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パーソナリティー (Y. I.) 2013/3/16
1
性 格 (Personality)
•1
☆ 本章の目標
① 性格理論を理解する。
② 性格テストに必要な条件を理解する。
☆ Key Words
•2
• 心理学の目標-人間の行動における法則性を見出すこと。
• 人間の行動に影響を及ぼしている外界の刺激を発見することにより、行動の多様性を理解しやすくすること。
• このとき、個人個人の違いは、誤差として扱われる。
•3
• しかし、同じ状況におかれても、個人ごとに反応の違いがある。
↓
•
• 個人差-刺激によっては説明されない、個人の行動における多様性。
•4
重要な用語の定義
☆ 性格(character)とは、
☆ パーソナリティー (personality)は、「個人の行動、思考、認知、判断、感情表出、好悪などに時間的、空間的な一貫性を与えているもの(外界に対する個人の適応機能を捉えたもの)」である。
•5
☆ 気質(temperament)は
• そのほか、比較的遺伝に規定される部分の大きいもの
活動性、感受性、知的能力、
身長、体格、顔立ち、運動能力など
•6
パーソナリティー (Y. I.) 2013/3/16
2
パーソナリティー研究の研究課題
• ある個人の、その人らしさはどの程度一貫していて、どの程度状況に応じて変化するのか?
• 別の個人と比較すると、どこがどのように同じで異なっているのか?
• どのようなパーソナリティーが存在して、それがどのようにその個人を形成しているのか? 高橋ら(2011)
•7
(1)性格類型論
•
• 20世紀前半のヨーロッパ、特に、ドイツで活発に研究された。
•8
• 性格類型論の特徴
① 人間をユニークな存在として捉え、それを要素に分解していくこと(還元主義)を否定し、 に注目する。
② 統計的な方法を採らず、典型的な個々の事例の研究を重視する。
•9
• C. G. Jung (1921)の類型論
① 外向型
という心的エネルギーが主として
向かい、外界の事象を重視する 傾向の人
•10
• 外向型の特徴
感情表現が豊か。
気分の変化が早い。
陽気。 独立心が強く、指導力がある。
新しい状況に対する適応性は良好。
広範囲の人と交際する。
多弁で機知に富む。
•11
② 内向型
心的エネルギーが内面(主観的世界)に向かい、自分に関心が集中しやすい人。
• 内向型の特徴
感情が表面に出ず、気分の変化が少ない。
内気。 新しい状況への適応性が乏しい。
論理的によく物事を考える。
交際範囲は狭い。•12
パーソナリティー (Y. I.) 2013/3/16
3
• 4つの心理的根本機能
a. 思考機能: 正誤の判断
b. 感情機能: 好き・嫌い、快・不快の判断
c. 感覚機能: 五感を通して刺激をありのままに知覚する働き。
d. 直感機能: 無意識的、本能的とも言える方法で対象を知覚する働き。
↓
向性と上記の4機能を組み合わせて、8つの性格類型を想定した。
例) 外向思考型、内向直感型
•13 •14
• E. Kretschmer (1924)の身体類型論
臨床精神医学者(独)としての経験から、統合失調症(精神分裂病)、双極性気分障害(躁うつ病)とその患者の体格との関連性に気づいた。
↓
•15
• 精神障害の種類
1. 認知障害
2. 物質関連障害
3. 精神病性障害
4. 気分障害 ☆
5. 神経症性障害
6. 適応障害
•16
•17
① 分裂気質(痩せ型)
• 非社交的、静か、内気、きまじめ
• 臆病、はにかみや、敏感、神経質
• 従順、お人好し、温和、無関心、鈍感
•18
パーソナリティー (Y. I.) 2013/3/16
4
② 躁うつ気質(肥満型)
• 社交的、善良、親切、暖かみ
• 躁状態-明朗、ユーモア、活発
• うつ状態-寡黙、平静、柔和
•19
③ 粘着気質(闘士型)
• 融通が利かず、繊細さに欠ける。
• 約束や規則は正直に守る。
• 他者に対する態度はきわめて丁寧。
•20
Sheldon & Stevens (1942)
• 外胚葉(細長)型(中枢神経)
身体的、情動的に抑制され、未来指向的、内向的。
• 内胚葉(肥満)型(消化器官)
食べ物や仲間を好み、落ち着いている。
• 中胚葉(筋骨)型(筋肉、骨格)
動くことを好み、冒険好き。支配的。
•21
性格類型論の長所と短所
長 所
• 典型的なものが明示されているので、 個人の性格の が容易である。
• 他者の性格を理解し、 をすることが可能になる。
•22
短 所
• 少数の類型に分類するため、 が無視されやすい。
• ある類型に特徴的な性格だけが注目されて、他の側面が見失われやすい。
• 実際の人物に伴っていない性格が付与されてしまう可能性がある。
• 性格の文化的、社会的、発達的要因が軽視されている。
•23
(2) 特性論
• 特性: 一定の仕方で行動し、反応する傾向のこと。
•
↓
• どのような特性を性格の基本単位に設定すればよいのか?
•24
パーソナリティー (Y. I.) 2013/3/16
5
• 特性論の基本的な考え方
a. 多くの人の性格に共通し、かつ、中心的な特性をいくつか、何らかの方法で選び出す。
b. 各個人について、それぞれの特性の程度を測定する。
c. 性格プロフィールを作成して、個人の性格を理解する。
•25
• G. Allport (1937)の特性論
Websterの辞典から特性用語を収集するために17,953語を選び出した。
それを4,504語に減らし、さらに、以下のような14特性にまとめた。
支配的、外向的、自己批判的、自負的、
群居的、利他的、理論的、経済的、
芸術的、政治的、宗教的など
•26
• R. B. Cattell (1965)の特性論
特性の抽出を主観的ではなく、統計的な手法(因子分析)を用いて行った。
表面特性:外部から観察可能な54特性。
根源特性:表面特性の背後に潜在している16特性。
高知能-低知能、懐疑性-信頼性、
支配性-服従性、冒険性-臆病性、
急進性-保守性など
•27
• H. J. Eysenck (1967, 1973)の特性論
精神医学的判断、質問紙テスト、動作テスト、身体的差異という4つの方法でデータを集めた。
↓
モーズレイ性格検査
•28
性格特性の二面性
• 1つの性格には、社会的に見て良い(望ましい)面もあれば、悪い面もある。
例) 意志が強い-頑固
積極的-厚かましい
粘り強い-執念深い
世話好き-押しつけがましい
•
•29
特性論の長所と短所
長 所
•
• 質問紙によるテストを作成しやすい。
• 性格プロフィールを作成することにより、 視覚的に性格を理解できる。
•30
パーソナリティー (Y. I.) 2013/3/16
6
短 所
•
• 分析の基礎になっている特性が性格のすべてを網羅している保証はない。
• 研究者によって挙げている特性が一致していない。 → 五大因子
•31
五大因子 (Big Five)McCrae & Costa (1987)
• (Neuroticism)心配性、悩みがち、困惑しやすい
←→安定的• (Extraversion)
エネルギッシュ、積極的、社交的←→内向的
• (Openness to experience)想像的、拡散思考、独創的、芸術的
←→保守的•32
五大因子 (Big Five)McCrae & Costa (1987)
• (Agreeableness)
愛想がよい、利他的、信頼できる
←→競争的
• (Conscientiousness)
計画的、効率的、勤勉、几帳面
←→快楽的
•33
五因子性格検査Ⅰ(FFPQ)
• 情動性 Emo: 心身の危機に対する
敏感さ、情動反応の強さ
• 外向性 Ext: 活動水準の高さ
• 遊戯性 Pla: 現実に対する密着-離脱
• 愛着性 Att: 対人的分離-愛着
• 統制性 Con: 事物や自己に対する統制
•34
五因子性格検査Ⅱ(NEO‐PI‐R)
• 神経症傾向 Neu: ストレスへの対処
困難性、不安定性、感受性
• 外向性 Ext: 活動性、社交性
• 開放性 Ope: 広い興味、想像力豊か
• 調和性 Agr: 思いやり、温厚、協力的
• 誠実性 Con: 誠実、目標への努力
•35
五大因子と一般的関心との遺伝学的関連性
• 双生児研究 Kandler et al. (2011)
• 7つの関心領域における遺伝的影響の35%、環境的影響の9%は、パーソナリティー(特に、 )で説明可能
• 家事、自然科学、芸術、社会教育、娯楽、知的文化、論理的
• パーソナリティーに基づく内発的動機づけ→ 行動 → 関心領域の形成
•36
パーソナリティー (Y. I.) 2013/3/16
7
(3) 性格検査に要求される条件
①
測定対象を一貫して、安定的に測定できる程度
例) 体重計
→ 時間的安定性
質問項目間の相互関連性
(内的整合性)
•37
例) シャイネス尺度
• 新しい友人はすぐできる。 相川(1991)
• 人がいるところでは気後れしてしまう。
• 引っ込み思案である。
• 人の集まるところではいつも後ろの方に引っ込んでいる。
• 自分の将来は、運やチャンスによって決まる。
• 初めての場面でもすぐ打ち解けられる。
•38
☆ 信頼性の評価方法
(a) : 時間的安定性の確認
同一個人に同一の検査をある時間をおいて2度実施し、両者の相関係数を算出する。 (.70~.90ぐらいの値)
(b) : 内的整合性の確認
ある検査に含まれる質問項目間の関連性を表す指標(0.0~1.0)。
α>.80
•39
②
ある検査が測定しようとしている対象を(それ以外の対象でなく)測定しているかどうか
例) 外向性を測定しようとしているのに、協調性を測定してしまってはいないか?
•40
☆ 妥当性の評価方法 (基準関連妥当性)
(a) 同時的妥当性
妥当性の確認されている既成の尺度との相関係数を算出する。
(b) 判別的妥当性
他の基準によって識別できることがわかっている2群を当該尺度で識別できるかどうかを確認する。
(c) 予測的妥当性
当該尺度によって個人の行動や特性をどの程度予測できるかを確認する。
•41
③
• ある検査が測定の対象とする集団(日本人成人)を代表する多くの個人に標準的な条件(実施状況、時間など)で行い、その時得られた得点(平均、分散)を標準とする作業のこと。
• 標準の得点と比較することにより、検査を受けた個人の相対的な位置や特徴を知ることができるようになる。
•42
パーソナリティー (Y. I.) 2013/3/16
8
☆ 性格検査の作成方法
① 質問項目の収集
(逆転項目、ワーディング)
② 質問紙調査の実施(第1回)
③ データに基づいて項目分析
信頼性、妥当性の検討
④ 質問紙調査の実施(第2回)
⑤ 質問項目の修正、削除、付加
⑥ 標準化
•43
(4) 性格検査の種類
① 質問紙法
ある性格特性を測定するための質問
項目について3~11点尺度上に回答させ
る形式。
• 質問項目の作成が大変。
•
• 多人数を対象に実施できる。
• 分析が比較的簡単。
•44
☆ 質問紙法の代表例
a. YG性格検査
• 抑うつ性、劣等感、神経質、活動性、支配性、外向性など12の特性を120項目で測定する(3点尺度)。
• 情緒安定性、外向-内向の2次元に基づいて、5類型(細かくは15類型)に分類して性格を診断する。
•45
b. 5因子性格検査
• 内向性-外向性、分離性-愛着性、
自然性-統制性、非情動性-情動性、
現実性-遊戯性の5因子を測定。
• 5因子にそれぞれ5種類の下位尺度があり、全部で150項目から成る(5点尺度)。
c. その他
モーズレイ性格検査
ミネソタ多面人格目録 (MMPI‐Ⅱ)
•46
•47
② 投影法
•
• 被検査者は、その中性刺激に個人的な特別な意味を「投影」することになる。
• 検査者はその回答を基に、被検査者の欲求や情緒、性格を推測する。
•48
パーソナリティー (Y. I.) 2013/3/16
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•49
• 投影法で測定しようとしていること
a. 知的機能b. 情緒の働き、安定性、情緒表現の仕方c. 家族関係を含む対人関係の持ち方d. 無意識的葛藤やコンプレックス、衝動e. 自己イメージf. 自我の機能や強さ、防衛機制g. パーソナリティーの成熟度、統合度
•50
☆ 投影法の長所・短所
• 投影法には正しい答えがないため、社会的に望ましい回答をすることが不可能。
•
• 熟練した検査者の主観的な判断に
基づいて回答を分析せざるをえない。
• 検査者を訓練するのに相当な時間と労力が要求される。
•51 •52
☆ 投影法の種類
a. 言語刺激を用いるもの
言語連想テスト、
b. 視覚刺激を用いるもの
、絵画統覚検査
c. 表現を用いるもの
人物画テスト、
d. 遊戯、劇を用いるもの
、人形遊び法•53 •54
パーソナリティー (Y. I.) 2013/3/16
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•55 •56
•57
• 箱庭療法
内側を水色に塗った箱(57 x 72 x 7 cm)に砂を入れ、多くの小さい玩具を用意する。
クライエントは、好きな玩具を用いて自分の好きな風景をその中に作っていく。
← クライエントの無意識的世界の表現
D. M. Kalff
a. 動物的、植物的段階
b. 闘争の段階
c. 集団への適応の段階
•58
空間の使い方の背景にある意味 ③ 作業検査法
例) 内田・クレペリン検査
1桁の加算作業
課題に取り組む積極性、注意力の持続性、課題への慣れ、あせりやすさなどの特徴を把握する。
•60
パーソナリティー (Y. I.) 2013/3/16
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•61 •62
改めて性格とは?
•
• 行動に対して因果的に先行するような、実体あるものではない。
× 性格 → 行動
○ 時間的状況的に一貫した
行動パタン ← 性格と呼ぶ
•63
性格は変容する?
• 特に の間では、多くの変化が認められる。
• 個人にとって重要な危機の体験が性格の変化を含む心理的変化をもたらす。
• にかけて、ビッグ・ファイブは安定的である。
• しかし、個人ごとに見ると、安定性についてばらつきが認められる。
•64
性格形成の規定因
• 生まれた家庭環境
• 家族構成
• 育児方法、養育態度
• 友人関係、教師との関係
• 文化的、社会的要因
•65 •66
パーソナリティー (Y. I.) 2013/3/16
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養育態度と性格形成との関係
• 民主的-専制的
• 受容的-拒否的
• 支配的-服従的
• 無視・放任
•67 •68
性格と脳内物質
•高い: 自分に害が及ぶのを恐れる、悲観的
人見知りをする、内向的
低い: 冷静沈着、楽観的、エネルギッシュ
セロトニンという脳内物質との関連性
不安になると、神経細胞から放出される
セロトニンの量が少なくなる。
セロトニンを放出する神経細胞
神経細胞全体の30~40%
• 神経細胞から放出されたセロトニンの行き先
a. 後シナプスの受容体にくっつく
b. 自然消滅
c. 前シナプスのトランスポーターという入り口から元(前シナプス)に戻る
• 抗不安薬プロザックは、トランスポーターの入り口をふさぐ。
• 抗不安薬ブスピロンは、後シナプスの受容を促進する。 ↑
いずれも脳内のセロトニン量を減少させないようにしている。
• 全般不安神経症(ノイローゼ:不眠、疲労感)や強迫神経症 ←harm avoidanceが高い
これらにもセロトニンが関与しているらしい
• Harm avoidance傾向は遺伝的に決まっている可能性がある。
• 神経質、心配性などの傾向を遺伝子レベルで記述できる可能性が出てきた。
•
ドーパミンという脳内物質との関連性
• ドーパミンが不足すると自発行動がなくなり少量放出されると意欲がわき、出過ぎると幻覚や被害妄想を引き起こす。
• ドーパミン受容体には5種類あり、その内のD4に個人差が認められた。
遺伝子の一部が長い人ほど、NSの高いことが見出された。
☆ 以上のことは、複数存在する要因のうちの1つである。
パーソナリティー (Y. I.) 2013/3/16
13
行動パタンに影響
(高不安、神経質、探求行動など)
(特定の行動パタンに対するラベルづけ)
•73
2004年
¥ 1,680
•74
パーソナリティーと適応
Roberts, Kuncel, Shiner, Caspi,
& Goldberg (2007)の研究
a.パーソナリティー特性 死亡率
b.社会経済的地位 離婚
c.認知能力 職業達成
3種の要因の内、予測的妥当性の高かったものは?
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Big Fiveと仕事満足度
Templer (2011)の研究 シンガポール
・ 西欧圏の研究 → 両者に関連性
・ 相互依存的、集団主義的な東洋では?
・
→ 仕事満足度と関連していた。
•76
この次は「臨床心理学」の話です...
☆ 時間が15分以上残っていれば、もう少し授業を続けることにします。
☆ 授業の後、「質問・意見カード」を提出したい人は教壇へどうぞ…。
•77