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世界のラグジュアリー企業ランキング 2018 ラグジュアリー業界の未来を形作るもの

世界のラグジュアリー企業ランキング2018 ラグ …...などの商業空間設計に関する提携契約を結んでいる。一方、Louis Vuittonは、メキシコ人建築家の故Luis

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Page 1: 世界のラグジュアリー企業ランキング2018 ラグ …...などの商業空間設計に関する提携契約を結んでいる。一方、Louis Vuittonは、メキシコ人建築家の故Luis

世界のラグジュアリー企業ランキング2018ラグジュアリー業界の未来を形作るもの

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目次

本レポートにおけるラグジュアリー品には、個人で使用することを目的としたラグジュアリー品を中心に、デザイナー衣料・靴、高級バッグ・アクセサリー(眼鏡類を含む)、高級ジュエリー・時計、プレミアム化粧品・香水が含まれる。

原著:「Global Powers of Luxury Goods 2018 Shaping the future of the luxury industry」注意事項: 本書はDeloitte Italyが発表した内容をもとに、デロイトトーマツ コンサルティング合同会社が翻訳したものです。和訳版と原文(英語)に差異

が発生した場合には、原文を優先します。

はじめに 3

上位100社に関する主要統計 4

ラグジュアリー業界の未来を形作るもの 5

世界経済の動向 9

上位100社ハイライト 13

世界のラグジュアリー企業ランキング上位100社 15

上位10社ハイライト 23

急成長ラグジュアリー企業20社 27

商品カテゴリー別の動向 29

地域別の動向 37

新ランクイン企業 45

調査の方法論とデータソース 47

注記 50

問い合わせ先 51

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はじめに

『世界のラグジュアリー企業ランキング』第5回発行にあたり

本レポートでは、2016年度(2017年6月30日までの会計年度)の連結売上高をベースにリストアップした世界のラグジュアリー企業上位100社について分析し、ラグジュアリー市場における重要トレンド、およびそれを取り巻くグローバル経済動向への見解について提示するものである。

2016年度、世界のラグジュアリー企業上位100社による個人向けラグジュアリー品売上高は2,170億米ドルであった。為替変動の影響を除いた売上高成長率は1%で、これは前年度の上位100社が達成した為替調整後の成長率6.8%に比べ、5.8ポイント減となった。上位100社の1社当たりラグジュアリー品年間平均売上高は22億米ドルであった。

ラグジュアリー市場は不透明な経済状況と地政学的危機から立ち直り、2017年末には年間売上高が1兆米ドル近くに達した。上位100社の明暗は大きく分かれている。前年比でラグジュアリー品の売上高が増加した57社のうち22社は2桁成長を遂げ、100社の3分の1近くが前年度よりも高い売上高成長率を達成した。同100社による全体の成長率の足かせとなったのは、2016年度の売上高が2桁のマイナス成長を記録した10社で、そのなかには上位10社の一角を占めるSwatch GroupとRalph Laurenも含まれる。とはいえ、ほとんどの企業のラグジュアリー品売上高成長率は2016年度で底を打ったように見受けられる。

本レポートの主要な調査結果は、以下のとおりである。

• ラグジュアリー企業数はイタリアが再び首位となった。一方、売上高シェアではフランスに本拠を置く企業がトップシェアを占めている。

• 化粧品・香水カテゴリーは2016年度、全商品カテゴリー中で最も好調な実績を上げ、また全カテゴリー中で唯一前年度を上回る7.6%の売上高平均成長率を達成した。

• 複合ラグジュアリー企業11社は、上位100社の中で突出した売上規模を誇っている。これら11社の2016年度のラグジュアリー品年間平均売上高は63億米ドルで、11社の売上高の合計は上位100社のラグジュアリー品売上高の32.2%を占めている。

最後に、本レポートが、読者の皆様の関心に応え、有益なものとなることを願っている。

パトリシア・アリエンティ

EMEA ファッション&ラグジュアリーリーダーデロイト トウシュ トーマツ リミテッド

3 世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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上位100社に関する主要統計

8.8% 0.8倍

22億米ドル

1.0%2014~16年度の

ラグジュアリー品売上高の年平均成長率(CAGR)

純利益率総資産回転率

上位100社におけるラグジュアリー品の平均売上高

総資産利益率(ROA)

上位100社に入るために必要な

売上高

上位100社における全ラグジュアリー品の

売上高総額

上位100社において上位10社が占める売上高構成比

上位100社におけるラグジュアリー品売上高の

前年比成長率

3.9%

2,170億米ドル

47.2%

6.9%

2億1,100万米ドル

4世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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ラグジュアリー業界の未来を形作るもの

ヨーロッパ、米国、中国、日本は今後も ラグジュアリー業界を支配し続けるのかラグジュアリー業界のサプライチェーンと小売ネットワークは世界全体に広がった。しかし、売上高シェアは依然としてヨーロッパと米国に極端に偏っている。ラグジュアリー業界は歴史的に「欧米とそれ以外」という対立軸で動いてきたが、最近のトレンドが浮き彫りにしているように、アジア、中東、中南米、アフリカの重要性が高まりつつある。

衣料・靴の総売上高に関して、ヨーロッパ・北米地域がグローバル市場に占める割合は、2017年の50%以上から、2018年には50%未満に縮小する見通しである。一方、アジア、中南米、中東、アフリカにおける売上高の割合は、2018年には合計で50%以上まで拡大し、その後も成長を続けるものと予測される。

こうした動向の背景には、新興市場における売上高の増加だけでなく、同市場における画期的な流通網の構想やビジネスモデルも一翼を担っているというのが、業界観測筋の大方の見方である。

ラグジュアリー業界における、欧米以外の地域市場の重要性の高まりは、サプライチェーンリーダーシップ、技術イノベーション、国際投資によって支えられてきた。これらの要因は、今後も当該地域市場の安定的成長を持続するための一助となるだろう。

ラグジュアリーブランドは、ビジネス戦略上これらの潮流を上手く捉え、成長を牽引していくことに注力してきた。例えば、Giorgio Armaniは、コロンビア出身の芸術家Marta Luz Gutiérrezと店舗などの商業空間設計に関する提携契約を結んでいる。一方、Louis Vuittonは、メキシコ人建築家の故Luis Barragán設計の建築を用いた広告キャンペーンを実施中である。

主要都市のさらなる繁栄と、非合法市場を上回る正規市場の成長によって、残る先進国外の地域(ROW:Rest of the World)においては、ラグジュアリー品需要が堅調に推移していくものと考えられる。こうした外部環境下において更なる成功を収めるためには、ラグジュアリー企業はデジタルコネクティビティ、将来性のある消費者、大胆なビジネスモデルに対する投資を集中・強化すべきである。この3つは、今日の個人向けラグジュアリー業界を構成する主要な要素である。

ラグジュアリー業界は過去20年間、数多くの変化に直面してきた。現在は、経済トレンドの多様化、急速なデジタル化、消費者の選好・嗜好の進化によって新たな競争環境が生まれつつあり、従来の企業戦略が脅かされようとしている。

グローバル市場全体の成長率が1桁台に留まるか2桁台に達するかどうかは、様々な要因に左右されるだろう。例えば、地政学的要因が観光業に及ぼす影響は、その一例である。とはいえ、他のいくつかの業界とは異なり、ラグジュアリー業界の成長は続くものと予測される。

ただし、揺るぎなく安定した売上高成長率を取り戻すために、ラグジュアリー企業は新たな挑戦と向き合い、強い意志を持って取り組まなければならない。

ケース1-Gucci2017年、Gucciのeコマース事業における売上高は86%増加した。収益の約50%はミレニアル世代によりもたらされたもので、ブランド総売上高は42%増の62億ユーロに達した1。この成長は、Gucciのミレニアル世代顧客(「ギークシック」として知られる)向け改革と、Gucciのオンライン体験の相乗効果を反映したものである。Gucciは、オンラインと店頭でのブランド体験をオムニチャネルで統合した成果もあり、調査会社L2が公表する Digital IQ Index: Fashion US(デジタルIQ指数・米国ファッション部門)」で2016年、17年に首位を獲得している2。また、2015年には新たな店舗構想となる「New Store Concept」に基づいて設計されたブティックをオープンするなど、オンラインと店頭での購買体験の統合を進めている。さらに、2017年には中国や中東のような注力市場でオンラインストアを開設。2016年10月にも公式ウェブサイトをリニューアルオープンし、ビジュアルプレゼンテーションやストーリーを掲載するとともに、ウェブチャット、電子メール、電話によるコミュニケーションにおいて、パーソナライズされた顧客サービスを提供している。2018年の春夏コレクションに向けては、旗艦店を顧客参加型のインタラクティブ・アート・ギャラリーに変身させた。また、2018年の春コレクションに向けて、新たなデジタルキャンペーンを立ち上げ、スキャン技術・コグニティブ技術を活用したデジタル広告や、仮想現実(VR)体験を目玉にしている3。

5 世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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ARやAIのようなデジタル技術は、独立系ラグジュアリーブランドが大手グループに対抗する 上での秘策となるのか

インターネットは、世界中の様々な消費者層の購買習慣に不可欠なものとなった。とはいえ現時点では、ラグジュアリー売上高の成長を牽引しているのはミレニアル世代とジェネレーションZである。若い世代の消費者は、多様な期待を抱きながら、オンラインとオフラインの境界を越えてパーソナライズされた購買体験を求めている。

こうした変化は、拡張現実(AR)や人工知能(AI)のようなコネクティブテクノロジーに対する需要を引き起こした。ラグジュアリーブランドは、ARやAIのテクノロジーを活用することで、パーソナライズされた消費者体験の提供や、より広い顧客層へのリーチ、製品体験の進化、顧客との関係性の強化が可能となる。それと並行して、ボイスコマースやモノのインターネット(IoT)といったテクノロジーの発展により、ラグジュアリー業界全体が変わろうとしている。

ラグジュアリーブランドは、AIを駆使した信憑性の高いレコメンド提供者としてのポジションを確立し、消費者との関わり方を改善させつつある。また、AIの採用が拡大するにつれて、消費者は自身の体験に基づいて決定を下すよりも、様々なデバイスからの提案やアドバイスに頼る傾向をますます強めている。Estée Lauder傘下のSmashbox Cosmeticsは2018年1月、英国の顧客向けにブランド初のメッセンジャーボットを発表し、新製品の情報発信や使用説明書などに関する情報提供、在庫がある最寄りの店舗の検索など、サービスの提供を開始した。2017年12月には、LVMHがFacebook Messenger上で米国の顧客向けに「バーチャルアドバイザー」を立ち上げている。このバーチャルアドバイザーは、Louis Vuitton製品に関する問い合わせに応じて、同ブランドのオンラインカタログの検索や、ブランドの歴史に関する詳細な説明、製品のメンテナンスに関する助言を行うチャットボットである。

ラグジュアリーブランドはさらに、実店舗に加えてARを活用することで、顧客の購買体験の向上を図ろうとしている。ARを活用すれば、消費者は自宅にいながら、新製品を目で見て「試し」てから購入することができる。例えば、Estée Lauderは2017年7月、対話型AR口紅アドバイザーの導入を発表しており、このアドバイザーを利用することで潜在顧客は最適な口紅の色合いを確認できる。L’OréalもARによる取り組みを強化することで、顧客体験の向上を図ろうとしている。同社は2018年3月、美容業界向けAR・AIアプリケーション分野におけるリーディングカンパニーとして国際的に認知されているModiFaceを買収した。YOOXは、2017年にLumyerと提携し「Try, Share and Shop」戦略の下、YOOXで販売しているハンドバッグやサングラス、ジュエリーをVRで試着できるARカメラアプリを提供している。Burberryは没入型のストーリーテリングによるデジタルマーケティング戦略の一環として、AppleのARkitを活用している。

これまでのところ、ARアプリの導入実績がある個人向けラグジュアリーブランドは少数派で、最も取り組みが進んでいるのはメイクアップ業界である。ラグジュアリー業界全体でのAI・ARテクノロジーの活用は、かつて市場が予想していたほど急速には進んでいない。これは、大手企業のコスト構造が複雑で、これらのテクノロジーに投資してもコスト以上の利益が得られないためである。それでもやはり、大手ラグジュアリーグループは、富裕層の購買方法を変え、独立系ラグジュアリーブランドの成長を後押ししているデジタルトランスフォーメーションに意識を向けるべきである。

個人向けラグジュアリー品に対するミレニアル世代の意識とロイヤルティは、ラグジュアリー業界とラグジュアリーブランドのコミュニケーション・ 販売戦略にどのような影響を及ぼすのか

ラグジュアリー業界の売上高成長率と収益性は近年伸び悩んでいる。その一因は、業界が人口動態の変化に対応しきれていないことにある。ラグジュアリー業界は、テクノロジー慣れしたミレニアル世代の強い購買力への認識・勝機としての活用という点で、他の消費財業界に遅れを取ってきた。

ミレニアル世代とジェネレーションZがラグジュアリー市場全体に占める割合は、2016年には合わせて30%前後だったのに対し、2025年までに40%以上に達する見通しである。

ベビーブーマーとは異なり、ミレニアル世代のラグジュアリー消費者の多くは、伝統的なチャネルだけでなく、様々なデジタルプラットフォーム全体を通じたブランドとの関係性構築を望んでいる。ミレニアル世代の消費者はまた、店頭購買に関しても重要視しており、カスタマイズされ、高付加価値な体験を期待している。ラグジュアリーブランドはビジネスモデルを転換し、例えば、ロイヤルティプログラムや店頭イベントへの招待を増やすことで、こうしたニーズに応えることを目指すべきである。

さらに、ミレニアル世代に関しては、ラグジュアリーブランドが消費者に訴求する際の情緒的・個人的文脈が大きく拡大している。ラグジュアリーブランドは、品質や希少性のような伝統的な特性を、持続可能性などの新たなライフスタイルの価値観によって補うことで、ミレニアル世代の消費者を引き付けようとしている。持続可能性を強調する例は、様々な分野において、特に広告でよく見られる。ラグジュアリーブランドは、再生可能な有機素材の使用を強調するようになり、今では生産環境負荷低減への取り組みをアピールしている。

6世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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ラグジュアリー業界の今後の成長の成否は、この若年世代への浸透と積極的な働きかけに成功するかどうかで決まるだろう。適切なコミュニケーション戦略は、その成功のための手段となり得る。

コミュニケーションに関して、ラグジュアリーファッションブランドは歴史的に、近寄りがたさや威光、非の打ち所のないサービスを自らのアイデンティティの拠り所とし、顧客との間で威厳ある距離を保ってきた。しかし、成長が減速したことにより、ソーシャルメディアなどを通じた消費者との関わりの深化を余儀なくされている。

ラグジュアリーブランドはかつてソーシャルメディアを「マスマーケット」と見なしていたが、今やラグジュアリーブランドにとって、マーケティングツールとしてのソーシャルメディアの重要性は高まる一方である。

Burberryは、ソーシャルメディアの威力と影響力にいち早く気付いたラグジュアリーブランドの好例である。SocialWall上の記事によれば、Burberryはマーケティング予算の60%前後をデジタルプラットフォームに充て、Facebook、Twitter、Tumblr、Pinterest、Instagram、YouTube上で顧客との関係性を強化している。

ラグジュアリーブランドは近年、ソーシャルメディア上でより多くの消費者と関わり、顧客のデジタルマーケティングへの反応やオンライン上でのアクティビティに関するデータの収集・分析を通じて、顧客行動に関するインサイトを得ようとしてきた。Instagramは、ファッションデザイナー向けの代表的なソーシャルメディアプラットフォームとして台頭しつつある。Gucciは、#TFWGucciなどのInstagram上でのキャンペーンに成功し、2016年から2018年3月までの間にInstagramのフォロワーを2倍以上に増やした。

今後、ラグジュアリーブランドにとっては、ブランド価値を損なうことなくソーシャルメディアを最大限に活用することが最大の課題になるものと予想される。ソーシャルメディア戦略の成功は、「いいね」を顧客にとってインタラクティブで魅力的な体験へと変えることだろう。

デジタル戦略とオフプライス戦略は今後も 最善策なのか過去10年の大部分の期間、ラグジュアリーファッションブランドは近寄りがたさと親しみやすさのバランスを賢明に取り、その結果として優れた財務業績を上げてきた。目立ちすぎることを恐れて、売上アップを目的としたデジタルメディアの採用には積極的ではなかった。しかし、ラグジュアリー消費者がオンラインでの支出を増やし始めたことから、ブランドは顧客の新たな購買パターンに適応せざるを得なくなった。

極めて入手しやすい状態と、大衆へのリーチ、価格の低下により、ブランドは現在、自らの近寄りがたさが損なわれつつあるのではないかと懸念している。

ラグジュアリーブランドは、ポートフォリオ構成の変革に力を入れることで、希少性の向上を図り、威厳のある雰囲気を保つための一助にしようとしている。ラグジュアリーファッションブランドが展開した戦略の事例としては、エントリーレベル製品の数を減らすこと、オフプライスのアウトレットストアを都心の店舗から物理的に遠ざけること、あからさまではなく絶妙にそのブランドの製品であることが分かるような、より高価格でアイコン的な製品を際立たせるように印象の転換を図ることなどが挙げられる。例えば、パリのDiorでは、セールをわずか年2回、かなりの短期間しか実施しない。セール会場も店舗とは別の場所を手配し、モンテーニュ通りの旗艦店を使用することはない。

高級時計ブランドは、近寄りがたさを追求した結果、正規販売代理店の数を削減した。デロイトの2017年スイス時計業界調査によれば、正規販売代理店(実店舗)を最も重要な販売チャネルと見なしている時計業界の経営層の割合は、2014年には83%だったのに対し、現在はわずか24%に留まっている。一方で、eブティックに重点を置くつもりであると答えたエグゼクティブの割合は、過去最高の67%に達している。

ラグジュアリーファッションブランドによるこうした新たなアプローチは、ブランドの売上高と利益に影響を及ぼすかもしれない。しかしながら、ブランドが自らの威厳と魅力を取り戻し、再び需要を喚起することは、販売・アクセシビリティを制限することによってこそ実現される。

ラグジュアリーファッションブランドの目標が売上高を上昇させることであるならば、デジタル戦略とオフプライス戦略はバランスが取れている。だが、ラグジュアリーであり続けることを目指すならば、それらの戦略を見直すべき時期に来ている。

ケース2-FarfetchFarfetchは、新たなテクノロジーアプリケーションを投入することで、店頭購買に革命をもたらすことを計画している4。2017年4月にベールを脱いだ新型店舗「Store of the Future」は、同社の拡張技術の活用を推進する「Augmented Retail」戦略の一環であり、オンラインとオフラインの小売活動を結び付けることを目指すものである。「Store of the Future」は、個人の人間的特性やその他の行動的属性に注目することによって、パーソナライズされた顧客サービスを提供すると同時に、店舗スタッフの販売活動を強力に補助することを目的としている。まず、Farfetchのアプリを持った顧客が提携ブティックに来店すると、ターゲット顧客として「認識」され、スタッフに通知が送られる。センサーにより店内用のウィッシュリストも作成される。次に、スマートミラー技術を採用したインタラクティブ・フィッティングルームで、店舗スタッフは各消費者の購入履歴やお気に入りのブランド、店内での探索行動に関するFarfetchのデータベースにアクセスし、店内での購買体験をより適切にパーソナライズすることができる。また、当該プラットフォーム上でのオンライン販売、店頭受取、店頭返品というオプションサービスの提供は、Farfetchの実店舗における在庫・受注管理のあり方を改善し、客足伸長への貢献が期待されている。試験運用は2017年10月、Browns(ロンドンにあるブティック。Farfetchが2015年に買収した)でスタートした。完全商用展開は2018年、厳選されたパートナーを対象に開始予定である。

ラグジュアリーブランドのソーシャルメディア上のフォロワー数 (単位:100万)、2018年3月19日現在

ブランド Instagram Facebook TwitterLouis Vuitton 22.4 20.7 7.3Gucci 22.3 16.7 5.5Dior 18.8 16.1 8.3D&G 16.2 11.1 5.3Prada 14.9 6.3 1.0Calvin Klein 11.9 12.2 3.6Versace 11.7 5.0 4.5Burberry 11.2 17.0 8.6Ralph Lauren 7.6 8.9 2.3

7 世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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オムニチャネルの世界で事業を展開する必要性は、経営にどのような影響を及ぼすのかインターネットが登場して以来、ラグジュアリーブランドは、実店舗の顧客に提供しているパーソナライズされた高級な顧客体験を、デジタルでも同じように提供しようと努力してきた。今日ラグジュアリーブランドは、強烈なデジタルプレゼンスを発揮するだけでなく、オムニチャネルの世界で事業を展開する必要もある。

複数チャネル化の本丸であるグローバル市場環境では、ラグジュアリーブランドは全チャネル間の顧客体験の差を縮め、使用されるデバイスや物理的なタッチポイントのいかんにかかわらず、チャネルごとの境界が無い一元化されたブランド体験を提供することを求められるだろう。したがって、各チャネルは他のチャネルとの連携・協業により、ブランドプレゼンスの一本化・整合を図る必要がある。

オムニチャネルのアプローチが求められるのは、デジタルテクノロジーとeコマース市場の普及がもたらす当然の成り行きである。この変化の過程では、有効在庫を活用できるかどうかがラグジュアリーブランドにとって重要な差別化要因の1つになるだろう。

オムニチャネル経営に必要とされる条件を満たすために、ブランドは製品のあらゆる側面に関する情報を即座に入手できる統合された管理システムを用意しなければならない。この課題に対処するには、既存のシステムとプロセスを徹底的に見直す必要がある。

様々な地域からのeコマースの返品を実店舗で受け付けることや、他国にある在庫を利用して直送を予約することは、今や受発注管理システム(OMS:Order Management System)によってシームレスに管理できるようになった。卸売業者への再発注や店舗間の在庫移動、eコマース上での受注、店頭取置に活用できるエンジンは、在庫の完全可視化、納期回答(ATP:Available-to-Promise)機能、企業資源計画(ERP:Enterprise Resource Planning)の全面統合を実現しながら、それ1つでオムニチャネルの真髄を提供している。

さらに、新世代のソフトウェアアプリケーションは、複数データソースへの接続をグローバル規模で実現しながら、リアルタイムのオムニチャネルプロセスを支えている。こうしたソフトウェア資産は、プロセスを合理化し、IoT(モノのインターネット)で蓄積されるデータを有意情報と自動化されたアクションに変換し、機械学習によるプロセスの自動化、新たなインサイトの発見、意思決定の改善を企業全体で行うことによって、最終的には企業を変え、進化し続ける需要に応えていく土台となる。

商品計画、品揃え、シーズン計画、eコマースへの投資は、チャネル横断での統合管理が可能である。統合化によって、顧客が製品の検索・購入時に期待するオムニチャネルサービスを提供する企業への変革も可能である。そのためには通常、品揃え管理の強化・中央集権化、より売上と顧客に意識を向けた地域現法の役割の再構築、チャネルと地域を横断するポートフォリオ・ガバナンスの強化、共有在庫の活用、品揃えの共通化とシンプル化を推進する必要がある。

結論を言えば、顧客の嗜好が絶えず進化を遂げ、モバイルプラットフォームの利用が拡大し続けていることを踏まえると、様々なチャネル間を境界なく活用できることが、個人向けラグジュアリーブランドにとって不可欠な能力になったわけである。デジタルサプライネットワークの導入に消極的なラグジュアリーブランドは、取り残される恐れがある。

ケース3-YNAPとValentino5 6

ラグジュアリーブランドのValentinoとYOOX NET-A-PORTER GROUP(YNAP)は、オムニチャネルの新たなビジネスモデル創出に向けて、「Next Era」と称するプラットフォーム構築に向けたパートナーシップを結んだ。2018年稼働予定の「Next Era」は、顧客一人ひとりの購買体験を改善することを目的としている。この新しいプラットフォームではValentinoの顧客に対し、Valentinoのブティックおよび両社の物流ネットワーク上の在庫にオンラインでアクセスできるという、前代未聞のサービスを提供する予定である。YNAPの最先端テクノロジーと画期的な受発注管理システムを組み合わせた「Next Era」により、Valentinoは自社の在庫の概況を一元的に把握し、顧客基盤の完全なプロフィールを確認できるようになる。YNAPのデータ主導型在庫管理は、在庫のグローバルな視覚化、業務の効率化、地理的な拡張性の向上を実現する。YNAPはさらに、オンライン購入品の店頭での受取・支払いや返品、電話での購入、オンラインショッピングに関する電話・ライブチャットによるサポートといったいくつかのオプションを顧客に提供することで、自社のオムニチャネルモデルの拡充を進めている。YNAPによれば、オンラインのラグジュアリー顧客の行動に関する示唆の活用を進めながら、この新たなオムニチャネルモデルによってvalentino.comは完全にリニューアルされる予定である。そして、モバイル中心のインターフェースと美意識の高い視覚的デザイン、AIが実現する画期的な機能(実店舗でのパーソナライゼーションやコンテキスト検索など)によって、優れた購買体験を生み出すことになると述べている。

8世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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世界経済の動向

概要世界経済は現在、比較的堅調な成長と好ましい状況を享受している時期にある。日本とユーロ圏ではより力強い成長の兆しがあり、中国と米国では安定的成長期に突入、また多くの新興市場の回復がうかがえる。市場概況はかなり良好であるため、不確実性が話題に上ることは以前よりも少なくなり、新たな危機が生じる恐れは遠のいたようにも思われる。だが実際のところ、明白に顕在化しているリスクが経済的にも政治的にも多数存在し、それらを考慮しなければ正しいシナリオ分析を行うことはできない。それらのリスクとは、不動産価格バブルが起こる可能性、いくつかの国における時宜を得ない金融政策引き締め、保守主義的感情の高まり、政治的な不安定性と分断、地政学的緊張である。さらに、一部の主要市場(特に日本と英国)における消費者の支出・消費は力強さに欠け、成長の妨げとなっている。

ラグジュアリー市場は不透明な経済状況と地政学的危機から立ち直り、その年間売上高は2017年末には1兆米ドル近くに達した。2018年の見通しは極めて明るいが、不安定性が市場の成長を脅かす恐れもある。本レポートでは、主なラグジュアリー市場の経済動向と、ブランドが向こう1年間で直面すると思われる課題について考察する。

ヨーロッパユーロ圏の信頼感指標は金融危機以来、初めて上昇傾向にある。これは、過去2年間と比べると著しい変化である。ユーロ圏の経済は成長基調にあり、前年以前に目立っていた不確実性は縮小しつつある。1人当たりのGDPは現に、米国を上回るペースで成長している。成長率の上位国は、ドイツ、スペイン、オランダである。フランスは立ち直りつつあり、イタリアは改善の兆しを見せ始めている。

こうした良好な結果は、欧州中央銀行(ECB)の積極的な金融政策の有効性を反映したものである。金利の低下によってユーロの価値が下がったことで、ヨーロッパの輸出は改善した。現在の低インフレ率を踏まえると、ECBは2018年も比較的緩和的な金融政策を続行する見込みが高いと考えられる。経済的な問題を除けば、この地域にとっての最大のリスクは政治的な問題である。各国の最近の選挙では過激派政党が得票率を伸ばしており、連立を組んで政治的な安定をもたらすことが難しくなった。イタリアが政治的にどのような結末を迎えるかは、今後の数ヶ月間の動向によって決まるだろう。したがって、ユーロ圏における構造改革の展望は良好とは言えないため、次の危機が常に起こり得る状態であり、危機が現実のものとなった場合、それにユーロ圏が適切に対応できるかどうかは不安がある。

西ヨーロッパは依然として、ラグジュアリー業界屈指の収益規模を誇る地域の1つである。ヨーロッパ大陸における過去1年間のラグジュアリー品価格の上昇率は世界最大となっが、スペインとフランスのラグジュアリー市場は観光業によって支えられてきた。ユーロ高と外国為替相場の変動により、イタリアとフランスの価格上昇率はドル換算で13.5%に達した7。さらに、世界的危機を脱して前向きな経済情勢を取り戻したことを受け、特にドイツにおいて国内の需要が高まった。スイスでは、高級時計業界がようやく回復の兆しを見せている。2017年全体を通じて輸出が増加し、最大の輸入国は中国であった。ミレニアル世代がデジタル時計よりも高級機械式時計を好んでいるように見受けられることから、高級時計業界は今後成長する見込みがある。東ヨーロッパは今後数年間、ラグジュアリー品支出の成長率において上位の市場の1つになるものと予測される。総合すると、ヨーロッパでは前向きな気運が見られることから、この地域のラグジュアリー市場は今後数ヶ月間で着実に成長することが予想される。

9 世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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英国英国には不確実性が大きくのしかかっている。経済成長は限定的なものになる可能性が高い。というのも、ただでさえインフレ率の上昇と格闘している消費者は、ポンドの価値が下がり、輸入品価格が上がったことが原因で支出を減らすからである。英国の消費者の購買力は低下傾向にあり、不安定な経済・政治情勢は回復の助けになっていない。英国の成長の見通しは、どれだけ甘く見積もっても、穏やかに成長するといった程度だろう。

英国のラグジュアリー市場全体の状況は、Brexitをめぐり高水準の不確実性が存在することから、依然として不確かである。次の1年間にラグジュアリー市場が活況を呈するかどうかを左右する最も重要な要因の1つは、インバウンド旅行客だろう。英国には旅行客が大量に訪れ、ポンド安と有利な為替レートを利用している。英国のラグジュアリー市場にとって好ましいもう1つのトレンドは、国内のラグジュアリー顧客が海外での買い物を減らしていることである。これは、不利な為替レートが原因で、英国で買い物をしたほうが都合のいい状況になっているためである。割安品を求める海外の消費者は、ロンドンに旅行すれば得をすることができる。なぜなら、英国におけるラグジュアリー品価格は中国に比べて平均22.0%安く、イタリア(21.6%割安)とフランス(21.4%)と比べても割安だからである8。現状を踏まえると、英国は急速に、欧米で最も手頃なラグジュアリー市場と化しつつある。

ロシアロシア経済は回復軌道に乗りつつあり、穏やかだがムラのある成長が見受けられる。その成長はとても堅調といえるものではないが、マクロ経済的な安定性を実現するに足る水準にある。工業生産高は昨春まで、極めて着実に成長した。2017年の実質小売売上高は、2年以上にわたる減少を経て加速し、実質可処分所得の成長率も上向いた。

その結果、消費者の需要とビジネス環境は改善している。世界銀行によれば、今後2年間はプラス成長が見込まれるという。

ロシアのラグジュアリー市場は、2年連続の低迷期を経て回復したといえよう。この回復に主に寄与したのは、国内需要の拡大と、インバウンド旅行客に対する売上高の増加であり、後者は2018年に開始予定の「免税」制度によってさらに後押しを受けることだろう。ラグジュアリー品の主な小売チャネルは百貨店であるが、これは価格競争力と品揃えの豊富さが理由である。ロシアのラグジュアリー市場は国際的ブランドと輸入品によって支配されているため、為替相場の影響を強く受ける。2018年も安定した経済状況が続けば、中所得層の購買力の高まりを受けて、ロシアのラグジュアリー市場は引き続き成長するだろう。

米国米国の経済状況は驚くほど明るい。経済成長は穏やかながら、雇用の需要と労働力の供給が一致する「完全雇用」をもたらすに足る水準で推移している。インフレ率と借入コストは低水準を維持し、資産価格はごく限られたボラティリティのもと着実に上昇してきた。しかし、潜在的なリスクもいくつか存在する。まず、消費者支出は家計所得を大幅に上回るペースで増加し続けている。これは主に、貯蓄率の低下と借入水準の上昇が原因である。このような成長がいつまでも維持できるはずはない。危険なのは、賃金の上昇が加速しない限り、ラグジュアリー品やその他のレジャー品への支出が削られることである。さらに一部のアナリストは、潜在的な資産価格バブルのリスクを警告し、連邦準備銀行が金利を引き上げ切れば、資産価格は下落すると予測している。その結果、消費者の財産は減り、信用市場の緊張は高まるだろう。本レポートの執筆時点で米国政権は、雇用を守るべく大規模な保護主義的措置を導入することに余念がないように見受けられる。だが、そのような措置は結果的に、消費者価格の上昇と消費者の購買力低下につながる可能性が高い。さらに、中国に対する保護主義は、深刻な報復を招きかねず、その結果、太平洋を挟んだ両地域の貿易に悪影響が及び、経済成長もダメージを受ける恐れがある。

2017年の成長率は他国に比べて低めだったものの、米国は依然として世界最大のラグジュアリー市場であり、2018年も年間を通じて世界市場を牽引し、グローバル戦略における米国市場の重要性を高めていくものと予想される。米国のラグジュアリー市場は、国内外から幅広い企業を集めることで、競争力と多様性を維持している。大手は競争優位性を保つために、製品ポートフォリオの多様化を試みている。注目に値するのは、デジタルに強い消費者の増加を受けて、ラグジュアリー品のオンライン売上高が堅調な成長を続けていることである。

10世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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中国中国経済はここ最近、年率6.5%前後で成長を続けているが、これは中国としてはかなり緩やかなペースである。現在は、世界全体の景気も同時に回復していることと、中国政府が過剰生産能力の削減に取り組み、その結果として企業の利益が増加していることから、循環的な上昇期を迎えつつあるようである。ただし、中長期的には、現在の成長率が維持される見込みは薄い。その原因としては、企業・地方行政の官民両者による借入低減・レバレッジの縮小に向けた取り組みと、人口構成の優位性の低下、貿易保護主義関連で生じる可能性のあるリスク、地政学的問題があげられる。貯蓄率が高い水準にあるにもかかわらず、社会的セーフティーネットが弱いことが原因で、消費はトレンドに逆行するものと予想される。2017年におけるラグジュアリー品への支出高は、他の主要経済国の大半に比べて堅調だった。実際、中国はラグジュアリー品の消費に関しては世界屈指の急成長国であり、この状況は2018年も続くだろう。中国のラグジュアリー消費者は世界全体のラグジュアリー市場で大きな割合を占め、より裕福で流行に敏感な中所得層の急増がラグジュアリー消費を押し上げている。1人当たりの支出で見れば、中国は上位国である。この結果には、若年のミレニアル世代とジェネレーションZの購買力の高まりが寄与している。ラグジュアリー顧客基盤が若いことから、ラグジュアリー品のオンライン売上高は昨年、過去最高の成長率を記録した。とはいえ、顧客が製品の実物をチェックし、ブランドの世界観・購買体験ができるという理由で、実店舗ベースの小売店のほうが依然として購買チャネルとしては好まれている。中国の消費者にとって、旅行の目的をラグジュアリー品の購入とした場合、ヨーロッパは第一の海外旅行先であり、米国がそれに続く。対して、中国国内における主なラグジュアリー消費の中心地は香港とマカオである。更に言えば、香港におけるラグジュアリー品の主要な消費者は中国本土からの旅行客であり、それら旅行客による支出の成長により、2017年の個人向けラグジュアリー市場は年間を通じて順調かつ安定した実績を上げた。香港のラグジュアリー消費者における最新のトレンドは、自分だけのスタイルを作り上げるために、ニッチなラグジュアリーブランドを探すことである。

その他アジア諸国その他アジア諸国のラグジュアリー品の売上高は2017年を通じて順調に増加した。近い将来、ファッションおよびラグジュアリー市場における、これらのアジア諸国と中東諸国の成長率は、その他の国々の成長率を上回るものと予測される。

インド成長が阻まれ減速した1年を経て、インド経済は最近の様々な改革の成果を収めつつあり、今年1年をかけて安定し、その後は上昇傾向を維持するものと予想される。インフレと経済情勢に対する見通しは明るく、マクロ経済ではおおむね安定していくことが見込まれる。ルピーは対米ドルで上昇し、低インフレのシナリオに寄与している。現時点で認識される最大級のリスクは、企業の過剰債務や規制・政策上の課題といった国内事情により、民間投資が依然として回復を阻まれていることに関連している。米ドルの金利が今にも引き上げられかねないこともリスクである。

インドのラグジュアリー業界はいまだ発展の初期段階にあり、緩やかながら着実に成長を続けているため、投資を行う企業に多くのビジネス機会をもたらしている。ラグジュアリー品に対する需要は今後1年間も堅調に推移するものと予想されるが、課題も存在するだろう。その1つは、政府の支援を得られるかどうかである。ラグジュアリー品に対する輸入税が高いことも問題であり、これは他国との価格差を縮める上での妨げとなっている。さらに、高額紙幣廃止と物品・サービス税(GST)の導入もラグジュアリー業界を冷え込ませた。インド経済の見通しの明るさは、可処分所得が比較的高い都市部の消費者の、ラグジュアリー品の購買意欲を喚起させるに足る水準にあるように見受けられる。

日本日本の経済成長は加速しているようである。回復の主因は、安倍晋三政権が2013年から実施してきた経済プログラムと金融政策の結果、失業率が低下し、輸出が堅調に成長していることにある。日本の輸出品に対する世界的な需要は過去7四半期にわたり増加してきた。日本経済の今後1年の見通しは明るい。

世界屈指の規模を誇る日本のラグジュアリー市場は、世界と国内の長期にわたる危機的状況を経て、再び着実に成長中である。そして、消費者の景況感と若年世代の購買力の向上により、ラグジュアリー品への支出が増える見込みがあり、市場は今後1年でさらに成長するものと予想される。また、インバウンド旅行客による購買・消費活動も、日本のラグジュアリー市場の売上高に大きく影響を及ぼしてきた。2018年はインバウンド旅行客数の増加が予想されることから、ラグジュアリー市場も拡大するものと見込まれる。

中東中東の成長率は2017年、経済状況の不透明性が高いことが原因で、ほぼ横ばいの1.8%(世界銀行の報告による)となったが、2018年には3%まで上昇するものと予想される。中東全体の安定性を脅かす主な要因は、地政学的緊張、武力衝突、原油価格の下落である。原油価格は財政的制約の緩和を受けて安定化の方向にあり、中東全域で経済成長を後押しする改革の実施が見込まれている。中東地域において原油輸出に依存しない国々にとっては、観光業もまた、経済成長の大きな原動力である。

11 世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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中南米中南米の2018年の成長見通しは明るいものの、経済の回復に向けた概況は依然として不安定で、国によりばらつきがある。自然災害と相まった政治的な不確実性、国内の財政状況の悪化、米国の保護主義は、2017年を通じて経済の安定化を妨げており、これらは今後1年も依然としてリスクとして残りかねない。個人消費は中南米経済の主な原動力となってきたが、4年連続で縮小し続ける投資活動が、経済の成長に悪影響を及ぼしている。2018年における好要因を見出すとすれば、商品輸出国における個人消費と投資の増加があった場合には、成長が促進される可能性がある。メキシコ経済は今年、成長が加速していく見通しであり、長らく深刻な不況下にあったブラジルは、伸び悩んだ2017年を経て、2018年には緩やかに成長するものと予想される。

ブラジルブラジルのラグジュアリー市場にとって2016年は、非常に困難な1年だった。2017年は、多くの企業・小売業者が成長を期待したが、実現せずに終わった。政治と経済の危機的状況を受けて、ブラジル人は消費態度を保守化させ、概してラグジュアリー品と高額品の購入を減らすことを選んだ。ラグジュアリー品の売上高は2年連続で減少し、エントリー価格帯のラグジュアリー品は消費の減速による影響を最も被った。2018年は、より有利な経済シナリオがもたらされるものと予想される。

メキシコメキシコは、中南米のラグジュアリーブランドにとって最も魅力的な市場である。困難な経済状況にもかかわらず、ラグジュアリー品の消費は今後数年にわたり成長するものと予想される。主に、国内に住む富裕層の増加と、中所得層の高所得化が寄与している。また、メキシコ人は一般にブランド品を好む傾向があり、これはラグジュアリーブランドがメキシコに投資する動機の1つとなっている。最も効果的な小売チャネルは旗艦店と、大規模ショッピングモールであり、後者は多数のブランドが出店し、自動車から衣料・ジュエリーに至るまでの様々なラグジュアリー品を購入できるチャネルとなっている。

アルゼンチンアルゼンチンのラグジュアリー市場は、2016年に実施された経済改革の政策的恩恵を受け続けており、先の経済危機の際に同市場を去った多くのブランドが徐々に再進出しつつある。アルゼンチンは現在、ラグジュアリー品に対する需要が高く、供給が不足しているため、ブランドにとっては非常に魅力的な市場である。高所得層の多くはこれまで、国内よりも品揃えが豊富であるという理由で、あえて近隣のチリとブラジルでラグジュアリー品を購入することを選んできた。アルゼンチン市場への進出を希望するラグジュアリーブランドにとっては、出店に適した立地を見つけることが主な課題となっている。総合的には、2018年の見通しは明るく、ラグジュアリー売上高は今後1年で、供給増の後押しを受けて、一定成長するものと予想される。

中東のラグジュアリー市場の動向は、他地域の国々とは異なり原油価格に強く結び付いているため、原油価格が安定している限り成長の余地はある。ドバイは2017年も引き続きラグジュアリーな旅先として、中国とヨーロッパの旅行客はもちろんのこと、中東の消費者にも指折りの人気を誇っている。ドバイは世界有数のラグジュアリーショッピング都市であり、世界中から高級品の買い物客が訪れる、中東において極めて重要な消費の中心地の1つである。中東のラグジュアリー業界が成長するための主な課題の1つは、ともするとヨーロッパの都市をはじめとする他の地域でラグジュアリー品を購入しかねない買い物客を、継続してつなぎ止めていくことである。中東は若年者人口の規模では世界トップクラスの地域であり、中東のミレニアル世代は世界平均よりも裕福である分、消費意欲も高い。この新たなラグジュアリー消費者に対応していくことで、ブランドロイヤルティを生み出し、ラグジュアリー品の消費喚起と、市場の成長を促すことができる可能性がある。

アラブ首長国連邦2017年のアラブ首長国連邦(UAE)のラグジュアリー品市場は、中東全体の減速と歩調を合わせて比較的スローペースで成長した。UAEのラグジュアリー市場が危機的状況にあるのは、国内の不動産賃貸料・教育費の上昇トレンドと、2018年1月の付加価値税導入により、需要が落ち込んだことにも起因している。不動産賃貸料と教育費の高さは、労働市場の不確実性に加えて、消費者が出費を抑えて買い物の頻度を減らす主な原因となっている。UAEはラグジュアリーブランドにとって中東屈指の魅力的な国であり、中東市場への進出を決定する企業の戦略的拠点である。したがって、企業間の競争は熾烈で、オンラインショッピングの成長が競争に拍車をかけている。2017年は伸び悩んだUAEのラグジュアリー市場だが、当該市場が成熟し、世界的なトレンドに対応するにつれて、今後は成長が上向くものと予測される。

12世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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上位100社ハイライト

2016年度、世界のラグジュアリー企業上位100社による個人向けラグジュアリー品売上高は合計で2,170億米ドルであった。為替変動の影響を除いた売上高成長率は1%で、これは前年度の上位100社が達成した為替調整後の成長率6.8%に比べ、5.8ポイント減となった。

上位100社の明暗は大きく分かれている。前年比でラグジュアリー品売上高が増加した57社のうち22社は2桁成長を遂げ、上位100社の3分の1近くが前年度よりも高い売上高成長率を達成した。同100社による全体の成長率の足かせとなったのは、2016年度の売上高が2桁のマイナス成長を記録した10社で、そのなかには上位10社の一角を占めるSwatch GroupとRalph Laurenも含まれる。とはいえ、ほとんどの企業のラグジュアリー品売上高成長率は2016年度で底を打ったように見受けられる。2017年度初期の実績からは、パフォーマンスが向上したことがうかがえる。

2016年度のラグジュアリー企業の利益率(総収益と当期純利益の合計から算出)はわずかに低下した。最終利益を開示したラグジュアリー企業80社全体の純利益率は0.7ポイントのみ低下し、8.8%となった。これらの企業の過半数は前年比で純利益率を改善させた。上位ラグジュアリー企業の多くは、高い最終利益を計上している。

2桁の純利益率を達成した19社のうち9社は、上位20社にランクインしたラグジュアリー企業であり、これには上位3社のLVMH、Estée Lauder、Richemontも含まれる。赤字を計上した企業は11社で、前年度の9社からわずかに増加した。

総じて好調な成果を収めた企業「All-round high achievers」の数は2016年度も減少し、ラグジュアリー品売上高の2桁成長率と2桁の純利益率の両方を達成したのは前年度には8社であったが、2016年度はわずか5社に留まった。最も注目すべき好成績企業はPandoraとMonclerである。両社は2014~16年度において毎年、2桁の成長率と利益率を記録している。英国を本拠とするファッション企業であるBurberryとBarbourも、Kate Spade(Coachによる買収前)と共に、2016年度は好成績を上げた。

総資産に関して報告している79社の資産回転率(資産に対する企業全体の売上高の比率)は0.8倍で安定していた。全体の総資産利益率(ROA)は2015年度から1ポイント減の6.9%となった。

2016年度のラグジュアリー企業上位100社によるラグジュアリー品売上高は総額2,170億米ドルで、1社当たりの平均売上高は22億米ドルであった。2016年度に上位100社にランクインするために必要な売上高の水準は2億1,100万米ドルで、前年度から3,100万米ドル上昇した。

ラグジュアリー品売上の成長は底打ち:圧力下でも利益率は回復の見込み、M&A活動は活発化上位100社のうち、ラグジュアリー品売上高が10億米ドルを上回ったのは49社で、2015年度から9社増加した。50億米ドル以上のラグジュアリー品売上高を達成したのは12社で、これらの巨大企業のほとんどはヨーロッパまたは米国を本拠としている。ラグジュアリー品売上高が5億米ドルを下回ったのは39社で、これらの小規模企業の3分の2は同族経営企業である。

2016年度の上位100社のうち、合併・買収(M&A)活動の影響を大きく受けたラグジュアリー企業は以下の4社である。

• Cotyは2016年10月、Procter & Gambleからの美容事業の買収を125億米ドルで完了。Cotyが新設したラグジュアリー部門は2016年度に初めて報告を実施した。

• Elizabeth Arden、スイスの高級時計メーカーFrédérique Constant、バッグ企業のTumiは、買収されたことで上位100社から離脱した。

上記以外にも、2016年度末の直前から現在まで、ラグジュアリー企業による多数の重要な買収、売却、提携が実施されている。

• Arnaultファミリーが121億ユーロをかけて2017年7月からChristian Dior CoutureをLVMHに統合することを決定し、LVMHとChristian Diorの複雑な資本構造が単純化された。

13 世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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• LVMHは2017年1月に高級スーツケースメーカーRimowaの株式の80%を取得し、2016年12月にDonna KaranブランドをG-IIIへ売却。PVHが2017年にG-IIIとライセンス契約を結んだことから、今後はPVHがDKNYブランドの紳士衣料の北米におけるデザインと流通を手掛けることになる。これは、G-IIIが2016年末にTommy Hilfigerの婦人衣料の北米におけるライセンスを取得したことをはじめとする、PVHとG-IIIの既存の提携関係を強化するものである。

• LVMHとMarcolinは、LVMHグループ傘下の一部ブランドのサングラス・眼鏡の生産・流通・プロモーションを目的とした合弁会社を設立(LVMHが51%、Marcolin S.p.A.が49%を所有)。この新会社がLVMHグループから最初にライセンスを受けるブランドはCélineである。

• Richemontは2018年1月、ラグジュアリーeコマース企業YOOX NET-A-PORTERを27億ユーロで完全子会社化する意向を示した。RichemontはすでにYOOXの株式の50%を所有している。また、2017年には香港のラグジュアリーファッション企業Shanghai Tangを売却している。

• Keringは2018年1月、Pumaの株式の70%前後(Keringグループが所有する株式の86.3%)を同社株主に分配する意向を発表。これにより、ラグジュアリー品専門の一流企業へ移行するとの目標に向けてさらに前進した。同社はこれに先駆けて、非ラグジュアリーブランドのElectricを売却している。

• Estée Lauderは、ミレニアル世代の消費者をターゲットにした3つの高級美容ブランドに投資。2016年末頃にToo Facedを14億5,000万米ドル、BECCA Cosmeticsを2億米ドルで買収し、2017年にDECIEMの株式を取得し、同社の少数株主となっている。

• L'Oréal Luxeは2017年、米国屈指の急成長高級美容(スキンケア)ブランドであるIT Cosmeticsを12億米ドルで買収した。

• Coach, Incは2017年7月、Kate Spadeを24億米ドルで買収。また、所有するラグジュアリーブランドのポートフォリオが拡大し続けていることを受けて、社名をTapestryに変更した。

• Michael Korsは2017年11月、JAB LuxuryからJimmy Chooを13億5,000万ポンドで買収。JABは消費財に集中することを目指し、所有する全てのラグジュアリー企業の売却を進めており、Belstaffを2017年12月にINEOSへ売却、Ballyについては2018年2月、株式の過半数を中国の繊維メーカーShandong Ruyi(山東如意)に売却することで合意した。これにより、Shandong Ruyiはラグジュアリーファッション事業を拡大することになった。Shandong Ruyiはこれ以前にも、上位100社にランクインしているラグジュアリー企業であるSMCPと香港の紳士衣料グループTrinity(利邦)の2社をそれぞれ2016年と2017年に買収している。

• 資生堂は、Laura MercierおよびRéViveブランドを所有する米国企業のGurwitch Productsを買収するとともに、Dolce & Gabbanaの化粧品・香水のライセンスを獲得した。(資生堂がライセンス契約を結ぶ以前は、P&G PrestigeがD&Gのライセンスを保有しており、Cotyによる買収時にも移転されなかった)

• LuxotticaとレンズメーカーEssilorとの500億ユーロ規模の合併は、2018年の初期にEU、米国その他の多数の国において反トラスト当局の承認を取得。Luxotticaはまた、大手眼鏡小売チェーンである2社、イタリアのSalmoiraghi & Viganòとブラジル屈指の眼鏡店フランチャイズ企業Óticas Carolも買収した。

14世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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世界のラグジュアリー企業ランキング上位100社ラグジュアリー企業、売上高上位100社

¹ 連結売上高および純利益に基づく純利益率² 年平均成長率(CAGR)e = 推定値 p = 試算 n/a = 該当なし ne = 存在せず*上位100社の売上高成長率は為替調整後の売上高加重平均**上位100社の純利益率、総資産利益率(ROA)および資産回転率は売上高加重平均出所:各企業が公表したデータと業界予測

2016年度のラグジュアリー品売上高順位

2015年度のラグジュアリー品売上高順位 企業名 対象ラグジュアリーブランド 本社所在国

2016年度のラグジュアリー品

売上高(100万米ドル)

2016年度の総収益

(100万米ドル)

2016年度の ラグジュアリー品 売上高成長率

2016年度の純利益率¹

2014~2016年度の ラグジュアリー品 売上高のCAGR²

1 1 LVMH Moët Hennessy- Louis Vuitton SE

Louis Vuitton, Fendi, Bulgari, Loro Piana, Emilio Pucci, Acqua di Parma, Loewe, Marc Jacobs, TAG Heuer, Benefit Cosmetics

フランス 23,447 41,593 5.0% 11.6% 10.0%

2 3 The Estée Lauder Companies Inc.

Estée Lauder, M.A.C., Aramis, Clinique, Aveda, Jo Malone; Licensed fragrance brands 米国 11,824 11,824 5.0% 10.6% 4.7%

3 2 Compagnie Financière Richemont SA

Cartier, Van Cleef & Arpels, Montblanc, Jaeger-LeCoultre, Vacheron Constantin, IWC, Piaget, Chloé, Officine Panerai

スイス 11,677 11,677 -3.9% 11.4% 1.1%

4 4 Luxottica Group SpA Ray-Ban, Oakley, Vogue Eyewear, Persol, Oliver Peoples; Licensed eyewear brands イタリア 10,051 10,051 2.8% 9.4% 9.0%

5 5 Kering SAGucci, Bottega Veneta, Saint Laurent, Balenciaga, Brioni, Sergio Rossi, Pomellato, Girard-Perregaux, Ulysse Nardin

フランス 9,369 13,700 7.7% 7.0% 11.9%

6 7 L'Oréal Luxe Lancôme, Biotherm, Helena Rubinstein, Urban Decay, Kiehl's; Licensed brands フランス 8,476 e 8,476 e 6.0% n/a 11.2%

7 6 The Swatch Group Ltd. Omega, Longines, Breguet, Harry Winston, Rado, Blancpain; Licensed watch brands スイス 7,413 7,665 -10.7% 7.9% -6.9%

8 8 Ralph Lauren Corporation Ralph Lauren, Polo Ralph Lauren, Purple Label, Double RL, Club Monaco 米国 6,653 6,653 -10.2% -1.5% -6.6%

9 10 PVH Corp. Calvin Klein, Tommy Hilfiger 米国 6,646 8,203 5.6% 6.7% 1.6%

10 9Chow Tai Fook Jewellery Group Limited 周大福珠宝集团有限公司

Chow Tai Fook, CHOW TAI FOOK T MARK, Hearts on Fire 香港 6,604 6,604 -9.4% 6.1% -10.7%

11 12 Hermès International SCA Hermès, John Lobb フランス 5,755 5,755 7.5% 21.2% 12.4%

12 11 Rolex SA Rolex, Tudor スイス 5,379 e 5,379 e -3.6% n/a 1.9%

15 世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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Christian Dior Coutureは、同社会計年度末を2016年6月から2016年12月に変更。そのため、表示されているラグジュアリー品売上高成長率は6ヶ月間、CAGRは18ヶ月間のみの数値である。

¹ 連結売上高および純利益に基づく純利益率² 年平均成長率(CAGR)e = 推定値 p = 試算 n/a = 該当なし ne = 存在せず*上位100社の売上高成長率は為替調整後の売上高加重平均**上位100社の純利益率、総資産利益率(ROA)および資産回転率は売上高加重平均出所:各企業が公表したデータと業界予測

2016年度のラグジュアリー品売上高順位

2015年度のラグジュアリー品売上高順位 企業名 対象ラグジュアリーブランド 本社所在国

2016年度のラグジュアリー品

売上高(100万米ドル)

2016年度の総収益

(100万米ドル)

2016年度の ラグジュアリー品 売上高成長率

2016年度の純利益率¹

2014~2016年度の ラグジュアリー品 売上高のCAGR²

13 13 Lao Feng Xiang Co., Ltd. 老凤祥股份有限公司 Lao Feng Xiang 中国 4,768 5,262 2.1% 3.9% 4.9%

14 14Michael Kors Holdings Limited 迈克高仕控股有限公司

Michael Kors, MICHAEL Michael Kors 英国 4,494 4,494 -4.6% 12.3% 1.4%

15 15 Coach, Inc. (now Tapestry, Inc.) Coach, Stuart Weitzman 米国 4,488 4,488 -0.1% 13.2% 3.5%

16 16 Tiffany & Co. Tiffany & Co., Tiffany 米国 4,002 4,002 -2.5% 11.1% -3.0%

17 - Shiseido Prestige & Fragrance

SHISEIDO, clé de peau BEAUTÉ, bareMinerals, NARS, IPSA, Laura Mercier; Licensed fragrance brands 日本 3,736 e 3,736 e 8.7% n/a ne

18 18 Burberry Group plc Burberry 英国 3,603 3,603 10.0% 10.4% 4.7%

19 17 Prada Group Prada, Miu Miu, Church's, Car Shoe イタリア 3,515 3,515 -10.3% 8.9% -5.3%

20 24 Pandora A/S Pandora デンマーク 3,013 3,013 21.2% 29.7% 30.3%

21 19 Hugo Boss AG BOSS, HUGO ドイツ 2,979 2,979 -4.1% 7.2% 2.3%

22 20 Fossil Group, Inc. Fossil, Michele, Relic, Skagen, Zodiac, Misfit; Licensed brands 米国 2,929 e 3,042 -5.8% 2.8% -7.1%

23 22 Swarovski Crystal Business Swarovski オーストリア 2,876 2,876 0.0% n/a 5.6%

24 21 Giorgio Armani SpA Giorgio Armani, Emporio Armani, Armani, A|X Armani Exchange イタリア 2,791 2,791 -5.3% 10.7% -0.5%

25 23 Coty Luxury Philosophy, JOOP!, Lancaster, Calvin Klein fragrance; Licensed fragrance brands: Hugo Boss, Gucci etc 米国 2,567 2,567 39.7% n/a 15.1%

26 26 Christian Dior Couture SA Christian Dior フランス 2,142 p 2,142 p 8.5% n/a 9.1%

27 27 Puig S.L. Carolina Herrera, Nina Ricci, Paco Rabanne, Jean Paul Gaultier, Penhaligon's; Licensed fragrance brands スペイン 1,980 1,980 8.8% 8.7% 8.9%

28 31 Titan Company Limited "Tanishq, Zoya, Nebula, Xylys,Titan" インド 1,905 1,961 16.0% 5.3% 4.6%

29 - Onward Holdings Co., Ltd. Nijyusanku, Joseph, Jil Sander, gotairiku 日本 1,842 2,260 -1.5% 1.9% -3.2%

30 25Chow Sang Sang Holdings International Limited 周生生集团国际有限公司

Chow Sang Sang 香港 1,809 2,073 -16.0% 4.6% -8.9%

16世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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¹ 連結売上高および純利益に基づく純利益率² 年平均成長率(CAGR)e = 推定値 p = 試算 n/a = 該当なし ne = 存在せず*上位100社の売上高成長率は為替調整後の売上高加重平均**上位100社の純利益率、総資産利益率(ROA)および資産回転率は売上高加重平均出所:各企業が公表したデータと業界予測

2016年度のラグジュアリー品売上高順位

2015年度のラグジュアリー品売上高順位 企業名 対象ラグジュアリーブランド 本社所在国

2016年度のラグジュアリー品

売上高(100万米ドル)

2016年度の総収益

(100万米ドル)

2016年度の ラグジュアリー品 売上高成長率

2016年度の純利益率¹

2014~2016年度の ラグジュアリー品 売上高のCAGR²

31 29 OTB SpA Diesel, Marni, Maison Margiela, Viktor&Rolf イタリア 1,747 1,747 -0.7% 0.2% 0.7%

32 32 Clarins SA Clarins, My Blend, Mugler, Azzaro フランス 1,684 1,684 1.2% 5.1% 0.7%

33 34 Max Mara Fashion Group Srl

MaxMara, SportMax, Marina Rinaldi, Max & Co, PennyBlack イタリア 1,610 1,610 3.7% 7.5% 4.3%

34 33 Salvatore Ferragamo SpA Salvatore Ferragamo イタリア 1,576 1,591 0.6% 13.8% 3.9%

35 28Luk Fook Holdings (International) Limited 六福集团(国际)有限公司

Luk Fook 香港 1,572 1,651 -13.1% 8.0% -11.0%

36 39 Dolce & Gabbana Dolce&Gabbana イタリア 1,549 1,549 14.3% 5.7% 13.9%

37 - Kalyan Jewellers India Pvt. Limited Mudhra, Tejasvi, Glo, Sankalp インド 1,464 e 1,464 e -7.0% n/a 6.5%

38 38 L'Occitane International SA L’Occitane en Provence, Melvita, Erborian, L’Occitane au Brésil ルクセンブルク 1,451 1,451 3.2% 10.0% 6.0%

39 37 Safilo Group SpA Safilo, Carrera, Oxydo, Smith; Licensed eyewear brands イタリア 1,386 1,386 -2.0% -11.3% 3.1%

40 41 Kate Spade & Company kate spade new york, JACK SPADE 米国 1,358 1,381 11.4% 11.1% 10.8%

41 - Pola Orbis Holdings Inc. Pola, Orlane Paris, Jurlique, Three 日本 1,348 2,008 1.7% 8.0% 5.3%

42 43 Valentino SpA Valentino, REDValentino イタリア 1,294 1,294 11.7% 8.7% 26.9%

43 44 PC Jeweller Ltd. PC Jeweller, AZVA インド 1,263 1,277 15.7% 5.3% 15.5%

44 35 Ermenegildo Zegna Holditalia SpA Ermenegildo Zegna, Z Zegna, Zegna Sport イタリア 1,260 1,260 -11.5% 1.8% -5.9%

45 40 Patek Philippe SA Patek Philippe スイス 1,192 e 1,192 e -1.3% n/a 0.6%

46 46 Moncler SpA Moncler イタリア 1,151 1,151 18.2% 18.9% 22.4%

47 42 TOD'S SpA Tod's, Hogan, Fay, Roger Vivier イタリア 1,150 1,150 -0.8% 8.9% 3.2%

48 45 Tory Burch LLC Tory Burch, Tory Sport 米国 1,050 e 1,050 e 0.0% n/a 2.5%

49 - Joyalukkas India Pvt. Limited Zenina, Veda, Pride, Eleganza インド 1,001 e 1,001 e 16.2% 1.8% e 13.9%

17 世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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¹ 連結売上高および純利益に基づく純利益率² 年平均成長率(CAGR)e = 推定値 p = 試算 n/a = 該当なし ne = 存在せず*上位100社の売上高成長率は為替調整後の売上高加重平均**上位100社の純利益率、総資産利益率(ROA)および資産回転率は売上高加重平均出所:各企業が公表したデータと業界予測

2016年度のラグジュアリー品売上高順位

2015年度のラグジュアリー品売上高順位 企業名 対象ラグジュアリーブランド 本社所在国

2016年度のラグジュアリー品

売上高(100万米ドル)

2016年度の総収益

(100万米ドル)

2016年度の ラグジュアリー品 売上高成長率

2016年度の純利益率¹

2014~2016年度の ラグジュアリー品 売上高のCAGR²

50 36 Eastern Gold Jade Co., Ltd Eastern Gold Jade 中国 992 992 -25.6% 3.8% 20.5%

51 50 Audemars Piguet & Cie Audemars Piguet スイス 888 e 888 e 6.7% n/a 10.2%

52 51 SMCP SAS Sandro, Maje, Claudie Pierlot フランス 870 p 870 p 16.4% 2.8% p 24.3%

53 49 Le Petit-Fils de L.-U. Chopard & Cie SA Chopard スイス 771 e 771 e -5.0% n/a -2.5%

54 53 Gianni Versace SpA Versace, Versace Collection, Versus Versace イタリア 746 746 3.7% -1.1% 10.4%

55 54 Ted Baker plc Ted Baker 英国 708 708 16.4% 8.8% 17.0%

56 - Sanyo Shokai Ltd. Mackintosh, Paul Stuart 日本 622 622 -30.6% -16.8% -22.0%

57 56 Longchamp SAS Longchamp, Le Pliage フランス 612 e 612 e -2.3% n/a 5.2%

58 60 Cole Haan LLC Cole Haan 米国 600 e 600 e 2.6% n/a n/a

59 55 Graff Diamonds International Limited Graff 英国 570 570 -9.6% 2.8% -19.7%

60 57 Movado Group, Inc. Concord, EBEL, Movado; Licensed watch brands 米国 553 553 -7.1% 6.3% -3.0%

61 65 Inter Parfums, Inc. Lanvin, Rochas; Licensed fragrance brands 米国 521 521 11.2% 8.3% 2.2%

62 59 Gerhard D. Wempe KG Wempe, Wempe Glashütte, By Kim ドイツ 515 e 515 e -12.1% n/a 0.0%

63 67 Brunello Cucinelli SpA Brunello Cucinelli イタリア 506 506 10.1% 8.1% 13.1%

64 48Zhejiang Ming Jewelry Co., Ltd. 浙江明牌珠宝股份有限公司

MINGR, VI 中国 504 504 -36.1% 1.3% -30.0%

65 62 Sungjoo D&D Inc MCM 韓国 497 497 2.9% 8.1% 0.3%

66 63 Jimmy Choo plc Jimmy Choo 英国 492 492 14.5% 4.2% 10.2%

67 64 Marcolin Group Marcolin; Licensed eyewear brands イタリア 489 489 1.6% 2.8% 10.5%

68 72 Furla SpA Furla イタリア 474 474 24.5% 6.7% 25.8%

18世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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¹ 連結売上高および純利益に基づく純利益率² 年平均成長率(CAGR)e = 推定値 p = 試算 n/a = 該当なし ne = 存在せず*上位100社の売上高成長率は為替調整後の売上高加重平均**上位100社の純利益率、総資産利益率(ROA)および資産回転率は売上高加重平均出所:各企業が公表したデータと業界予測

2016年度のラグジュアリー品売上高順位

2015年度のラグジュアリー品売上高順位 企業名 対象ラグジュアリーブランド 本社所在国

2016年度のラグジュアリー品

売上高(100万米ドル)

2016年度の総収益

(100万米ドル)

2016年度の ラグジュアリー品 売上高成長率

2016年度の純利益率¹

2014~2016年度の ラグジュアリー品 売上高のCAGR²

69 66 De Rigo SpA Police, Lozza, Sting; Licensed eyewear brands イタリア 467 467 1.5% -0.1% 4.6%

70 68 MARC O’POLO AG MARC O’POLO ドイツ 441 e 441 e -1.3% n/a -0.7%

71 - Tse Sui Luen Jewellery (International) Limited TSL|謝瑞麟 香港 440 440 -3.6% 0.7% -6.1%

72 - Chow Tai Seng Jewellery Co., Ltd. Chow Tai Seng 中国 437 437 6.3% 14.7% 4.4%

73 71 Breitling SA Breitling スイス 424 e 424 e 1.7% n/a 0.1%

74 69 Kurt Geiger Limited Kurt Geiger London, KG Kurt Geiger, Carvela Kurt Geiger, Miss KG 英国 413 e 413 e 10.1% 6.5% e 11.0%

75 70 True Religion Apparel, Inc. True Religion 米国 370 e 370 e -7.6% n/a -7.3%

76 78 S Tous SL Tous スペイン 368 368 11.3% 7.6% 10.6%

77 73 Sociedad Textil Lonia SA Purificación García; Licensed brand: CH Carolina Herrera スペイン 365 365 -0.5% 11.2% 4.1%

78 76 Liu.Jo SpA Liu.Jo イタリア 351 351 3.9% 10.8% -0.7%

79 75 Gefin SpA Etro イタリア 339 339 -3.1% -1.6% -2.7%

80 74 Restoque Comércio e Confecções de Roupas S.A. Le Lis Blanc, Dudalina, Bo.Bô., JOHN JOHN ブラジル 322 322 -5.3% -5.5% 21.3%

81 79 Aeffe SpA Moschino, Pollini, Alberta Ferretti, Philosophy イタリア 318 318 4.9% 1.5% 6.0%

82 81 Euroitalia S.r.l. Reporter, Naj-Oleari Licensed Fragrance brands: Moschino, Versace, Missoni イタリア 312 312 6.0% 13.5% 6.1%

83 - Canada Goose Holdings Inc. Canada Goose カナダ 307 307 38.8% 5.4% 36.0%

84 83 Marc Cain Holding GmbH Marc Cain ドイツ 281 281 0.1% 8.6% 2.2%

85 85 TWINSET - Simona Barbieri SpA Twin Set, SCEE イタリア 271 271 -0.2% -1.4% 6.0%

86 80 Franck Muller Group Franck Muller スイス 269 e 269 e -7.0% n/a -7.5%

19 世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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¹ 連結売上高および純利益に基づく純利益率² 年平均成長率(CAGR)e = 推定値 p = 試算 n/a = 該当なし ne = 存在せず*上位100社の売上高成長率は為替調整後の売上高加重平均**上位100社の純利益率、総資産利益率(ROA)および資産回転率は売上高加重平均出所:各企業が公表したデータと業界予測

2016年度のラグジュアリー品売上高順位

2015年度のラグジュアリー品売上高順位 企業名 対象ラグジュアリーブランド 本社所在国

2016年度のラグジュアリー品

売上高(100万米ドル)

2016年度の総収益

(100万米ドル)

2016年度の ラグジュアリー品 売上高成長率

2016年度の純利益率¹

2014~2016年度の ラグジュアリー品 売上高のCAGR²

87 82 Paul Smith Group Holdings Limited Paul Smith 英国 265 265 -6.8% 4.4% -6.1%

88 86 Charles Tyrwhitt Shirts Limited Charles Tyrwhitt 英国 257 257 1.5% 2.5% 10.2%

89 - Tribhovandas Bhimji Zaveri Limited Tbz インド 254 254 3.2% 0.9% -6.0%

90 84 Festina Lotus SA Festina, Lotus, Jaguar, Candino, Calypso スペイン 250 250 -8.8% 0.3% 2.1%

91 91 K.Mikimoto & Co., Ltd. Mikimoto 日本 247 247 1.0% 8.1% 1.6%

92 87 Fashion Box SpA Replay イタリア 246 246 -6.4% -7.9% -1.4%

93 92 J Barbour & Sons Ltd Barbour 英国 239 239 19.5% 13.0% 5.2%

94 - Laboratoire Nuxe SA Nuxe, BIO-BEAUTÉ by Nuxe フランス 231 e 231 e 5.6% n/a 7.2%

95 89 Trinity Limited 利邦控股有限公司 Cerruti 1881, Kent & Curwen, Gieves & Hawkes 香港 229 229 -7.2% -24.8% -17.7%

96 97 Richard Mille SA Richard Mille スイス 228 228 21.6% n/a 21.7%

97 - Finos SpA Trussardi イタリア 225 225 36.6% -3.7% 19.3%

98 90 Mulberry Group plc Mulberry 英国 219 220 7.9% 3.0% 6.3%

99 88 Falke KGaA Falke, Burlington ドイツ 215 216 2.7% 6.0% 1.7%

100 99 Acne Studios Holding AB Acne Studios スウェーデン 211 211 22.2% 9.5% 23.0%

20世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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世界のラグジュアリー企業ランキング上位100社は、2016年度における米ドル換算のラグジュアリー品売上高に基づいて順位付けされている。毎年のランキングの変動はおおむね、企業の売上高の増減によって決定される。ただし、ある通貨が2016年度に対ドル相場で強く、且つ他の条件が全て同じである場合に、当該通貨を会計報告に使用する企業の2016年度における順位は、2015年度よりも上昇する可能性がある。

逆に、弱い通貨を会計報告に使用する企業は、当該ランキングにおける順位が低下する可能性がある。2016年度、英国ポンドはBrexitの影響を受けて対米ドルで大幅に弱まり、11.7%下落したのに対し、日本円は11.2%上昇した。中国元とブラジルレアルは、それぞれ6.5%と6.3%の下落となった。今年度の上位100社に関わる、その他主要通貨の2016年の対米ドル変動率は5%未満に留まり、ユーロ、デンマーククローネ、香港ドルはほぼ変動しなかった(0.5%未満の下落)。他方、その他の通貨はやや弱まり、2~4.9%下落した。

企業にとって、これら為替相場の変動による売上高ヘの影響は、企業が使用している報告通貨と、事業を展開する地域の分布(ならびに当該地域事業において影響が見込まれる為替相場の変動)の両方によって決まる。

2016年度の上位100社には、新たにランクインを果たした企業12社と再ランクイン企業が含まれている。これらの企業の大半は、売上高の伸長によるものではなく、財務情報の開示によって新たにランクインを果たしている。

詳しくは、新ランクイン企業のセクションを参照されたい。ラグジュアリー企業の多くは非公開会社である。これらの企業の一部は、財務情報が記載された公式な報告書を発行しているが、それ以外の企業については、プレスインタビューや業界アナリストなどの情報源を使用して推定値を算出している。

財務情報を全く開示していないために、上位100社にランクインできない企業も少数ながら存在する。

為替相場がランキングに及ぼす影響 データの入手可能性がランキングに及ぼす影響

21 世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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22世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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上位10社ハイライト

過去3年間と同様に、世界のラグジュアリー企業上位10社の顔触れは2016年度から変化はないが、この精鋭企業間では6社の順位が入れ替わっている。上位10社による売上高がラグジュアリー企業上位100社全体による売上高の50%近くを占めたことも、過去数年間と同様である。

上位3社の大手ラグジュアリー企業、LVMH、Estée LauderおよびRichemontは、過去5年間連続で2桁の利益率を達成している。ほとんどの企業において売上高成長率は低下しており、2015年度の成長率が為替変動に後押しされて相対的に高くなったことも一因だが、困難な経済環境とラグジュアリー品に対する消費者需要の弱さも反映している。2年連続で、Swatch、Ralph LaurenおよびChow Tai Fook(周大福)は売上高の減少を報告した。

2016年に、上位10社の多くでラグジュアリー品売上高成長率が下げ止まったことを示すデータも存在する。2017年度の決算短信では各社のラグジュアリー品売上高成長率は概ね好調であり、LVMHは17.2%という見事な成長率を達成(連結範囲と為替変動の影響を除いた場合は前後14%)、Swatch Groupは2016年度の不調から一転して6.9%の成長率を達成している。Keringはラグジュアリー品売上高成長率を4倍近くの27.5%まで上昇させ、初めてラグジュアリー品売上高100億ユーロの大台を突破した。Estée Lauder、Richemont、L'Oréal LuxeおよびChow Tai Fookも、2017年度の中間決算で成長率がやや上向いたことが示されている。

ラグジュアリー上位10社:ラグジュアリー品の売上低迷を克服主要企業によるM&A活動は増加したが、2016年度の売上高ヘの大きな影響は確認されなかった。主なM&A活動は以下のとおりである。

• LVMHは高品質スーツケース分野のリーダー企業であるRimowaの株式の80%を取得し、ドイツのブランドを初めてLVMHグループに迎え入れた。また2016年12月には、Donna Karanブランドを米国のG-IIIグループへ売却。2017年度の決算において、初めてChristian Dior Coutureを連結対象に含めている(2017年7月から)。

• Estée Lauderは2016年末頃、2つの急成長メイクアップブランドToo FacedおよびBECCAを買収。2017年には、多ブランドを擁する急成長中の美容企業DECIEMの株式を取得し、同社の少数株主となっている。

• Richemontは2018年1月、ラグジュアリーeコマース企業YOOX NET-A-PORTERを27億ユーロで完全子会社化する意向を示した。RichemontはすでにYOOXの株式の50%を所有している。

• LuxotticaによるレンズメーカーEssilorとの500億ユーロ規模の合併計画は、2018年3月初めにEUおよび米国の競争当局からの承認を得た。Luxotticaは小売ネットワークの拡大を続行し、2016年11月にはイタリアの眼鏡小売チェーンSalmoiraghi & Viganòの株式の残り63.2%を取得するオプションを行使するとともに、2017年7月にはブラジル屈指の眼鏡店フランチャイズ企業Óticas Carolの買収を完了した。

• PVH傘下のTommy Hilfigerは、ブランドの中国事業(2016年4月に買収)を統合し、2016年11月にはメキシコにおける事業をライセンスから合弁会社へ移行することで、事業の直接支配を強化した。PVHはまた、米国とカナダにおけるG-III Apparel Groupとの提携関係を拡大。DKNYの紳士衣料のライセンスをG-IIIから取得するとともに、Tommy Hilfigerの婦人衣料のライセンス権をG-IIIに供与した。

LVMHは2016年度も引き続き個人向けラグジュアリー品分野におけるリーダーとして君臨し、上位100社のラグジュアリー品売上高総額の11%を売り上げるとともに、利益額において上位100社が報告している全体の4分の1以上を占めた。LVMHの利益率はわずかに改善したが、前年比成長率は為替変動に後押しされた2015年度の実績から50%以上低下している。LVMHは個人向けラグジュアリー品の全セグメントにおいて売上成長を達成した。LVMHの個人向けラグジュアリー品売上高の60%を構成するファッション&レザーグッズ・セグメントは、同社の花形ブランドであるLouis Vuitton(同ブランドの香水の発売を含む)のほか、Kenzo、Fendi、Loewe、Céline、Berlutiによってもたらされた堅調な成長の勢いに乗り、売上高を3%増加させている。Fendiの売上高は初めて10億ユーロの大台を突破した。当該ファッション&レザーグッズ・セグメントは全セグメント中最高の利益成長率(10%)を報告している。化粧品&香水・セグメントは、売上高成長率において全セグメント中最高の(6%)を記録している。なかでもメイクアップ用品は10%の成長を達成したことで、初めて同社最大のサブセグメントとなった。

23 世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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同社のデジタル戦略は、 Make Up For Ever と、24カ国で新たなウェブサイトを立ち上げたBenefit Cosmeticsの成長を支えた。ジュエリー&時計・セグメントでも厳しい経済環境にありながら市場シェアを獲得し、TAG Heuer、Chaumet、Fred、Bulgariの好調さを受けて売上高を5%伸ばした。

ランキング第2位のEstée Lauderは売上高でLVMHに2倍以上の差を付けられたが、同社が掲げる戦略「Strategic Modernization Initiative」は実を結び続けている。売上高は5%増加し、8年連続でオーガニック成長を達成した。成長を牽引したのは、Estée Lauder、Tom Ford、Smashboxのほか、新たに買収したブランド、Too FacedとBECCAである。職人技を駆使した高級香水が、成長の新たな原動力となる高収益商品となり、超高級香水は売上高ポートフォリオ比率を10%伸ばしている。同社はeコマースで躍進を続け、オンライン売上高は3割の増加を達成し(為替変動の影響を除く)、純売上高全体の11%を占めた。トラベルリテールも好調で、売上高は22%増加した。

Richemontは初めて第2位から第3位へ転落した。2016年度の売上高は4%減となり(例外的に発生した在庫の買戻しと為替変動の影響を除いた場合は2%減)、この結果は主に、Specialist Watchmakers事業の昨年に続く売上高の減少(10.7%減)と、総売上高の大半を占めるジュエリー事業においてわずかながら売上高の減少(2%減、全体売上比率は56%に帰着)が発生したことに起因している。直営ブティックとeコマース事業による売上高構成比は5ポイント増の60%に達し、卸売事業の売上高は14%減少した。Richemontの純利益は、主に不測の事態が多数起こったことが原因で、2015年度から46%減少している。にもかかわらず、Richemontの純利益率は2016年度の上位100社中11番目に高い11.4%となった。

Luxotticaの2016年度における眼鏡類事業の成長率はグローバル全体で2.8%となり、為替変動に後押しされた2015年度の成長率から12.7ポイント低下した。為替変動の影響を除いた場合の成長率は3.9%で、前年比でわずか0.4%減となる。

Luxotticaの世界的ネットワークには新たに約1,000店舗が加わった。この店舗数の拡大は、イタリアの眼鏡小売チェーンSalmoiraghi & Viganòの株式の残り63.2%を取得したことと、Macy'sやGaleries Lafayetteのようなブランドと提携したことによる。純利益率はわずかに改善し、9.4%となった。LuxotticaとフランスのレンズメーカーEssilorの500億ユーロ規模の合併については、EUその他の主要国のほとんどで反トラスト当局からの承認をすでに取得しており、2018年前半に合併が完了する見込みである。オーナー兼会長のLeonardo del Vecchioは、合併後のグループの最高責任者に新たに就任する人物を探している最中だが、過去3年間で4人の最高責任者とたもとを分かっている。

Keringは2016年度、ラグジュアリー品売上高成長率において上位10社中最高となる7.7%を記録した。急成長ラグジュアリー企業20社ランキングにも初登場し、2014~16年度のCAGRは11.9%となった。同社は2016年度後半に成長を加速させ、11.3%の成長率を達成することで(対して前半は4.0%)、市場を上回るパフォーマンスを上げた。2016年度の直営店とオンラインの小売売上高は、全地域で10%以上増加した。これらのチャネルは、Keringのラグジュアリー品売上高の4分の3近くを占めている。主力ブランドであるGucciのオンライン売上高は、ウェブサイトgucci.comのリニューアルやその他のデジタル施策が功を奏し、大幅な成長を記録した。Saint Laurentもソーシャルメディア施策が大成功を収めたことで、昨年度からの好調を維持している。Keringのラグジュアリーブランド全体のオンライン売上高は2016年に22%増加した。ラグジュアリー品専門の企業グループへの方向転換に向けたKeringの取り組みは、同社が自社の株主にPumaをスピンオフする計画を2018年1月に発表したことで、最終章を迎えつつある。

L'Oréal Luxeは2014~16年度のCAGRで上位10社中2位にランクインし、総合ランキングではSwatch Groupを追い抜いた。急成長ラグジュアリー企業20社にも初めてランクインしたが、前年比での成長率については、為替変動に後押しされた2015年度の成長率(16.7%)から6%まで低下している。成長を牽引したのは、各国市場で好調なメイクアップ部門と香水部門に加え(それぞれ28.8%、12.7%の成長率)、オンラインの売上だった。

L'Oréal Luxeがライセンスを受けているYves Saint Laurentブランドの売上高は、初めて10億ユーロを突破。Giorgio ArmaniやLancôme、オルタナティブライフスタイルブランドのUrban DecayとKiehl'sも力強く成長した。L'Oréalの直近のM&A活動として、2016年にニッチ香水企業のAtelier Cologneを、2017年に米国屈指の急成長高級美容ブランドであるIT Cosmeticsを12億米ドルで買収している。

Swatch Groupは、ラグジュアリー品売上高において上位10社中最も大きな減少幅に終わり、成長率はマイナス10.7%と2011年以来の最低水準を記録した。同社は引き続き、事業全体の90%を占めるスイス国外での事業において、スイスフラン高と来店客数・旅行客数の減少の影響を受けた。

Ralph Laurenの売上高は2年連続で落ち込み、2016年度は売上が10.2%減少し収益性も低下したことから(純利益率マイナス1.5%)、同社は上位10社のうち最もパフォーマンスが低い企業となった。Ralph Laurenの問題は主に、純売上高の57%をもたらしている北米地域での市場環境にある。低迷する米国の百貨店は、ラグジュアリーブランドを大幅に値引きして販売することで買い物客を引き寄せようとしているのである。多くのラグジュアリー企業はブランドの高級なイメージに傷が付くことを避けるために、卸売りの門戸を閉め、プロモーション目的の値引きを制限しようとしている。Ralph Laurenは、取引のあった北米の百貨店の4分の1近くから撤退し、出荷量の戦略的削減によって売上高を低下させ、またeコマースの売上高も減らした。2016年6月、同社は不振から脱却すべく「Way Forward Plan」を発表した。これは、持続可能で収益性の高い売上高成長と長期的な株主価値創出との実現を目指した事業再編計画である。この計画には、中核ブランドへの再集中、統制されたマルチチャネル流通戦略の実行、コスト構造の適正化、ROIを重視した財務モデルの導入などが盛り込まれている。CEOは2017年にStefan LarssonからPatrice Louvetへ交代した。

24世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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PVHは2016年度、ラグジュアリー品売上高を5.6%伸ばし、上位10社ランキングではChow Tai Fookを抜いて第9位にランクインした。PVHが擁するCalvin KleinとTommy Hilfigerの両ブランドは、2016年4月にTH Chinaの買収が完了したことを受けて、ヨーロッパと中国で国際的に力強い成長を示した。Calvin Kleinは本国市場でも卸売りを通じて売り上げを伸ばしたが、Tommy Hilfigerの北米における売上高は低下した。後者は、インバウンド旅行者向けの店舗において来客数・購買単価が低迷していることと、北米事業のライセンス権をG-IIIに供与した結果、婦人衣料卸売事業における直営が終了したことに起因している。

香港を本拠とするジュエリー企業Chow Tai Fookは第10位にランクダウンした。同社は3年連続でラグジュアリー品売上高が減少しており、成長率はマイナス9.4%となった。消費者の購買意欲の弱さと旅行客の購買行動の変化は引き続き売上低迷の原因となっている。売上高成長率は、2016年度前半は振るわなかったものの(23.5%減)、同年後半にようやく回復した(4.4%増)。中国本土におけるeコマースの堅調な成長も同年後半に加速した。これは主に、大手オンラインプラットフォーマーのJD.com(京東商城)やTmall(天猫)との提携によるオンライン注文・流通戦略の展開が寄与しているものと考えられる。

上位10社のうち、3社はラグジュアリー市場の複数セグメントで事業展開する コングロマリット、2社は化粧品・香水企業、2社はジュエリー・時計企業、 2社はファッション企業で、唯一のアクセサリー企業が眼鏡類のグローバル リーダーLuxotticaである。米国を本拠とする企業は3社、フランスが3社、 スイスが2社、イタリアと香港がそれぞれ1社である。

上位10社を総合して見ると、10社全体のラグジュアリー品売上高の2年間(2014~16年度)における年平均成長率(CAGR)は2.8ポイント減の4%となった。これは上位100社全体のCAGR(3.9%)をわずかに上回っている。2016年度における上位10社全体での純利益率は1.8ポイント下がって9.6%となった。上位10社のパフォーマンスは今年度も上位100社を上回り、利益額では上位100社全体合計額の3分の2近くを占めた。上位10社はRalph Laurenを除き全て黒字であり、その中でも上位3社は2桁の純利益率を上げている。

25 世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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ラグジュアリー企業、売上高上位10社

¹ 総連結収益および純利益に基づく純利益率² 年平均成長率(CAGR)e = 推定値 p = 試算 n/a = 該当なし ne = 存在せず*上位100社の売上高成長率は為替調整後の売上高加重平均**上位100社の純利益率、総資産利益率(ROA)および資産回転率は売上高加重平均出所:各企業が公表したデータと業界予測

2016年度のラグジュアリー品売上高順位

2015年度のラグジュアリー品売上高順位 企業名 対象ラグジュアリーブランド 本社所在国

2016年度のラグジュアリー品

売上高(100万米ドル)

2016年度の総収益

(100万米ドル)

2016年度の ラグジュアリー品 売上高成長率*

2016年度の純利益率¹**

2016年度 の総資産利益率(ROA)**

2014~2016年度の ラグジュアリー品 売上高のCAGR²*

1 1 LVMH Moët Hennessy- Louis Vuitton SE

Louis Vuitton, Fendi, Bulgari, Loro Piana, Emilio Pucci, Acqua di Parma, Loewe, Marc Jacobs, TAG Heuer, Benefit Cosmetics

フランス 23,447 41,593 5.0% 11.6% 11.6% 10.0%

2 3 The Estée Lauder Companies Inc.

Estée Lauder, M.A.C., Aramis, Clinique, Aveda, Jo Malone; Licensed fragrance brands

米国 11,824 11,824 5.0% 10.6% 10.6% 4.7%

3 2 Compagnie Financière Richemont SA

Cartier, Van Cleef & Arpels, Montblanc, Jaeger-LeCoultre, Vacheron Constantin, IWC, Piaget, Chloé, Officine Panerai

スイス 11,677 11,677 -3.9% 11.4% 11.4% 1.1%

4 4 Luxottica Group SpARay-Ban, Oakley, Vogue Eyewear, Persol, Oliver Peoples; Licensed eyewear brands

イタリア 10,051 10,051 2.8% 9.4% 9.4% 9.0%

5 5 Kering SA

Gucci, Bottega Veneta, Saint Laurent, Balenciaga, Brioni, Sergio Rossi, Pomellato, Girard-Perregaux, Ulysse Nardin

フランス 9,369 13,700 7.7% 7.0% 7.0% 11.9%

6 7 L'Oréal Luxe Lancôme, Biotherm, Helena Rubinstein, Urban Decay, Kiehl's; Licensed brands フランス 8,476 e 8,476 e 6.0% n/a n/a 11.2%

7 6 The Swatch Group Ltd.Omega, Longines, Breguet, Harry Winston, Rado, Blancpain; Licensed watch brands

スイス 7,413 7,665 -10.7% 7.9% 7.9% -6.9%

8 8 Ralph Lauren Corporation Ralph Lauren, Polo Ralph Lauren, Purple Label, Double RL, Club Monaco 米国 6,653 6,653 -10.2% -1.5% -1.5% -6.6%

9 10 PVH Corp. Calvin Klein, Tommy Hilfiger 米国 6,646 8,203 5.6% 6.7% 6.7% 1.6%

10 9Chow Tai Fook Jewellery Group Limited 周大福珠宝集团有限公司

Chow Tai Fook, CHOW TAI FOOK T MARK, Hearts on Fire 香港 6,604 6,604 -9.4% 6.1% 6.1% -10.7%

上位10社 102,160 126,447 0.6% 9.6% 6.7% 4.0%

上位100社 216,579 243,008 1.0% 8.8% 6.9% 3.9%

上位100社のラグジュアリー品売上高のうち上位10社が占める割合 47.2% 52.0%

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急成長ラグジュアリー企業20社

2014~16年の2年間のラグジュアリー品売上高の年平均成長率(CAGR)をもとに、急成長を遂げているラグジュアリー企業の20社(以下、「Fastest 20」)を抽出した。Fastest 20が示す2014~16年度におけるラグジュアリー品売上高の全体CAGRは15.1%であり、上位100社全体CAGRの4倍近くに相当する一方で、昨年からは7.1ポイントの減少となった。Fastest 20のうち、2016年度の売上高が2015年度を上回るペースで成長した企業はわずか6社に留まり、そのためFastest 20のラグジュアリー品売上高における前年比での成長率は13.5ポイント低下して10.5%となった。Fastest 20のうち12社は高い成長率を維持しており、2015年度のFastest 20にもランクインしている(Fastest 20リストでは太字で表示)。

かつてのリーダーであるKate SpadeとMichael Korsは4年ぶりに、Fastest 20から姿を消した。Kate SpadeのCAGRはランクインに必要な水準には達しなかったものの、22位の座は確保している。一方で、Michael Korsは2016年度において売上高が減少した。昨年のリーダーであるMarcolinも、2013年12月にVivaを取得したものの、売上高成長が限定的な水準にとどまり、Fastest 20入りを逃した(24位にダウン)。

首位を獲得したのは、高級アウターブランドビジネスにおいて劇的なオーガニック成長を実現し、初のランク入りを果たしたCanada Gooseである。2016年度、同社のホーム市場における売上高は63%増加した。同社の高級ジャケット(永久保証付き)は主に北米とヨーロッパで販売されている。2017年の新規株式公開と2回目の公募増資により、Bain Capitalが同社の議決権株式の過半数を握り続けている。

新たなるリーダー:羽ばたくCanada Goose、輝くPandora垂直統合型のビジネスモデルにより、アクセシブルラグジュアリー製品を提供するデンマークのジュエリー企業Pandoraは、最も安定した成長ぶりを見せており、過去4年間Fastest 20にランクインし続けている。同社はFastest 20で第2位を獲得し、CAGRは30.3%となった。同社の成長戦略における注力テーマは、PANDORAブランド店舗の急速拡大(2016年度は新規のコンセプトストアを正味336店舗オープンし、シンガポールおよびマカオのPANDORA店舗ネットワークを買収)、カナダ・中国・ニュージーランドにおけるeストアの立上げ、製品の多角化(チャームからブレスレット、指輪からイヤリングまで)であった。Pandoraは上位100社で最も高い純利益率(29.7%)を叩き出しており、今年度もまた、あらゆるラグジュアリー企業のなかで、総じて最も優れたパフォーマンスを上げたと言っていいだろう。

イタリア企業のValentinoとFurlaも、2016年度は25%以上の売上高成長率を報告している。Valentinoはこの成長により、売上高10億ユーロの壁を破った。当該成長をもたらしたのは、CEOのStefano SassiとクリエイティブデザイナーのPierpaolo Piccioliが主導する卓越した高級ファッションデザインと経営管理、そしてオムニチャネルネットワークの拡充である。中価格帯の高級バッグ・高級アクセサリー製品を提供するFurlaは、最大の市場である日本のほか、ヨーロッパとトラベルリテール市場において堅調な成長ぶりを見せた。

Fastest 20企業の平均売上高は、上位100社の平均値をわずかに下回った(20億1,400万米ドル)。今年度のFastest 20には過年度よりも多くの上位ラグジュアリー企業が顔を見せている。KeringとL'Oréal Luxeは初登場で、去年もランク入りしたHermèsと肩を並べることに

なった。20社中10社は、10億米ドル以上のラグジュアリー品売上高を達成している。2016年度のFastest 20全体の純利益率は、上位100社全体の純利益率(8.8%)を2.6ポイント上回り、前年比では0.9ポイントの微減となった。

イタリアは3年連続で、最大の急成長ラグジュアリー企業輩出国となった。2016年度のFastest 20にランクインしたイタリア企業は、2015年度と同数の6社となっている。フランス企業は4社がランク入りし、SMCPとHermèsに、ラグジュアリー業界のリーダー企業であるKeringとL'Oréal Luxeが加わった。インド企業は急成長中のジュエリー企業PC Jewellerに加え、新顔のJoyalukkasもランクインしている。それ以外のFastest 20企業8社の所在国は全て異なり、ブラジル、カナダ、中国、デンマーク、スウェーデン、スイス、英国、米国である。これらの企業のうち6社は、昨年のランキングにも登場している。

Fastest 20にランクインした企業の商品カテゴリーで最も多いのは、今年度も衣料・靴(10社)とジュエリー・時計(5社)であった。化粧品・香水カテゴリーを代表するのはL'Oréal Luxeと、Cotyが新設したラグジュアリー部門である。Cotyの成長は、2016年10月に同社がP&Gの美容事業を125億米ドルで買収したことによって加速した。複合ラグジュアリー企業は2社(KeringおよびHermès)、バッグ・アクセサリー企業は1社(Furla)のみランク入りしている。Furlaは、低迷するアクセシブルラグジュアリー・バッグ市場を大きく上回る成績を上げた。

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CAGR順位上位100社順位 企業名 本社所在国

2016年度の ラグジュアリー品

売上高(100万米ドル)

2014~2016年度の ラグジュアリー品 売上高CAGR2

2016年度の ラグジュアリー品 売上高成長率

2016年度の 純利益率1

1 83 Canada Goose Holdings Inc. カナダ 307 36.0% 38.8% 5.4%

2 20 Pandora A/S デンマーク 3,013 30.3% 21.2% 29.7%

3 42 Valentino SpA イタリア 1,294 26.9% 11.7% 8.7%

4 68 Furla SpA イタリア 474 25.8% 24.5% 6.7%

5 52 SMCP SAS フランス 870 p 24.3% 16.4% 2.8% p

6 100 Acne Studios Holding AB スウェーデン 211 23.0% 22.2% 9.5%

7 46 Moncler SpA イタリア 1,151 22.4% 18.2% 18.9%

8 96 Richard Mille SA スイス 228 21.7% 21.6% n/a

9 80 Restoque Comércio e Confecções de Roupas S.A. ブラジル 322 21.3% -5.3% -5.5%

10 50 Eastern Gold Jade Co., Ltd 中国 992 20.5% -25.6% 3.8%

11 97 Finos SpA イタリア 225 19.3% 36.6% -3.7%

12 55 Ted Baker plc 英国 708 17.0% 16.4% 8.8%

13 43 PC Jeweller Ltd. インド 1,263 15.5% 15.7% 5.3%

14 25 Coty Luxury 米国 2,567 15.1% 39.7% n/a

15 36 Dolce & Gabbana イタリア 1,549 13.9% 14.3% 5.7%

16 49 Joyalukkas India Pvt. Limited インド 1,001 e 13.9% 16.2% 1.8% e

17 63 Brunello Cucinelli SpA イタリア 506 13.1% 10.1% 8.1%

18 11 Hermès International SCA フランス 5,755 12.4% 7.5% 21.2%

19 5 Kering SA フランス 9,369 11.9% 7.7% 7.0%

20 6 L'Oréal Luxe フランス 8,476 e 11.2% 6.0% n/a

急成長ラグジュアリー企業20社(Fastest 20)* ** 40,280 15.1% 10.5% 11.4%

上位100社* ** 216,579 3.9% 1.0% 8.8%

太字の企業は2013~2015年度CAGRに基づく2015年度の急成長ラグジュアリー企業20社(Fastest 20)にもランクインしている。

¹ 総連結収益および純利益に基づく純利益率。² 年平均成長率(CAGR)e = 推定値 p = 試算 n/a = 該当なし ne = 存在せず*上位100社の売上高成長率は為替調整後の売上高加重平均**上位100社の純利益率、総資産利益率(ROA)および資産回転率は売上高加重平均出所:各企業が公表したデータと業界予測

急成長ラグジュアリー企業20社(Fastest 20)、2014~2016年度CAGR2

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商品カテゴリーのプロフィール 企業数

平均ラグジュアリー品 売上高

(100万米ドル)

2016年度 ラグジュアリー品 売上高成長率

上位100社の ラグジュアリー品

売上高に占める割合

衣料・靴 38 $1,114 0.2% 19.5%

バッグ・アクセサリー 9 $1,728 3.4% 7.2%

化粧品・香水 11 $3,103 7.6% 15.8%

ジュエリー・時計 31 $1,771 -4.0% 25.3%

複合ラグジュアリー 11 $6,334 2.1% 32.2%

上位100社 100 $2,166 1.0% 100.0%

商品カテゴリー別の動向

本レポート『世界のラグジュアリー企業ランキング』では、地域別の業績に加え、ラグジュアリー商品カテゴリー別の業績についても分析を行った。カテゴリー別分析の対象は以下の5つである。

• 衣料・靴

• バッグ・アクセサリー

• 化粧品・香水

• ジュエリー・時計

• 複合ラグジュアリー

特定の商品カテゴリーでラグジュアリー品売上高の大部分を構成している企業については、当該商品カテゴリーの企業として分類している。また、売上高の相当割合を複数のラグジュアリー商品カテゴリーで構成する企業は、複合ラグジュアリー企業に分類している。

なお当分析は、本調査における上位100社を対象としている。

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1.0%

8.8%

6.9%

3.9%

0.2%

4.3%

3.7%

2.3%

3.4%

6.9%

6.4%

8.4%

7.6%

7.4%

9.6% 10

.1%

3.2%

-4.0

%

7.8%

7.7%

-1.1

%

2.1%

11.4

%

7.4%

6.4%

上位100社 衣料・靴 バッグ・アクセサリー 化粧品・香水 ジュエリー・時計

複合ラグジュアリー

2016年度のラグジュアリー品売上高成長率* 2016年度の総資産利益率(ROA)**2016年度の純利益率** 2014~2016年度のラグジュアリー品売上高CAGR* ***

-5

-3

-1

1

3

5

7

9

11

13

商品カテゴリー別業績

* 為替調整後の売上高加重平均** 売上高加重平均*** 年平均成長率(CAGR)

出所:各企業が公表したデータに基づくデロイト分析と業界予測

30世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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2016年度のラグジュアリー衣料・靴カテゴリーに属する企業の売上高は、前年度と比較して0.2%減少したが、為替調整後の売上高は0.2%増加している。売上高成長率と純利益率はいずれも2年連続で低下した。2014~16年度のCAGRは2.3%で、上位100社の平均を下回っている。この商品カテゴリーに属する企業数は38社となり、上位100社に占める数が突出している。一方、平均売上規模(ラグジュアリー品の年間売上高で計測)は、上位100社の半分をわずかに上回る程度であり、ラグジュアリー品売上高の総額に占める割合は19.5%であった。また、この商品カテゴリーにおける2016年度ラグジュアリー品売上総額の38.5%を上位3社のRalph Lauren、PVH Corp.、Hugo Bossが占めたが、Ralph LaurenとHugo Bossの売上高が低下したことにより、前年比では2.2ポイント減となった。所在国では、衣料・靴企業の約40%がイタリアを本拠とし、残りは他10カ国に点在している。ラグジュアリーファッション業界では引き続きヨーロッパを拠点とする企業が最多であり、それ以外は9社に留まり、その多くは米国を拠点としている。

比較的小規模な衣料・靴企業の多くが、非常に好調な業績を収める結果となった。この商品カテゴリーに属する企業はFastest 20において半数、その上位5社においても2社を占め、売上高成長率と純利益率は2桁を記録した。なお、2桁の売上高成長率を達成した企業数は12社であった。2016年度に成長率が最も高かった衣料・靴企業は、初登場のカナダ企業Canada Gooseである。同社の高級アウターブランドの売上高が、オーガニックでの目覚ましい成長を引き続き遂げたことで、その成長率は38.8%となった。同社の高級ジャケット(永久保証付き)は主に北米とヨーロッパで販売されており、世界全体での売上高は2013~16年度の期間で倍増している。2017年の新規株式公開と2回目の公募増資以後は、Bain Capitalが同社の議決権株式の過半数を握り続けている。スウェーデンのファッション企業Acne Studiosも、2014~16年度で売上高を倍増させた。創業者でクリエ

化粧品カテゴリーの成長の原動力は「今すぐ撮影されても構わない」美しさ、時計カテゴリーはいまだ低迷イティブディレクターのJonny Johannsonによるコレクションは、様々な素材や特製生地を取り入れた現代的なテイストを特徴としている。Acneは店舗ネットワークを拡大し続けることで、ほぼ全地域で成長を遂げた。イタリア企業のFinosは、同社のTrussardiブランドが2016年度に業績を回復したことで、上位100社に再びランク入りした。Tru Trussardiラインの廃止、増資、不採算店舗の合理化などによる大規模な企業再編の成果により、36.6%の売上高成長率を達成し、特にロシアにおいて優れた業績を上げた。英国に本拠を置くBarbourが売上高を19.5%増加させたのも戦略的変革の成果であり、とりわけ製品ポートフォリオの改善、主要顧客とのコラボレーション、新たに導入したリアルタイムでの在庫管理システムが功を奏した。2014~16年度において毎年2桁の売上高成長率を達成したのは、Canada GooseとAcne Studiosに加え、イタリア企業4社と英国企業2社、すなわち、Moncler、Dolce & Gabbana、Valentino、Brunello Cucinelli、Ted Baker、Kurt Geigerである。Monclerは衣料・靴カテゴリーで4年連続して最も業績の良い企業の1つであり、2016年度は2桁の売上高成長率(18.2%)と利益率(18.9%)を達成した。

その一方で、2016年度は16社のラグジュアリーファッション企業で売上高の減少が発生している。この分析グループには、衣料・靴カテゴリーにおける上位5社のうちの3社であるRalph Lauren、Hugo Boss、Giorgio Armaniも含まれる。この落ち込みの主な要因としては、米国の小売業界(特に百貨店)の減速、中国の成長率低下、オンラインショッピングの増加に対応したオムニチャネル戦略による方向転換が挙げられている。北米市場はRalph Laurenにとって悩みの種であり、売上高が15.6%減少した。これは主に、不振の百貨店への卸売上高が減ったことと、事業再編計画「Way Forward Plan」の一環として出荷量が戦略的に削減されたことが原因となっている。Hugo Bossも北米・南米における卸売事業の売上高が大幅に低下した。Giorgio Armaniは2009年以来初めて売上高が減少したことを受け

て、店舗ネットワークを合理化するとともに、7つあったブランド数を削減し、中核ブランドであるGiorgio Armani、Emporio Armani、A/X Armani Exchangeだけを残す計画を打ち出した。業績不振を理由に、2017年に中国の繊維メーカーShandong Ruyiに買収された香港企業Trinity(ラグジュアリーブランドのCerruti、Kent & Curwen、Gieves & Hawkesを所有)は、4年連続で売上高が減少している。日本の三陽商会は、Burberryが同社との45年にわたるライセンス契約を打ち切って日本における事業を自ら開始したことから、最大の売上高の減少を記録した。今年度新たにランクインしたもう1社の日本企業であるオンワードホールディングス(Joseph、Jil Sanderの両ブランドのほか、日本の大手アクセシブルラグジュアリーブランドである23区を所有)は、売上高の微減を報告している。

ファッション業界に属する報告企業38社の全体の平均純利益率は、2016年度のラグジュアリー業界をめぐる厳しい環境を反映し、1.9ポイント減の4.3%となった。この落ち込みの大半は、Ralph Laurenに起因している。同社の純利益は、主に「Way Forward Plan」(中核ブランドへの再集中、統制されたマルチチャネル流通戦略の実行、コスト構造の適正化、ROIを重視した財務モデルの導入)に関連した事業再編コストが原因で、5億米ドル近く減少した。衣料・靴カテゴリーでは、敗者よりも勝者が多かった。この商品カテゴリーに属する企業の半数以上は2016年度、利益率の上昇を報告している。純利益率では今年度もMonclerが最も高く18.9%であり、これは上位100社で第3位であった。Moncler以外で2016年度に2桁の利益率を報告したのは、Barbour(13%)、Textil Lonia(11.2%)、Liu.Jo(10.8%)、Giorgio Armani(10.7%)の4社である。全体として見ると、ラグジュアリー衣料・靴企業の利益率は2015年度比でわずかに低下している。この商品カテゴリーの企業の過半数(20社)は利益率が1桁で、9社は赤字を計上した。

31 世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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上位100社のバッグ・アクセサリー(眼鏡類を含む)企業は、2014~16年度のCAGRが全ラグジュアリー商品カテゴリー中最も高く、2016年度の売上高成長率において2番目に高い数値(3.4%)を記録した。後者は、為替変動に後押しされた2015年度の売上高成長率と比べると10ポイント減となる。この商品カテゴリーの9社のうち、眼鏡企業のLuxottica GroupおよびSafilo Group、Kate Spadeがビッグ3となっており、この3社で同カテゴリーの2016年度ラグジュアリー品売上高の82.3%を占め、特にLuxotticaだけで全体の64.6%を占めた。一方、他の6社はいずれも売上高が6億5,000万米ドルを下回った。

Tumiは2016年8月にSamsoniteから18億米ドルで買収された結果、上位100社から姿を消している。2017年、この商品カテゴリーでは買収・合弁事業が活発化した。Coachは7月にKate Spadeを24億米ドルで買収し、所有するラグジュアリーブランドのポートフォリオが拡大し続けていることを受けて、社名をTapestryに変更している。流通ネットワークを買収により獲得した企業も多く、ポルトガルおよびオーストラリアにおけるFurlaや、オーストラリア、中国、香港および台湾におけるMulberryがその例である。Marcolinは2017年1月、デザイン・生産におけるパートナーシップを目的としたLVMHとの合弁事業を発表した。新たに設立された合弁会社Theliosの所有権は、Marcolinが49%、LVMHが51%を保持する。同社は2018年からCélineブランドの眼鏡類のデザイン・生産を開始し、今後はLVMHの眼鏡類事業における優先パートナーとなる予定である。

為替変動の影響を除いた場合、Luxotticaの2016年度における売上高成長率は2015年度からわずかに低下し、3.9%となった。ただし、報告された売上高成長率は13ポイント近く下落している。これは、2015年度の業績が為替変動の後押しを受けたことに起因する。Luxotticaの小売部門は6%の成長を遂げ、卸売・製造部門の落ち込みを相殺した。

Luxotticaは、イタリアの小売チェーンSalmoiraghi & Viganòの株式の残り63.2%を買収し、Macy'sやGaleries Lafayetteなどのブランドと提携したことで、自社の世界的ネットワークに約1,000店舗を新たに加えた。この拡大は2017年も続き、7月にはブラジル屈指の眼鏡店フランチャイズ企業Óticas Carolを買収している。純利益率は今年度もわずかに改善し、9.4%となった。これは、この商品カテゴリーで2番目に高い数値である。LuxotticaとフランスのレンズメーカーEssilorとの500億ユーロ規模の合併については、EUその他の主要国のほとんどで反トラスト当局からの承認をすでに取得しており、2018年前半に完了する見込みである。オーナー兼会長のLeonardo del Vecchioは、合併後のグループの新たな最高責任者を探している最中だが、過去3年間で4人の最高責任者とたもとを分かっている。

イタリアは高級バッグ・アクセサリーの世界的中心地であり、この商品カテゴリーに属する9社中5社を擁している。残りの4社は、フランス、韓国、英国、米国を本拠とする企業である。

Furlaは今年度もこの商品カテゴリーにおけるスター企業であり、2016年度で最も高い24.5%の売上高成長率を記録した。同社の売上高は2013~16年度の期間で90%近く成長している。全地域で成長が報告されているが、アジア太平洋地域と日本における実績が特に堅調である。空港内を中心とするトラベルリテールへの注力も引き続き功を奏し、この成長中のラグジュアリーチャネルにおける売上高は40%増加した。同族会社であるFurlaが自社の非常に好調な業績の背景にある主な要因として挙げているのは、Furlaブランドとそのコレクションに対する消費者の評価が国際的に高まっていること、マーケティングに大規模な投資を行っていること、流通ネットワークの構築に大きく重点を置いていることである。同社はバッグ・アクセサリー企業として唯一Fastest 20にランクインし、第4位に付けた。また、2016年度も純利益を6.7%で維持している。

Furlaと競合する米国企業のKate Spade & Companyは、2016年度にFurla以外で2桁成長を達成した唯一のバッグ・アクセサリー企業である。同社のラグジュアリー品売上高成長率は、主に北米、ヨーロッパおよび日本における売上高の後押しによってわずかに上昇し、11.4%となった。kate spade new yorkの消費者向け直販の売上高は9.1%成長しており、この成長はほぼ完全にeコマースに起因するものである。同社の純利益率は2016年度には力強く回復し、2015年度(事業再編・縮小費用の影響を受けた)から10ポイント近く上昇して11.1%となっている。これによりKate Spadeは、上位100社において売上高と純利益の両方で2桁の成長率を報告した好成績企業のわずか5社のうちの1つとなった。Kate SpadeはCoachに買収されたため、独立した企業として本レポートに登場するのは今回が最後となる。

Sungjoo D&D(MCMブランドを所有する韓国企業)、Mulberry、Marcolin、De Rigoは揃って1桁成長を報告し、LongchampとSafiloはどちらも売上高を減らした。Safiloは、Keringの複数ブランドのライセンスを失ったことを受けた業績回復戦略5カ年計画の2年目にある。同社の2016年度の売上高が2%減少した主な原因は、GucciがSafiloのライセンスブランドとしての最後の年に2桁のマイナス成長を記録したことにある。Keringとの間で結んだ戦略的製品提携契約に基づいて第4四半期に実施された最初の大量出荷は、これを相殺するには不十分だった。Safiloのその他のライセンスブランドは、特にヨーロッパで堅調な実績を上げている。Safiloは損失を計上しているが、これは完全に、極東地域のCGUで発生したのれんの減損による、1億5,000万ユーロの一時的損失に起因するものである。経常外項目を除けば、Safiloはわずかながら利益を上げている。

バッグ・アクセサリーカテゴリーに属する報告企業8社全体の2016年度における純利益率は小幅に上昇し、6.9%となった。この利益率は、上位100社の平均(8.8%)を下回っている。Kate Spadeの利益率が最も高く、他の企業は、共に損失を計上した眼鏡企業のDe RigoとSafiloを除き、全社揃って純利益率が1桁台であった。

32世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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化粧品・香水企業は、上位100社のなかでも比較的規模が大きく、2016年度のラグジュアリー品の年間売上高は平均31億300万米ドルであった。この商品カテゴリーの11社のうち8社はラグジュアリー品売上高が10億米ドルを超えており、特に上位3社のEstée Lauder、L'Oréal Luxe、資生堂のプレステージブランド・フレグランス事業の売上高合計は、当該カテゴリー企業の2016年度ラグジュアリー売上高総額の70%以上を占めた。11社のうち米国およびフランスを本拠とするのはそれぞれ3社、日本が2社、ルクセンブルクとイタリアとスペインがそれぞれ1社である。

今年度、資生堂とCotyはラグジュアリー品売上高に関する報告セグメントを刷新しており、その新たな要領に基づき売上高の集計・報告がされている。本レポートにおける両社およびL'Oréal Luxeのラグジュアリー品売上高に関する数値は、各企業のラグジュアリー・高級品部門のみを対象としているが、それらの部門の純利益は報告されていない。Cotyは、2016年10月にProcter & Gambleからの美容事業の買収を125億米ドルで完了し、ラグジュアリー部門(Coty Luxury)を設立した。2017年にライセンスを取得したBurberryの美容ブランドも、Coty Luxuryに組み込まれる予定である。資生堂は、プレステージブランド・フレグランス事業の売上高を、2016年度の報告セグメントの刷新により初めて報告することとなり、上位100社に再ランクインした。資生堂と競合する日本企業のポーラ・オルビスは、初の上位100社入りを果たした。ポーラ、H2O PLUS BEAUTYをはじめとする高級ブランドを対象とし、同社の歴史ある直販とインターネットマーケティングによる流通モデルは、昔ながらの訪問販売から、実店舗のポーラ ザ ビューティーやエステインを通じた販売へと移行しつつある。Elizabeth Ardenは、Revlonによる8億7,000万米ドルでの買収が2016年9月に完了したことで、上位100社から離脱した。

2016年度の化粧品・香水カテゴリーは、全商品カテゴリー中で最高の実績を上げ、また唯一前年度を上回る7.6%の売上高平均成長率を達成した。この成長率は、他のあらゆるカテゴリーを圧倒的に引き離して第1位であり、世界の高級美容市場全体の成長率(4~5%)も上回っている。

Estée Lauderは、2017年のアニュアルレポートで次のようにコメントしている。「常に今すぐ撮影されても構わない状態でありたい」という願いから、美容製品に対する消費者の需要は、特にラグジュアリー領域で高まりつつある。主にデジタルコマースとソーシャルメディアによって参入障壁が下がったことから、高級化粧品の競争の場は広がり続けている」。この商品カテゴリーの全企業が成長を報告しているが、カテゴリー全体の成長の約4分の1は、CotyがProcter & Gambleの美容事業を買収したことに起因している。

当然ながら、Coty Luxuryはこの商品カテゴリーで最も急成長を遂げた企業であり(前年比と2014~16年度のCAGRの両方において)、Fastest 20で14位にランクインした。報告売上高は前年度比で40%増加となっており、この成長の約33%はProcter & Gambleの美容事業を買収したことに起因している。Cotyが取得した40以上のブランドとライセンスのうちラグジュアリー部門に属するのは、香水ブランドトップ(純収益の構成比において)のHugo BossとGucciを筆頭とする高級香水ブランドである。

L'Oréal Luxeは、2014~16年度のCAGRが2番目に高く、Fastest 20の20位にランクインしているものの、前年比成長率については、為替変動に後押しされた2015年度の16.7%から6%に後退した。成長を牽引したのは、ほとんどの市場におけるメイクアップ部門(28.8%)と香水部門(12.7%)のほか、eコマースだった。同社が擁するYves Saint Laurentブランドの売上高は、初めて10億ユーロを突破し、Giorgio ArmaniやLancôme、オルタナティブ・サステナブルブランドのUrban DecayとKiehl'sも力強く成長した。L'Oréalはニッチ香水企業のAtelier Cologneを2016年に、米国屈指の急成長高級美容ブランドであるIT Cosmeticsを12億米ドルで2017年に買収している。

Inter Parfumsは、2015年度の為替変動の悪影響とライセンスブランドBurberryの売上高減少から立ち直り、2016年度は2番目に高い前年比ラグジュアリー品売上高成長率(11.2%)を報告している。同社最大の香水ブランドMontblancは、売上高の成長を牽引し続け、25%の成長率を達成したものの、同社の二番手、三番手のブランドとなるJimmy ChooとLanvinは、ロシアと中国の経済減速が一因となって苦戦した。

トラベルリテールは引き続き、この商品カテゴリーの大手企業にとって重要な成長の牽引役の1つであり、Coty LuxuryとEstée Lauder両社の2016年度売上高の14%を占めている。他方、L'Oréalはトラベルリテールを「第6の大陸」と呼んでいる。資生堂は2016年5月、中長期戦略「VISION 2020」の一環として、新会社となる資生堂トラベルリテールをシンガポールで立ち上げた。

先に挙げた以外のラグジュアリー美容企業はいずれも、2016年度は1桁の売上高成長率を報告している。業界リーダーであるEstée Lauderは売上高を5%増加させ、8年連続でオーガニック成長を達成した。成長に寄与したのは、Estée Lauder、Tom Ford、Smashboxのほか、同社が新たに買収したブランド、Too FacedとBECCAである。職人技を駆使した高級香水が、成長の新たな原動力となる高収益商品となり、超高級香水は売上高ポートフォリオ比率を10%伸ばしている。同社はeコマースで躍進を続け、オンライン売上高は3割増加し(為替変動の影響を除く)、現在では純売上高総額の11%を占めているが、そのほとんどは米国と英国におけるものである。同社は当該カテゴリー企業の中で、2番目に高い10.6%の純利益率を報告している。

化粧品・香水カテゴリーに属する報告企業7社全体の2016年度における純利益率は、今年度も全商品カテゴリーで2番目に高く、前年とほぼ同水準の9.6%となった。これは、上位100社全体の純利益率を0.8ポイント上回っている。また、全企業が黒字となっており、Estée Lauderに加えてEuroitalia(13.5%)とL'Occitane(10%)が2桁の純利益率を報告している。カテゴリー全体のROAでは、今年度も化粧品・香水カテゴリーが全商品カテゴリーのうち最も総資産利益率(ROA)が高く、10.1%であった。

33 世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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ジュエリー・時計企業の2016年度ラグジュアリー品売上高成長率は全カテゴリーのなかで最低で、マイナス4%となった。

ジュエリー・時計企業31社の2016年度のラグジュアリー品売上高は平均17億7,100万米ドルで、上位100社のラグジュアリー品売上高総額に占める割合は2番目となる25.3%であった。上位3社のSwatch Group、Chow Tai Fook、Rolex(推定)は、ラグジュアリー品売上高が50億米ドルを超え、当カテゴリーの総額の35.3%を占めた。この商品カテゴリーに属する企業の半数近くは、ラグジュアリー品売上高が10億米ドルを上回っている。

高級ジュエリー・時計専門企業は、以下の3つに分類される。

• 象徴的なグローバルブランドを持つ、スイスの高級時計メーカー8社

• 中国・香港やインドを本拠とし、広範な小売ネットワークをもつ、垂直統合型のビジネスを展開する高級ジュエリーグループ13社

• Graff Diamonds(「高級ジュエリーの頂点」としてのポジションを自負)やグローバル真珠ブランドのミキモト、デンマークのPandoraやスペインのTousといったアクセシブルラグジュアリー企業など、有力ジュエリー企業10社

今年度、上位100社入りしたインド・中国のジュエリー企業の数が増加した。これは、業績情報の可用性が改善されたことと、これら2か国が国内消費・輸出の両面において有する、グローバル高級ジュエリー市場での重要性を反映したものである。インドは、自国をグローバルジュエリー市場の加工拠点と自負し、世界の研磨済みダイヤモンド全体の4分の3前後を輸出している。

インド国内のジュエリー市場は、歴史的に細分化とコモディティ化がかなり進んでいるが、この大きな市場では、ラグジュアリーブランドを有し、組織立った垂直統合型のビジネスを展開するジュエリーチェーンが多数、急成長を続けている。同族経営のジュエリー企業であるKalyan Jewellers、Joyalukkus、Tribhovandas Bhimji Zaveri(tbz)の3社は、いずれも上位100社入りとなる業績を達成した。これら3社と並んで、中国・香港のジュエリー企業Tse Sui Luen(謝瑞麟:TSL)とChow Tai Seng(周大生)も上位100社にランクインした。スイスのアクセシブルラグジュアリー時計メーカーFrédérique Constantは、2016年5月に日本のシチズン時計株式会社に買収されたため、上位100社から離脱している。

2016年度はジュエリー・時計企業6社が、2桁のラグジュアリー品売上高成長率を達成した。スイスの時計メーカーRichard Milleは、2012~16年度の4年間で年間売上高を倍増させており、2016年度はこの商品カテゴリーで最も高い21.6%の成長率を報告している。この成長は、スイスの時計メーカーの大半が外需の弱さとスイスフラン高の悪影響を受けていることを踏まえると、なおさら目覚ましいものである。Milleはこの成功の理由として、同ブランドのラグジュアリーな地位および品質の高さと、売上高を地域間で均等に分散させるという賢明な戦略的選択を挙げている9。

垂直統合型ビジネスを展開する、デンマークのアクセシブルラグジュアリージュエリー企業Pandoraは、最も安定した成長ぶりを見せ、2014~16年度で毎年、この商品カテゴリーの急成長企業トップ3に入っている。2016年度は第2位に付けており、売上高成長率は21.2%、2年間のCAGRは30.3%となった。同社の成長戦略における注力テーマは、PANDORAブランド店舗の急速拡大(2016年度は新規のコンセプトストアを正味336店舗オープンし、シンガポールおよびマカオのPANDORA店舗ネットワークを買収)、カナダ・中国・ニュージーラン

ドにおけるeストアの立上げ、製品の多角化(チャームからブレスレット、指輪からイヤリングまで)であった。Pandoraは上位100社で最も高い純利益率(29.7%)を叩き出しており、今年度もまた、あらゆるラグジュアリー企業のなかで総じて最も優れたパフォーマンスを上げたと言っていいだろう。Pandoraに続く急成長企業3社は、いずれもインドのジュエリー企業で、2016年度の売上高成長率が16%前後のTitan、PC Jeweller、初登場の非公開企業Joyalukkasである。スペインのアクセシブルラグジュアリージュエリー企業Tousも、2016年度は2桁の売上高成長率(11.3%)を報告した。

スイスの時計企業のうち、2016年度にプラス成長を達成したのはわずか3社に留まっている。高級時計メーカーのRichard Mille(成長率21.6%)とAudemars Piguet(推定成長率6.7%)は、2年連続で急成長企業トップ2となった。両社は多くの競合企業に比べて、不振のアジア市場から受ける業績への影響が小さく、自社の「オートオルロジュリー(高級機械式時計)」ブランドのポジショニングと権威ある独自性・希少性を非常に重視している。Audemars Piguetは2011年から販売店数を減らすことで、接客の質の向上を図っている。Breitlingも、2016年度に売上高成長を果たしたスイスの時計企業である。同社は2017年4月、CVC Capital Partnersに買収され、2017年8月には、Richemontの時計部門のトップを務めていたGeorges Kernが同社を離れ、BreitlingのCEOに就任した(同時にBreitlingの株式の5%を取得)。最大手のSwatch Groupは引き続き、事業全体の90%に当たるスイス国外での事業においてスイスフラン高の影響に悩まされ、ラグジュアリー品売上高の10.7%減を計上している。

なお、Rolexをはじめとする財務情報を一切公表しないスイスの非公開時計メーカー6社の売上高は、いずれもプレスインタビューと業界予測を用いた推定値であることに留意されたい。

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デロイトの2017年スイス時計業界調査によると、2016年は低迷に底を打った年であるようだ10。8四半期連続の成長率低下を経て、2017年第2四半期にスイス時計の輸出は増加し、特に中国向けの輸出が力強く回復した。調査に協力した時計業界のエグゼクティブのうち、今後12ヶ月間のスイス時計業界の見通しは明るいと答えた人の割合は、2016年にはわずか2%だったのに対し、2017年は52%となっている。2017年度初期の業績は、この自信が正当なものであることを裏打ちしており、RichemontとSwatch Groupはいずれも2016年度の業績悪化から立ち直り、それぞれ6.7%と6.9%のラグジュアリー品売上高成長率を達成している。

全体を見ると、2016年度のラグジュアリー品売上高が2015年度から減少したジュエリー・時計企業は19社となった。これらの企業には、最大手であるSwatch、Chow Tai Fook、Rolex(推定)の3社も含まれる。香港企業のChow Tai Fookは、3年連続でラグジュアリー品売上高の減少を報告している。これは主に、上半期の業績が振るわなかったことに起因しており、同年度の下半期には売上高成長率がようやく上昇基調に回復した。売上高が2桁のマイナス成長を記録した6社のうち4社は、中国・香港を本拠とするラグジュアリージュエリー企業であった。これは、経済が減速したこと、旅行客が減少したこと、投資家が投資先を金製ジュエリーから金地金(ゴールドバー)へ乗り換えたことに起因している。

2016年度の厳しいビジネス環境にもかかわらず、純利益率を公表したジュエリー・時計21社全体の純利益率は、見事な回復力を示した。2016年度の純利益率は、2015年度からわずか0.3ポイント減の7.8%となっている。また全企業とも黒字で、2015年度と同数の3社が2桁台の純利益率を達成した。Pandoraは純利益率が29.7%と、今年度も最も高く、Chow Tai Sengは前年度から1.8ポイント下がって14.7%となり、Tiffanyは11.2%で安定していた。この商品カテゴリーに属する企業全体の総資本利益率は、上位100社全体の平均(7.7%)を0.8ポイント上回っている。

この商品カテゴリーに属する複合ラグジュアリー企業11社の平均的な規模は、残りの上位100社の規模を大きく上回っている。これら11社の2016年度のラグジュアリー品年間平均売上高は63億米ドルで、11社の売上高の合計は上位100社のラグジュアリー品売上高の32.2%を占めている。この商品カテゴリーは今年度も純利益率が最も高く、前年比でのラグジュアリー品売上高成長率も2番目に高かった。

この商品カテゴリーに属する企業の顔触れは2015年度から変わっておらず、上位10社入りしたLVMH、Richemont、Keringの3社と、上位20社中の8社から構成されている。前者3社の売上高総額は440億米ドルで、この商品カテゴリーに属する企業全体の売上高総額の63.9%を占めている。これは、最大手の企業の大半が、様々なラグジュアリー品カテゴリーに参入することで規模拡大を達成してきた結果である。また、この商品カテゴリーに属する企業のほとんどはヨーロッパ多国籍企業であり、3社がフランス(LVMH、Kering、Hermès)、3社がイタリア(Prada、Salvatore Ferragamo、TOD’S)、2社が英国(Burberry、Michael Kors)、2社が米国(Tapestryに社名を変更したCoach、Cole Haan)、1社がスイス(Richemont)に本拠を置いている。他の商品カテゴリーとは異なり、ほぼ全ての複合ラグジュアリー企業が公開企業であるため、株式資本を活用した成長を推進している。この商品カテゴリーで最も小さいCole Haanはその例外であり、プライベートエクイティグループのApax Partnersの子会社となっている。

複合ラグジュアリー企業の2016年度の売上高成長率は2.1%で、為替変動に後押しされた2015年度の成長率(10.8%)から大幅に低下した。

Hermès Internationalは、2016年度の当該商品カテゴリーにおいて、総じて最高の業績を上げており、2014~16年度のCAGR(12.4%)と純利益率(21.2%)で最も高い数値を達成した。同社最大の「得意分野」である革製品と馬具類の2016年度の売上高は、持続的な需要の高まりと生産能力向上が牽引し、14.5%増加している。唯一日本を除き、全地域での事業が同社のオーガニック成長に寄与した。またHermèsは今年度も上位100社全ての中で純利益率が2番目に高く、2011~16年度の6年連続で20%超を記録した。

Hermèsと共にFastest 20にランクインしたKeringは、2014~16年度のCAGRで11.9%を達成している。Keringの2016年度におけるラグジュアリー品売上高成長率は、7.7%と市場の成長率を上回ったが、2016年度下半期にはペースを上げて、11.3%に達している(対して上半期は4.0%)。2016年度の直営店とオンラインでの小売売上高は、全地域で10%以上増加した。これら2つのチャネルの売上高は、Keringのラグジュアリー品売上高の4分の3近くを構成している。ラグジュアリー品専門の企業グループへの方向転換の取り組みは、同社が自社の株主にPumaをスピンオフする計画を2018年1月に発表したことで、最終章を迎えつつある。

Burberryは2016年度、この商品カテゴリーで最も高い10%の前年比成長率を報告している。これは、Brexitの影響による英国ポンド安の後押しを受けた結果である。為替変動の影響を除いた場合、売上高は2%減となり、この原因として同社は、世界全体の厳しいマクロ経済的・地政学的な外部環境を挙げている。Burberryは2017年初期、中国とヨーロッパで業績を改善させたが、主要市場である米国と香港には課題が残った。同社はこの商品カテゴリーで唯一、2016年度に2桁の成長率と純利益率の両方を報告した企業である。

Pradaも2016年度は厳しい1年だったと報告しており、売上高を10%以上減少させた。全ての地域で売上高が減り、アジア太平洋地域と北南米が最も不振だった。イタリア、中国およびロシアではいくぶん売上高の回復が見られたが、これらの市場における成長をもってしても、海外旅行客の減少は相殺されなかった。2016年度におけるPradaグループの純利益率は、6年間で最低だったとはいえ、8.9%と優秀であった。

2016年度における複合ラグジュアリー企業全体の純利益率は、今回も全カテゴリーで最高の11.4%となった。これは、2015年度よりもわずか1.1%の低下である。また、業績を公表した10社全てが黒字となり、2015年度と同じ7社が2桁の純利益率を達成した。利益率が最も高かったのは、Hermès International(21.2%)、Ferragamo(13.8%)、Coach(13.2%)であった。Michael Kors、Richemont、LVMH、Burberryも2桁の純利益率を達成した。好調なこの商品カテゴリーの総資産利益率(ROA)は上位100社全体の平均を上回る7.4%であった。

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国別のプロフィール 企業数

ラグジュアリー品 平均売上高

(100万米ドル)

2016年度 ラグジュアリー品 売上高成長率

上位100社の ラグジュアリー品売上高に占める割合

中国・香港 9 $1,928 -9.4% 8.0%

フランス 9 $5,843 5.8% 24.3%

ドイツ 5 $886 -4.3% 2.0%

イタリア 24 $1,409 1.0% 15.6%

スペイン 4 $741 6.2% 1.4%

スイス 9 $3,138 -5.1% 13.0%

英国 10 $1,126 3.2% 5.2%

米国 13 $3,351 1.7% 20.1%

その他 17 $1,351 5.8% 10.3%

地域別の動向

ヨーロッパ、アメリカ、中国・香港に本社を置くラグジュアリー企業の割合が圧倒的に高いことから、この地理的分析では、個別の国に焦点を当て、各企業を本社のある国ごとに分類する。そのため、ラグジュアリー品売上高の多くを占める国とは必ずしも一致しない。多くの企業が本社の所在国以外からも売上を上げているが、この分析では各企業の売上高の100% をその企業の本国の売上と見なす。

分析の対象は、以下の8カ国

• 中国・香港

• フランス

• ドイツ

• イタリア

• スペイン

• スイス

• 英国

• 米国

この分析は、デロイトの上位100社分析の対象企業のみに限定している。

業績は各国に本拠を置く上位100社のもの。出所:各企業が公表したデータに基づくデロイト分析と業界予測。

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1.0%

8.8%

6.9%

3.9% 4.

9%-9

.4%

-6.0

% -4.3

%

6.0%

5.8%

11.2

%6.

9%10

.3%

7.2%

10.6

%1.

7%

1.0%

7.1%

5.9%

5.3% 6.

2%8.

1% 8.8%

7.9%

-5.1

%10

.0%

5.4%

-0.8

%

3.2%

9.8%

11.8

%2.

9%

1.7%

7.5%

7.0%

0.9%

5.8%

9.1%

10.5

%8.

0%

上位100社 フランス イタリア スペイン

2016年度ラグジュアリー品売上高成長率* 2016年度の総資産利益率(ROA)**2016年度の純利益率** 2014~2016年度のラグジュアリー品売上高CAGR* ***

-10

-5

0

5

10

15

スイス1 英国 米国 その他ドイツ中国・香港

国別業績

業績は各国に本拠を置く上位100社のもの* 為替調整後の売上高加重平均。** 売上高加重平均*** 年平均成長率(CAGR)¹ 純利益率と総資産利益率(ROA)は2社のデータに基づく出所:各企業が公表したデータに基づくデロイト分析と業界予測

38世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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中国

中国・香港を本拠とする企業(9社中8社はジュエリー・時計カテゴリーに所属)は2016年度、3年連続でラグジュアリー品売上高が減少した。

売上高は9.4%減少し、2014~16年度のCAGRはマイナス6.0%であった。

厳しい環境にもかかわらず、ジュエリー企業は全て黒字を出している。中国・香港に拠点を置く企業全体の純利益率はわずかに改善し、4.9%となった。中国・香港のラグジュアリー企業9社のうち、ラグジュアリージュエリー企業の上位3社の業績が他企業を圧倒しており、2016年度は上位100社のラグジュアリー品売上高の8%を占めた。このうち最大の企業であるChow Tai Fookは順位を1つ下げて10位となったが、2016年度下半期には売上高の改善を報告している。中国を本拠とするLao Feng Xiangは、わずかながら売上高を伸ばしたが、香港に拠点を置くChow Sang Sangの売上高は、香港・マカオを中心に16%減少した。

業績不振で2017年に中国の繊維メーカーShandong Ruyiに買収された紳士衣料グループのTrinityは、4年連続で売上高を減らしている。このグループで最も優秀な成績を収めた企業は、中国の同族ジュエリー企業Chow Tai Sengである。同社は2,000店舗以上からなるフランチャイズ店主体のネットワークを拡大することで、6.3%の売上高成長率を達成した。また2016年度の純利益率についても、2017年に深圳証券取引所に上場するに当たり、当分析グループ中で最も高い14.7%を報告している。

2016年度は、中国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スイス、英国、米国で、ラグジュアリー企業数は上位100社の83%(83社)を、ラグジュアリー品売上高は上位100社合計の90%を占めた。

スペインとフランスは2016年度、最も高いラグジュアリー品売上高成長率を報告している。米国と英国の成長率は、主に為替の影響により上昇した。イタリア企業の売上高は、2015年度から微増した。中国・香港、スイスおよびドイツを本拠とする企業の売上高は減少している。その他の国を本拠とする企業の売上高は引き続き増加しているが、成長率は過年度を下回った。

最も優秀な成績を収めたのはスペイン企業で、2016年度のラグジュアリー品売上高成長率は6.2%であった。次点はフランスとその他の国に拠点を置く企業群で、成長率は共に5.8%となっている。英国と米国を本拠とする企業の成長率はいずれも上位100社全体の平均を上回った。スイス企業とドイツ企業の前年比ラグジュアリー品売上高は、アジア太平洋市場の弱さ、スイスフラン高の継続、米国の百貨店の不振が原因で、この年次レポートの発行開始から初めて減少が報告されている。中国・香港企業の売上高は3年連続で減少した。

アジア市場は2016年度、上位100社におけるシェアを伸ばし、日本からのランクイン企業は3社、中国・香港およびインドからはそれぞれ2社ずつ増加した。米国企業のElizabeth ArdenとTumiは、それぞれRevlonとSamsoniteに買収されたことを受けて、上位100社から姿を消した。

スペインとフランスが売上高成長率と利益率でトップ、中国の苦境は続く

フランス

フランスのラグジュアリー品売上高の2014~16年度のCAGRは全地域中で最高の10.3%、前年比成長率は2番目に高い5.8%となった。フランス企業全体の2016年度における純利益率も全地域中で最も高く、11.1%と報告されている。これは2015年度とほぼ同水準である。フランスの最大手ラグジュアリー企業であるLVMH、Kering、L'Oréal Luxe、Hermèsの4社は、いずれもラグジュアリー品売上高が50億米ドルを超えている。上位100社に入ったフランス企業全体の売上高のうち90%近くはこの4社によるもので、残りの5社の寄与率は10%をわずかに上回る程度である。そのため、フランスのラグジュアリー企業の平均規模は2位以下を大きく引き離してトップの58億米ドルで、2016年度の上位100社全体のラグジュアリー品売上高に占めるシェアも最大(24.3%)となっている。

Fastest 20にランクインしたフランス企業は、SMCP、Hermès、Kering、L'Oréal Luxeの4社で、いずれも2014~16年度のCAGRは2桁であった。Sandro、Maje、Claudie Pierlotブランドを所有するSMCPは、上位100社中5番目に高い2014~16年度のCAGR(24.3%)を報告している。成長を牽引したのは、全ブランドの全地域市場における成長、Majeのヒット製品である「M」バッグの成功、新店舗の拡大、80%近くの成長を達成し同社の2016年度世界全体売上高の約10%を占めるまでになったeコマースである。SMCPは2016年にShandong Ruyiに買収されたが、現在も独立した企業として運営されている。同社はフランスで2016年度において2桁の売上高成長率を記録した唯一の企業であり、最も目覚ましい成長を2年連続で遂げた。SMCP以外は、アクセシブルラグジュアリー企業のLongchampを除き、どの企業も1桁の成長率を報告している。Longchampは2015年度に13.2%の成長率を達成したにもかかわらず、今年度は売上高を2.3%減らした。Jeanne Lanvinは4年連続で売上高が減少し、上位100社から脱落している。同社のブランドは、2016年3月にAlber Elbazがアーティスティックディレクターを退任して以来、危機的状況にあると見なされている。後任のBouchra Jarrarは2017年7月に解雇された。

39 世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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Hermèsは、フランス企業の中で総じて最も優秀な成績を収めたと言えるだろう。2014~16年度のCAGRは12.4%、純利益率は上位100社中で2番目に高い21.2%となった。同社は2016年度、売上高を日本で20%以上、その他の全地域で5~6%伸ばしている。なかでも同社の「得意分野」である革製品と馬具類は、最も力強い成長を達成した(14.5%)。世界をリードするラグジュアリー企業LVMHの純利益率は、上位100社中10番目に高い11.6%で、前年度からわずかに改善している。

2016年度の純利益を公表したフランス企業4社全体の純利益率は、前年度と同じ11.2%で、上位100社の平均を2.4ポイント上回った。4社全体の総資産利益率(ROA)は6.9%で、上位100社の平均と同水準である。

ドイツ

この分析で対象とする他の地域の企業群と比較すると、ドイツ企業は2番目に規模が小さく、ラグジュアリー品の年平均売上高は8億7,300万米ドルであった。上位100社入りしたドイツ企業は5社で、2015年度よりも1社減となっている。スキー・スポーツウェア専門のBognerは、3年連続で売上高を減らして上位100社から脱落した。ジュエリー企業のWempeを除く全企業がファッション企業である。

ドイツの業績のうち圧倒的に大きな割合を占めるのが、当分析グループで唯一の公開企業であるHugo Bossで、ドイツ企業全体の売上高の3分の2以上を占めた。Hugo Bossは2016年度、4.1%の売上高減を報告している(為替変動の影響を除いた場合は2%減)。米国の百貨店の不調が原因で、同社は「値引きを主な原動力とするブランドイメージに悪影響を及ぼす卸売パートナーとの決別」に至った。また、中国における価格がヨーロッパ・北米・南米の価格により近い水準まで調整された結果、中国における2016年度第4四半期の既存店売上高は20%増加した。同社の業績回復戦略は、上位高級ブランドBOSSと、BOSSよりも約30%低価格のエントリーレベル(若年層向け)ブランドHUGOという、2つの中核ブランドに焦点を絞ったものとなっている。BOSS Orange、BOSS Greenの2ブランドについては、中核ブランドBOSSへの統合が進められている。世界全体での価格統一、卸売流通の再編、ウェブサイトのリニューアルや新たなモバイルアプリによるオンラインへの注力強化も、同社の業績回復戦略の主な柱である。

最も優秀な成績を収めたのは靴下・ストッキング専門企業のFalkeで、2%の売上高成長を遂げた。Marc Cainは前年比で売上高を維持したが、MARC O'POLOは売上高を1.3%減らしている。Wempeの売上高は、中国における売上高の激減と、より全般的な経済の減速が原因で、12.1%急落した。

高級ファッション企業のMarc Cainは当分析グループ中で最も高い純利益率(8.6%)を報告し、Falkeも前年度よりも高い利益率(6%)を報告している。Hugo Bossの2016年度における純利益率は4.2ポイント減の7.2%となった。WempeとMARC O'POLOは2016年度の利益を開示していない。ドイツ企業全体で見ると、売上高成長率は上位100社中で3番目に低いマイナス4.3%となっている。

イタリア

イタリアは今年度も、上位100社にランクインしたラグジュアリー企業の数でトップとなり、24社を輩出している。2016年度のラグジュアリー品売上高成長率は1%で、為替変動に後押しされた前年度から5.7ポイント減となった。イタリア企業全体の業績は、上位3社であるLuxottica、Prada、Giorgio Armaniの実績に大きく左右されている。これら3社は2016年度、上位100社入りしたイタリア企業全体のラグジュアリー品売上高の半分近くを占めた。

同族経営が中心となっているイタリアのラグジュアリー企業は、上位100社の平均よりも規模が小さく、平均売上高は14億米ドルで、上位10社に入ったイタリア企業はLuxottica Groupだけであった。Luxotticaはフランスのレンズ企業Essilorとの間で500億ユーロ規模の合併を予定しているが、本社がミラノに残るか、パリに移動するかはいまだ不明である。Luxotticaのグローバル眼鏡事業の2016年度における成長率は2.8%で、為替変動に後押しされた2015年度から12.7ポイント低下した。為替変動の影響を除いた成長率は3.9%で、前年度からわずか0.4%減に留まっている。Luxotticaは小売分野で6%の成長を遂げた。これは、同社がイタリアの眼鏡小売チェーンSalmoiraghi & Viganòの買収と、その他の小売業者との提携によって店舗数を約1,000件増やし、世界的ネットワークを拡大した結果である。PradaとGiorgio Armaniは前年比売上高を大きく減らした(それぞれ10.3%と5.3%の減少)。Pradaの業績回復計画には、製品ポートフォリオの刷新、小売ネットワークの改革、eコマースとデジタルマーケティングへの投資拡大などが盛り込まれている。Giorgio Armaniは2009年以来初めて売上高が減少したことを受けて、店舗ネットワークを合理化するとともに、7つあったブランドを減らし、中核的な最上級ブランドのGiorgio Armani、中級ブランドであるEmporio Armani、若者をターゲットにしたアクセシブルブランドのA/X Armani Exchangeだけを残す計画を打ち出した。

40世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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イタリアのデザイン力と、その伝統、遺産、品質に対する名声により、「Made in Italy」の刻印は世界中でラグジュアリー品の強力なブランディングツールとなっている。ラグジュアリーブランドとしてのイタリアの名声はファッション界において圧倒的であり、上位100社にランクインするイタリア企業の3分の2以上が衣料・靴カテゴリーに属するという事実がこれを裏付けている。さらに、上位100社のうちバッグ・アクセサリーの商品カテゴリーに属する企業の過半数がイタリア企業であった。この状況を後押ししているのは、同族経営によるブランド価値の手厚い保護である。24社のうち20社は創業者一族が株式の過半数の保有者または経営者であり、一族の名前がブランド名となっていることが多い。

イタリアの小規模な企業は、大規模な企業よりも平均的に業績が良く、2016年度の上位100社の最上位に入った企業も存在する。イタリア企業は今年度も6社がFastest 20にランク入りし、そのうち3社は昨年度に続いての再登場となった。Valentinoの売上高は2013~16年度の3年間で倍以上に増加し、2016年度は11.7%の成長を遂げ、初めて10億ユーロの大台を突破している。デザイナーのPierpaolo Piccioliは、超最高級ブランドであるValentinoのブランド力を守った功労者とされているが、2017年の開発の焦点は、日本、eコマース、デジタル化推進へと移された。Furlaは、Fastest 20にランクインした唯一のバッグ・アクセサリー企業であり、同社の2016年度における売上高成長率は、上位100社全体で4番目に高い24.5%となっている。Furlaのアクセシブルな高級バッグ・アクセサリーは、同社最大の市場である日本のほか、ヨーロッパやトラベルリテール市場でも力強く成長した。

Monclerは、上位100社において全ての基準で好成績を収めたわずか5社のうちの1社であり、売上高成長率(18.2%)と純利益率(18.9%)の両方で2桁を達成した。同社はまた2016年度、ブランド力を原動力としたオーガニックな成長と、単一ブランドのみを扱う小売店ネットワークの継続的な開発により、初めて10億ユーロ以上の売上高を計上している。Finosは上位100社への再ランクインを果たした。

これは、大規模な構造改革(Tru Trussardiラインの廃止を含む)、増資、不採算店舗の合理化の結果、Trussardiブランドが2016年度に36.6%の売上高成長率を達成し、特にロシアにおいて優れた業績を上げたことによるものである。Dolce & GabbanaとBrunello Cucinelliも2016年度売上高は、それぞれ14.3%と10.1%の2桁成長を報告している。

2016年度は9社が1桁の売上高成長を報告したが、同じく9社が売上高を減らした。後者には、世界有数の一流ラグジュアリーファッションブランドであるPrada、Armani、OTB(Diesel)、Zegna、TOD'Sも含まれている。2017年にデロイトがイタリア、米国、英国および中国のミレニアル世代の消費者を対象に実施した調査『ミレニアル世代ラグジュアリー消費者調査:何がミレニアル世代の消費を拡大させるのか(Bling it on: What makes a millennial spend more?)』11によれば、ミレニアル世代のラグジュアリー消費者は、上の世代に比べてブランドに対するロイヤルティがかなり低く、伝統や憧れの対象であるといった特性をそれほど重視しない。彼らが求めるのは、品質と独自性である。ミレニアル世代による消費の特徴は、オンラインの台頭である。これは、売上高はもちろんのこと、情報やアドバイスについても言える。先に挙げた大手ブランドの低迷には、景気や創造性などのさまざまな要因が影響しているが、ラグジュアリー消費者の変化への対応が後手に回っていることも関係しているはずである。

イタリア企業の最終利益はわずかに改善し、純利益率は2015年度の7%から2016年度には7.1%となった。イタリアのラグジュアリー企業のうち、2桁の純利益率を達成したのは、Moncler、Ferragamo、Euroitalia、Liu.Jo、Giorgio Armaniの5社である。純損失を計上したのは7社で、前年度より2社多かった。

イタリア企業の総資産利益率(ROA)は5.8%で、上位100社全体の平均を下回った。

スペイン

スペインは、同族経営のラグジュアリー企業4社が上位100社にランクインしている。この分析で対象とする他の地域の企業群と比較すると、スペイン企業は規模が最も小さく、ラグジュアリー品の年平均売上高は7億4,100万米ドルであった。スペイン企業の2016年度における売上高成長率は全地域中で最も高い6.2%で、上位100社全体の平均を5.2ポイント上回っている。

Puigはスペインのラグジュアリー企業のなかで突出して規模が大きく、このグループ全体の売上高の67%を占めている。2016年度は売上高の8.8%増を計上し、為替変動の影響を除いた売上高は前年比5%の増加となった。成長を後押しした要因は、資生堂が保有していたJean Paul Gaultierの香水におけるライセンスが2015年末に終了したのを受けて、同ブランドを統合したことと、Carolina Herreraが手掛けて大ヒットしたGood Girlなどの新製品を発表したことである。Puigは買収戦略を続行し、2016年にEB Florals(ニッチ香水企業)とGranado(ブラジルにおける高品質自然派化粧品の草分け的メーカー)の株式取得により少数株主に、2017年にはギリシャのブランドAPIVITAの過半数株式の取得により大株主となった。アクセシブルラグジュアリージュエリー企業のTousも2016年度は好調な業績を収め、売上高を11.3%伸ばしたが、ファッション企業のTextil Loniaと時計メーカーFestina Lotusはいずれも売上高を減らし、それぞれマイナス0.5%、マイナス8.8%の成長率となった。

スペイン企業は2016年度、全企業で黒字となっている。最も高い純利益率を報告したのはTextil Loniaで、1.5ポイント増の11.2%だった。Tousも純利益率を8.7%まで改善している。スペイン企業全体の平均利益を下げたFestina Lotusは、辛うじて黒字を出すに留まった。

41 世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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スイス

今回上位100社に入ったスイス企業は、2015年度より1社少ない9社であった。アクセシブルラグジュアリー時計メーカーのFrédérique Constantは、2016年5月に日本のシチズン時計株式会社に買収されたことを受けて、上位100社から離脱している。シチズンはこの買収について、「スイスブランドを買収することによってブランドポートフォリオを補完することを目指すもので、多ブランド戦略」の一環だと述べている。なお、財務情報を一切公表しないスイスの非公開企業7社の売上高については、いずれもプレスインタビュー記事と業界予測から推定したものであることに留意されたい。

スイスのラグジュアリー品売上高においては、Richemont、Swatch、Rolex(推定)の上位3社の規模が圧倒的に大きく、その合計は上位100社にランクインするスイス企業9社の2016年度ラグジュアリー品売上高の87%を占めている。これらの大手ラグジュアリー企業3社は、いずれも50億米ドル以上の売上高を誇るが、今年度は全社とも売上高の減少により順位を1つ下げ、それぞれ3位、7位、12位となった。最も大きく売上高を減らしたのはSwatch Groupで、ラグジュアリー品売上高の10.7%減を計上した。これは同社が事業全体の90%に当たるスイス国外での事業に関わるスイスフラン高と、旅行客数の減少の影響に悩まされたことに起因している。スイス企業全体の2016年度におけるラグジュアリー品売上高成長率は全地域中で2番目に低く、マイナス5.1%となった。

2016年度、スイスでプラス成長を遂げた企業は時計メーカー3社のみに留まっている。高級時計メーカーのRichard Mille(成長率21.6%)とAudemars Piguet(推定成長率6.7%)は、2年連続で急成長企業のトップ2となった。両社は多くの競合企業に比べて、不振のアジア市場から受ける影響が小さく、自社の「オートオルロジュリー(高級機械式時計)」ブランドのポジショニングと権威ある独自性・希少性を非常に重視している。Audemars Piguetは2011年から販売店数を減らし続けることで、接客の質の向上を図っている。Breitlingも、2016年度に売上高が増加したスイスの時計企業であり、1.7%の成長

率を記録している。同社は2017年4月、CVC Capital Partnersに買収され、2017年8月には、Richemontの時計部門のトップを務めていたGeorges Kernが同社を離れ、BreitlingのCEOに就任した(同時にBreitlingの株式の5%を取得)。

デロイトの2017年スイス時計業界調査によると、2016年は低迷に底を打った年であるようだ10。8四半期連続の成長率低下を経て、2017年第2四半期にスイス時計の輸出は増加し、特に中国向けの輸出が力強く回復した。調査に協力した時計業界のエグゼクティブのうち、今後12ヶ月間のスイス時計業界の見通しは明るいと答えた人の割合は、2016年にはわずか2%だったのに対し、2017年は52%となっている。2017年度初期の業績は、この自信が正当なものであることを裏打ちしている。Richemontはラグジュアリー品売上高を6.7%伸ばしており、Swatch Groupの時計宝飾ブランド部門(製造部門を除く)は6.9%の成長を遂げた上に、そのペースを年内にさらに加速させ、2017年下半期には12.2%の成長率を記録している。

イタリアがファッションのグローバルリーダーであるように、スイスは高級時計生産で他に並ぶ国がなく、時計産業はスイス最大の輸出セクターの1つである。上位100社に入ったスイス企業9社のうち8社は時計メーカーであり、そのブランド力は、店舗網とオンライン上でのプレゼンスが拡大を続けていることだけでなく、世界中のジュエリー店や高級時計販売店で存在感を発揮していることからもうかがえる。複合ラグジュアリー企業のRichemontも、売上高の30%近くをPiagetなど高級時計ブランドのポートフォリオから得ている。スイス高級時計メーカーが持つブランドの伝統、技術とデザインの卓越性によって引き上げられた参入障壁は、非常に克服しがたいものであることが証明されている。これが、LVMHとKeringがそれぞれのポートフォリオにスイスの有名時計ブランドをM&Aによって加えたことに繋がっている。

当グループで純利益率と資産を公表しているのは、公開企業のRichemontとSwatchの2社のみであった。この2社の純利益率の平均は、7.3ポイント減の10%となったが、全地域中で2番目に高い水準を維持している。Richemontの純利益は、主に不測の事態が多数起こったことが原因で、2015年度から46%減少している。不測の事態と

は、2015年度にNET-A-PORTER GROUPとYOOX Groupの合併によって6億3,900万ユーロの非現金収入を得たことや、2016年度に持続可能な需要レベルに対応するために固定費と製造体制見直しの費用が発生したこと、主に為替ヘッジが原因で正味の財務費用が前年度とは逆に財務収入を上回ったことである。にもかかわらず、Richemontの純利益率は2016年度の上位100社中11番目に高い11.4%となった。

英国

英国に本拠を置くラグジュアリー企業は2016年度、昨年度と同じ顔触れの10社が上位100社にランクインした。平均売上高は1社当たり11億2,600万米ドルで、上位100社全体の平均を大きく下回っている。当グループ内ではMichael KorsとBurberryの売上規模が圧倒的であり、英国企業の売上総額の70%以上を占めている。その他の英国企業8社が2016年度に計上したラグジュアリー品売上高は、7億米ドルを下回っている。

英国企業全体のラグジュアリー品売上高平均成長率は、0.8ポイント増の3.2%となった。この成長の一因はBrexitの影響による英国ポンド安であり、5社が2桁成長を報告している。BurberryとBarbourは、2016年度上位100社において特に好成績企業とされる5社のうちの2社であり、前年比ラグジュアリー品売上高成長率(それぞれ10%、19.5%)と純利益率の両方で2桁を達成した。Ted BakerとKurt Geigerは、3年連続で2桁のラグジュアリー品売上高成長率を報告している。Ted Bakerは、Fastest 20にランク入りした唯一の英国企業であり、2014~16年度のCAGRは17.1%となっている。同社のeコマースでのラグジュアリー品売上高は35.1%急増し、ラグジュアリー品売上高全体の14%近くを占めるまでになった。Jimmy Chooは、主に小売事業とアジアにおける好調な業績が成長を牽引し、ラグジュアリー品売上高を14.5%伸ばした。為替変動の影響を除いたラグジュアリー品売上高成長率は、Ted Bakerが10.8%、Jimmy Chooが1.6%であるのに対し、Burberryはマイナス2%となった。

42世界のラグジュアリー企業ランキング2018

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2016年度は3社がラグジュアリー品売上高の減少を報告している。Michael KorsとGraff Diamondsはいずれも英国に本社を置いているが、米ドルで財務報告を行っているため、その業績には英国ポンド安の悪影響が及んでいる。Michael Korsのラグジュアリー品売上高は全体で4.6%減少しており、小売事業では7.4%増加したものの、卸売事業では17.2%落ち込んだ。この業績変化は、同社が出荷量の戦略的制限とプロモーション活動の縮小を行い、ブランドの長期的なポジショニング構築にシフトし始めたことに起因する。Michael Korsは2016年、中国、香港、マカオ、台湾、韓国における同社のライセンシーを買収することにより、当該地域で予定している成長戦略を直接管理できるようにした。また2017年11月には、JAB LuxuryからJimmy Chooを13億5,000万ポンドで買収している。Graff DiamondsとPaul Smithはいずれも2年連続で売上高を減らした。

英国企業は2016年度、上位100社中で2番目に高い純利益率(9.8%)を記録している。全社とも黒字を達成し、Michael KorsとBurberryが全体の純利益の84%近くを占め、これらの大手企業に加え、Barbourも2桁の純利益率を達成した。BarbourとMichael Korsの純利益率は、上位100社中8位と9位に付けている。英国企業全体の総資産利益率(ROA)は、全地域中で最高の11.8%となった。

米国

2016年度は上位100社に13社の米国企業が入り、そのうちEstée Lauder、Ralph Lauren、PVH Corp.の3社は、上位10社にもランクインした。米国企業は上位100社の平均より規模が大きく、ラグジュアリー品の平均売上高は33億5,100万米ドルで、上位100社のラグジュアリー品売上高総額に占める割合(20.1%)は全地域中で第2位となっている。

合併・買収活動は2016年度と2017年度、米国のラグジュアリー企業に多大な影響を及ぼした。米国企業2社が上位100社から姿を消したのは、Tumiが2016年8月に18億米ドルでSamsoniteに、Elizabeth Ardenが2016年9月に8億7,000万米ドルでRevlonに買収された結果を反映している。Cotyは、2016年10月にProcter & Gambleからの高級美容事業の買収を125億米ドルで完了したことを受けて、ラグジュアリー部門を設立した。2017年、Coachは7月にKate Spadeを24億米ドルで買収し、所有するラグジュアリーブランドのポートフォリオが拡大し続けていることから、社名をTapestryに変更した。

米国全体の2016年度におけるラグジュアリー品売上高成長率は1.7%で、為替の影響でマイナスとなった前年度から2ポイント上昇した。上位100社に入った米国企業では、成長率において明暗が分かれており、プラスの企業とマイナスの企業がちょうど6社ずつ存在する。

成長企業の先頭を行くのは、当然ながらCoty Luxuryである。同社はProcter & Gambleの高級美容部門を買収した結果、上位100社中で最も急成長を遂げた。売上高は40%増加し、そのうち33%前後は買収に関連した成長分となっている。同社は米国に本社を置く企業として唯一Fastest 20にランクインし、15.1%の2014~16年度のCAGRを記録して14位を獲得している。Kate Spadeは好成績企業群に入った唯一の米国企業であり、売上高成長率(11.4%)と純利益率(11.1%)の両方で2桁を記録した。

Kate Spadeの成長を後押しした主な要因は、kate spade new yorkのeコマースでの力強い成長の中で、北米、ヨーロッパおよび日本における売上高が増加したことである。Inter Parfumsも2桁のラグジュアリー品売上高成長率(11.2%増)を達成した。この成長を牽引したのは同社最大のブランドMontblanc(Richemontからライセンスを受けている)であり、ラグジュアリー品売上高を25%伸ばしている。

米国の上位3社であるEstée Lauder、Ralph Lauren、PVH Corp.は、米国企業全体の2016年度におけるラグジュアリー品売上高総額の58%を占めている。Estée LauderとPVHはいずれも成長率を上昇させ、それぞれ5%と5.6%となった。Estée Lauderは、ミレニアル世代の消費者をターゲットとする3つの高級美容ブランドに投資し、2016年にToo FacedとBECCA Cosmeticsを買収するとともに、2017年にはDECIEMの株式を取得し少数株主となっている。同社はeコマースにおける躍進を続け、オンライン売上高は3割の増加を達成し(為替変動の影響を除く)、純売上高全体の11%を占めた。トラベルリテールも好調で、売上高は22%増加している。PVHが擁するCalvin KleinとTommy Hilfigerの両ブランドは、ヨーロッパと中国において国際的に力強い成長を遂げた。Calvin Kleinは地元市場でも卸売事業における成長を達成したが、Tommy Hilfigerの北米における売上高は低下した。後者は、旅行客の支出が低迷していることと、北米事業のライセンスをG-IIIに供与した結果、同社直営の婦人衣料卸売事業が打ち切られたことが一因となっている。

Ralph Laurenは2016年度、2年連続で売上高を減らした。売上高が10.2%減少し、収益性も低下したことから(純利益率マイナス1.5%)、同社は最もパフォーマンスが低い米国企業となった。低迷する米国の百貨店は、ラグジュアリーブランドを大幅に値引きして販売することで、買い物客の獲得を図っている。多くのラグジュアリー企業はブランドの高級なイメージに傷が付くことを避けるために、卸売販売を縮小し、プロモーション目的の値引きを制限しようとしている。Ralph LaurenとCoachの両社は、取引のあった北米の百貨店の4分の1近くから撤退した。Ralph Laurenはまた、事業再編計画「Way Forward Plan」の一環として出荷量を戦略的に削減させており、その結果として、実店舗とeコマースの両方において売上高の低下が見られた。Coach、Tiffany、Fossil、Movado、True Religionは2016年度、厳しい米国小売市場の影響を受けて、いずれも1桁の売上高減を報告している。True Religionは2017年7月、連邦破産法第11条の適用を申請したが、わずか3ヶ月後に破産保護の状態から脱した。

43 世界のラグジュアリー企業ランキング2018

Page 44: 世界のラグジュアリー企業ランキング2018 ラグ …...などの商業空間設計に関する提携契約を結んでいる。一方、Louis Vuittonは、メキシコ人建築家の故Luis

2016年度の純利益を公表した米国上場企業9社の利益率は、厳しい環境のなかで踏み止まっている状況である。全体の純利益率は昨年度から変わらず7.5%で、上位100社全体の平均である8.8%をわずか1.3ポイント下回るに留まっている。Ralph Laurenを除く全企業が今年度も黒字で、Coach、Tiffany、Kate Spade、Estée Lauderの純利益率はいずれも2桁となった。Coachの純利益率(13.2%)は上位100社中第7位となっている。

米国のラグジュアリー企業の総資産利益率(ROA)は、上位100社全体の実績をかろうじて上回り、2016年度の6.9%に対して今年度は7%となった。

本レポートは、米国企業のなかにMichael Kors Holdingsを含めていないが、これは同社の本社がロンドンに所在するためである。ただし、Michael Korsは2016年度売上高の70%を北米で上げている。

その他

先述した主要8か国以外の国を本拠とする企業は、上位100社のうち17社で、2015年度から5社の増加となった。当分析グループで最も売上高が大きい企業は日本の化粧品・香水メーカーである資生堂で、同社は2016年度に上位100社に返り咲いた。資生堂は昨年度のレポートでは対象外となっており、これは、事業セグメントの再編成により、ラグジュアリー品売上高の推計が困難となったためであった。資生堂の2016年度におけるラグジュアリー売上高として計上されているのは、同社のプレステージブランド・フレグランス事業の売上高である。

上位100社に新たにランクインした企業の大半は、主要8か国以外の国を本拠とする企業である。これは、ラグジュアリー企業に関する取得可能な業績情報の質が、特にアジア市場において向上したことに起因している。これらの企業から新たに上位100社入りしたのは、日本のアクセシブルラグジュアリーファッション企業であるオンワードホールディングスと三陽商会、同じく日本企業であるポーラ・オルビスの高級美容事業、インドのラグジュアリージュエリー企業であるKalyan、JoyalukkasおよびTBZ、そして上位100社中で最も急成長中の企業Canada Gooseである。

10億米ドル以上のラグジュアリー品売上高を計上した企業は10社で、ジュエリー企業のPandora、Swarovski、Kalyan、Titan、PC JewellerおよびJoyalukkas、化粧品・香水企業の資生堂、L'Occitane Internationalおよびポーラ・オルビス、ファッション企業のオンワードホールディングス(Jil Sander、Joseph、23区などのプレミアムブランドを所有)である。

主要8か国以外の国を本拠とする企業の全体の内訳は、日本およびインドの企業がそれぞれ5社、オーストリア、ブラジル、カナダ、デンマーク、ルクセンブルク、韓国およびスウェーデンの企業が1社ずつとなっている。

この17社には、業績が極めて好調な企業も含まれており、当グループ全体で見ると、ラグジュアリー品の前年比売上高成長率(5.8%)に関してはフランスと同率で2位に並んでいる。17社中12社はラグジュア

リー品売上高を伸ばし、2桁成長を報告している6社のうち5社はFastest 20にもランクインした。2014~16年度のCAGRについては、Canada Gooseが最も高く36%で、Pandoraは2番目に高い30.3%となっている。スウェーデンのAcne Studiosとインドのジュエリー企業であるPC Jeweller、JoyalukkasおよびTitanは2016年度、いずれも15%以上の前年比成長率を報告している。インドの高級ジュエリー市場は、歴史的に細分化とコモディティ化がかなり進んでいるが、この非常に大きな市場においても国際市場と同様に、ラグジュアリーブランドを有し、組織立った垂直統合型のビジネスを展開するジュエリーチェーンが多数、急成長を続けている。

デンマークのアクセシブルラグジュアリージュエリー企業のPandoraは、4年連続で目覚ましい業績を上げている。ブランド店舗ネットワークの開発、地理的拡大、そして中核的カテゴリーであるチャームおよびブレスレットからの製品多角化が業績を後押ししたことで、同社のラグジュアリー品売上高は2016年度に21.2%の成長を遂げた。また、eストアのプレゼンスが17カ国で高まっていることを受けて、同社のeコマースの売上高は65%増加している。Pandoraは上位100社で最も高い純利益率(29.7%)を叩き出しており、あらゆるラグジュアリー企業の中で総じて最も優れたパフォーマンスを上げたと言っていいだろう。

その他の企業は一部を除いていずれも1桁の売上高成長率を報告しているが、ブラジルのRestoque、日本の三陽商会およびオンワードホールディングス、インドのKalyan Jewellersは売上高を減少させている。三陽商会は、長年所有していたBurberryの日本におけるライセンスを2015年半ばに失って以来、事業再建に苦戦している。2016年度の売上高は急落し、30.6%減となった。純損失を計上した企業は、Restoqueと三陽商会のみである。

総合的に見ると、多種多様な企業が存在する当グループ全体の純利益率は、上位100社全体の平均をわずかに上回る9.1%であった。純利益を報告している14社のうち、Pandoraと美容企業L'Occitaneの2社は2桁の利益率を達成した。それ以外では10社が1桁の純利益率を報告している。

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新ランクイン企業

2016年度、上位100社に新たにランクインしたのは12社となっており、そのうち5社がジュエリー・時計企業、4社が衣料・靴企業、3社が化粧品・香水企業である。

また再ランクインは3社で、過去に世界のラグジュアリー企業ランキング上位100社にランクインしていた企業である。美容企業の資生堂とLaboratoire Nuxeは、ラグジュアリー品売上高の業績情報が入手できずランキングから除外された昨年度を経て、再登場した。イタリアのファッション企業Finosは力強く成長し、97位で再ランクインしている。

それ以外の新ランクイン企業9社のうち、特に中国・香港、インドおよび日本の企業については、業績情報の可用性や参照可能な範囲の改善の結果として、上位100社入りを果たした。84位を獲得したCanada Gooseは、上位100社で最も急速な成長を遂げている企業(2014~16年度のCAGR)である。同社の高級アウターブランドは、世界37ヶ国で販売されている。2017年の新規株式公開と2回目の公募増資以来、プライベートエクイティ会社のBain Capitalが同社の議決権株式の過半数を握り続けている。

インドと中国は世界最大の高級ジュエリー市場である。インドは、自国をグローバルジュエリー市場の加工拠点と自負し、世界の研磨済みダイヤモンド全体の4分の3前後を輸出している。インド国内のジュエリー市場は、歴史的に細分化がかなり進んでいるが、この大きな市場では、ラグジュアリーブランドを有し、組織立った垂直統合型のビジネスを展開するジュエリーチェーンが多数、急成長を続けている。同族経営のジュエリー企業であるKalyan Jewellers、Joyalukkus、Tribhovandas Bhimji Zaveri(tbz)の3社は、いずれも上位100社入りとなる業績を達成した。これら3社と並んで、中国・香港のジュエリー企業Tse Sui Luen(TSL)とChow Tai Sengも上位100社にランクインした。

2016年度 ラグジュアリー品 売上高順位 企業名 本社所在国 商品カテゴリー

2016年度の ラグジュアリー品

売上高 (100万米ドル)

2016年度の ラグジュアリー品 売上高成長率

17 Shiseido Prestige & Fragrance 日本 化粧品・香水 3,736 e 8.7% e

29 Onward Holdings Co., Ltd. 日本 衣料・靴 1,842 -1.5%

37 Kalyan Jewellers India Pvt. Limited インド ジュエリー・時計 1,464 -7.0%

41 Pola Orbis Holdings Inc. 日本 化粧品・香水 1,348 1.7%

49 Joyalukkas India Pvt. Limited インド ジュエリー・時計 1,001 e 16.2% e

56 Sanyo Shokai Ltd. 日本 衣料・靴 622 -30.6%

71 Tse Sui Luen Jewellery (International) Limited 香港 ジュエリー・時計 440 -3.6%

72 Chow Tai Seng Jewellery Co., Ltd. 中国 ジュエリー・時計 437 6.3%

83 Canada Goose Holdings Inc. カナダ 衣料・靴 307 38.8%

89 Tribhovandas Bhimji Zaveri Limited インド ジュエリー・時計 254 3.2%

94 Laboratoire Nuxe SA フランス 化粧品・香水 231 e 5.6% e

97 Finos SpA イタリア 衣料・靴 225 36.6%

残りの新ランクイン企業3社は、日本を本拠としている。オンワードホールディングスと三陽商会は、いずれも高級ファッション企業である。オンワードは、日本のブランドである23区、海外ブランドのJoseph、Jil Sanderなどを擁する。三陽商会は、Burberryの日本におけるライセンスを2015年まで保有していた。ポーラ・オルビスホールディングスの高級ブランドは、主に日本市場で販売されている。同社の旗艦ブランドであるポーラは、消費者への直販型の流通モデルを、伝統的な訪問販売から、実店舗のポーラ ザ ビューティーやエステインを通じた販売へと徐々に移行させつつある。

太字の企業は、売上高の成長(米ドル)または新会社の設立によって新たにランクインしたか、過去のレポートで上位100社にランクインしたことがある企業。その他の企業はデータの改善によって上位100社に入った企業。

e = 推定値出所:各企業が公表したデータと業界予測。

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調査の方法論とデータソース

世界のラグジュアリー企業ランキング上位100社の対象となる企業は、第一に、本レポートで対象とするラグジュアリー品のカテゴリーの定義に従って、ラグジュアリー企業とみなされる企業を選定している。

上位100社ランキングの対象企業は、伝統的な超高級品から、スーパープレミアムやアスピレーショナルラグジュアリー、さらにはアクセシブルラグジュアリーといった、中所得層向けの普及価格帯でありながら高級店で販売されている比較的新しいラグジュアリー商品カテゴリーまでを含み、それらのカテゴリーにおいて、強力な消費者向けブランドを持つ企業となっている。こうしたラグジュアリー業界における各企業のポジショニング(位置付け)は、以下のような要因に左右される。

• 価格プレミアム

• 原材料の品質や希少性

• 職人技の質

• 商品の権威ある独自性・希少性

• サービスとパーソナライゼーション

• 販売場所の質と独自性

各社について、デザイナー衣料(既製品)、ハンドバッグ・アクセサリー、高級ジュエリー・時計、化粧品・香水という4つの大きなカテゴリーにおけるラグジュアリー品から売上高の半分以上(50%以上)を獲得しているかによってラグジュアリー企業か否かを判断している。

本レポートにおけるラグジュアリー品とは、個人向けのラグジュアリー品であり、デザイナー衣料・靴(既製品)、高級バッグ・アクセサリー(眼鏡類を含む)、高級ジュエリー・時計、プレミアム化粧品・香水を総称したものである。本レポートの対象に含まれないラグジュアリー品のカテゴリーは、自動車、旅行・レジャーサービス、ボート・ヨット、美術品・蒐集品、高級ワイン・蒸留酒である。ラグジュアリーブランドの再販業者についても対象外としている。

またこれらのカテゴリーは、最終消費者向けに生産され、有名ラグジュアリーブランドとして一般に販売される商品と定義される。ランキング対象企業には、単一の大きなラグジュアリーセグメントの売上高を報告している企業(例:L'Oréal Luxe)も含まれる。ただし、財務情報を開示していない企業も存在しており、当該企業はランキングの対象外としている。

ラグジュアリー品の販売を本業とする企業について、2016年度(2017年6月30日までの12ヶ月以内に終了する会計年度と定義)のラグジュアリー品の連結売上高に基づき、上位100社のランキングを作成している。

上位100社ランキングの作成には、複数のデータソースを使用した。財務その他の企業情報の主な情報源は、アニュアルレポートやSEC提出書類のほか、プレスリリースおよびファクトシートまたは企業ウェブサイトに掲載された情報などである。また企業発の情報を入手できない場合は、業界誌の予測情報、業界アナリストのレポート、各種ビジネス情報データベース、プレスインタビューなど、その他の公開された情報源を使用した。どのデータソースからも十分なデータが得られず、ラグジュアリー品売上高を合理的に推定できない場合は、ランキング対象外としている(例年複数社が該当)。

ランキングの共通基準を設定するために、米国以外の企業の純売上高を米ドルに換算しているため、ランキングは為替変動の影響を受ける。為替の情報源としては、OANDA.comを利用している。各企業の会計年度に該当する1年間の為替相場の平均値を使用し、各社の業績を米ドルに換算している。ただし、個々の企業の2016年度の前年比成長率と2014~16年度の年平均成長率(CAGR)は、各社の現地通貨で算出されている。

地域別動向と商品カテゴリー別動向では、上位100社ランキングに掲載された企業に関連するデータのみ使用している。これらは市場において大きな割合を占めるが、100%とはなっていない。

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分析グループごとの財務業績

本レポートでは、分析グループごとの財務業績を理解するための主な尺度として、単純な算術平均ではなく売上高加重平均を使用している。したがって、大企業の業績がグループ全体の平均値に大きく影響を与えている。順位付けのためにデータを米ドルに換算していることから、また、グループ間での比較を行いやすくする目的で、CAGRについても、為替変動の影響を補正するために調整している。このようにして得られる平均値は、算術平均とおおむね同様の振る舞いを示すが、ベンチマーキングに使用する代表値としては、算術平均よりも適切である。

分析グループごとの財務業績は、データが存在する企業のみに基づいているが、全ての企業について全てのデータ(要素)が入手できるわけではない。

また、当該年度における各企業の財務情報として使用されているのは、その年度の財務報告書が当初発行された日付時点で正確な情報である点にも注意されたい。事業の変更に伴って、または会計方針の変更の結果として前年度の業績が修正される場合があるが、本調査では業績の修正は考慮していない。

本レポートは、会計報告書ではない。一定期間の市場ダイナミクスとラグジュアリー業界への影響を反映することを目的としている。以上のような要因の結果、掲載されている個々の企業の成長率は、他の公表されている業績と一致しない場合がある。

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ラグジュアリー企業上位100社のアルファベット順リストAcne Studios Holding AB 100Aeffe SpA 81Audemars Piguet & Cie 51Breitling SA 73Brunello Cucinelli SpA 63Burberry Group plc 18Canada Goose Holdings Inc. 83Charles Tyrwhitt Shirts Limited 88Chow Sang Sang Holdings International Limited 30Chow Tai Fook Jewellery Group Limited 10Chow Tai Seng Jewellery Co., Ltd. 72Christian Dior Couture SA 26Clarins SA 32Coach, Inc. (now Tapestry, Inc.) 15Cole Haan LLC 58Compagnie Financière Richemont SA 3Coty Luxury 25De Rigo SpA 69Dolce & Gabbana 36Eastern Gold Jade Co., Ltd 50Ermenegildo Zegna Holditalia SpA 44Euroitalia S.r.l. 82Falke KGaA 99Fashion Box SpA 92Festina Lotus SA 90Finos SpA 97Fossil Group, Inc. 22Franck Muller Group 86Furla SpA 68Gefin SpA 79Gerhard D. Wempe KG 62Gianni Versace SpA 54Giorgio Armani SpA 24

Graff Diamonds International Limited 59Hermès International SCA 11Hugo Boss AG 21Inter Parfums, Inc. 61J Barbour & Sons Ltd 93Jimmy Choo plc 66Joyalukkas India Pvt. Limited 49K.Mikimoto & Co., Ltd. 91Kalyan Jewellers India Pvt. Limited 37Kate Spade & Company 40Kering SA 5Kurt Geiger Limited 74Laboratoire Nuxe SA 94Lao Feng Xiang Co., Ltd. 13Le Petit-Fils de L.-U. Chopard & Cie SA 53Liu.Jo SpA 78L'Occitane International SA 38Longchamp SAS 57L'Oréal Luxe 6Luk Fook Holdings (International) Limited 35Luxottica Group SpA 4LVMH Moët Hennessy-Louis Vuitton SE 1"Marc Cain Holding GmbH 84"MARC O’POLO AG 70Marcolin Group 67Max Mara Fashion Group Srl 33Michael Kors Holdings Limited 14Moncler SpA 46Movado Group, Inc. 60Mulberry Group plc 98Onward Holdings Co., Ltd. 29OTB SpA 31Pandora A/S 20

Patek Philippe SA 45Paul Smith Group Holdings Limited 87PC Jeweller Ltd. 43Pola Orbis Holdings Inc. 41Prada Group 19Puig S.L. 27PVH Corp. 9Ralph Lauren Corporation 8Restoque Comércio e Confecções de Roupas S.A. 80Richard Mille SA 96Rolex SA 12S Tous SL 76Safilo Group SpA 39Salvatore Ferragamo SpA 34Sanyo Shokai Ltd. 56Shiseido Prestige & Fragrance 17SMCP SAS 52Sociedad Textil Lonia SA 77Sungjoo D&D Inc 65Swarovski Crystal Business 23Ted Baker plc 55The Estée Lauder Companies Inc. 2The Swatch Group Ltd. 7Tiffany & Co. 16Titan Company Limited 28TOD'S SpA 47Tory Burch LLC 48Tribhovandas Bhimji Zaveri Limited 89Trinity Limited 95True Religion Apparel, Inc. 75Tse Sui Luen Jewellery (International) Limited 71TWINSET—Simona Barbieri SpA 85Valentino SpA 42Zhejiang Ming Jewelry Co., Ltd. 64

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注記

1. Keringの2017年度決算プレゼンテーション、2018年2月13日。 http://www.kering.com/sites/default/files/document/kering_va_presentationfy17_fev18.pdf

2. 「デジタルファッションブランド・トップ10」、2017年11月2日。 https://www.l2inc.com/daily-insights/top-10-brands-in-fashion

3. 「Gucci、世界中の店舗をインタラクティブなアートギャラリーに」、2018年3月1日。 https://cpp-luxury.com/gucci-transforms-its-international-stores-into-interactive-art-galleries/

4. 「Farfetch、Store of the Futureを発表」、2017年4月12日。 http://www.vogue.co.uk/article/farfetch-announces-store-of-the-future

5. 「ValentinoとYOOX NET-A-PORTER GROUP(YNAP)、ラグジュアリー小売の次なる時代の画期的な青写真作りに向けて提携」、2017年4月7日。 http://www.ynap.com/news/valentino-and-yoox-net-a-porter-group-join-forces-to-create-an-innovative-blueprint-for-the-next-era-of-luxury-retail/

6. YNAP「ロードショー用プレゼンテーション」、2017年11月。 http://www.ynap.com/document/september-2017-roadshow-presentation/

7. デロイトの価格分析ツールBenchMarqueから抽出したデータ。BenchMarqueは10万品目以上のラグジュアリー品の価格を毎週追跡することで、意思決定者がエビデンスに基づく敏感な価格戦略を展開できるようにしている。

8. デロイトの価格分析ツールBenchMarqueから抽出したデータ。

9. 「Richard Milleの売上高、特別限定版への集中により15%増」、2016年8月17日。 http://www.watchpro.com/richard-mille-sales-rise-15-thanks-to-focus-on-limited-edition-exclusives/

10. デロイトの2017年スイス時計業界調査『全てはデジタル次第(It's all about digital)』

11. デロイト『ミレニアル世代ラグジュアリー消費者調査:何がミレニアル世代の消費を拡大させるのか(Bling it on: What makes a millennial spend more?)』、2017年。

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松尾 淳パートナー[email protected]

渡邉 知志パートナー[email protected]

鬼頭 孝幸パートナー[email protected]

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編集担当:玉置 恭子シニアアソシエイト[email protected]

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デロイト トーマツ グループは日本におけるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(英国の法令に基づく保証有限責任会社)のメンバーファームであるデロイト トーマツ合同会社およびそのグループ法人(有限責任監査法人トーマツ、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社、デロイト トーマツ税理士法人、DT弁護士法人およびデロイト トーマツ コーポレート ソリューション合同会社を含む)の総称です。デロイト トーマツ グループは日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり、各法人がそれぞれの適用法令に従い、監査・保証業務、リスクアドバイザリー、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務、法務等を提供しています。また、国内約40都市に約11,000名の専門家を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細はデロイト トーマツ グループWebサイト( www.deloitte.com/jp )をご覧ください。

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