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18 19 処 方 化 の 動 機 と な る 潜 在 的   要 因 は、 一 般 に 5つ といわれる (1) 医師の処方動機と 医薬プロモーション・ミックス 自験例 オピニオンリーダー 理論根拠 医学会動向 MRからの説明 による勧め 医学会動向 自験例 オピニオンリーダー 理論根拠 MRからの説明 による勧め DR 自身の薬剤試用体験、臨床経験 専門分野のオピニオンリーダーの 意見や推奨 薬剤の適正使用の普及 OLの処方傾向や情報提供 全体を通じた整合性や総合的な納得 グローバルな最新学会情報動向 出所「営業マニュアル事典 (MR) のためのマーケティング」( 産業調査会 : 吉村等共著 ) 臨床医 (DOCTOR) の処方動機 自験例 DR 自身の薬剤試用体験、臨床経験に基づくもの ・DRは 「診療ガイドライン」 を基準として処方するが、従来の薬物療法では満足できない患者などに、 新薬臨床試用医薬品を試用し、自身で効果を確認してみる。DR は自社にとって、開発協力者、研究 者でもあるが、とくに臨床医は有効性、安全性などに納得が得られれば、対象を広げて継続使用する ・他の DR より、いち早く新薬の効果を実感することが出来る治験参加医にとって、重要な処方動機 となる 医学会動向 グローバルな最新学会情報・動向によるもの ・現在、DR にとって多くのメディアを通じて新薬の情報は得られる。とくに大病院の DR は診療医で あると同時に、研究者でもある 2 つの顔をもっている。新薬に関する情報 ( 学会発表や、シンポジ ウムへの出席など ) を収集している ・DR はつねに最新の医学情報・動向、とくに日本では上市されていない薬剤の海外での使用傾向や 学術情報、EBM データには敏感である 口コミ DR 同士がお互いに情報を得る ( 専門分野のオピニオンリーダーの意見や、推奨によるもの ) ・DR は専門領域についての薬剤には詳しいが、専門以外の分野についてはあまり詳しくない ・院内の専門医や、出身医局の先輩などの意見を尊重して、専門外の薬剤を使用する場合が多い MR からの勧め 薬剤の適正使用の普及に基づくもの ・DR の薬物療法・処方に革新的な影響のある新薬であれば、DR は発売前から国内外の情報や、MR からの情報提供などにより、かなり高い情報を取得しているのが一般的である ・DR はつねに疾患に対して、何がゴールかを追究している。医療の本質である治療や、医薬品の有効性・ 安全性について謙虚に耳を傾けてくれる ・MR は自社の薬剤に対する深い知識を持ち合せ、また多くの DR や全国的に影響力をもつ DR の処方 傾向などについて数多くの情報を有している。そのため処方 DR にとっても、MR から得られる情報 は貴重で、重要な処方動機となる 理論根拠 全体を通じた整合性や、総合的な納得によるもの ・DR は自身の治療方針、薬物療法がどのような病態に有用で、どのような患者なら適切かを常々考 えている ・DR は患者のよりよい治療方法や、薬物療法アップの必要性を感じている場合などはなお更のこと、 全体の整合性について総合的な納得が得られれば重要な処方動機となる ( 註 )「診療ガイドライン」とは、特定の臨床状況のもとで、臨床医が適切な判断や決断を下せるよう に支援する目的で、体系的に作成された文書のこと。 エビでンスに沿った EBM (Evidence Based Medicine) 医療が組み立てられ定着しつつある。 床医 (DOCTOR) の処方動機 - 潜在的な 5 つの要因 !! 1 2 3 5 4 自験例 医学会動向 口コミ MR からの勧め 理論根拠

DRが持つ 臨 (1)医師の処方動機と Ⅱ 医薬プロモーション・ …18 医薬マーケティング戦略 Ⅱ 19 処方化の動機となる潜在的 要因は、一般に5つといわれる

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Page 1: DRが持つ 臨 (1)医師の処方動機と Ⅱ 医薬プロモーション・ …18 医薬マーケティング戦略 Ⅱ 19 処方化の動機となる潜在的 要因は、一般に5つといわれる

18

医薬マーケティング戦略

19

処 方 化 の 動 機 と な る 潜 在 的  要 因 は、 一 般 に 5 つ と い わ れ る

(1) 医師の処方動機と医薬プロモーション・ミックス

臨床医(DOCTOR)の処方動機臨床医(DOCTOR)の処方動機

自験例

オピニオンリーダー

理論根拠

医学会動向

MRからの説明による勧め

医学会動向

自験例

オピニオンリーダー

理論根拠 MRからの説明による勧め

DR 自身の薬剤試用体験、臨床経験

専門分野のオピニオンリーダーの意見や推奨

薬剤の適正使用の普及OLの処方傾向や情報提供

全体を通じた整合性や総合的な納得

グローバルな最新学会情報動向

出所「営業マニュアル事典 (MR) のためのマーケティング」( 産業調査会 : 吉村等共著 )

臨床医 (DOCTOR) の処方動機

自験例 :DR 自身の薬剤試用体験、臨床経験に基づくもの・DR は 「診療ガイドライン」 を基準として処方するが、従来の薬物療法では満足できない患者などに、

新薬臨床試用医薬品を試用し、自身で効果を確認してみる。DR は自社にとって、開発協力者、研究

者でもあるが、とくに臨床医は有効性、安全性などに納得が得られれば、対象を広げて継続使用する

・他の DR より、いち早く新薬の効果を実感することが出来る治験参加医にとって、重要な処方動機

となる

医学会動向 :グローバルな最新学会情報・動向によるもの・現在、DR にとって多くのメディアを通じて新薬の情報は得られる。とくに大病院の DR は診療医で

あると同時に、研究者でもある 2 つの顔をもっている。新薬に関する情報 ( 学会発表や、シンポジ

ウムへの出席など ) を収集している

・DR はつねに最新の医学情報・動向、とくに日本では上市されていない薬剤の海外での使用傾向や

学術情報、EBM データには敏感である

口コミ :DR 同士がお互いに情報を得る ( 専門分野のオピニオンリーダーの意見や、推奨によるもの )

・DR は専門領域についての薬剤には詳しいが、専門以外の分野についてはあまり詳しくない

・院内の専門医や、出身医局の先輩などの意見を尊重して、専門外の薬剤を使用する場合が多い

MR からの勧め :薬剤の適正使用の普及に基づくもの・DR の薬物療法・処方に革新的な影響のある新薬であれば、DR は発売前から国内外の情報や、MR

からの情報提供などにより、かなり高い情報を取得しているのが一般的である

・DR はつねに疾患に対して、何がゴールかを追究している。医療の本質である治療や、医薬品の有効性・

安全性について謙虚に耳を傾けてくれる

・MR は自社の薬剤に対する深い知識を持ち合せ、また多くの DR や全国的に影響力をもつ DR の処方

傾向などについて数多くの情報を有している。そのため処方 DR にとっても、MR から得られる情報

は貴重で、重要な処方動機となる

理論根拠 :全体を通じた整合性や、総合的な納得によるもの・DR は自身の治療方針、薬物療法がどのような病態に有用で、どのような患者なら適切かを常々考

えている

・DR は患者のよりよい治療方法や、薬物療法アップの必要性を感じている場合などはなお更のこと、

全体の整合性について総合的な納得が得られれば重要な処方動機となる

( 註 )「診療ガイドライン」とは、特定の臨床状況のもとで、臨床医が適切な判断や決断を下せるよう

に支援する目的で、体系的に作成された文書のこと。

   エビでンスに沿った EBM (Evidence Based Medicine) 医療が組み立てられ定着しつつある。

臨床医 (DOCTOR) の処方動機 - 潜在的な 5 つの要因

DRが持つ

5つの"

潜在的な処方動機"を喚起させる  !!

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:・DR は 「診療ガイドライン」 を基準として処方するが、従来の薬物療法では満足できない患者などに、

自験例

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口コミ :口コミ :口コミ :

MR からの勧め :MR からの勧め :MR からの勧め :

理論根拠 :理論根拠 :理論根拠 :

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病・医院市場変化の視点と対応の方向性

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① 医療の標準化・効率化に対応する、医薬情報活動である ・EBM に基づく適正使用情報の提供強化  ・基幹病院、かかりつけ医、薬局に対す る頻回訪問の機会づくり

② DR のニーズに適った、社品の普及に有意義なプロモー ション・ ミックスである  ・医療連携クリティカルパスへの自社品の組みこみとフォロー

③ ライバルとの差別化をはかる優位な戦略となる ・「医療連携の会」をコーディネートする情報力と、社内組織連携力が求められる

病 院担当MR

基幹病院(HP)

医院DR(D)

医院DR(A)

医院担当MR

サポート

情報交換

医院DR(B) DR基幹病院の

医院DR(C)

医院 ( )

患者

医院DR(E)

医 療 連 携 サ ポ ー ト はエ リ ア ・ マ ー ケ テ ィ ン グ の

コ ア な 戦 略 だ ! !

医療連携のサポート 一 病・診連携の会

MR の医療連携サポート

MR の 「医療連携サポート」

<基幹病院担当 MR と医院担当 MR との連携> 病・診連携、病・病連携の会などは、主に基幹病院の「地域医療連携室」が中心に、進められている。

この試みは比較的歴史が浅く、病院として地域医療連携の役割について模索中のところも多い。

 MR は日常業務を通じて、多くの DR とコミュニケーションをとっており、このネッワークや活動を

生かして、病・病、病・診連携のお手伝いをすることができる。

 この会合を、基幹病院担当 MR と医院担当 MR とが連携してコーディネートする役割をもつ。

 “ タテヨコに広がる連携 ” は、エリア内のすべての医療機関にパイプを持つ、医薬企業だからこそで

きる ( 図 )。

 MR は、このような会合を通じて、DR 同士のネットワークのキパーソンとなることで、強い信頼を得

ることができる。企業もこれらの動きに対応した MR 間の連携しやすい組織・フォーメーションやバッ

クアップ体制についての強化が求められる。

これからの医薬マーケティングのキーワードは「地域医療連携」である ! !

展開のポイント

病・診連携の会 ( 医療懇談会、疾患研究会、地域講演会など ) 実施状況の把握・プロモーション活動-まず情報収集 (MI) からはじまる

・MR 間の情報交換

・インフォーマルな会合を母体とする連携もある

地域専門医の的確な情報把握 ・「かかりつけ医」への医療連携情報の提供

基幹病院の医療連携室への定期訪問 ・訪問強化による情報交換

・ 病・診連携情報の取得

地域連携マップづくりとサポートの企画・実施

MR 間の連携づくりと組織体系づくり① 基幹病院担当 MR と医院担当 MR の情報交換

② MR 間の連携づくりへの、バックアップ体制強化 ( 本社、支店 )

③ ネクスト・マーケティングの確立に、全社を挙げてのフォーメーションづくり

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医療連携サポートのできる

―                

  

全社バックアップ体制づくりが急務         

!!