31
- 1 - 経営分析の具体的方法(改訂版) 2006年 7 月 政策提案の中味としては経営分析と病院政策があります。 経営分析は現在の経営状況を過去のデーターから読み解き、将来のあるべき方向性を検討するた めの基礎資料を提示するものといえます。 病院政策は経営分析や自院を含めた地域医療の現状、厚労省の医療政策の分析を踏まえた将来へ の提案そのものといえます。 政策提案では経営数値の分析とあわせて病院理念の確立、目指すべき病院の将来像の確立が不可 欠です。このことを念頭に置きながらここでは、具体的な経営分析の方法について見ていきます。 1.経営分析の目的 1)賃下げ、「合理化」攻撃への反撃のために ・だまされないために(「赤字」の原因は過大な引当の場合もある。人件費比率の増加の原因は、医業 収益の落ち込みによる場合もある等々) ・自分たちの要求、方針に確信を持つために(「赤字」、「将来不安」攻撃に惑わされないために) 2)提案型運動の前提としての経営分析 ・積極的な提案運動、「入口での闘い」のために-経営分析と病院政策との結合が重要 ※これまではどちらかというと首長の政策により、病院事業への繰り出しの削減、事業の廃止等 が打ち出され、それを進めるための手段としての「赤字」論、「人件費」論が思想的手段として 用いられてきました。 ところが、現局面は厚労省がすすめる診療報酬の改定、医療提供体制の再編成や医師不 足、自治体財政の窮迫の中での政策選択という側面を強くしてきています。 そういう点では、局面を切り開くためには当局の政策の暴露だけにとどまらず、労組として の自院を含めた積極的な病院政策、地域医療政策の提起が重要になってきています。 2.経営分析で明らかにする点 1)経営の実態、特徴 事業の状況を明らかにする(事業収支、経常収支、総収支ごとに)。事業自体は成長過程にあるの かどうか、資金繰りの状況は苦しいのかどうなのかを明らかにする。 2)問題点とその原因 事業の現状の原因を明らかにする(例えば収益悪化の原因は収益減か、費用増か→更に収益減 は入院か、外来か。患者数減か、単価減か。費用増の主要因は何か?) 資金の流れを明らかにする(自己資金がどのようにどれくらい確保され、どう使われたか。または、借 入金にどれくらい頼っているのか。負債・資本、資産、及び資金の動きから全体として経営が上向いて いるのか、下り坂なのかを大きく把握する。) これらを通じて、経営責任の有無、所在を明らかにする(情勢判断の誤り、政策選択の誤りもしくは

経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

  • Upload
    others

  • View
    2

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 1 -

経営分析の具体的方法(改訂版) 2006年 7月

政策提案の中味としては経営分析と病院政策があります。

経営分析は現在の経営状況を過去のデーターから読み解き、将来のあるべき方向性を検討するた

めの基礎資料を提示するものといえます。

病院政策は経営分析や自院を含めた地域医療の現状、厚労省の医療政策の分析を踏まえた将来へ

の提案そのものといえます。

政策提案では経営数値の分析とあわせて病院理念の確立、目指すべき病院の将来像の確立が不可

欠です。このことを念頭に置きながらここでは、具体的な経営分析の方法について見ていきます。

1.経営分析の目的

1)賃下げ、「合理化」攻撃への反撃のために

・だまされないために(「赤字」の原因は過大な引当の場合もある。人件費比率の増加の原因は、医業

収益の落ち込みによる場合もある等々)

・自分たちの要求、方針に確信を持つために(「赤字」、「将来不安」攻撃に惑わされないために)

2)提案型運動の前提としての経営分析

・積極的な提案運動、「入口での闘い」のために-経営分析と病院政策との結合が重要

※これまではどちらかというと首長の政策により、病院事業への繰り出しの削減、事業の廃止等

が打ち出され、それを進めるための手段としての「赤字」論、「人件費」論が思想的手段として

用いられてきました。

ところが、現局面は厚労省がすすめる診療報酬の改定、医療提供体制の再編成や医師不

足、自治体財政の窮迫の中での政策選択という側面を強くしてきています。

そういう点では、局面を切り開くためには当局の政策の暴露だけにとどまらず、労組として

の自院を含めた積極的な病院政策、地域医療政策の提起が重要になってきています。

2.経営分析で明らかにする点

1)経営の実態、特徴

事業の状況を明らかにする(事業収支、経常収支、総収支ごとに)。事業自体は成長過程にあるの

かどうか、資金繰りの状況は苦しいのかどうなのかを明らかにする。

2)問題点とその原因

事業の現状の原因を明らかにする(例えば収益悪化の原因は収益減か、費用増か→更に収益減

は入院か、外来か。患者数減か、単価減か。費用増の主要因は何か?)

資金の流れを明らかにする(自己資金がどのようにどれくらい確保され、どう使われたか。または、借

入金にどれくらい頼っているのか。負債・資本、資産、及び資金の動きから全体として経営が上向いて

いるのか、下り坂なのかを大きく把握する。)

これらを通じて、経営責任の有無、所在を明らかにする(情勢判断の誤り、政策選択の誤りもしくは

Page 2: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 2 -

無作であったこと等)

3)改善、改革の方向、具体的道筋

経営側の提案による経営効果を明らかにする・明らかにさせる。なければ立てさせる。あるいは一緒

に考える、提案する。

3.分析の方法

分析方法としては、次の2つです。

①時系列分析(過去から現在までの時間的推移を跡付ける)

②比較分析(近隣病院、同規模類似病院、全国平均:全体、黒・赤別、比率 100 以上・100 未

満別等)

*企業年鑑における黒とは経常収支で黒字ということ。比率 100 以上とは医業収支で黒字ということ。

4.分析対象資料

資料として手に入れやすく活用しやすいのが、『地方公営企業年鑑』です。

『企業年鑑』は総務省のホームページで公開されています。ただし、単年度分しか掲載されませ

んのでダウンロードしておく必要があります。H11 年度分からデジタル化されています。EXCEL 形

式です。ファイル名ごとの内容を別表にしていますので参照してください。

アドレスは次の通りです。 http://wwwsoumugojp/c-zaisei/kouei/

「企業年鑑」の他に議会へ提出された決算書、監査報告書等も入手しておきましょう。会計資料とし

てだけではなく、行政、議会の考え方を知る資料となります。

この他に全国公私病院連盟が出している『病院経営実績調査報告』等があり、診療科目別の実績比較

に活用できます。

※関連資料として厚労省の各種審議会の議事録(アドレ:http://www.mhlw.go.jp/shingi/other.htm)

や全国自治体病院協議会雑誌などを参照すると良いでしょう。

5.財務各表の特徴と説明

(1)「貸借対照表」(BS:Balance Sheet)

1)特 徴

貸借対照表は、病院のある一定の時点における財産(資産)の状態を表現した書類です。貸借対照表

の数値は、日々動いていますが、たいていの場合、3月31日現在の財産(資産)状況が記載されています。

病院経営の安全性を表現しています。

借方(左側)に資産を、貸方(右側)に負債・資本を記載します。貸方は、資産の調達方法を表しています。

Page 3: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 3 -

自己資本によるのか借入によるのか。調達方法として負債がどのくらい、資本がどのくらいあるかが分ります

(負債と資本が同じ貸方にあることが不思議に思えるかもしれませんが、資本も倒産時などには出資者に

返還しなければならない一種の借金と考えれば理解できるのではないでしょうか。逆に借入金を他人資本

ともいいます)。

借方は、資産の運用状況を表しています。流動資産としてあるのか、固定資産としてあるのかが分ります。

貸借対照表の借方(左側)の資産を活用して事業を営みます。

事業を営むことにより貸借対照表は日々変動しますが、借方(左側)が貸方(右側)より大きければその差

額が利益として貸方(右側)に表示されます。しかし、貸借対照表だけではこの利益がどのようにして獲得で

きたのかは分かりません。それを教えてくれるのが損益計算書です。

貸借対照表 借方 貸方

流動資産

当座資産

たな卸資産

その他

流動負債

一時借入金

未払い金

その他

固定負債

企業債

他会計借入金

引当金

固定資産

有形固定資産

土地

建物

医療機器

無形固定資産

投資

繰延勘定

資 本

資本金

自己資本金

借入資本金(建設改良目的)

剰余金

資本剰余金

利益剰余金(前期未処分利益

+当期純利益)

*実際良く見る貸借対照表は、上に資産を、下に負債、資本を並べて書いています。

2)勘定科目

資 産

①流動資産

当座資産(現金、預金、未収金、一時所有の有価証券、短期貸付金)

たな卸資産(貯蔵品)

その他流動資産(前払費用、前払金等)

②固定資産

有形固定資産(土地、建物、構築物、機械、車両運搬具等)

無形固定資産(水利権、電話加入権、借地権等)

投資(投資有価証券、長期貸付金、出資金、基金等)

③繰延勘定(企業債発行差金、開発費、退職給与金等)

他人資本

Page 4: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 4 -

負 債

①流動負債

一時借入金(貸借対照表日から1年以内に支払期限が来る借入金)

未払金(医療材料、医薬品、光熱水費等の未払)

未払費用(未払賃借料等)

前受金(金銭を既に受取っているが、債務を履行していないもの)

②固定負債

企業債(建設改良に充てる以外の企業債。cf再建債、退職手当債、災害債等)

他会計借入金(他会計からの長期借入金)

引当金(退職給与引当金、修繕引当金等)

資 本

①資本金

自己資本金(企業が開始時に所有していたもの、他会計からの出資金等)

借入資本金(建設改良にあてるための企業債)

②剰余金

資本剰余金(資本取引きから生じた剰余金。

cf資産の再評価積立金、受贈財産評価額等)

利益剰余金(損益取引きから生じた剰余金)

(2)「損益計算書」(PL:Profit and Loss)

1)特 徴

ある一定期間(大概の場合、4月1日から翌年の3月31日までの1年間)の営業成績をまとめ

た書類です。

病院の1年間の事業収益等がいくらで、それに要したさまざまな費用がいくらであったかが分り

ます。即ちどのようにして利益を生み出したのかが分かります。病院の収益力、活動力を表現して

います。

借方(左側)に費用を、貸方(右側)に収入を記載します。貸方(収入)が、借方(費用)よりも多

ければ、借方に利益が計上されます。借方(費用)が、貸方(収入)よりも多ければ、損失が貸方に計

上されます。

損益計算書は、3つの部分から成り立っています。

①医業収支

医業(本業)による収支の記録です。収入が支出より多ければ、医業利益が出ます。支出が多け

れば、医業損失が発生します。

②経常収支

医業収支に本業の事業活動以外で、かつ毎年経常的に発生する収支を加えたものです。支払利息、

受取利息が主なものです。費用としては繰延勘定償却などもここに属します。医業利益(損失)に医業外収

益を加え、医業外費用を引いたものが経常利益(損失)になります。

Page 5: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 5 -

③総収支

経常収利益(損失)にその年だけに発生する収益(特別利益)を加え、その年だけに発生する費用

(特別損失)を引いたものが、税引前当期純利益(損失)となります。

特別利益としては、固定資産売却益、過年度損益修正益などがあります。特別損失としては、固定資産

売却損、災害などの臨時損失、過年度損益修正損などがあります。

税金は税引前当期純利益を基に計算されます。税引前当期純利益から法人税・住民税等を引いた

ものが当期純利益となります。当期純利益に前期繰越利益を加えたものが、当期未処分利益となり

ます。

当期未処分利益の中から将来の設備投資などのためにいくら積立てるか、来期にいくら繰越すか

を決めます(株式会社であれば、株主への配当をいくらにするかも含まれます)。

損益計算書 借方 貸方

医業費用

人件費

材料費

経費

その他

医業収益

入院収益

外来収益

その他

他会計負担金

→ 医業収支

事業利益(損失)

医業外費用

支払利息

医業外収益

受取利息

他会計繰入金

→ 経常収支

経常利益(損失)

特別損失 特別利益

他会計繰入金 → 総収支

税引前当期純利益

(税引前当期純損失) 当期純利益

当期純損失

*税引前当期純利益-税金等=当期純利益 ※実際には、自治体立病院には税金がかからない。

当期純利益+前期繰越利益=当期未処分利益

当期未処分利益→①積立金、②来期繰越利益(株式会社では+株主配当、役員賞与)

*実際良く見る損益計算書は、上に収入を、下に費用を並べて書いています。

2)勘定科目

収 益

①医業収益

入院収益

外来収益

その他

他会計負担金(救急医療、公衆衛生等にかかわる負担金)

室料差額収益等

②医業外収益

受取利息、有価証券利息、有価証券売却益、受取配当金等

看護学院収益

国庫補助金、都道府県補助金、他会計補助金

Page 6: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 6 -

他会計負担金(研究研修費、企業債利子、特殊医療、高度医療等に関わる負担金)

患者外給食収益

その他

③特別利益(当年度の期間損益に属させることが適当でない利益。

cf固定資産売却益、過年度損益修正益等)

*損益収支への他会計からの繰入等は医業収益、医業外収益、特別利益への3種類あります。中心

は医業外収益への繰入です。

費 用

①医業費用

変動費

材料費(医薬品費、給食材料費)

経費(修繕費、水光熱費、委託費、交際費、福利厚生費、燃料費等)

その他

固定費

人件費

減価償却費

その他

②医業外費用

支払利息

企業債取扱諸費

看護学院費

繰延勘定償却

患者外給食材料費

雑損失

③特別損失(固定資産売却損、災害などの臨時損失、過年度損益修正損)

(3)「資本収支」

地方公営企業の予算は、収益的収入支出予算(通称3条予算)と資本的収入支出予算(通称4条予

算)の2本建ての形式をとります。収益的収支については、既に説明した通りです。

資本的収支(資本収支)は、資本取引の収支、すなわち本来の営業活動以外の資金の動き、具体的に

は企業の建設改良費・企業債償還元金等にかかる資金の動きが計上されます。建設改良費・企業債償

還元金等に関する資金繰りの計画表です。

資本収支の各項目は、貸借対照表に反映され、借入金の増減、固定資産の増、現金預金の増減とし

て記載されます。

他会計負担金、他会計出資金は貸借対照表の自己資本金に、他会計借入金は借入資本金に、各種

補助金等は資本剰余金に記載されます。

Page 7: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 7 -

資金繰りの計画表とはいっても資本取引にからむ長期の資金繰りであり、短期の資金繰り表とは別に

なります。

建設改良費の経年的動きで、投資が計画的に適切に行なわれているかチェックします。過剰投資で

はないか、またはその逆ではないかなど、「1床当り固定資産」の指標なども合わせて活用します。

企業債の返還金の経年的動きから、計画的返済ができているかどうかチェックします。「企業債償還金

対減価償却比率」の指標も合わせて活用し、比率が100%を超えると、減価償却額で元利償還ができな

いことを意味し、超過額だけ資本金不足を生じることになります。

建設改良費の大半が企業債で賄われていないかどうか、一般会計からのきちっとした負担が行なわれ

ているかどうかも重要なチェックポイントです。比較分析を行います。

資本収支 支出 収入

建設改良費

うち職員給与費

企業債

うち建設改良のための企業債

企業債返還金

うち建設改良のための企業債

他会計からの長期借入金返還

他会計負担金

他会計出資金

他会計借入金

各種補助金

その他

その他 補填財源

(4)財務諸表の関連

1)BSとPLとの関係

下記図は一定の条件で事業を営み、10 年後、20 年後に貸借対照表がどのように変化するかをパターン

化したものです。BSとPLとの関連を見ると同時に、資金の確保とその流れを理解するのに役立ちます。

条 件

BS

①借入金 20 億円、自己資本 30 億円を流動資産 10 億円、固定資産 40 億円で運用。

PL

①47 億円の支出で 50 億円の収入

②47 億円+減価償却費 2億円、退職引当 2億円→支出 51 億円→欠損金 1億円

③51 億円+退職金支払 1億円

④借入金返済 1億円

⑤毎年同じことを繰り返す

⑥毎年生み出される 3 億円の資金(累計 60 億円)の流れは右の通り

Page 8: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 8 -

10年後 20年後 単位:億円

流動資

産 10

流動資

産 11

借入

10

流動資

産 10

流動

資産

13

流動

資産

12

借入

19

借入

20

借入

20

借入

20

流動

資産

20

退職引

当 10

退職

引当

20

借入

20

BS → → → → → →

流動

資産

30

退職

引当

20

固定

資産

20

固定資

産 38

自己

資本

30

固定資

40

固定資

産 40

自己

資本

30

自己

資本

30

固定

資産

38

自己

資本

30

欠損 1 退手 1

累 積

欠 損

10

自己資

30

累積

欠損

20

自己

資本

30

固定

資産

38

欠損1 退手 1 *借入金 1億円返済

欠損1

退手 2

*退職金 1億円支払い

支出 収入 支出 収入

累積欠

20

自己

資本

30

PL

47

47

減価2

利益 3

50

50

退手2

欠損 1

20 年後

①累積欠損金はあるものの借金を返済し、自己資本は温存したことになる。

自己資金 20 億円と借入金 20 億円とで 40 億円の固定資産を取得。

<20 年間の内部留保資金の累計>

累積欠損金 -20 億円

減価償却累計 40 億円

退職引当金累計 40 億円

計 60 億円

<20 年間の内部留保資金の使途>

借入金返済 20 億円

流動資産増 20 億円

退職金支払累計 20 億円

計 60 億円

*累積欠損金があってもそれを上回る減価償却費や引当金があれば、再生産が可能であることが分かります。

2)資本収支とBSとの関係

資本収支は直接的にはBSとのみ関係しています。

例えば、1)のパターンで20年間で20億円の他会計からの繰入があったとすれば、自己資本が50億円

になり、その分流動資産、固定資産が 20 億円増えることになります。

自治体立病院の場合、この自己資本の増強があるため、累積欠損の額面に比べて資金繰りが楽な状況

になります。

・・・・・・・・

Page 9: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 9 -

6.主な分析指標の説明と着眼点

1)指標の説明

項 目 計 算 式 標 準 値 等

Ⅰ安全性指標

1 流動比率 (流動資産÷流動負債)×100 120%以上。短期の資金繰りを見る。しかし、流動比率

は回収不能な未収金が多額に含まれていても高まる。

当座比率で補う。

2 当座比率 (当座資金÷流動負債)×100 100%以上あれば安心。流動比率を補完する指標

*当座資金=現金・預金、その他有価証券など即日現金化で

きる資産

*現金比率は分子が、現金預金のみ。

3 固定比率 (固定資産÷自己資本)×100

*自己資本=出資金+剰余金

固定資産がどれくらい自己資本で賄われているかを

見る。100%以下が望ましい。しかし、自己資本が貧弱

な医療界ではめったにない。せめて長期借入で補完し

て賄うことが望ましい。それが4の固定長期適合率。

4 固定長期適

合率

{固定資産÷(自己資本+固定

負債)}×100

100%以下。固定資産を流動負債で賄うようなことが

あっては、資金繰りが大変。100%を超えると、固定資

産の一部が短期借入等の短期資金で賄われている事

を意味する。

5 負債比率 (負債総額÷自己資本)×100 BS右側の資本構成を通して資金繰りの安全性を見る。

100%以下。負債の返還の保障として同程度以上の自己

資本を持っておくべきという趣旨。

6 流動負債比

(流動負債÷自己資本)×100 負債比率を補う指標。資金繰りは大丈夫かを見る。

7 自己資本比

{自己資本÷負債及び資本合

計}×100

※自己資本=自己資本金+剰余金

5 の指標と同趣旨。自己資本は利子負担がなく、この

比率が高ければ資金繰りが楽になる。最大値は 100%

で無借金経営となる。

8 修正自己資

本比率

{(自己資本+退職給与引当金)

÷負債及び資本合計}×100

利息負担の有無に着目し、自己資本比率に修正を加え

たもの。

Ⅱ収益性・成長性指標

9 医業収支比

(医業収益÷医業費用)×100 100%以上であれば利益を出している。医業活動本体

による収益状況を見る。

10 経常収支比

(経常収益÷医業費用)×100 100%以上であれば利益を出している。医業活動に利

子負担など資金繰りの要素を加えた収益性を見る。

自治体立病院の場合、他会計からの繰入金が大きく、

医業収支比率より2%程度良いのが普通である

11 実質収益対

経常費用比

(経常収益-他会計繰入金)÷

経常費用×100

他会計からの繰入金を除く実質の収支といえるが、不

採算医療を考慮していないという欠点がある。

12 医業収益分析

医業収益増

加率

{(当年度医業収益-前年度医

業収益)÷前年度医業収益}×

100

最も一般的な成長性の指標。

内訳として入院収益、外来収益ごとに増加率を算出す

る。

100 床当り医

業収益

医業収益÷病床数×100 入院、外来別にも出す。収益状況の他病院との比較に

便利。

入院収益対

外来収益

入院収益÷外来収益 収益の構成面から入院中心か外来中心かを見る。

Page 10: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 10 -

1 日当外来患

者数

外来延患者数÷外来診療日数 前年度との実数比較、伸び率比較を行う。医業収益の

増減の要因分析を行う。また、他の資料と総合して何

故外来患者数が増減したのか自体の分析を行う。

1 日当入院患

者数

入院延患者数÷入院診療日数 同上

*入院延患者数=入院実患者数×平均在院日数

病床利用率 (入院延患者数÷稼動可能延

病床数)×100

延患者数の増減が実患者数の増減によるのか平均在

院日数の影響なのかを分析する。

外来入院患

者比率

(年延外来患者数÷年述入院

患者数)×100

患者数の構成面から入院中心か外来中心かを見る。

「企業年鑑」の規定

平均通院日

外来延患者数÷外来延件数(レ

セプト件数)

平均在院日

入院延患者数÷{(入院件数+

退院件数)÷2}

外来日当円 外来収益÷外来延患者数 「企業年鑑」の「経営分析に関する調」には日当円の

内訳もあるので総額だけではなく、内訳比較も行う。

入院日当円 入院収益÷入院延患者数 同上

13 医業費用分析

医業費用増

加率

{(当年度医業費用-前年度医

業費用)÷前年度医業費用}×

100

医業費用の増減状況を見る。費用の内訳比較(伸び率、

構成比率)により主要要因項目を分析する。

また、医業収益増加率と比較することにより、利益

(損失)の原因が主に収益の増減にあるのか費用の増

減にあるのかを見る。

人件費比率 (人件費÷医業収益)×100 構成比率だけでなく、伸び率を出しチェックする。

材料費比率 (材料費÷医業収益)×100 *材料費=医療材料費(薬品費含む)+給食材料費

薬品費比率 (薬品費÷医業収益)×100

経費比率 (経費÷医業収益)×100 委託料が含まれる。委託の状況と比較分析する。委託

単価が不当に高くないか、引上げられていないか。

減価償却費

比率

(減価償却費÷医業収益)×100 過剰投資でないか、20~22 の指標とあわせて分析。

明細書とつきあわせ減価償却費が適正に計上されて

いるかを見ること。

リース料比

(リース料÷医業収益)×100

14 医業外費用分析

支払利息率 (支払利息÷医業収益)×100

Ⅲ労務費関係指標

人件費比率 (人件費÷医業収益)×100 人件費の伸び率より、医業収益の伸び率の方が高けれ

ば、比率は伸びない。人件費はそのままでも医業収益

が落ち込めば、比率は高くなる。人件費と医業収益に

分解して分析することが必要。

15 人件費 人件費総額=給与費総額(平均

賃金×人員数)+退職給与金+

法定福利費等。

給与費は平均賃金と職員数とに分解して分析するこ

とが必要。平均賃金は、月例賃金、年間一時金、退職

金に分けて分析することが理想。月例賃金は、基本賃

金、時間外賃金等に分ける。基本賃金は、年齢、勤続

年数を考慮する必要あり。

16 病床 100 対

職員数

(職員数÷病床数)×100 「企業年鑑」では、年度末の数値を使用し、病床数か

らは伝病の数を除いている。*非常勤職員数含む。

17 職員 1 人 1

日当り患者

年延入院・外来患者数÷年延職

員数

入院=年延入院患者数÷年延職員数。外来=年延外来患

者数÷年延職員数。「企業年鑑」の指標。

*患者 100 対職員数=職員数÷(1日平均入院患者数

+1日平均外来患者数÷3)×100 を出して 16 の指

Page 11: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 11 -

標と経年的な動きを比較すると労働の負荷の推移が

分かる。

18 職員 1 人 1

日当り診療

収入

入院・外来収益÷年延職員数 *医業収益 10 億円対職員数=職員数÷(医業収益÷

10 億円)

*指標 16、患者 100 対職員数と経年比較する。

19 労働分配率 人件費÷付加価値 付加価値:経常利益+人件費(労務費含む)+支払利

息+租税公課+減価償却費

*民医連は付加価値を経常利益+人件費+支払利息

としている。

Ⅳその他指標

20 労働装備率 年度末有形固定資産÷年度末職

員数

設備投資の度合を見る。

21 病床装備率 年度末有形固定資産÷年度末病

床数

「企業年鑑」の「1床当り償却資産」とほぼ同じ。

22 総資本回転

医業収益÷〔(期首総資本+期末

総資本)÷2〕×100

投下資本に対する収益力を見る(過剰投資でないか、

投下資本を回収できるか)。1.0 以上が指標。

23 総資産増加

{(当年度総資産-前年度総資

産)÷前年度総資産}×100

設備投資の状況を見ると同時に、収益の増加率と比較

することにより投資効率を判断する。

24 他会計繰入

金医業収益

比率

他会計繰入÷医業収益×100 *他会計繰入:特別利益を除く損益勘定に対する繰入

25 他会計繰入

金経常収益

比率

他会計繰入÷経常収益×100 *他会計繰入:特別利益を除く損益勘定に対する繰入

26 他会計繰入

金総収益比

他会計繰入÷総収益×100 *他会計繰入:特別利益を含む損益勘定に対する繰入

27 他会計繰入

金総資本的

収入比率

他会計繰入÷資本的収入×100 *他会計繰入:資本収支への繰入

28 1床当り繰

入金

他会計繰入÷年度末病床数 *他会計繰入:損益収支と資本収支への繰入総額

*すべての指標の比較をする必要はありません。ゴシックの指標にしぼっても良いでしょう。

2)着眼点

①医業収支比率:医業収益÷医業費用×100

医業収支比率は、病院の収益力の真の姿を見る重要な指標です。医業収益と医業費用との間には、

直接・間接の対応関係があります。

経年比較、平均値との比較を行います。また、主な増・改築、設備投資、機構改革、職員配置、施

設基準の変更、他医療機関の動向、診療報酬・医療保険制度の動向等を経年的に抜き出し、それと

の関連を探ります。 (参照:「損益」シート、グラフ1)

②経常収支比率:経常収益÷経常費用×100

医業外収益とは、主たる業務(医療活動)以外から生ずる収益で、受取利息、配当金、国庫補助金、

他会計補助・負担金などです。医業外費用は、主たる業務以外から生ずる費用で、支払利息などがあ

ります。医業収益と医業費用との間には対応関係はありません。

Page 12: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 12 -

収益の中心は他会計からの繰入金です。繰入額の増減に注目。繰入ルールが適正な水準で確立

されているかチェックが必要です(「損益」シート 102行以下。グラフ10)。また、利子負担が、経営の足

を引っ張っている場合があります。利子、借入先など借入状況のチェックが必要です。(「損益」シート、

「資本収支と費用構成」シート54行以下、グラフ1)

③不良債務比率:不良債務÷(医業収益-受託工事収益)×100

不良債務は、「流動負債-(流動資産-翌年度繰越財源)」の式で求められますが、流動資産の額

を超える流動負債の額のことです。流動負債とは、支払期日が1年以内に訪れる負債のことであり、固

定負債とは支払期日が1年を超えて訪れるもののことです。

資金繰りの状況を示しています。不良債務が大きくなれば、民間であれば資金ショートから不渡りを

出す状態になります。10%を超えると、一時借入などをしないと資金繰りができない状態となります。

また、総務省の指導も厳しく、起債申請時の条件ともなっていますので、不良債務を小さく見せかけ

るために、流動負債を固定負債に付け替える操作なども見られますので要注意です。

企業債、他会計からの長期借入金のうち固定負債とされるのは、建設改良目的以外(財政再建債、

退職手当債、赤字補填のための他会計借入均等)であり、建設改良のための企業債、他会計からの

長期借入金は、借入資本金に分類されますので、注意が必要です。(「貸借」シート64行以下)

④繰入金

補助金、負担金と名称は様々ですが、「負担区分」によって一般会計から病院会計に繰入られるお

金のことです。「損益勘定」と「資本勘定」とに分けて繰入れられています。

損益勘定への繰入は、(2)「損益計算書」から拾い出します。資本勘定への繰入は、(4)「資本収支

に関する調」から拾い出します。

自治体によっては、損益勘定、資本勘定への繰入に不均衡がありますので注意が必要です。損益

勘定への繰入は少ない一方、資本勘定への繰入が大きいなどの例もあります。

平均値との比較は勿論、経年比較により、何らかの政策的変更が存在し、繰入額、繰入率に大きな

変化が起きていないか注意が必要です。

繰入と医業収支、経常収支との関係も着目点の 1つです。例え、収支が良くてもそれが本当の実力

なのか、繰入によるところが大きいのか見極めます。 (「損益」シート 89-96 行、102 行以下、グラフ1

0)

更に、「交付税」シートで交付税額と繰入金との比率についても分析しましょう。繰り入れのルール化

が、適切に行われているのかどうか分析します。

⑤人件費比率:人件費÷医業収益×100

人件費比率は上の式で分かる通り、医業収益に占める人件費総額の割合です。従って、人件費総

額を不変とした場合、医業収益が増大すれば人件費比率は下がりますし、医療収益が減少すれば当

然人件費比率は上昇します。まず、人件費比率といってもこの様に相対的なものであるということをお

さえる必要があります。

その上で、医業収益の状況、人件費の状況を分析します。(「資本収支と費用構成」シート 54 行以下、

グラフ11~16)

Page 13: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 13 -

⑥人件費

人件費総額は、給与費総額(平均賃金×人員数)+退職給与金+法定福利費等です。

賃金水準は、(7)「職種別給与に関する調」で拾い出します。基本給、手当ごとに比較します。特殊

勤務手当、時間外勤務手当なども病院間でかなりの開きがある場合がありますから要注意です。平均

年齢、平均勤続年数を比較の際に考慮します。

職員数は、(6)「経営分析に関する調」から拾い出します。「病床100対職員数」は、職種ごとに記載

されています。これには、非常勤職員数も含まれています。全職員数は、常勤職員のみです。

人件費と一口で言っても多様な側面を持っています。経営側の攻撃に合わせて多面的な分析が必

要です。例えば、1人当たり人件費は高くても、職員1人当たり医業収益が高ければ、充分ペイは可能

です。人件費比率、1人当り人件費、100 床当り職員数など、経営側は自分に有利な数値を他の指標

と切り離して攻撃の材料にする場合が再々です。多面的、総合的な分析を心がけましょう。

退職給与金の動向と扱いは人件費総額の乱高下要因です。退職手当組合への加入、退職給与引

当金の確保等チェックしましょう。かつては、支出した退職給与金を繰延勘定扱いにし、その後費用化

して平準化する会計処理がされていた時期もありましたが、現在はこの手法はとられていないようで

す。

自治体によっては退職給与金を本庁会計で支出しているところもありますが、労働組合としても議会

論議、住民の理解に耐えうるような会計処理の確立への議論を当局とともにする必要があります。

また、人員問題についても当局は自分たちに都合の良い資料を使い攻撃をしてきがちです。指標

16~18 を活用し多面的な分析で反撃する必要があります。(「損益」シート、「資本収支と費用構成」シ

ート 54 行以下、「経営分析に関する調」シート 94 行以下、グラフ11~16)

⑦医業収益

その主要なものは、入院収益と外来収益です。まず、経年的に収益の伸びをそれぞれチェックしま

す(右肩上がりか、右肩下がりか。各種グラフに加え、「損益」シート131行以下の2年間移動平均値、3

年間移動平均値を活用するとより分かりやすくなります)。

外来収入は、単価(日当円=外来患者1人1日当り診療収入)×1 日平均患者数×外来診療日数

です(「経営分析に関する調」シート参照)。経年的な比較を行い、外来収益の増減が、単価によるの

か患者数によるのか、または診療日数の増減によるのか要因分析を行います。日当点は、投薬、注射、

入院料等細目ごとに記載されていますので、自病院の特徴、問題点をそこから把握します。

入院収入は、日当円×入院延患者数(入院実患者数×平均在院日数)です。経年的な比較を行い、

入院収益の増減が、単価によるのか延患者数によるのか要因分析を行います。更に、延患者数の増

減は実患者数の増減によるのか平均在院日数の増減によるのか要因分析を行います(病床利用率=

年延入院患者数÷年延病床数ですから、これは病床利用率の増減の要因分析でもあります)。

患者数、病床利用率の変化の背景の分析を掘り下げて行いましょう。例えば、医師の入替え、他の

医療機関の開業、休日増による診療日数の減、疾病の発生状況などです。

独自指標の「病床 100 対患者数」<(1日平均入院患者数+1日平均外来患者数÷3)÷病床数>

も利用し、患者の受け入れ状況を総合的に判断します。(「資本収支と費用構成」シート 129 行)

また、「外来収入対入院収入比率=入院収入÷外来収入」で、入院収入と外来収入の比率を出し、

自分の病院が入院重点型か外来重点型か、大まかな傾向をつかみます。厚労省は 200 床以上は入

Page 14: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 14 -

院中心にしていこうとしていますが、この指標は病院の将来的な性格付けにおいて大きな意味を持ち

ます。さらに、診療体制や地域の医療体制も勘案し、外来患者の伸びの余地、外来患者増のための

方策などを判断します。 (「損益」シート、「経営分析に関する調」シート 23 行以下、グラフ1~9)

⑧減価償却費

固定資産の取得価額を、その耐用年数の期間中に費用として各年度に配分する会計手続をいい、

各年度に配分される費用を減価償却費といいます。減価とは、時の経過等により固定資産の価額が

減損することをいい、減価償却とはすなわち、毎年度の減価を耐用年数に基づいて見積もり、それを

各年度の費用として割りあてることです。

地方公営企業では、利益の有無に関係なく必ず減価償却を行わなければなりません。

例えば、50 億円の起債をして、建物を新築した場合、貸借対照表の貸方の借入資本金が 50 億円

増えます。一方、貸借対照表の借方の固定資産が 50 億円増えます。償却方法を 25 年の定額法とす

れば、毎年2億円の償却費用が生じることになります。

まず、損益計算書の借方に 2 億円の費用が生じます。現金の支出はありませんが、費用扱いです

から、その分同じ借方の利益が 2億円減ることになります(黒字病院の例)。

これを貸借対照表で見ると借方の固定資産が 2 億円減ることになり、それと対をなすかたちで貸方

の剰余金が 2億円減る(損益の利益 2億円減に対応)ことになります。

減価償却費の処理というのは、上で見た通り会計上の処理の方法であり、現金の支出を伴いません。

これは一方では利益隠しの側面を持ちますが、P8のパターンで見たとおり減価償却費見合いの内部

資金で借入金を返済したり、資金として留保することにより、再投資を可能にします。

過剰投資となりそれが経営を圧迫していないか、20~22 の指標とあわせて分析が必要です。明細

書とつきあわせ減価償却費が適正に計上されているかを見ることも必要です。(「経営分析に関する

調」シート 105 行以下、グラフ11)

⑨累積欠損金

医業活動の結果生じた純損失をいます。収益より費用が大きければ、欠損が生じ、欠損の過去の合

計が累積欠損金です。

まず、累積欠損金と借金とは違います。欠損金がないのに借入金がある場合。欠損金の額より借入

金の額が大きい場合。その逆の場合と様々です。そもそも借入金ですが、元利の返済が可能な範囲

の借入は何の問題もなく、むしろ自己資金で全てをまかなうことの方がまれであり、事業の拡大などの

ためには当然必要なものです。

つぎに、費用の中には現金の支出を伴わない減価償却費や各種引当金がありますから、これらが

大きければ、結果として(帳簿上)欠損が生じます。P8のパターンの例がそうです。20 年間で累積欠

損金が 20億円に達していますが、その間に借入金を 20億円返済し、流動資産を 20億円積み増しし

ています。

ただし、欠損金を上回る減価償却費や引当の累積があれば、大きな問題はありませんが、欠損金の

額がそれらを上回っている場合には、貸借対照表の構成が、現金預金、固定資産が縮小し、負債が

膨れ債務超過の状態になっていき、資金繰りが困難になります。

自治体立病院の場合、損益勘定への繰入で欠損金自体が縮小されている上に、資本勘定への繰

入で自己資本が増強されているため、資金繰りの諸指標はそう問題ない場合があります。

Page 15: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 15 -

単純な「赤字」(累積欠損金)攻撃には適切な反撃が必要ですが、自治体立病院としての使命を果

たしていく上で問題となる収支構造については労働組合としても転換へ向けた提起が必要となってき

ます。(「損益」シート 87、88 行。グラフ10、17)

⑩資金の流れ

「貸借」シートの 104 行以下に、「資金の流れ」が分かる表を掲載しています(下表参照)。また、シート

では、その下に各年度の内部留保資金とその流れを記載した表も付けています。

内部留保資金をここでは、利益剰余金、引当金、減価償却費と定義し、更に資本増を加えて無利子

で運用できる資金の総量とその流れを表記しています。

下の表で説明すると5年間の資金総量は、1,584,542(千円)です。

収入内訳は、減価償却費 752,798(千円)、引当(千円)40,000 剰余金 201,862(千円)、資本増

589,882(千円)となっています。

使途の内訳は、流動資産増に 623,082(千円)、固定投資に 371,801(千円)、流動負債の返済に

70,984(千円)、固定負債の返済に 518,675(千円)となっています。

資金の大きな流れをつかみ、当局の経営、投資姿勢の特徴を見極めます。

資金の流れ (単位千円)

1999 年度 2000年度 2001 年度 2002 年度 2003 年度 2004 年度 合計

総資本増加率 0 101.6 106.1 105.9 105.0 108.4

内部留保残高=利益剰余

金+引当金 -87,369 -40,391 1,170 9,143 99,523 154,493

単年度内部留保資金=減

価償却費+内部留保増 - 216,632 207,587 176,463 233,788 160,190 994,660

単年度内部留保資金+資

本増 - 351,747 338,541 286,555 346,179 261,520 1,584,542

資本増 135,115 130,954 110,092 112,391 101,330 589,882

1999 年度~2004 年度貸借対照表

①1999 年度

②2004 年

度末

増減②-

①1999 年

度末 ②2003 年度末

増減②

-①

流動資産 1,465,521 2,088,603 623,082 流動負債 322,904 251,920 -70,984

固定資産 1,426,183 1,045,186 -380,997固定負債(引当

以外) 1,224,189 705,514 -518,675

繰延勘定 0 0 0 引当 0 40,000 40,000

自己資本 1,431,980 2,021,862 589,882

剰余金 -87,369 114,493 201,862

計 2,891,704 3,133,789 242,085 計 2,891,704 3,133,789 242,085

5年間の内部資金の流れ ①入 1,584,542 内訳 減価償却費 752,798 引当 40,000 剰余金 201,862 資本増 589,882

②出(使途) 1,584,542 内訳 流動資産 623,082 固定投資 371,801 流動負債 70,984 固定負債 518,675

Page 16: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 16 -

7.簡単経営分析 ― コピー&ドロップでグラフができちゃう!

1)経年年比較グラフを作るためのコピー&ドロップの注意点

「4.分析対象資料」の項で説明したように、「企業年鑑」は 1999 年度(H11 年度)から 2004 年度(H16 年

度)の6年分がデジタルの資料になっています。資料1の各ファイルが、年度ごとに用意されています。年度

の資料は「1.総括表」と「2.個表」とからなっています。

自治体病院部会でその資料を一枚の CD に収めました。また、CD から各年の自病院の資料をコピー&

ドロップすれば、経年比較のグラフ等ができる「簡単自治体病院経営分析」(EXCEL)を用意しました。

まず、「簡単自治体病院経営分析」を開いてください。

年鑑の資料にあわせて「損益」「貸借」「資本収支と資本構成」「経営分析に関する調」「給与」の 5つのシ

ートが用意されています(それらに加えて、「グラフ印刷用」、「簡易分析」、「交付税」の分析用のシートが、

用意されています。今回、「簡易分析」、「交付税」のシートを追加)。

(「損益」のシートの例)

参照するEXCELファイル 都道府県・政令市:by02010101 市町村、組合立:by02010102

H11年度 H12年度 H16年度 H16年度

1999 年度 2000 年度 2004 年度 2004 年度

コピー最上部 県名 コピー最上部 比較病院

市町村名 ・・・・ 項目

病院名

(1)施設及び業務概況に関する調

1.事業開始年月日 S.39. 7. 1 S.39. 7. 1 S.39. 7. 1 S.32. 9. 1

2.法適用年月日 S.39. 7. 1 S.39. 7. 1 S.39. 7. 1 S.40. 4. 1

3.法適用区分 2 2 2 2

上記は、「損益」のシートの例ですが、各シートの上部に参照すべきEXCELファイルの記号を記載して

いますので、年鑑の各年度の資料からそれを開き、該当する部分をコピーし、最上部をあわせドロップして

ください。年鑑の資料にはセルに背景色がついていますから、それも参考にしながら、ずれないように注意

しながらコピー&ドロップしてください。この操作を繰り返してください。

※ただし、「経営分析に関する調」シート 125 行以下の【グラフ元資料】については、記載の指示に従っ

て若干のコピー&ドロップと入力が必要です。

「グラフ印刷用」シートに自動的にグラフが出来上がります(下記のグラフ 1 からグラフ 17)。ただし、軸の

最低、最高の値の調整が必要になってくるかもしれません。軸の上で右クリックし「軸の書式設定」-「目盛」

で最高と最低の数値を調整しましょう。また、セルに「-」が入っていると、グラフ化の際にエラーが出ます。

そこで「-」のあるセルを選択し、「編集」-「検索」-「置換」で「検索する文字列」に「-」を記載、「置換後の

文字列」に「0」を記載し、「すべて置換」を押します。この操作を各シートで行います。ただし、数値のマイナ

ス記号が「0」にならないよう注意しましょう。 ※この操作が分かりにくければ、「-」が記載されているセルを

いちいち「0」に変えていっても構いません。

これらのグラフは、グラフ印刷用のシートを使い印刷できます。印刷用シートを開くと、実践で囲ったもの

が7枚用意されています。実践の枠の部分をコピーし、A4サイズで出力してください。

Page 17: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 17 -

2)具体的なグラフと若干の説明

収支分析

500,000

1,000,000

1,500,000

2,000,000

2,500,000

3,000,000

3,500,000

1999年度

2000年度

2001年度

2002年度

2003年度

2004年度

70.0

75.0

80.0

85.0

90.0

95.0

100.0

105.0

医業収益

医業費用

医業収支比率

経常収支比率

グラフ1

医業収支の状況をみます。

同時に成長度をみます(右肩上が

りか、右肩下がりか)。

普通は、医業収支比率に比べ経

常収支比率が数%良いのが普通で

す。それは、他会計繰入金が主に医

業外収益部分に投入されているから

です。両者の関係も要チェックで

す。

収益分析

-15.0

-13.0

-11.0

-9.0

-7.0

-5.0

-3.0

-1.0

1.0

1999年度

2000年度

2001年度

2002年度

2003年度

2004年度

医業収益増加率

入院収益増加率

外来収益増加率

その他収益増加率

*構成比で修正

グラフ2

収益の動きをみます。

また、収益を入院と外来に分解

し、全体の収益の増減への影響を

分析します。

入院収益分析

-30.0

-25.0

-20.0

-15.0

-10.0

-5.0

0.0

5.0

10.0

15.0

1999年度

2000年度

2001年度

2002年度

2003年度

2004年度

入院収益増加率

1日平均入院患者数増加率入院日当円増加率

グラフ3

入院収益の増減をみます。

また、それが患者数の増減、入院

単価(日当円)の増減によるのかを

分析します。

Page 18: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 18 -

実患者数・在院日数・利用率の関係

-25.5

-20.5

-15.5

-10.5

-5.5

-0.5

4.5

9.5

1999年度

2000年度

2001年度

2002年度

2003年度

2004年度

21.0

21.5

22.0

22.5

23.0

23.5

24.0

24.5

一般病床

平均在院

日数

年実入院

患者数伸

一般病床

利用率伸

グラフ4

実患者数、平均在院日数、病床

利用率との関係を見たグラフです。

平均在院日数の短縮は、事実上

のベッド増であり、実患者数の増加

を達成できなければ病床利用率の

低下につながります。

平均在院日数の短縮により入院

単価は上がったとしても、利用率の

低下で入院総収益がどうなるかの見

極めが必要です。

入院日当円の推移

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

1999年度

2000年度

2001年度

2002年度

2003年度

2004年度

入 院

投薬・注

処置・手

検査・放

射線

入院料

*構成比で修正

グラフ5

入院日当円(入院患者1人1日当

り単価)の動きとその要因分析を行

います。

入院基本料基準の変化などと重

ねて分析します。

入院日当円比較

0.0

25.0

50.0

75.0

100.0入 院

投薬・注射

処置・手術

検査・放射線

入院料(給食含む)

その他

2004年度

比較病院

2004年度

グラフ6 入院日当円(入院患者1人1日当

り単価)を類似の同規模病院、同一

設立主体平均、同規模病院平均と

比較したレーザーチャートです。

自病院の入院単価がどれくらいの

位置にあるのかを見ます。

※実際の数値は、分析シートの

「経営分析に関する調」を見てくださ

い。

Page 19: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 19 -

外来収益分析

-15.0

-10.0

-5.0

0.0

5.0

10.0

15.0

1999年度

2000年度

2001年度

2002年度

2003年度

2004年度

外来収益増加率

1日平均外来患者数増加率

グラフ7

外来収益の増減をみます。

また、それが患者数の増減、入院単

価(日当円)の増減によるのかを分

析します。

外来日当円の推移

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

1999年度

2000年度

2001年度

2002年度

2003年度

2004年度

外  来

投薬・注射 処置・手術 検査・放射線 初診・再診料 その他

*構成比で修正

グラフ8

外来日当円(外来患者 1人 1日当り

単価)の動きとその要因分析を行い

ます。

院外処方の実施等の変化などと重

ねて分析します。

外来日当円比較

0.0

25.0

50.0

75.0

100.0外  来

投薬・注射

処置・手術

検査・放射線

初診・再診料

その他

2004年度

比較病院

2004年度 グラフ9

外来日当円(外来患者1人1日当

り単価)を類似の同規模病院、同一

設立主体平均、同規模病院平均と

比較したレーザーチャートです。

自病院の外来単価がどれくらいの

位置にあるのかを見ます。

※実際の数値は、分析シートの

「経営分析に関する調」を見てくださ

い。

Page 20: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 20 -

他会計繰入金分析

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

80.0

90.0

100.0

1999年度

2000年度

2001年度

2002年度

2003年度

2004年度

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

160,000

180,000

100床当り総繰入額

繰入金経常収益比率

繰入金資本的収入比率

グラフ10

他会計からの繰入の状況をみま

す。

繰入は損益収支と資本収支に分

かれますから、収支ごとの繰入比率

の動きをみます。

棒グラフは、両収支への繰入の

総額の動きを示しています。

繰入に対する考え方の変化を読

み取ると同時に、収支への影響を分

析します。

費用分析

-14.0

-12.0

-10.0

-8.0

-6.0

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

1999年度

2000年度

2001年度

2002年度

2003年度

2004年度

医業費用増加率人件費増加率

材料費増加率

減価償却費増加率経費増加率

*構成比で修正

グラフ11

費用の動きをみます。

また、その動きの要因分析を人件

費、材料費、減価償却費、経費に分

けて行います。

ただし、伸率は各年度のそれぞれ

の構成比を掛けて修正しています。

人件費増加要因分析

-14.0

-12.0

-10.0

-8.0

-6.0

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

1999年度

2000年度

2001年度

2002年度

2003年度

2004年度

人件費

平均賃金

職員数

グラフ12

人件費の動きをみます。

また、その動きの要因を平均賃金と

職員数に分解して分析します。

Page 21: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 21 -

職員数指標の推移

0.0

20.0

40.0

60.0

80.0

100.0

120.0

140.0

1999年度

2000年度

2001年度

2002年度

2003年度

2004年度

職員数

(ベッド

100対)

患者100

対職員数

医業収入

10億円対

職員数

グラフ13

3つの指標で職員数の動きを総

合的に把握します。

当局は都合の良い数値を一面

的に使ってきがちです。グラフ13と

合わせて人件費攻撃、「合理化」攻

撃に総合的に反撃しましょう。

人件費比率増加要因分析

-14.0

-12.0

-10.0

-8.0

-6.0

-4.0

-2.0

0.0

1999年度

2000年度

2001年度

2002年度

2003年度

2004年度

54.5

55.0

55.5

56.0

56.5

57.0

57.5

58.0

人件費

比率

医業収

人件費

総額

グラフ14

人件費比率の動きをみます。

また、その動きの要因を人件費総

額と医業収益に分解して分析しま

す。

人件費比率=人件費総額÷医業

収益×100

*例えば人件費総額が減少したと

してもそれ以上に医業収益が減少

すれば、人件費比率は増加する。

平均賃金増加要因分析

-10.0

-8.0

-6.0

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

1999年度

2000年度

2001年度

2002年度

2003年度

2004年度

平均賃金

基本給

時間外手

特殊勤務

手当

一時金

その他手

*構成比で修正

グラフ15

平均賃金の動きを見ます。

また、その動きの要因を基本

給、時間外手当、一時金等に分解

して分析します。

Page 22: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 22 -

基本給増加要因分析

-10.0

-8.0

-6.0

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

1999年度

2000年度

2001年度

2002年度

2003年度

2004年度

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

平均年齢

平均勤続年数

平均基本給増加率

グラフ16

平均基本給の動きを見ます。

また、その動きの要因を平均年

齢、平均勤続年数、人事院勧告と

の関係で分析します。

2000年3月31日貸借対照表

0

500,000

1,000,000

1,500,000

2,000,000

2,500,000

3,000,000

3,500,000

流動資産/負債 1,465,521 322,904

固定資産/負債 1,426,183 1,224,189

繰延/自己資本 0 1,309,006

欠損金/剰余金 0 35,605

1 2

グラフ17

貸借対照表をグラフ化したもの

です。

2000年 3月 31日と 2005年 3月

31 日の2つのグラフが示されます。

両者を比較し、資金繰りの状況の

変化を視覚を通じてつかみます。

例えば、右側最上部の流動負債

と左側最上部の流動資産の厚みを

比較し、左側が厚ければ厚いほど

資金繰りは楽ということになります。

自治体病院の場合、左側最下部

の欠損金が相当あっても、右側の

自己資本が増強されそれを上回る

厚さがあれば、ある一定の資金繰り

は確保できることになります。

3)類似病院、全国平均との比較

次に類似病院、総括表の分類(設立主体別、経営規模別平均)との比較をやってみましょう。「損益」「貸

借」「資本収支と資本構成」「経営分析に関する調」「給与」の各EXCELシートで自病院の 2004 年度の横

のスペースに 2004年度分の類似病院の各資料をコピー&ドロップします。病床数、病床構成、立地などの

できるだけ類似した病院を選びます。

設立主体別、経営規模別平均の 2004 年度の資料はすでに記載してあります。比較表は、必要部分を

選択して印刷してください。

また、「簡易分析」シートを開くと「簡易分析比較表」が記載してあります。2004年度資料で各種比較検討

ができます。活用ください。

その他に、下記のような安全性指標、100 床当りの比較数値表を用意しています。活用してください。

Page 23: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 23 -

安全性指標(「貸借」シートの85行以下に掲載)

100 床当り損益比較 2004 年度 (「損益」シートのZ列以降に掲載)

A病院 B病院 総計 都道府県 指定都市

2)損益計算書

1.総収益 2,343,082 1,276,922 1,744,258 1,755,337 2,117,013

(1)医業収益 2,177,756 1,135,826 1,518,825 1,418,149 1,770,506

ア.入院収益 1,002,996 767,754 961,254 970,369 1,143,357

100 床当り資産の状況 2004 年度 (「貸借」シートのR列以降に掲載)

項目 A市 B町 総計 都道府県 指定都市

1.固定資産 1,952,214 1,393,321 2,216,020 2,307,492 3,230,330

(1)有形固定資産 1,951,515 1,393,005 2,192,392 2,286,672 3,196,214

ア.土地 13,964 52,857 229,950 179,396 392,918

イ.償却資産 3,125,685 2,942,261 3,064,398 3,399,476 4,030,304

常勤・非常勤別職員数 2004 年度 (「経営分析に関する調」シート 114 行以降に掲載)

1999年

2000年

2004年

比較病

院 総計

都道府

指定都

職員数(常勤+非常勤) 168 171 168 138 25167 7346 1562

常勤職員数 139 141 ・・・・ 142 137 236,39 71,38 15,00

非常勤職員数 29 30 26 1 15285 207 624

非常勤職員比率 17.2 17.4 15.5 0.8 6.1 2.8 4.0

*この表の一部は人件費関係のグラフと一緒に印字されるようにしています。

1999 年度

2000 年度

2004 年度

比較病院

総計 都道府県

指定都市

流動比率 136.9 101.5 87.8 440.3 244.7 212.6 101.2

現金比率 11.6 12.7 ・・・・ 4.1 48.2 126.5 99.2 34.8

固定比率 0.0 0.0 0.0 0.0 7.2 14.4 8.8

固定長期適合率 91.3 99.5 104.0 85.1 85.1 87.9 98.3

・・・

・・・

・・・

・・・

Page 24: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 24 -

【資料1】

1総括表 ファイル名 備 考

(1)自治体病院の占める地位

ア 病院数 by010101 経営主体別、病院種別別

イ 病床規模別病院数(一般病院) by010102 経営主体別

ウ 病床種類別病床数 by010103 病床種別別

エ 病床数構成割合の年度別推移 by010104 経営主体別

オ 都道府県別・経営主体別病院数一覧 by010105

(2)都道府県別にみた国公立病院の病床の占める割合 by0102

(3)経営主体別・人口段階区分別にみた一般病院数及

び一般病床数

*人口段階区分は、自治体人口

(ア)一般病院数 by010301

(イ)一般病床数 by010302

(4)経営主体別・規模別自治体病院数一覧 by0104

(5)施設及び業務概況

ア 年度別推移 by010501 病院数、病床数、患者数、利用率等

イ 経営主体別施設概況 by010502 病床数、建物延面積等

ウ 経営主体別施設及び業務概況 by010503 病床数、職員数、看護基準、患者数等

エ 経営規模別施設及び業務概況 by010504 同上

オ 人口段階区分別 by010505 同上

(6)損益計算書

ア 経営主体別(総計) by010601 都道府県、指定都市、市町村別等

イ 経営主体別(黒字・赤字別) by010602 同上

ウ 経営規模別(黒字・赤字別) by010603 500 床以上、400 床以上 500 床未満等

エ 経営主体別・経営規模別

(ア)都道府県(黒字・赤字別) by01060401

(イ)指定都市(黒字・赤字別) by01060402

(ウ)市(黒字・赤字別) by01060403

(エ)町村(黒字・赤字別) by01060404

(オ)組合(黒字・赤字別) by01060405

(7)貸借対照表

ア 年度別推移 by010701 自治体病院総計

イ 経営主体別

(ア)総計 by01070201 都道府県、指定都市、市町村別等

(イ)黒字団体 by01070202 同上 黒字団体

(ウ)赤字団体 by01070203 同上 赤字団体

(8)資本収支の状況

ア 年度別推移 by010801 自治体病院総計

イ 経営主体別 by010802 都道府県、指定都市、市町村別等

ウ 経営規模別 by010803 500 床以上、400 床以上 500 床未満等

(9)費用構成表(比率)及び医業収益に対する費用比率 費用構成と医業収益対費用比率

ア 年度別推移 by010901 自治体病院総計。費用構成のみ

イ 経営主体別(黒字・赤字別) by010902 都道府県、指定都市、市町村別等

ウ 経営規模別(黒字・赤字別) by010903 500 床以上、400 床以上 500 床未満等

(10)財務分析に関する調 各種安全性指標

ア 年度別推移 by011001 自治体病院総計

イ 経営主体別 by011002 経営主体別

(11)病床利用率の推移 病床利用率のみ

ア 病院種別 by011101 全病院総計と自治体病院別

イ 病床種別 by011102 同上

(12)経営分析に関する調

ア 経営主体別 都道府県、指定都市、市町村別等

Page 25: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 25 -

(ア)黒字病院 by01120101_1 利用率、患者数、日当円等

(ア)黒字病院 by01120101_2 費用比率、100 床当り職員数等

(イ)赤字病院 by01120102_1 利用率、患者数、日当円等

(イ)赤字病院 by01120102_2 費用比率、100 床当り職員数等

(ウ)全医業 by01120103_1 利用率、患者数、日当円等

(ウ)全医業 by01120103_2 費用比率、100 床当り職員数等

イ 経営規模別 500 床以上、400 床以上 500 床未満等

(ア)黒字病院 by01120201_1 利用率、患者数、日当円等

(ア)黒字病院 by01120201_2 費用比率、100 床当り職員数等

(イ)赤字病院 by01120202_1 利用率、患者数、日当円等

(イ)赤字病院 by01120202_2 費用比率、100 床当り職員数等

(ウ)全医業 by01120203_1 利用率、患者数、日当円等

(ウ)全医業 by01120203_2 費用比率、100 床当り職員数等

(13)職種別給与(平均給与月額)に関する調 事務、医師、看護師、その他等

ア 年度別推移 by011301 自治体病院総計

イ 経営主体別 by011302 都道府県、指定都市、市町村別等

ウ 経営規模別 by011303 500 床以上、400 床以上 500 床未満等

(14)医業収支比率 100 以上・未満による分析

ア 施設及び業務の概況 病床数、職員数、患者数等

(ア)経営主体別 都道府県、指定都市、市町村別等

a 比率 100 以上の病院 by01140101a

b 比率 100 未満の病院 by01140101b

(イ)経営規模別 500 床以上、400 床以上 500 床未満等

a 比率 100 以上の病院 by01140102a

b 比率 100 未満の病院 by01140102b

イ 損益計算書(経営規模別,比率 100 以上・未満別) by011402 自治体病院総計

ウ 経営分析に関する調

(ア)経営主体別 都道府県、指定都市、市町村別等

a 比率 100 以上の病院 by01140301a_1 利用率、患者数、日当円等

a 比率 100 以上の病院 by01140301a_2 費用比率、100 床当り職員数等

b 比率 100 未満の病院 by01140301b_1 利用率、患者数、日当円等

b 比率 100 未満の病院 by01140301b_2 費用比率、100 床当り職員数等

(イ)経営規模別 500 床以上、400 床以上 500 床未満等

a 比率 100 以上の病院 by01140302a_1 利用率、患者数、日当円等

a 比率 100 以上の病院 by01140302a_2 費用比率、100 床当り職員数等

b 比率 100 未満の病院 by01140302b_1 利用率、患者数、日当円等

b 比率 100 未満の病院 by01140302b_2 費用比率、100 床当り職員数等

(15)建設投資等の伸び率,生産性等に関する調 by0115_1 自治体病院総計。建設投資等

(15)建設投資等の伸び率,生産性等に関する調 by0115_2 自治体病院総計。労働生産性

(16)借入先別,利率別企業債現在高 by0116 自治体病院総計

2個表

(1)施設及び業務概況に関する調 by02010101 都道府県、政令指定都市

(1)施設及び業務概況に関する調 by02010102 市町村、組合立病院

(2)損益計算書_1 by02010101 都道府県、政令指定都市

(2)損益計算書_2 by02010102 市町村、組合立病院

(3)貸借対照表及び財務分析 by02010301 都道府県、政令指定都市

(3)貸借対照表及び財務分析 by02010302 市町村、組合立病院

(4)資本収支に関する調 by02010401 都道府県、政令指定都市

(4)資本収支に関する調 by02010402 市町村、組合立病院

(5)費用構成表(比率)及び医業収益に対する費用比率 by02010401 都道府県、政令指定都市

(5)費用構成表(比率)及び医業収益に対する費用比率 by02010402 市町村、組合立病院

(6)経営分析に関する調 by02010601 都道府県、政令指定都市

(6)経営分析に関する調 by02010602 市町村、組合立病院

Page 26: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 26 -

(7)職種別給与に関する調 by02010701 都道府県、政令指定都市

(7)職種別給与に関する調 by02010702 市町村、組合立病院

附表

1都道府県別自治体病院(地方公営企業法適用)数 by0301

2病院医業経営団体一覧表 by0302

3一部事務組合構成団体一覧表 by0303

【資料2】

自治体立病院における独立採算制

病院当局はさまざまな「合理化」を推進する際、地方公営企業の経営原則を定めた地方公営企業法第3

条「地方公営企業は、常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進

するように運営されなければならない。」という規定を持ち出します。その意図は「効率性」を強調す

ることにあります。それは、独立採算制の単純な追求でもあります。 そこで、自治体立病院における独立採算制とは何かをしっかりと理解しておく必要があります。

そもそも、独立採算制とは、「経営に必要な経費は、経営に伴う収入によって賄う」という原則のことです。

このような単純な独立採算制を求めるのであれば、第3条の規定は必要ありません。

第3条で「経済性」と「公共性」との統一という経営原則をわざわざ規定している意図は、地方公営企業に

おける独立採算制の特殊性を強調することにあります。

地公企法 17 条の2第 1 項で負担区分の原則を定めています。自治体が負担すべきものを2つに分類し

ています。

①「1号経費」

地方公営企業に本来負担させることが適当でない経費(17 条の2第 1項 1 号)=行政的経費

例)看護師養成、救急医療、集団検診等

②「2号経費」

地方公営企業に負担させることが困難な経費( 17 条の2第 1項2号)

例)へき地医療、高度医療等

これを受けて、自治体立病院における独立採算制の意味を規定しているのが、17 条の 2 第 2 項です。

自治体立病院における「独立採算制」とは、負担区分により一般会計において負担するものを除き、

経営に伴う収入によって賄うということです。

*上記の他、地公法 17 条の3及び18条で一般会計からの補助、出資のあり方について規定

【地方公営企業法】

(経営の基本原則)

第三条 地方公営企業は、常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を

増進するように運営されなければならない。

(経費の負担の原則)

第十七条の二 次に掲げる地方公営企業の経費で政令で定めるものは、地方公共団体の一般会計又は他

の特別会計において、出資、長期の貸付け、負担金の支出その他の方法により負担するものとする。

Page 27: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 27 -

一 その性質上当該地方公営企業の経営に伴う収入をもつて充てることが適当でない経費

二 当該地方公営企業の性質上能率的な経営を行なつてもなおその経営に伴う収入のみをもつて充て

ることが客観的に困難であると認められる経費

2 地方公営企業の特別会計においては、その経費は、前項の規定により地方公共団体の一般会計又は

他の特別会計において負担するものを除き、当該地方公営企業の経営に伴う収入をもつて充てなければ

ならない。

【自治体病院への繰入と交付税】

上記の地方公営企業法の負担区分の規定を具体化するものとして次の2つの仕組みが取られています。

①総務省が繰出基準について毎年通知

② ①の一部を自治体への交付税で措置

【「自治体病院政策」作りへの提案】(2000 年 8 月 自治体病院部会)より 4.自治体病院における「経済性」と「公共性」の統一

地方公営企業とは、自治体が特定の事業(病院など)を特別会計のもとで企業として経営するものです。

そして、地方公共団体が経営する病院事業は、地方公営企業法の財務規定が適用され(地方公営企業法

第2条第2項)、「常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するよう

に運営されなければならない」(地方公営企業法3条)と、その経営原則が定められています。

このように、地方公営企業の一つである病院事業にあっては、「経済性」と「公共性」という、一見矛盾する

経営原則がうたわれています。この「経済性」と「公共性」という“経営原則”をどのように統一して捉えるかと

いうことが問われています。

重要な点は、「公共性」を如何なく発揮するためにこそ、「経済性」が求められているということです。自治

体とその経営する自治体病院は自治体を構成する地域住民により成り立ち、住民のために存在し、地域医

療を守るための“要”にならなければなりません。その役割を果たすためにこそ、その存在と施策の公開性、

説明責任が求められ、効率性が求められているのです。この場合、「経済性」は「公共性」に従属するので

す。

5.「負担区分」の確立の重要性

このことは、「独立採算性」と「負担区分」に置き換えることができます。一般に独立採算とは「経営に必要

な経費は経営に伴う収入によって賄う」ということですが、地方公営企業におけるそれは正確には、「負担

区分により一般会計において負担するものを除き、経営に伴う収入によって賄う」といわれるべきものです。

つまり、自治体病院の使命と役割からして元々不採算であるもの、あるいは最大限効率的運営をしてもな

お不採算であるものを担わざるを得ず、そこには当然一般会計からの負担義務があるということです。自治

体と自治体病院の使命と役割を住民に対する責任として果たすためには、「負担区分」の原則を厳密に確

立することが重要です。

自治体病院は、今、臨調「行革」路線と「規制緩和」の“レール”に乗って医療を資本の市場に変えるのか、

それとも国民のくらしと健康を守るための医療をめざし公共性を守るのか、この二つの選択の岐路に立って

いるといっても言い過ぎではありません。

Page 28: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 28 -

このような中にあって、自治体が自治体病院の経営において、医療における「公共性」の何たるかを住民

福祉の向上の観点から指し示していくことが求められています。

端的に言って、医療に対する自治体からの財政措置を強めることです。問題は、自治体がそれを“重荷”

として受けとめるのではなく、必要不可欠な住民のための政策選択の課題として、自治体の主人公である

住民の合意、住民と共に地域医療・福祉をつくっていく方向によって「経済性」と「公共性」の統一をめざす

ことです。

【資料3】

自治体病院への繰入についての留意点 病院収入の大半は診療収入ですが、その他にも一般会計からの繰入れ金、国庫補助金などがあります。

総務省は各自治体からその経営する病院への繰出し基準について通知を毎年出しています(直近は総

財公第30号。平成14年4月14日)。概略は以下の通りです。

また、この通知の趣旨に沿って繰出しが行われた場合地方交付税(普通交付税と特別交付税)でその一

部が措置されます。

普通交付税に関しては H15 年度で病院の場合、506,000 円×病床数+元利償還金(H3 年度以降許可)

×2/3×0.6 が措置されます(2003 年度以降の事業から 1/2×0.6 となるので要注意)。

特別交付税では、病床割、救急病院割等があります。

繰出し基準には、明確に数値で示されているものもありますが、そうでないものもあります。適切な水準

の繰出し金を確保するには、しっかりとした説明根拠と政治力が必要です。また、繰出し金の大半は交付

税措置がされていますので、「繰出し金」即「(一般会計の)真水の支出」ではないことを明確にすることが

重要です。

国庫補助金は施設整備と運営費に分け、補助事業が細かく毎年定められます。該当する事業を行った

場合、補助金が交付されます。

普通交付税措置単価の推移 単位:千円 97 年

98 年

99 年

00 年

01 年

02 年

度 03 年度 4 年度 5 年度

交付税・1 床当たり 742 710 706 657 592 544 506 507 519

前年対比(%) -4.3 -0.6 -6.9 -9.9 -8.1 -7 0.2 0.2病院

(市町村)

元利償還金に対

する交付基準 3 年度~13 年度許可債の元利償還金×0.4

3 年度~

13 年度

分×

0.4。14

年度分

~×0.3

3 年度~13

年度分×

0.4。14 年

度分~×

0.3。15 年

度分×

0.225

3 年度~13

年度分×

0.4。14 年

度分~×

0.3。15,16

年度分×

0.225

市町村立診療所(1診

療所当り) 6,200 7,100 7,100 7,100 7,100 7,100 7,100 7,100 7,100

看護婦養成所(生徒1

人当り) 645 645 668 695 721 737 749 769 798

Page 29: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 29 -

特別交付税措置単価の推移(市町村等分) 単位:千円 区分 97 年度 98 年度 99 年度 00 年度 01 年度 02 年度 03 年度 04 年度

不採算地区病院 599 599 619 663 663 663 663 636

精神病床 293 300 450 493 493 493 493 473

結核病床 293 300 450 493 493 493 493 473

リハビリ病院 293 300 450 493 493 493 493 473

周産期医療病床 1,506 1,551 1,885 2,066 2,289 2,289 2,289 2,197

病床割

小児医療病床 - - - - - - 899 863

A ランク 63,100 66,900 68,000 71,800 71,100 71,100 42,700 41,000

B ランク 36,400 38,600 39,200 41,400 40,900 40,900 24,500 23,500

B’ランク 30,000 31,800 32,300 34,100 33,600 33,600 20,200 19,400

救急病院

C ランク 24,800 26,300 26,800 28,300 27,800 27,800 16,700 16,000

小児医療提供病院 - - - - - - 5,200 5,000

救命救急センター 30 床

以上/所 44,700 47,400 48,200 50,900 50,300 50,300 50,300 48,300

救命救急センター 30 床

未満/床 1,612 1,709 1,736 1,831 1,809 1,809 1,809 1,737

追加費用(対象職員当り) 127 131 132 130 127 122 113 108

繰入総額と交付税措置総額 単位:百万円 1997 年度 1998 年度 1999 年度 2000 年度 2001 年度 2002 年度 2003 年度 2004 年度

収益的収入繰入額 566,288 569,700 575,802 568,058 562,658 559,812 550,907 536,988

資本的収入繰入額 197,175 176,188 169,465 161,013 161,482 170,961 180,944 168,867

繰入合計額 A 763,463 745,888 745,267 729,071 724,140 730,773 731,851 705,855

普通交付税 274,800 276,200 281,100 272,300 265,800 263,600 259,600 262,600

特別交付税 60600 65900 72200 77500 77700 77600 70,200 67,900

自治体病院交付税

総額 B 335,400 342,100 353,300 349,800 343,500 341,200 329,800 330,500

B/A×100 43.9 45.9 47.4 48.0 47.4 46.7 45.1 46.8

【通知】(概略) 第6病院事業

1 病院の建設改良に要する経費

(1)趣旨

病院の建設改良費について一般会計が負担するための経費である。

(2)繰出しの基準

病院の建設改良費(当該病院の建設改良に係る企業債及び国庫(県)補助金等の特定財源を除く。以下同じ。)

及び企業債元利償還金のうち、その経営に伴う収入をもって充てることができないと認められるものに相当

する額(建設改良費の 2分の 1及び企業債元利償還金の 3分の 2を基準とする。)とする。

2 へき地医療の確保に要する経費

(1)趣旨 省略

(2)繰出しの基準

ア 地域において中核的役割を果している病院が、巡回診療車、患者輸送車等を備えて巡回診療を行うた

めに必要な経費等のうち、その経営に伴う収入をもって充てることができないと認められるものに相当

する額とする。

イ 遠隔地医療システムの運営を行うために必要な経費のうち、その経営に伴う収入をもって充てること

ができないと認められるものに相当する額とする。

3 結核病院の運営に要する経費

(1)趣旨 省略

Page 30: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 30 -

(2)繰出しの基準 省略

結核病院の運営に要する経費のうち、その経営に伴う収入をもって充てることができないと認められるも

のに相当する額とする。

4 精神病院の運営に要する経費

(1)趣旨 省略

(2)繰出しの基準 省略

5 リハビリテーション医療に要する経費

(1)趣旨 省略

(2)繰出しの基準 省略

6 周産期医療に要する経費

(1)趣旨 省略

(2)繰出しの基準

周産期医療の実施に要する経費のうち、その経営に伴う収入をもって充てることができないと認められる

ものに相当する額とする。

7 公立病院付属看護婦養成所の運営に要する経費

(1)趣旨 省略

(2)繰出しの基準

公立病院付属看護婦養成所において看護婦を養成するために必要な経費のうち、その経営に伴う収入をも

って充てることができないと認められるものに相当する額とする。

8 救急医療の確保に要する経費

(1)趣旨 省略

(2)繰出しの基準

ア 救急病院等を定める省令(昭和39年厚生省令第8号)第 2条の規定により告示された救急病院における

医師等の待機及び空床の確保等救急医療の確保に必要な経費に相当する額とする。

イ 災害拠点病院が災害時における救急医療のために行う施設(通常の診療に必要な施設を上回る施設)

の整備に要する経費に相当する額とする。

9 公立病院付属診療所の運営に要する経費

(1)趣旨 省略

(2)繰出しの基準 省略

10 高度医療に要する経費

(1)趣旨 省略

(2)繰出しの基準

高度な医療の実施に要する経費のうち、これに伴う収入をもって充てることができないと認められるもの

に相当する額とする。

11 保健衛生行政事務に要する経費

(1)趣旨 省略

(2)繰出しの基準

集団検診、医療相談等に要する経費のうち、これに伴う収入をもって充てることができないと認められる

ものに相当する額とする。

12 経営基盤強化対策に要する経費

(1)不採算地区病院の運営に要する経費

Page 31: 経営分析の具体的方法(改訂版)new-kochi-iroren.sunnyday.jp/k_irouren/keieibunseki/...- 2 - 無作であったこと等) 3)改善、改革の方向、具体的道筋

- 31 -

ア趣旨 省略

イ繰出しの基準 省略

(2)医師及び看護婦等の研究研修に要する経費

ア趣旨 省略

イ繰出しの基準

医師及び看護婦等の研究研修に要する経費の 2分の 1とする。

(3)病院事業の経営研修に要する経費

ア趣旨 省略

イ繰出しの基準

病院事業の経営研修に要する経費の 2分の 1とする。

(4)保健・医療・福祉の共同研修等に要する経費

ア趣旨 省略

イ繰出しの基準

病院が中心となって行う保健・福祉等一般行政部門との共同研修・共同研究に要する経費の 2 分の 1

とする。

(5)経営健全化対策に要する経費

ア趣旨

「第5次病院事業経営健全化措置について」(平成 14 年 4 月 19 日付け総財経第 103 号)に基づく経営

健全化計画による不良債務解消のための繰出しに要する経費である。

イ繰出しの基準

経営健全化計画において不良債務を解消するために、一般会計から繰入れることを認められた額の範囲内と

する。

(6)病院事業会計に係る共済追加費用の負担に要する経費

ア趣旨 省略

イ繰出しの基準 省略

(7)広域的な連携等の推進に要する経費

ア趣旨 省略

イ繰出しの基準

① 病院事業の広域的な連携等の推進を図るための計画(以下「広域連携等推進計画」という。)の策定

に要する経費とする。

② 広域連携等推進計画に基づく広域的連携等の実施に伴い必要となる除去損等の経費のうち、経営に伴

う収入をもって充てることができないと認められるものに相当する額とする。

③ 経営主体の異なる自治体病院間において行われる病院の再編を伴う広域的連携等により、新たに必要

となる設備の整備に要する経費及び病院の経営基盤を強化し、健全な経営を確保するために要する経

費のうち、その経営に伴う収入をもって充てることができないと認められるものに対する出資に要す

る経費とする。