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百島地区人工干潟におけるアマモ分布調査 平成 26 年 9 月 特定非営利活動法人 瀬戸内里海振興会

百島地区人工干潟におけるアマモ分布調査 - CANPAN...St3 アマモ密生域 St8 アマモ疎生域 St4 アマモ密生域 St9 潜堤転石帯(ガラモ場) St5

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百島地区人工干潟におけるアマモ分布調査

平成 26 年 9 月

特定非営利活動法人 瀬戸内里海振興会

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目次

1.調査概要 ........................................................................ 1

1.1 調査目的 ..................................................................... 1

1.2 調査実施日 ................................................................... 1

1.3 調査場所 ..................................................................... 1

2.調査方法 ........................................................................ 2

2.1 アマモ分布調査 ............................................................... 2

2.2 潜水目視観察 ................................................................. 2

3.調査結果 ........................................................................ 4

3.1 アマモ分布調査 ............................................................... 4

3.2 潜水目視観察 ................................................................. 6

(1) 水深・底質外観等 ............................................................. 7

(2) アマモの生育状況 ............................................................. 7

1)アマモ等の被度 ................................................................ 7

2)アマモの株密度 ................................................................ 8

3)アマモの草丈 .................................................................. 9

4)葉上浮泥の堆積及び食害の状況等 ................................................ 9

4.アマモ疎生域における波浪の影響 ................................................. 11

5.アマモ伸長期と繁茂期における分布の比較 ......................................... 12

6.アマモ場マップの作成 ........................................................... 14

7.まとめ ......................................................................... 16

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1.調査概要

1.1 調査目的

当該地区には昭和 62 年に施工された人工干潟があり、その潮下帯にアマモ場が形成されている。

アマモ場は、生物多様性、水産資源の増殖、水質浄化、波浪低減による人工干潟の安定などの機

能を有し、その保全は地域にとって重要な資源として認識されている。

そこで、アマモ繁茂期の 7月に、サイドスキャンソナーを用いてその分布と疎密度合を調査し、

地図上に図化し、今後の藻場及び水生生物の維持・保全の基礎資料とした。

1.2 調査実施日

平成 26 年 7 月 23 日

1.3 調査場所

広島県尾道市百島 百島地区人工干潟及び周辺部(昭和 59 年着手,昭和 62 年完成)

図 1.1 調査場所

調査場所

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2.調査方法

調査は、①アマモ分布調査、②潜水目視観察を行った。各調査の調査範囲及び位置は、図 2.1

のとおりであった。また、調査方法は、下記のとおりであった。

2.1 アマモ分布調査

アマモの分布は、サイドスキャンソナー(system3900;L-3 KLEIN 社製)を用いて調査を実施

した(写真 2.1 参照)。

サイドスキャンソナーは、ソナーの両側から発振した音波が海底から反射した時の反射強度の

違いを色の濃淡で表現する手法であり、近年、海底の底質分布や藻場の分布状況、海底上の設置・

堆積物の確認などに利用されている。

調査は、このサイドスキャンソナーを調査船の船首に取り付け、曳航する方法で実施した。ま

た、調査位置情報の記録は、D-GPS(Trimble 社製)を用いて行った(写真 2.2 参照)。

写真 2.1 サイドスキャンソナー(L-3 KLEIN 社製) 写真 2.2 D-GPS(Trimble 社製)

2.2 潜水目視観察

任意の調査地点で潜水目視観察を行い、サイドスキャンソナーで得られたアマモ分布の状況等

の確認を行った。

潜水目視観察は、任意の調査地点に 1m×1m の枠を設置し、枠内のアマモ被度等の記録を実施し

た。潜水目視観察で実施した調査項目は、以下に示したとおりであった。

表 2.1 潜水目視観察調査項目

調査項目 調査方法

水深 ダイバーズコンピューターによる測深

底質外観 潜水員による目視観察

アマモ 被度 1m×1m内のアマモ被度を潜水にて計測

株数 1m×1m内のアマモ株数を潜水にて計測

草丈 1m×1m内のアマモ最大10株の草丈を潜水にて計測

葉上浮泥堆積状況 1m×1m内のアマモの葉上に堆積する浮泥の状況を定性的に目視観察

葉上付着動物 1m×1m内のアマモ葉上で目視された付着動物を記録

食害状況 1m×1m内のアマモの食害率を潜水にて計測

その他 アマモ以外の藻類被度 1m×1m内において、アマモ以外の海藻被度を潜水にて計測

主な底生動物出現種 1m×1m内の海底上で目視された主な底生動物を記録

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図 2.1 調査位置図

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3.調査結果

3.1 アマモ分布調査

サイドスキャンソナーを用いた調査によって得られたアマモの分布及び疎密の状況を、図 3.1

に示した。なお、アマモの疎密状況は、下記に示した条件で整理した。

・アマモ(密生):各アマモ群落が 5m 以上離れず、海底面をほぼ被う区域

・アマモ(疎生):各アマモ群落が 5m 以上離れて、パッチ状に分布する区域

百島地区人工干潟及び周辺部におけるアマモの分布は、潜堤内では、人工干潟の岸から沖方向

のほぼ中央部で、海岸線に平行して帯状に広がっていた。また、その帯状分布は、北側に向かう

に連れて細くなり、人工干潟北端では小さなアマモ群落がパッチ状に点在するだけとなっていた。

潜堤外のアマモの分布状況については、潜堤北側の外側(百島地区の北東端)に、密生の大き

なアマモ群落が形成されていた。

アマモの分布面積は、人工干潟内は密生域が約 3.9ha、疎生域が約 1.7ha であり、合計約 5.6ha

であった。一方、人工干潟域外は、密生域が約 2.2ha、疎生域が 0.4ha であり、合計約 2.5ha で

あり、調査範囲全体で 8.1ha(密生域約 6.1ha,疎生域約 2.1ha)となった。

表 3.1 アマモ場の分布面積

単位:m2

密生 疎生 計

人工干潟域内 39,183 16,881 56,065

人工干潟域外 21,502 3,844 25,346

全体合計 60,685 20,726 81,411

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図 3.1 アマモの分布及び疎密の状況

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3.2 潜水目視観察

潜水目視は、「2.調査方法」の項で述べたように、アマモ等の海藻(草)が分布する任意の調

査地点で観察を行った。アマモの分布状況と潜水目視観察地点との関係は、図 3.2 に示したとお

りである。

図 3.2 潜水目視観察地点とアマモ分布状況との関係性

測点 アマモ等状況 測点 アマモ等状況St1 アマモ密生域 St6 アマモ疎生域St2 アマモ密生域 St7 アマモ疎生域St3 アマモ密生域 St8 アマモ疎生域St4 アマモ密生域 St9 潜堤転石帯(ガラモ場)St5 アマモ疎生域 St10 アマモ密生域

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(1) 水深・底質外観等

各地点の水深及び底質外観、また主な底生動物出現種を、表 3.1 に示した。

アマモが観察された場所の水深は、DL±0m 前後であった。また、底質の外観は、各地点ともに

礫混じりの砂泥、もしくは砂泥混じりの礫であった。なお、St9 の底質は潜堤上の転石帯であり、

ヒジキが繁茂しており、アマモの生育は認められなかった。

以上の結果と前述のアマモ分布域と観察地点の関係性から(図 3.2 参照)、当調査範囲における

アマモの分布水深は、DL±0m を中心に広がっているものと考えられた。また、アマモ分布域の底

質は、礫混じりの砂泥や砂泥混じりの礫であることが判った。

表 3.1 潜水目視観察地点の水深及び底質外観等

(2) アマモの生育状況

1)アマモの被度

各地点におけるアマモ等の海藻(草)の被度を、図 3.3 に示した。

アマモ密生域における本種の被度は、70~90%の範囲にあり、特に人工干潟の南側に位置する

St2 で 90%と高かった。また、アマモ以外の海藻としては、ジュズモ・ミルが確認されたが、被

度はいずれも 5%未満と低かった。

一方、アマモ疎生域における本種の被度は、人工干潟北側の St7 を除く各地点は 20~40%の範

囲にあり、50%を下回った。一方、St7 については、2m×2m 程度のパッチ状のアマモ群落内で観

察を行ったが、その被度は 70%と高い状況にあった。また、人工干潟の北端に位置する St8 では、

コアマモが被度 10%で、アマモと混在した。他の海藻については、人工干潟の中央付近に位置す

る St6 でジュズモ 60%・アミジグサ属 10%と高い状況にあり、その他のミルやオゴノリは 5%未

満と低かった。

潜堤の転石帯における海藻(草)の被度は、ヒジキが 30%で優占しており、その他のアオサや

テングサ科は被度 5%未満で低かった。

以上の結果から、アマモ密生域における本種の被度は、70%以上と高い状況にあることが判っ

た。また、競合する海藻類は少ない状況にあった。一方、アマモ疎生域における本種の被度は、

50%未満で密生域に比べ低い状況にあるが、点在するパッチ状のアマモ群落の中には被度 70%程

度と高いものも一部認められることが判った。更に、人工干潟の北端は、コアマモ群落が潮間帯

の水深の浅い場所に広がっており、本種が混在するアマモ群落が点在していることが判った。な

測点 アマモ等状況 水深(m) 底質外観 主な底生動物出現種St1 アマモ密生域 +0.1 礫混じり砂泥 -St2 アマモ密生域 -0.2 礫混じり砂泥 -St3 アマモ密生域 -0.1 礫混じり砂泥 -St4 アマモ密生域 -0.1 礫混じり砂泥 イソギンチャク目St5 アマモ疎生域 +0.2 礫混じり砂泥 ヤドカリ類St6 アマモ疎生域 -0.4 礫混じり砂泥 ヒトデ類St7 アマモ疎生域 +0.4 砂泥混じり礫 -St8 アマモ疎生域 +0.2 砂泥混じり礫 -St9 潜堤転石帯(ガラモ場) +0.8 転石 -St10 アマモ密生域 -0.0 礫混じり砂泥 -

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お、潜堤上の転石帯には、ヒジキが被度 30%程度で繁茂していることも明らかとなった。

図 3.3 アマモ等の海藻(草)の被度

2)アマモの株密度

アマモが観察された各地点における本種の株密度を、図 3.4 に示した。

アマモ密生域における本種の株密度は、各地点 88~113 株/m2の範囲にあり、平均 101 株/m2で

あった。また、被度が 90%と最も高かった St2 の株密度が 113 株/m2で最も多かった。

一方、アマモ疎生域における株密度は、St7 を除く各地点では 21~45 株/m2の範囲にあり、平

均 35 株/m2と密生域の平均株密度に比べ 1/3 程度と少ない状況にあった。被度が 70%と高かった

St7 の株密度は、122 株/m2であり、観察地点の中で最大を示した。なお、疎生域の St7 を含めた

平均株密度は 57 株/m2であり、密生域の方が約 1.8 倍大きい値を示した。

図 3.4 アマモの株密度

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

St1

St2

St3

St4

St10

St5

St6

St7

St8

St9

アマ

モ密

生ア

マモ

疎生

被度(%)

アマモ

コアマモ

ヒジキ

アオサ

ジュズモ

ミル

アミジグサ属

オゴノリ

テングサ科

0

20

40

60

80

100

120

140

St1 St2 St3 St4 St10 St5 St6 St7 St8

アマモ密生 アマモ疎生

アマ

モ株

密度

(株/m

2)

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3)アマモの草丈

アマモが観察された各地点における本種の平均草丈を、図 3.5 に示した。

アマモ密生域における本種の平均草丈は、各地点 62~91cm の範囲にあり、平均 72cm であった。

一方、アマモ疎生域における平均草丈は、41~65cm の範囲にあり、平均 52cm でアマモ密生域

に比べ低い状況にあった。なお、被度や株密度が密生域と同様に高かった St7 の草丈も、52cm と

密生域の各地点に比べて低かった。

以上の結果から、アマモ密生域の平均草丈は、疎生域に比べて約 1.4 倍大きい状況にあった。

そこで、平均値の差についてT検定を行ったところ、P値<0.05で両者に有意な差が認められた。

すなわち、アマモ密生域の草丈は、疎生域に比べて統計的にも高いことが判った。

図 3.5 アマモの草丈

4)葉上浮泥の堆積及び食害の状況等

アマモの生育阻害要因に挙げられる葉上浮泥の堆積状況(光合成阻害)及びアイゴ等の食害状

況を、図 3.6 及び図 3.7 に整理した。

アマモ葉上への浮泥の堆積は、アマモ密生域で多い~やや多く、特に St1 が多い状況にあった。

一方、アマモ疎生域における浮泥の堆積は、普通~少ない状況にあり、特に人工干潟の北側に位

置する St7 及び St8 で少ない状況にあった。

アマモの食害については、各地点で確認されなかった。

以上の結果から、アマモ葉上へ堆積する浮泥は、アマモ疎生域より密生域で多く、特に人工干

潟の南端が多い状況にあった。一方、人工干潟の北側のアマモ疎生域における浮泥の堆積は、少

ない状況にあった。アイゴ等によるアマモの食害は、全地点にて認められず、その影響は小さい

と判断された。

アマモ疎生域と密生域で葉上浮泥の堆積状況が異なった理由は、以下のとおりと考えられた。

・波浪等の影響を受けにくい静穏域にアマモ密生域が形成されていること、またアマモが密

生することで波浪の影響をより受けにくくしていることから、浮泥の堆積が多いと予想され

0

20

40

60

80

100

120

St1 St2 St3 St4 St10 St5 St6 St7 St8

アマモ密生 アマモ疎生

アマ

モ平

均草

丈(cm

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る。また、人工干潟の南端は、南側に漁港の防波堤があり、より静穏度が高いと予想され、

そのため浮泥の堆積も多くなったと考えられる。

・アマモ疎生域は、東風による波浪の影響を受けやすい場所にあり(後述の「4.アマモ疎生

域における波浪の影響」参照)、その流れで浮泥が堆積しにくい状況にあると考えられる。更

に、アマモ群落がパッチ状に点在する場所であることから、アマモによる静穏効果が密生域

に比べ低く、葉上に浮泥が堆積しにくい状況にあると予想される。

図 3.6 アマモ葉上の浮泥堆積状況

注)葉上浮泥堆積状況の数値は、以下のことを表す

4:堆積が多い 3:堆積がやや多い 2:普通 1:堆積が少ない

図 3.7 アマモの食害率

0

1

2

3

4

St1 St2 St3 St4 St10 St5 St6 St7 St8

アマモ密生 アマモ疎生

葉上

浮泥

堆積

状況

0

20

40

60

80

100

St1 St2 St3 St4 St10 St5 St6 St7 St8

アマモ密生 アマモ疎生

アマ

モ食

害率

(%

全地点食害なし

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4.アマモ疎生域における波浪の影響

百島地区人工干潟及び周辺部におけるアマモの分布は、潜堤内の人工干潟では、北側に向かう

に連れて帯状分布が細くなり、その北端では小さなアマモ群落がパッチ状に点在するだけとなっ

ていた。一方、人工干潟の中央から南側にかけて、また潜堤北側の外側(百島地区の北東端)に

おいては、密生の大きなアマモ群落が形成されていた。

このように、潜堤内の人工干潟の北側と、潜堤内の南側及び潜堤北側の外側で、アマモの分布

状況や疎密度合が異なった理由は、人工干潟の北側が波浪の影響を受けやすい環境にあることが

大きな要因と考えられた。

波の大きさは、風速及び吹送距離・時間で決定する。そこで、百島地区人工干潟を中心とした

周囲の地形をみると、人工干潟北側のアマモ疎生域の東側の海域において吹送距離が長いことが

判る(図 4.1 参照)。一方、人工干潟南側や潜堤北側の外側のアマモ密生域における吹送距離は、

広島県福山市内海町の田島や福山市沼隈町の岬などによって短い状況にある。

このことから、人工干潟北側は東風による波浪の影響を強く受けると考えられ、その波浪によ

って砂が動きやすい環境にあると考えられる。また、砂の移動は、アマモの生育にとって大きな

阻害要因の一つになることから、人工干潟北側のアマモ分布は疎生の状況にあると推察された。

なお、「3.2(1)水深・底質外観等」で述べたように、人工干潟北側のアマモ疎生域の底質は、砂

泥混じりの礫であり、礫分が他のアマモ密生域等に比べ多いと考えられた。このことからも、人

工干潟の北側は波浪の影響を受けやすいと示唆された。

図 4.1 百島地区人工干潟周辺の地形

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5.アマモ伸長期と繁茂期における分布の比較

本調査において得られたアマモの分布は、本種の繁茂期における状況であった。一方、アマモ

伸長期にあたる昨年度 2 月に、当該人工干潟において音響測深機を用いたアマモ分布調査が行わ

れた。

そこで、アマモ伸長期と繁茂期におけるアマモの分布状況を、ここで比較することにした。な

お、伸長期と繁茂期におけるアマモ分布の調査範囲は、図 5.1 に示すように若干異なった。

図 5.1 伸長期(H26.2)及び繁茂期(H26.7)における調査範囲

アマモの伸長期及び繁茂期における本種の分布面積の比較を、表 5.1 に示した。また、両期に

おけるアマモの分布状況の比較を、図 5.2 に示した。

アマモの伸長期と繁茂期の分布を比較すると、両期ともに海岸線と平行にアマモは帯状に分布

を示すが、その幅(岸・沖方向の幅)は伸長期に比べ繁茂期の方が大きい傾向にあった。また、パ

ッチ状に点在するアマモ群落が、伸長期には確認できなかったが、繁茂期には潜堤内の人工干潟

域で数多く認められた。

H26 年 7 月調査範囲(繁茂期)

H26 年 2 月調査範囲(伸長期)

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次に、伸長期と繁茂期におけるアマモの分布面積を比較すると、前者が約 4.4ha、後者が約 5.5ha

であり、後者が前者に比べ約 1.1ha 大きかった。

以上の結果から、繁茂期におけるアマモの分布は、伸長期に比べて岸・沖方向の幅が拡大する傾

向にあることが判った。また、パッチ状に点在するアマモ群落が繁茂期に多く出現することが判

明し、これらの結果、アマモの分布面積が伸長期に比べて繁茂期に1ha 程度拡大することが判っ

た。

表 5.1 伸長期及び繁茂期におけるアマモの分布面積

注 1) 伸長期の調査は、アマモの疎密度合が調査されておらず、各々の面積は不明であった。

注 2) 繁茂期のアマモ分布面積は、伸長期(H26.2)の調査範囲内における面積を表す。

(伸長期:平成 26 年 2 月) (繁茂期:平成 26 年 7 月)

図 5.2 伸長期及び繁茂期におけるアマモ分布状況の比較

注 1) 伸長期の調査は、アマモの疎密度合は調査されなかった。

注 2) 繁茂期のアマモ分布面積は、伸長期(H26.2)の調査範囲内における面積を表す。

単位:m2

計 密生 疎生

伸長期(H26.2) 44,321 - -

繁茂期(H26.7) 54,595 39,064 15,531

繁茂期-伸長期 10,274

調査範囲(H26.2)

調査範囲(H26.2)

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6.アマモ場マップの作成

近年、アマモ場は、生物多様性、水産資源やその他の魚介類の産卵場・保育場、水質浄化、底

質の安定化等の機能が見直され、全国各地で再生・保全活動が行われるようになった。また、現

在、環境学習としての再生・保全活動も注目され、児童を巻き込んだ活動も多く認められている。

当該地区が面する海域においても、かつてアマモ場が広がっており、その再生・保全活動が注

目されている。そこで、こうした再生・保全活動の有益な基礎資料となることを目的に、本調査

で得られた結果を用いて、アマモ場マップを作成した(図 6.1 参照)。

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図 6.1 百島地区人工干潟及び周辺部におけるアマモ場マップ

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7.まとめ

・百島地区人工干潟及び周辺部におけるアマモの分布は、潜堤内の人工干潟では、海岸線に平行

して帯状に広がっていた。また、その帯状分布は、北側に向かうに連れて細くなり、北端部では

小さなアマモ群落がパッチ状に点在するだけとなっていた。

・潜堤外のアマモの分布状況については、潜堤北側の外側(百島地区の北東端)に、密生の大き

なアマモ群落が形成されていた。

・アマモの分布面積は、人工干潟内は密生域が約 3.9ha、疎生域が約 1.7ha であり、合計約 5.6ha

であった。一方、人工干潟域外は、密生域が約 2.2ha、疎生域が 0.4ha であり、合計約 2.5ha で

あり、調査範囲全体で 8.1ha(密生域約 6.1ha,疎生域約 2.1ha)となった。

・アマモの分布水深は、DL±0m を中心に広がっているものと考えられた。また、アマモ分布域の

底質は、礫混じり砂泥や砂泥混じり礫であることが判った。

・アマモ密生域の被度や株数は、前者が 70%以上、後者が平均 101 株/m2であった。一方、疎生

域のアマモ被度は 50%未満を示す地点が多く、その平均株密度は 57株/m2と小さい状況にあった。

また、アマモの草丈についても、疎生域より密生域の方が平均値比較で 1.4 倍程度高いことが判

った。

・アイゴ等によるアマモの食害は認められなかったが、アマモの葉上に堆積する浮泥が密生域で

多く、特に人工干潟の南端が多い状況にあった。人工干潟の南端は、周辺部の地形、また南側に

漁港の防波堤があることから、海域の静穏度が高いと予想され、そのため浮泥の堆積が多い状況

にあると考えられた。葉上への浮泥の堆積は、光合成阻害を引き起こす要因となることから、今

後、本海域における透明度等の水質変化について注意する必要がある。

・前述したように、人工干潟の北側は、アマモの分布が小さい状況にあった。この場所は、周辺

部の地形から東風による波浪の影響を強く受けると予想され、その波浪によって砂が動きやすい

環境にあると考えられた。そのため、アマモの生育が阻害され、その分布が疎生の状況にあった

と推察された。

・アマモ伸長期(平成 26 年 2 月)と繁茂期(平成 26 年 7 月)の分布状況を比較すると、繁茂期

の分布は伸長期に比べて岸・沖方向の幅が大きいことが判った。また、パッチ状に点在するアマモ

群落が繁茂期に多く出現することも判明した。そして、その結果として、アマモの分布面積が伸

長期に比べて繁茂期に1ha 程度拡大することが判った。

・本調査で得られた結果を用いてアマモ場マップを作成した。現在、アマモ場の再生・保全活動

が当該地区及び周辺地区において注目されていることから、本マップが有益な基礎資料としてこ

れら取組に活用されることが望まれる。

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参 考 資 料

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別図 1(1) サイドスキャンソナーによって得られた海底画像(調査範囲全体)

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別図 1(2) サイドスキャンソナーによって得られた海底画像(人工干潟南側)

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別図 1(3) サイドスキャンソナーによって得られた海底画像(人工干潟中央部)

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別図 1(4) サイドスキャンソナーによって得られた海底画像(人工干潟北側)

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別図 1(5) サイドスキャンソナーによって得られた海底画像(百島地区北東端)