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S pec. 前輪用はホイール脱落防止用のイモネジ を装備するネジ穴が開けられる(写真上)。 突起部分の幅は前後エンドの開口部の寸法 に合わせて前用9㎜、後用10㎜に設計され る。さらにこの部分の肉厚は、前用に5㎜ と6㎜があり、後用は6㎜。エンドの肉厚 が突起部分よりも薄いフレームは使用がで きないので、購入時はエンド肉厚の確認が 必要だ。素材はスチールだが塩浴軟窒化処 理のQ P Q 加工を施して、硬度を高めサビ にも強い仕様とした 乗前は「相当走り込まないと違 いを感じられないかも……」と 思っていたが、その予想は見事に覆さ れてしまった。まずはクイックリリー スを締める時の感覚が違う。レバーが 明らかにカッチリと締まるのだ。そし て走行感の違いもすぐに分かる。手に 伝わるロードインフォメーションが明 確になり、ホイールの転がる様が分か りやすくなった。それはもちろん乗り ごこちが悪くなるという感覚とは違い、 ポジティブなものだ。そしてハンドリ ングはリニアさを増している。全体的 な走行感覚の変化は、抽象的な表現だ がカッチリとしてクリア感が強くなっ た。エンドワッシャーを装備して速く なるかと言われたらそれは分からない ものの、走りは確実に気持ちの良いフ ィーリングを得られた。価格は1万円 未満で手頃だし、ポン付けの手軽さで ファインチューニング的効果を得られ る。走りの質にこだわるロードバイカ ーなら手に入れても損はないはずだ。 日本を代表するロード選手に も愛用されてきたハンドメイド フレームのナカガワ。そんな名 工から「エンドワッシャー」な る興味深い製品が発売された。 突起のあるこのスペーサーは、 フレームのエンド部とクイック リリースの間に挿入するもの。 それが必要となる要因は、ロ ードバイクなどで主流となるオ ープン型のエンド形状(U 字に 開く形状)、さらには前後エン ドの幅がホイールの着脱を容易 にするために、ハブのオーバー ロックナット寸法よりも若干広 く作られることにある。 これらに起因してクイックリ リースを締め込むと、エンドと ハブナットには均等な力がかか らずホイールは固定され、応力 の逃げる箇所が生まれることで フレームのゆがみと、それに応 じてハブシャフトにゆがみが生 じる。こうしてホイールの回転 性能に影響が出るというのだ。 このようなエンド部のゆがみ がハブ軸に及ばないよう、ハブ 軸にアールの付いた座金を入れ るなどして対応するメーカーも あるが、 ナカガワはフレーム 側で根本的な解決を目指した。 エンドワッシャーの突起は、 エンドに装着されるとハブシャ フトが収まる以外の開口部のU 字を埋めるような状態となる。 つまり擬似的にスルーアクスル の状態を作り出すのだ。 こうしてエンド部はハブシャ フトを確実に保持しやすく、ク イックを締めるとハブ軸へ均等 な圧力がかかり、ハブの回転性 能が正しく発揮され、走行性能 の向上が見込めるという。 エンドワッシャーはそのマニ アックな視点もさることながら、 シンプルな構造で改善を図る設 計もすばらしく、名工ナカガワ ならではの逸品といえよう。 J UDGE P ROFILE 前後エンドに忍ばせ見事にファインチューン 素材/スチール(Q P Q 加工) サイズ/フロント:5㎜、6㎜ リヤ:6㎜ 実測重量 F = 14g(5㎜仕様)、R = 14フレームエンド ハブシャフト 価格/10,0 円(税抜・前後セット) ナカガワサイクルワークス ☎0728295431 nakagaw acycle. 1@ gm ail.com ナカガワ・エンドワッシャー ハブ軸をしっかり受け止めホイールの回転性能を正す エンドワッシャーの突起部分は、エンドのスリットにはま るようにできている(写真①)。エンドにはまるとハブシ ャフトが収まる部分以外のスリットをしっかりと埋めてし まうのが分かる(写真②)。さらに突起部分にはアールが 付けられていてハブシャフトがしっかり収まる(写真③)。 これらによってクイックを締めたときに発生する横方向か らの力が加わっても、ハブシャフトをしっかり保持できる のでハブ軸がゆがみにくい。擬似的にスルーアクスルに近 い状態を作り出す。よってエンドは歪まずハブ軸をまっす ぐに近い状態で押せるため、ホイールの回転性能を発揮で きるだけでなく、エンドまわりの剛性も設計本来のパフォ ーマンスが出るはずだ。 クイックを締めると ハブ軸にはゆがみが生じる クイックを締めていない状態で、エン ドとハブシャフトのロックナットの間 にわずかな隙間がある。それを締める と隙間がなくなり、エンドの開口部か ら力は逃げる。したがって図のように エンドはゆがんだ状態となり、これに 合わせてハブシャフトもゆがむため、 ハブの回転が悪くなる。余談だが古く からカップアンドコーン型のハブの玉当 たり調整のコツとして「ごくわずかな ガタを残せ」と言われるのは、図のよ うにエンド部で起こってる現象を考慮 してスムーズな回転を得るための策だ。 エンドワッシャー装着時は、クイッ クリリース付属のつる巻バネを外すこ とを奨励している。ホイールの装着は 通常よりも面倒かと想像したが意外に 簡単。ワッシャー部分を軽く押さえて エンドのスリットに導けばすんなり収 まる。作業にはすぐに慣れる 0 4 223 00

cs03 p223 web-2...Spec. 前輪用はホイール脱落防止用のイモネジ を装備するネジ穴が開けられる(写真上)。突起部分の幅は前後エンドの開口部の寸法

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Page 1: cs03 p223 web-2...Spec. 前輪用はホイール脱落防止用のイモネジ を装備するネジ穴が開けられる(写真上)。突起部分の幅は前後エンドの開口部の寸法

S pec.

●前輪用はホイール脱落防止用のイモネジを装備するネジ穴が開けられる(写真上)。突起部分の幅は前後エンドの開口部の寸法に合わせて前用9㎜、後用10㎜に設計される。さらにこの部分の肉厚は、前用に5㎜と6㎜があり、後用は6㎜。エンドの肉厚が突起部分よりも薄いフレームは使用ができないので、購入時はエンド肉厚の確認が必要だ。素材はスチールだが塩浴軟窒化処理のQ P Q加工を施して、硬度を高めサビにも強い仕様とした

乗前は「相当走り込まないと違いを感じられないかも……」と

思っていたが、その予想は見事に覆されてしまった。まずはクイックリリースを締める時の感覚が違う。レバーが明らかにカッチリと締まるのだ。そして走行感の違いもすぐに分かる。手に伝わるロードインフォメーションが明確になり、ホイールの転がる様が分かりやすくなった。それはもちろん乗りごこちが悪くなるという感覚とは違い、ポジティブなものだ。そしてハンドリングはリニアさを増している。全体的な走行感覚の変化は、抽象的な表現だがカッチリとしてクリア感が強くなった。エンドワッシャーを装備して速くなるかと言われたらそれは分からないものの、走りは確実に気持ちの良いフィーリングを得られた。価格は1万円未満で手頃だし、ポン付けの手軽さでファインチューニング的効果を得られる。走りの質にこだわるロードバイカーなら手に入れても損はないはずだ。

 日本を代表するロード選手に

も愛用されてきたハンドメイド

フレームのナカガワ。そんな名

工から「エンドワッシャー」な

る興味深い製品が発売された。

 突起のあるこのスペーサーは、

フレームのエンド部とクイック

リリースの間に挿入するもの。

 それが必要となる要因は、ロ

ードバイクなどで主流となるオ

ープン型のエンド形状(U字に

開く形状)、さらには前後エン

ドの幅がホイールの着脱を容易

にするために、ハブのオーバー

ロックナット寸法よりも若干広

く作られることにある。

 これらに起因してクイックリ

リースを締め込むと、エンドと

ハブナットには均等な力がかか

らずホイールは固定され、応力

の逃げる箇所が生まれることで

フレームのゆがみと、それに応

じてハブシャフトにゆがみが生

じる。こうしてホイールの回転

性能に影響が出るというのだ。

 このようなエンド部のゆがみ

がハブ軸に及ばないよう、ハブ

軸にアールの付いた座金を入れ

るなどして対応するメーカーも

あるが、 ナカガワはフレーム

側で根本的な解決を目指した。

 エンドワッシャーの突起は、

エンドに装着されるとハブシャ

フトが収まる以外の開口部のU

字を埋めるような状態となる。

つまり擬似的にスルーアクスル

の状態を作り出すのだ。

 こうしてエンド部はハブシャ

フトを確実に保持しやすく、ク

イックを締めるとハブ軸へ均等

な圧力がかかり、ハブの回転性

能が正しく発揮され、走行性能

の向上が見込めるという。

 エンドワッシャーはそのマニ

アックな視点もさることながら、

シンプルな構造で改善を図る設

計もすばらしく、名工ナカガワ

ならではの逸品といえよう。

JUDGE P ROFILE

前後エンドに忍ばせ見事にファインチューン●素材/スチール(Q P Q 加工) 

●サイズ/フロント:5㎜、6㎜ リヤ:6㎜ 

●実測重量 F=14g(5㎜仕様)、R=14g

フレームエンド

ハブシャフト

価格/ 10,0 円(税抜・前後セット)  ナカガワサイクルワークス ☎072・829・5431 nakagaw acycle.1@ gm ail.com

ナカガワ・エンドワッシャー

ハブ軸をしっかり受け止めホイールの回転性能を正す

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エンドワッシャーの突起部分は、エンドのスリットにはまるようにできている(写真①)。エンドにはまるとハブシャフトが収まる部分以外のスリットをしっかりと埋めてしまうのが分かる(写真②)。さらに突起部分にはアールが付けられていてハブシャフトがしっかり収まる(写真③)。これらによってクイックを締めたときに発生する横方向か

らの力が加わっても、ハブシャフトをしっかり保持できるのでハブ軸がゆがみにくい。擬似的にスルーアクスルに近い状態を作り出す。よってエンドは歪まずハブ軸をまっすぐに近い状態で押せるため、ホイールの回転性能を発揮できるだけでなく、エンドまわりの剛性も設計本来のパフォーマンスが出るはずだ。

クイックを締めるとハブ軸にはゆがみが生じる

クイックを締めていない状態で、エンドとハブシャフトのロックナットの間にわずかな隙間がある。それを締めると隙間がなくなり、エンドの開口部から力は逃げる。したがって図のようにエンドはゆがんだ状態となり、これに合わせてハブシャフトもゆがむため、ハブの回転が悪くなる。余談だが古くからカップアンドコーン型のハブの玉当たり調整のコツとして「ごくわずかなガタを残せ」と言われるのは、図のようにエンド部で起こってる現象を考慮してスムーズな回転を得るための策だ。

●エンドワッシャー装着時は、クイックリリース付属のつる巻バネを外すことを奨励している。ホイールの装着は通常よりも面倒かと想像したが意外に簡単。ワッシャー部分を軽く押さえてエンドのスリットに導けばすんなり収まる。作業にはすぐに慣れる

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