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この面を表にして教室に掲示してください 取材・文/伊藤敬太郎 撮影/田中史彦 イラスト/桔川 伸 翻訳会社の窓口として企業などの依 頼主に対応し、翻訳者に発注する仕 事。文体や専門用語の訳し方などを 依頼主と相談し、内容に合った翻訳 者を選ぶ。予算やスケジュールの管 理も行う。一定の語学力があるとプラ ス。通訳会社にも同様の職種あり。 翻訳コーディネーター 劇場用映画、テレビ番組、DVDなど の映像メディアの翻訳を行う。ドラマ だけでなく、ニュース、スポーツ番組な どジャンルは多様。字幕翻訳、吹替 翻訳などがある。1秒あたりの文字数 制限があるなど、出版・産業翻訳とは 違うテクニックも必要。 映像翻訳者 スマホやパソコンで使う翻訳・通訳ア プリ(ソフト)の開発者。最近は文書 を撮影するだけで翻訳できるアプリも 登場するなど技術は進化中。今後は 人工知能の発達で、どこまで人によ る翻訳・通訳と変わらないレベルに 近付いていけるかがカギに。 翻訳・通訳アプリ開発者 大学・短大・専門学校で語学を教え る教員。英語のニーズが高いが、中 国語、フランス語、ドイツ語などを教え る日本人の講師も。講師として採用 されるには、ネイティブに近い会話力 や修士の学位、留学経験などが求め られることが多い。 語学講師 言語の成り立ちや特徴などを科学的 に研究する仕事。大学の文学部、言 語学系の研究機関などで研究や教 育に携わる。複数の言語を比較して 共通点や違いを探る比較言語学、 言語の歴史的な変化を研究する歴 史言語学など研究分野は多様。 言語学者 海外の雑誌や書籍などを翻訳する 仕事。ファッション誌や小説などの一 般読者向けのものから、専門誌・専 門書までジャンルは幅広い。小説や 論文は日本語の外国語訳もあるが、 比率としては外国語を日本語に訳す ことが多く、日本語の文章力も重要。 出版翻訳者 中学校や高校で英語を教える先生。 大学の英語系学科で教職課程を履 修して卒業すれば中学校・高校教諭 の一種免許状(外国語〈 英語 〉)が 取得できる。短大では中学校教諭二 種が取得可能。公立学校の場合は、 教員採用試験に合格する必要あり。 英語教諭 契約書、製品マニュアル、特許・新薬 の申請用書類などビジネス関連の翻 訳を行う。特許翻訳、医薬翻訳、金 融翻訳など専門分野はさらに細分化 されている。出版・映像と比べて仕事 の数は圧倒的に多い。大学で学んだ 理系の知識なども武器になる。 産業翻訳者 現在、小学校5、6年で外国語活動 が行われており、2020 年には英語 が教科化。同時に3、4年で外国語 活動が始まる。外国語活動は担任 や外国人のALTが担当することが多 いが、外部の日本人講師も活躍。小 学校英語指導者という資格もある。 小学校英語講師 街の英会話スクールで英会話を教え る仕事。教える対象は子どもからビジ ネスパーソンまで幅広い。スクールに もよるが、一般的に英検準1級以上、 TOEIC®テスト850点以上程度の 英語力が求められる。留学経験など も問われることが多い。 英会話スクール講師 商談やプレゼンテーションなどのビジ ネスシーンで活躍する通訳。ある程度 まとまった発言をひととおり聞いてか ら翻訳する逐次通訳が一般的。社 内に通訳者を置くケースもあるが、フ リーの通訳者が必要なときだけ通訳 会社から派遣されることが多い。 ビジネス通訳者 国際会議やシンポジウムなどで、出席 者や講演者の話を通訳する仕事。専 用のブースで話し手の発言を聞き取 り、同時通訳でイヤホンを通して多く の出席者に伝える。同時通訳は高度 な語学力と通訳技術が求められるた め、通訳のなかでも難易度が高い。 会議通訳者 観光やビジネスで来日した外国人に 付き添い、旅行先や訪問先を外国語 で案内する。旅行会社や通訳会社 に登録して依頼を受けるケースが多 い。国家資格の通訳案内士取得が 必須。試験は英語、中国語、韓国語 など10カ国語で受験できる。 通訳ガイド 日本語をうまく話せない外国人が病 院または警察・裁判所などでコミュニ ケーションするのをサポート。医療や 法律の専門用語の知識も必要だ。 英語だけでなく、ポルトガル語や中国 語のニーズも高い。通訳会社などに 登録して仕事を得るのが一般的。 コミュニティ通訳者 国内外の日本語学校などで外国人 に日本語を教える仕事。教員免許の ように必須の資格はないが、4 年制 大学で日本語教育に関する専攻を 修了していること、日本語教育能力 検定試験に合格していることなどが 採用条件になっていることが多い。 日本語教師 出版社などで語学の教科書や参考 書、教材を企画し、作る仕事。専門家 に執筆や監修を依頼するので、語学 力は必須ではないが、あればもちろん プラス。TOEIC® テストなどの検定 対策の参考書や子ども向けの英語 学習本などが多数出版されている。 語学教材編集者 α8 1 30 1 19 退職種 PICK UP!! 使グローバル化が進み 翻訳ニーズなどが拡大 海外に工場や支社を作ったり、海外で商品を 販売したりする企業は年々増えており、商品のマ ニュアルや海外工場の研修用プログラムなどの 翻訳ニーズは拡大傾向。通訳に関しては、外国 人労働者の増加で今後注目されるのはコミュニ ティ通訳。いずれも、アジア系言語など英語以外 の言語はまだ人材も少なく、期待大の領域だ。 学校でもビジネスシーンでも語学教育の重 要度が高まっており、TOEIC® テストや英検な どの語学検定がブーム。教材や対策講座など の関連ビジネスも盛り上がっている。 最新の業界事情 埼玉県立川越高校、上智大学外国語学部英語 学科卒業。旅行会社に就職し、4年弱勤務。27 歳で翻訳センターに転職し、4年間翻訳コーディネ ーターとして働いた後、語学力が評価され翻訳者 兼チェッカーに。現在は特許関連の翻訳を扱う特 許営業部の品質管理責任者。 株式会社翻訳センター 特許営業部 東京オフィス(制作担当) マネージャ 川島悠一さん (38歳) 産業翻訳者 グローバル時代の人や技術の交流を支える 企業活動や人の交流がどんどんグローバル化していくなかで、その役割がより重要になっ ている「語学」のスペシャリスト。英語はもちろん、中国語、韓国語、フランス語など様々な 言語にニーズがあり、最近では東南アジアの言語なども注目されている。「翻訳する」「通 訳する」 「教える」の3つの切り口から、それぞれどんな仕事があるのかを解説しよう。 アジア系の言語などもニーズあり! 活躍の場が広がる“語学の専門家” 発注 発注 登録 登録 登録 通訳会社 一般企業 翻訳会社 翻訳する 通訳する 教える 大学など アプリ 開発会社 小学校 中学校・ 高校 出版社 語学学校・ スクール 日本語学校 登録 登録 登録 登録 仕事がわかる! 業界 図鑑

業界 活躍の場が広がる“語学の専門家” 図鑑souken.shingakunet.com/career_g/2016/class/2016_ccvol33_02.pdf · 大学・短大・専門学校で語学を教え る教員。英語のニーズが高いが、中

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Page 1: 業界 活躍の場が広がる“語学の専門家” 図鑑souken.shingakunet.com/career_g/2016/class/2016_ccvol33_02.pdf · 大学・短大・専門学校で語学を教え る教員。英語のニーズが高いが、中

この面を表にして教室に掲示してください

取材・文/伊藤敬太郎 撮影/田中史彦 イラスト/桔川 伸

翻訳会社の窓口として企業などの依頼主に対応し、翻訳者に発注する仕事。文体や専門用語の訳し方などを依頼主と相談し、内容に合った翻訳者を選ぶ。予算やスケジュールの管理も行う。一定の語学力があるとプラス。通訳会社にも同様の職種あり。

翻訳コーディネーター

劇場用映画、テレビ番組、DVDなどの映像メディアの翻訳を行う。ドラマだけでなく、ニュース、スポーツ番組などジャンルは多様。字幕翻訳、吹替翻訳などがある。1秒あたりの文字数制限があるなど、出版・産業翻訳とは違うテクニックも必要。

映像翻訳者

スマホやパソコンで使う翻訳・通訳アプリ(ソフト)の開発者。最近は文書を撮影するだけで翻訳できるアプリも登場するなど技術は進化中。今後は人工知能の発達で、どこまで人による翻訳・通訳と変わらないレベルに近付いていけるかがカギに。

翻訳・通訳アプリ開発者

大学・短大・専門学校で語学を教える教員。英語のニーズが高いが、中国語、フランス語、ドイツ語などを教える日本人の講師も。講師として採用されるには、ネイティブに近い会話力や修士の学位、留学経験などが求められることが多い。

語学講師

言語の成り立ちや特徴などを科学的に研究する仕事。大学の文学部、言語学系の研究機関などで研究や教育に携わる。複数の言語を比較して共通点や違いを探る比較言語学、言語の歴史的な変化を研究する歴史言語学など研究分野は多様。

言語学者

海外の雑誌や書籍などを翻訳する仕事。ファッション誌や小説などの一般読者向けのものから、専門誌・専門書までジャンルは幅広い。小説や論文は日本語の外国語訳もあるが、比率としては外国語を日本語に訳すことが多く、日本語の文章力も重要。

出版翻訳者

中学校や高校で英語を教える先生。大学の英語系学科で教職課程を履修して卒業すれば中学校・高校教諭の一種免許状(外国語〈英語〉)が取得できる。短大では中学校教諭二種が取得可能。公立学校の場合は、教員採用試験に合格する必要あり。

英語教諭

契約書、製品マニュアル、特許・新薬の申請用書類などビジネス関連の翻訳を行う。特許翻訳、医薬翻訳、金融翻訳など専門分野はさらに細分化されている。出版・映像と比べて仕事の数は圧倒的に多い。大学で学んだ理系の知識なども武器になる。

産業翻訳者

現在、小学校5、6年で外国語活動が行われており、2020年には英語が教科化。同時に3、4年で外国語活動が始まる。外国語活動は担任や外国人のALTが担当することが多いが、外部の日本人講師も活躍。小学校英語指導者という資格もある。

小学校英語講師街の英会話スクールで英会話を教える仕事。教える対象は子どもからビジネスパーソンまで幅広い。スクールにもよるが、一般的に英検準1級以上、TOEIC®テスト850点以上程度の英語力が求められる。留学経験なども問われることが多い。

英会話スクール講師

商談やプレゼンテーションなどのビジネスシーンで活躍する通訳。ある程度まとまった発言をひととおり聞いてから翻訳する逐次通訳が一般的。社内に通訳者を置くケースもあるが、フリーの通訳者が必要なときだけ通訳会社から派遣されることが多い。

ビジネス通訳者国際会議やシンポジウムなどで、出席者や講演者の話を通訳する仕事。専用のブースで話し手の発言を聞き取り、同時通訳でイヤホンを通して多くの出席者に伝える。同時通訳は高度な語学力と通訳技術が求められるため、通訳のなかでも難易度が高い。

会議通訳者

観光やビジネスで来日した外国人に付き添い、旅行先や訪問先を外国語で案内する。旅行会社や通訳会社に登録して依頼を受けるケースが多い。国家資格の通訳案内士取得が必須。試験は英語、中国語、韓国語など10カ国語で受験できる。

通訳ガイド

日本語をうまく話せない外国人が病院または警察・裁判所などでコミュニケーションするのをサポート。医療や法律の専門用語の知識も必要だ。英語だけでなく、ポルトガル語や中国語のニーズも高い。通訳会社などに登録して仕事を得るのが一般的。

コミュニティ通訳者

国内外の日本語学校などで外国人に日本語を教える仕事。教員免許のように必須の資格はないが、4年制大学で日本語教育に関する専攻を修了していること、日本語教育能力検定試験に合格していることなどが採用条件になっていることが多い。

日本語教師

出版社などで語学の教科書や参考書、教材を企画し、作る仕事。専門家に執筆や監修を依頼するので、語学力は必須ではないが、あればもちろんプラス。TOEIC®テストなどの検定対策の参考書や子ども向けの英語学習本などが多数出版されている。

語学教材編集者

メントを付けて依頼主に提出する。

こういったプラスαの仕事ができる

と翻訳者としての評価が高まる。

 

高校時代から英語が好きで大学

は英語学科へ。翻訳の基礎は大学

で学んだ。英語ももちろん大事だ

が川島さんはこんなアドバイスも。

「日本語の文章を正しく理解し、

日本語で表現する力も重要。国語

もしっかり勉強してほしいですね」

8時前に出社。午前中は外注した翻訳

のチェック。午後は急ぎの翻訳や社内の

メンバーとのミーティングなど。ビジネス

レターの翻訳は1本30分から1時間ほ

ど。子会社の翻訳学校で講師もしている

ので課題の添削も行う。19時ころ退社。

川島さんの「一日」

職種 PICK UP!!〝美しい英語〞よりも

正確さとスピードが重要

 

川島さんは、現在、特許翻訳を扱

う部門の管理職。マネジメントの傍

ら、今も翻訳やチェックを担当する。

「以前は特許を申請する際に発明

の内容を説明する『明細書』の翻

訳も行っていました。最近は、短め

のビジネスレターなどが中心です」

 

翻訳会社では、主に、フリーの翻

訳者に翻訳業務を依頼するので、

その品質チェックの仕事も多い。

「産業翻訳の和文英訳では、〝美し

い英語〞が常に求められるわけでは

ないので、高校卒業〜大学レベルの

英語力でも十分対応可能なケース

が多いです。むしろ大切なのは正確

さとスピード。また、専門用語が頻

出するので、コンピュータ、医薬品な

どの専門性があると強みです」

 

翻訳には、パソコンの翻訳支援ツー

ルを使う。明細書などを英訳する

際は、最初に専門用語についてリサ

ーチ。次にツールの画面上で、日本語

の原文に上書きするかたちで、頻出

する単語から先に置換していき、後

から英語の文章に整えていく。

 

また、原文には矛盾や間違いも多

い。翻訳をしながら気づいた点はコ

翻訳を学ぶなら、進路は大学の外

国語学部、国際学部や外国語専

門学校など。ほかに理系学部など

で専門知識を磨くのもあり。翻

訳は社会人になってからスクール

で学ぶことも可能だ。川島さんの

ような社内翻訳者もいるが、多く

の翻訳者はフリー。一般企業など

で経験を積んでから、翻訳会社の

〝トライアル〞という試験を受け、

登録して仕事を得るのが一般的。

グローバル化が進み翻訳ニーズなどが拡大

 海外に工場や支社を作ったり、海外で商品を販売したりする企業は年々増えており、商品のマニュアルや海外工場の研修用プログラムなどの翻訳ニーズは拡大傾向。通訳に関しては、外国人労働者の増加で今後注目されるのはコミュニティ通訳。いずれも、アジア系言語など英語以外の言語はまだ人材も少なく、期待大の領域だ。 学校でもビジネスシーンでも語学教育の重要度が高まっており、TOEIC®テストや英検などの語学検定がブーム。教材や対策講座などの関連ビジネスも盛り上がっている。

最新の業界事情

この職業に就くには 埼玉県立川越高校、上智大学外国語学部英語

学科卒業。旅行会社に就職し、4年弱勤務。27歳で翻訳センターに転職し、4年間翻訳コーディネーターとして働いた後、語学力が評価され翻訳者兼チェッカーに。現在は特許関連の翻訳を扱う特許営業部の品質管理責任者。

株式会社翻訳センター特許営業部 東京オフィス(制作担当)

マネージャ

川島悠一さん(38歳)

産業翻訳者

グローバル時代の人や技術の交流を支える

企業活動や人の交流がどんどんグローバル化していくなかで、その役割がより重要になっている「語学」のスペシャリスト。英語はもちろん、中国語、韓国語、フランス語など様々な言語にニーズがあり、最近では東南アジアの言語なども注目されている。「翻訳する」「通訳する」「教える」の3つの切り口から、それぞれどんな仕事があるのかを解説しよう。

アジア系の言語などもニーズあり!活躍の場が広がる“語学の専門家”

発注

発注 発注

登録登録

登録

通訳会社一般企業

翻訳会社

翻訳する 通訳する

教える大学など

アプリ開発会社

小学校中学校・高校 出版社語学学校・

スクール

日本語学校

登録

登録

登録

登録

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