経済広報センターポケット・エディション・シリーズ No.129 政権移行期の中国経済の行方 ―日本企業の対中投資戦略への提言― 富士通総研経済研究所 主席研究員 柯  隆

経済広報センター 銀行 政権移行期の中国経済の行方 · 日本政策投資銀行 サンケイビル 三菱東京 ufj銀行 読売新聞 逓信博物館 ntt kddi

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〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階[email protected]://www.kkc.or.jp/

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ No.129

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経済広報センター

政権移行期の中国経済の行方―日本企業の対中投資戦略への提言―

富士通総研経済研究所 主席研究員

柯  隆

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経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

1

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

 

先進国を中心とした景気停滞により、中国経済にも翳りが見えてきている。しかし、これだけが理由で

はなく、中国経済自身が抱える課題も大きい。特に二〇一二年の中国経済を分析するには、秋に本格化す

る政権交代を忘れてはならない。また日本企業は、このように変化し続ける中国とどのように向き合えば

良いのか、引き続き重要な検討課題である。

 

そこで経済広報センターは、二〇一二年五月九日「政権移行期の中国経済の行方―日本企業の対中投

資戦略への提言―」について、富士通総研経済研究所の柯隆主席研究員を講師に講演会を開催した。

 

本稿はその講演会の概要を紹介するものである。

【講師略歴】(敬称略)

柯 

隆(Ke Long

一九六三年 

中国南京市生まれ

一九八六年 

南京金陵科技大学日本語学科卒業

一九九二年 

愛知大学法経学部学士取得

一九九四年 

名古屋大学大学院経済学研究科修士取得

      

長銀総合研究所国際調査部研究員

一九九八年 

富士通総研

経済研究所 

主任研究員

二〇〇五年 

同上席主任研究員

二〇〇七年 

同主席研究員

二〇〇〇~二〇〇九年 

財務省外国為替審議会委員、

      

財務政策総合研究所中国研究会会委員

二〇〇一~二〇〇二年 

JETROアジア経済研究所

      

業績評価委員

主要著書

・『中国の不良債権問題』日本経済新聞社、二〇〇七年

・『中国の統治能力』慶應義塾大学出版会、二〇〇六年

・『最新中国経済入門』(共著)東洋経済新報社、一九九

 

八年 

ほか多数

「政権移行期の中国経済の行方

―日本企業の対中投資戦略への提言―」

  

日 

時 

二〇一二年五月九日(水)

一〇時~一一時三〇分

  

場 

所 

経団連会館 

経団連ホール南

  

講演者 

柯 

隆 

富士通総研経済研究所

          

主席研究員

柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

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2柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

●柯隆氏による講演

 

今回はまず、現在の中国経済全体の動きにつ

いて報告をする。その上で、二〇一二年は政権

交代の重要な年なので政治について説明し、最

後に日本企業の対中国投資戦略について、時間

の許す限りお話しすることとしたい。

〈中国経済〉

 

二〇一二年第1四半期の成長率が速報値と

して八・一%と出ているが、二〇一〇年から

二〇一一年にかけて下降傾向が続いており、ま

だ反転する気配がない。最近北京・上海に出張

し、現場を視察したが、肌で感じる中国経済と

統計上の数字を比較するとほぼ一致しているよ

うに感じ、一、二年前の中国経済と比較すると

確実にスピード感が低下している。

 

これには幾つかの原因がある。第一に景気循

環論の視点から見ると、二〇一〇年の北京オリ

ンピックや上海万博など、公共工事投資の大型

プロジェクトが一巡し、二〇一一年は調整期に

入った。第二に中国としては不運であるが、こ

の調整期とほぼ同じタイミングで第二次金融危

機と言われる欧州債務危機が発生した。第三は、

やはり中国政府の政策問題である。政策の方法

とタイミングが合っていない。二〇〇八年リー

マンショック発生の際、温家宝首相は大きな焦

りの中、四兆元の政策を打ち出し中国経済のて

こ入れを行った。しかし四兆元を一度に拠出す

るのではなく分散すべきであったと考える。な

ぜなら、減速し始めた経済状況の中で、次の政

3柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

策カードを切ることができなくなってしまっ

た。その理由もあってか、二〇一一年下期から

現在まで決め手となるような政策を一つも打ち

出せていない。

 

このような状況の中で、今後の中国経済の行

方を考察すると、二〇一二年前半は比較的低い

成長、瞬間的には八%を割ることもあり得ると

考えられる。しかし、下期以降成長率が反転し、

トータルとして八・五%+αの成長率を達成す

るのではないかと予測する。

 

では、なぜ後半に成長率が上昇するのか。ま

ず二〇一二年は政権交代の年であり、胡錦濤国

家主席、温家宝首相にとって重要な年の一つで

あり、自分自身の引退年に成長率が鈍化するこ

とは決して都合のいいことではない。既に第

2四半期に入っているが、今後様々な政策が実

行され、成長率を一定水準まで上げることにな

ろう。それでは、どのような政策がなされるの

か。大きな政策方法として金融緩和政策が挙げ

られる。一般的に金融政策には①金利操作、②

預金準備率操作、③公開市場操作、の三点が挙

げられる。中国はインフレ懸念などの理由から

金利を下げる余地が少なく、ここ数年金利操作

を行っていない。そこで②の預金準備率操作を

行うことになるが、おそらく二〇一二年は数回

程度実施するだろう。しかし、これらの金融政

策、特に預金準備率操作は決して決め手になる

政策ではない。

 

これらに代わって、大きな効果が期待できる

政策が五つある。現在の中国経済は国内の有効

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4柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

需要が非常に弱く、この需要を促進することに

より大きな効果を上げることができる。第一に

最低賃金を上げることである。沿海部の主要都

市で既に発表されているが、向こう五年間、最

低賃金を毎年一〇%引き上げる。最低賃金が上

昇すると労働者の所得が上昇し、有効需要の刺

激につながる。第二は既に実施されているが、

都市部在住の退職者に支給されている年金の一

律一〇%引き上げである。第三は二年間ほど実

施した内需刺激策「家電下郷・自動車下郷(農

村住民向け家電・自動車購入補助制度)」を、

二〇一二年から日本のエコポイントに倣った、

「エコ補助制度(エコ家電・エコカー購入時に

一〇数%の補助をする)」に変えて実施するこ

とである。第四に金融面の政策として、現在中

小企業が困惑している資金の流動性の促進であ

る。中国の中小企業は担保資産に乏しく、正規

の金融機関から借りることができず、地下金融

である商工ローンのような金融機関を利用して

いる。二〇一二年、これらの地下金融機関で最

も高かった利率は六〇%にもなっており、現状

では瞬間的な流動性不足解消のため、オーバー

ナイトから長くて一週間程度の借り入れをする

ようであるが、もし年利に換算し一年間借りた

場合、企業は確実に倒産する。本来は日本の中

小企業信用保証制度のようなものを制定する必

要があるのだが、短期間に実現させることはで

きないため、政府が商業銀行に対し、中小企業

への貸し出しを増やすよう指導している。実際

どこまで流動性が良くなるか未知数であるが、

5柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

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一定の流動性向上がなされるため、需要の刺激

につながると考えられる。最後に固定資産投資

(公共投資)が考えられる。二〇一一年の高速

鉄道事故以降、高速鉄道建設工事が大きく縮小

したが、その後鉄道債が発行され、市場で大変

人気があったこともあり、今までのような過剰

投資はないものの段階的に進められ、下半期に

は安定的に投資されることとなり、経済成長に

つながるであろう。

〈中国経済の構造問題とリスク〉

 

現在の中国経済はどのような構造問題を抱

え、今後どのような改革努力をするのか。実は

これまでの三〇数年間の発展モデルは、既に限

界に来ていると考える。今までの発展モデルは

中国の安い人件費で安いメイド・イン・チャイ

ナの製品を製造し、他国に輸出して外貨を稼ぐ

ものであった。これは間違いなく、これまでの

経済成長を牽引してきたわけである。しかし、

このモデルには、一番働く労働者たちが経済成

長のメリットを享受できないという最大の問題

がある。経済成長はするが、これらの労働者た

ちは全く潤わず、時には怒りの爆発が社会の不

安定につながる。今までの労働集約型輸出製造

業を、早急に産業構造転換して、ミドルレンジ

の産業・製造業に改革し、働けば働くだけ報わ

れるシステムに変えなければならない。

 

ここで、産業構造の転換について整理する。

中国の産業構造の転換を技術の向上から見ると

三段階に区別できる。第一段階はコピード・イ

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6柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

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ン・チャイナ。外国企業の技術をコピーあるい

は習得することである。この段階に約三〇年か

かったが、一部の産業では既に終わりに近づい

ている。第二段階は、メイド・イン・チャイ

ナ。現在の中国は、正にこの段階であり、第一

段階でコピーした技術を最大限に活用し拡大生

産をしている。実はこれは、過去、日本が歩ん

できた道と全く同様である。第三段階はクリエ

イテッド・イン・チャイナ。中国で創造、開発

し自社ブランドを製造する。

 

ただ、第二段階から第三段階に移行する上で、

知的財産権の保護という重要なポイントがあ

る。この知的財産権が保護されなければ、地場

企業は技術のコピーをすることはあっても、自

ら基礎技術、基礎研究をするインセンティブが

働かないため開発をすることがない。これが実

は最大の問題である。つまり、中国で知的財産

権、著作権が保護されない最大の被害者は、中

国自身だと考えられる。短期的に見ると日本企

業・産業、あるいは個別の産業が被害を受ける

が、トータルで考えた場合、中国が最大の被害

者となる。これを中国政府、企業、中国人一人

一人が早急に理解しなければならない。しかし、

残念ながら現状は知的財産権が保護されていな

い。最近中国人の書いた本に「研究開発しなけ

れば、座して死を待つようなもの。研究開発す

れば、自殺するようなもの。」といった言葉が

あったが、今の中国企業は、知的財産権が保護

されていない状況の中で身動きが取れない状態

となっており、縮小した付加価値の中で単純生

7柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

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産を繰り返すことしかできない。今後低付加価

値から中付加価値、そして将来、高付加価値

に変革しなければ、中国の成長持続は考えら

れない。

 

ただ、ここで一つの大きな隠れたリスクを確

認する必要がある。この高付加価値への構造改

革は必ずしも全員に恩恵を与えない。生産性が

上昇すると労働者、特に技術力の低い単純労働

者は淘汰される。これはアメリカにおいても

一九二〇年~三〇年に同様の動きがあった。淘

汰された労働者、あるいは失業者を吸収する器

を用意しなければ、中国社会は大混乱を招く。

 

この吸収する器とはサービス産業の振興であ

る。サービス産業には二種類あり、一般的な飲

食店、ホテルなどのサービス産業と金融、情報、

物流、流通といった近代的サービス産業である。

特に中国では飲食産業のような一般的なサービ

ス産業は強いが、その反面、近代的サービス産

業が大変弱い。この近代的サービス産業はネッ

トワーク化産業とも言われ、中国には既に金融

業、IT情報産業、物流業などが確立されてい

るが、ネットワーク化がされておらず、サービ

ス産業の機能が果たされていない。

 

物流業について事例を申し上げる。中国では

物流業自体は確立されているが、各企業一社当

たりの保有トラック数を調査すると、三台に達

していない。近代的サービス産業の特徴は、規

模の経済性と範囲の経済性の両方を兼ねること

であり、個々の業者の規模が小さいと規模の経

済性の効果がなくなり、それによって範囲の経

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8柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

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済性の効果も期待できなくなる。今後どのよ

うにしてこれらのサービス産業を育成振興し、

近代的サービス産業にするかが大きな課題で

ある。

 

最近の外国企業の直接投資を見ると、日本も

含めこの三産業への投資が増加している。情報

産業においては、一般的なIT企業が半導体や

パソコンの組立てを行っていたが、最近では

データセンターやクラウドの作成をする方向に

進んでいる。このように今後五年から一〇年の

間に近代的なネットワークが確立され、近代的

サービス産業が段階的に構築されれば、新たな

中国産業像が見え、同時に製造業のレベルアッ

プが図られる。

〈経済発展と環境問題〉

 

次に環境と産業について申し上げる。環境問

題は産業と関連するが、経済学的には外部不経

済の問題と考えられる。多くの経済問題は成長

と同時に自ずと解決されることが多いが、環境

問題は経済成長するだけでは改善されず、非常

に深刻な問題である。この経済発展した三〇年

を振り返り、中国人の生活空間を見ると、改善

された部分と悪化した部分に分類される。例え

ば、改善されたのが家の中である。一般家庭で

もしっかりリフォームされており、ホテルの部

屋のようになっている。反面、公共空間におい

ては全く進展がない。これは中国人自身が公共

環境について全く関心がなく、環境改善に興味

を持たないためである。中国の環境改善の第一

9柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

歩は中国人自身が公共スペースに関心を払うこ

とである。このような話をすると、法による秩

序促進を唱える人も多いが、法律制定と同時に、

その法律が確実に機能する司法制度の強化が必

要である。まだ中国の司法制度はそこまで強化

されていない。

 

そして最後に、環境に関しても正確で信頼の

ある統計の公表が必要である。以前北京への出

張時、成田空港のラウンジで「微博」(ウェイ

ボ―中国語版ツイッター)を利用し、中国の環

境保護省発表の北京大気汚染観測値とアメリカ

北京大使館の発表を比較する機会があった。ア

メリカ大使館の発表ではPM二・五(肺深く吸

入される浮遊微粒子二・五ミクロンの小さい微

粒子)という大変危険な大気汚染数字を発表し、

マスク着用を勧告していた。一方、環境保護省

では良好と発表されていた。この違いを不思議

に思い調査したところ、結論として、採取サン

プル場所の違いが原因だと分かった。アメリカ

大使館では北京市内中心の大使館庭で採取して

いるが、環境保護省は数箇所のサンプル地点で

採取しており、市内から遠く離れた郊外でのサ

ンプルが多い。やはり多くの住人がいる市内で

のサンプルが必要であり、信頼性がまだ低い。

また最近は、特に北京や上海などの大都市で喘

息患者の増加が激しい。しかし、その正式な統

計がなく全体像が見えない。結局NGOが一部

推計し、おおよその数字を公表しているが、こ

れでは正確な対策が講じられない。これが中国

で環境の保全、環境の改善に対し大きな障害と

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10柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

なっている。

 

さらに水質汚染、ごみ問題も大きな問題だ。

中国ではごみ処理の多くは埋め立てをされてお

り、地下水に影響をきたす。今後どのような方

法で改善されるか大変難しい問題だが、法律、

国民意識の啓発、そして統計インフラの整備を

確立しなければならない。環境以外の問題は努

力することにより解決されることが多いが、環

境問題は中国経済問題の最後に発生する最大で

深刻な問題となるであろう。

〈中国経済問題のリスク〉

 

次に経済問題のリスクについて整理をする。

現在の中国経済を取り巻く最大のリスクは政治

リスクだ。経済改革についてはこの三〇年間、

紆余曲折しながら、そして徐々にではあるが確

実に改革され、市場経済の形状ができつつある。

しかし、もう一方の政治改革はほとんど進めら

れていない。これは今の中国にとって、大変不

幸なことである。

 

最近、発表までに至っていないが論文を書い

た。「中国の失われた一〇年」というものだ。

実は正式に発表する勇気がなく未発表にしてい

る。この胡錦濤政権の一〇年は改革らしい改革

が全く行われていない、つまり中国にとって失

われた一〇年だということだ。江沢民・朱鎔基

時代も数々の問題はあったが、朱鎔基は大変な

労力の中、中国経済の基礎的な方針、基礎的な

構造を構築した。例えば、金融改革、財政改

革、国有企業改革などの方向性を明確に打ち出

11柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

した。本来ならば後継者の温家宝がもう少し努

力し推進するべきであったが、結局この一〇年

全く実施しなかった。

 

リーダー論について自分なりに少し考察した

のだが、政治、企業、ひいては家庭でも、ナン

バーワンとナンバーツーの役割分担について大

変興味深い発見があった。一般的にナンバーワ

ンが理想主義(ロマンチスト)でナンバーツー

が実務主義(リアリスト)の場合、物事が大変

前進する。毛沢東と周恩来、江沢民と朱鎔基を

例に挙げると、毛沢東の評価には良し悪しはあ

るが、彼は理想主義者であり、周恩来はリアリ

ストである。江沢民も歌や書道を嗜み、理想論

を唱えることが多く、一方朱鎔基は、常に厳し

い顔で物事を推進していくリアリストである。

つまりナンバーツーは実務派であるべきであ

る。しかし、現政権の胡錦濤は慎重派、悲観論

者であり、温家宝は夢物語を語るロマンチスト

である。つまり実務を行う者が不在であり、失

われた一〇年となった。この一〇年が失われた

ため、政治リスクが高まり、その延長線上にあ

る経済リスクを引き起こしている。

〈格差問題〉

 

経済リスクの中には、前述した外部不経済で

ある生態環境の悪化以外に、直接経済問題に関

連する所得格差の拡大がある。毎年全国人民代

表大会で、格差縮小のスローガンが叫ばれるが、

縮小したことは一度もない。一般的に所得格差

はジニ係数で測るが、この数値も増加傾向であ

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12柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

り、不平等に対する暴動も多発していることか

ら格差拡大が増加していることが理解できる。

この格差拡大の理由は、不十分な所得分配から

起因している。中国では第一次所得分配と言わ

れる労働分配率が低過ぎる。労働分配率とは、

一企業の収益を従業員給料としていくら支払っ

たか、また国家の場合、GDPのどれくらいを

国民所得に充てるのかが労働分配率である。日

本の場合、約六〇%でアメリカは約七〇%であ

るが、中国は三九%と大変低い。労働分配率が

低い国では、低所得層やサラリーマン世帯の所

得が上昇しにくい構造となる。次に第二次所得

分配と考えられる課税については、中国では、

賃金所得は累進課税方式を導入しているが、資

産所得は定率税制になっており、富裕層にとっ

て負担が小さい。その上、相続税が導入されて

いない。日本の場合、三億円を超えると五〇%

の相続税が発生する。なぜ相続税が導入されな

いのか。実は政治リスクと関係している。資産

課税する場合、資産調査が必要となってくるが、

人民の資産調査は実施できても、共産党指導者

の調査は不可能である。根本的な中国政治の根

幹を揺るがす問題となるため、実施することが

非常に困難である。今後どのように推移するか、

大きな課題となるであろう。その他にセミマク

ロ問題としての市場の独占化があるが、これは

主に国有企業の民営化問題である。これも全く

改革されておらず、在任期限一年となった温家

宝にとっては無策で終るだろう。

13柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

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〈通貨問題〉

 

通貨問題の説明には大変多くの時間が必要だ

が、時間の関係上簡単に今後の元通貨について

申し上げる。

 

最近数カ月間の温家宝と周小川人民銀行総裁

二人の発言によって、国際貿易不均衡が是正さ

れている、人民元為替レートは均衡状態に近づ

いていると繰り返し述べることから、二〇一二

年は二〇一一年、二〇一〇年のように毎年三%

~五%の切り上げは実施しないだろう。これは

実際に国際収支のインバランスが是正されてい

ることや、為替レートが均衡レートに近づいて

いることが重要ではなく、この発言の裏に、今

までのような切り上げはしないと宣言している

ことが重要である。もし二〇一二年に切り上げ

をするとしても二%前後であり、三%を超える

ような切り上げはないだろう。

 

特に任期期間が終了する周小川の思い切った

発言に注目が必要だ。彼は金利の市場化(自由

化)を早急に進める必要があると述べている。

これは極めて正しい発言で、通貨には、国内的

に見た金利と対外的に見た為替レートの二種類

の価値・値段がある。しかし、為替レートと

金利はコインの表裏であって、一方を自由化

し、もう一方をコントロールすることはあり

得ない。

 

では、なぜ金利の自由化をしてこなかった

か。簡単な議論であるが、国有銀行保護のため

に金利自由化を阻止してきたのだ。中国の規制

金利での貸出金利と預金金利の利ざやを見る

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14柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

と、三%を少し超えている。中国政府は預金金

利の上限と貸出金利の下限を設定することを通

じて、金利市場をコントロールしている。それ

により、銀行は三〇〇ベーシスポイント前後の

利ざやを確保でき、競争から保護されている。

世界の中でも特異な状況になっているが、これ

は預金保険機構制度のない中国にとって、不良

債権の引き当てのためにある。過剰投資を行っ

ても不良債権問題が起きないのは政策的につく

られた利ざやのためである。しかし、金利の自

由化が導入されれば、金利裁定機能が働き最適

化し、さらに金融機関間の競争が激化するので、

必ずしもメガバンクである国有銀行が有利では

なくなる。長期的には、中国国内の中小金融機

関が国有大銀行をのみ込むような現象が発生す

る。これは中国共産党にとって危険な問題であ

る。なぜなら中国政府にとって国有銀行は、個

人的造語であるが、第二の国家財政である。税

金の徴収は国民の反感を買うが、預金は国民が

自主的に拠出することであり、非常に使い勝手

のいい第二の国家財政である。この仕組みを存

続するため保護してきたが、国際経済の分野で

は為替レートの自由化が迫られてきており、金

利をいつまでもコントロールすることができな

くなった。今後、金利の自由化を進めながら、

為替レートの変動も行うことになる。最近の為

替動向を見ると、為替変動幅が拡大しており、

ここからも一連の仕掛けが読み取れる。

15柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

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〈人民元の国際化〉

 

次に、人民元の国際化の動きについて話をし

たい。人民銀行担当者にとって、明確な発言を

避けたくなる内容なので、彼らの代弁者として

申し上げる。

 

これには三段階の戦略がある。第一段階は周

辺国家との人民元の自由兌換の実現である。こ

れはもう既に実施されており、ミャンマーやベ

トナムなどでは人民元を自由に使用できる。決

済通貨としての機能を既に果たしている。第

二段階は人民元の地域化である。英語で言う

とRegionalization

であり、東アジア域内で人

民元の国際化を図ることだ。国境を接していな

い国が多数存在するので、オフショアマーケッ

トが必要となる。中国は現在この段階である

が、香港を一つのオフショアマーケットの拠点

としている。シンガポールや東京がこの人民

元オフショアマーケットの構築を目指してお

り、中国人民銀行と財務省国際局などが対話

を始めており、今後金融協力をどのように進

め、協定を締結するかが大きな課題である。少

し時間がかかっているが、いずれ実現するだろ

う。最終段階は真の意味での人民元の国際化、

Internationalization

である。その実現は大変遠

い将来となるだろう。なぜなら、資本取引の自

由化が必要となり、国内の金融制度の改革、金

利の自由化、国有銀行の民営化など、あらゆる

改革をしなければならない。つまり、中国の経

済に対する自信と、決済通貨だけでなく、貯蓄

通貨としての機能も重要になるため、多くの意

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16柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

味でこの第三段階は大変な時間を要する。

〈対中国の投資戦略〉

 

最後に、対中国の投資戦略の考えを述べる。

日本はこの二〇年間デフレスパイラルに陥り、

これを克服できていない。このデフレ克服がで

きないのは、実はエコノミストに責任があるの

ではないか。日本の経済学者や、その他のエコ

ノミストの多くはなぜかケインズ学派である。

二〇年間ケインズ学派の経済学者、エコノミス

トが同じ処方箋で、同じ薬を処方し続けた。そ

れでもデフレを克服できない。再び同じことを

繰り返し二〇年が失われた。これは一つの前提

条件が変化したのである。ケインズ時代は供給

不足の経済であって、今の世界は供給過剰の経

済である。つまり今までの処方箋、処方薬では

効果がないのではないか。 

 

そしてもう一点、日本の大企業経営者につい

て述べる。

 

大企業の経営者はこの二〇年、コスト削減の

経営をとり続けてきた。先日も、ある大企業の

一万人のリストラが発表されたりしたが、世界

でこのようなリストラ発表により会社が再生す

るケースは極めて少ない。是非提言したいのは、

コストは削減するものではなくて、最適化する

ものである。過剰なコスト削減は、社員に将来

質素な生活を担保するだけであって、夢を与え

られない。実はこれは経営に大きなダメージを

与える可能性が出てくる。

 

日本ではこのコスト削減経営が二〇年続けら

17柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

れたため、特に大企業にとってブランド力の低

下という大きな問題を引き起こした。二〇一一

年のなでしこジャパン優勝、コパ・アメリカサッ

カー優勝インタービューのFIFAスポンサー

看板にはどちらも韓国企業が三社あったのに対

し、日本企業は一社のみであった。ここからも

日本企業が直面している現実が理解できる。広

告・広報のコストが大幅にカットされているの

だ。これが継続されると、ブランド力は益々低

下する。ブランド力とは皆さんもご存知だろう

が、カルチャー、価値観、そしてステータス

シンボルである。これらを付与せずコストば

かり削減すれば、いずれ商品も売れなくなっ

てしまう。

 

私は日本の経営者に対し、自分の会社、自分

の産業のビジョンを語るべきだと提言してい

る。コスト削減ではなく、最適化するのだ。年

始の仕事始めの挨拶においても、コスト削減を

言うのではなく、必要なコストは一切削減しな

い、最適化していき、拡大均衡経営を推進する、

と言うべきだ。これは中国進出においても同

様である。

 

最後に中国進出時の注意点を一点だけ述べる。

 

それは人脈を安易に信用しないことだ。決し

て人脈が重要ではないと言っているのではな

い。人脈を生かす戦略がなければ、この人脈

は重荷になるし、使い方を誤ると大問題とな

る。現在日本企業は、中国に直接投資会社が

約二万五〇〇〇社、技術移転等の協力会社が

一万五〇〇〇社、合計で四万社も進出している。

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18柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

これほど多くの会社を設立する必要が本当に

あったのか。これらの多くは企業の会長・社長の

訪中の際に、中国幹部との懇談の中で決められ

たことが多いのではないかと推測するが、今後は

中国幹部ばかりに面会するのではなく、現地従

業員に会って本音を聞くことが重要ではないか。

●質疑応答

【質問】中国の土地市場における諸問題と、地

方政府について、特に地方政府の土地に端を発

する不良債権問題の今後についてお聞きした

い。一時期、地方政府の収入の約半分が土地売

却による収入だと聞いたが、今後このような仕

組みが立ち行かなくなり、崩壊すると予測する

人もいるが、どう考えるのかお伺いしたい。

【柯隆】この問題は非常に重要である。中国の

中央会計検査院に当たる機関が調査したとこ

ろ、地方債務の合計額が一〇兆七〇〇〇億人民

元で、GDP比で約一七%と言われている。た

だ、不良債権やバランスシートは、その時の経

済情勢、成長率の高低、インフレ率の上下など

によって、大きく変化するものである。一〇・

七兆元は決して小さい数字ではないが、しかし、

そこまで深刻になる数字でもない。ただし、こ

の不良債権問題は、債権者の心理、憶測によっ

て大きく左右されることが多く、銀行で例える

なら、取り付け騒ぎによる銀行の倒産などが起

こることも考えられる。

 

北京、上海などの沿海部は、サービス産業や

一部製造業などの実体経済が確立されており、

19柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

土地売却以外の税収入があるので、比較的問題

はないと思われるが、中部から西部にかけた都

市で、産業そのものが弱く、土地売却に伴う歳

入に頼っている雲南省や貴州省、四川省などは

今後非常に厳しくなるだろう。

 

これらから、中国の国家財政、中央政府の国

家財政は、現時点ではバランスシート上破綻す

る状態にはないが、将来は決して猶予できるも

のではない。温家宝が次期首相に負の遺産を残

すことになるが、不良債権による破綻を回避す

るためには、一定の成長率を上げつつ、インフ

レ率を三%から五%以内の一定した率に維持

し、これらの不良債権を償却する必要がある。

(文責 

国際広報部主任研究員 

加藤博也)

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20柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

経済広報センター

ポケット・エディション・シリーズ

 

※当センターホームページでバックナンバー全文を

  

ご覽いただけます。(http://www.kkc.or.jp/

◆二〇〇九年発行

No・97

 「中国経済の持続的成長への課題

       

─中国産業の構造変化─」

 

富士通総研 

経済研究所主席研究員

 

朱  

No・98

 「世界金融・経済危機の中で

        

日本はどう変化すべきか」

No・99

 「韓国はどのような国を目指していくのか」

 (韓国ジャーナリスト招聘シンポジウムより)

No・100

 「米国新政権の外交政策の見通しと日米関係の課題」

 (米国シンクタンカー招聘シンポジウムより)

No・101

 「経済危機の中、アジア・日本に

        

求められていることは何か」

 (アジア研究者招聘シンポジウムより)

No・102

 「将来の金融システムはどうあるべきか」

 

コロンビア大学ビジネススクール教授

 

チャールズ・W・カロミリス

No・103

 「世界経済危機と日本企業の課題」

 (米国ビジネススクール教授招聘シンポジウムより)

No・104

 「労働市場の環境変化と日欧の対応」

 (ベルリン日独センター・ケルン経済研究所との共催

 

シンポジウムより)

21柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

No・105

 「CFRとの対話

      

─新時代の日米グローバル課題─」

◆二〇一〇年発行

No・106

 「新時代の日米中関係を探る」

No・107

 「中国の景気対策と世界経済への影響」

 

中国社会科学院世界経済政治研究所所長

 

余 

永定

No・108

 「日本経済の再活性化

─米国研究者の視点─」

 (米国シンクタンク研究者シンポジウムより)

No・109

 「グローバル経済における日韓の競争力」

 (韓国ジャーナリスト招聘シンポジウムより)

No・110

 「中国経済の現状と展望」

 

野村資本市場研究所 

シニアフェロー

 

関 

志雄

No・111

 「オバマ政権の外交政策と日米関係」

 (ブルッキングス研究所・日本経済新聞社との共催

 

シンポジウムより)

No・112

 「グローバル時代の英国の選択〜日本へのヒント」

 (英国ジャーナリスト・シンポジウムより)

No・113

 「持続可能な成長戦略を達成するための

              

企業経営の課題」

 (米国ビジネススクール教授招聘シンポジウムより)

No・114

 「二〇一〇年─日米関係の新たな扉」

 (ライシャワー東アジア研究所との共催シンポジウムより)

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22柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

No・115

 「東アジアのさらなる成長・発展に向けた

       

日本ASEANパートナーシップ」

 (ASEANジャーナリスト招聘シンポジウムより)

◆二〇一一年発行

No・116

 「台頭するアジアと日米の役割」

 

シンガポール国際問題研究所 

所長

 

サイモン・テイ

No・117

 「世界金融危機後の経済体制と

          

通貨制度はどうなるか」

 

英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)

 

国際経済リサーチ・ディレクター

 

パオラ・スバッキ

No・118

 「日本の安全保障、経済と外交情勢

       

─米シンクタンク研究者の視点─」

 (米国シンクタンク研究者招聘シンポジウムより)

No・119

 「二〇一一年の米国の政治と政策見通し

         

─変化は起こるのか?─」

No・120

 「アジア・太平洋地域の発展とAPECの未来」

 (日本経団連との共催シンポジウムより)

No・121

 「変化する世界における日英の役割」

 (英国ジャーナリスト招聘シンポジウムより)

No・122

 「中国経済の行方」

 

野村資本市場研究所 

シニアフェロー

 

関 

志雄

23柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

No・123

 「アジア太平洋新時代における日印関係」

 (インドジャーナリスト招聘シンポジウムより)

◆二〇一二年発行

No・124

 「成長する企業のためのイノベーションと創造性」

ブリガム・ヤング大学ハワイ校 

学長

ハーバード・ビジネス・スクール 

名誉教授

スティーブン・C・ウィールライト

No・125

 「二一世紀アジア太平洋時代と日印関係

      

〜パートナーシップ発展への提言〜」

 (インド研究者招聘シンポジウムより)

No・126

 「ヨーロッパとドイツの現在と課題」

No・127

 「日韓新時代

  

〜震災を越え、今後の日韓関係と

         

協力のあり方について考える〜」

 (韓国ジャーナリスト招聘シンポジウムより)

No・128

 「アジアの成長・発展と日本

  

〜ASEANとのパートナーシップ強化に向けて」

 (ASEANジャーナリスト招聘シンポジウムより)

No・129

 「政権移行期の中国経済の行方

―日本企業の対中投資戦略への提言―」

 

富士通総研経済研究所 

主席研究員

 

柯  

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経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

25

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ

経済広報センター

ポケット・エディション・シリーズの発刊に際して

 

経済広報センターは、土光敏夫氏(第四代経済団体連合会会長)のイニシャティブによって一九七八年に設立

された財団法人です。当時国内では、企業の存在意義、あり方が厳しく問われ、また海外では、台頭してきたア

ジアの経済パワー、すなわち日本の動向に注目が集まっておりました。そこで、日本企業の考え方、行動、社会

における存在意義などを広く内外にお伝えし、相互理解のチャネルとなるという志の下に、政府から独立した民

間非営利組織として当センターが設立されました。

 

現在当センターは、経済界の政策提言や意見を社会にお伝えすることに力を入れております。そのような活動

を支える基礎として、国内ではビジネスパーソン、消費者、ジャーナリスト、教育者、有識者との対話の機会を

数多く設け、また、海外からは、多くのジャーナリスト、研究者、経済人、教育者を日本に招き、あるいは海外

諸都市において日本の経済人、研究者による講演会やシンポジウムを開催するなどして、日本に関する理解の深

化に努めております。

 

幸い、これら対話・講演・シンポジウムは、知識、情報、知見という観点からして深い内容となっており、会

員各位から、当センター関係者のみが知るにとどめず、広く公共の財産として共有するに値するものであるとの

ご指摘をいただきました。

 

そこでこれからは、内外における対話や講演会やシンポジウムの記録をまとめ、「経済広報センター・ポケッ

ト・エディション・シリーズ」として、逐次刊行することといたしました。会員の皆様のみならず、各界の方々

に広くご愛読いただければ幸いでございます。

 

このポケット・エディション・シリーズをより良いものとしていくために、各位のご教示を賜われば、幸甚に

存じます。

         

一九九九年一二月                

一般財団法人

経済広報センター

 

経済広報センターは、一般財団法人(二〇一二年四月一日

に財団法人より移行)として三七業界団体、一六六企業の賛

助を得て、経済界の広報活動を展開しております。

 

会長は米倉弘昌氏(日本経団連会長)、副会長は、岩沙弘

道氏(三井不動産会長)、渡辺捷昭氏(トヨタ自動車相談役)、

川村隆氏(日立製作所会長)、坂根正弘氏(小松製作所会長)、

宮原耕治氏(日本郵船会長)が務めております。

 

活動は次の四つの柱で展開しております。第一に、経済界

の情報や提言を広く国の内外へ発信し、政策形成プロセスに

おける議論を活性化するための広報活動、第二に、社会のメ

ッセージを多角的に受信し、経済界の活動にフィードバック

する広聴活動、第三に、豊かな知識社会を創造するための教

育界との対話、第四に、会員企業・団体の広報活動の支援な

ど、各種サービスの提供です。

 

これからも皆様方のご意見を伺いながら、各界の方々に

ご参加いただく活動を幅広く展開していきたいと考えており

ます。

(本シリーズの緑色は国内広報活動、青色は) 海外広報活動に関するものです

経済広報センター ポケット・エディション・シリーズ No.129発  行   2012 年 7 月 6 日発 行 所   一般財団法人 経済広報センター

東京都千代田区大手町1−3−2 経団連会館TEL:03(6741)0011 FAX:03(6741)0012

編集・発行人 中山 洋印  刷   株式会社 大巧

24柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」 柯 隆/「政権移行期の中国経済の行方─日本企業の対中投資戦略への提言─」

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〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階[email protected]://www.kkc.or.jp/

経済広報センターポケット・エディション・シリーズ No.129

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政権移行期の中国経済の行方―日本企業の対中投資戦略への提言―

富士通総研経済研究所 主席研究員

柯  隆