を注ぎ入れ、そこに、混合後の最終液量が1t/10a、3t/10a ないし5t/10a になるように、また、最終水酸化ナトリウム濃度が0.5molL-1となるように、所定の水酸化ナトリウム溶液を注ぎ入れて直ちにチャンバーを被せて揮散アンモニアのチャンバー内結露への捕集量を供試アンモニア量と回収アンモニア量の差により求めた。
北海道開発土木研究所月報 №627 2005年8月 31
また、アンモニア揮散試験終了後の各試験区において、施用後の土壌試料の採取を前述の手法と同様に行った(別海7月の試験時は採取せず)。 後日、採取した土壌試料の風乾細土を用いて、アンモニウム態窒素および硝酸態窒素の分析を10%塩化カリウム溶液抽出法・水蒸気蒸留法により行った。(2)適正希釈率決定試験 水による希釈がアンモニア揮散および無機態窒素の下方浸透に及ぼす影響を解析するため、原料スラリー、曝気液および消化液の各供試液の原液を3t/10a 散布した他、これらを水で3、5、7倍に希釈したものをそれぞれ9t/10a、15t/10a、21t/10a 散布し、散布後のアンモニア揮散および土壌中の無機態窒素の垂直分布を調査した。 試験は別海試験圃場では2004年の春(5月)の1回、湧別試験圃場では2004年の1番刈り後(8月)の1回行った。試験区の設定、土壌調査の方法、アンモニア揮散量測定の方法は前述の散布適量決定試験と同様である。(3) 散布法試験 海外では、日本でも広く慣行法として普及している、スプラッシュプレートを用いた表面散布の他に、帯状散布(Band spread)や溝切り散布(Open slot)も行われている。そこで、①溝切試験区(幅3cm、深さ4cmの溝を切り、そこに消化液を流し込む)、②帯状散布試験区(幅5cmの帯状に、地表面近くから散水栓を取ったじょうろで静かに散布)、③表面散布区(散水栓のついたじょうろで試験区全面均等に散布)を設け、散布法がアンモニア揮発および土壌中における窒素動態におよぼす影響を調べた。いずれの試験区においても、湧別資源循環試験施設の発酵槽から採取した消化液を散布量が3t/10aになるように散布した。 試験は湧別試験圃場で2004年の1番刈り後(8月)に1回行った。試験区の設定、土壌調査の方法、アンモニア揮散量測定の方法は前述の散布適量決定試験と同様である。(4)連用試験 原料スラリー、曝気液、消化液の連用が牧草収量におよぼす影響を調査するため、2002年よりこれらの供試液の連用試験を行った。a)試験区の設定 2002年より、別海資源循環試験施設のチモシー単播草地試験圃場(黒色火山性土)に下記の78区の試験区(各9㎡)を設けた。①化学肥料区:所定量の化学肥料を施用。
②原料スラリー区:所定量の化学肥料を散布後、所定量の原料スラリー原液を散布。③原料スラリー3倍希釈区:所定量の化学肥料を散布後、所定量の原料スラリー3倍希釈液を散布。④曝気液区:所定量の化学肥料を散布後、所定量の曝気液原液を散布。⑤曝気液3倍希釈区:所定量の化学肥料を散布後、所定量の曝気液3倍希釈液を散布。⑥消化液区:所定量の化学肥料を散布後、所定量の消化液原液を散布。⑦消化液3倍希釈区:所定量の化学肥料を散布後、所定量の消化液3倍希釈液を散布。
b)化学肥料および供試液の施用量の決定 施用すべきN ・ P ・ K 量は北海道農政部の北海道施肥標準2)に従って決定した。化学肥料区は硫酸アンモニアウム、過燐酸石灰、硫酸カリウムにより所要N ・ P ・ K量を補った。 各供試液の原液区は各供試液のN ・ P ・ K 分析値に北海道立農業・畜産試験場の家畜糞尿処理・利用の手引き3)に掲載された肥効率を乗じて各供試液の有効N ・ P ・ K 含有量を算出し、これらの成分のいずれもが北海道施肥標準2)に規定された施用量を超えないように、各供試液の散布量を決定した。各供試液散布前に供試液散布では不足するN ・ P ・ K 量を前述の化学肥料各種の所要量をあらかじめ施用することにより補った。 各供試液の3倍希釈液区は化学肥料による補充は原液と同様とし、各供試液の3倍希釈液の施用量は前述の手法により決定された各供試液の原液の施用量の3倍量とした。 施肥は北海道施肥標準2)に従い、春(5月)と1番刈り後(7月)の2回行い、春:1番刈り後=2:1の割合で分施した。各供試液の散布量は春(5月)が2t/10a、一番刈り後(7月)が1t/10a となった。c)収量調査の方法 収量調査は地元の刈り取り時期に合わせ、1番草は6月下旬、2番草は8月下旬に行い、各試験区3反復で、1㎡の範囲で牧草の採取を行い、供試した。
3.結果および考察
1)供試液の性状 供試した原料スラリー、曝気液および消化液の性状を表1に示す。消化液は原料スラリーに比べ、pHが高く、全固形分(TS)が少なく、全窒素(T-N)に占めるアンモニウム態窒素(NH4‒N)の割合が高かった。一方、
北海道開発土木研究所月報 №627 2005年8月 33
曝気液は2002年、2003年および2004年の別海試験圃場での5月の試験に供試したものは、原料スラリーに比べ、pHが高く、全固形分、全窒素およびアンモニウム態窒素が少なかったが、2004年の別海試験圃場での7月の試験および湧別試験圃場での8月の試験に供試したものは、原料スラリーに比べ全固形分および全窒素が多いという点で異なっていた。これは、発酵処理中に発熱により水分が蒸発したことによると思われる。2)各種要因が窒素動態に及ぼす影響a)気温 2003、2004年に実施した散布適量決定試験および連用試験におけるアンモニア揮散率(散布液中のアンモニウム態窒素に占める揮散アンモニアの割合)と試験開始日の日中(9~ 16時)平均気温との関係を図1
に示した。 原料スラリー、曝気液、消化液ともに、少量散布(1t/10a、2t/10a)では気温の影響は判然としないが、多量散布(3t/10a、5t/10a)では気温が高いほどアンモニア揮散率が上昇し、日中(9~ 16時)平均気温が25℃を上回る場合に特に顕著であった。 アンモニアの大量揮散による窒素肥料分の損失を防ぐには、3t/10a 以上の大量施用を気温の高い時期に避けることが肝要である。b)液の全固形分含量(TS) 2003、2004年に実施した散布適量決定試験および連用試験におけるアンモニア揮散率と供試液の全固形分含量の関係を図2に示した。 横濱ら4)は原料スラリー、曝気液および消化液では揮散特性が異なり、液面からの揮散や散布液の下方浸透の許されない土壌薄層上への散布後の揮散では、液の pHが高い程アンモニア揮散率が大きいのに対し、散布液の下方浸透が許される圃場散布では、pHがアンモニア揮散率に与える影響は小さく、液中の固形分が少なく、容易に土中へ浸透する液でアンモニア揮散率が小さいことを明らかにした。 今回の一連の試験においても、供試液散布後のアンモニア揮散率は、供試液の全固形分含量が多いほど高い傾向が顕著で、横濱ら4)の試験結果と同様の結果となった。 これらの結果から、散布時のアンモニア揮散による窒素肥料成分の損失を防ぐには、なるべく全固形分の少ない液状ふん尿ないしその発酵処理物を用いることが有利であることが判明した。通常、適切な発酵管理がなされた曝気液および消化液は原料スラリー中の有
機物が分解され、固形分が少なくなっている。したがって、原料スラリーの替わりに曝気液ないし消化液を液肥として利用することは、散布後のアンモニア揮散による窒素肥料成分の損失を防止することとなり、施肥上有利である。c)液の希釈 前述のように、散布液中の固形分の減少は散布後のアンモニア揮散を抑制するため、散布液の希釈は散布後のアンモニア揮散による窒素肥料成分の損失を防ぐ手段として有効である。しかし、希釈倍率が高くなればなるほど、散布労力は増大し、散布後の液の表面流失による肥料成分の損失ならびに流去水による水質汚濁をもたらす危険性が高くなる。したがって、十分にアンモニア揮散を抑制しうる最も小さい希釈倍率を求める必要がある。 各供試液の希釈倍率と散布後のアンモニア揮散率の関係を図3、4に示す。別海、湧別両試験圃場においても、3倍希釈で顕著なアンモニア揮散の抑制がみられ、5倍、7倍希釈と比べてもその効果は遜色なかった。したがって、適切な希釈倍率は3倍程度と結論できる。 また、散布液の希釈倍率と散布後の土壌中の窒素動態の関係を図5に示す。散布1日後の散布液由来の窒素の下方移動は、今回の試験において希釈倍率が最も大きく散布液量が最も多い7倍希釈区においても、深さ5cmまでにとどまっており、21t/10a という多量散布においても、散布液が下層まで達することはなかった。d)散布量 散布量が散布後のアンモニア揮散に及ぼす影響を図
6~8に示す。散布時の日中(9~ 16時)平均気温が25℃以下の別海試験圃場の5月ならびに湧別試験圃場の8月の試験では、5t/10a 散布であっても、アンモニア揮散率は10%前後に留まった。一方、30℃を超えた別海試験圃場の7月の試験では、3t/10a の散布では7~ 20%であったものの、5t/10a の散布では20~ 40%と揮散率が顕著に高まった。 以上の結果から、アンモニア揮散をあまり生じさせない1回当たりの散布適量は3t/10a 以下と推察された。 また、散布液量と散布後の土壌中の窒素動態の関係を図9に示す。散布1日後の散布液由来の窒素の下方移動は、最も散布量の多い5t/10a 散布区においても、深さ5cmまでにとどまっており、散布液が下方まで達することはなかった。
34 北海道開発土木研究所月報 №627 2005年8月
図2 散布液の全固形分含量(TS)がアンモニア揮散に及ぼす影響
図3 散布液の希釈がアンモニア揮散に及ぼす影響(別海5月)
図4 散布液の希釈がアンモニア揮散に及ぼす影響(湧別8月)
36 北海道開発土木研究所月報 №627 2005年8月
図6 散布量がアンモニア揮散に及ぼす影響(別海5月)
図7 散布量がアンモニア揮散に及ぼす影響(別海7月)
図8 散布量がアンモニア揮散に及ぼす影響(湧別8月)
北海道開発土木研究所月報 №627 2005年8月 39
図12 連用試験における1番草収量の推移(別海)
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
料肥
学化
ーリ
ラス
料原
液原
液気
曝液
原
液化
消液
原
ーリ
ラス
料原
液釈
希倍
3
液気
曝液
釈希
倍3
液化
消液
釈希
倍3
aht(
量収
物乾
1‑)
全草牧草雑草
2002年1番草
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
料肥
学化
-リ
ラス
料原
液原
液気
曝液
原
液化
消液
原
ーリ
ラス
料原
液釈
希倍
3
液気
曝液
釈希
倍3
液化
消液
釈希
倍3
aht (
重物
乾1‑)
全体牧草雑草
2003年1番草
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
料肥
学化
-リ
ラス
料原
液原
液気
曝液
原
液化
消液
原
ーリ
ラス
料原
液釈
希倍
3
液気
曝液
釈希
倍3
液化
消液
釈希
倍3
aht(
重物
乾1‑)
全体牧草雑草
2004年1番草
40 北海道開発土木研究所月報 №627 2005年8月
e)散布法 筆者らは、土壌と散布液との接触がアンモニア揮散を抑制し、大気との接触が逆に促進することを明らかにした4,5, 6)。今回試験した散布法のうち、農家慣行の表面散布法は、散布液を小水滴状に均等に圃状表面に散布するもので、大気と液との接触が最も大きくなるものである。帯状散布法は、液の散布領域を帯状の領域に限定することにより、液と大気との接触面積を限定しようとするもので、表面散布法よりは大気との接触面積が小さくなるが、後述の溝切散布法よりは接触面積が大きくなる。溝切散布法は専用の散布機械によって、一連作業で地表面に掘った溝に散布液を流入させていくもので、前述の2種の散布法に比べ、液と大気との接触が限定され、液と土壌との接触が積極的に図られる。 散布法が散布後のアンモニア揮散に及ぼす影響を図
10に示す。アンモニア揮散率は溝切散布<帯状散布<表面散布の順に小さく、大気と液との接触を抑制し、土壌と液との接触を積極的に図る散布手法の導入が散布後のアンモニア揮散による窒素肥料成分の損失を防止する上で重要であることが改めて明らかとなった。 散布法が散布後の土壌中の無機態窒素動態に及ぼす影響を図11に示す。溝切散布法では、地表面に溝を掘ってそこに散布液を注入する関係で、散布液が地中深くまで浸入することも考えられたが、調査した結果、他の散布法と同様、散布直後の散布液由来の無機態窒素の分布は深さ5cm以内に留まっており、溝切散布法の採用が肥料成分の下方浸透を助長し、地下水汚染等をもたらす危険性を高めることはなかった。3)連用が収量に及ぼす影響 2002年度から計3年間、原料スラリー、曝気液および消化液の連用試験を行い、牧草収量の変化を調査(図
12)してきたが、いずれの供試液も、不足分を化学肥料で補った場合、単年度の効果でみると、化学肥料区と同等の収量を上げている。しかし、どの供試液の散布区においても、年を追うごとに化学肥料区に比べて収量が増加するという現象は認められず、連用効果は判然としなかった。
4.おわりに
今回行った一連の試験は乳牛スラリーとその発酵処理物の液肥としての圃場還元において、散布条件が散布後のアンモニア揮散および土壌中の窒素動態におよぼす影響ならびにこれらの連用が牧草収量におよぼす影響を検討したものであるが、結論は下記のように要
約される。①気温が高いほど、散布液の固形分含量が多いほど、散布量が多いほど散布後のアンモニア揮散が助長され、窒素肥料成分の損失を招きやすい。②散布後のアンモニア揮散を抑制する有効な手法として、液の希釈および溝切散布法の採用が効果的であった。最適な希釈倍率は3倍程度である。③アンモニア揮散があまり生じない1回当たりの散布適量は3t/10a と推察される。④各供試液の原液の多量散布(5t/10a)、3t/10a に相当する原液の7倍希釈液の散布(21t/10a)、3t/10a に相当する消化液の溝切り散布といった極端な散布条件においても、散布液の下層への浸透は生じない。⑤原料スラリー、曝気液、消化液ともに、養分が不足する分を化学肥料で補うことにより、化学肥料を節減しながら化学肥料単用と遜色ない収量を上げることができるが、連用により収量が年を追って増加するような連用効果は判然としない。
5.参考文献
1)樋元淳一ら:液状家畜ふん尿の好気性発酵による堆肥化Ⅱ-最適曝気量と発熱量-,北海道大学農学部邦文紀要 ,15(3),266-271(1987).
2)北海道農政部:北海道施肥標準 , pp.60(1995).3)北海道立農業・畜産試験場家畜糞尿プロジェクト研究チ-ム:家畜糞尿処理・利用の手引き1999,pp.124(1999).
4)北海道開発土木研究所土壌保全研究室:平成14年度スラリー性状と施用に伴う検討調査報告書(北海道における国営土地改良事業に係る技術研究業務,肥培かんがい技術に関する検討),pp.10(2002).
5)北海道開発土木研究所土壌保全研究室:平成15年度スラリー性状と施用に伴う検討調査報告書(北海道における国営土地改良事業に係る技術研究業務,肥培かんがい技術に関する検討),pp.12(2003).
6)横濱充宏ら:乳牛スラリーおよびその発酵消化液の散布に伴う窒素動態,北海道開発土木研究所月報 ,No.579,4-9(2001).