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図-2 試行箇所
③構造物(計画)の3次元モデル
①地形(現況)の3次元モデル
・地形(現況)の3次元形状データ
②堤防(計画)の3次元モデル
・堤防(計画)の3次元形状データ
①+②+③⇒改修計画の3次元モデル
・地形(現況)の3次元形状データ+
・堤防(計画)の3次元形状データ
改修計画の3次元形状データ
本試行
図-1 本試行における3次元モデルの定義
CIMにおける地上レーザ計測により取得した
地形3次元データの活用について
塚原 大輔1・岡崎 仁司2
1千曲川河川事務所 調査課(〒380-0903 長野県長野市鶴賀字峰村74)
2前)千曲川河川事務所 調査課(〒380-0903 長野県長野市鶴賀字峰村74).
本稿は,CIM モデル構築のため必要となる地形 3 次元データについて,地上レーザ計測にて
取得し,地形 3 次元データ作成までの処理方法と,TS 測量成果を用いた従来設計との現況地
形・設計形状並びに数量算出の比較について,内容と結果を報告するものである.
キーワード CIM,地形3次元データ,地上レーザ計測
1.はじめに
CIM(Construction Information Modeling/Management)は,
ICTを駆使して公共事業における計画・設計・施工・維
持管理の過程を3次元モデルで構築し,建設生産システ
ムの効率化を目的としている1).
国土交通省では,CIM制度検討の中期目標(H24-H28)
である『CIM 導入ガイドラインの策定』に向けて,全国
の直轄事業の異なる5案件について,産学官の検討体制
を構築し,CIMの導入効果を一段と高めるべく,CIMモデ
ル構築を通じた課題抽出とその対応策,有効性の検証
等々の検討を行っている.5案件のうち河川事業の試行
として選定された「荻原築堤護岸他工事」は,当事務所
のCIM試行事業であり,“新たな河川管理(築堤事業)の
方向性”を個別目標として検討を行っている.これに準
じて,平成26年度より実施している屋島・福島築堤事業
の堤防詳細設計においてもCIMの取り組みを行った.
屋島・福島築堤事業のCIMモデル構築に当たっては,
地形(現況)の3次元モデル及び堤防(計画)の3次元モデ
ルをそれぞれ作成・統合することで改修計画の3次元モ
デルを構築することとした(図-1).
本稿は,堤防詳細設計におけるCIM適用性を検証する
ことを目的とし,3次元モデル構築前の改修計画の3次元
形状データと,従来のTS測量成果を用いた従来設計デー
タについて,現況地形・設計形状並びに数量算出の比較
を行い,整理したものである.
2.レーザ計測によるデータの取得
(1)CIM試行箇所の概要
一級河川信濃川水系千曲川60.00km~62.25km左右岸の
屋島・福島地区(左岸:長野市大字屋島地先,右岸:須
坂市大字福島地先)の約2.5km区間(図-2)における築堤
設計についてCIMを試行した.
まず現地測量として,地上レーザ計測にて地形(現況)
の3次元形状データを取得し,別途作成した堤防(計画)
の3次元形状データを重ねて,改修計画の3次元形状デー
タの構築を行った.また,比較検証を行うため従来のTS
測量も同時に実施した.
屋島橋
村山
橋
60.0
k
61.0
k
62.0
k
屋島築堤
福島築堤
長野市
須坂市
(2)レーザ計測
地形(現況)の3次元形状データの作成に当たっては,
国土地理院で公開している数値標高モデル(5mメッシュ
の地形データ)や,既存のDM(デジタルマッピング)等の
データを利用することによって比較的簡単に作成するこ
とが出来るが,本試行においては,点群データの取得か
ら3次元形状データの作成までの一連の適用性を把握す
るため,新たにレーザ計測を実施した.
レーザ計測の方法としては,航空機搭載型,車両搭載
型,地上型に区分される1).屋島・福島地区の地形(現
況)の3次元形状データ取得に関しては,経済性,精度的
観点,作業性等を考慮し,地上レーザ計測で行った.
(3)地上レーザ計測
地上レーザ計測では,トプコンGLS-1500を使用した.
条件・設定は,表-1に示す.作業は,最初に基準点に計
測機を据え,計測機から1秒間に約30,000回のレーザを
照射し,地物に反射し計測機まで戻ってくる時間を計測
した.計測した点データをx・y・zの座標値に換算し
記録した.今回の計測は,堤防法線沿いに約50m間隔を
基本に計測を行い,地形の突起・構造物の影等でレーザ
が到達しない範囲については,計測漏れがないよう機器
を密に配置して計測を行った.また,計測と同時にデジ
タル画像を撮影することで,座標点群に色データを付与
し,後に行うフィルタリング作業の参考とした.
現地でのレーザ計測には以下の点にも注意した.
・堤防に繁茂する草の影響を軽減するため,堤防除草
後に計測を行った.
・地表に水分がある場合や,舗装面などの滑面へのレ
ーザ光の低入射角の場合は,点群データが取得されな
いことがあるため,天候変化による現地状況及びレー
ザの入射角等を十分に検討・確認し計測した.
(4)取得データの処理
地上レーザ計測によって取得した地形(現況)の3次元
形状データ(オリジナルデータ)においては(図-3),樹
木や草などの植生,構造物,人,車,粉じん等に起因す
る乱反射などを含むデータ(ノイズ)も取得されるため
(図-4),そのまま使用した場合には現地形を適切に表現
できないため,取得したオリジナルデータからノイズを
除去する“フィルタリング作業”を以下の手順で実施し
た.
◯フィルタリング作業方法
作業① 取得したオリジナルデータ(左岸側で約9,400万
点)をLandFormsの電算処理によって,10cm四方にある
点群データから一番低いデータ(グラウンドデータ)以
外の点データを除去する(除去後 約960万点).
作業② レーザ計測時に撮影したデジタル画像を参考
に,画面上の地表から浮き出る点データを特定し,手
動により削除する.
作業③ 作業②と平行して,地表面から浮き出る点デ
ータを,三角形の集合体で表現するTIN(Triangulated
Irregular Network)化によって特定し(図-5),手動に
より削除する.
作業④ ノイズ除去後の点群データが,地表面として
判定できるかをTINによる三角網を組み,異常な形状
となっていないかを確認出来るまで手動フィルタリン
グ作業②,③の工程を繰り返し,グラウンドデータを
作成(除去後98万点)する(図-6).
作業⑤ 地上レーザ計測で,正確なデータ取得が困難
な範囲(樹木密集帯等)について,TS測量により取得
したデータを合成(内挿)し補間する.
作業⑥ データ密度が不均一な点群データを,目的に
応じた密度間隔のメッシュ(25cm格子点)データに処理
し,地表面を表現した数値標高モデル(DEM:Digital
Elevation Model)として利用する(図-7).
表-1 地上レーザ計測の仕様等
写真-1 計測状況 写真-2 計測の説明会
図-3 取得した地形(現況)の 3次元形状データ(オリジ
ナルデータ)
植生
車両
浮点住宅
図-4 不必要である点群
図-6 グラウンドデータ 図-7 25cmメッシュデータ
図-5 点群データのTIN化
法肩
法肩 法尻
屋島No20 付近(堤内側) ノイズの明確化
屋島No20 付近(堤内側)
項目 仕様・条件・設定
使用機器 測量機器:TOPCON製GLS-1500
スキャニングスピード 30,000点/秒
機器配置基準 地図情報レベル500に準拠
従来設計 改修計画の3次元形状データ
図-10 現況地形と擦り付け部の相違点
擦り付け部の形状が異なる
従来設計 改修計画の3次元形状データ
3.結果と考察
(1)地上レーザ計測成果の,ノイズ除去レベルが異なる
地形(現況)の3次元形状データの比較
計測により得られたオリジナルデータについて,適切
なノイズ処理を実施することにより,TS測量による横断
と同程度の精度を得ることが出来た.ノイズ除去の段階
毎の地形の3次元形状データを比較してみると,処理に
時間を要するケースⅢが最も精度が良く,ケースⅠが最
も精度が悪かった.時間・作業量はかかるが,地形(現
況)の3次元形状データを構築するためには,細部まで手
動フィルタリング作業を行う必要がある.
(2)改修計画の3次元形状データと,従来設計との取付部
の比較
◯改修計画の3次元形状データの作成
・設計ソフト(AutoCAD Civil3D 2015)を使用.
・計画堤防法線・計画縦断を設定し,計画横断の諸元を
入力することによって,計画断面を一定間隔(本試行で
は1m間隔)で縦断方向に押し出し,堤防(計画)の3次元
形状データを作成した.
・地形(現況)の3次元形状データと合成し,改修計画の3
次元形状データを作成した(図-9).
改修計画の3次元形状データと,従来設計との取付部
の比較した結果,法尻形状が異なる箇所が確認された
(図-10).これは,従来設計では 20m ピッチの横断図を
基に設計を行うため,測線間の地形の起伏を詳細に把握
することが出来ない一方,3 次元モデル設計では,現況
地形を連続的(3 次元的)に把握可能なためと考えられ
る.
(3)改修計画の3次元形状データによる数量算出と,従来
の平均断面法による数量算出の比較
№95~№100までの延長100mを対象に(図-11),従来設
計から平均断面法を用いて算出した盛土数量と,オリジ
計画堤防法線の諸元を設定
計画横断の諸元を設定
図-9 改修計画の3次元形状データ
屋島No25 付近(堤外側)
表-2 本試行における作業日数・時間
実施日 延べ作業時間
測量 地上レーザ計測及びデータ整理 レーザ計測及びデータを統合H26.9.6~H26.9.30
(内8日間)8日
オリジナルデータの電算処理 作業① H26.9.6~H26.9.30 24時間
作業② H26.10.1~H27.1.22 240時間
作業③ H27.1.22~H27.1.27 84時間
地形データ未取得箇所の補間 作業⑤ H27.1.28 8時間
メッシュデータ作成 作業⑥ H27.1.28 5時間
所要時間 (参考)
電算処理後データの手動ノイズ除去
行 程
フ
ィルタリング作業
概 要
左岸:屋島地区
ケースⅠ オリジナルデータ
ケースⅡ 電算処理後
ケースⅢ 電算処理後+手動除去後
9mm
41mm
不明
12mm
19mm
25mm
オリジナルデータ
電算処理後
電算処理+手動除去後
従来TS測量線
TS測量により測定した折点(法肩)
TS測量により測定した折点(法尻)
川表法面
川表法面
川表法面
(異差)
横断図 (屋島No25)
従来TS測量線
従来TS測量線
従来TS測量線
図-8 断面比較図
写真-3 現況堤防状況(除草前)
屋島No25 付近(堤外側)
HWL
0.750
0.500
7.000
6.000 0.500
1:2.7
0.750
302
405
406
407
410
411
412
413
414
408
409
NO.12
NO.13
NO.14
NO.15
NO.16
NO.17
NO .18
N O.19
NO. 20
N O.21
NO.2 2
N O.23
NO.2 4
NO .25
NO.26
NO.27
NO.2 8
NO.29
NO.30
NO.31
EC- NO.17+8.722 R=250.000 L =82.520
NO.17+8.722 R=∞ L=21.603
N O.18+10.325 R=∞ L =21.603
BC- NO.18+10.325 R =500.000 L =28.396
EC- NO.19+18.721 R
=500 .000 L=28 .396
NO.19+18.721 R=∞
L=96.801
NO .24+15 .522 R=∞ L=96 .801
BC- NO.24+15 .522 R=110 .000 L=72 .957EC- NO.28+8.479 R=110.000 L=72.957
NO.28+8.479 R=∞ L=13.359
NO.29+1.839 R=∞ L=13.359BC- NO.29+1.839 R=188.286 L=138.771
NO.12+0.000
NO.13+0.000NO.13+6.202
NO.14+0.000
NO.15+0.000NO.15+7.462
NO.16+0.000
NO.17+0.000NO. 17+8 .72 2NO .18+0 .00 0N O.18 +10 .325NO .19+0 .000
N O.19+4 .523
NO.19 +18.72 1
NO.20+0 .000
NO .21+0.00 0
NO.22+0 .000
NO .23+0.00 0
NO.24+0 .000
N O.24+15 .5 22
NO .25+0 .000NO.26+0.000NO.26+12.001NO.27+0.000
NO.28+0.000
NO.28+8.479
NO.29+0.000NO.29+1.839
NO.30+0.000
NO.31+0.000
ナルデータのノイズ除去段階毎に作成した改修計画の3
次元形状データから,AutoCAD Civil 3D 2015 を用いて
算出した盛土数量の比較を行った.
従来のTS測量で得られた20mピッチの横断図を元に設計
を行い,平均断面法にて算出した盛土量は,8,215m3と
なった(表-3).これに対し,堤防改修の3次元形状デー
タより算出したノイズ除去前のケースⅠは7,540m3(平均
断面法との差-675m3),電算処理による簡易ノイズ除去
後のケースⅡは7,681m3(平均断面法との差-534m3),電算
処理後及び手動によるノイズ除去後のケースⅢは
8,008m3(平均断面法との差-207m3)となった.この結果か
ら,盛土量の数量算出に当たり,オリジナルデータのノ
イズ処理状況(フィルタリング作業状況)によって,従
来の平均断面法との差異が変化し,時間をかけノイズ処
理を十分に行う事によって差異は小さくなることが分か
った.
また,改修計画の3次元形状データより算出した盛土
量が,従来の平均断面法から算出した盛土量より全体的
に小さな値を示した.これは,レーザ計測によって取得
した現地盤高は,従来のTS測量よりも高い傾向にあるこ
とが考えられ,実際に比較した断面からも,そのことが
確認出来た.これらから,堤防法面が凸状に盛り上がっ
ており,より現況地形を反映した数量算出が行えること
が分かる.
4.まとめ
今回実施した地上レーザ計測で構築した改修計画の3
次元形状データに関して,オリジナルデータ,簡易電算
処理によるノイズ除去,簡易電算処理及び手動によるノ
イズ除去の3段階で従来測量と比較した結果,細部まで
フィルタリング作業を行うことで,地形(現況)の3次
元形状データと従来測量との差異は小さくなることが分
かった.また,盛土量も,上記で作成したデータを使用
して算出するため同様の結果となる.しかしながら,細
部までフィルタリング作業を行うことによって,今回の
試行では(表-2)で示すとおりの時間を要した.また,フ
ィルタリング作業に従事する作業実施者に関しても,資
格・講習等の義務はないため,従事者の技能によって品
質・作業時間等に影響することが考えられる.
設計においては,従来設計では横断測線間の地形が十
分に把握できず,限られた情報を元に設計形状の設定が
行われるため,設計者の技量に左右されることが考えら
れるが,3次元設計では地上レーザ計測で取得した地形
(現況)の3次元データを使用して行うため,現況地形
と計画堤防の擦りつけをより精度よく反映した設計形状
とすることが可能となった.
5.おわりに
今回,地形(現況)の3次元形状データを使用して実施
した,平成26年度屋島・福島地区堤防等詳細設計業務に
おいては,道路管理者及び地元協議を行うに当たって,
バイパス計画や将来交通量推計等による,兼用道路の計
画交通量や舗装構成に変更が生じたため,当初設定した
法線が複数回変更となった.従来設計では,横断測量を
法線に対して直角に実施していることから,法線が変更
となった場合は,新たに横断測量を行うか,既存横断面
を補正して用いる等の作業が生じ,時間及び労力を費や
していたが,3次元地形データを使用することで,簡便
に設計の修正を行うことが出来た.
CIM全体の評価については維持管理の分野もあること
から,導入に長期間の検証が必要であると考えられるが,
本試行において実施した地形の3次元データ作成のため
のレーザ計測及び堤防等詳細設計への適用に関して,十
分に対応が可能と考えられる.今後は,フィルタリング
作業の基準確立や,ソフトウェアによる自動ノイズ処理
機能の改善が望まれる.
謝辞:本論文の作成にあたり,ご協力いただいた関係
各位に謝意を表す.
参考文献
1) CIM技術検討会 平成25年度報告 (平成26年5月)
表-3 盛土数量の比較
No95~ No96~ No97~ No98~ No99~No96 No97 No98 No99 No100
ケースⅠ 盛土量 1,441 1,523 1,585 1,580 1,411 7,540 7,500従来差 -142 -93 -66 -92 -282 -675 -700従来比 (0.910) (0.942) (0.960) (0.945) (0.833) (0.918) (0.915)
ケースⅡ 盛土量 1,450 1,531 1,602 1,596 1,502 7,681 7,700従来差 -133 -85 -49 -76 -191 -534 -500従来比 (0.916) (0.947) (0.970) (0.955) (0.887) (0.935) (0.939)
ケースⅢ 盛土量 1,534 1,574 1,626 1,626 1,648 8,008 8,000従来差 -49 -42 -25 -46 -45 -207 -200従来比 (0.969) (0.974) (0.985) (0.972) (0.973) (0.975) (0.976)
注) ( )内は従来測量を1.000とした場合の比である
単位:m3
Auto CAD Civil3D 2015 により機械的に算出
ノイズ除去前
電算処理による簡易ノイズ除去後
電算処理後及び手動ノイズ除去後
8,215
設計表示数量
従来測量(TS測量)
平均断面法 盛土量 1,583 1,616 1,651 1,672 1,693 8,200
測量方法 算出方法 区分
測点
合計数量
図-11 数量算出範囲
数量算出範囲 L=100m
No100No95
従来平面
改修計画の3次元形状データ
No100
No95