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熊本地震における 下水道 BCP の有効性と課題に関する調査 熊本県編 調査報告書 【概要版】 平成 28 10 公益財団法人 日本下水道新技術機構

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熊本地震における

下水道 BCP の有効性と課題に関する調査

- 熊本県編 -

調査報告書

【概要版】

平成 28 年 10 月

公益財団法人 日本下水道新技術機構

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【目次】

【概要版】

1 調査の背景と目的 ................................................. 1

2 調査の概要 ....................................................... 1

2.1 アンケート調査の概要 ........................................ 1

2.2 ヒアリング調査の概要 ........................................ 2

3 調査結果のまとめ ................................................. 3

3.1 アンケート調査結果① ........................................ 3

3.2 アンケート調査結果② ....................................... 14

3.3 ヒアリング調査結果 ......................................... 24

※)本概要版は、調査報告書より抜粋したものです。

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1 調査の背景と目的

下水道事業においては、平成 16 年中越地震、平成 19 年中越沖地震が大きな

きっかけとなり、「職員や事業所が被災するかもしれない」という制約条件の想

定の下で、下水道の機能の維持や早期回復を図っていくための取組みを検討し、

備えるため、国土交通省において平成 21 年 11 月に「下水道 BCP 策定マニュア

ル(地震編)~第 1 版~」が出された。また、東日本大震災の経験と教訓を共有

し、津波災害時にも下水道機能をいかに回復し、地域の衛生環境を保持するかと

いう視点から加筆改訂が行われ、平成 24 年 3 月に「下水道 BCP 策定マニュアル

~第 2 版~(地震・津波編)」(以下、「マニュアル」という)が出された。こ

のマニュアルに基づき、各自治体が下水道 BCP の策定に取り組んでいるところ

である。

こうした中、平成 28 年度末までに下水道 BCP 策定率 100%を目標とすること

が平成 24 年に閣議決定され、「下水道 BCP 策定による地震・津波対策の強化に

ついて(平成 26 年 3 月 31 日付事務連絡)」において、すべての自治体におい

て、1 年以内に簡易な下水道 BCP を含むすべての下水道 BCP を策定し、2 年以

内には必要な項目を網羅した下水道 BCP を策定することが掲げられた。しかし

ながら、平成 28 年 3 月末現在の策定率は約 92%であり、すべての項目を網羅し

た下水道 BCP は約 36%の自治体しか策定されていない。また、熊本県における

下水道 BCP 策定率は 100%となっているものの、すべての項目を網羅した下水

道 BCP は約 16%の自治体しか策定されていない現状である。(注:下水道 BCP

の策定率は H28 国土交通省調べ)

日本下水道新技術機構(以下、「機構」という)は、全国の自治体のより実効

性の高い下水道 BCP 策定に資するため、熊本県内自治体に対して、今回の熊本

地震における、下水道 BCP に基づいた非常時行動の状況や、下水道 BCP が役に

立った点・見直しが必要な点、下水道 BCP を策定する上での他自治体へのアド

バイスなどについて、アンケート及びヒアリング調査を行った。

2 調査の概要

2.1 アンケート調査の概要

熊本県内の下水道を保有する自治体を対象として、震災時の下水道 BCP の有

効性と課題に関する紙面アンケート調査を実施した。

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アンケート調査概要

項 目 内 容

アンケート対象 熊本県内 31 自治体

アンケート回答期間 平成 28年 7 月 8日~7月 27 日

回答率 97% (31 自治体中 30自治体)

主なアンケート項目を以下に示す。 アンケート①:概略的な質問事項

◇下水道施設の被害状況・発生したトラブル ◇下水道 BCP に基づいた非常時行動の状況

◇策定した下水道 BCP において、役に立った点・見直しが必要な点 ◇下水道 BCP を策定する上での自治体へのアドバイス

アンケート②:より詳細・具体的な質問事項

◇ライフラインの被災状況や防災拠点等のより具体的な情報 ◇非常時対応計画等のより具体的な情報

注)一部の自治体で未回答の質問もあるため、本報告書では、質問毎にその内容に合

致した回答のみを有効回答として整理した。

2.2 ヒアリング調査の概要

比較的下水道施設の被害が大きい自治体を対象として、機構の調査員による

現地訪問ヒアリングを実施した。 訪問先自治体については、国土交通省が公表する災害情報等から、震度及び下

水道施設の被害状況が大きい自治体から任意に抽出した。

ヒアリング調査概要

項 目 内 容

ヒアリング対象 熊本県内 12 自治体

(下水道施設に被害を受けた自治体より抽出)

調査期間 平成 28年 8 月 2日~8月 5 日、4 日間

調査内容

①アンケート調査結果の追加確認

②ヒアリングシートの内容確認

③下水道 BCP の詳細内容の確認

④現地状況の確認 等

調査内容のまとめ方 ①アンケート調査結果へ追記

②ヒアリング結果のまとめ

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3 調査結果のまとめ

3.1 アンケート調査結果①

※ 本文中に特記のない限り“施設”とは下水処理場等の処理施設を示す。ま

た、“管きょ”には、マンホールポンプを含む。

1) 下水道 BCP に基づいた行動について

下水道 BCP に基づいた行動実施について回答があった自治体(30 自治体)

の内、18 自治体(60%)

で実施されていた。ただ

し、対象地震動以下(震

度 4)により“該当しな

い”と回答した自治体が

3自治体(他 1自治体は

震度 5 強であったが“該

当しない”と回答。)あっ

た。

下水道 BCP に基づいた行動が実施できなかった主な原因としては、以下の

点が挙げられた。

下水道 BCP 関連資料を確認できなかった。

下水道よりも上水道を優先した。

住民対応や現地調査を総動員で実施したため、統率が取れた対応ができな

かった。

地域防災計画等の上位計画により職員が避難所等に配置され、下水道 BCP

に基づいた行動ができなかった。

組織の現状に沿った許容中断時間等の設定に加えて、特に地域防災計画と

の整合及び調整が重要である。

注)下水道 BCP に基づいた行動が、その計画どおりの行動であったかを確認

した【3.2.1 項:1) 下水道 BCP どおりの行動達成状況について】と同種

の質問である。しかし、趣旨が十分に伝わらず、一部異なる回答事例が見

受けられたが、そのまま集計している。

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2) 県及び関連部署への連絡について

県及び関連部署への連絡については、職員参集後、2時間以内に実施してい

る自治体が約半数であるが、それ以上、もしくは不明と回答している自治体も

半数程度となっている。

県への連絡は、緊急パトロ

ール後に実施している自治体

が多く、関連部署への連絡は

参集後直ぐに実施している自

治体が多くみられた。関連部

署への連絡体制や県への報告

体制に加えて、必要な連絡情

報等を職員に十分に周知して

おく必要があると考えられ

る。

3) 関連する業者(維持管理業者等)への連絡について

管きょについては、80%以

上の自治体が職員参集後、“1

時間以内に連絡”、もしくは

“緊急点検の結果で被害がな

かったため連絡をしていな

い”という状況であった。

施設については、維持管

理業者が処理場に常駐し

ているケースが多く、1 時

間以内に維持管理業者等

に連絡している状況であ

った。

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4) 地域住民からの通報や住民への連絡(情報周知等)について

排水設備の破損による流下不良についての対応は下水道部署の管轄とは異

なると考えられるが、本管の破損の可能性もあるため、職員の確認を必要とす

る場合も考えられる。しかし、下水道部署職員で対応可能な人員も限られるこ

とから、事前に対応する部署や内容等について、自治体内部の調整も必要があ

ると考えられる。

項目 地域住民からの内容

管きょ

(排水機能)

排水設備や取付管の破損による汚水の流下不良

汚水の溢水(調査の結果水道管の破裂)

下水道管路施設に起因する道路陥没

マンホール 及び

マンホールポンプ

マンホールの段差及び浮上

マンホールポンプの非常用発電による発煙

※ 住民への連絡(情報周知等)に関する回答はなかった

5) 下水道施設(管きょ、処理場)の緊急点検について

発災(最初の大きな地震)が夜間であったが、職員参集後における管きょの

緊急点検は、自治体毎に実施開始までの時間にばらつきが見られる。一方、施

設の緊急点検は、維持管理

を委託している場合、即対

応している事例が多い。 なお、作業者の安全確保

の観点から、管きょ及び施

設とも、発災直後の夜間に

おける緊急点検を避け、翌

朝に点検を実施した事例

が複数みられた。 下水道 BCP を策定す

る上で、夜間の緊急点検

の要否や方法等について

(特に夜間に緊急点検を

実施する場合は光源等の

安全確保)の事前検討が

必要と考えられる。

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6) 緊急点検に要した人員数と時間について

管きょよりも施設の方が緊急点検に要した人員が多いが、管きょでは自治

体職員が点検を実施し、施設では維持管理業者が点検を実施する事例が多く

みられる。管きょの緊急点検は、対応できる職員の人員余裕が少ない中で、自

治体の職員が中心となって点検を行っていることが推察される。また、自治体

の職員数のみを報告した自治体

もあり、維持管理業者を含めると

報告の人員以上に要していたも

のと考えられる。

時間については、管きょ及び施

設とも概ね 10 時間程度で緊急点

検を完了しているが、一部の自治

体では数日以上の期間を要して

おり、被災程度や保有する施設の

数によるものと考えられる。 従来からの課題ではあるが、特

に職員数の少ない自治体では、緊

急点検に要する人員をいかに配

置するかが重要である。

7) 優先順位に基づく緊急点検について

ほとんどの自治体において、下水道 BCP で事前に設定された優先順位に基

づき下水道施設の緊急点検が実施されていた。しかし、一部の自治体では“下

水道事業以外の業務が優

先され、緊急点検を実施

していない”、もしくは、

“優先順位が設定されて

いない”事例が見られた。

限られたリソースの中

で効率的に非常時対応を

行う上で、下水道施設の

緊急点検に優先順位を定

めて実施することが有効

である。

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8) 下水道の早期利用に向けた、私有地内(避難所及び民家等)の排水設備の不

具合(配管損傷等)に対応する部署の設定状況

今回の地震では、私有地内配管損傷等による下水道利用の遅れが一部報告

されているが、多くの自治体では、避難所及び民家等の排水設備の不具合に対

応する部署を設定してい

ない。しかし、対応が求

められた場合においては

下水道部署が対応する

(実際に対応した自治体

もあった。)事例も多く報

告された。 下水道 BCP において、

あらかじめ避難所及び民

家の排水設備の不具合に

対応する部署を協議、検

討しておくとよい。

9) 自治体(全庁)BCP や下水道 BCP での燃料の確保に関する記載(協定等)に

ついて

長時間にわたる停電が一部の自治体で報告されているが、多くの自治体で

は燃料の確保に関する協定は締結されていない。しかし、今回の地震では県や

民間業者に対応を依頼している事例が報告された。 災害時において、自前で燃料を確保することが困難となった場合、県や民間

業者に頼らざるを得ないことが想定される。このため、両者を交えた事前の検

討が必要である。ただ

し、災害時支援協定等

の締結は、下水道事業

だけでなく自治体全

体で締結される場合

も多いため、他の計画

等や部署との調整も

必要である。

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10) 下水道 BCP の職員への周知について

ほとんどの自治体で下水道 BCP の周知が実施されている。その内、半数以

上の自治体では訓練を実施し、それに合わせて周知されている。ただし、今回

の地震は年度始め直後に発生したため、人事異動等により下水道職員への下

水道 BCP 周知が不足していたことも課題の一つであった。

下水道BCPの

周知や訓練の実

施時期に加え、

配属されてすぐ

の職員に対する

下水道BCPや緊

急時業務対応の

周知等について

も検討しておく

とよい。

11) 災害時におけるし尿(避難所の簡易トイレ等)の下水道投入等による受入

れ対応(事前取決め等)について

下水道施設におけるし尿処理の受入れについて、ほとんどの自治体で事前

の取り決め等がなかった。しかし、被災時において、し尿受入れを実施した自

治体もあった。また、し尿受入れの可否を検討している自治体もあり、今後、

し尿受入れ可否や受入れ条件等の事前検討も必要である。

12) 災害用トイレ(マンホールトイレ等)について、自治体(全庁)BCP や下水

道 BCP での取り決め等について

一部の自治体で、機材の設置や維持管理に業務分担して実施しているもの

の、ほとんどの自治体で災害用トイレに関する取り決めがなかった。要否を含

め、下水道部署で取り扱うか等の事前検討も含め、今後の重要な課題である。

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13) 下水道 BCP について役に立った点について

下水道 BCP に基づいて行動することで迅速な対応が可能となり、さらに被

害想定においては、優先順位に基づいて行動することがスムーズな巡視や点

検につながっている。 保有資器材を把握することが、迅速な緊急対応の実施につながると考えら

れる。

項目 下水道 BCP が役に立った点

非常時行動計画等

訓練を行っていたこともあり、行動すべきことが判断できた。

迅速な職員参集ができた。

早急な対応及び連絡が実施できた。

現地調査及び点検が迅速に実施できた。

被害想定等

重要な幹線等の位置がすぐに把握できた。

被害の大きいエリアが把握でき、概ね予測結果通りであった。

被害想定に沿って巡回することで、滞りなく実施できた。

資器材リスト等 保有資器材が把握できた。

MP 等の非常用発電等の対応が迅速に実施できた。

その他 バキューム車による汚水処理が迅速に実施できた。

14) 策定済みの下水道 BCP の見直しが必要な点(課題)について

下水道事業以外の優先業務に人材を割かれることにより、想定外の人材不

足や指揮命令系統の崩れが発生したとの回答が多かった。上位計画等を踏ま

えた実状に即した計画を策定することが重要になる。また、不足した人材や資

材を補うため、事前に県外の自治体や他団体との協力体制を構築(協定締結等)

することも必要である。

項目 策定済みの下水道 BCP について見直しが必要な点(課題)

上位計画との整合

地域防災計画と下水道 BCP が混在し、とるべき行動が不明確だ

った。

上水道、農集施設の対応に人材が割かれた。

他の優先業務を踏まえた対応可能な指揮命令系統の構築が必

要。

町対策本部と下水道課との役割分担等ができなかった。

防災計画書の中で下水道 BCP を位置づけ、広く認識させる必要

がある。

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項目 策定済みの下水道 BCP について見直しが必要な点(課題)

職員不足の考慮

係の職員数が少なく災害調査の時間がかかり過ぎた(0次調査)

職員数が少なく、下水道 BCP 業務とその人員配置が実状に即し

ていなかった。

協定の締結

今後は緊急対応への応援に関する協定の締結を急ぐことが重

要。

発電機のレンタルに伴う燃料の確保が課題となった。

県内の連携だけでなく、県外や他団体の協力体制が必要。

その他

職員が長期間休みを取れない状況となった。

下水道台帳による被災路線や苦情、緊急対応等の情報共有化が

必要。

調査の優先順位をさらに詳細に決めておくことが必要。

15) 下水道 BCP の訓練が役に立った点について

下水道 BCP の訓練において、点検ルートや施設の位置等を確認していたこ

とが役立ったとの回答が多かった。また、訓練で連絡・報告の手順等を確認し

ていたことが、早急な情報伝達に繋がったとの回答もあった。これらの内容を

踏まえた下水道 BCP 訓練を行うことが有効であると考えられる。

項目 下水道 BCP の訓練が役に立った点

点検ルートや施設

の位置等の確認

訓練を通じ施設の場所の確認ができていた。

事前に重要な幹線ルートの把握ができていた。

マンホールポンプ場の場所を事前に確認していた。

連絡・報告手順等

の確認等

本部への報告のシミュレーションを実施していたため、伝達が早か

った。

報告の流れ(手順)は確認できた。

仮設の実地訓練 MP が壊れ、バキュームで圧送先まで送っていく実施訓練。

仮設ポンプ、仮設配管及び人孔点検調査等の実施訓練。

その他

資料の整理と手順が把握できていたためスムーズな行動ができ

た。

意識づけ(処理場の維持管理業者を含め)、手順確認の点で役立

った。

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16) 下水道 BCP の訓練の見直しが必要な点(課題)について

人手不足を前提とした体制づくりや支援要請の手順を確認する訓練の実施

が必要という回答が多かった。また、今回の教訓を生かした実地訓練を実施す

ることが有効であるとの回答もあった。

項目 下水道 BCP の訓練の見直しが必要な点(課題)

人手不足への対応 長期間にわたって警戒体制が続く中での体制づくり。

見直しが必要な点としては、とにかく人手がいる。

支援要請の手順 支援要請の手順や方法の確立。

大規模な災害において外部からの受入れを想定した訓練。

実地訓練の実施

実務に則した訓練(マンホールを開ける訓練、判断する訓練)

下水道施設の被害調査写真の撮り方の統一化。

圧送管等の破断における緊急対応訓練が必要。

その他

安否確認の手段や連絡・報告のタイミングについての整理が必

要。

他の部署や上水道の優先業務を実施することを想定する。

17) 各種アドバイス

①他の自治体や民間業者等との事前協定について

項目 内容

必要な

協定先/協定内容

日本下水道事業団/下水処理場の災害時支援協定

自治体間/緊急点検等

維持管理会社、土木会社/調査点検、応急復旧

リース会社、建設会社/発電機の提供(停電時のマンホールポ

ンプ運転のため)

-/燃料の確保

その他の意見

職員数の少ない自治体では、協定の必要性が高い。

大規模災害では、近隣自治体間での協力は難しい。

被災・復旧に関する他市町村の情報があると参考になるので、

情報共有の機会が必要。

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②同自治体内の他部局との取り決めや遣り取りについて

項目 内容

災害対策本部への

連絡・報告

災害対策本部等に、点検や調査など実施するごとに連絡・報告

し、記録に残しておく。

道路管理者との連携

道路管理者と合同で路面陥没等の巡視点検を実施。

下水道管路部の沈下やマンホール部の隆起など道路管理者と占

用企業者のどちらが対応するのかある程度取り決めておいた方

がよかった。

上位計画と下水道

BCP の整合

上位の防災計画が優先されるため、下水道 BCP における人員配

置の考慮が必要。

地元業者の割り当て 緊急工事が必要な際の地元業者の割り当てが必要だった。(上水

道も被災し業者不足になった。)

③被害想定について

項目 内容

想定と異なる

被害の影響

BCP では処理施設が水没し機能不全としたため被害確認の計

画を作っていなかった。

小規模の被害も想定すべき。

点検ルート図・

緊急点検対象

被害想定図を踏まえて、巡視点検ルート図・緊急点検対象管路

図を整備する必要がある。

実例の反映 実際に被害を受けた自治体を例に、起こりうる被害を想定して

訓練等を実施するべき。

④非常時対応計画について

項目 内容

訓練と周知

実際に被害を受けた自治体を例に、起こりうる被害を想定して

訓練等を実施し非常時にどのように対応するか計画を立て職員

に周知しておくべき。

支援人員や点検

優先順位の設定

職員の人員に応じた計画が必要。他自治体や民間の支援が必

要な部分・作業については、具体的な人数など明確化しておく。

緊急点検の優先順位を定めておく必要がある。

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⑤支援受け入れ体制や準備について

⑥資機材の備蓄や図面等重要資料のバックアップについて

項目 内容

資機材

普段から災害を想定して、実際に災害発生時にどんな資機材や

備蓄品が必要になってくるかを考えて準備しておくこと。

発電機の確保が必要。

バックアップ 管路台帳は、紙と電子の両方でのデータ保管が必要。

重要書類などは、データとして残せるものはデータ化しておく。

項目 内容

分業体制 現場班と待機班など、分業体制を予め定めておくとよい。

宿泊施設

他自治体下水道職員の支援を受けたが、宿泊先が無く(役場庁

舎内の会議室等は、すでに他部局での支援に来られている職員

の方々の控室になっていた)、処理場に宿泊していただいた。しか

し、上水道が断水しており、不便な生活をされたと思う。

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3.2 アンケート調査結果②

3.2.1 下水道BCPについて

1) 下水道BCPどおりの行動達成状況について

下水道 BCP どおりの行動であったか、その達成状況について回答のあった

自治体(21 自治体)の内、 “役に立った”、“概ね役に立った” と回答した

自治体が 4 自治体あった。これ以外にも“どちらともいえない”と回答した自

治体のうち、その理由の設問で役に立った点を挙げた自治体(4自治体)、“そ

の他”と回答したが、「概ね行動することができた。」と回答した自治体(1自

治体)もあり、これら

を含めると約 43%の

自治体で概ね行動が

できていたと考えら

れる。 また、「どちらかと

いえば,出来ていな

いと思う」と考える

自治体の主な原因と

しては、以下のよう

な点が挙げられた。

上位防災マニュアルにおいて、近くの庁舎又は支所に収集されるため、

災害直後は下水道 BCP どおりの行動が困難な状況である。

下水道以外の業務の優先順位が高かったため。

地震後の初動において、上水道の復旧に全力で対応したため。

災害時、下水道 BCP を読み返していないので、必要と判断したことだけ

を行っていたため。

下水道課職員全員が、避難所等へ派遣され本来の職務ができなかった。

【参考:“どちらともいえない”と回答した自治体の具体的な理由等】

施設の被害状況等については、委託会社及び職員で下水道 BCP どおり確

認ができた。今回の地震では損傷箇所もなかったので確認で終わったが、

被害があった場合には適切な対応がとれたかどうかは疑問である。

下水道の被害が小さかったため、ある程度の余裕があり対応できたが、

他市町村のような大規模被害が生じた場合の対応は心配である。

現場調査の着手に遅れが生じた。

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停電対応においてすぐに発電機の手配ができた。

下水道 BCP や訓練どおりスムーズに行動することが難しかった。

組織上、上水道と連携した復旧作業(応急給水等)となったため、下水

道に特化した行動がとれなかった。職務分担しているが、人員不足から

現場調査等総動員で行かなければならない状況だった。

作成した管路図は活用したが、2次調査以降は実施できていない。

2) 上位計画(地域防災計画や自治体 BCP 等)と相違する点について

上位計画と相違する点であげられた主な意見は以下のとおりである。

地域防災計画と下水道 BCP の関連が特に図られていないので、小さな自

治体では町組織として下水道業務以外で動かなければならない部分も

ある。緊急性が大きいものから対応が進むので、下水道 BCP に則してす

べての業務を行うことは困難。

計画間の相違よりも計画と実施の相違が多い。人員不足によるもの。

課は下水道担当課でもあるが、道路、水道、橋梁等も担当している。地

域防災計画には担当の施設も点検するように記載されているため、下水

道の点検以外にも点検しなければならない。

地域防災計画が優先されたため,人員配置が厳しくなった。

注)下水道 BCP に基づいた行動の実施状況の確認【3.1 1) 下水道 BCP に基

づいた行動について】と、その行動が計画どおりであったか(達成状況)

を確認した今回の質問は同種である。しかし、趣旨が十分に伝わらず、一

部異なる回答事例が見受けられたが、そのまま集計している。

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3.2.2 体制について

1) 対応体制の状況について

対応状況について回答

のあった自治体(23 自治

体)の内、10 自治体

(44%)で概ね体制がと

れていた。しかし、“十分

な体制がとれなかった”

と考える自治体もあり、

その主な原因としては、

以下のような点が挙げら

れた。

下水道における人員が少ないため。

他業務に班員を配置されたため。

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3.2.3 非常時対応計画について

1) 職員からの安否情報について

① 職員 100%確認までに要した時間

職員 100%の安否情報を確認するまでに要した時間について回答のあった

自治体(7 自治体)の内、3 自治体で下水道 BCP に設定された時間以内で職

員の安否確認が行

われていた。一方、

下水道 BCP に設定

された時間を大き

く上回る自治体も

あった。当該自治体

は、他の設問におい

ても同様な傾向で

あり、被害の規模、

自治体における体

制や職員の人員数

などと関係がある

と考える。

2) 参集状況について

① 規定人員参集までに要した時間

規定人数参集までに要した時間について回答のあった自治体(11 自治体)

の内、9 自治体で下

水道 BCP に設定さ

れた時間以内で規定

の人数が参集でき

た。しかし、設定さ

れた時間を大きく上

回る自治体もあった

が、当該自治体は簡

易版の下水道 BCPのため“直後”と設

定されている。

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3) 非常時対応に要した時間(被災~)ついて

① 災害対策拠点の安全点検実施(終了時間)について

災害対策拠点の安全

点検の実施について回

答のあった自治体(11自治体)の内、9 自治体

で下水道 BCP に設定

された時間以内で災害

対策拠点の安全点検が

実施された。しかし、下

水道 BCP の設定以上

に時間を要した自治体

(2 自治体)もあった。

本項目の標準的な行動として以下の内容が想定される。

担当班は,外部状況(大規模クラック)等,災害対応拠点(通常の業

務拠点)の安全性を確認。 災害対応拠点の安全が確保できない場合,代替対応拠点へ移動。

② 下水道災害対策本部の立ち上げ

下水道災害対策本部

立ち上げまでに要した

時間について回答のあ

った自治体(11自治体)

の内、9自治体で下水道

BCP に設定された時

間以内で災害対策本部

が立ち上げられた。し

かし、下水道 BCP の設

定以上に時間を要した

自治体(2 自治体)もあ

った。

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③ 災害対策本部への初動連絡

災害対策本部への

初動連絡までに要し

た時間について回答

のあった自治体(10 自

治体)の内、8 自治体

で下水道 BCP に設定

された時間以内で災

害対策本部へ連絡が

できていた。しかし、

下水道 BCP の設定以

上に時間を要した自

治体(2 自治体)もあ

った。

本項目の標準的な行動として以下の内容が想定される。 災害対策本部へ対応体制や既に判っている被害の概況等を報告。

④ 処理場との連絡調整(概ね発災直後の想定業務)

発災直後に処理場と

の連絡調整を行うまで

に要した時間について

回答のあった自治体(9

自治体)の内、7自治体

で下水道 BCP に設定

された時間以内で処理

場との連絡調整ができ

ていた。しかし、下水

道 BCP の設定以上に

時間を要した自治体(2

自治体)もあった。

本項目の標準的な行動として以下の内容が想定される。 処理場職員等の安否,施設被害概要を把握。

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⑤ 緊急点検(概ね発災直後の想定業務)

緊急点検を行う

までに要した時間

について回答があ

った自治体(10自治

体)の内、8自治体

に お い て 下 水 道

BCP に設定された

時間以内に点検が

行われていた。しか

し、1 自治体では下

水道 BCP に設定さ

れた時間と比べて大きな乖離がみられた。

本項目の標準的な行動として以下の内容が考えられる。 調査箇所の優先順位を決定し、グループ編成・調査内容を決定。

調査用具、調査チェックリストを準備。

人的被害につながる二次災害の防止に伴う管路施設の点検を実施。

⑥ 緊急調査(概ね 2 日目以降の想定業務)

緊急調査を行うまでに要した時間について回答があった自治体(10 自治体)

の内、1 自治体では

下水道 BCP の設定

以上に時間(日)を

要していた。しか

し、大半の自治体で

は下水道 BCP どお

り、もしくは早期に

調査が行われてい

た。なお、破線の 3

自治体については、

下水道 BCP で時間

設定がされていない。

本項目の標準的な行動として以下の内容が想定される。 重要な幹線等の目視調査を実施。

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⑦ 優先業務内容について

下水道 BCP で

設定した優先実施

業務に対して実際

に実施した業務状

況について回答が

あったのは 5 自治

体と少なかった

が、1自治体で優先

業務以外に必要な

業務が発生してい

た。 “優先業務以外に必要な業務が発生した”と回答した自治体から、特に乖離

のあった業務として「下水道管きょの緊急点検(初動)」が挙げられた。

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3.2.4 その他の災害時対応について

① 緊急調査・点検の内容について

緊急調査・内容につい

て回答のあった自治体

(16 自治体)の内、12 自

治体(75%)では緊急点

検・調査の内容は概ね問

題なかったが、3 自治体

(19%)で調査項目内容

の不足、もしくは相違が

著しかった。

② 緊急調査・点検の日進量(進捗状況)について

緊急調査・点検の日進

量について回答のあっ

た自治体(16 自治体)の

内、12 自治体(75%)で

“想定より早く(1 自治

体)”もしくは“概ね想定

通り(11 自治体)”に調

査・点検ができていた。

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③ 住民からの通報等の内容と対応方法について

通報等の内容 対応方法

マンホール周りの道路にひびが入っている。 ひびは以前からのものだった。

汚水が流れない。 現場確認

トイレが流れない。 上水道断水に伴い自粛のお願い。

トイレが逆流してくる。 宅内管の破損に伴う逆流であるから,個人

で修繕をするよう対応。

管路部分の道路陥没,マンホールとの段差 舗装修繕を実施。

道路の陥没・マンホールの浮上り

陥没箇所は砕石等を補充し,応急的に通行

できるようにした。マンホールについて

は,道路と擦り付けした。

宅内の排水設備の破損 現場にて破損個所の確認を行い,修理

を依頼するよう伝えた。

マンホールの浮上(道路の沈下)により交

通に支障をきたしている。

マンホールと道路の高さの擦り付けを

行った。

汚水の流出,管渠の陥没等 現場対応

④ 住民への広報活動について

住民への広報活動内容 対応方法

被災箇所が処理場だけで,市民生活には

直接影響がなかったため,緊急の広報は

必要としなかった。

市広報誌で市民に被災箇所を周知。

上水道断水に伴う下水道使用の縮減 防災無線等

下水道使用料の減免申請について

ホームページ及び回覧等により周知。

また,全壊家屋,大規模半壊家屋につ

いては個別に連絡した。

避難所への張り紙及び広報車の利用。

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3.3 ヒアリング調査結果

アンケート記載内容以外の主な報告及び意見の概要を下記に示す。

(1)下水道 BCP の対象期間について

・「二次調査まで」、「災害査定まで」など、現在よりも長期間を対象とすべ

きという意見もある。

・「緊急点検から災害査定まで」の一連の流れを整理したマニュアルもしく

は参考資料が欲しいといった意見が多く寄せられた。

(2)各種協定の必要性について

・多くの自治体で協定の必要性については感じているが、自治体としてす

でに締結している協定が十分に把握できておらず、また、有効と思われ

る協定がまだ整理できていない状況である。 →地域防災協定等を事前に確認しておく必要がある。

・どの自治体も必要な協定の締結を望んでいる。

(3)初動体制について

・小さな町村で職員不足のため初動体制が十分にとられていない傾向であ

った。 →発災時に実際に動ける人員数を把握しておくこと。また、下水道の

ための人員を最低限確保しておくことが必要である。

・道路調査と調整がとれていた市町村では効果的な対応がとれていた →緊急調査で道路部局と事前調整をすることを検討するとよい。

・優先調査対象を決めてあった自治体は、スムーズに緊急調査を行うこと

ができた。

(4)職員の非常時体制・安全衛生等について

・多くの自治体は、食料や飲み物は個人にゆだねるか、余剰となった支援

物資等でその場しのぎの対応であった。

・長期間、長時間労働であるが、十分な休憩場所や休憩時間がとられてい

ないのが現状であった。

(5)調査について

・下水道 BCP では規定していたが、「緊急調査」や「1 次調査」を具体的

にどう進めるか分からなかったという意見があった。

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・調査報告のフォーマットを準備している自治体は、緊急調査の結果をス

ムーズに報告できていた。 →成果物の例やフォーマットを準備しておくと良い。

(6)内部・外部の連絡について

・地震後は電話が通じにくくなった一方、事前にグループを作ってあった

SNS(LINE)が連絡手段として有効に機能していた自治体が多数あった。

・自治体職員と県職員で個人的に LINE のやり取りをしていたため、発災

直後から適切なアドバイスを受けられた事例があった。 →個人の通信機器に委ねられるものの、非常時に備えて LINE 等の

SNS 活用も検討するとよい。 →日頃から防災訓練や会議等の場を利用して担当者間のつながりを

作っておくとよい。

(8)資機材調達について

・マンホールポンプの電源容量の事前整理が非常用発電機のスムーズかつ

確実な準備に役立っていた。

・カラーコーンやポールが大量に必要(地元業者からすぐに調達できた)

になったとの意見もあった。

(9)仮設トイレ等について

・多くの自治体では、下水道部署として仮設トイレの対応や充足状況の把

握を行っていないのが現状だった。 (自治体によって充足がまちまちのようである。また、支援物資として

早期に相当数の仮設トイレが運び込まれた例もあった。)

・熊本地震は東日本大震災と比べて、それほど広域な被害でなかったため

に仮設トイレが比較的スムーズに調達されていたように思われる。その

ため、一部の自治体では災害時の仮設トイレについて、あまり問題視さ

れていないように思われた。また、下水道マンホールトイレの必要性や

導入について自治体内で十分に意見がまとまっていなかった。しかし、

長期にわたる仮設トイレの使用は衛生面や健康面に影響を及ぼす恐れ

があるため、今後の災害時仮設トイレについては、自治体の実態に合わ

せて関係部署と速やかに協議し、下水道 BCP への位置付けや下水道部

署としての対応を検討する必要がある。

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(10)事務所の被害について

・高いキャビネットだけでなく低いキャビネットも転倒したため、必要な

書類が散乱しすぐに利用できなかった。また、机上のPCが落下により

故障し、下水道台帳にアクセスできなくなった事例が報告された。また、

いつでも持ち出せるように車に積んだ状態で業務を行った自治体もあ

った。 →キャビネット等の転倒防止措置を進めるとともに、災害時にすぐに

必要になる書類・データはすぐに取り出せるように保管場所を検討

する。

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熊本地震における下水道 BCP の有効性と課題に 関する調査 -熊本県編- 調査報告書【概要版】

平成 28 年 10 月

公益財団法人 日本下水道新技術機構 〒 16 2 -081 1 東 京 都 新 宿 区 水 道 町 3 番 1 号

TEL :03(5228)6511 FAX :03(5228)6512 E-mail :[email protected] URL :http://www.jiwet.or.jp/

2016.10②

●この調査をおこなったのは

研究第一部 鈴木 穣、田邉 信幸、小吉 省吾、日高 康晴、

菊川 哲生、井上 智行、中園 翔太