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Discussion Paper Series Vol.2007-6 河川環境の流域単位での管理対策評価 大床太郎 笹尾俊明* 柘植隆宏** 広島大学大学院国際協力研究科 [email protected] 2007 11 11 *岩手大学人文社会科学部 **甲南大学経済学部 Discussion Paper の内容を,著者の許可なく部分的あるいは全文の引用および採録することを 禁ずる.

Discussion Paper Series Vol.2007-6 河川環境の流域単位での管理 …hicec/coe/products/DP2007/DP200… · 住民の選好の多様性を考慮した潜在クラスモデルによって分析を行った.分析の結果,

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Discussion Paper Series Vol.2007-6

河川環境の流域単位での管理対策評価

大床太郎 笹尾俊明* 柘植隆宏** 広島大学大学院国際協力研究科

[email protected]

2007 年 11 月 11 日

*岩手大学人文社会科学部 **甲南大学経済学部

本 Discussion Paper の内容を,著者の許可なく部分的あるいは全文の引用および採録することを

禁ずる.

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河川環境の流域単位での管理対策評価i

大床太郎 笹尾俊明 柘植隆宏

概要

長大な河川の環境管理は,多様な選好を持った流域住民が存在する可能性があり,対

策を講じることが非常に困難である.本研究では,流域単位でどのような環境対策を講

じる必要があるかを検討するため,流木等ゴミの流化によって生態系や景観の損なわれ

ている北上川を対象として,ヨシ原保全,シジミの保護,流木等のゴミの量,レクリエ

ーション(遊歩道・休憩施設・親水設備)の整備を属性とした選択型実験を行い,流域

住民の選好の多様性を考慮した潜在クラスモデルによって分析を行った.分析の結果,

上流と下流の環境への意識差と,費用負担への意識差とが確認された.環境への意識差

として,自然環境に関しては外部者と考えられる上流域の方が価値を高く評価し,レク

リエーションに関しては,直接的受益者と考えられる下流域の住民が複数のレクリエー

ションの併設を望んでいることが示された.費用負担の意識差として,自然環境・レク

リエーションとも全流域で負担することが好まれる結果となった.以上によって,選好

の多様性を考慮した流域単位での河川管理の重要性を示した. キーワード:河川管理,選好の多様性,選択型実験,潜在クラスモデル

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1. はじめに 近年,適切な管理対策が講じられなかった結果として,長大な河川において,局所的

な環境被害が発生している.それらを適切に管理するためには,河川に関わる流域住民

の意図をくみ取った上で,流域単位でどのように対策を講じるべきかを,社会科学的に

把握する必要がある.その課題は我が国に留まらず,広く国際的に,長大な河川管理を

考慮すべきである. 本研究では,日本国内の長大な河川のひとつである北上川を対象として,流域単位で

の河川管理のあり方を,経済学的に検討する. 北上川は,岩手県から宮城県を通って,太平洋に流れ込む,東北 大の河川である.

全長は 294 キロメートル(全国第 4 位),流域面積は 10,150 平方キロメートル(全国

第 5 位)を誇り(中村(2000)),支川数も 302 と多い.西に奥羽山脈,東に北上高地

があり,南北方向に流れている. 河口域にはヨシ原が広がり,美しい景観をなしている.河口から上流に向かって 17.2

キロメートルのところに北上大堰が設置されており(1979 年設置),その周辺だけでも

ヨシ原の面積は約 9 平方キロメートルある.「残したい“日本の音風景 100 選”」(1996)や,「日本の重要湿地」(2001)に選ばれ,地域外からも脚光を浴びるような,多様な

生物の生息環境が存在している.ヨシ原は火入れや刈り取りなどで整備されてきた. また,シジミ漁も盛んに行われており,石巻市等に漁師が居住している.特に,北上

川特産のベッコウシジミは珍重されており,北上大堰より下流側で採取されている.淡

水と海水の混じり具合を示す指標として,ヤマトシジミが挙げられるが,北上大堰の影

響から,海水の遡上量が増加して塩分濃度が上昇したために,現在減少傾向にある.逆

に,高濃度の塩分を好むアサリなどが増加してきている. 近年,北上川では「濁流問題」として知られる問題が生じている(塚本(2004)).

流域で大雨が降った出水の際には,大量のゴミや流木,砂の入り混じった「濁水」が,

上・中流域から河口域に流下し,自然生態系に少なからぬ影響を与えている.それによ

って,河口域の景観が損なわれるとともに,河口域におけるシジミの漁獲量が減少して

いる.これによる漁業への被害額は数億円に上っている.さらに,河口にある白浜海浜

浴場の水質も悪化している.よって,河口域の環境対策が喫緊の課題であると思われる. 塚本(2004)によれば,アンケート調査の結果,北上川や周辺の自然景観・生態系

保全に,河口域周辺地域の住民の 7 割以上が関心を抱いており,6 割強の住民が,ヨシ

の活用やヨシを利用した産業にも関心を抱いていることが確認されている.ここから,

流域住民が環境対策に賛意を示していることがわかる.また,廣木(2005)では,本

研究でも採用した選択型実験によって,1)人間自身が河川環境に近づけることと,2)人間以外の生物にとっても河川環境が改善されていることの 2 点について,市民は肯定的

に評価していることを確認している.自然生態系の保全とレクリエーションなどを含め

た,総合的な環境対策が希求されているといえる. 北上川で行うべき環境対策としては,1)流木やプラスチック容器等のゴミを引き上げ,

2)ヨシを定期的に刈り入れ,あるいは火入れすることで適切に管理し,3)河口域の塩分

濃度を調整して水質を改善し,シジミを保護していくことが考えられる.ゴミ処理とヨ

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シ原の管理,さらには水質改善と,非常に時間と費用のかかる対策となる. 河川管理法の 1997 年改正を受けて,行政と地域が連携して「河川環境の整備と保全」

を推進するという,大幅な政策方針の転換が現在行われつつある.NPO・NGO を主体

とした住民主体の活動も盛んに行われており,北上川のゴミ引き上げやヨシの管理も例

外ではない.しかしながら,住民のみの活動には限界があり,住民の自然環境への思い

を適切に汲み取った上での行政の介入も必要となる.そのためには,行政が流域住民の

選好を把握することが必要となる. 笹尾(2002)と笹尾(2004)は,上記の課題を仮想評価法(Contingent Valuation Method:CVM)と選択型実験で分析した.分析は二項ロジットモデル(Binomial Logit Model:BNL)と条件付ロジットモデル(Conditional Logit Model:CL)を用いてい

る. 前者は CVM による支払意思額(Willingness to Pay:WTP)の推計結果から,費用

負担のあり方によって選好が異なりうる可能性を考察し,選択型実験では自然環境対策

は上流側,レクリエーション整備は下流側が高く評価していると推論している.ただし,

有意に推定されていないパラメータも多く,より定量的な分析が課題として残された. 後者も CVM と選択型実験で分析している.前者を拡張して,回答者の社会経済特性

を変数として導入した.自然環境に関しては,居住地域や農業・漁業関係者かどうかで

評価がわかれたこと,所得の高い層は評価が高いことなどを考察している.また,環境

意識との分析によって,ヨシ原を知っていたり整備に関わりをもっていたりする人々は,

ヨシ原をありふれたものとして低く評価していることを明らかにしている. 水環境に関して,住民等の選好分析を行った例はいくつか挙げられる.以下にそれら

を列挙していく. 田口ほか(2000)では,長野県,岐阜県,愛知県の三県にまたがって流れている矢

作川に関して,水質,洪水からの安全性,上流域の生態系保護,川への接近可能性を属

性とした CVM と選択型実験が行われている.同論文では,1)水質に関しては,上流域

はありふれたものとして捉えられているため,中・下流域に比べて評価が低いこと,2)生態系保護に関しては,中流域が,日常生活において生態系を重視しないことから,上・

下流域に比べて評価が低いこと,3)接近可能性に関しては,中流域が河川と隔絶した生

活を送っているため,中流域が も高く評価していること,4)洪水からの安全性に関し

ては,上流になるほど評価が低いため,ダムによって安全性を高める河川管理が,生態

系破壊と結びつけて市民に捉えられている可能性があることを推論している. 山根ほか(2003)では,熊本市の地下水保全政策に関して,CVM を実施している.

白川下流域での地下水の過剰利用と,上・中流域の水田の減少による地下水涵養機能の

低下による地下水量の減少を回復するシナリオを分析している.地下水涵養機能の保全

策に対する世帯当りの月間 WTP の推定値として,中央値で 1,045 円,平均値で 2,287円と算出している. Hanley et al. (2006a) では,イングランドの River Wear とスコットランドの River Clyde で,フィッシング,水環境の生態系,ゴミ問題,土手の木々と適切な自然環境に

関して,選択型実験を行っている.混合ロジットモデル(Mixed Logit Model:ML)で分析しており,選好の多様性を表現した.さらに,便益移転(Benefit Transfer:BT)

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が可能であるかを尤度比検定と Wald 検定で検証したところ,いずれもその可能性は棄

却されている. Colombo et al. (2007) では,スペインの Genil と Guardajoz の河川流域に関して,

景観,水質,動植物,農業,現状の改善を行う面積について選択型実験を行い,ML で

分析を行っている.後述するスケールパラメータを導入した尤度比検定で効用パラメー

タの同質性を検定したところ,5%水準でそれが棄却された.また,消費者余剰を計算

した上で,河川対策のシナリオごとで,BT の可能性を Convolutions Approach で分析

したところ,ほとんどのシナリオ間でその可能性が棄却されている. Hanley et al. (2005) では,Hanley et al. (2006a) で用いているイングランドの

River Wear での選択型実験のデータを,ML で分析している.その際に,価格属性の

レベルを高く設定したものと低く設定したものの 2 通りの調査票を用意し,尤度比検定

と信頼区間の重なりで BT の可能性を検証している.検証の結果,双方で BT が可能で

あるとの結論が導かれ.ここから,価格属性のレベル設定の影響がなかったことを確認

している. Hanley et al. (2006b) では,スコットランド東部の Motray と Brothock における集

水池に関して,高い富栄養化と夏季の水量低下を解決する方法を考えるために,灌漑規

制,肥料使用規制を属性とした選択型実験を行っている.環境改善のシナリオでは,環

境属性として複数の変数を設定した際に,それぞれの効用パラメータが相関してしまう

可能性があるので,その相関を許した ML で分析している.まず,尤度比検定によって,

効用パラメータは,相関を削除したものと許したものとで比較検証した場合,有意差は

生じていないことを確認している.さらに,Convolutions Approach によって WTP の

異同を検証し,ほとんどの WTP に有意差がないことを示している. 以上を概観すると,河川管理に関して,選好の多様性,すなわち様々な WTP をもっ

た個人が存在することを想定し,かつ流域単位で分析を行った研究がないことがわかる.

同一河川の流域単位でも,非常に流域面積が広い場合には,流域別に住民の考え方を精

査する必要があろう.また,同じ地域に居住していても,選好の異なる様々なタイプの

個人が存在するものと考えられる. このように選好の多様性に注目し,次節で詳述する潜在クラスモデル(Latent Class Model:LCM)で水環境の分析を行ったものとして,以下の研究があげられる. Miron and Scrogin (2006) では,アメリカの Greater Everglades ecosystem に関し

て,湿地に関連した動物,乾燥地に関連した動物,フロリダ湾に関連した動物,

Everglades National Park 周辺の水量レベルを属性とした選択型実験を行い,LCM で

分析している.その結果,明らかに WTP の異なる 3 つの潜在的クラスが存在すること

を確認している. Birol et al. (2006) では,ギリシャ北西部の Cheimaditida 湿地において,生物多様

性,ヨシに覆われていない開かれた湖の確保,環境教育,エコツーリズムを属性とした

選択型実験を行っている.分析は CL・ML・LCM で行っており,LCM では,2 つの

潜在的クラスの存在を確認している.また,ヨシの削減は正で有意に推定されているこ

とから,開かれた湖の景観が好まれることが明らかとなった. 北上川の流域においても,選好の異なる複数の潜在的クラスが存在する可能性がある

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ため,それを考慮した分析が推奨されるものと考える. 以上の背景を受けて,北上川の河口域に関する環境対策の代替案を流域住民に提示す

る選択型実験を実施し,選好の多様性を評価できるモデルで分析することで,環境対策

に対する 1)上下流で意識の異同があるか,2)同じ下流域でも費用負担の方法に関して意

識の異同があるか,の2点を検証する.以上を LCM で分析することで,クラスター分

析などよりも,恣意性の少ない定量的な分析が可能である.これによって,CL を超え

たより豊かな解釈を試みる. 本稿の構成は以下のとおりとなる.まず,2 章において,選択型実験と使用した分析

モデルに関して概観する.3 章ではアンケート調査の内容を詳述する.4 章において,

分析結果を示した後に,5 章で上下流比較と費用負担比較の考察を行い,6 章で全体を

総括する.

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2. 選択型実験と分析モデル 2.1 選択型実験

選択型実験とは,コンジョイント分析の一種であり,計量心理学やマーケティングの

分野で発展してきた手法である(鷲田(1999)).アンケートを用いるため,表明選好

法に属する. 複数の選択肢を回答者に提示し, も望ましいものを選択してもらう.コンジョイン

ト分析では,選択肢のことをプロファイルと呼ぶ.プロファイルは,属性と呼ばれるい

くつかの特徴で構成されるが,適切な統計的手法を用いてプロファイルを作成(プロフ

ァイルデザイン)することで,属性間の相関を無くすことができる.市場データを用い

て分析する顕示選好法に比べて,多重共線性を回避できるというメリットがある.また,

属性や属性のとりうる値(レベル)を仮想的な領域まで広げることによって,より頑健

な推定が可能となる.さらに,アンケートで収集した回答者の心理や態度に関する情報

を分析段階で用いることが可能である. プロファイルをいくつか組み合わせて,選択セットと呼ばれる選択肢の集合を作成し,

それを回答者に提示する.通常,1人の回答者に複数回の質問を行う.このようにして

得られた選択データを統計的に分析することで,各属性の部分効用を推定することがで

きる. 分析の基本となるのは,ランダム効用モデルという概念である.ここで言うランダム

とは,例えばアンケート回答者が,選択肢を適当に選んでいるという意味ではなく,選

択肢から得られる満足度である効用の関数が,実験者にとって観察できる部分とそうで

ない部分から構成されているということである. 回答者 n が選択肢 iを選んだときの具体的な効用関数形に,以下の 1 式を仮定する.

(1)

ここで, niV は実験者に観察可能な部分で, niε は観察できない誤差項である.この誤差

項に,例えば第一種極値分布(Gumbel Distribution)を仮定すると,CL となる.以

下に詳述する潜在クラスモデル(Latent Class Model:LCM)は,この CL を基本と

している.選択確率の式は,以下の 2 式のように定式化される.

(2)

通常の分析では,実験者に観察可能な niV に線形を仮定することが多い.具体的な関

数形は,以下の 3 式のようになる.

ninini VU ε+=

( )( )∑ ∈

=Cm nm

nini V

VP

expexp

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(3)

ここで, nijx ( )Jj ,,1L= は属性変数であり, ijβ はその限界効用となる. ijβ は効用パラ

メータと呼ばれ,本研究でも以上のような線形の定式化を行った. なお,効用パラメータは,誤差項の逆数に比例するスケールパラメータと呼ばれるλと,混同(confound)して推定される.具体的には以下の 4 式のような形状となる.

(4) スケールパラメータは 1 に基準化されることが多いため,本研究でもそれに従ったii.

∑=

=J

jnijijni xV

1

β

λββ ijij ′=

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2.1 潜在クラスモデル 本節では,LCM に関して,栗山・庄子(2005)と Greene and Hensher(2003)を

参考に概説する. LCM の選択確率は,以下の 7 式のような定式化がなされる.ここで ( )Sss ,,1 K= はク

ラスの数である.

(7)

ここで, ( )nns zM はメンバーシップ関数と呼ばれる.実験者にとって観察できないクラ

スあるいはグループが存在し,個人がそれに属する理由を表現した関数である. nz は

心理や態度の変数である.メンバーシップ関数は単なる理由を表現しているに過ぎない

ため,ランダム効用モデルを用いた効用 大化の必要がない.よって,Greene(2003)の意味での多項ロジットモデル(Multinomial Logit Model:MNL)を用いることとな

る.推定は 尤法で行われる.反復回数を考慮した場合の選択確率は,以下の 8 式のよ

うになる.ここで ( )Ttt ,,1 K= は反復回数であるiii.

(8)

( )( )( )( )

( )( )⎥

⎥⎦

⎢⎢⎣

⎥⎥⎦

⎢⎢⎣

⎡=

∑∑∑ ∈=

=′ ′ Cm snm

sniS

sS

s nsn

nnsni V

V

zMzMP

|

|

11

expexp

expexp

( )( )( )( )

( )( )⎥

⎥⎦

⎢⎢⎣

⎡Π⎥⎥⎦

⎢⎢⎣

⎡=

∑∑∑ ∈

==

=′ ′ Cm snmt

snitTt

S

sS

s nsn

nnsni V

V

zM

zMP

|

|1

11

expexp

exp

exp

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3. 調査概要 3.1 サーベイデザイン

アンケート調査では,まず北上川の地理的な位置関係などの情報を与え,北上川と関

連した生活を送っているかどうか質問した. その後,自然環境に関する説明と質問を行った.続けて,その自然環境が悪化してい

ることを伝え,それらの認知度を質問している. 次に,ヨシ原保全,シジミの保護,流木等のゴミの量,レクリエーション(遊歩道,

休憩施設,親水設備)の整備について説明し,それらに対する意識を質問している.さ

らに,その対策の費用負担のあり方に対する意識を尋ねた後,CVMivおよび選択型実験

を行った. 選択型実験は 3 選択肢のものを 6 回繰り返した.以下の図 1 のような選択セットを

用いている.

計画案1 計画案2 現状 ヨシ原保全面積 30ヘクタール 60ヘクタール 30ヘクタール

シジミ漁獲量(年間) 300トン 240トン 240トン 流木やごみの量(年間) 現状のまま 1000 立方メートル 1 万立方メートル

レクリエーション整備 な し 遊歩道+休憩施設

+親水機能 な し

税 金 3000円 8000円 0円

望ましい案に○

図 1:選択セットの例

調査票は 3 種類用意した.すなわち,1)上流地域の住民を対象に用いたもので,費用

負担が全流域に課されると想定したもの,2)下流域の住民を対象に用いたもので,費用

負担が全流域に課されると想定したもの,3)下流域の住民を対象に用いたもので,費用

負担が下流域のみに課されると想定したものである.これによって,1)上下流の流域住

民の環境に関する意識差と,2)同じ下流域住民の費用負担に関する意識差を分析するこ

とができる. 属性とレベルは表 1 のとおりである.全属性の全レベルを組み合わせると 1024 通り

のプロファイルができるが,全てを用いるとプロファイル数が膨大になってしまうので,

主効果直交デザイン(Fractional Factorial Main Effect Design)によってプロファイ

ル数を減らした. 終的なプロファイル数は 16 となった.

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表 1:属性とレベル 属性 Level1 Level2 Level3 Level4 Level5

ヨシ原保全面積

(ha) 30 60 90 120

シジミ漁獲量(年

間:t) 240 280 320 360

流木やごみの量

(年間:m^3) 1000 4000 7000 10000

レクリエーショ

ン整備 遊歩道のみ +休憩施設 +休憩施設

+親水機能

なし

税金(円) 1000 3000 8000 15000 0 現状の

選択肢のみ

に記載 後に,回答者の社会経済特性に関する質問と,その他のコメントを記入する欄を設

けた.

3.2 調査時期と対象 選択型実験を成功に導くためには,本調査の前に,プレテストあるいはパイロットサ

ーベイを実施することが望ましい.本研究では,まず下流域の北上町と,上流域の盛岡

市において,訪問留め置き形式でプレテストを実施した.北上町は 2001 年 11 月 17,18 日に,盛岡市では 2001 年 12 月 1,2 日にそれぞれ行った. そして,本調査は郵送で行っている.2002 年 11 月 20 日に調査票を発送し,12 月末

日までに返送されたものをサンプルとして分析に用いた.上流域では岩手県盛岡市 200世帯,滝沢村 200 世帯,矢巾町(やはばちょう)100 世帯,紫波町(しわちょう)100世帯を,下流域では宮城県北上町(きたかみまち)200 世帯,河北町(かほくまち)200世帯vを調査対象とした.

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3.3 記述統計量 アンケート調査で得られたサンプルの記述統計量を,以下の表 2 に示す.全体のほか

に,上述のとおり 3 通りの調査票を用意したため,それらの詳細を記す.

表 2:記述統計量

質問項目 全体

上流

(全流域の

費用負担)

下流

(全流域の

費用負担)

下流

(下流域の

費用負担)

北上川への関わり方(複数回答可)

北上川でジョギングをする 164 76 38 50

北上川で水遊びや魚釣りをする 176 63 46 67

北上川の水を利用して農業を行っている 133 13 58 62

北上川で漁業を行っている 16 2 4 10

北上川でヨシの管理・収穫を行っている 1 0 1 0

北上川へのその他の関わり方 54 30 9 15

北上川に全く関わっていない 145 115 10 20

無回答 25 2 6 17

北上町への訪問経験あり 287 35 109 143

北上川に関する知識(複数回答可)

北上川にヨシ原が広がっていることを知って

いる 312 60 108 144

北上川でシジミ量が盛んなことを知っている 299 47 109 143

北上川がレクリエーションの場として利用さ

れていることを

知っている

309 81 101 127

北上川で流木やゴミの問題が生じていること

を知っている 333 90 104 139

ヨシ原に関しての意識

ヨシ原を現状より広く保全すべき 221 131 44 46

ヨシ原を現状で保存すべき 237 93 59 85

ヨシ原の保全は必要ない 7 1 2 4

ヨシ原の保全についてはわからない 49 39 4 6

ヨシ原の保全に関して無回答 11 5 1 5

シジミに関しての意識

現状より多くのシジミが獲られるよう保護す

べき 276 151 56 69

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現状のシジミを保護すべき 201 97 43 61

シジミの保護は必要ない 13 5 3 5

シジミの保護についてはわからない 20 13 4 3

シジミの保護に関して無回答 15 3 4 8

流木やゴミに関する意識

流木やゴミを減らす対策をすべき 418 221 89 108

現状の流木やゴミの量より増えないようにす

べき 76 34 16 26

流木やゴミの対策は必要ない 6 2 1 3

流木やゴミの対策についてはわからない 9 7 0 2

流木やゴミの対策に関して無回答 16 5 4 7

レクリエーション整備に関する意識

遊歩道・休憩施設・親水機能を全て整備すべ

き 229 117 53 59

遊歩道と休憩施設のみ整備すべき 103 51 20 32

遊歩道のみ整備すべき 48 27 7 14

レクリエーションの整備は必要ない 89 47 20 22

レクリエーションの整備に関してはわからな

い 34 20 5 9

レクリエーションの整備に関して無回答 22 7 5 10

対策の費用負担に関する意識

北上川河口域の対策は全流域が負担すべき 303 149 71 83

対策は上流のみ負担すべき 26 5 10 11

対策は下流のみ負担すべき 26 18 2 6

その他の費用負担を考えるべき 75 46 13 16

費用負担に関してはわからない 56 39 5 12

対策の費用負担に関して無回答 30 4 9 17

居住地域

盛岡市 87 87 n.a. n.a.

滝沢村 89 89 n.a. n.a.

紫波町 43 43 n.a. n.a.

矢巾町 42 42 n.a. n.a.

上流のその他の地域 1 1 n.a. n.a.

河北町 161 n.a. 69 92

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北上町 86 n.a. 41 45

下流のその他の地域 5 n.a. 0 5

居住地域に関して無回答 11 7 0 4

性別

男性 412 209 86 117

女性 105 58 24 23

性別に関して無回答 8 2 0 6

年齢

20 代 12 8 2 2

30 代 38 24 9 5

40 代 114 64 27 23

50 代 146 83 29 34

60 代 120 56 27 37

70 歳以上 88 31 16 41

年齢に関して無回答 7 3 0 4

職業

会社員 149 94 25 30

公務員 47 30 7 10

農業従事 68 19 23 26

漁業従事 10 0 3 7

自営業 43 15 14 14

パート・アルバイト 22 15 5 2

専業主婦 40 28 5 7

学生 1 1 0 0

無職 97 43 16 38

その他の仕事に従事 26 18 4 4

職業に関して無回答 22 3 8 11

世帯人員

1 人 20 15 1 4

2 人 98 54 19 25

3 人 104 57 19 28

4 人 110 61 24 25

5 人 76 39 16 21

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6 人 52 19 17 16

7 人 36 13 8 15

8 人 10 3 2 5

9 人 0 0 0 0

10 人 1 1 0 0

世帯人員に関して無回答 18 7 4 7

世帯内で収入がある人の数

1 人 151 90 31 30

2 人 209 111 43 55

3 人 82 37 20 25

4 人 19 6 6 7

5 人 3 1 1 1

6 人 1 1 0 0

世帯内で収入がある人の数に関して無回答 60 18 9 25

税込み年収

200 万円未満 30 12 7 11

200-400 万円未満 127 64 26 37

400-600 万円未満 144 67 41 36

600-800 万円未満 90 47 15 28

800-1000 万円未満 63 41 9 13

1000-1200 万円未満 24 15 3 6

1200-1400 万円未満 6 1 1 4

1400 万円以上 12 8 2 2

税込み年収に関して無回答 29 3 5 21

注:n.a.=not applicable(上流の住民は上流の居住地域,下流の住民は下流の居住地域

のみを質問項目として設定している)

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表 2 を概観すると,まず自然環境への対策は賛成派が多いことがわかる.特にヨシ原

の保全対策に関する項目では,上流は改善策が も好まれ,下流は現状維持が も好ま

れている.また,シジミ保護対策に関しては,改善策を好む回答者と,現状維持を好む

回答者が,同程度存在する. レクリエーション整備に関しては多少意見のばらつきがある.費用負担に関しては,

多くの回答者が,全流域での負担に賛成であるものの,分からなかったり,無回答であ

ったりした回答者も少なからず存在する. このように,各項目について意見のばらつきが確認されることから,選好の多様性を

考慮した分析を行うことが適当であると考えられる. 4. 分析結果 以下の分析において,変数選択は全て Akaike Information Criterion(AIC)で行っ

ている.また,潜在クラスモデルのクラス数選択には,様々な指標が存在するが,分析

の統一性を重視し,こちらも AIC で評価した.さらに,全体的なモデルの適合度とし

て,自由度修正済尤度比指数(Adjusted Likelihood Ratio Index:ALRI)を用いるこ

ととした. また,分析においては,選択肢特有定数項(Alternative Specific Constant:ASC)

を導入している.ASC1 は第 1 選択肢の,ASC2 は第 2 選択肢の ASC であり,これら

が負に有意である場合,現状を好む傾向が存在することになる.分析は

Limdep8.0+NLOGIT3.0 で行った. 分析に際して,独立変数の有意性に関して記述する.まずは,混合ロジットモデル

(Mixed Logit Model:ML)に関して説明を加えなくてはならないので,以下に詳述

する. ML を用いた研究では,効用パラメータの平均値が回答者ごとに異なるように,標準

偏差パラメータを導入する.その際に,1) 効用パラメータと標準偏差パラメータをす

べて有意に推定する立場と,2) 標準偏差パラメータをすべて有意に推定し,効用パラ

メータが仮に有意でなくとも,統計的に平均値が 0 であり,効用パラメータの分布関数

のロケーションが確定していると捉える立場の 2 通りが存在する. LCM も,ML を離散的に考えたものと捉えることが可能であるため,本研究では,

選好の多様性を表現しているメンバーシップ関数内の独立変数はすべて有意に推定し,

効用関数内の独立変数は有意でなくとも,モデルフィットを重視することとした. 分析対象として,1)上流地域の住民を対象とした調査で,費用負担が全流域に課され

ると想定したデータセットを「上流」,2)下流域の住民を対象とした調査で,費用負担

が全流域に課されると想定したデータセットを「下流 A」,3)下流域の住民を対象とし

た調査で,費用負担が下流域のみに課されると想定したデータセットを「下流 B」と定

義するvi. まず,上流と下流 A をプールして LCM で推定したものを表 3 に示す.クラス数は 2が採択された.

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表 3:上流と下流 A の LCM 結果 Coeff. t-ratio P-value

効用関数

ヨシ原保全|1 -0.026*** -7.438 1.020E-13

シジミ保護|1 -0.007*** -3.409 6.520E-04

流木・ゴミの量 1 -1.550E-05 -0.596 0.551

遊歩道|1 0.835*** 5.271 1.360E-07

休憩施設(遊歩道に加えて)|1 0.084 0.421 0.674

親水設備(遊歩道・休憩施設に加えて)|1 0.761*** 4.300 1.710E-05

保全税|1 -9.720E-05*** -5.518 3.440E-08

ASC1|1 -0.906*** -5.222 1.770E-07

ASC2|1 0.058 0.227 0.820

ヨシ原保全|2 9.864E-03*** 4.102 4.090E-05

シジミ保護|2 6.395E-03*** 6.356 2.070E-10

流木・ゴミの量 2 -5.680E-05*** -4.256 2.080E-05

遊歩道|2 -0.002 -0.016 0.988

休憩施設(遊歩道に加えて)|2 0.295*** 2.541 0.011

親水設備(遊歩道・休憩施設に加えて)|2 0.317*** 2.731 0.006

保全税|2 -1.100E-04*** -12.852 2.890E-15

ASC1|2 0.835*** 7.051 1.780E-12

ASC2|2 0.614*** 3.658 2.540E-04

メンバーシップ関数

定数項|1 -0.611*** -3.621 2.930E-04

今の流木・ゴミの量から増えないようにす

べき|1 0.727*** 1.985 0.047

下流 A のデータセットのダミー変数|1 0.572*** 2.013 0.044

遊歩道と休憩施設を整備すべき|1 -0.521* -1.641 0.101

定数項 0 1.00E+10 0.101

今の流木・ゴミの量から増えないようにす

べき|2 0 1.00E+10 0.101

下流 A のデータセットのダミー変数|2 0 1.00E+10 0.101

遊歩道と休憩施設を整備すべき|2 0 1.00E+10 0.101

No.of obs. 1868

Log-likelihood -1721.850

ALRI 0.156

注 1:|X はクラス X を示す(以下の表も同様). 注 2:E-0Y は 10 のマイナス Y 乗を表している(以下の表も同様). 注 3:有意水準は 5%:***,10%:**,15%:*(以下の表も同様).

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次に,下流 A と下流 B をプールして LCM で推定したものを表 4 に示す.クラス数

は 2 が採択されたvii.

表 4:下流 A と下流 B の LCM 結果 Coeff. t-ratio P-value

効用関数

ヨシ原保全|1 4.090E-04 0.015 0.988

シジミ保護|1 -0.017*** -2.918 3.523E-03

流木・ゴミの量|1 5.360E-04 1.540 0.123

遊歩道|1 5.194*** 5.329 9.900E-08

休憩施設(遊歩道に加えて)|1 5.007*** 3.250 1.153E-03

親水設備(遊歩道・休憩施設に加えて)|1 6.599*** 2.963 3.051E-03

保全税|1 -6.480E-06 -0.090 0.928

ASC1|1 -2.819*** -7.204 5.850E-13

ASC2|1 -7.101*** -1.980 0.048

ヨシ原保全|2 0.009*** 3.254 1.138E-03

シジミ保護|2 0.009*** 4.945 7.610E-07

流木・ゴミの量|2 -4.620E-05*** -2.735 6.242E-03

遊歩道|2 -0.589*** -4.540 5.630E-06

休憩施設(遊歩道に加えて)|2 -0.152 -0.986 0.324

親水設備(遊歩道・休憩施設に加えて)|2 0.016 0.135 0.892

保全税|2 -7.000E-05*** -6.401 1.540E-10

ASC1|2 0.589*** 4.397 1.100E-05

ASC2|2 -0.086 -0.451 0.652

メンバーシップ関数

定数項|1 -0.561*** -2.421 0.015

下流 B のデータセットのダミー変数|1 0.515** 1.728 0.084

定数項|2 0 1.000E+10 0.084

下流 B のデータセットのダミー変数|2 0 1.000E+10 0.084

No.of obs. 1291

Log-likelihood -1093.850

ALRI 0.223

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5. 考察

5.1 上流域と下流域の意識差 表 3 の分析は,費用負担に関しては全流域負担であり,上流域と下流域の回答者で構

成されているために,環境対策に関する意識差を分析している. 表 3 のメンバーシップ関数において,まず下流 A のデータセットのダミー変数が正

で推定されていることから,クラス 1 は下流 A の回答者の意識が反映されている.ま

た,流木・ゴミ量に関しては現状維持,遊歩道と休憩施設の併設には否定的な意見が見

られる. ヨシ原保全の効用パラメータに関して,クラス 1 では負に推定されているのに対して,

クラス2では正に推定されている.クラス2はヨシ原保全に肯定的であると考えられる.

河口域の環境対策に関して,外部の立場から見ると,ヨシ原保全が魅力的に感じられる

ことが示唆されている. シジミ保護に関しても,ヨシ原保全と同様の傾向であるため,解釈も同様となる.た

だ,クラス 1 に関して負に推定されていることから,シジミの生態系価値よりも,商業

的価値として捉えられ,受益者が漁民に限られると考えた可能性がある. また,今の流木・ゴミの量を維持すべきである(基準は「それ以外の回答(改善策を

好む,など)」)という変数が正に推定されている.クラス 1 は改善策などよりも,現状

維持を優先的に考えていることが分かる. さらに,遊歩道に関しては,クラス 2 に関しては有意に推定されず,クラス 1 に関し

ては正に推定されている.クラス 2 の回答者にとっては,遊歩道のみを整備するよりも,

他のレクリエーションと合わせた整備が好まれていることが示唆される.クラス 1 に関

しては,遊歩道・休憩施設の整備よりも遊歩道のみか,あるいは親水設備も加える案が

好まれている.休憩施設の優先順位は低い可能性がある.

5.2 費用負担の意識差 表 4 の分析はすべて下流の住民で構成されているため,以下の議論は,すべて下流域

住民の選好分析である.全流域負担と下流のみの負担に関して検討できる. 表 4 のメンバーシップ関数において,下流 B のデータセットのダミー変数が正で有

意に推定されているため,クラス 1 は下流 B の回答者の意識が反映されている. まず,ヨシ原保全の効用パラメータはいずれのクラスでも正で有意に推定されている

ため,肯定的に捉えられている. シジミ保護の効用パラメータの正負がクラス間で逆転している.クラス 1 では負で推

定されているため,下流のみの費用負担ではシジミ保護はするべきでないと意思表明さ

れている.費用負担を全流域に拡大すれば,シジミ保護をするべきであるということに

なる. また,流木・ゴミの量に関しては,クラス 1 では統計的に 0 と異ならないため,選好

を表明しておらず,クラス 2 では負に推定されている.流域全体の費用負担であれば,

流木・ゴミの量の増加は効用水準の低下につながる.したがって,下流域の住民は,流

域全体の費用負担によって,流木・ゴミの減量対策をすべきであると考えていることが

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示唆される. 遊歩道,遊歩道+休憩施設に関しても,正負が逆転している.クラス 1 では正に推定

されているため,全流域負担ならば全てのレクリエーション整備案に肯定的だが,下流

域のみの負担の場合,特に遊歩道のみの整備案に否定的な意思表明がなされている. 6. おわりに 本研究では,北上川河口域の環境問題を受けて,流域住民の選好の多様性を,選択型

実験を用いて検証した. LCM を用いた分析の結果,上流と下流の環境への意識差と,費用負担への意識差と

が確認された.環境への意識差として,自然環境に関しては外部者と考えられる上流域

の方が価値を高く評価し,レクリエーションに関しては,直接的受益者と考えられる下

流域の住民が複数のレクリエーションの併設を望んでいることが示された.費用負担の

意識差として,自然環境・レクリエーションとも全流域で負担することが好まれる結果

となった. 以上によって,北上川のような,流域が広い河川を流域単位で管理するには,環境対

策に関する住民の選好の多様性を考慮して,全流域で費用負担すべきことが示唆された.

しかも,上流域の住民も下流域の環境対策に一定の価値を認めているため,本研究の事

例では比較的利害関係の深刻でない可能性がある. 合意形成過程への示唆としては,例えば市民参加のパネルディスカッションを行う際

には,政策対象に関する価値観と意識を聞きながら,それらに対応した議論を進めるこ

とで,円滑になるかもしれない.ただし,費用負担に意識差があれば,円滑な議論が損

なわれる可能性もある.これらに関しては,本研究では十分に考察できないために,今

後の調査・分析に譲ることとする. また,本研究では WTP を算出せずに議論を行っている.上述の ML によって,BT

分析とともに WTP を算出した研究を,現在併行している.WTP の規定要因分析も含

めて,そちらで議論する. 後に,比較的即座に行うことのできる分析モデルの拡張として,LCM の結合推定

による誤差項の不均一分散を導入する分析と,メンバーシップ関数の独立変数がクラス

単位で異なるモデル分析が考えられる.さらに,Graves et al. (2007) で提案された階

層ベイズモデル(Stratified Bayesian Model:SBM)では,バイアスパラメータとそ

の発生確率が定義できるために,逆選択(Adverse Selection)や現状バイアス(Status quo Bias)など,分析者にとって扱いが困難なものをバイアスパラメータに吸収させて,

適切な部分のみ取り出すことが可能である.これらは今後の課題である. 付記:本稿は草稿段階に付き,著者の許可のない一切の転載・流用を禁じる.

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助金(基盤研究(B))研究成果報告書』, pp.153-164. [19]鷲田豊明(1999)『環境評価入門』, 勁草書房. [20]山根史博, 浅野耕太, 市川勉, 藤見俊夫, 吉野章 (2003) 熊本市民による地下水保

全政策の経済評価-上下流連携に向けて-『農村計画学会誌』 , Vol.22, No.3, pp.203-208.

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Evaluation of River Basin Management Implemented by Area Units

Taro OHDOKO Graduate School of International Development and Cooperation, Hiroshima

University, Japan Mail to: [email protected]

Toshiaki SASAO

Faculty of Humanities and Social Science, Iwate University, Japan Mail to: [email protected]

Takahiro TSUGE

Faculty of Economics, Konan University, Japan Mail to: [email protected]

Abstract

In the Kitakami River Estuary, there are reed fields and creatures such as shellfisheries. These days, however, driftwoods and rubbishes from the upper area of River destroy Landscape and Ecology. We conducted choice experiments with reed preservation, shellfisheries protection, rubbishes quantity, and recreations, which are consisted with promenade, rest facility, and institution to be familiar with river basin, to examine what is necessary to conduct river basin managements by area units. Latent Class Model is used to analyze preference heterogeneities. In results, there are the differences about environments across areas and about payment responsibilities in the lower area. As to the difference about environments, upper area residents evaluate higher on the ecology and lower area residents desire that multi-recreational facilities be established. As to the difference about payments responsibilities, it is preferred to be paid by all areas about ecology and recreations.

Key Words: River Basin Management, Preference Heterogeneity,

Choice Experiment, Latent Class Model

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i 本研究は,平成 13~14 年度河川整備助成金(河川環境管理財団)「北上川河口域における地域

共生システムに関する総合的研究」と,平成 14~15 年度科学研究費補助金(基盤研究 B)「ヨ

シ原をめぐる地域環境のグランドデザイン構築」(研究代表者:岩手大学人文社会科学部・牧陽

之助教授)の一部です.ここに記して深く感謝いたします. ii 本来ならばスケールパラメータを相対的に設定する必要がある.本研究では簡単化のため,以

下ではすべてスケールパラメータを 1 に基準化している. iii LCM によって,メンバーシップ関数を導入できるために,CL を超えた,より豊かな解釈が

できる.本稿ではそのメリットを採用するために LCM を用いている.また,効用関数にデータ

セット・ダミーを導入することで,より簡便に議論することが可能であるものの,プロファイル

属性以外の変数を効用関数に導入することで,直交性の崩れによる多重共線性が懸念されるため,

メンバーシップ関数と効用関数が独立に推定される LCM でその問題を回避した. iv CVM を選択型実験の前に 3 回行っている.本稿ではその分析は割愛する. v 両町とも平成 17 年 4 月に石巻市と合併している. vi 通常のアンケート調査による選択型実験では,例えば反復質問ごとに,選択肢を選んだ理由

を聞く「Follow-up Question」を設定し,抵抗回答を除去することが多い.本研究では,アン

ケート調査票が煩雑になることを避けるために設定しなかった. vii こちらでは,ASC2|2 が有意に推定されていないが, もモデルフィットがよく,また,ASCを「選択肢数-1」まで導入することで,効用パラメータが一致推定量になると知られているため

に(土木学会(1995)),削除しない立場をとっている.

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広島大学 21 世紀 COE プログラム「社会的環境管理能力の形成と国際協力拠点」 ディスカッションペーパー Vol.2003-1 松岡俊二・岡田紗更・木戸謙介・本田直子(広島大学大学院国際協力研究科)「社

会的環境管理能力の形成と制度変化」2004/2/13. Vol.2003-2 木村宏恒(名古屋大学大学院国際開発研究科)「インドネシアの地方分権と社会的

環境管理能力形成をめぐる諸問題」2003/11/21. Vol.2003-3 吉田謙太郎(筑波大学大学院システム情報工学研究科)「都市生態系の社会経済評

価」2004/3/31. Vol.2004-1 Fujiwara, A., Zhang, J., Dacruz, M.R.M. (Graduate School for International Development

and Cooperation, Hiroshima University) “Social Capacity Development for Urban Air Quality Management the Context of Urban Transportation Planning” 2004/4/20.

Vol.2004-2 藤倉 良(法政大学人間環境学部)「公害克服経験における社会的アクターの関係

‐工業都市の硫黄酸化物対策‐」2004/4/20. Vol.2004-3 柳下正治(名古屋大学大学院環境学研究科)「市民参加による循環型社会の創生ス

テークホルダー会議の評価」2004/11/15. Vol.2004-4 松本礼史(日本大学生物資源科学部)「横浜市における社会的環境管理能力の発展

モデルの検討」2004/5/31. Vol.2004-5 本田直子(広島大学大学院国際協力研究科)「日本の大気汚染における社会的環境

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