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【グループ研究1】 生徒指導上の対応が困難な 児童生徒への指導・援助の在り方 -怒り,不満などをコントロールできずに不適切な行動をする子ども いわゆる「キレる」子どもについて-

生徒指導上の対応が困難な 児童生徒への指導・援助 …ckyk/kenkyu/h17/gr1/gr1.pdfるように指導・援助していくことが必要となってきます。3

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【グループ研究1】

生徒指導上の対応が困難な

児童生徒への指導・援助の在り方

-怒り,不満などをコントロールできずに不適切な行動をする子ども

いわゆる「キレる」子どもについて-

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目 次

グループ研究1

はじめにⅠ

1 研究の背景 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥4

2 怒り,不満などをコントロールできずに不適切な行動をする子どもとは ‥‥5

3 研究の概要 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥5

「怒り,不満などをコントロールできずに不適切な行動をする子ども」に関わるⅡ

全国的な状況や施策,研究状況

1 暴力行為,いじめの全国的な状況 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥6

2 児童生徒の問題行動等に対する施策等 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥8

3 県内の行動連携推進事業の取り組み ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥10

4 児童生徒の問題行動等に関する研究状況 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥12

「怒り,不満などをコントロールできずに不適切な行動をすること」に関してのⅢ

児童生徒や教員の実態,意識

1 調査結果 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥15

2 調査結果の分析 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥20

怒り,不満などをコントロールし,適切な行動ができるようにするための指導・援助Ⅳ

1 基本的指導・援助方針 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥24

2 校内体制づくり ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥26

3 全体に対する予防・未然防止の対応(一次対応)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥28

4 徴候が見られる状況への対応(二次対応)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥32

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5 直接対応や個別の対応(三次対応)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥36

6 総合教育センター等との連携 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥40

Ⅴ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥43成果と課題

別資料

・参考資料 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥44

・参考資料の活用について ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥50

・調査結果データ〔児童生徒〕 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥52

・調査結果データ〔教員〕 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥55

・児童生徒の生活に関するアンケート調査(児童生徒用)‥‥‥‥‥‥‥‥57

・児童生徒の生活に関するアンケート調査(教員用) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥59

参考・引用文献 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥60

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- 4 -

Ⅰ はじめに

怒りにふるえる子どもたちは,深い哀しみを抱えています。

哀しみをそのままに表現できる子どもは,

やさしくしてもらうことができますが,

怒りという形で表現する子どもは,いつも叱られます。

〈中略〉

怒りをコントロールできない子どもたちの存在は,

私たちに,人の感情についての深い理解を促すための

警鐘をならしてくれている子どもたちといえるでしょう。

大河原美以(2004)より

私たちは,怒りや不満などの感情をコントロールできずに,暴力や器物損壊などの不適

切な行動に走ってしまう子どもの,心の中の深い哀しみに応えてあげたいと思っています。

1 研究の背景

学校における生徒指導上の諸問題は多岐にわたっています。全国的にみると,基本的生

活習慣にかかわる問題から,不登校や中途退学,いじめや暴力行為などの諸問題に至るま

で,依然として深刻な状況にあります。また,学校外においても,低年齢化や広域化など

の少年非行の多様化がみられます。さらに最近,長崎県佐世保市小6児童殺害事件(平成

16年6月),山口県立光高等学校爆発物傷害事件(平成17年6月),中3生徒による宮城

県登米市警察官傷害事件(平成17年8月)など児童生徒による重大な問題行動が相次ぎ,

非常に憂慮すべき状況です。本県においては重大な問題行動は起きていませんが,携帯電

話を発端とするいじめや暴力行為,女子高生の性に絡む非行問題の発生や,あるいは万引

き・窃盗,深夜はいかいなど,憂慮すべき状況にあります。

このような中で,器物損壊や暴力等の問題行動を繰り返したり,突発的衝動的に怒りの

感情を爆発させたりする児童生徒について,学校として,その要因・背景の理解や対応に

困難を感じている状況があります。本研究では,生徒指導上の対応が困難な児童生徒の中

でも,怒りや不満などの感情をコントロールできないため,その感情を適切に表現できず,

不適切な行動をする子どもに焦点を絞りました。いわゆる「キレる」子どもです。

なお,「キレる」行動の背景にADHD(注意欠陥/多動性障害)等が考えられる場合

は,その対応等は本研究から除外しました。総合教育センターとしては,平成15年度特殊

教育・相談研修部所員研究「LD・ADHD・高機能自閉症児等への支援の在り方」にお

いて,軽度発達障害がある子どもの理解と対応の在り方を提示しています。

また,異装,茶髪,深夜はいかい,性非行,窃盗,暴力等具体的な問題行動への対応に

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ついては平成14年度特殊教育・相談研修部研究「生徒指導における危機管理の在り方」に

おいて取り組み例,学校の対応の在り方を提示しています。

全国的ないわゆる「キレる」子どもに関係する研究としては,「重大少年事件の実証的

研究」(平成13年5月家庭裁判所調査官研修所)や「『突発性攻撃的行動及び衝動』を示

す子どもの発達過程に関する研究 -『キレる』子どもの成育歴に関する研究- 」(平

成14年3月国立教育政策研究所)等があげられます。

2 怒り,不満などをコントロールできずに不適切な行動をする子どもとは

怒りや不満などの感情をコントロールでき

ずに不適切な行動をする子どもとは,周りと

のかかわり合いの中で怒りや不満などの感情

が生じた場合,その感情を怒りの爆発という

形で表現する子ども(いわゆる「キレる」子

ども)と捉えます。怒りや不満などの感情を

表現する方法は多様にあるはずですが,怒り

を爆発させるという形で周囲にとって不適切

な行動で表現するのです。

具体的な行動としては,周囲の人に暴力をふるったり,悪口を言ったりして心身の苦痛

を与える行為,物にあたって器物を損壊する行為,授業などの実施のじゃまをする行為等

があげられます。このように「キレる」子どもはいろいろなトラブルを引き起こし,周囲

から「困った子ども」と受け取られます。しかし,一方では同時に「キレる」子ども自身

も適切な行動ができなくて,「困っている」のです。

このような子どもに対して,怒りや不満などの感情をコントロールし,適切に行動でき

るように指導・援助していくことが必要となってきます。

3 研究の概要

小・中・高等学校の児童生徒,教員に対して「児童生徒の生活に関するアンケート調

査」を実施しました。これにより,「キレる」(怒りが爆発する)ことや学校だけの指導

では改善が難しい児童生徒に関して,各校種ごとの実態,意識を分析し,特徴を把握しま

した。

次に,アンケート調査結果を基に,社会性をはぐくむ各種プログラムを活用して,怒り

や不満などの感情をコントロールし,適切に行動できるように具体的な指導・援助の方策

を提示しました。その際,全体に対する予防・未然防止の対応(一次対応),乱暴な言葉

づかいや言い争い,校内の落書きなど,徴候が見られる状況への対応(二次対応),暴力

行為等が発生したときの直接対応やその後の個別の対応(三次対応)に分けて検討しまし

た。

いわゆる「キレる」子ども

怒りや不満などの感情をコントロールし,適切に行動できる力を身に付けた

子ども

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- 6 -

Ⅱ 「怒り,不満などをコントロールできずに不適切な行動をする子ど

も」に関わる全国的な状況や施策,研究状況

1 暴力行為,いじめの全国的な状況

いわゆる「キレる」子どもの不適切な行動の具体的な例として 「周囲の人に暴力をふ,

るう 「悪口を言って心身の苦痛を与える 「物にあたって器物を損壊する」などをあげ」 」

ました。ここでは,これら不適切な行動と関連する児童生徒の暴力行為やいじめが,全国

的に現在どのような状況にあるのかをまとめてみました。

文部科学省の調査によると,平成15年度の公立の小・中・高等学校における暴力行為及

びいじめの発生件数の合計は,それぞれ3年ぶり,7年ぶりに増加しました。また16年度

は前年度に比べ,減少しています。それでは,それぞれの詳細を見てみましょう。

(1) 暴力行為の発生件数

学校内における暴力行為(対教師暴力・生徒間暴力・対人暴力・器物損壊の四形態)発

生件数の推移を見ると,平成16年度は,全体では前年度に比べ減少していますが,小学校

では2年連続して増加しています。小学校での16年度形態別発生件数は,前年度比,対教

師暴力が32.8%増加しているのをはじめ,生徒間暴力16.2%,対人暴力12.5%,器物損壊

14.0%と軒並み増加しています。また,発生件数全体に占める校種ごとの割合は小学校

6.3%,中学校77.0%,高等学校16.7%で,中学校が突出して高い状況です。中・高等学

, 。校では依然として暴力行為が多発しており まだまだ予断を許さない状況が続いています

全国の学校内における暴力行為発生件数の推移

0

5000

10000

15000

20000

25000

30000

35000

40000

11年度12年度13年度14年度15年度16年度

(件)

小学校

中学校

高等学校

合計

秋田県の暴力行為発生件数の推移

0

20

40

60

80

100

120

140

11年度 12年度13年度14年度15年度16年度

(件)

合計

生徒間暴力対教師暴力器物損壊

対人暴力

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(2) いじめの発生件数

いじめの発生件数は,平成15年度は8年ぶりに増加しましたが,16年度は減少していま

す。しかし,高等学校ではいじめの発生件数が微増ではあるが2年連続で増加しているこ

と,中学校では依然として高い水準で推移していることなどから,小・中・高等学校にお

いて今後も適切な対応を継続していくことが求められています。

秋田県では,平成15年度は中・高等学校が,16年度は小学校が前年度に比較して増加し

ています。

秋田県のいじめ発生件数の推移

0

20

40

60

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100

120

140

160

180

200

11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度

(件)

小学校

中学校

高等学

「 」( , )生徒指導上の諸問題に関する調査研究会報告書 平成17年6月 代表森田洋司

では,暴力行為・いじめの増減に関して実地調査した結果,児童生徒の状況について

次のような意識と行動の変化をあげています。これは,いわゆる「キレる」子どもを

生み出す背景ともかかわっているものと思われます。

①児童生徒のストレスが問題の背景となっている

家庭生活,学校生活での欲求が充足されない児童生徒には相当のストレスがか

かっていると考えられ,その結果,自らの行動を自制する能力の低下と突発的な

問題行動につながっている可能性があります。

実地調査の結果,ストレス解消策として,教師と「生徒とのコミュニケーショ

ン作りがポイント」としてあげられます。

②小中学生の規範意識の低下傾向

児童生徒が「謝罪をすれば解決したと考える安易な考え方をする」傾向がある

ことや 「何をしても許されるという意識が強く,自らのとった行動への責任感,

が希薄になっている」ことなどがあげられます。

「ピア・サポートによる生徒間の問題解決能力の育成」や「特別活動や職場体

験等を通した肯定的な他者評価」のような取組が効果的と報告されています。

③問題行動を起こす児童生徒のグループ化

小学校高学年から中学生にかけて,多くの生徒はいわゆる「仲良しグループ」

。 , ,を形成します このグループには 共通の趣味や将来志向でつながるグループと

教師や学校に対する不満や反抗を基盤として集まるグループとに大別されます。

これらのグループに対して「好悪」を単純に判断するのではなく,どのような観

点で見守り指導できるのかが生徒指導のポイントになります。

「クラブ活動への参加を促す指導」が効果的だったとの報告があります。

全国のいじめ発生件数の推移

0

5000

10000

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20000

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11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度

(件)

小学校

中学校

高等学

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2 児童生徒の問題行動等に対する施策等

(1) 文部科学省の施策

問題行動等全般に対する主な施策として,以下のような内容をあげています。

1 わかる授業・楽しい学校の実現と心の教育の充実

○ 教育課程の基準の改善 ○ 心の教育の充実

○ 豊かな体験活動推進事業 ○ 出席停止制度の適切な運用

2 教員の資質能力の向上

○ 生徒指導上の諸課題に対応するための指導者の養成を目的とした研修

3 教育相談体制の充実

○ スクールカウンセラーの配置 ○ 子どもと親の相談員の配置等

4 学校・家庭・地域・関係機関の連携

(第3節参照)○ 問題行動に対する地域における行動連携推進事業

○ 生徒指導総合連携推進事業

5 不登校の子どもたちへの対応

○ スクーリング・サポート・ネットワーク整備事業(SSN)

○ 不登校への対応におけるNPO等の活用に関する実践研究事業

6 児童虐待への対応

○ 学校等における児童虐待防止に向けた取組に関する調査研究

わかる授業,心の教育,教育相談体制,諸機関の連携などがポイントとなっています。

(2) 暴力行為等に関する最近の主な調査研究報告等

暴力行為や重大な問題行動に対しては,次のような報告等がなされてきました。

①2001年「心と行動のネットワーク -心のサインを見逃すな,『情報連携』から『行

動連携』へ- 」

この報告では,最近の児童生徒の問題行動への具体的な対応策として,「『心』の

問題への対応のために,児童生徒の心の相談・指導を行う体制づくり」,「児童生徒

の社会性を育む教育の展開のために,社会性を育むプログラムの開発や体験活動の充

実を図るための支援」,「学校と家庭や地域社会,関係機関とをつなぐ『行動連携』

のシステムづくりのためにネットワークの形成と『サポートチーム』の組織化」,

「学校や教育委員会における問題行動への対応に関する自己点検・自己評価の実施」

などをあげています。

②2004年「児童生徒の問題行動対策重点プログラム(最終まとめ)」

2004年6月の長崎県佐世保市の小6児童殺害事件をきっかけにして,再発防止を図

るために,「命を大切にする教育」「学校で安心して学習できる環境づくり」「情報

社会の中でのモラルやマナーについての指導」についての取り組みの必要性を述べて

います。

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③2005年「新・児童生徒の問題行動対策重点プログラム(中間まとめ)」

2005年6月の山口県光高等学校の爆発物傷害事件以降における一連の児童生徒によ

る問題行動を踏まえ,「生徒指導体制の整備」「情報社会の中での有害情報対策」

「社会性を育む教育の充実」「家庭教育の一層の充実」についての取り組みの必要性

を述べています。

2001年の報告「心と行動のネットワーク」の中で,「問題行動への対応等に関す

る点検項目」として,「教育活動」については以下のような項目を示しています。

(1) 豊かな人間関係の形成

日常の教育活動を通じ,教職員と児童生徒及び児童生徒相互の豊かな人間関

係作りを進め,情操を培うとともに,児童生徒の心を開かせるよう努めているか。

(2) 規範意識や倫理観等の育成

児童生徒に対し,自己の行動に責任を持つよう日ごろから指導を行うととも

に,問題行動が引き起こす結果等について認識させるなど,規範意識や倫理観

を育てる教育活動を行っているか。

(3) 社会性の育成

人間関係づくりの活動や社会体験,奉仕活動,集団活動等の体験活動等を通

じて,児童生徒の社会性の育成に努めているか。

(4) 心の健康の増進

児童生徒に心の健康の大切さやストレスに対処する方法などを身に付けさ

せ,自ら心の健康を維持・増進させる態度や能力を育てる取組を学校全体で進

めているか。

(5) 問題行動を起こした児童生徒への特別指導

問題行動を起こした児童生徒に対しては,児童生徒との信頼関係を基底に置

きつつ,出席停止の措置も含め毅然とした対応をとるとともに,児童生徒が自

分の内面を見つめることができる特別の指導を行っているか。

(6) 児童生徒全体への取組

問題行動が起きた場合には,道徳や特別活動をはじめ日常の様々な教育活動

の場面で,一般の児童生徒にも自分たちの問題としてしっかり考えさせ,より

良い学校生活の実現に向けて児童生徒の力を生かすよう指導を行っているか。

* 「教育相談」については,「教職員がカウンセリングマインドを持って接する

とともに,相談しやすい環境作りがなされているか」「児童生徒の相談があった

ときは,その内面の理解に努め,児童生徒の立場に立って対応しているか」「児

童生徒の心の問題についての理解を深め,発する兆候を見逃さず,必要に応じて

チームを組み,適切な対応に努めているか」などの項目をあげています。

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- 10 -

サポート行動

3 県内の行動連携推進事業の取り組み

(1) 行動連携推進事業の概要

文部科学省の「問題行動に対する地域における行動連携推進事業」(www.mext.go.jp)

は,問題行動等を起こす個々の児童生徒に着目して,学校,教育委員会,関係機関等から

なるサポートチームを形成して的確な対応を行うなど,地域における支援システムづくり

をすすめたり,学校復帰や立ち直りに向けた学校内外での支援の場をつくったりするもの

です。全国に47の指定地域があり,本県では昨年度から北秋田市が指定されています。

(2) 北秋田市の取り組み

①組織体制

北秋田市では,市教育委員会にサポート事務局を設置し,各学校からの要請などに

基づき,必要に応じてサポートチームを編成するなど,次のように組織体制を整備し

て,個別の事例に対応しています。

サポートチーム形成依頼

サポートチーム会議の開催(年3回)

対応の協議

問題行動の前兆,

及び問題行動の発

生の報告,チーム形成要請

「チーム」形成関係機関への派遣要請

「チーム会議」の運営,個別指導計画

の作成

自立支援

北秋田市教育委員会内サポート事務局

(サポートチーム指導員・自立支援教室指導員)

①問題行動の把握

②対応の協議

③チーム形成

④チーム会議

⑤サポート行動

⑥チームの解散

サポートチーム次の関係機関の実務担当者で構成する

・学校(生徒指導主事会長)・警察

・福祉事務所・PTA連合会・民生児童委

員・県教育委員会・市教育委員会

「チーム」個々の問題に対応する関係機関実務.....

担当者と,チーム指導員,自立支援教

室指導員で組織する

「チーム」会議「チーム」と当該学校関係者による

会議

当該学校当該児童生徒当該保護者

組織化

学 校

指導員によるコーディネート

指導員は自立支援教室・生徒指導主事会へ参加する。

・随時各学校を訪問する。

・サポートチーム指導員と連携する。

・支援プログラムを作成し行動する。

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②サポートチームの編成と役割分担

サポートチームは,関係機関の実務担当者及びサポートチーム指導員・自立支援教

室指導員(教職経験者や関係機関での勤務経験者など)から構成されます。例えば,

サポートチーム指導員はコーディネーター役を務め,各関係機関との連携を推進する

とともに,個別の事例にも対応します。また,自立支援教室指導員は,校内外に設置

した自立支援教室において,指導プログラムに沿って支援にあたります。

このように,それぞれの機関が役割を分担しながら,問題行動を抱えた児童生徒が

立ち直るための個別対応に当たります。次に示すのは,無断外泊や深夜はいかいなど

を繰り返す生徒への対応例です。

1 「チーム」の結成

中学校,警察署,県福祉事務所,サポートチーム指導員,自立支援教室指導員・

2 役割確認とサポート行動

① 問題行動の状況把握と指導方針の決定

中学校と警察からの報告を受け,その問題点を明らかにした。・

規範意識の低下,不規則な生活環境 ,学習意欲の減退 など)(

② それぞれの役割の確認とサポート行動

・ 指導員~規範意識の醸成,生活習慣の確立,日常会話,施設訪問(老人や幼児へ

のボランティア体験),社会探訪活動(水族館見学,遊園地での活動等)

・ 学 校~規範意識の醸成,生活習慣の確立,学習指導(時間割に基づく個別指導)

進路指導,相談活動

・ 警察署~街頭巡回時の校外における当該生徒への指導,当該生徒及び保護者との

電話相談

・ 福祉事務所~対象生徒,保護者への相談活動

③取り組みの成果

それぞれのサポート行動により,次のような成果が報告されています。

・ 対象となった児童生徒の問題行動が減り,生活や学習が前向きになった。

・ 問題行動を起こす児童生徒が抱える課題は複雑である。本事業開始前は,各関

係機関が個別に対応し,情報も個々で把握していた。しかし,事業開始後は,対

象生徒をサポートチームで分析し,支援方法を検討したことにより,それぞれの

専門性を生かした役割分担ができ,よりきめ細やかな指導ができるようになった。

・ サポートチームを形成したことにより,指導員と関係機関との連絡が日常的に

行われ,情報を共有することができた。また,関係機関(市教育センター,市福

祉事務所,児童相談所)主催の会議に参加する機会が増え,それぞれの事例に対

して,指導員がかかわりをもつことができた。

北秋田市では,平成18年度も引き続き,事業を継続する予定になっています。

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- 12 -

4 児童生徒の問題行動等に関する研究状況

全国的ないわゆる「キレる」子どもに関係する研究の概要を紹介します。

(1) 「重大少年事件の実証的研究 (家庭裁判所調査官研修所監修,平成13年5月発行)」

研究の意図近年,殺人などの重大事件後の少年について「目立たない子 「よい子」という声が聞かれる。こ」

のような少年の事件記録(25事例)を基に事件の背景・心理,メカニズム等を分析し,今後の対応

の手かがりとする。

◇タイプ分けとその特徴

単独で重大事件を起こした少年のタイプは大きく分類して3つあるとしています。

①幼少期から問題行動を頻発していたタイプ

②表面上は問題を感じさせることがなかったタイプ

③思春期になって大きな挫折を体験したタイプ

ここ数年に起きた一連の事件については,特にそのうちの「②表面上は問題を感じさ

せることがなかったタイプ」に該当すると思われるが,本研究ではこのタイプの特徴と

して,次のようなことを指摘しています。

ア 普段はおとなしくて目立たず問題がなさそうに見えるが,親との間に情感のこ

もったコミュニケーションが乏しく,温かい人間関係をつくることができていない

イ 目常生活においては表面的には適応しているように見えるが,実際には不適応

感に悩み,むしろ現実世界では傷ついていることが少なくない

ウ このため,自分が生き生きできるのは,空想の世界だけになる

エ それが,受験や就職等で現実の自分と向かい合わざるを得なくなると,イメー

ジ上の自分と現実の自分とのギャップが生じ,独特の形で守られていた自分自身

の世界が破壊に瀕するという危機感によって犯行が引き起こされたという面がある

また,このタイプの少年は,周囲との親密な人間関係がもてないためサインを表そう

, , 。とせず その内面的な危機が見過ごされ 手当てされないままになっていることが多い

しかし,それでもよく見ると,ストレスからの頭痛など心身症的な症状があったり,過

剰な儀礼的態度があったりするなどのことが見受けられるとしています。

◇特徴・前駆的な行動

, 。本研究における少年には 次のような特徴・前駆的行動があることを指摘しています

①犯行直前には追いつめられた心理,自殺願望等

②観念的な思考が目立ち,自分のやり方に固執,問題解決能力の乏しさ

③快・不快といった未熟な感情しか自覚できず,自分の気持ちを相手に伝えたり,相

手の気持ちを感じとったりする力(共感性)の乏しさ

④自己イメージが悪く「自分はだめな人間だ」という観念が強く,劣等感を抱いている

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- 13 -

単独 一人 問題行動頻発タイプ 表面上問題なしタイプ 思春期大きな挫折タイプ( )

事例におけ

る前駆的行 もの収集 家財持ち出し 孤立,いじめ,家族関係 学校不適応,身体症状,, ,

動 万引き,放火,学校不適 での傷つき,暴力的ゲー 器物損壊,粗暴行為,凶

応 ム,凶器収集 器所持

これらのことをサインとしてキャッチし,適切な働きかけを行うことができれば,重

大事件は免れることができたのではないかと考えられる。前駆的な行動を,少年の救助

信号ととらえ,心理的に追いつめられている状況にないかなど,問題行動の背後にある

少年の気持ちや置かれている状況の理解が必要だと指摘しています。

※以上の研究は,20数件の限られたサンプル数の下に得られた知見であり,上記の特徴的・前駆的

行動が見られるからといって,即そのまま事件につながるとは言い切れない。このような行動を取

る少年に対して,注意深く見守りつつ,偏見をもたないよう十分に気をつけることが必要である。

「『 』 『 』(2) 突発性攻撃的行動及び衝動 を示す子どもの発達過程に関する研究 - キレる

子どもの成育歴に関する研究- (国立教育政策研究所,平成14年3月)」

研究の意図よい子が突然「キレる」などと報道され,一種の社会現象になっている。これまで,明確な定義の

ないまま議論されているこの状況について,多くの事例(654事例)を基にして,生育歴を主にし

た分析を行い,今後の対応の手かがりとする。

分析の結果 「キレた」子どもの性格的傾向は次のように分類できるとしています。,

①耐性が欠けていると認められる「耐性欠如型」

②攻撃性が認められる「攻撃型」

③不満を抱え込んでいることが認められる「不満型」

そして「キレた」子どもの成育歴を見ると 「 放任』又は『過干渉』という両極端,『

, , ,な家庭での不適切な養育態度 両親の離婚や夫婦の不仲等の家庭内での緊張状態 また

子どもに問題行動が生じた際に家庭の適切な対処の欠如」などの事例が散見されるとし

ています。

事例の考察から,子どもは突然「キレる」訳ではなく,長い経緯や伏線が必ずあり,

「キレる」ようになる要因が成育歴などの中で形成されるとしています。成育歴などの

全体的特徴としては,①父親の存在感のなさ,②親の人格的な狭量さ,③人間関係をつ

, , 「 」,くることが不得手 友人の無さ ④親が暴力によって言うことを聞かすという しつけ

などについて指摘しています。以上のことから対策の視点としては 「夫婦間の協力に,

よる子育て 「様々な体験活動や地域活動,スポーツ活動への親子参加 「児童虐待」, 」,

の解消」などが重要としています。

子どもは突然「キレる」わけではなく事前にサインを発しているということ,そのサ

インをキャッチし問題行動の背後にある感情・気持ちや,家庭・学校での置かれている

状況を理解していくことが必要であるとしています。

本研究では「 キレる』過程のモデル化」など,次ページのようにまとめています。『

Page 14: 生徒指導上の対応が困難な 児童生徒への指導・援助 …ckyk/kenkyu/h17/gr1/gr1.pdfるように指導・援助していくことが必要となってきます。3

- 14 -

「キレた」子どもの性格的傾向の分類,及び「家庭の状況」等との関連

耐 攻 不 親への 学業等段 性 撃 満 依存度 の重視 「性格傾向・行動特徴」と「家庭の状況」等との関連階 欠 型 型

小 ○ 「攻撃型 「攻撃+耐性欠如型」は,家庭内における暴力・体罰の存強 弱 」学 73 48 25 在が影響(単純な暴力連鎖が起きやすい可能性)生 % % % ○ 「耐性欠如型 「不満+耐性欠如型」は,しつけ上の問題のある家庭」

で高い出現率・中学生ころから自意

○ 「攻撃型」は,家庭内における暴力・体罰 識に目覚め,学業成中 の存在が影響(小学生とほぼ同じ傾向) 績が強調されること学 70 44 35 ○ 「耐性欠如型」は,明確な傾向なし から 「劣等感」が,生 % % % ○ 「不満型 「不満+耐性欠如型」は,しつけ らみのタイプが相対」

上のみ問題がある家庭でやや増える傾向 的に増加

○ 「攻撃型」が,家庭内における暴力・体罰 ・単なる暴力の連鎖と高 の存在と結び付く事例の減少(小・中学生と いう幼稚な反応では校 71 36 38 異なる 「暴力・体罰」体験は過去のこと) なく,ストレスのは,

「 」 「 」 「 」生 % % % ○ 劣等感 に起因すると思われる 不満型 け口として キレる

「不満+耐性欠如型」の割合が高くなる傾向 といった事例の増加弱 強

( )。「 」 「 」 「 」キレた 子どもの 学校の状況 と 家庭の状況 との関連 ・分析対象例654事例に対する比率 %

学校の状況 友人からの 教師の不適切学業面の問題

家庭の状況 いじめ な対応家庭の「問題なし

暴力・体罰などが見られる 8.9% 3.6% 23.2% 群 でありながら キ」 「レる」事例

暴力的雰囲気など不適切な養育環境 17.7% 6.1% 19.9%

しつけ等の問題など不適切な養育態度 25.8% 4.5% 14.3% 学校における友人関係や教師との関係

家庭の「問題なし」(41事例) 26.8% 12.2% 14.2% が見過ごせない

怒りや不満の源泉

「キレた」子どもの判断基準: 暴力行為が常識的な判断を超えていて,「キレる」過程のモデル化 ※情動を制御する力が認められない

不適切な養育環境・養育態度X

□1親の頻繁な暴言など暴力的雰囲気 □2夫婦不仲など緊張状態家庭要因□3過保護,放任など不適切な養育態度 □4問題行動への無関心など適切な対処欠如 □12喫煙,飲酒,

深夜はいかいなど問題行動

不満や怒りをもたらす家庭環境

□8 □9□1子どもへの暴力 過敏に反応する,不寛 気持ちの表現の仕方が乱・体罰 容,こだわりがあり我 暴で,衝動的に行動する

□2離婚など著しい 慢できないなどの性行 などの性行(攻撃型42緊張状態 (耐性欠如型70%) %)(攻+耐性欠)

□3過度の統制など著しく不適切な養育態度

□10不満を抱えながらも我慢Z 情動コントロール要因

(性格傾向・行動特徴) している,劣等感を感じているなどの性行(不満型30%)(不+耐性欠)

□5友人からのいじめ 17%

□6教師の誤解など不適切な対応 □11孤立やコミュニケー5% ション不足など友人

関係の問題 24%

Y□7学業不振や怠学など学校要因学業面の問題 18%

・分析対象例654事例に対する比率(% 。1事例に複数の要因や性格傾向を含んでいる。)「キレた」子どもからみた「キレた」要因を示すものであり 「キレやすさ」を示すものではない。,

怒りや不満

キレる行動・言動

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- 15 -

Ⅲ 「怒り,不満などをコントロールできずに不適切な行動をするこ

と」に関しての児童生徒や教員の実態,意識

1 調査結果

児童生徒や教員の実態,意識を把握するため,それぞれに対して「児童生徒の生活に関

するアンケート調査(児童生徒用)」「児童生徒の生活に関するアンケート調査(教員

用)」を平成17年11月に実施し,次のようにデータ収集を行いました。

「児童生徒の生活に関するアンケート調査」回答者数

小 学 校 中 学 校 高等学校

109名 180名 215名児童生徒

(5,6年生) (1~3年生) (1~3年生)

教 員 36名 42名 31名

(1) 児童生徒に行った調査結果の状況

図1-①

Q キレそうになったとき,実際にキレてしま

)ったときがありますか。(回答は1つ

ア 1回もない。がまんしている

イ 大体がまんしている

ウ 半分くらいはがまんしている

エ ほとんどがまんできず,すぐにキレてしまう

オ その他

「ウ 半分くらいはがまんしている」と「エ ほとんどがまんできず,すぐにキレ

てしまう」と回答した児童生徒の割合は,小学校34.8%,中学校25.0%,高等学校

21.8%になります。校種が上がるにつれ,キレたことのある児童生徒の割合は低下し

ていますが,内容が深刻化していたり,表面に現れにくい潜在的な問題も考えられる

ため注意が必要です。

28.4%

6.4%19.4%

5.6%18.1%

3.7%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

小学校 中学校 高等学校

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- 16 -

図1-②

Q キレてしまったとき,どんな行動をすること

が多いですか

ア 周囲の人に暴力をふるったり,悪口を言う

イ 物にあたる

ウ 授業のじゃまをする

エ どういう行動をしたのかわからない

オ その他

各校種に共通して,キレたときの行動として「イ 物にあたる」「ア 暴力をふる

ったり,悪口を言う」の順で回答した割合が多い一方で,「エ どういう行動をした

のかわからない」という回答も目立ちます。

図1-③

Q キレてしまった自分をどう思いますか

)(回答は2つまで

ア キレてしまったけど,けっこうがまんをしていたから

しかたがない

イ 相手が悪いからこうなった。自分は悪くない

ウ 自分はダメな人間だ

エ キレないようにするべきでであったと後悔する

オ 何とも感じない カ その他

「エ 後悔する」が最も多く,次に「ア しかたがない」と自己弁護する回答が続

きます。また,「オ 何とも感じない」との回答も20%前後に達し,更に分析が必要

と思われます。

図1-④

Q キレそうになったのは,誰のせいだと思い

ますか(回答は2つまで)

ア 自分

イ 先生

ウ 友だち

エ 親 カ わからない

オ 親以外の家族 キ その他

小学校,中学校では「ウ 友だち」「エ 親」の順ですが,高等学校では「エ 親」

「ウ 友だち」の順です。校種が上がるにつれて,キレる原因としての「友だち」の

割合が減少し,「先生」の割合は増加しています。

高等学校では,「先生」と「生徒」とのかかわりを検討する必要があります。

30.3%

22.9%

25.9%

15.6%

15.1%

38.4%40.7%

27.9%

40.6%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

小学校 中学校 高等学校

33.9%

22.9%

36.1%17.5%

53.5%

26.7%

50.8%

16.3%

39.7%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

小学校 中学校 高等学校

50.5%

27.5%

21.9%6.4%

33.9%

43.3%

13.3%

33.5%

28.8%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

小学校 中学校 高等学校

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- 17 -

図1-⑤

Q あなたがキレなくなるためには,誰の応援が

必要だと思いますか(回答は2つまで)

ア 先生

イ 友だち

ウ 親

エ 親以外の家族

オ 先輩 カ その他

キレなくなるための応援は,各校種とも「イ 友だち」「ウ 親」の順で回答して

います。また,校種が上がるにつれ「ア 先生」の割合が減少していますが,友だち

どうしの関係づくりに果たす「先生」の役割は重要です。

図1-⑥

Q あなたがキレなくなるためには,まわりから

どのような内容の応援が必要だと思いますか

)(回答は1つ

ア 厳しさや罰で指導する

イ キレる事がもたらすマイナス面を説明する

ウ いろいろな相談にのる

エ はげましたり,元気づける

オ どんなことをしても無理 カ その他

キレなくなるためには,各校種とも「ウ 相談にのる」「エ 元気づける」を回答

しています。中学校,高等学校では「オ どんなことをしても無理」との回答も比較

的多く,また「カ その他」として,高等学校で「自分で何とかする」との記述もあ

り,分析する必要があります。

(2) 教員に行った調査結果の状況

図2-①

Q 生徒指導上の問題行動に関して,学校だけの

指導では難しい児童生徒が過去あるいは現在

いますか

ア 過去にいた

イ 現在いる

ウ いない

小学校:未回答者1名 高等学校:複数回答者1名(アとイ)*

「ア 過去にいた」と「イ 現在いる」を合わせると,小学校58.3%,中学校

83.3%,高等学校61.3%となり,中学校の割合が最も高くなっています。

24.5%

45.4%

12.7%

67.0%

36.5%

6.9%

28.4%

64.0%

64.7%

0% 20% 40% 60% 80%

小学校 中学校 高等学校

40.7%

7.0%

30.5%

37.1%

20.8%

19.8%

34.9%

33.1%

15.3%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

小学校 中学校 高等学校

19.4%

45.2%

38.1%

16.7%

54.8%

6.5%

41.9%

38.9%

38.9%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

小学校 中学校 高等学校

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- 18 -

図2-②

Q その問題行動の内容はどんなことですか

ア 周囲に傷害や心身の苦痛を与える行為

(いじめを含む)

イ 器物を損壊する行為

ウ 授業等実施の妨げとなる行為

エ その他

問題行動の内容は「ア 傷害や心身の苦痛を与える行為」「ウ 授業の妨げ行為」

が高い割合を示しています。中学校では,「イ 器物を損壊する行為」が34.3%と他

の校種と比較して高い割合となっています。

図2-③

Q 学校だけの指導では改善が難しい児童生徒に

は,どのような内容の支援が必要だと思いま

すか(回答は1つ)

ア 厳しさや罰で指導する

イ 問題行動がもたらすマイナス面を説明する

ウ いろいろな相談にのってあげる

エ はげましたり,元気づける

オ どんなことをしても無理 カ その他

各校種とも「ウ 相談にのる」の割合が最も高くなっています。また,高等学校で

は「ア 厳しさ・罰での指導」が25.8%となっています。「エ 元気づける」は,児

童生徒への調査結果と比較して低い数値となっています。

図2-④

Q その児童生徒への対応について,効果的な

他機関との連携は次のどれだと思いますか

)(回答は2つまで

ア 児童相談所との連携

イ 警察との連携

ウ 教育委員会との連携 カ いずれも効果は

期待できないエ 相談機関との連携

オ 保護者との連携 キ その他

各校種に共通して「オ 保護者」「エ 相談機関」の回答が多く,また校種による

特徴としては,「ア 児童相談所」が中学校で51.4%であるのに対して,高等学校は

0%となっています。「イ 警察との連携」に関しては,高等学校で31.6%と他の校

種と比較して高い数値となっています。

51.4%

45.7%38.1%

47.6%

34.3%

52.6%

36.8%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

小学校 中学校 高等学校

61.1%

14.3%5.6%

47.6%

9.7%

25.8%

38.7%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70%

小学校 中学校 高等学校

66.7%

85.7%

51.4%

40.0%

45.7%

31.6%

57.9%

68.4%

4.8%

4.8%

11.4%0.0

0% 20% 40% 60% 80% 100%

小学校 中学校 高等学校

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- 19 -

図2-⑤

Q 学校だけの指導では改善が難しい児童生徒に,

総合教育センターと連携して対応するとしたら,

センターに期待することは何ですか

)(回答は2つまで

ア メールを活用した相談

イ センター指導主事が学校の事例研究会に参加

ウ センター指導主事が学校を訪問し,児童生徒

に直接指導

エ 児童生徒本人及び保護者がセンターに出向き,指導・支援を受ける

オ 教職員がセンターに出向き,支援を受ける カ その他

総合教育センターとの連携に関しては「エ 児童生徒本人及び保護者がセンターに

出向き,指導・支援を受ける」や「ウ センター指導主事が学校を訪問し,児童生徒

に直接指導」の回答が多く,センターが児童生徒本人へ直接指導・支援することへの

期待が受け取れます。また,「オ 教職員がセンターに出向き,支援を受ける」に関

しても各校種とも20%前後の教員が回答していることから,この点についてもセンタ

ーとして対応することが求められています。

66.7%58.3%

64.3%

35.7%

64.5%

41.9%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70%

小学校 中学校 高等学校

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- 20 -

2 調査結果の分析

(1) 調査結果の分析

校種が上がるほど,キレる児童生徒は減少○

小・中・高等学校と校種が上がるにつれ,キ

レたことのある児童生徒の割合は低下していま

す。ここからは,校種が上がるほど,怒り,不

満などの感情をコントロールしている状況がう

かがえます。ただし,内容の深刻化や潜在化に

注意する必要があります。

キレてしまった自分,○

高校生は「しかたがない」

高等学校では,「しかたがない」「自分は悪

くない」と回答した生徒の割合が,「ダメな人

間だ」「後悔する」と回答した生徒の割合を超

えています。

キレそうになる原因,友だち・親・先生○

校種が上がるほど,キレそうになるのは友だ

ちのせいとする割合が減少し,先生のせいとす

る割合が増加しています。ここからは,教師と

子どもとのかかわりがどうなっているのか,あ

らためて検討する必要があります。

キレなくなるためには,○

友だちの応援と先生の支援

キレなくなるためには友だちの応援を必要と

する割合が,各校種とも70%近くと高くなって

います。一方,校種が上がるほど親と先生の応

援の割合が減少しています。ここからは,友だ

ちどうしの関係が,キレなくなるためには重要

であることがうかがえます。さらに,友だちど

うしの関係づくりや家庭との連携に果たす先生

の役割は重要です。

また,「その他」も校種が上がるほど増加していますが,中には「自分で何とかする」

との記述があります。自分で何とかしたいと思っていても,何ともできずにキレてしま

うのでしょう。このような児童生徒が,キレなくなるためには,周りの応援が必要です。

子どもに自分で対処できる力をつけさせるためにも,先生の果たす役割は重要です。

キレたことがある児童生徒の割合

21.8%

34.8%

25.0%

20%

30%

40%

小 中 高

キレてしまった自分をどう思う

30%

40%

50%

60%

70%

80%

小 中 高

「しかたがない」「自分は悪くない」

「ダメな人間だ」「後悔する」

キレそうになる原因

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

小 中 高

友だち

先生

キレなくなるためには誰の応援が必要か

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

小 中 高

友だち

先生

その他

先生

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- 21 -

キレなくなるためには教育相談的かかわり○

各校種とも,キレなくなるためには,相談に

のったり,励ましたり,元気づける対応を求め

ています。小学校70%台,中学校60%台,高等

学校50%台となっています。ここからは,キレ

なくなるためには教育相談的かかわりが求めら

れていることがうかがえます。一方,「厳しさ

や罰で指導」を回答している高等学校の教員は

25%います。この生徒と教員の意識の違いは,

さらに検討する必要があります。

保護者,児童相談所との連携が必要(教員への調査)○

各校種とも,保護者や相談機関との連携を求めています。また児童相談所に関して,

中学校が半数近く回答したのに対して,高等学校は0%です。ここからは,保護者との

連携のために,具体的にどうすればよいのかが求められています。また高等学校では児

童相談所に対する意識が薄いということが読みとれそうです。

総合教育センターへは,子どもへの直接指導を期待(教員への調査)○

総合教育センターが子どもたちに直接指導・支援することへのニーズが高いです。

キレてしまった自分,「何とも感じない」◆

キレてしまった自分をどう思うかについ

て,「何とも感じない」と回答した児童生徒

が各校種20%前後います。キレる時に自分自

身にどのような感情が生じ,なぜそうなった

かを考えさせるなど,個別に対応する支援の

工夫が求められます。

キレなくなるためには,中学生・高校生は◆

「どんなことをしても無理」

キレなくなるための応援について,「どん

なことをしても無理」が,中・高等学校で

20%近くあります。このことからは,ともす

ると,あきらめや居直りが感じられますが,

対処方法を身に付けることで,怒りが生じて

も適切に処理できることを理解させ,支援す

る必要があります。また,自分自身で何とか

したいと思いながらも,どう行動してよいか

分からない場合も考えられます。このような

生徒には行動変容のチャンスと捉え,個別にじっくりと話を聞くなど,周りからの教育

相談的かかわりが必要です。

キレてしまった自分をどう思う

16.3%

22.9%

17.5%

10%

15%

20%

25%

30%

小 中 高

「何とも感じない」と回答した児童生徒

キレなくなるためにはどのような応援が必要か

57.9%

63.6%

75.6%

50%

60%

70%

80%

小 中 高

「相談にのる」や「励ましたり,元気づける」と回答した児童生徒

キレなくなるためにはどのような応援が必要か

7.0%

15.3%19.8%

5%

10%

15%

20%

25%

小 中 高

「どんなことをしても無理」と回答した児童生徒

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- 22 -

(2) 〔感じないグループ〕と〔無理グループ〕についての分析

(1)の分析に加えて,特徴的な2つのグループについて分析を行いました。

学校,家庭でキレそうになる割合は高い□

学校でキレそうになる割合は,校種が上がるにつれ下がっています。家庭でキレそう

になる割合については,〔感じないグループ〕と全体が中学校で高いのに比べ,〔無理

グループ〕は校種が上がるにつれ上がっています。両グループとも,同じ校種の児童生

徒全体と比べるとキレそうになる割合が高く,このような児童生徒に重点的,個別的に

対応していくことが求められています。

キレそうになる原因,親・先生□

キレそうになるのは,親のせいと回答した児童生徒の割合は,〔感じないグループ〕

は中学校が最も高く,〔無理グループ〕は高等学校で高くなっています。また,先生の

せいと回答した児童生徒は,校種が上がるにつれ増加しており〔感じないグループ〕で

は高等学校で高い割合となっています。「親のせい」「先生のせい」ともに校種が上が

るにつれ全体より割合が高くなっており,親・先生と児童生徒とのかかわり方や家庭と

学校との連携を考えていく必要があります。

家庭でキレそうになったことがある

40%

50%

60%

70%

80%

90%

小 中 高

全体

感じないグループ

無理グループ

キレそうになったのは親のせい

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

小 中 高

全体

感じないグループ 無理グループ

キレそうになったのは先生のせい

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

小 中 高

全体

感じないグループ

無理グループ

学校でキレそうになったことがある

40%

50%

60%

70%

80%

90%

小 中 高

感じないグループ

無理グループ

全体

「キレてしまった自分をどう思うか」について「何とも感じない」と回答した児童生徒(小学校17.5% 中学校22.9% 高校16.3%)

感じないグループ

実際にキレてしまったときがあると回答した児童生徒の中で

「キレなくなるためには,まわりからどのような応援が必要か」について「どんなことをしても無理」と回答した児童生徒(小学校7.0% 中学校15.3% 高校19.8%)

無理グループ

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- 23 -

キレなくなるためには先生の支援がポイント□

キレなくなるための応援については,高等学校〔無理グループ〕において,親の応援

を求める割合が0%です。また両グループとも,先生の応援を求める割合が,高等学校

において全体の割合よりも高くなっています。キレる原因は先生と回答する一方で,同

じ先生に,何とかキレなくなるように応援も求めています。ここからは,「相談にの

る」「励ましたり,元気づける」など教育相談的かかわりが有効であることが示されて

います。

◆ 高校生の〔無理グループ〕に関する特徴

キレてしまった自分について,「自分はダ

メな人間」「後悔する」と回答した割合と,

「しかたがない」「自分は悪くない」と回答

した割合が高等学校の〔無理グループ〕で大

幅に逆転しています。キレてしまったことに

対する,このような意識の変化は支援する場

合に注意を要します。また,先にも述べまし

たが,高校生の 無理グループ に関しては,〔 〕

・家庭でキレそうになる割合が高い

・キレなくなるための応援を親に求める生徒

がいない

などの傾向も見られました。高等学校では生徒

の意識の変化を充分捉え,家庭との連携を図り

ながらの指導・援助が必要と考えられます。

キレてしまった自分をどう思う

26.0%

86.9%

55.5%

33.4%

50.0%33.4%

20%

40%

60%

80%

100%

小 中 高

無理グループ

「ダメな人間」

「後悔する」

と回答した児童生徒

無理グループ

「しかたがない」

「自分は悪くない」

と回答した児童生徒

キレなくなるためには親の応援が必要

0%

10%

20%

30%

40%

50%

小 中 高

全体

感じないグループ

無理グループ

キレなくなるためには先生の応援が必要

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

小 中 高

全体

感じないグルー

無理グループ

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- 24 -

「キレる」子どもの見方・とらえ

一番困っているのは子ども自身

その内面を理解し、適切な表現方法 や

葛藤を解決できる力をはぐくむことが大切

Ⅳ 怒り,不満などをコントロールし,適切な行動ができるようにする

ための指導・援助

1 基本的指導・援助方針

(1) 基本的な見方やとらえ方

喜怒哀楽 という言葉のように 私たちの感情はさまざまです うれしい とか 楽「 」 , 。「 」 「

しい」といったポジティブな感情は自他共に受け入れやすく,共有されやすいのですが,

「怒り」や「不満」などネガティブな感情は,そうはいきません。ぐっとこらえてがまん

したり,時には相手や対象に向かって感情を爆発させたりという,いわば不適切な表現で

処理することもあります。子どもの場合には,周囲の人に暴力をふるったり,悪口を言っ

たりして心身の苦痛を与える行為,物にあたって器物を破損する行為等が見られます。こ

のような行為をする子ども,いわゆる「キレる」子どもは,周囲とトラブルを引き起こす

ことから「困った子ども」と見られがちです。しかし,実際は怒りや不満の表現方法がわ

からなかったり,家庭環境などそうせざるを得ない事情があったりするなど,その子ども

自身が一番困っているのだと,とらえることはできないでしょうか。

そこで,子どもが自分の感情を理解し,相手に伝えたいことを適切な表現方法で伝えら

れるようになること,葛藤を解決できる力をはぐくむことなどの指導・援助が必要となり

ます。そして,留意すべきこととして,次の4点があげられます。

①怒りを押さえ込む働きかけをしない。

怒りを押さえ込むような働きかけ

は,かえって欲求不満を増加させるこ

とになます。解消のはけ口を探すこ

と,快適な刺激を与えストレスを発散

させてやることの方が大切です。

②これまでの経験が積み重なって現在の

状況に至っている。

キレる子どもは,つらい経験や不愉

快な体験をしてきていると考えられま

す。いわば,ずっと怒りを抱え込んで

生活してきたのです。そこで,とても「かわいそうな子ども」という思いでかかわる

と,教師自身にいくらかの気持ちの余裕と冷静さをもつことができます。

③怒るときの言動にはモデルがある。

子どもが怒りを表現するときの言動は,保護者や本人があこがれるだれかの振るまい

に似ています。したがって,その子どもの示す怒り方と似たスタイルで指導したり,怒り

, 。に対して正面から闘っていくよりも 別のやり方やモデルを提示する方が効果的です

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人間関係づくり

自己コントロール力(適切に対処するする方法を身に付ける)

対応のキーワード

④怒っていない場面を大切にする。

子どもが落ち着いているときに安心感を与えたり,自尊感情を高めたりするかかわ

りが大切です。自分が他から認められ,学校や教室に居場所があること,安心できる

ことが,何より,怒りのコントロールにつながります。

(2) アンケート調査に基づく対応の視点

それでは「キレる」子どもに対して,どのように対応していけばよいのでしょうか。こ

こでは,小・中・高等学校の校種ごとの対応,全体に対する日常の指導・援助から直接対

応や個別対応までの段階を追った対応,この2つの視点を織り交ぜて考えます。

アンケート調査によると,校種が上がるにつれ,キレたことのある子どもの割合は低下

しています。このことから,年齢を重ね,経験を積むことなどにより怒りの感情をコント

ロールする力が高まることがうかがえます。また,キレたことのある子どもに,だれに,

どんな応援をしてほしいかの質問からは,小・中学校では,友だちとの関係を大切にし,

先生にもかかわりを期待していることがわかります。年齢が低いほど「励ましたり,元気

づけてほしい」と周囲へ期待しており,中学校では 「相談にのってほしい」など,自分,

の思いを伝えたい,聞いてほしいとする割合も高くなっています。また,高等学校では,

自分で解決しようとする傾向が強まっています。

, , , 「 」,ところで 教師へのアンケートでは 具体的な支援として 小学校では 相談にのる

中学校では「相談にのる,行動のマイナス面の説明 ,高等学校では「相談にのる,厳し」

さや罰で指導」するとした割合が高くなっており,校種ごとの特徴があらわれています。

これらのことから,子どもたちのニーズや発達段階などに基づく適切な支援として,小

学校では教師と子ども,子どもどうしの人間関係づくりを大切にすることが必要です。中

学校では,それに加えて自己コントロールする力を身に付けさせたいものです。高等学校

では,自己コントロールする力に磨きをかけるとともに,自分一人で抱え込まないよう,

相手との関係で適切に対処する方法を身に付けさせたいものです。校種によるちがいこそ

ありますが,共通するキーワードは「人間関係づくり」と「自己コントロール力(適切に

対処する方法を身に付ける 」と考えます。)

そこで,人間関係づくりを主とした全体

への予防・未然防止(一次対応 ,キレ)」

ることにつながる「徴候が見られる状況へ

の対応(二次対応 ,実際にキレた場面)」

や子どもに対する「直接対応や個別の対応

(三次対応 」にわけ,それぞれの段階に)

応じた指導・援助を考えました。

勿論,これらのすべてを順序どおりに行

うということではなく,集団や個々の実態

や状況に応じて,適切に指導・援助してい

くことが大切です。

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2 校内体制づくり

いわゆる「キレる」子どもなどへの対応は,担任や学年部の取り組みだけでは不十分で

す。管理職の方針の下,担任や教科担任,学年部,生徒指導部等全教職員が,問題行動を

起こした児童生徒を共通理解しての再発防止や,予防・未然防止の観点から「人間関係づ

くり 「自己コントロール力の育成」に全校体制で臨むことが大切です。」

(1) 問題行動解決のカギは,管理職の明確なビジョン

管理職は,児童生徒の問題行動等への対応について,自ら積極的にかかわる姿勢や方針

を示すことが大切です。特に校長は,問題行動の解決に向け,明確なビジョンや目標を示

し,そこに至る道筋を明確にすることが大切です。

(2) 組織の力を結集する,報告,連絡及び相談(ホウ・レン・ソウ)

全校的な立場で対応することができる教頭や生徒指導主事等が中心となって機動的に対

応できるよう,管理職への報告,連絡及び相談(ホウ・レン・ソウ)を徹底する必要があ

ります。このことによって 「一人で問題を抱え込む」のではなく組織としての対応が可,

能になります。

なお,例えば生徒指導主事や学年の生徒指導担当の割り当てで終わることなく,教職員

一人一人の具体的な役割分担や責任の明確化(いつ,どんな場面で,だれが,どんなこと

をするのか)を図り,それぞれの役割に応じて活動できる機動的な体制を整備することが

大切です。

担任は自分のクラスの事件は人に知られず自分で処理したいと思い,学年部長は

自分の学年部の騒動はほかの学年部に知られたくないと思う。そして,生徒指導部

長や教頭さんは,赴任したばかりの新米校長には,できれば知られないように処理

しようという気持ちがあったと見えて,しばらくたって抜き差しならぬ状態になっ

てから私(校長)が知るということが何回もありました。

これでは校長が経営に責任がもてません。教育指導に全職員の知恵と行動力を結

「常ならざる事件が起こったときは無論のこと,事件が集することができません。

起こりそうであったら直ちに報告せよ。報告すれば学校で責任を負う。報告しなけ

れば全責任はその人にある。個人で責任を負える問題が!」と私は文章に書いて全

職員に配りました。

それ以後私は,我が校にも事件,事故が毎日あることを知ったのです。

『 ( ) 』船越準蔵 (2005) 教師が変われば子どもが変わる 下編 実録・こうして嵐を超えてきた

(3) 危機の未然防止,早期発見・早期解決を図る情報の共有化や指導方針の共通理解

生徒指導が各担任,各学年ごとに行われ,教職員間の情報の共有や連携が不足していた

ために,深刻な問題行動等に発展した事例があります。

深刻な問題行動等につながりかねない児童生徒の行動や態度について教職員間で情報交

換や指導方針の検討・確認を行う場を設け,その結果を関係教職員に周知して共通理解を

図ることが必要です。

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また,職員会議やいわゆる「生徒を語る会」を待つのではなく,生徒にかかわることに

関してはできるだけ早急に全教職員に伝達できるような体制づくりも大切です。

A中学校では管理職,生徒指導主事,学年主任,養護教諭,スクールカウンセラ

ー等による生徒指導連絡会を毎週火曜日の1校時に行い,そこで話し合われた内容

(情報交換や指導方針の検討・確認)については,同じ日の放課後の各学年部会で

報告し,全職員に徹底するようにしています。情報や話し合いの記録等は共有のフ

ォルダに蓄積し,全職員がいつでも活用できるようにしています。

また学年部では,毎日朝自習の指導をしながら廊下で,昨日の様子,今日一日の

流れの確認とともに気になる生徒の情報交換をしています。

さらに休み時間の職員室での教科担任等と学級担任,学年部職員の次のようなや

りとりなども大切な情報交換と位置付け 「自分の子ども,自分の学級,自分の学,

年」から「全校の生徒を全職員で育てる」へと意識を変えていきました。

「A雄,なんか元気なかったよ 「B子は昨日の大会で大活躍だったんだって」」

「 , 」「 , 」C助の制服 最近汚れていることが多いよ D香とE美 けんかしたのかな?

(4) 教職員の和・輪・話の大切さ

登山でも頂上(目標)は一つですが,そこへの道(方法)はたくさんあるように,共通

理解も常に同一に行動することを意味するものではありません。子どもとの関係や役割な

どに応じて,教職員がそれぞれの自分のもち味をだし,お互いを認め合いながらも,一つ

の方針の下,一致団結することが大切です。

いわゆる「キレた」子どもに直接対応する役,観衆を別の場所に移動させる役,事後じ

っくり 話を聞く役,など適した配役を決め,チームで対応することも大切です。

「弱音を吐ける職員室」を

「理想の教師」を目指し努力を続け,一方でそうなれない自分を責める。そのよ

うなパターンから脱却しましょう。

このような時,サポートが可能となるために何より重要なのが,職員室の温かい

雰囲気。何でも話せる雰囲気が職員間にあることです。

荒れた状態から立ち直った学校に,二つの共通した要因がありました。

一つは,何か具体的な取り組みに学校全体で取り組んでいること。もう一つは,

どんなに生徒が荒れていても,教師集団の間に笑顔が絶えないことです。

お互いを責めることなく,何でも話し合うことのできる,何があっても元気な教

師集団。そんな学校では,今はどんなに荒れていても,数年後には立ち直ることが

多いのです。

伸びる学校と沈滞する学校。その違いは,校内研修などで教員どうしの人間関係

や雰囲気を見れば一目瞭然です。

諸富(2004) 『クラスの荒れを防ぐカウンセリング』より

「私一人で対応できる」と思ったら黄信号です 「弱音を吐いてもいいんだ」というこ。

とを出発点として,教職員どうし励まし合い,何でも話し合うことができる温かい雰囲気

づくりを心がけましょう。

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3 全体に対する予防・未然防止の対応(一次対応)

子どもどうしがお互いに心を開き合い,他者を理解し,思いやる雰囲気に満ちた学級で

は,子どもが怒りや不満などを爆発させることが少なくなります。万一,爆発させてしま

ったときでも,早急に関係を回復できます。また,教師と子どもの信頼関係も,安心感の

ある,居心地のよい学級づくりには不可欠です。

(1) 子どもどうしの人間関係づくり

人間関係づくりで,有効とされているのが構成的グループエンカウンター(SGE)で

す。エンカウンターは,集団の教育力を生かして,「ふれあい」と「自己発見」を促す教

育技法です。初めてエンカウンターにふれる人が,抵抗なく,しかも,そのエッセンスを

感じ取ることができるような体験プログラムを次にあげました。高等学校の新入生オリエ

ンテーション(50分)を想定したものですが,ちょっとしたアレンジで小集団から100人

規模の大集団まで,また小・中学校やもっと短い時間でも実施可能です。学級の児童生徒

に,全校の児童生徒に,保護者に,教職員に是非,トライしてみてください。

エンカウンター体験基礎プログラム

<インストラクション>(5分)

「高等学校に入学して,新しく出会った仲間たちです。お互いの心の距離が少しでも近くなり,

仲よくなることができるように,みんなで楽しめるような活動をいくつか考えてきました。終了

後に,みんなの顔がパッと輝いているといいなぁと思います」

<エクササイズ&シェアリング>

1 ジャンケン列車(10分)

・ねらいは,「アイスブレーキング(緊張ほぐし)」と「グルーピング」にあることを簡潔に伝

えます。生徒のデモンストレーションにより,やり方を示します(インストラクション)。

・出会った相手とジャンケンをし,負けた人は相手の後ろに付き,肩に手を乗せ「列車」として

つながります。最終的には,全員の長い連結列車になります(エクササイズ)。

<留意点> 列の先頭どうしが,どんどんジャンケンをするように,適宜介入して,声をか

けてください。

・4人組作り。列車につながったまま,先頭と最後尾を以下のように動かし,機械的に4人組を

作っていきます。4人組ができたら,グループごとに床に座ります。このようにしてグルーピ

ングをすると,知っている人・知らない人が適度に混じったグループができます。

○○ ○○ ○○

○ ○ → ○○ → ○○

○ ○ ○○ ○○

○ ○ ○○ ○○

<留意点> 前から4人組を作っていくとき,勝手にグループを動こうとする生徒がいるか

もしれません。その際には適宜介入して声をかけてください。

2 バースデーライン(5分)

・ねらいは,「非言語コミュニケーションの体験」であることを簡潔に伝えます。また,生徒の

デモンストレーションにより,やり方を示します(インストラクション)。

・言葉を使わず,ジェスチャーにより,誕生月の順で,整列します。整列後,誕生日を語り合い,

もし順番が違っているならば,正しく入れ替わります(エクササイズ)。

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<留意点> グループによって,「話をしない」というルールを守らないところも出てきま

す。その時には,適宜介入して声をかけてください。間違うと落ち込む生徒もいるかもし

れませんが,すぐに正しい並びに入れ替わっていいことを伝え,安心するように声をかけ

てください。

3 ネームゲーム(10分)

・ねらいは,「他者理解」であり,「メンバーの名前を覚えること」,「メンバーのことを少し

でも知り合うこと」であることを簡潔に伝えます。また,生徒のデモンストレーションにより,

やり方を示します(インストラクション)。

・バースデーラインの順番で,グループごとに円になって座ります。まずはじめは,早い生まれ

の人から時計回りにスタートします。やり方は,「○組の太郎です」→「○組の太郎さんの隣

の,○組の花子です」→ というように,前の人の名前に続けて,自分の名前を話していきま

す。記憶ゲームではありませんので,忘れたらその都度名前を教えてもらってかまいません

(エクササイズ)。

・2回目は,好きな果物を自己開示して,同様に名前も加えます。やり方は,「イチゴの好きな

○組の太郎です」→「イチゴの好きな○組の太郎さんの隣の,バナナの好きな○○組の花子で

す」→ となります(エクササイズ)。

<留意点> 「もし,名前を忘れたら,教えてもらっていいですよ」とインストラクション

で伝えておくと,生徒は安心して取り組めます。各グループの様子を見ながら,きちんと

課題ができているのか,見てください。課題と違うようなら,適宜介入して声をかけてく

ださい。

4 ゴジラとゴリラ(10分)

・ねらいは,「グループメンバーとの関係づくり(仲よくなる)」であることを簡潔に伝えます。

また,生徒のデモンストレーションにより,やり方を示します(インストラクション)。

・バースデーラインの並びで,前からペアを作り,二人で向き合って立ちます。お互いが両手を

前に伸ばし,掌をはさみ合うようにして体勢をつくります。一人が「ゴジラ」,もう一人が

「ゴリラ」に役割を決めます。リーダー(教師)が,たとえば,「ゴ,ゴ,ゴジラ」と言えば,

ゴジラ役の生徒がゴリラ役の生徒の手をパチンとはさみます。ゴリラ役の人は,伸ばしていた

両手を上に上げて,はさまれないように逃げます。2回目は「モスラとモグラ」,3回目は

「サケとサメ」です。相手を替えて行います(エクササイズ)。

<留意点> 各グループ,しっかり,ペアになって体制ができているかを見てください。始

める前に,「ゴジラの人,手を挙げて。次はゴリラの人,手を挙げて」と役割を確認する

といいです。

5 グループシェアリング(10分)

・これまで行ったエクササイズ(ジャンケン列車~ゴジラとゴリラ)の体験で,「気づいたこと,

感じたこと」を4人組の中で,自由に話し合います。もし,「楽しかった」と感じたなら,

「なぜ,楽しいと感じたのか?」というところまで話すようにと,説明します(インストラク

ション,シェアリング)。

<留意点> 話題が,エクササイズとは関係ないことで盛り上がっているとしたら,適宜介

入してください。

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(2) 保護者・教師と子どもとの情感のこもったコミュニケーション

保護者も教師も,最近の「むかつく 「いらいらする 「キレそう」などと口にする子ど」 」

もたちにとまどいを感じています。そうなる要因・背景は「欲求不満,耐性欠如」をはじ

め様々であり 「幼い頃から自分の気持ちを,まわりに受け入れられた体験不足」という,

ことも指摘されているところです。

我が子の健やかな成長を願い,家庭での「いやし」と「しつけ」のバランスを考えなが

ら日々子どもに接している保護者は「子育てのプロ」です。その保護者と「教育のプロ」

である教師が互いに協力して,これらの課題に対応することが効果的です。

家庭や学級などで,今どきのこのような子どもたちに,身近な大人がどう向き合えばよ

いのか,その視点を次の事例から考えてみましょう。

出典 大河原美以(2003) 東京学芸大学 教育実践総合センター研究紀要 第27集

〈前半〉 ある小3の男の子は,毎日のように学校で「キレて」トラブルを起こしてい

たが「いつも学校は楽しい」と言っていた。

母は,学校でのトラブルを聞きだして叱ることを止め,一生懸命に毎日「今日はいや

なことなかった?いやなことがあったら,お母さんに教えてね。お母さんはあなたがい

やな気持ちになったら,とても心配だからね」と伝え続けることにした。返事はいつも

「別にない」だった。

母が子どもの不快な気持ちを聴こうと工夫して半年くらいたったころ,ある日「ただ

」 。 。いま と母の顔をみるなり泣き出した 小学校に入学して以来はじめてのことであった

母はこの子を抱きしめることができた。下校途中に友だちとけんかになり,傘で相手の

子をなぐってその子の傘を折ってしまったということであった。

視点1 大人の支援で「感情」を言語化することを学びます

幼児は,遊園地で楽しそうにしているとき大人に「楽しいんだね」と言ってもらうこと

,「 『 』 」 。を通して こんな心身の感覚のときは 楽しい って言うんだ ということを学びます

「怒り」や「不満 「憎しみ」などの感情も同様ですが,ともすれば大人は「うれしい」」,

「楽しい」などポジィティブな感情に目がいきがちです。

大人が見てくれない,見たくない,見ようとしない「感情」は,子どもにとって表情や

言葉などで表しがたく,それが「いつも学校は楽しい」という返事になるのでしょう。.........

視点2 子どもと「つながる」叱り方をします

「人に迷惑をかけなかったか」という大人の心配は分かります。しかし,頻繁に「トラ..

ブルを聞き出して叱る」ということがこの子にとって抑止力となるのでしょうか。この質..........

問に応えた結果,叱られることを,子どもは予想しているかもしれません。

子どもに「心配だからね 「気にかけてるよ」というメッセージを伝え続けて「つなが」......

る」叱り方をすることが重要です。世間体や親が非難されるのではないかなどの大人の都

合を優先させ,子ども中心でない「叱責」は,子どもにとってはただの説教になり,取り

あえず「わかった」という返事で済まされることが多いものです。

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視点3 ネガティブな感情を受け入れ,悪循環を断ち切ります

「キレる」 → 叱 責 → 気持ちを聞いてもらえない → 「キレる」

という悪循環を断ち切ります。大人は 「今日はいやなことなかった?」などと声をか,............

け,子どものポジィティブな感情の他に不快な気持ちやネガティブな感情も知りたいと願

っていることを伝えます。

大人は 「むかつく」など不快な気持ちや 「怒り 「悲しみ」などの感情はだれでもも, , 」

, ,「 」 「 」 , ,つものであることを伝え そして 楽しい ときは 笑顔 になるのと同様に 例えば

「哀しい」ときには「母の顔をみるなり泣き出す」ことを受け入れます。............

視点4 時間をかけてていねいに話を聞いてあげます

「むかつく 「いらいらする」という子どもの気持ちに寄り添って,ていねいに話を聞」

いてあげることが必要です 「いつ?だれに?内容は?」などと聞きながら 「むかつく」。 ,

という気持ちを具体化していく作業が,対処法を考えていくことに結び付きます。

「傘で相手の子をなぐって」しまったとき,例えば 「覚えていない」と言ったら 「そ, ,...........

ういうこともあるよね」と伝え,子どもに安心感を与えてから 「じゃあどこまでだった,

ら覚えてる?」と聞いてみます。きっかけについて 「にらまれた感じ 「ばかにされた気, 」

持ち」など,子どもなりの感じ方や事情が話されたらそれも受け止めます。

また,なぐる前の身体の変化について聞き 「顔が熱くなった 「心臓がドキドキした」, 」...

などのことに気付かせます。そして 「暴力」の前駆段階としての「 ドキドキ』が出た」, 『

ときについて,出てくる状況や程度,その程度に応じた対処法などを考えていきます。

「『 』 」「『 』 」「『 』ドキドキ が出たら数を数えよう イライラ したら深呼吸する 短気は損気

」 , 。を唱える など 子ども自身がやれそうだと考えた対処法を実行できるように支援します

〈後半〉 母は泣きながら事情を話す子どもの様子から「またやってしまった」と罪悪

感で苦しんでいることを感じ取っていた。

以前は,けろっとしてうそをつき,平然とした顔をしていたので,母は必死に叱りつ

けていた。叱られるので,感情を出せないようになっており,悪循環になっていたこと

を母は理解し,後悔した。

母はこの子を心から抱きしめて,一緒に傘を弁償しに行った。

子どもは母に守られていることを実感し,しだいに落ち着きをとりもどしていった。

視点5 苦しんでいる「子ども」に安心感を提供します......

「いらいらして,怒りたい気持ちだったんだね」と感情に触れることと 「人を傘でな,

ぐることはいけません」と叱ることは両立します。大人が子どもの「言いなり」にならな

ければ 「不平・不満」の感情をもっても「わがまま」にはなりません。苦しんでいる子,......

どもの感情を受け入れて,安心感を与えることが必要です。

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時間

怒り

どきどきする(心拍数がふえる)

熱くなる(顔が紅潮する)

呼吸が乱れる(鼻息が荒くなる)

周りが見えない音が聞こえない

爆 発

きっかけ

脱 力・後 悔

落着きを取り戻していく

怒りの爆発と心身の感覚

だんだんわけがわからなくなる

4 兆候が見られる状況への対応(二次対応)

「最近,授業中の子どもたちの言葉遣いが乱暴になってきた」「休み時間などちょっと

したことで言い争いになったり,取っ組み合いになったりしている」などの様子が見られ

たり,教室や廊下などの落書きや破損,ゴミの散乱など環境の悪化が見られたりすること

はないでしょうか。これらは,子どもたちに怒りや不満がたまってきている状態,いわば

「徴候が見られる状況」といえます。また,アンケート調査によると,学校や家庭でキレ

そうになったことが「よくある」「ときどきある」と答えた子どもたちの割合は各校種と

も5割前後となっており,そのうち実際にキレたことがあるのは約2~3割となっていま

す。このことからも,怒りを感じたときに,いかに適切な行動ができるかが大切です。

そこで,ここでは学級や学年,あるいは学校全体など集団を対象とした取り組みとして,

子ども自身が『怒りについて知る』こと,そして『怒りに対処する方法を身に付ける』こ

とについて教師の具体的な支援の仕方を順を追って述べます。

なお,「徴候が見られる状況」については,平成16年度総合教育センター研究紀要『教

育活動全体に機能する生徒指導の在り方』の「生徒指導の黄信号」を参考にしてください。

(1) 怒りについて知る

①怒りについての基本的な確認をする

最初に確認したいのは,私たちには様々な感情があり,同じ出来事や対象に対して

も,人によって感じ方や表し方がちがうということです(資料p44参照)。そして,感

情の一つとして,怒りの感情はだれでももっており,対象や刺激に対して反応するの

は悪いことではなく,むしろ自然であるということです。また,適切な対処の仕方を

身に付けることで,怒りを爆発させることなく(自分も対象も不利益にならずに)処

理したり,コントロールしたりすることが可能になるということです。

②自分が怒ったときの心身の感覚を確認する

自分が怒ったときの心身の感覚を

知ることが,怒りを適切に処理する

ことにつながります。怒りが爆発す

るときには,きっかけとなる対象や

刺激に対して,どのような心身の変

化が起きるのか,左図のように確認

する方法があります。怒りが爆発す

るまでの過程と判断力の欠如は比例

の関係にあり,なるべく早い段階で

怒りに対処することが,コントロー

ルにつながることをおさえます。

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③自分の怒りの特徴に気付く

これまでの経験や現在の状況などから,怒りの対象や刺激,程度や状況,表出方法な

ど,自分の怒りの特徴について知ることが大切です。ここでは,参考例として「怒りの

温度計」「相手による自分のタイプの変化」を取り上げます。

「怒りの温度計」とは,自分の怒りの程度や表出方法について温度を目安にして考え

るもので,それぞれの場面を具体的に思い起こすことで,自分の怒りの特徴について気

付くものです。また,「相手による自分のタイプの変化」は,対象によって態度や怒り

の程度,表出が異なることに目を向けることで,不満やストレスは,他との関係性から

生じていることに気付くものです。これらは,言葉を言い換えるなどして,子どもの発

達段階に応じた対応が可能です。

これらの取り組みから,相手によって自分の感じ方や反応の仕方が異なることを知り,

どのようにしたら怒りの爆発を防ぐことができるのかを考え,その適切な表現方法を身

に付けることに結び付けていきます。

怒 り の 温 度 計

〔小 学 校 高 学 年 ~ 中 学 生 向 け :例 〕

4 0 ℃ ~ 6 0 ℃ ~ 8 0 ℃ ~ 1 0 0 ℃

め や すお 風 呂

〈 状 態 〉

リ ラ ッ ク スで き る

ふ つ う

怒 っ て い な い

適 温 の お 茶

〈 状 態 〉

様 子 を 把 握し て 飲 め る

少 し

怒 っ て い る

熱 い お 茶

〈 状 態 〉

冷 ま さ な い とい け な い

怒 っ て い る

沸 騰〈 状 態 〉

ぐ つ ぐ つ煮 え た ぎ る

と て も

怒 っ て い る

自 分 の 場 合

こ ん な と き

こ の く ら い怒 る

自 分 の表 現 方 法

感 情

〔小 学 校 中 学 年 向 け :例 〕

ふ つ う

少 しお こっ て い る

お こっ てい る

1 0 ℃

5 0 ℃

4 0 ℃

3 0 ℃

2 0 ℃

1 0 0 ℃

9 0 ℃

8 0 ℃

7 0 ℃

6 0 ℃

と て も おこ っ て い る

あ て は ま る 場面 を 書き ま し ょ う

少 し お こっ て い る

カ ー ド を 返 して く れな い

宿 題 を 忘れ て 、 先

生 に し から れ た と

ふ て く され て 、 八

つ 当 た り

母 さ ん か ら携 帯 メ ー ル

を 勝 手 に みら れ た と き

反 抗 的 態度 、 物 に

あ た る

友 だ ち とテ レ ビ の

こ と が 、話 題 に な

っ た と き

お だ や かに 話 す

※ 太 字 は 子 ど も の 記 入 例 本 田 ( 2 0 0 2)よ り 一 部 引 用

相 手 に よ る 自 分 の タ イ プ の 変 化

自 分 の タ イ プ 内 容相 手( 温 度 )

サ メ 相 手 を 言 葉 や 腕 力 で 負 か し て 我 を 通 す

カ メ

き つ ね

テ デ ィベ ア

ふ く ろ う

首 を 引 っ 込 め て か か わ ろ う と し な い

合 意 し な く て も , 妥 協 し て し ま う

自 己 主 張 も す る が 、 相 手 の 言 い 分 も 聞 いて 互 い に 納 得 で き る 解 決 策 が と れ る

自 己 主 張 し な い で 、 相 手 に 合 わ せ る だ け

相 手( 温 度 )

弟(3 0 ℃ )

母(6 0 ℃ )

後 輩 A(3 3 ℃ )

学 級 担 任(5 0 ℃ )

父(8 0 ℃ )

部 活 顧 問(1 0 ℃ )

親 友 B(4 0 ℃ )

※ 太 字 は 子 ど も の 記 入 例 本 田 ( 2 0 0 2 ) よ り 一 部 引 用

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自己会話についてのロールプレイング(小学校中学年の例)

2人1組になって次のような場面を設定します。

自分が新しく買ったゲームに熱中しているところに弟がやってきて、しつこく一緒に遊ぼうと誘う。

(いつもは「うるさい」「あっちへ行け」と追い返している。その結果、弟は母親に訴え、自分は母から叱られるということが繰り返されている)

弟 「ねぇ、お兄ちゃん、遊ぼうよ」「いいでしょう、ね、遊ぼうよ。いいでしょう」(しつこくいわれて、イライラしてきました。)

○落ち着くための自己会話「落ち着いて」「リラックスして」「大丈夫」○(落ち着いたら)提案を考える

自分 「もう少ししたら遊んであげるよ」

「わかった。でも10分だけだよ」

ぐっとこらえて、自分に語りかけます

提案例1

提案例2

(2) 怒りに対処する方法を身に付ける

①深呼吸

怒りや不満などで,自分自身をコントロールできなくなるときには心拍数が増加して

います。そこで,ゆっくりと深呼吸をすることで心拍数を下げ,落ち着きを取り戻す方

法があります。これは,対象に対して怒りを感じたら,できるだけ早い段階で実施する

とより有効です。また,手軽にできるので,年齢や発達段階を問わずに活用できます。

☆ 静かにゆっくりと深呼吸するように心がけます

例1 吸う(1・2・3で)

鼻から吸います。肩とみぞおちの力を抜き,ゆっ↓たりとへその下に息を入れてふくらませる感じで。

2 止める(4・5で)

のどで息を詰めるのではなく,腹に息をためて保↓つ感じ。「腹におさめる」イメージで。

3 吐く(6・7・8・9・10で)

少しずつ,口からゆっくりと吐き出すようにします。

※ 気持ちが落ち着くまで,繰り返します。やり方について細かく指導するのでは

なく,深呼吸していること自体を認め,励ます教師の姿勢が大切です。

②自己会話

怒っているときには,それをエスカレートさせる言葉を頭の中で繰り返しています。

例えば「バカにして」や「このやろう」などです。こうした言葉に注目して自分の特

徴に気付かせるとともに,反対に怒りが収まるときの言葉を探させます。例えば「怒

っていてもしようがない」「もういいやあ」などです。これらの言葉が実感や体験か

ら思いつくときは,その言葉を心の中でつぶやきます。もし思いつかないときには,

怒りを鎮めるための適切な言葉を探し,自分自身に語りかけることで,気持ちを落ち

着かせます。自分の考えた言葉が実際の生活で使えるかどうかは,葛藤場面を設定し

たロールプレイングによって確認できます。

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「事実は・・・」「感じたことは・・・」「お願いは・・・」「結果は・・・」

1 出来事についての事実を言う

時間置け法(DESC法)とはD=Describe 描写するE=Express 表現するS=Specify 提案する

C=Choose 選択する

かん

2 その事実について自分が感じていることを言う

3 相手にしてほしいことをお願いする

4 お願いした結果はどうなるかを言う

1から4までのことを、順にまとめる。

「自分(私)」を主語にして、相手に伝える。

怒りを適切に伝えるために…

③「時間置け法(DESC法)」

怒りがこみ上げてきたとき,その感情を

自分の言葉で相手へ適切に伝えることがで

きれば,トラブルに至らず,互いの関係が

悪化することはありません。そうした自己

主張の仕方は,アサーション・トレーニン

グとして知られています。ここではその手

法を生かした「時間置け法(DESC法)」

について紹介します。

これは,『じ…事実について言う』『か

ん…感じていることを言う』『お…(相手

に対して)お願いする』『け…結果がどう

なるかを言う』の順番で自分の気持ちを相

手へ伝える方法で,D‥describe(描写す

る),E‥express(表現する),S‥sp-

-ecify(提案する),C‥choose(選択す

る)から,「DESC法」といわれていま

す。ここでは,怒ったときに時間を置くこ

との有効性や子どもたちの意識のしやすさ

から「時間置け法」とします。

この方法では,自分の気持ちや考えを,

「私」を主語にする「アイメッセージ」で

伝えます。したがって,直接相手を批判す

ることなく,また,判断を相手にゆだねる

ので,互いに協調,協力していこうとする

姿勢につながります。このことは,平成16

年度総合教育センター研究紀要p35に「勇

気づけの言葉かけとアイメッセージ」とし

ていますので,参考にしてください。

さて,「時間置け法」を実際に活用する

ためには,まず葛藤場面を設定し,四つの

順番にしたがって,自分の気持ちや考えを

言葉に換えていくこと,それをまとめて相

手に伝えることをロールプレイングしま

す。そして,繰り返し練習することによっ

て,「じかんおけ」を意識した言い方に慣

れれば,実際の生活場面に役立てることが

可能となります。

給食の準備時間に当番のAとBがもりつけ係りの仕事をしないで、話している。

準備がすすまないので、私は同じ当番として、いらいらしているが、

どう言ったらいいか困っている。

1 設定場面

ロールプレイング:小学校高学年向け例

3人1組で行います

2 じかんおけをそれぞれ考え、整理する

じ:事実

かん:感じ

お:お願い

け:結果

給食当番の仕事をしないで、二人で話している

このままでは、いつ終わるか分からないので、困っている

もりつけの仕事をしてほしい

はやく給食の準備ができて、ゆっくり食べられる

の順に言葉をならべる

3 相手に伝える

じ かん お け

「あなたたちが、もりつけの仕事をしないで話していると、私はいつ終わるか分からないので、困っているんだ。もりつけの仕事をしようよ。そうすれば、はやく給食の準備ができて、ゆっくり食べられるよ。」

自分を主語にして相手に伝える(アイメッセージで)

4 ふりかえる

うまくいえたかどうか、相手に伝わったかどうかをふりかえり、役割を交代する

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5 直接対応や個別の対応(三次対応)

(1) 直接対応

これまで兆候が見られる状況への対応(二次対応)を紹介してきましたが,実際に「キ

レて しまった場合はどう対応したらよいのでしょうか ここでは 事例を取り上げ キ」 。 , ,「

レて」しまった子どもへの適切な対応を考えていきましょう。

①直接対応に当たって

下の事例は,中学2年生の拓也君が 「下級生を足蹴りしている」ところに遭遇し,

た教師の二つの対応例です。教師の考えや発言などを比べながら具体的な対応につい

て考えてみましょう。(アは二人の先生の考えていること,イ以降は実際の発言です)

長州先生の対応 香取先生の対応

長州先生の対応の意味するもの 香取先生の対応の意味するもの

拓也君は,長州先生に対しては反抗的な態度をとり,勉強道具を床にたたきつけま

したが,香取先生の話は素直に受け入れ,指示に従って理科準備室に向かいました。

この事例でも明らかなように,

教師の働きかけの仕方によって,子どもの怒りが増幅したり鎮まったりする

ということが言えます。

ア.ん、上級生が下級生を

いじめているぞ。暴力は絶対に悪い。

体をはって止めなければ。生徒は、教師に注意さ

れたらすぐ反省すべきだ。

イ.「これは、暴力だ。あやまりなさい。

下級生の手本になるべきなのに。

恥ずかしくないのか。」

ウ.(長州先生をギリッとにらみ、その場を去ろうとした拓也に)

反省の色がまったくない。おい、ちゃんと聞いているのか?

どこのクラスだ?

ア.「きちんとしている我々とルールを

守らない悪いやつら」という線引き

ウ.にらむなどの挑発行為に反応する。その場を逃れようとした拓也を引き止め、正面に立ちふさがる。パーソナル・スペース(安全圏)の侵害

イ.感情的で、威圧的

いきなり正論をぶつけることで興奮させる

ア. 拓也が下級生にあたるのは、たいてい父親から厳しくしかられたときだ。

足蹴りをしたあとはしばらく教室に入らな

いぞ

イ.「これは、暴力だぞ拓也君。どうやら、いやなことがあったようだ

が、 大丈夫か?」

ウ.(1年生に)「君、痛かったろう。けがはないか?念のため保健室で

みてもらっておこうかな。」

エ.(拓也の荒い息が収まってきたのを見計らって)

「拓也君、落ち着いたら、事情を聞きたいんだが、理科準備室まで

一緒に来られるか?」

ア.生徒の家庭環境や

これまでの問題行動の経過をよく知っている。

始めから「悪いヤツ」という目で見ていない。

イ. オープンエンドの質問をして、相手に猶予を与えるとともにこちらが事情をわかろうとしている

姿勢を伝える。

ウ.

対立する2人を分ける。下級生のけがへの配慮

エ.状況を把握した上で、ギャラリーから遠ざける。また、何のために個室に行くのかを説明し、短く、明確に指示を出す。

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②直接対応時の留意点

それでは,直接対応するときには具体的にどのような教師の働きかけに留意すべき

なのでしょうか。二人の先生の対応例からいくつかの留意点をあげてみましょう。

日常のかかわり合いの中にも,子どもの暴力を誘発する働きかけがあります。

本田(2002)より「教師が,子どもに暴力を引き起こさせる危険性の高い行為,低い行為」

危険性の高い行為 危険性の低い行為

子どもと教師 きちんとしている我々とルールを守 子どもが親しみやすく,相互にの関係 らない悪いやつという2極化の見方 信頼し,尊重している関係

問題行動への 問題行動に対して場当たり的,消極 堂々と公平に相手を尊重する対対応 的,ヒステリックな対応 応

校内体制 校内の協力体制がない状態 校内のバックアップ体制の整備と現実的機能

現場に遭遇(到着)したときには・・・・・・

○ 子どものパーソナル・スペース(個人空間)を尊重する

・興奮している子どもからは,1メートルくらい離れて立つようにします。

○ 自分の姿勢や立ち位置に注意する

・興奮している子どもの正面に立つと,攻撃的だと感じさせ,本能的に相手と「戦う」

あるいは相手から「逃げる」のどちらかを選択させることになりがちです。また,

腕を組んだり,腰に手を当てたりすることも,相手を威嚇することになります。

○ 子どもにとって脅威とならないような非言語的行動を心がける

・興奮するほどに相手の声が聞こえなくなります。しぐさ,表情,声のトーンなど

非言語の部分を大切にしてメッセージを伝えていきます。

○ 明確に,短く指示する

, , 。・言葉で伝えたいことは 毅然とした態度で はっきりと短く伝えるようにします

子どもと会話するときには・・・・・・

○ 決めつけない

・すぐに善悪の判断をしたり,説教で諭そうとすると,心が離れていきます。

○ 事実だけでなく気持ちに注目する

・行為について指導するのは勿論ですが,その理由や背景となっていること,そう

せざるを得ない状況などの内面の部分に注目します。

○ 語った内容を確認する

・子どもの話を適度に「繰り返す」ことによって,聴いてもらっているという安心

感と,さらに伝えたいと思う気持ちが強くなります。

○ 挑発的な質問は無視する

・ 売り言葉に買い言葉」とならないように気をつけます。「

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(2) 個別の対応

①「キレる」子どもは,困っている

「キレる」子どもに日々かかわりあ

っている教師やクラスメートの中には

「人に迷惑をかける子ども 「反抗的」

な子ども 「扱いにくい子ども」など」

と決めつけている場合があります。

実際に,そのような行為に及ぶこと

もありますが 「キレる」子どもが,,

そういった行為に至るには,何か原因

があるはずです。例えば 「いじめら,

れている 「心が傷ついている 「そう」 」

せざるを得ない家庭環境がある 「自」

分が認められない焦燥感がある」などです。

アンケートの結果でも,実際にキレた子どもたちにどのような援助を望んでいるか

という設問に対して 「相談にのって欲しい 「励まして欲しい」と答えている割合, 」

が高くなっています。

キレることによって一番困っているのは,その子ども自身です。内面を正しく理解

し,援助しようという心構えをもつことが,対応の第一歩となります。

②行動変容のチャンス

アンケート調査の「キレてしまった自分をどう思うか」という設問に対して 「後,

悔している」と答えた割合がもっとも多くなっています。自由記述欄には「何とかし

たい 「変わりたい」という記述も見られました。今までのやり方では,どうにもな」

らないことに自分でも気付き始めています。これは,行動変容のチャンスと受け取る

ことができます。

また,一方で「キレる」子どもたちは 「助けを求めること」や「自分の気持ちを,

理解すること」が苦手で,自分一人で変わろうとするのが困難だと言われています。

そこで,教師の適切な働きかけが必要になります。

③怒りの言語化と対処法の確認

「キレる」子どもへの働きかけは,教師がじっくりと子どもの話を聴く中で,本人

の怒りを言語化する援助が中心となります。そして,怒りについて知ったり,怒りに

対応する方法を身に付けることが大切です 一つの例として 問題となった行為を 怒。 , 「

りのログ(記録 」で振り返り 「日常のストレス 「きっかけ 「起こした行動」及) , 」 」

び「自分・相手に生じたこと」を客観視させる方法があります(表1 。)

この他にも「損得勘定法(図1 」や「4 徴候が見られる状況への対応(二次対)

応 」で取り上げた,集団への取り組み( 怒りの温度計 「深呼吸 「自己会話」な) 「 」 」

ど)が個別の対応でも有効です。

キレやすい子どもをどう見るか

心が傷ついているのではないかいじめられているのではないか

そうせざるを得ない背景(家庭環境など)や自分が認められていない焦燥感が

あるのではないか

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表1 『怒りのログ(記録 』を使って,怒りを言語化する援助(例))

最近感じてい 「怒り」を表出 「怒り」を表出 その瞬間 起こした行 「怒り」を表出した後で自

るストレス するすぐ前の状 したときのきっ の怒りの 動 分に生じたこと,相手に生

況 かけ レベル じたこと

0-100 -10(悪いこと)~+10( )

(よいこと)以内で評価

[自分] [相手]・勉強がわからな ・朝から眠くてたま ・担任から大きな声 80 「るっせーんだ

い らない で「まだぐずぐずし 胸のあたりが よ!」と机をひ -8 担任 -5

・親から学校には ・次は生徒指導主事 ているのか」と言わ むらむらとし っくり返して, ・生徒指導担 ・指導力を生

行けと言われる の授業だから寝て れた てきた(そん 机を手当たり 当から叱られ 徒指導担当

・教師からいつも いると絶対に何か ・友人は「ムダ!こい なでかい声 次第に蹴って る から注意さ

注意されている 言われる つにつける薬はな で言う必要 いった ・母親からヒス れるから

・教室を移動したく い」と言った はないだろ テリックに怒 友人0

なくてぼうとしてい ・周囲でバカにした う) 鳴られる 関係ない

た ように笑った

本田(2002)より※ 太字は子どもの記入例

図1 損得勘定法(例)〈損得勘定法〉

怒りを爆発させることを繰り返す子ども

は,その表出過程において,独自の思考や

行動のパターンがあります。そして,本人

なりの解決策として,いつも同じことを繰

り返し,結果的に自分の不利益になってい

ます。

そこで,教師がいつもの思考と行動パタ

ーンを聞いてやり,本人の気持ちを100%

受け入れます。そして,結果的に自分の不

利益になっていることに気付かせます。子

どもが教師を味方だと感じて「自分が損を

しないように,何とかしたい」という思い

を引き出したらば,これまでとはちがう行

動や解決策がないかを,できる限りたくさ

ん考えさせます。そのうち,自分の不利益

にならないものやできそうなことを,教師

と一緒に考え,有効性を検討します。そし

て,取り上げた解決策について,教師とと

もにロールプレイしながら,より有効な対

処方法を見つけていきます。

でも、君は悪くないのに、損してるよな~・・・他にいい方法ないのかなぁ~

その結果

そうか~、気持ちは十分わかる(100%受容)

本人の解決策

我慢できないこと

我慢できないこと

どれが得?どれならできそう?

本人の解決策

Aの解決策

その結果 Aの結果

Bの解決策

Bの結果

たたく

おこられる

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6 総合教育センター等との連携

いわゆる「キレる」子どもの対応に当たって,内容によっては,学校が他機関と連携し

て対応する必要がある場合もあります。次の二つの事例は,学校と総合教育センターが連

携して対応したものです。

(1) 事例から~担当者との交流,感情や行動の言語化,担任から保護者へ伝えた内容

① 相談時の状況

A男は高校生。身体が大きく力もあるが,普段は無口で同級生との交流は少ない。

周りからちょっかいを出されると,怒って相手に対して暴力をふるうことが多い。

学校から対応について連携の依頼があり,来所することとなった。

② 対応

総合教育センターでは,母親との面談とA男との面談のために2人の相談担当者が

対応した。

母からは,本人のこれまでの生育歴等を中心に話を聞いた。小さい頃から周囲との

トラブルが絶えなかったが,母は厳しくしつけてきたとのことであった。相談担当者

と本人はテレビゲーム等を介して徐々に交流を深めていった。その中から,本人もト

ラブルが起きる状況を変えたいと思っていることがわかった。

○ 本人への対応

・問題行動を振り返り,きっかけ,取った行動,自分や相手に生じたプラスやマイ

ナスを冷静に考えさせ,言葉で表現させた。

・本当はどうなりたいかを,本人に確認した。高校生活を続けて卒業したいとの思

いを話してくれた。

・怒りの感情が発生したときに,本人にとって実行可能な行動は何かを一緒に考え

た。本人の場合は,その場を離れる,「止めろ」と大きな声で言うなどであった。

・実際の場面で実行できるようにロールプレイングをした。

○ 保護者への対応

保護者の気持ちをじっくり聴くことを中心に対応した。その中で,本人の行動で

うまくいっている点や,できている点を確認した。また,保護者が本人の怒りや不

安,不満などの気持ちを聴いてあげることが大切であると伝えた。

○ 学校との連携・対応

本人が周囲との関係で我慢できなくなったときは,別室(保健室や相談室)に行

ってもよいことを認めた(担任等に連絡して)。

担任は保護者に,本人が学校でうまくやれている点などを中心に伝えた。

③ A男の変化

同級生とのトラブルが無くなったわけではないが,徐々に少なくなってきた。

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(2) 事例から~活躍の場,役割分担,子どもとの再契約

① 相談時の状況

中学校の同級生3人。担任に対して暴言や授業妨害などを繰り返す。本人たちは学

校の強い勧めで総合教育センターに来所した。

② 対応

本人たちの話を聞き,学校へ以下の内容などのアドバイスをし,できることから取

り組んではどうかと伝えた。

・ルールを守れない場合,その後の対応を本人,保護者に周知する

([例]学年副主任と一緒に反省文を書く→スクールカウンセラーと相談する→

相談機関へ行って……)

・活躍の場を与える (部活動,3年生を送る会,行事…)

・役割分担して指導・援助に当たる(Aさん担当,Bさん担当,Cさん担当)

・生徒とスクラムを組み,健全な世論を作り出す (生徒会によるポスター…)

・生徒会役員や先輩に事情を話して,協力をあおぐ

(生徒会役員や部活の先輩が,本人たちの話の聞き役になり,助言を行う)

・他の教師の力を借りながら,担任と子どもの再契約(下記参照)を進める

河村茂雄の再契約理論

* 状況によっては,以下のことを学年主任などに同席してもらいながら進めま

す。ただし,叱責などせず,記録をとってもらうなどの役に徹してもらいます。

1 学級の状況について,教師の率直な感情を話す

「何かクラスがバラバラな感じがして,先生はとっても残念です」

2 学級の状態の現在地を子どもと話し合う

「みんなはどう感じているか,思っていることを教えてくれますか」

3 今後をどうするかを伝える

「先生とみんなが無理なく取り組めることを考えましょう」

4 教師に対する注文を聞く

「先生のどんなところを直してほしいか教えてもらえませんか」

5 子どもに対する要望を伝える

「先生や友だちが話しているときは,途中で冷やかしたりしない」

6 教師と子どもが互いに守るルールを確認し,契約する 河村(1998)より

③ 生徒の変化

部活動や係活動など,授業以外で活躍の場ができ,生活態度が徐々に落ち着いてい

った。進級してからは問題はなくなった。

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(3) 他機関との連携

学校や家庭における通常の指導では改善に時間がかかる場合や,立ち直り支援としてよ

り多様な対応が必要な場合,学校は,地域の身近な関係機関と連携するほか,教育委員会

等を通じて,より専門性の高い機関に協力を求めることが適切です。

また,保護者によっては身近な人の訪問を敬遠する場合もあり,教職員だけでは対応に

苦慮することもあります。このような場合にも,学校としては,問題行動の初期段階から

状況を把握し,関係機関や地域の身近な人材を活用して情報交換や検討を行うことが有効

であると考えます。ただし,情報交換については,プライバシーや個人情報保護の観点か

ら,情報の範囲,窓口等を明確にし,学校として組織的に対応することが求められます。

学校では,実際に連携が考えられる関係機関に担当教師が出向き,その役割や業務内容

等の理解を深めることなどにより,相互の信頼関係の醸成につながり,綿密な連携が可能

となります。下に,秋田県の児童相談所と警察署の業務等の概要を示しました。

①児童相談所

○18歳未満の子どもに関する相談を,本人・家族・学校の先生・地域の方々から受け,問題をともに考

え,解決に導く専門の相談機関です。秋田県では,次の3か所に設置されています。

秋田県中央児童相談所 電話番号018-862-7311

担当地区:秋田市,男鹿市,潟上市,由利本荘市,にかほ市,南秋田郡

秋田県北児童相談所 電話番号0186-52-3956

担当地区:鹿角市,大館市,北秋田市,能代市,鹿角郡,北秋田郡,山本郡

秋田県南児童相談所 電話番号0182-32-0500

担当地区:仙北市,大仙市,横手市,湯沢市,仙北郡,平鹿郡,雄勝郡

②警察署(警察官)

○少年非行や犯罪被害に関する相談活動を行います。

○非行少年の検挙・補導,不良行為少年への注意・助言・指導等を行います。

少年サポートセンター

各警察署には,少年サポートセンターが設置されています。

専門の相談員が少年に関する悩みごとや困りごとの相談を,電話・FAX・来室により受け付

け,問題解決と少年非行防止を図っています。

今回の教員へのアンケート

調査で,児童相談所と警察を 児童相談所:小学校4.8% 中学校51.4% 高等学校 0%

効果的な連携先と回答した割 警 察 :小学校4.8% 中学校11.4% 高等学校31.6%

合は,右の通りでした。

高等学校では,効果的な連携先として児童相談所を回答していませんが,児童福祉士や

臨床心理士などの専門スタッフが相談に応じています。保護者の協力がうまく得られなか

ったり,専門的な相談が必要となる場合もあり,高等学校でも身近な機関として県内3か

所にある児童相談所を視野に入れておく必要があるものと考えます。

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Ⅴ 成果と課題

1 成果

怒り,不満などをコントロールできずに不適切な行動をする子ども,いわゆる「キレ

る」子どもに関わる全国的な状況と国の施策や取り組み,研究状況を整理してまとめまし

た。研究状況から,子どもは突然「キレる」わけではなく,事前に発しているサインをキ

ャッチし,気持ちや置かれている状況を理解し対応していくことの必要性が示されていま

す。

小・中・高等学校の児童生徒や教員に対する調査結果の分析から,「キレそうになる原

因」は校種が上がるほど友だちの割合が減少する一方,先生の割合が増加するなどの傾向

や,「キレなくなるためには」友だちの応援と先生の支援,教育相談的かかわりが重要で

あることを明らかにしました。また,教員の校種による連携の意識を明らかにしました。

高等学校における児童相談所との連携の低さ,警察との連携の高さが特徴的でした。

さらに,「キレてしまった自分を何とも感じない」や「キレなくなるためには,まわり

からどんなことをしても無理」と回答したグループは,他の児童生徒と比べて,学校,家

庭でキレそうになる割合が高いことなどがわかりました。

子どもが自分の感情を理解し,相手に適切な表現方法で伝えることができること,葛藤

を自ら解決できる力をはぐくむことで「キレなくなる」ことが可能です。そのための指導

・援助の方策を示しました。全体に対する予防・未然防止,徴候が見られる状況への対応,

直接対応や個別の対応にわけて,視点や具体的な取り組みを示しました。

2 課題

先行研究を基に提案した取り組みを学校が実際に「キレる」子どもの対応に活用して,

実際の有効性を検証する必要があります。

この研究では,具体的な取り組みをいくつか提案しましたが,学校では多くの実践が行

われています。研修講座等を活用して,学校の実践を収集し,有効な取り組みを広く紹介

していくことも重要です。

いわゆる「キレる」子どもに関わる全国的な状況や施策,研究状況のまとめ

「キレる」ことに関しての児童生徒や教員の,実態や意識の解明

子どもが「キレなくなる」ための指導・援助の提示

提案した取り組みの,学校での有効性の検証

学校の実践事例の収集

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ななちゃん,どうしたの?参考資料

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かきかたのれい :

いかりの温度計 (小学校中学年向け)

のあいているところに、あてはまる場面を書いて ください。

少 しさび し |ひるやすみに ドッジボールに入れて

い |も らえなかったとき 、

とてもおこ

っている

おこってい

少 しお こっ

ている

ふつう

100℃

90℃

80℃

70℃

60℃

50℃

40℃

30℃

20℃

10℃

- 4 5 -

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)怒りの温度計(小学校高学年~中学生向けいか

あなたは、どのような場面で、どのような怒りを感じますか。どの程度なら気にならずにすみますか。自分のことを思い出して次の表に記入しましょう。

40℃ ~60℃ ~80℃ ~100℃

お風呂 適温のお茶 熱いお茶 沸騰めやすふっとう

〔状態〕 〔状態〕 〔状態〕 〔状態〕状 態リラックスできる 様子を把握して飲め 冷まさないといけな ぐつぐつ煮えたぎる

る い

〔感情〕 〔感情〕 〔感情〕 〔感情〕感 情ふつう 少し怒っている 怒っている とても怒っている

怒っていない

自分の場合

こんなときこのくらい怒る

自分の表現方法

--

46

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怒りの温度計 応用編(高校生向け)

あなたが、次の人たちに対してこの一週間(今日)に感じている温度を棒グラフにしてください。

感情の温度 0℃ 5~15℃ ~40℃ ~60℃ ~80℃ ~100℃

温度を決める時 フリーズ: 冬・冷蔵庫: お風呂: 適温の飲み物: 熱いお茶: 沸騰:の基準 感情が動かない 少し・緊張 その人と一緒に 何かの出来事・ 冷まさないで飲 ぐつぐつ煮えたぎ

感じ 少し肌寒い感じ いるとゆったり 言 わ れ た こ と み込むとやけど っている感じつかっていてリ を、冷まさずに するラックスできる 飲み込むにはぎ

りぎりの温度

例:養護教諭

母親

家 父親

族 兄・姉

弟・妹

担任

学 教科の先生校生 級友活ク 友人ラブ 先輩

注)複数いる場合は、気になっている人の順に数名を選んで書いてください。

--

47

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相手による自分のタイプの変化

1 この一週間で,あなたは周囲の人に対して,次の表にある五つのタイプのうち,どのように接しましたか。それぞれあげてみましょう。また,そのときの怒りの温度は何度くらいでしたか,記入してみましょう。

自分のタイプ タ イ プ の 内 容 相手(温度) 相手(温度)

( ℃) ( ℃)サ メ 相手を言葉や腕力で負かして自分の我を通す

( ℃) ( ℃)カ メ 首を引っこめて,かかわろうとしない

( ℃) ( ℃)きつね 合意しなくとも,妥協してしまう

( ℃) ( ℃)テディベア 自己主張しないで,相手に合わせるだけ

自己主張もするが,相手の言い分も聞いて互いに( ℃) ( ℃)ふくろう 納得できる解決策がとれる

2 上の表を見て,自分は相手によって態度をどのように変えているのか,気付いたことを書きましょう。

--

48

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--

49

「怒りのログ」

「怒り」を表出し最近感じてい 「怒り」を表 「怒り」を表 その瞬間の怒 起こした行動 怒りの産物

た後で自分に生じたこと、相手にるストレス 出するすぐ前の 出したときのき り(感情)のレ

生じたこと状況 っかけ・引き金 ベル(0-100)

-10(悪いこと)~+10 (よいことなる考え

と)以内で評価

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- 50 -

参考資料の活用について

[ ななちゃん,どうしたの? ]

○ 小学校低学年~中学年の活用例

・ ①~⑮のどれかを提示して,「最近こんな顔になったときはないか」とたずね,ど

んなときだったかを考えさせる。

・ 意見を出し合い,同じ顔でも人によって感じ方や気持ちがちがうことに気付かせる。

・ その他のいくつかについて,同様に話し合い,いろいろな気持ちがあることに気付

かせる。

○ 小学校高学年~の活用例

・ ①~⑮がどんなときの顔かを考え,話し合わせる。

・ 人にはいろいろな感情があり,感じ方や表現方法も様々であることに気付かせる。

※ ①~⑮の気持ちの例

①「うれしい,幸せ!」

②「頭にきた」「ムカつく」

③「私の夢は・・・」「照れちゃうな。恥ずかしい」

④「ふん!腹が立つ」「失礼しちゃう,プン」

⑤「何だろう?」「え?それってどういう意味?」

⑥「痛い-」「私もディズニーランドにいきたいのに~。」

⑦「せっかくがんばったのに」「忘れ物しちゃった,どうしよう・・・」

⑧「びっくり!」「大変だ!」

⑨「してやったり・・・作戦成功」

⑩「悲しい・・・」「かわいそう」

⑪「あの人,かっこいい」「優越感」

⑫「どうしてよ!くやしい」「それはないでしょ!」

⑬「どうしよう,困っちゃった」「まいったな」

⑭「何やってんの?バカみたい」「やったーテスト100点!」

⑮「感動!」「何て親切な人なの・・・」

[ 怒りの温度計 ]

○ 活用の留意点

・ 資料は,小学校中学年,小学校高学年~中学生,高校生向けと3種類ありますが,

校種にこだわらず,それぞれ実態や状況に応じて使用することができます。

・ 目安となる温度とその時の状態や感情を例をあげて示してやると,子どもたちが考

えやすくなります。

(例)

① 40℃は,お風呂に入っていて、とても気持ちがいい状態。リラックスできて

いる状態で,怒りの感情はわいてきていません。ふつうの気持ちです。

② ①のような状況を自分にあてはめてみると,学校で友だちと昨日のテレビのこ

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とを話しているようなときで,相手に対して自分はふつうに,おだやかに話をし

ています。

・ 自分が「だれに対して」「何を」「どのくらい」怒っているのかに気付かせるよう

にして,対処方法を考えるきっかけにします。

[ 相手による自分のタイプの変化 ]

○ 活用の留意点

・ 5つのタイプについては,おおよそ次のようにとらえます。発達段階に応じて,子

どもたちがわかりやすいように伝えます。

① サ メ → 自己主張

② カ メ → 無関心

③ きつね → 妥協

④ テディベア → 服従

⑤ ふくろう → アサーティブ(理想的コミュニケーション)

・ 5つのタイプの紹介をするとともに,私たちは知らず知らず相手によって態度を変

えていることがあり,だれでもそうであること,決して悪いことではないことを押さ

えます。

・ 自分の感じ方や反応の仕方が相手によって異なることを知り,実際の対処の際に,

適切な表現方法を身に付けようとする意欲につなげます。

[ 怒りのログ ]

○ 活用の留意点

・ 教師が個別に支援しながら,それぞれの項目について,子どもに考えさせます。

(怒りの不適切な表現方法,程度,対象などを傾聴するように心がけ,言語化させ

るように努めます。)

・ 自分の誤った表現方法に気付かせるために,あくまで,子どもが覚えている範囲で,

子ども自身の言葉で記入させるようにします。

(例)

「最近感じているストレス」

・ 勉強がわからない

・ 親から学校に行けといわれる

・ 教師からいつも注意される

・ 「このままではいけない」「この状態を変えたい」という気持ちに気付かせること

が大切です。そして,適切に処理する方法を教師と一緒に考えていきます。

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資 料

1 調査結果データ〔児童生徒〕

(1) 小学校

児童生徒の生活に関するアンケート調査(児童生徒用)

[回答者数:5,6年生109名]

その他:怒りを抑えている,態度に出る(無視等) その他:兄,姉

学校ではキレない,そのときの内容による など

その他:ちょっとバカだと思うその他:おこる,無視した,ねる,いらいらしている,泣く など

その他:自分(3人 ,わからない(2人 ,必要ない など その他:何もしない,わかんない など) )

QⅡ-2 キレそうになったのは,誰のせいだと思いますか。                         (回答は2つまで)

22 .0%

6 .4%

50 .5%

27 .5%

21 .1%

21 .1%

1 .8%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

自分

先生

友だち

家族

わからない

その他

QⅠ-1 あなたは学校でキレそう(怒りが爆発しそう)になったことが     ありますか。(回答は1つ)

17.4%

35.8%

31.2%

15.6%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40%

よくある

ときどきある

ほとんどない

まったくない

QⅠ-2 あなたは家庭でキレそう(怒りが爆発しそう)になったことが     ありますか。(回答は1つ)

12.8%

37.6%

38.5%

10.1%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45%

よくある

ときどきある

ほとんどない

まったくない

QⅡ-1 キレそうになったとき,実際にキレてしっまたときがありますか。             (回答は1つ)

12.8%

39.4%

28.4%

6.4%

5.5%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45%

1回もない

大体がまん

半分がまん

すぐにキレる

その他

QⅢ-1 キレてしまったとき,どんな行動をすることが多いですか。

30.3%

38.4%

15.1%

18.6%

2.3%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45%

暴力・悪口

物にあたる

授業のじゃま

わからない

その他

QⅢ-2 キレてしまった自分をどう思いますか。(回答は2つまで)

26.7%

17.5%

53.5%

17.5%

1.1%

23.2%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

しかたがない

自分は悪くない

自分はダメな人間だ

後悔する

何とも感じない

その他

QⅢ-3 あなたがキレなくなるためには,誰の応援が必要だと

     思いますか。(回答は2つまで)

24.5%

64.0%

11.7%

5.8%

12.8%

45.4%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70%

先生

友達

家族

先輩

その他

QⅢ-4 あなたがキレな くなるためには,まわりからのどのような内容      の応援が必要だと思いますか。(回答は1つ)

5 .8 %

1 0 .5 %

4 0 .7 %

7 .0 %

7 .0 %

3 4 .9 %

0 % 5 % 1 0 % 15 % 2 0 % 2 5 % 3 0 % 3 5 % 4 0 % 4 5 %

厳しさ・罰での      指導

マイナス面を  説明する

相談にのる

元気づける

どんなことをしても        無理

その他

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(2) 中学校

児童生徒の生活に関するアンケート調査(児童生徒用)

[回答者数:1~3年生180名]

その他:物を盗んだ人,クラスメイト(4人)その他:わからない

兄・弟・妹(3) など

その他:他の人を考えるべき,すっきりする,わからないその他:口をきかない(7人 ,叫ぶ(2人))

無視(2人 ,口げんか,早口にな人る など 相手が悪いけれど自分も悪い,怒ってバカみたい)

その他:わからない(6人 ,無視しないでその他:誰もいらない(5人 ,わからない(3人)) )

盗まれたものが返ってくれば など自分,兄弟,後輩,親友,味方 など

QⅠ-1 あなたは学校でキレそう(怒りが爆発しそう)になったことが     ありますか。(回答は1つ)

9.4%

42.2%

34.4%

13.9%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45%

よくある

ときどきある

ほとんどない

まったくない

QⅠ-2 あなたは家庭でキレそう(怒りが爆発しそう)になったことが     ありますか。(回答は1つ)

23.9%

39.4%

26.1%

10.6%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45%

よくある

ときどきある

ほとんどない

まったくない

QⅡ-1 キレそうになったとき,実際にキレてしまったときがありますか。                                   (回答は1つ)

15.6%

51.1%

19.4%

5.6%

0.6%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

1回もない

大体がまん

半分がまん

すぐにキレる

その他

QⅡ-2 キレそうになったのは,誰のせいだと思いますか。                        (回答は2つまで)

12.2%

13.3%

43.3%

33.9%

10.6%

22.2%

9.4%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

自分

先生

友だち

家族

わからない

その他

QⅢ-1 キレてしまったとき,どんな行動をすることが多いですか。

27.9%

40.7%

22.9%

21.2%

2.6%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45%

暴力・悪口

物にあたる

授業のじゃま

わからない

その他

QⅢ-2 キレてしまった自分をどう思いますか。(回答は2つまで)

33.9%

22.0%

50.8%

22.9%

5.9%

20.3%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

しかたがない

自分は悪くない

自分はダメな人間だ

後悔する

何とも感じない

その他

QⅢ-3 あなたがキレなくなるためには,誰の応援が必要だと

     思いますか。(回答は2つまで)

12.7%

67.0%

7.6%

11.9%

14.3%

36.5%

0% 20% 40% 60% 80%

先生

友達

家族

先輩

その他

QⅢ-4 あなたがキレなくなるためには,まわりからのどのような内容      の応援が必要だと思いますか。(回答は1つ)

5.0%

7 .6%

30 .5%

15 .3%

10 .2%

33 .1%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35%

厳しさ・罰での

      指導

マイナス面を

 説明する

相談にのる

元気づける

どんなことをしても

        無理

その他

Page 54: 生徒指導上の対応が困難な 児童生徒への指導・援助 …ckyk/kenkyu/h17/gr1/gr1.pdfるように指導・援助していくことが必要となってきます。3

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(3) 高等学校

児童生徒の生活に関するアンケート調査(児童生徒用)

[回答者数:1~3年生215名]

その他:部活の人(3人 ,今の世の中,知り合いの親その他:タイヤをなぐる )

上級生,下級生,先輩,友達までいかない人 など

その他:口をきかない(4人 ,がまん その他:いらない,気分悪い,つかれる)

ねる,注意する(2人 ,言いたいことを言う など わからない,すっきりする)

( ), , ( )その他:自分 5人 いらない 5人( ), ( ) その他:特になし 4人 自分で何とかする わからない 3人

わからない(3人 ,特になし(2人) など ほっといてもらう,キレます,口だすな など)

QⅠ-1 あなたは学校でキレそう(怒りが爆発しそう)になったことが     ありますか。(回答は1つ)

36.7%

31.6%

24.2%

7.4%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40%

よくある

ときどきある

ほとんどない

まったくない

QⅠ-2 あなたは家庭でキレそう(怒りが爆発しそう)になったことが     ありますか。(回答は1つ)

16.7%

37.2%

31.6%

14.4%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40%

よくある

ときどきある

ほとんどない

まったくない

QⅡ-1 キレそうになったとき,実際にキレてしまったときがありますか。                                   (回答は1つ)

11.6%

47.4%

18.1%

3.7%

0.5%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

1回もない

大体がまん

半分がまん

すぐにキレる

その他

QⅡ-2 キレそうになったのは,誰のせいだと思いますか。                        (回答は2つまで)

12.1%

21.9%

28.8%

33.5%

7.9%

15.3%

9.3%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40%

自分

先生

友だち

家族

わからない

その他

QⅢ-1 キレてしまったとき,どんな行動をすることが多いですか。

25.9%

40.6%

15.6%

25.0%

2.6%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45%

暴力・悪口

物にあたる

授業のじゃま

わからない

その他

QⅢ-2 キレてしまった自分をどう思いますか。(回答は2つまで)

39.7%

26.7%

36.1%

16.3%

6.1%

10.4%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

しかたがない

自分は悪くない

自分はダメな人間だ

後悔する

何とも感じない

その他

QⅢ-3 あなたがキレなくなるためには,誰の応援が必要だと

     思いますか。(回答は2つまで)

6.9%

64.7%

7.8%

8.7%

20.8%

28.4%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70%

先生

友達

家族

先輩

その他

QⅢ-4 あなたがキレなくなるためには,まわりからのどのような内容      の応援が必要だと思いますか。(回答は1つ)

4 .3%

8 .7%

20 .8%

19 .8%

11 .1%

37 .1%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40%

厳しさ・罰での      指導

マイナス面を  説明する

相談にのる

元気づける

どんなことをしても        無理

その他

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2 調査結果データ〔 教 員 〕

(1) 小学校 児童生徒の生活に関するアンケート調査(教員用)

[回答者数:小学校教員36名]

(2) 中学校 児童生徒の生活に関するアンケート調査(教員用)

[回答者数:中学校教員42名]

QⅠ 生徒指導上の問題行動に関して,学校だけの指導では改善が    難しい児童生徒が過去あるいは現在,いますか。

38.9%

19.4%

38.9%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45%

過去にいた

現在いる

いない

QⅢ 学校だけの指導では改善が難しい児童生徒には,どのような 内容の支援が必要だと思いますか。(回答は1つ)

13.9%

61.1%

5.6%

19.4%

0.0%

2.8%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70%

厳しさ・罰での

      指導

マイナス面を

  説明する

相談にのる

元気づける

どんなことをしても

        無理

その他

QⅠ 生徒指導上の問題行動に関して,学校だけの指導では改善    が難しい児童生徒が過去あるいは現在,いますか。

45.2%

38.1%

16.7%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

過去にいた

現在いる

いない

QⅣ 学校だけの指導では改善が難しい児童生徒に,総合教育センター と連携して対応するとしたら,センターに期待することは何ですか。                                 (回答は2つまで)

13.9%

58.3%

66.7%

25.0%

5.6%

5.6%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70%

メールを活用した相談

学校の事例研究会に参加   (センター指導主事)

学校で,児童生徒に直接指導      (センター指導主事)

センターで指導・支援を受ける(児童生徒本人及び保護者)

センターに出向き支援を受ける          (教職員教員)

その他

QⅡ-1 その問題行動の内容はどんなことですか。

47.6%

9.5%

38.1%

23.8%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

傷害や苦痛を与える

器物を損壊

授業の妨げ

その他

QⅡ-2 その児童の対応について,効果的な他機関との連携は次の     どれだと思いますか。(回答は2つまで)

66.7%

85.7%

9.5%

0.0%

0.0%

4.8%

4.8%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%

児童相談所

警察

教育委員会

相談機関

保護者

効果は期待できない

その他

QⅡ-1 その問題行動の内容はどんなことですか。

51 .4%

34 .3%

45 .7%

22 .9%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

傷害や苦痛を与える

器物を損壊

授業の妨げ

その他

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(3) 高等学校 児童生徒の生活に関するアンケート調査(教員用)

[回答者数:高等学校教員31名]

QⅢ 学校だけの指導では改善が難しい児童生徒には,どのような内容    の支援が必要だと思いますか。(回答は1つ)

26.2%

47.6%

14.3%

16.7%

2.4%

0.0%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

厳しさ・罰での

     指導

マイナス面を

  説明する

相談にのる

元気づける

どんなことをしても

        無理

その他

Q Ⅳ  学 校 だ け の 指 導 で は 改 善 が 難 しい 児 童 生 徒 に ,総 合 教 育 セ ン ター      と連 携 して 対 応 す る とした ら ,セ ン ター に 期 待 す る こ とは 何 で す か 。

1 2 .9 %

4 1 .9 %

6 4 .5 %

2 2 .6 %

9 .7 %

0 .0 %

0 % 1 0 % 2 0 % 3 0 % 4 0 % 5 0 % 6 0 % 7 0 %

メー ル を活 用 し た 相 談     

学 校 の 事 例 研 究 会 に 参 加      (セ ン タ ー指 導 主 事 )

学 校 で , 児 童 生 徒 に直 接 指 導          ( セ ン タ ー指 導 主 事 )

セ ン タ ー で 指 導 ・支 援 を受 け る(児 童 生 徒 本 人 及 び保 護 者 )

セ ン ター に 出 向 き 支 援 を受 け る                        (教 職 員 )

そ の 他

QⅢ 学校だけの指導では改善が難しい児童生徒には,どのような内容    の支援が必要だと思いますか。(回答は1つ)

25.8%

16.1%

38.7%

9.7%

12.9%

3.2%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

厳しさ・罰での

     指導

マイナス面を  説明する

相談にのる

元気づける

どんなことをしても

        無理

その他

QⅣ 学校だけの指導では改善が難しい児童生徒に,総合教育センター    と連携して対応するとしたら,センターに期待することは何ですか。

9 .5%

2 6 .2 %

3 5 .7 %

6 4 .3 %

1 9 .0 %

7 .1 %

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70%

メールを活用した相談

学校の事例研究会に参加   (セ ンター指導主事 )

学校で ,児童生徒に直接指導     (センター指導主事 )

センターで指導 ・支援を受ける(児童生徒本人及び保護者 )

センターに出向き支援を受ける            (教職員 ) 

その他

QⅡ-1 その問題行動の内容はどんなことですか。

15 .8%

10 .5%

36 .8 %

52 .6 %

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

傷害や苦痛を与える

器物を損壊

授業の妨げ

その他

QⅡ-2 その児童生徒の対応について,効果的な他機関との 連携は次のどれだと思いますか。(回答は2つまで)

57 .9%

68 .4%

5 .3%

5 .3%

0 .0%

0 .0%

31 .6%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80%

児童相談所

警察

教育委員会

相談機関

保護者

効果は期待できない

その他

QⅠ 生徒指導上の問題行動に関して,学校だけの指導では改善が    難しい児童生徒が過去あるいは現在,いますか。

54.8%

6.5%

41.9%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

過去にいた

現在いる

いない

QⅡ-2 その児童生徒の対応について,効果的な他機関との連携は

     次 のどれだと思いますか。(回答は2つまで)

51.4%

11.4%

8.6%

40.0%

45.7%

11.4%

5.7%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

児童相談所

警察

教育委員会

相談機関

保護者

効果は期待できない

その他

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- 57 -

児童生徒の生活に関するアンケート調査(児童生徒用)

困っている子どもたちを応援するためのアンケートです。記入した人が誰であるか

分からないようにしますので,あなたの気持ちを正直に答えてください。

( )年 ( 男 ・ 女 )

Ⅰ 全員に質問します。4月以降を振り返って答えてください。

1 あなたは学校でキレそう(怒りが爆発しそう)になったことがありますか。

(あてはまるもの,1つに○を付けてください)

ア よくある

イ ときどきある

ウ ほとんどない

エ まったくない

2 あなたは家庭でキレそう(怒りが爆発しそう)になったことがありますか。

(あてはまるもの,1つに○を付けてください)

ア よくある

イ ときどきある

ウ ほとんどない

エ まったくない

Ⅱ 家庭や学校でキレそうになったことがある人(上のⅠの1・2でアイウのいずれかを

選んだ人)だけ答えてください。

1 キレそうになったとき,実際にキレてしまったときがありますか。

(あてはまるもの,1つに○を付けてください)

ア 1回もない。がまんしている

イ 大体がまんしている

ウ 半分くらいはがまんをしている

エ ほとんどがまんできず,すぐにキレてしまう

オ その他( )

2 キレそうになったのは,誰のせいだと思いますか。

(あてはまるもの,2つまで○を付けてください)

ア 自分

イ 先生

ウ 友だち

エ 親

オ 親以外の家族

カ わからない

キ その他( )

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Ⅲ キレてしまったことがある人だけ答えてください。

1 キレてしまったとき,どんな行動をすることが多いですか。

(あてはまるものに○を付けてください)

ア 周囲の人に暴力をふるったり,悪口を言う

イ 物にあたる

ウ 授業のじゃまをする

エ どういう行動をしたのかわからない

オ その他( )

2 キレてしまった自分をどう思いますか。

(あてはまるもの,2つまで○を付けてください)

ア キレてしまったけれど,けっこうがまんをしていたからしかたがない

イ 相手が悪いからこうなった。自分は悪くない

ウ 自分はダメな人間だ

エ キレないようにするべきであったと後悔する

オ 何とも感じない

カ その他( )

3 あなたがキレなくなるためには,誰の応援が必要だと思いますか。

(あてはまるもの,2つまで○を付けてください)

ア 先生

イ 友だち

ウ 親

エ 親以外の家族

オ 先輩

カ その他( )

4 あなたがキレなくなるためには,まわりからのどのような内容の応援が必要だと思

いますか (あてはまるもの,1つに○を付けてください)。

ア 厳しさや罰で指導する

イ キレる事がもたらすマイナス面を説明する

ウ いろいろな相談にのる

エ はげましたり,元気づける

オ どんなことをしても無理

カ その他( )

ご協力,ありがとうございました。

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児童生徒の生活に関するアンケート調査(教員用)秋田県総合教育センター

これは,生徒指導上の問題行動に関して,学校だけの指導ではなかなか効果が上がらない子どもについてお聞きするものです。調査等を基に,今後よりよい生徒指導の在り方を提言したいと思います。お忙しい中ですが,調査へのご協力をよろしくお願い申し上げます。

該当するものに○を付けてください。

( ) ( )学校種 ア 小学校 イ 中学校 ウ 高等学校 性別 男 ・ 女

Ⅰ 生徒指導上の問題行動に関して,学校だけの指導では改善が難しい児童生徒が過去あるいは現在,いますか。

ア 過去にいたイ 現在いるウ いない

*「ウ」を選んだ人は 「Ⅲ」以降に進んでください。,

Ⅱ 児童生徒がいる場合について1 その問題行動の内容はどんなことですか。

ア 周囲に傷害や心身の苦痛を与える行為(いじめを含む)イ 器物を損壊する行為ウ 授業等実施の妨げとなる行為エ その他( )

2 その児童生徒への対応について,効果的な他機関との連携は次のどれだと思いますか。2つまで選んでください。

ア 児童相談所との連携 オ 保護者との連携イ 警察との連携 カ いずれも効果は期待できないウ 教育委員会との連携 キ その他( )エ 相談機関との連携

Ⅲ 学校だけの指導では改善が難しい児童生徒には,どのような内容の支援が必要だと思いますか。1つ選んでください。

ア 厳しさや罰で指導するイ 問題行動がもたらすマイナス面を説明するウ いろいろな相談にのってあげるエ はげましたり,元気づけるオ どんなことをしても無理カ その他( )

Ⅳ 学校だけの指導では改善が難しい児童生徒に,総合教育センターと連携して対応するとしたら,センターに期待することは何ですか。次から2つまで選んでください。

ア メールを活用した相談イ センター指導主事が学校の事例研究会に参加ウ センター指導主事が学校を訪問し,児童生徒に直接指導エ 児童生徒本人及び保護者がセンターに出向き,指導・支援を受けるオ 教職員がセンターに出向き,支援を受けるカ その他( )

, 。ご協力 ありがとうございました

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参考・引用文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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り方 .秋田:秋田県総合教育センター』

秋田県総合教育センター.(2003).平成14年度研究紀要『生徒指導における危機管理の

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秋田県総合教育センター.(2004) 「LD・ADHD・高機能自閉症児等への支援の在.

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教育センター

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誠信書房

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文部科学省.(2004) 『学校と関係機関等との行動連携を一層推進するために』.

文部科学省.(2005) 『新・児童生徒の問題行動対策重点プログラム(中間まとめ 』. )

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秋田県総合教育センター グループ研究1

児童生徒支援班 副主幹(兼)班長 工 藤 均

児童生徒支援班 主 任 指 導 主 事 荒 川 肇

児童生徒支援班 指 導 主 事 渡 部 学

情報教育研修班 指 導 主 事 小野寺 利 弘

教 科 研 修 班 指 導 主 事 小 松 徹

(イラスト 尼ヶ崎奈々)