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14 DESERT RIDE AND DAYS IN BAJA part 1 Tijuana to Cabo San Lucas 第一章◎ティファナ・トゥ・カボ・サン・ルーカス 前編 ティファナ・トゥ・バヒア・デ・ロサンゼルス 何度訪れても、やはり国境越えは胸がさわぐ。 それはきっと、陸続きの国境をもたない我々日本人だからこそか。 僕たちをきっと待っているだろう、素晴らしい体験への期待、 そしてなにが起こるかわからない不安を胸に抱え、 僕たちは 1700km あまり先のゴールを目指し アメリカをあとにした。

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2004年に発行した同書のデジタル版を作成中です。これはそのサンプルです。

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part 1

Tijuana toCabo San Lucas第一章◎ティファナ・トゥ・カボ・サン・ルーカス 前編 ティファナ・トゥ・バヒア・デ・ロサンゼルス

何度訪れても、やはり国境越えは胸がさわぐ。それはきっと、陸続きの国境をもたない我々 日本人だからこそか。僕たちをきっと待っているだろう、素晴らしい体験への期待、そしてなにが起こるかわからない不安を胸に抱え、僕たちは1700kmあまり先のゴールを目指しアメリカをあとにした。

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BAJAへの旅の始まりは、いつもカリフォルニア・ステイト・ハイウエイ・91。リバーサイドのマルコム・スミス、サンバーナディーノのチャパラルで必要なものを買ってからメキシコへと向かうからだ。アメリカはアメリカで楽しいが、メキシコへと心がはやる僕たちにとってはアメリカで過ごす時間はいまいましい時間でもある。だから、陽の暮れようとしている91号線を走りながら「やっと行ける」と思うのだ

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インターステイトハイウエイ5を南下していくと、高速道路の料金所のようなゲートが現れる。それが国境だ。陸続きの国境をもたない日本人にとって非常に新鮮な国境越えだ

ティファナからエンセナダの直前までは快適な有料道路が続く。海を見ながらのワインディングだ

高速沿いにあるキャンタマー(笑)の砂丘ではATVをレンタルしてデューンを走ることが出来る

エンセナダの街角にはところどころに屋台が。商品はシーフードカクテルからお菓子まで実にさまざま

エンセナダの目抜き通りであるコステロブルバードでは多くのイベントが催され、パレードが行なわれる

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入国のための準備が完了だ。 再びハイウエイに乗り、ゲートをくぐればそこがメキシコだ。さっきガソリンを入れたサン・イシドロとは1kmも離れていないのに、目に映る景色はガラっと変わる。路面は急にガタガタになり、空気もホコリっぽくなる。そして、夜空を低く旋回する国境警備のヘリコプターの爆音。いよいよ、メキシコだ。 ゲートをくぐってすぐの窓口でクルマを止め、ツーリストカードを申請しに行く。メキシコに72時間以上滞在するか、エンセナダ以南に行く場合には基本的にこれを申請しなければいけないのだ。手数料40ドル。 ティファナは猥雑な雰囲気のする町だ。多くの観光客のバハカリフォルニアのイメージとは、このティファナのイメージであることが多い。「シャチョー・ミルダケタダ!」なんて叫ぶ物売り。汚れた服で道ばたを歩く人 。々その結果、バハカリフォルニアは危ない、という結論になるらしい。しかし、僕たちはいつもティファナを素通りしてしまう。なぜなら、わかりにくい道で迷い、つまらないことでパトカーにつかまったりするのがイヤだからだ。ということは、やっぱりティファナは危ないのか。 ともあれ、僕たちは有料 道 路で、BAJA1000のスタート地であり今回の旅の起点でもある、エンセナダを一路目指す。ティファナに比べれば素朴で静か。そして美しい港町だ。

 ロサンゼルスからひたすら5号線を南下し、サンディエゴのダウンタウンを通過したら、もうそこはメキシコの入り口だ。アメリカ最後のハイウエイ出口、サン・イシドロでハイウエイを降り、ガソリンを入れ、メキシコ国内用の自動車保険に加入する。これで、やっとメキシコ

TIJUANA to ENSENADA魅惑の旅へのプロローグ◎ティファナ〜エンセナダ

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エンセナダのモーテル、ホテル・コロナド。バイク乗りだけでなく多くのツーリストが旅の起点とするエンセナダには多くの安宿があるほか、リゾートホテルもあり、長期滞在する人も少なくない。現在ではマクドナルドやオフィス・デポも出来るなどアメリカナイズされてきており、便利になった反面、昔の素朴さは消えつつある。スーパーマーケット、ギガンテで出会ったミチコさんはサンフランシスコからスペイン語の勉強のために、エンセナダでホームステイしているそうだ。「みんな親切で声をかけてくれるんだろうけどちょっと怖い」というのがメキシコ人男性に対しての感想だそうだ

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 ここからカタビナまでは、若干時間をさかのぼり、2003SCOREBAJA1000のプレランに出かけた2003年11月中旬の話をしよう。 この日、ロサンゼルスを夕方出発した僕たちはティファナを通り過ぎ、エンセナダからはハイウエイ3へと進路を取ってオホス・ネグロスに向かった。エンセナダからオホス・ネグロスまでは人も多くプレランしにくいので、オホス・ネグロスからプレランすることにしたのだ。 オホス・ネグロスは、過去にはBAJA1000のスタート地にもなったことのあるエンセナダ郊外の小さな村だ。村、と言っても国道沿いには店はおろか建物1つない、ただ交差点があるだけの場所。そこがオホス・ネグロスだ。 その交差点ぞいの空き地にモーターホームを止め、一夜を過ごす。そして、夜が明けると同時にリヤゲートを開けてバイクを下ろした。日本をたって3日目。やっと走ることが出来る。 しかし、まだバイクのセッティングが終わっていなかったため、それをしている間にかなりの時間を食ってしまった。オホス・ネグロスからバレ・デ・トリニダッドまではこれまでのBAJA1000でも使用しているルートなのでパスし、トリニダッドから走ることにした。バイクは、レース用のXR250、そしてXR-BAJAとXR650Lの3台だ。 トリニダッドまで自走し、ガスを補給してマイクス・スカイ・ランチへと向かう。 バハカリフォルニアへのツアーでもよく目的

地とされる、マイクス・スカイ・ランチまでの道はトリッキーな穴もあるものの、快適に飛ばすことのできるワイン ディン グ だ。BAJA1000を走るライダーには、よく話題に出る場所がいくつかある。先述のオホス・ネグロスとか、サミットとか、ラパスのミニ・サミットとか。マイクス・スカイ・ランチもそんな「BAJA通」がよく口にする場所なのだが、じつは今回走った僕も、渡辺も、宮崎もこれまで行ったことがなかった。よく話題になる場所だけに、どんな場所なんだろうと期待に胸をふくらませてアクセルを開けていく。 砂とブッシュのワインディングに飽きてきたころ、乾ききった景色のなかに突然水をたたえた小川が現れた。そこが、マイクス・スカイ・ランチだった。 周囲に全く何もない、乾いた山のなかにポツンと立つロッジはしかし、美しい水をたたえたプールまでもつ、素敵な場所だった。ロッジの前には数台のバイクと先客がいた……と思ったら、ラリー・ローズラーじゃないか! しばらく彼らと話し込んだあと、マイクス・スカイ・ランチで食事を取った。おいしいブリ

トーだ。食事の後、オーナーのラファエルがロッジのなかをいろいろ案内してくれた。「泊まるなら週末は避けた方がいい。混むからね」。 マイクスを出た僕たちは、今日の目的であるハイウエイ1とのクロス地点、サン・ビセンテとコロネの中間あたりを目指して走り始めた。マイクスまでの快適なワインディングは、やがてガレ場となっていく。 それほど難しいガレ場ではなかったのだが、今回XR250とXR-BAJAに装着していたタイヤがトレールタイヤだったこともあり、XR-BAJAがパンク。修理したのだが、パンク修理キットのなかにはいっていたパッチが劣化してて直りきらず、結局4回もパンク修理することになってしまった。最後はとっぷりと陽が暮れてしまい、国道で待っていてくれたサポートと会えたのは夜8時を回っていた。やはりバハカリフォルニアを走るときにはスペアチューブは持って行かなくちゃダメだね。 

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ハイウエイ3からマイクス・スカイ・ランチまでは基本的には走りやすいダートロード。マイクスの先からはガレた牧場内のルートとなる。この周辺には同じような道が無数にあり、ツーリングを楽しむアメリカ人も多いTheroadbetweenHwy3toMikesSkyRanchisveryfunfordesertfans.

2003 BAJA1000のプレランをしていたラリー・ローズラー。KTM660ラリーを軽 と々操っていたFamousRacingrider,LallyRoesller

日が昇るよりも早く、バイクを下ろす。これから始まるライディングを思うと寝てなんかいられないのだ

OJOS NEGROS to CAMALUBAJA1000のレースルートで◎オホス・ネグロス〜カマルー

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砂漠の山に忽然と現れるマイクス・スカイ・ランチ。宿泊はもちろん、食事だけをすることもできる。予約●TEL:+52-664-68-15514

MikesSkyRachisoneofmostfamousplaceinDesertfans.Youcantakealoverylunch,alsoyoucanstayovernightathere.phone:011-52-664-68-15514

マイクス・スカイ・ランチでラリー・ローズラー(写真左)に出会った。右から2人目はGOBAJARIDIN'TOURのボス。ラリーと一緒に走っていた

コロネ近くの牧場で3回目のパンク。地平線に陽が落ちていくAtaranchnearColonet

マイクス・スカイ・ランチの直前に現れる川。それまでの砂漠の風景から、一気に緑の豊富な山の風景に変わる。この川では魚も釣れるらしい

このルートを走った日は、トレールタイヤを履いたXR-BAJAが結局4回もパンクした。やはりエンデューロタイヤとヘビーチューブは必需品だ