22
固体で発光するマレイミド系 蛍光色素 大学院工芸科学研究科 物質工学部門 教授 建介 1

固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

固体で発光するマレイミド系蛍光色素

大学院工芸科学研究科 物質工学部門

教授 中 建介

1

Page 2: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

2

新規な凝集誘起発光性分子

新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

高濃度化が可能

本発明はアミノマレイミド分子で構成される炭素、窒素、酸素と水素からなる比較的単純な構造の凝集誘起発光性を示す有機化合物とその製造法を提供するものである。このとき、イミド側N−置換基およびアミン側の置換基を替えることで電子状態と立体効果によって発光波長を変えられることができる。これにより発光色を500nm付近の可視領域で精密制御可能となる。

概要

Page 3: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

通常の発光性分子

消光 凝集

凝集誘起発光性分子

凝集 消光

発光

溶液中では発光しないが、凝集により強く発光

凝集により消光

有機蛍光体

高濃度条件では濃度消光による大幅な輝度低下や、エキシマー形成による発光波長の長波長化を引き起こす。

溶剤やホスト材料(低分子・高分子など)へ分子レベルで均一分散させた希薄状態での利用が必須 高濃度化できない

比重が小さいことにより媒体への分散性が良いなどの利点から、色素レーザー、バイオイメージング、有機EL用発光色素、太陽電池用光波長変換材など幅広い分野での利用がなされている。

研究背景

3

Page 4: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

分子が積み重なると平面性が増大し、蛍光が飛躍的に増大する

ローダミン系色素

Chem. Commun., 2010, 46, 9013–9015

シロール系 炭化水素芳香族系 ヘテロ芳香族系

凝集(固体)状態では、プロペラ型のコンホメー ションをとり共役分岐の回転が抑制、またπ − スタッキングも起きないため、強く発光

凝集誘起発光性分子の例 ①

4

Page 5: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

Hsiu-Chih Yeh, Wei-Ching Wu and Chin-Ti Chen Chem. Commun., 2003, 404-405

Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry, Vol. 49, 3550–3558 (2011)

マレイミド系蛍光色素の例 例外を除いて濃度消光が起こる

アモルファス状態でも発光

Maleimide is an electron-deficient heterocyclic ring

立体および電子効果で様々な発光色を示す化合物

凝集誘起発光性は示さない

5

Page 6: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

300 400 500 600 700 300 400 500 600 700 300 400 500 600 700 300 400 500 600 700 300 400 500 600 700 300 400 500 600 700 300 400 500 600 700 300 400 500 600 700

480 nm 490 nm 500 nm 521 nm 505 nm 517 nm 520 nm λem=

新技術の基となる研究成果・技術

イミド側N−置換基およびアミン側の置

換基を替えることで電子状態と立体効果によって発光波長を変えられる

固体では発光を示す 溶液では発光しないが

発光スペクトル

励起スペクトル

イミド側とアミノ側の構造が異なるアミノマレイミド化合物

6

新規な凝集誘起発光性分子

Page 7: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

7

THF溶液に水を加える 発光強度飛躍的に増大

凝集誘起発光性 新技術の基となる研究成果・技術 新規な凝集誘起発光性分子

Page 8: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

HOMO-LUMOエネルギー準位

Page 9: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

平面性増大

発光性アミノマレイミド化合物の特徴

凝集(固体)状態では、アミノ基の回転が抑制され平面性が増大するとともに、イミドのN−置換基のねじれによるπ − スタッキング抑制ため、強く発光

アミノ基

イミドのN−置換基

π−スタッキング抑制

炭素、窒素、酸素と水素からなる比較的単純な構造の凝集誘起発光性を示す有機化合物

Page 10: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

10

aqueous/THF (67%) solution

addition of 35% HCl aqueous solution (0.1 mL)

酸を加えると発光強度が減少

平面性消失

HX

pH刺激応答性

Page 11: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

300 400 500 600 700 300 400 500 600 700

129.2(1) 129.8(4)

300 400 500 600 700

521 nm 505 nm 発光スペクトル

励起スペクトル

Page 12: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

12

493 nm 505 nm 497 nm

結晶 凝集 EVA中

EVA(ポリエチレンー酢酸ビニル共重合体)に本化合物を封入

発光波長環境応答性

Page 13: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

J. Org. Chem., 35, 3138 (1970)

J. Org. Chem., 40, 423 (1975)

J. Heteocyclic Chem., 25, 1777 (1988)

これまでのアミノマレイミド誘導体合成例

イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成は困難

13

Page 14: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

14

これまでのアミノマレイミド誘導体合成例

Journal of Chemical Research, Synopses (1992), (7), 208.

Journal fuer Praktische Chemie (Leipzig) (1974), 316(1), 113-18.

公開特許 昭53-32119 Chemistry of Heterocyclic Compounds (2008), 44(5), 523-529.

Chemistry of Heterocyclic Compounds (2007), 43(7), 844-849.

Journal of Chemical Research, Synopses (1995), (1), 14-15. Journal of Chemical Crystallography,34(9), 621-625; 2004

European Journal of Organic Chemistry, (7), 1467-1470; 1998

合成例無し

いずれも生理活性物質として合成された

その他のアミノマレイミド誘導体

Page 15: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

有機ヒ素化合物を中間体とするアミノマレイミド化合物の製造

ルート1

ルート2

新技術の基となる研究成果・技術 その2

Arita, M.; Naka, K.; Morisaki, Y.; Nakahashi, A.; Chujo, Y. Organometallics, 28(20), 6109–6113 (2009)

Naka, K.; Arita, M.; Shimamoto, T.; Morisaki, Y.; Chujo, Y. Polym. J., 43(4), 358-363 (2011).

第30回無機高分子研究討論会 (2011)

新技術

15

Page 16: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

16

新技術の基となる研究成果・技術 その2

J. Org. Chem., 35, 3138 (1970)

従来の合成法

有機ヒ素中間体を経由しない合成ルート

改良合成法

Page 17: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

17

置換基の種類によってその電子効果や立体効果により発光色を可視領域で精密制御可能な新規有機蛍光体

炭素、窒素、酸素と水素からなる比較的単純な構造な新規有機蛍光体

これまでの有機蛍光体の高濃度条件では濃度消光するという問題点を克服するとともに、凝集誘起発光性を示す新規有機蛍光体

新規な凝集誘起発光性分子 ☆

新技術の特徴

Page 18: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

想定される用途 太陽電池用光波長変換材への応用

シリコン結晶系太陽電池では、太陽光のうち400nmよりも短波長、1200nmよりも長波長の光が有効に利用されず、太陽光エネルギーのうち約56%がこのスペクトルミスマッチにより太陽光発電に寄与しない。本発明は、濃度消光を抑制し、波長変換し、効率よく且つ安定的に太陽光を利用することができる。

太陽電池の封止材のEVA(ポリエチレンー酢酸ビニル共重合体)に 本発明化合物を封入

強い発光を確認 透明膜形成を確認

18

493 nm 505 nm 497 nm

結晶

凝集

EVA中

農業用シート(農園芸波長変換被覆資材)

標識・表示板・安全グッズ

植物の光合成に利用されない波長の光を光合成に必要な吸収波長域に変換して植物の成長を促進させる。

眼に見えない紫外光を可視光の発光に変換することで悪天候条件でも発光する。

Page 19: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

想定される用途

pHセンサー、金属センサー、圧力センサー等への刺激応答性材料への応用

平面性消失 角度変化

19

addition of 35% HCl aqueous solution (0.1 mL)

Page 20: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

固体で発光するマレイミド系蛍光色素

新規な凝集誘起発光性分子

新規な製造方法

イミド側とアミノ側の構造が異なる化合物の合成が可能

高濃度化が可能

炭素、窒素、酸素と水素からなる比較的単純な構造の凝集誘起発光性を示す有機化合物

pH刺激応答性

様々な発光色を示す化合物

☞ ☞

有機ヒ素化合物を中間体とするアミノマレイミド化合物の製造

20

Page 21: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :蛍光体およびその利用 • 出願番号 :特願2012-027776 • 出願人 :京都工芸繊維大学 • 発明者 :中 建介

Page 22: 固体で発光するマレイミド系 蛍光色素2 新規な凝集誘起発光性分子 新規な製造方法 イミド側とアミノ側の構造が異なる 化合物の合成が可能

お問い合わせ先

京都工芸繊維大学

創造連携センター特任教授 行場 吉成

TEL 075-724-7934

FAX 075-724-7934

e-mail [email protected]