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Page 1 20014月改訂 : Rev.3.1 核医学における画像処理 核医学における画像処理 核医学における画像処理 核医学における画像処理 核医学における画像処理 基礎と処理上の注意事項 基礎と処理上の注意事項 基礎と処理上の注意事項 基礎と処理上の注意事項 Daiichi Radioisotope Lab,LTD. Clinical Application Technology (CAT) Group

核医学における画像処理 - kyushunmt.orgkyushunmt.org/html/siryou/teraoka.pdfPage 2 核医学における画像処理 2001年4月改訂:Rev.3.1 本テキストは3章に分かれています。最初は、画像処理の基礎として、核医学画像の特性と各種フィルタ処理の効果を簡

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

核医学における画像処理核医学における画像処理核医学における画像処理核医学における画像処理

基礎と処理上の注意事項基礎と処理上の注意事項基礎と処理上の注意事項基礎と処理上の注意事項

Daiichi Radioisotope Lab,LTD.Clinical Application Technology (CAT) Group

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

本テキストは3章に分かれています。

最初は、画像処理の基礎として、核医学画像の特性と各種フィルタ処理の効果を簡単に紹介します。

次に、SPECTの基礎として、再構成の概要とSPECT画像に影響を及ぼす技術的な問題点を取り上げます。また、この章では、最近普及しはじめた逐次近似を用いた再構成法であるML-EM法についても簡単に紹介しています。

最後は、臓器別画像解析の注意事項として、腎機能定量、脳血流定量、心筋SPECT解析での主な注意事項を取り上げます。

本テキストの内容本テキストの内容本テキストの内容本テキストの内容

1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果

2-1.再構成の概要2-1.再構成の概要2-1.再構成の概要2-1.再構成の概要2-2.技術的な問題点とその対策2-2.技術的な問題点とその対策2-2.技術的な問題点とその対策2-2.技術的な問題点とその対策2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析

3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋SPECT解析解析解析解析

1.画像処理の基礎1.画像処理の基礎1.画像処理の基礎1.画像処理の基礎

2.2.2.2.SPECTの基礎の基礎の基礎の基礎

3.臓器別画像解析の注意事項3.臓器別画像解析の注意事項3.臓器別画像解析の注意事項3.臓器別画像解析の注意事項

Index

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

FWHMは2つの点線源を近づけては2つの点線源を近づけては2つの点線源を近づけては2つの点線源を近づけて識別できる最短距離にあたる識別できる最短距離にあたる識別できる最短距離にあたる識別できる最短距離にあたる

FWHMより近づより近づより近づより近づ

いた場合いた場合いた場合いた場合

FWHM以上離れて以上離れて以上離れて以上離れて

いる場合いる場合いる場合いる場合

Full Width atHalf Maximum(半値幅)(半値幅)(半値幅)(半値幅)

50%

ピクセルピクセルピクセルピクセル

カウントカウントカウントカウント

1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性

1111----1111----1111.分解能の指標.分解能の指標.分解能の指標.分解能の指標 -FWHM-

10%

Full Width atTenth Maximum((((1/10幅)幅)幅)幅)

ガンマカメラの分解能は、厳密には検出器固有の分解能(固有分解能)とコリメータの分解能を加味したシステム全体の分解能(システム分解能)で定義されます。画像上で分解能を単に数値として表わす場合にはFWHM(Full Width at Half Maximum:半値幅mm)が用いられます。

点線源を収集することを考えた場合、点線源はシステムの分解能に応じてスポットの点としてではなく、ある程度の広がりをもった球体として検出されます。そのため、2つの点線源を分離して検出するためには、ある程度の距離が必要になります。2つの点線源を近づけていき、その識別が可能な限界距離は、ちょうど点線源のプロファイルカーブの最大値の50%になる座標を結んだ距離と一致します。これをFWHMと呼び、分解能を評価する上での一つの指標としています。また、最大値の10%の距離をFWTM(1/10幅)と呼び、コールドスポットの識別能を表す指標として求める場合もあります。

分解能の指標としてFWHMやFWTMを求める場合には専用のスリットファントムを使用しますが、日常のQCとしてはバーファントムを使用しての視覚評価が一般的です。

分解能には上記の空間分解能の他に、エネルギー分解能があります。これは光電ピークのFWHMの光電ピークのエネルギーに対する割合:%で表されます。

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横軸が距離、縦軸がカウントの空間領域で表わされた広がり関数を、フーリエ変換し、横軸を波の周波数、縦軸を各々の周波数の波の大きさ(振幅)で表わしたものを変調伝達関数MTF(Modulation Transfer Function)と呼びます。

MTFは周波数が0 cycle/cm、つまり直流の振幅を1とし、それを基準に各周波数の振幅を表現したものです。MTFは空間的な周期構造が対照の画像にどの程度伝達されるかを表わし、分解能を直接表現する特性と考えることができます。

但し、分解能を評価するためには先ほどの半値幅FWHMを使用するのが簡便であり、一般的です。

1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性

1111----1111----2222.分解能の指標.分解能の指標.分解能の指標.分解能の指標 -MTF-MTF((((Modulation Transfer Function))))::::変調伝達関数変調伝達関数変調伝達関数変調伝達関数

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分解能の良いシステム分解能の良いシステム分解能の良いシステム分解能の良いシステム

分解能のあまり分解能のあまり分解能のあまり分解能のあまり良くないシステム良くないシステム良くないシステム良くないシステム

真の分布真の分布真の分布真の分布

1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性

1111----1111----3333.部分容積効果.部分容積効果.部分容積効果.部分容積効果 :::: PVE((((Partial Volume Effect))))

100

0

60

線源がシステムの分解能に応じた広がりをもって検出されると、データ上の最大カウントは実際の放射線量よりも低くカウントされることになります。この現象は同じ放射線量の線源であっても、線源のサイズが小さいほどその影響を大きく受けます。線源のサイズがある大きさ以上になればその影響は一定となり、データ上の最大カウントは保存されます。このように、線源のサイズが小さくなるほど実際の放射線量よりも低く見積もってしまう現象を部分容積効果(Partial Volume Effect:PVE)と呼んでいます。

一般に、線源のサイズがシステム分解能FWHMの2~3倍程度の大きさまでは、この影響を受けると言われています。

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1ピクセルあたりのカウントピクセルあたりのカウントピクセルあたりのカウントピクセルあたりのカウント(n)中に中に中に中に

含まれる統計ノイズの比率含まれる統計ノイズの比率含まれる統計ノイズの比率含まれる統計ノイズの比率

nn ××××100(%)

1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性

1111----1111----4444.統計ノイズ.統計ノイズ.統計ノイズ.統計ノイズ

n=10→→→→ 31.6n=30→→→→ 18.3n=50→→→→ 14.1n=70→→→→ 12.0n=90→→→→ 10.5

n=100→→→→ 10.0n=300→→→→ 5.8n=500→→→→ 4.5n=700→→→→ 3.8n=900→→→→ 3.3

核医学画像には、放射線計測に伴う統計ノイズが必ず含まれています。カウントデータ中に含まれる統計ノイズの比率はここに示す式で表わされます。この式からも分かりますように、ピクセルあたりのカウント値が大きいほど、ノイズの比率が小さくなり、S/Nが改善します。

SPECTでは収集データにおける目的臓器の平均カウントが100count/pixel以上になることが目安になっています。スライド右下の数値を見ても分かりますように、50count/pixel以下ではS/Nが極端に劣化してきます。

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吸収吸収吸収吸収

μμμμ

L

I I’

I’=Ie-μμμμL

散乱散乱散乱散乱

1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性

1111----1111----5555.吸収・散乱.吸収・散乱.吸収・散乱.吸収・散乱

ガンマカメラで検出される放射線は、体内を通過する際に吸収や散乱の影響を受けます。

実際の臓器内のRI分布を再現するには、これらの影響を補正する必要があります。吸収や散乱の補正法には様々なものが考案されていますが、詳細は後のスライドでご紹介します。

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真の計数率真の計数率真の計数率真の計数率

観測計数率観測計数率観測計数率観測計数率

20%計数率損失計数率損失計数率損失計数率損失Observe

20%計数率損失計数率損失計数率損失計数率損失Incident

20% Loss

理想曲線理想曲線理想曲線理想曲線

最高計数率最高計数率最高計数率最高計数率

1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性

1111----1111----6666.計数率特性.計数率特性.計数率特性.計数率特性

Anger型のガンマカメラでは入射したガンマ線の位置やエネルギーを正確に求めるために全PMTの出力を集める必要があります。その時間(900nsec程度)がデットタイム(不感時間)となり、入射するガンマ線が多くなるほど真の計数率に対して観測値が低下することになります。これが「数え落とし」で、最新のシステムでも185MBq(5mCi)で3%程度の数え落としが発生すると言われています。

計数率特性の指標としては、最大計数率(観測される最大の計数率)と20%計数率損失(観測計数率が真の計数率に対して20%ロスする計数率)が用いられています。

尚、「数え落とし」は波高分析器の前で発生しますので、その割合は最終的に選られるエネルギーウィンドウ内のカウントには比例しません。このことは、ヨード123の「数え落とし」が同じActivityのテクネチウムの数倍になる原因にもなっています。

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コントラストとは画像上の隣り合わせた領域でのカウントやフィルム濃度の違いとして上記の式で表現されます。

コントラストには、収集カウントまたはSPECT値のように画像自体で評価したコントラストと、画像に表示スケール(白黒・カラー)、ウィンドウレベル、フィルム補正カーブなどの特性を加味したコントラストがあります。

C1 = (D1-D2)/D2or = (D1-D2)/(0.5****(D1+D2))or = (D1-D2)/(D1+D2)

     ◆◆◆◆ コントラストの種類コントラストの種類コントラストの種類コントラストの種類1.1.1.1.画像自体のコントラスト画像自体のコントラスト画像自体のコントラスト画像自体のコントラスト2.2.2.2.表示系のコントラスト表示系のコントラスト表示系のコントラスト表示系のコントラスト

1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性

1111----1111----7777.コントラスト.コントラスト.コントラスト.コントラスト

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次に、フィルター処理の効果を見ていきます。

フィルタ処理とは、収集した画像情報の中から人間の視覚評価やコンピュータによる画像解析によってその特徴を抽出しやすくするために行う画像処理のことを言います。

フィルタ処理の主な目的としては、平滑化によるノイズを含む画像上の変動成分の除去、及び、臓器の輪郭抽出の際に利用される微分演算処理等があります。この他にガンマカメラシステムの有限な解像度に起因するボケを復元させるためのフィルタもあります。

フィルタには、実空間上で掛ける9ポイント(3*3)や25ポイント(5*5)のコンボリューションフィルタと画像を2次元フーリエ変換した後の周波数空間で掛けるフーリエフィルタがあります。コンボリューションフィルタは各々のフィルタ値(カーネル値)を変えることで、平滑化や輪郭強調を行っています。また、核医学画像にはフーリエフィルタとしてButterworthフィルタがよく用いられています。

1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果

画像情報の中から人間の視覚またはコンピュータ解析によってその特画像情報の中から人間の視覚またはコンピュータ解析によってその特画像情報の中から人間の視覚またはコンピュータ解析によってその特画像情報の中から人間の視覚またはコンピュータ解析によってその特徴を抽出しやすくするために行う画像処理徴を抽出しやすくするために行う画像処理徴を抽出しやすくするために行う画像処理徴を抽出しやすくするために行う画像処理

◆◆◆◆ 主な目的主な目的主な目的主な目的 ::::1)平滑化(ノイズの除去)1)平滑化(ノイズの除去)1)平滑化(ノイズの除去)1)平滑化(ノイズの除去)2)輪郭強調2)輪郭強調2)輪郭強調2)輪郭強調

◆◆◆◆ 種類種類種類種類 ::::1) 実空間で使用するコンボリューションフィルタ1) 実空間で使用するコンボリューションフィルタ1) 実空間で使用するコンボリューションフィルタ1) 実空間で使用するコンボリューションフィルタ

デジタルフィルタデジタルフィルタデジタルフィルタデジタルフィルタ((((3****3,5****5,,,))))と画像との重畳積分と画像との重畳積分と画像との重畳積分と画像との重畳積分

2) 周波数空間で使用するフーリエ関数(フィルタ)2) 周波数空間で使用するフーリエ関数(フィルタ)2) 周波数空間で使用するフーリエ関数(フィルタ)2) 周波数空間で使用するフーリエ関数(フィルタ)核医学画像には核医学画像には核医学画像には核医学画像にはButterworthフィルタがよく使用されるフィルタがよく使用されるフィルタがよく使用されるフィルタがよく使用される

1111----2222----1111.フィルタ処理とは.フィルタ処理とは.フィルタ処理とは.フィルタ処理とは

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

心筋STATIC画像を例に各種フィルタの効果を見ています。スライドのコンボリューションフィルタは全て9ポイントです。尚、フィルタの効果を評価しやすいように画像の心筋内の4画素(2*2)のカウントを2倍にしています。

平滑化 ( k =Σfn )

Smooth: Median:

9ポイントの計数の中央値に置き換え

(頑固なノイズの除去)

輪郭強調 ( k = 1 )

Sobel:(1次微分) Laplacian:(2次微分)

1 2 12 4 21 2 1

1111----2222----2222.各種コンボリューションフィルタ.各種コンボリューションフィルタ.各種コンボリューションフィルタ.各種コンボリューションフィルタ

Original

Smooth Median

Sobel      Laplacian

1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果

-1 0 1 1 2 1-2 0 2 & 0 0 0-1 0 1 -1 -2 -1

0 1 0 1 1 11 -4 1 or 1 -8 10 1 0 1 1 1

A B C f1 f2 f3E’ = ∑ D E F * f4 f5 f6 / k

G H I f7 f8 f9

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

スライドは、コンボリューションフィルタを使用して画像の鮮鋭度を強調する手法としてComputed Radiology(CR)で一般的に行われているアンシャープマスク処理の効果を見ています。

アンシャープマスク処理は画像の高周波成分を強調する古典的な処理です。この処理では画像を意図的に平滑化し、原画像との差分画像を作成することで画像の鮮鋭成分を取り出し、この差分画像を原画像に加算することで画像の鮮鋭化を行っています。

スライドのKは強調係数と呼ばれ、画像の鮮鋭化の度合いを調整するために用いられています。また、スライド右上のMTF(変調伝達係数)を見ても分かりますように、平滑化の程度によって強調したい周波数を調整することもできます。

核医学画像に対してこの処理を行うのは一般的ではありませんが、スライドの画像でも分かりますように核医学画像に対しても有効な場合があります。

1111----2222----3333.アンシャープマスク処理.アンシャープマスク処理.アンシャープマスク処理.アンシャープマスク処理

+ + + + K ****

1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果

Original

- =

+ + + + K **** - =

Original Blur

MTF

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

0 000010 0 0 1 1 1 …1cycle/8pixel====0.125((((c/p))))

0 110010 1 1 0 0 1 …1cycle/4pixel====0.25((((c/p))))

0 101011 0 1 0 1 0 …1cycle/2pixel====0.5((((c/p))))これ以上の周波数は表現できないこれ以上の周波数は表現できないこれ以上の周波数は表現できないこれ以上の周波数は表現できない

周期=同じパターンが繰り返される周期=同じパターンが繰り返される周期=同じパターンが繰り返される周期=同じパターンが繰り返されるpixelpixelpixelpixel数数数数周波数=周波数=周波数=周波数=1111/周期/周期/周期/周期((((cycle/pixel またはまたはまたはまたは c/p))))

1111----2222----4444.周期と周波数.周期と周波数.周期と周波数.周期と周波数

1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果

ナイキスト周波数ナイキスト周波数ナイキスト周波数ナイキスト周波数

周波数空間で使用するフィルタの特性を理解する上で、周波数空間の概念を理解しておく必要があります。

デジタル画像の世界で周波数を考えると、スライドのようになります。

ある数値をもったピクセルの並びの中で、同じ並びが何ピクセルごとに繰り返されるかを示すのが周期にあたります。周波数はその逆数で定義され、1ピクセル中に含まれる周期の数を表わします。

デジタル画像で表現することができる最高周波数はスライドに示しますように0.5cycle/pixelであり、この値はナイキスト周波数としてフィルタの特性やピクセルサイズの決定の際の指標の一つとなっています。

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f(x)=ΣΣΣΣA(k)cos(kx-ψψψψk)k=0

∞∞∞∞

A(k)::::振幅振幅振幅振幅ψψψψk::::位相位相位相位相

A(k)ととととψψψψkの関数として表現できるの関数として表現できるの関数として表現できるの関数として表現できる

振幅振幅振幅振幅

Pixel位置位置位置位置(x)

カウント値カウント値カウント値カウント値(f(x))

画像データ(実空間)画像データ(実空間)画像データ(実空間)画像データ(実空間)

周波数周波数周波数周波数

フーリエ変換フーリエ変換フーリエ変換フーリエ変換

1111----2222----5555.実空間と周波数空間.実空間と周波数空間.実空間と周波数空間.実空間と周波数空間

周波数空間周波数空間周波数空間周波数空間

1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果

デジタル画像上での周期と周波数を感覚的に紹介したところで、実際のデ

ータに対してこれをどう適用しているのかを考えてみます。

説明を簡単にするために、画像データの1ラインだけを抜き出した1次元データを例に説明します。このデータはスライドの左下の図に示しますように、ピクセル位置とカウント値をパラメータとする平面データ(ヒストグラム)として表わされます。これを、右上の図のように連続関数の形に置き換えてみます。

実際のRIデータでは、前ページの図で示したような規則正しい並びが出てくることなどないので、デジタル空間の周期の定義から言えば、何の周期性もないように見えます。この「周期がない」ということを言い換えると、周期は無限大であると考えることもできます。

数学的には、周期∞の(あるいは無周期の)連続関数は、いろいろな周波数の三角関数の和:すなわち、いろんな周期関数の足しあわせで表現できるという法則があり、スライドに示す数式が成立します。この式により、もとはピクセル位置とカウント値をパラメータとする表現であったものを振幅と周波数をパラメータとする表現に置き換えることができるわけです。このように情報の表現形態を変えることを数学的に行うのがフーリエ変換(FT)です。尚、この説明は連続量であるアナログ画像を対象としたもので、デジタル画像に対しては離散的フーリエ変換(DFT)やDFTを高速化した高速フーリエ変換(FFT)が定義されています。

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ノイズは高周波成分ノイズは高周波成分ノイズは高周波成分ノイズは高周波成分

××××

ノイズのゲインを下げたノイズのゲインを下げたノイズのゲインを下げたノイズのゲインを下げた投影データ投影データ投影データ投影データ

「ゲインを下げる」とは?「ゲインを下げる」とは?「ゲインを下げる」とは?「ゲインを下げる」とは?

変化の激しいところをスムーズにする変化の激しいところをスムーズにする変化の激しいところをスムーズにする変化の激しいところをスムーズにすることであり、信号をカットするわけではことであり、信号をカットするわけではことであり、信号をカットするわけではことであり、信号をカットするわけではないないないない((((        色の部分の面積はそれほど変わらない)色の部分の面積はそれほど変わらない)色の部分の面積はそれほど変わらない)色の部分の面積はそれほど変わらない)

1111----2222----6666.周波数空間でのスムージングフィルタ.周波数空間でのスムージングフィルタ.周波数空間でのスムージングフィルタ.周波数空間でのスムージングフィルタ

1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果

スムージングフィルタは統計ノイズを低減させるためのものですが、統計ノイズは周波数空間上では高周波成分に反映されることが知られています。ガンマカメラのシステム分解能に応じてデータはある程度ボカされるため、あるピクセルとその近傍のピクセルではカウントが大きく変化しないことが推定されます。つまり、極端に短い周期=高い周波数の情報は本来の情報である可能性は低いことになり、ノイズと見なすことができます。

従って、統計ノイズを低減させるには、高周波成分のゲインを下げる特性をもった周波数関数をかければ良いことになります。尚、「ゲインを下げる」という表現は凸凹の激しいところをスムーズにすることで、信号をカットするという意味ではありません。従って、フィルタをかけることで個々のピクセルのカウントは変化しますが、画像全体の総カウントはそれほど変わりません。

(参考)

核医学でLow Passフィルタと言えばほとんどの場合Butterworthフィルタのことを指します。 Low Passフィルタにはこの他にWienerフィルタ、ハニングフィルタなどが知られています。いずれも高周波成分のゲインを下げる特性がありますが、復元フィルタの一種であるWienerフィルタは低周波成分の一部に増幅する部分をもっており画像のコントラストを高める効果がある反面、本来の情報も意図的に変えてしまうことになりますので、定量化が重要視されている最近の核医学では使われることが少なくなっています。ハニングフィルタは単調に減衰する特性を持っていて、音響分野でよく使われていますが、核医学画像とはデータ特性が異なるのでマッチングが難しく、あまり使われていません。

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

(機種により違いあり)(機種により違いあり)(機種により違いあり)(機種により違いあり)

F(w) =1

1+(f/fc)nfc::::カットオフ周波数(カットオフ周波数(カットオフ周波数(カットオフ周波数(cycle/pixel))))

n::::オーダー(減衰の傾き)オーダー(減衰の傾き)オーダー(減衰の傾き)オーダー(減衰の傾き)

東芝東芝東芝東芝 :::: { 1 + (f / fc)n }-1 f,fc::::[cycle/pixel]GE :::: { 1 + (f / fc)p }-1/2 f,fc::::[cycle/cm]

(p=2n)

Picker :::: { 1 + (f / fc)2n }-1 f,fc::::[cycle/pixel](cycle/cm)=(cycle/pixel) / (cm/pixel)

1111----2222----7777....Butterworthフィルタの式フィルタの式フィルタの式フィルタの式

1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果

単位に単位に単位に単位に注意!注意!注意!注意!

ここからは、Butterworthフィルタに絞って、スムージングフィルタの効果をもう少し詳しく見てみることにします。

Butterworthフィルタの式はスライドに示す式で表され、特性を決めるパラメータとしてカットオフ周波数とオーダーを設定します。注意しなければならないのは、スライド下段に示しますように、機器メーカや機種によってこの式や単位が異なっていることです。従って、数値を単純比較できないことを知っておく必要があります。

各施設で使用している機種がどの式を採用しているかは機器メーカに確認する必要があります。

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f (cycle/pixel)

スペクトラム強度

スペクトラム強度

スペクトラム強度

スペクトラム強度

1111----2222----8888....Butterworthフィルタ : オーダーの変化フィルタ : オーダーの変化フィルタ : オーダーの変化フィルタ : オーダーの変化

オーダーオーダーオーダーオーダーOrder

5

8

20

1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果

まず、カットオフ周波数を一定にして(ここでは0.25cycle/pixel)、オーダーを変えたときのフィルタ特性の変化です。オーダーの意味合いを一言で言えば、ノイズの落し方の急激さを表わす指標です。オーダーが低すぎると高周波ノイズの低減が不十分になり、逆に低周波成分のゲインを下げてしまうことで全体としてノイズっぽくコントラストが低下した画像になります。しかし、ある程度の値以上になれば、あまり変化しません。

スライド右側の脳血流SPECT画像のように、実際の臨床画像ではある程度の値以上であれば、画像上目に見えるような違いはほとんど生じません。オーダーの決め方には特に明確な法則があるわけではなく、これまでの経験的な数値として4~10を使用している施設が多いようです。

尚、横軸の上限はナイキスト周波数(0.5c/p)で、それ以上はゼロになります。

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1111----2222----9999....Butterworthフィルタ : カットオフ周波数の変化フィルタ : カットオフ周波数の変化フィルタ : カットオフ周波数の変化フィルタ : カットオフ周波数の変化

カットオフカットオフカットオフカットオフ周波数周波数周波数周波数

Cutoff0.07

0.16

0.25

1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果

f (cycle/pixel)

スペクトラム強度

スペクトラム強度

スペクトラム強度

スペクトラム強度

次に、オーダーを一定にして(ここでは8)、カットオフ周波数を変えたときの特性変化を示します。

当然のことですが、カットオフ周波数以上の周波数成分のゲインを下げますので、カットオフ周波数が低くなるほど、高周波ノイズは確実に低減します。しかし、あまりカットオフ周波数を低くしすぎると本来の情報である低周波成分も低下してしまい、スライド右上の心筋SPECTの画像のように平滑化されすぎてメリハリがなくなり、俗な言い方をすればベッタリとした画像になってしまいます。

スライド右側の心筋SPECTの画像を見ても分かりますように、カットオフ周波数の違いにより画像全体の総SPECT値はそれほど変化しませんが、臓器内の最大カウント等の局所のSPECT値は変化します。従って、心筋SPECTのBullseye解析のように最大カウントを扱うような解析を行う場合にはカットオフ周波数を固定しておく必要があります。

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スライドは、Butterworthフィルタのオーダー(n)とカットオフ周波数(fc)を変更した際のPlanar画像への影響を見ています。

スライドからも分かりますように、核医学画像ではオーダーを変更するよりもカットオフ周波数を変更した方が画像への影響を視覚的に理解しやすくなっています。

(参考) 最適な係数の決め方の例

目的臓器の平均カウントをノイズが無視できるまで(例えば、10000カウント:ノイズ1%)収集し、その画像を理想画像とします。通常の検査での収集時間で収集した画像にいろいろな係数でフィルタを掛け、その画像と理想画像の目的臓器内の全カウントを合わせた後、目的臓器内の個々の画素値の差の2乗和の平方根を計算します。この値が最小になる係数の組み合わせが最適な条件となります。

1----2----10....Butterworthフィルタ : フィルタ : フィルタ : フィルタ : Planar画像での画像での画像での画像での効果効果効果効果

Original

( fc = 0.5 c/cm ) n = 5 n = 2.5 n = 10

( n = 5 ) fc = 0.5 fc = 0.25 fc = 1.0

1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果

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次は、SPECTの基礎として、再構成の概要の簡単な紹介と、我々が今までにユーザからいただいた質問やクレームの中で、実際は技術的な問題であったものを紹介します。これらの問題はいろいろな学会や研究会で議論されていますが、日常の臨床画像を見る際に常に頭に入れておくことが重要です。

また、最後に、最近普及しはじめた逐次近似を用いた再構成法であるML-EM法についても簡単に紹介します。

本テキストの内容本テキストの内容本テキストの内容本テキストの内容

1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果

2-1.再構成の概要2-1.再構成の概要2-1.再構成の概要2-1.再構成の概要2-2.技術的な問題点とその対策2-2.技術的な問題点とその対策2-2.技術的な問題点とその対策2-2.技術的な問題点とその対策2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析

3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋SPECT解析解析解析解析

1.画像処理の基礎1.画像処理の基礎1.画像処理の基礎1.画像処理の基礎

2.2.2.2.SPECTの基礎の基礎の基礎の基礎

3.臓器別画像解析の注意事項3.臓器別画像解析の注意事項3.臓器別画像解析の注意事項3.臓器別画像解析の注意事項

Index

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投影データ投影データ投影データ投影データ 周波数空間データ周波数空間データ周波数空間データ周波数空間データ

スムージングフィルタスムージングフィルタスムージングフィルタスムージングフィルタ((((Butterworthなど)など)など)など)

逆投影逆投影逆投影逆投影((((Back    Projection))))

実空間実空間実空間実空間

逆フーリエ変換逆フーリエ変換逆フーリエ変換逆フーリエ変換

周波数空間周波数空間周波数空間周波数空間

フーリエ変換フーリエ変換フーリエ変換フーリエ変換

2-1.再構成の概要2-1.再構成の概要2-1.再構成の概要2-1.再構成の概要

2222----1111----1111.再構成の基本的な流れ.再構成の基本的な流れ.再構成の基本的な流れ.再構成の基本的な流れ

再構成フィルタ再構成フィルタ再構成フィルタ再構成フィルタ((((Rampなど)など)など)など)

画像再構成の基本的な流れを簡単に説明します。

画像再構成には、大きく分けて、実空間データのままスムージングフィルタと再構成フィルタをコンボリューションフィルタとしてかけてから逆投影を行う方法と、データをいったんフーリエ変換して周波数空間のデータに置き換え、周波数空間上のデータにフィルタをかけてから実空間データに戻して、逆投影する方法があります。

この2つの方法は手法の違いであり、最終的な再構成画像に違いはありません。

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◆ スムージングフィルタスムージングフィルタスムージングフィルタスムージングフィルタ収集データに含まれる統計ノイズを収集データに含まれる統計ノイズを収集データに含まれる統計ノイズを収集データに含まれる統計ノイズを低減させるためにかける。低減させるためにかける。低減させるためにかける。低減させるためにかける。

Butterworthフィルタが代表的フィルタが代表的フィルタが代表的フィルタが代表的

◆ 再構成フィルタ再構成フィルタ再構成フィルタ再構成フィルタ単純な逆投影で生じる被写体の周りの単純な逆投影で生じる被写体の周りの単純な逆投影で生じる被写体の周りの単純な逆投影で生じる被写体の周りのボケを防ぐ目的で投影データにかける。ボケを防ぐ目的で投影データにかける。ボケを防ぐ目的で投影データにかける。ボケを防ぐ目的で投影データにかける。

Ramp、、、、Shepp&&&&Loganフィルタが代表的フィルタが代表的フィルタが代表的フィルタが代表的

被写体を収集被写体を収集被写体を収集被写体を収集

投影データを投影データを投影データを投影データを単純に逆投影して単純に逆投影して単純に逆投影して単純に逆投影して被写体を再構成被写体を再構成被写体を再構成被写体を再構成

2222----1111----2222.フィルタの種類とその目的.フィルタの種類とその目的.フィルタの種類とその目的.フィルタの種類とその目的

2-1.再構成の概要2-1.再構成の概要2-1.再構成の概要2-1.再構成の概要

画像再構成時には必ずフィルタ処理を行いますが、フィルタ処理を何のために行っているのか、ここで一度見直してみることにします。

画像再構成時に使用するフィルタには、スムージングフィルタと再構成フィルタの2つがあります。

スムージングフィルタは、データに含まれる統計ノイズを抑えるためのもので、よくご存知のButterworthフィルタがこれにあたります。

再構成フィルタは、投影データを単純に逆投影したときに被写体の周りに生じるスパーク上のボケを取り除くためにかけるもので、RampフィルタやShepp&Loganフィルタが該当します。Filtered Back Projection(FBP)法でのフィルタとは、本来この再構成フィルタのことを指しています。

統計ノイズは放射線計測上、被写体の周りのボケは逆投影の原理上生じるものなので、問題の出所が違います。従って、2種類のフィルタを使い分けているのです。

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スライドは、楕円ファントムを例に再構成処理全体の処理過程を示しています。

この例では吸収補正にSorenson法を使用しているために収集して得られたプロジェクションデータに対して最初に吸収補正が行われています。Chang法の場合には逆投影後のTransaxial像に対して補正を行います。これら均一吸収補正の精度は吸収係数の値と吸収補正を行う範囲を決める体輪郭の設定で決まります。特に、IMPのSplit Dose法やECDのRVR法のような同じ患者の複数のデータから定量画像を作成する場合には、それぞれの再構成処理において同じ体輪郭を設定することが重要になります。

次にフーリエ変換を行われ、再構成フィルタであるRampフィルタをかけた後、逆フーリエで実空間に戻して、逆投影しています。一部のメーカではここでフーリエ変換を行わず、コンボリューションフィルタとしてのRampフィルタを重畳積分しています。

画像に大きな影響を及ぼす均一性の補正はこれらの処理の前に、回転中心のズレの補正は逆投影までのどこかのStepで行われています。また、ノイズを抑え、S/Nを上げるためのスムージングフィルタはこれらの再構成処理の前か後に掛けます。

2222----1111----3333.再構成処理全体の流れ.再構成処理全体の流れ.再構成処理全体の流れ.再構成処理全体の流れ

2-1.再構成の概要2-1.再構成の概要2-1.再構成の概要2-1.再構成の概要

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SPECT画像に影響を及ぼす技術的問題点とその対策を見ていきます。

SPECT画像に影響を及ぼす要因、問題点として回転中心のズレがあります。これは基本的には機械的な検出器の中心とその検出器から得られる画像の電気的な中心のズレであり、ある一つの値で表されます。

スライド上段は180度収集での回転中心のズレの影響を心筋SPECTのTransaxial像で見ています。左からマイナス方向のズレ、ズレなし、プラス方向のズレがあった場合です。一般的に回転中心の問題は心筋SPECTでは心尖部の歪みとして比較的認識しやすいと言われています。

回転中心の問題は点線源を切ると一番よく分かります。スライド下段は、上が180度収集、下が360度収集で、各々左からマイナス2ピクセル、1、0、プラス1、2ピクセル、それぞれズレた場合の点線源のTransaxial像です。

SPECT画像に歪みや分解能の劣化がある場合には回転中心の問題を外すためにもQCとしてこのような点線源での実験をすることが推奨されています。

2222----2222----1111.回転中心のズレ.回転中心のズレ.回転中心のズレ.回転中心のズレ

2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策

----2222pixel pixel pixel pixel ----1 0 1 21 0 1 21 0 1 21 0 1 2

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均一性には検出器固有の均一性とコリメータの感度ムラを含めた総合均一性がありますが、SPECTの再構成処理で補正の対象になるのは総合均一性です。プラナー画像ではノイズに隠れて問題にならないような数%の不均一でもSPECTではリングアーチファクトの原因になり、その補正が必要になっています。

スライド左側のように、不均一が視野中心に無い場合には、再構成画像上にリング状のホットまたはコールドのアーチファクトが発生します。

臨床画像では不均一によるリングアーチファクトが認識しづらい場合があります。スライド右側の左上はコバルトの面線源を使用したフラッドイメージ、右上は心筋SPECTの収集イメージ、左下がTransaxial像、右下がVertical像です。各々左側が不均一の無い場合で右側がある場合です。不均一によりSPECT画像上にコールドのリングアーチファクトが発生し、心筋の下壁に欠損を作っていますが、SPECT画像だけではアーチファクトの存在を認識できません。日常のQCとして左上のようなフラッドイメージを収集し、評価することが重要になります。

2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策

2222----2222----2222.均一性の劣化.均一性の劣化.均一性の劣化.均一性の劣化

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SPECTの再構成では、ノイズを抑え、S/Nを上げるためのスムージングフィルタと再構成フィルタの2種類のフィルタが使用されます。

通常、再構成フィルタとしてRampフィルタが使用されていますが、このフィルタの問題として、サンプリングの段階で発生するエリアジングがあります。スライドは円柱ファントムを使用してこの問題のSPECT画像への影響を見てみます。

スライドは円柱ファントムの再構成画像です。ファントムの直径は左から 225mm、185mm、145mm、125mmです。各ファントム内の放射能濃度は一定にしていますので、本来は同じSPECTT値になるはずですが、ファントムサイズによって、 SPECT値が変化しています。尚、下段はTEW法で散乱補正を行っていて、 SPECT値のサイズ依存の問題は散乱線とは無関係であることが分かります。

2222----2222----3333.フィルタ処理.フィルタ処理.フィルタ処理.フィルタ処理 (再構成フィルタ:(再構成フィルタ:(再構成フィルタ:(再構成フィルタ:Ramp))))

Original (μμμμ= 0.100 /cm )

Scatter Corrected (μμμμ= 0.153 /cm )

225225225225mm 185mm 145mm 125mmmm 185mm 145mm 125mmmm 185mm 145mm 125mmmm 185mm 145mm 125mm

2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策

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スムージングフィルタとして、Butterworthフィルタの係数をどう設定するかは各施設で主観的に決めているのが現状です。この係数は画質の他にSPECT値自身も変えてしまうため、定量解析等で問題になる場合があります。2つのSPECT画像のSPECT値を使用してWashoutや%Increase等の定量解析を行う場合には、画質を無視してもこの係数を固定しておく必要があります。

(カットオフ周波数を決定するための基本的な考え方)

スライド左下の図のようにシステム分解能に応じてデータはある程度ボカされるため、あるピクセルとその近傍のピクセルではカウントが大きく変化しないことが推定されます。それよりも短い周期=高い周波数の情報は本来の情報である可能性は低いことになり、ノイズと見なすことができます。従って、ノイズを除去するためのカットオフ周波数は下記の式より導き出すことができます。

カットオフ周波数[c/cm]=1/(2*システム分解能FWHM[cm])

他の施設での係数を参考にする場合には、メーカごとの式や係数の違いを把握しておく必要があります。

東芝 : { 1 + (f / fc)n }-1 f,fc:[cycle/pixel]

GE : { 1 + (f / fc)p }-1/2 f,fc:[cycle/cm]

Picker : { 1 + (f / fc)2n }-1 f,fc:[cycle/pixel]

尚、同じ機器メーカでも機種ごとに違う式を採用している可能性もあるため、正確な式は機器メーカの方に確認する必要があります。

2222----2222----4444.フィルタ処理.フィルタ処理.フィルタ処理.フィルタ処理 (スムージングフィルタ:(スムージングフィルタ:(スムージングフィルタ:(スムージングフィルタ:Butterworth))))

2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策

点線源点線源点線源点線源

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体内のRIから放出されるガンマ線の一部は体内を通過する際に吸収されます。投影データはその影響を含んだまま収集されていますので、吸収による減衰分を補正しないと臓器での実際のRI分布を再現することができません。そのために行うのが吸収補正です。

吸収の程度を決める因子には、通過してくる吸収体の厚さ、吸収体固有の線減弱係数、核種のエネルギーなどがあります。

SPECTに用いられる均一吸収補正法にはSorenson法、Chang法があります。どちらの方法も、吸収体の体輪郭を設定し、その中を均一な吸収体とみなして補正を行う点では共通です。この処理を投影データに対して行うか、再構成画像に行うかが大きな違いであり、両者の補正効果に大差はありません。尚、多くの機種では体輪郭の設定にThreshold法を用いています。

2222----2222----5555....均一吸収補正均一吸収補正均一吸収補正均一吸収補正

2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策

◆ 均一吸収補正法均一吸収補正法均一吸収補正法均一吸収補正法・・・・Sorenson法法法法(投影データを補正)(投影データを補正)(投影データを補正)(投影データを補正)

・・・・Chang法法法法((((Transaxial像を補正)像を補正)像を補正)像を補正)

◆ 均一吸収補正の考え方均一吸収補正の考え方均一吸収補正の考え方均一吸収補正の考え方吸収体の外側に体輪郭を囲み、その中吸収体の外側に体輪郭を囲み、その中吸収体の外側に体輪郭を囲み、その中吸収体の外側に体輪郭を囲み、その中

を均一な吸収体とみなして、補正を行うを均一な吸収体とみなして、補正を行うを均一な吸収体とみなして、補正を行うを均一な吸収体とみなして、補正を行う

吸収補正あり吸収補正あり吸収補正あり吸収補正あり((((Chang法 法 法 法 μ=μ=μ=μ=0.1))))

μμμμ

L

I I’

I’=Ie-μμμμL

◆◆◆◆ 吸収の大きさを決める要因吸収の大きさを決める要因吸収の大きさを決める要因吸収の大きさを決める要因・・・・吸収体の厚さ(吸収体の厚さ(吸収体の厚さ(吸収体の厚さ(L))))・・・・吸収体固有の線減弱係数(吸収体固有の線減弱係数(吸収体固有の線減弱係数(吸収体固有の線減弱係数(μ)μ)μ)μ)

・・・・核種のエネルギー核種のエネルギー核種のエネルギー核種のエネルギー

補正なし補正なし補正なし補正なし 補正あり補正あり補正あり補正あり((((Chang、μ=、μ=、μ=、μ=0.1))))

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Sorenson法とChang法の概要を示します。理論については大まかにおさえておく程度でよいと思います。Sorenson法は画像を再構成する前の投影データに対して行うので前処理法、Chang法は画像を再構成した後で行うので後処理法と呼ばれることもあります。

2222----2222----6666.均一吸収補正の種類.均一吸収補正の種類.均一吸収補正の種類.均一吸収補正の種類

2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策

◆◆◆◆ Sorenson法(前処理法)法(前処理法)法(前処理法)法(前処理法)対向する投影データを加算平均後、対向する投影データを加算平均後、対向する投影データを加算平均後、対向する投影データを加算平均後、

通過してきた被写体の厚さに応じて補通過してきた被写体の厚さに応じて補通過してきた被写体の厚さに応じて補通過してきた被写体の厚さに応じて補正係数をかけ、逆投影により画像を再正係数をかけ、逆投影により画像を再正係数をかけ、逆投影により画像を再正係数をかけ、逆投影により画像を再構成する構成する構成する構成する

p(x,θθθθ)

p(-x,θθθθ+ππππ)T

μμμμ

◆ Chang法(後処理法)法(後処理法)法(後処理法)法(後処理法)

吸収がないものとして画像再構成後、各吸収がないものとして画像再構成後、各吸収がないものとして画像再構成後、各吸収がないものとして画像再構成後、各ピクセルにおける平均吸収量から作成ピクセルにおける平均吸収量から作成ピクセルにおける平均吸収量から作成ピクセルにおける平均吸収量から作成した補正係数マトリクスをかけて補正すした補正係数マトリクスをかけて補正すした補正係数マトリクスをかけて補正すした補正係数マトリクスをかけて補正するるるる

i=1i=2i=3i=4

i=5

(x0,y0)

μμμμ T

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◆ Sorenson法の問題点法の問題点法の問題点法の問題点

– コールド領域の補正の正確性に劣るコールド領域の補正の正確性に劣るコールド領域の補正の正確性に劣るコールド領域の補正の正確性に劣る

◆ Chang法の問題点法の問題点法の問題点法の問題点

– 吸収体の径が大きくなると中心が盛り上がる吸収体の径が大きくなると中心が盛り上がる吸収体の径が大きくなると中心が盛り上がる吸収体の径が大きくなると中心が盛り上がる

– スライス毎に補正マトリクスを作成する必要があるので、処理にスライス毎に補正マトリクスを作成する必要があるので、処理にスライス毎に補正マトリクスを作成する必要があるので、処理にスライス毎に補正マトリクスを作成する必要があるので、処理に時間がかかる時間がかかる時間がかかる時間がかかる

◆ 共通の問題点共通の問題点共通の問題点共通の問題点

– いずれも均一吸収体を前提とした方法である いずれも均一吸収体を前提とした方法である いずれも均一吸収体を前提とした方法である いずれも均一吸収体を前提とした方法である 

2222----2222----7777.均一吸収補正の問題点.均一吸収補正の問題点.均一吸収補正の問題点.均一吸収補正の問題点

2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策

今まで紹介した均一吸収補正法は、必ずしも完全なものではなく、ここに上げるような問題点もあります。

Sorenson法は、円筒ファントムに対してはChang法よりも正確に補正しますが、コールド領域がある場合にはその抜け(コントラスト)が悪いことが知られています。

Chang法は、吸収体の径が大きくなると中心部が盛り上がる問題があることが知られています。もう一つの問題である処理時間に関しては最近の処理機の性能からすれば無視できる範囲です。

共通の問題として、いずれも吸収体全体の吸収係数を一定と仮定しており、円筒ファントムのような均一吸収体であれば効果的ですが、人体に応用する場合には、本来、より精度の高い不均一吸収補正が必要です。但し、精度が悪いから補正をしないということではなく、出来る限り真の値に近づけるように、特に頭部と腹部に関しては、現状でも可能なこれらの均一吸収補正を実施していただく方が望ましいと考えています。

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

散乱補正に関する技術的問題について見てみます。

最近、TEW法で散乱補正を行う施設が増えていますが、そのことでリングアーチファクトを作っている施設も複数経験しています。その主な原因を紹介します。

一つは、画像データをインテジャつまり整数として扱うシステムでは、スライド左下のようなカウントの少ない散乱推定画像にフィルタ処理をすると小数点以下が丸められるか、切り捨てられてしまうための誤差が生じることです。この問題はTEW法自体の問題ではなく、システム側の制限です。また、そういうシステムでも収集した2つのデータに予め同じ定数を掛けて小数点以下の影響を少なくすることである程度は改善させることができます。

TEW法に関するもう一つの問題は均一性です。入射ガンマ線とフォトマルの位置関係や個々のフォトマルの特性の微妙な違いによって、視野内の各位置においてガンマ線のエネルギーに対する反応にバラツキがあることが、均一性を劣化させる主要な原因の一つになっています。通常、データ収集時に設定するエネルギーWindowの幅はこのバラツキを加味して、ある程度大きめに設定しています。TEW法に限らずOFFSETをかけたり狭いWindowのイメージを臨床に使用する場合には、使用しているシステムがそれに耐えうる性能かどうかは、予めQCとして同様の実験をして検討していただく必要があると考えています。

2222----2222----8888.散乱補正.散乱補正.散乱補正.散乱補正

オリジナル画像オリジナル画像オリジナル画像オリジナル画像

2DFilter

|  =

散乱線補正画像散乱線補正画像散乱線補正画像散乱線補正画像

散乱線推定画像散乱線推定画像散乱線推定画像散乱線推定画像

2DFilter

提供:東芝提供:東芝提供:東芝提供:東芝

2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

SPECTの画質や定量精度を向上させるためには、S/Nを確保することが重要になります。スライドは128で収集したデータを、左側はそのまま再構成したイメージ、右側は64に圧縮してから再構成したイメージです。64の方が明らかに画質が改善しています。分解能を重視するために128を使用する施設が多くなってきていますが、多検出器システムは必ず128と決め付けるのではなく、スライドのように128で収集することで目的臓器の平均カウントが10とか20になってしまうのであれば64も検討していただきたいと考えています。

SPECTの最適ピクセルサイズに関しては日本アイソトープ協会から勧告が出ています。スライド右下の図のようにSPECTの分解能FWHMの1/2から1/3がデータ収集に適したピクセルサイズです。スライドで64でのピクセルサイズが 3mm台であることが問題のような気がしますが、通常のガンマカメラのシステム分解能は 10mmを超えていますので、3mm台のピクセルサイズは特に問題にはならないだろうと考えています。

2222----2222----9999.ピクセルサイズと収集カウント.ピクセルサイズと収集カウント.ピクセルサイズと収集カウント.ピクセルサイズと収集カウント

2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策

128x128((((1.88mm))))

108 c/p

64x64((((3.75mm))))

27 c/p

FWHM

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

スライドは同じデータを表示スケールを変えて見ています。左側が二乗スケール、右側が直線スケールです。

SPECT画像は、カラーコピーとフィルムの両方を提出することが多く、また、フィルムには二乗スケールを使用する場合もあります。スライドでも分かりますようにレインボーパターンのようなカラーパターンに二乗スケールを組み合わせてしまうと見た目の印象が変わる黄色のレベルが極端に高くなってしまうために、同じレインボーパターンでも通常使用している直線スケールのイメージとは印象の違ったイメージに見えてしまいます。

2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策2-2.技術的問題点とその対策

2222----2222----10101010.表示カラースケール.表示カラースケール.表示カラースケール.表示カラースケール

収集データ 収集データ

100%

0%

OriginalSquare

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

◆◆◆◆ 最尤推定最尤推定最尤推定最尤推定-期待値最大化(期待値最大化(期待値最大化(期待値最大化(ML-EM::::Maximum Likelihood - Expectation Maximization)再構成法は、最尤()再構成法は、最尤()再構成法は、最尤()再構成法は、最尤(ML))))推定法と期待値最大化(推定法と期待値最大化(推定法と期待値最大化(推定法と期待値最大化(EM))))法という2つの法という2つの法という2つの法という2つの考え方を組み合考え方を組み合考え方を組み合考え方を組み合 わせることで未知数であるわせることで未知数であるわせることで未知数であるわせることで未知数である体内の体内の体内の体内のRI分布を収集した投影データから分布を収集した投影データから分布を収集した投影データから分布を収集した投影データから

統計的手法によってもっとも可能性の高いケースとして推定する統計的手法によってもっとも可能性の高いケースとして推定する統計的手法によってもっとも可能性の高いケースとして推定する統計的手法によってもっとも可能性の高いケースとして推定する方法である方法である方法である方法である1.1.1.1.ML法(最尤推定法:法(最尤推定法:法(最尤推定法:法(最尤推定法:Maximum Likelihood))))

最も確からしい値の推定最も確からしい値の推定最も確からしい値の推定最も確からしい値の推定MAP推定(最大事後確率推定:推定(最大事後確率推定:推定(最大事後確率推定:推定(最大事後確率推定:Maximum A Posteriori)i)i)i)

2.2.2.2.EM法(期待値最大化法法(期待値最大化法法(期待値最大化法法(期待値最大化法::::Expectation Maximization))))繰り返し(逐次)計算による推定繰り返し(逐次)計算による推定繰り返し(逐次)計算による推定繰り返し(逐次)計算による推定

◆◆◆◆ ML-EM法では、法では、法では、法では、推定した体内の推定した体内の推定した体内の推定した体内のRI分布から計算した投影データを実際に収集した分布から計算した投影データを実際に収集した分布から計算した投影データを実際に収集した分布から計算した投影データを実際に収集した投影データにできるたけ近づけるように逐次近似法を用いて体内の投影データにできるたけ近づけるように逐次近似法を用いて体内の投影データにできるたけ近づけるように逐次近似法を用いて体内の投影データにできるたけ近づけるように逐次近似法を用いて体内のRI分布を繰り返分布を繰り返分布を繰り返分布を繰り返

し修正していくし修正していくし修正していくし修正していく

◆◆◆◆ 現在、現在、現在、現在、ML-EM法を高速化した変法として、法を高速化した変法として、法を高速化した変法として、法を高速化した変法として、OS-EM((((Ordered Subsets - EM))))法法法法

が開発され、臨床に使用され始めているが開発され、臨床に使用され始めているが開発され、臨床に使用され始めているが開発され、臨床に使用され始めている

2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

2222----3333----1111....ML-EM法の概要法の概要法の概要法の概要

ML-EM法の概要についてです。

そのまま読みます。

読んでもピンときませんが、ML-EM法の基になっている2つの考え方であるML法(最尤推定法)とEM法(期待値最大化法)については原理を紹介する際に触れたいと思います。

です。

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

◆◆◆◆ 投影データをいくつかの投影データをいくつかの投影データをいくつかの投影データをいくつかのSubset(グループ(グループ(グループ(グループ))))に分割して、に分割して、に分割して、に分割して、1回の回の回の回のIteration(繰り返し)(繰り返し)(繰り返し)(繰り返し)でこのでこのでこのでこのSubsetの数だけ画像の更新を行う。つまり、計算の収束を早めるためにの数だけ画像の更新を行う。つまり、計算の収束を早めるためにの数だけ画像の更新を行う。つまり、計算の収束を早めるためにの数だけ画像の更新を行う。つまり、計算の収束を早めるためにラフラフラフラフ

な推定(更新)を頻繁に行うように工夫しているな推定(更新)を頻繁に行うように工夫しているな推定(更新)を頻繁に行うように工夫しているな推定(更新)を頻繁に行うように工夫している

◆◆◆◆ ML-EM法の一種であり、法の一種であり、法の一種であり、法の一種であり、Subsetをををを1にすればにすればにすればにすればML-EM法と同じ法と同じ法と同じ法と同じ

◆◆◆◆ 1つの1つの1つの1つのSubsetにどの方向を使用するか、及び、各々のにどの方向を使用するか、及び、各々のにどの方向を使用するか、及び、各々のにどの方向を使用するか、及び、各々のSubsetの使用順序は任意での使用順序は任意での使用順序は任意での使用順序は任意で

あるが、通常は偏りがないような組み合わせにするあるが、通常は偏りがないような組み合わせにするあるが、通常は偏りがないような組み合わせにするあるが、通常は偏りがないような組み合わせにする

Subset 1 (24)

Subset 6 (4)

Subset 4 (6)

→→→→    ML-EM法と同じ法と同じ法と同じ法と同じ

投影方向:投影方向:投影方向:投影方向:24

2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

2222----3333----2222....OS-EM法の概要法の概要法の概要法の概要

1 Iteration

このスライドではML-EM法の変法で現在各機器メーカがソフトウェアを提供しているOS-EM法の概要を紹介しています。

そのまま読みますので、 スライド下段の図を見ながらお聞きください。

です。

但し、最後の件は技術的な評価が固まっているようで、現在各機器メーカが提供しているソフトウェアでは変更ができないようになっています。通常、ユーザが指定できるのは、Subsetの数とIterationの回数になりますが、Subsetの数も変更できないようにしているソフトウェアもあります。

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

2222----3333----3. 3. 3. 3. 収束性の比較収束性の比較収束性の比較収束性の比較

OS-EM法法法法

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20Iteration

ML-EM法法法法

coun

ts/p

ixel Hot region

BG region

Cold region

数値ファントム(数値ファントム(数値ファントム(数値ファントム(128x128))))[ 投影方向:投影方向:投影方向:投影方向:90 ]

Subset = 15

coun

ts/p

ixel

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20Iteration

Hot region

BG region

Cold region

Hot region:80

BG region:20

Cold region:0

提供:島津製作所提供:島津製作所提供:島津製作所提供:島津製作所

2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

スライドは数値ファントムを使用してML-EM法とOS-EM法の収束性を比較しています。数値ファントムは、Cold領域が0、Hot領域が80、Background領域が20になっています。また、OS-EM法ではSubsetを15、つまり全投影方向が90ですので1Subsetあたり6方向にしています。

各々の領域でのカウントのグラフを見ると、左側のML-EM法では、まずBackground領域が6回程度のIterationで真の値に収束しています。次に、Hot領域が10回程度で収束しています。但し、Cold領域に関しては20回のIterationでも真の値である0になっていません。Cold領域を0に収束させるためには30回程度のIterationが必要になっています。一方、右側のOS-EM法では、Background領域、Hot領域とも1回のIterationで真の値に収束しています。Cold領域に関しても5回程度のIterationで収束しています。

このように、OS-EM法ではML-EM法の10分の1程度のIterationで真の値に収束します。OS-EM法はML-EM法を基礎としていますが、ソフトウェア的にはML-EM法を含んだ形になっていることもあって、現在ほとんどの機器メーカが提供しているソフトウェアはOS-EM法のソフトウェアです。

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

スライドは脳血流SPECTの臨床データをOS-EM法による画像再構成の処理条件を変えて見ています。左上が参照用のFBP法の画像です。その下がSubsetが1、つまり、ML-EM法での画像、次が、Subsetが5、10で各々左からIterationが1回、2回、3回、4回、5回、10回です。

これらの画像を見ても分かりますように、Subset数、Iteration数が増えるにしたがって、画像がボケたものから、シャープでノイズっぽい画像に変化しています。先ほどの数値ファントムのようにノイズがない場合にはIterationの回数を増やすことで必ず真の値に収束することが保証されていますが、実際のデータにはノイズが多く含まれていますので、Subset数、Iteration数をどう指定するかが重要になってきます。但し、現在では、各機器メーカから推奨の条件が聞けるようになりましたので、OS-EM法のソフトウェアが出た当初ほどの混乱はないようです。尚、Subset*Iteration=30~100が一般的なようです。

提供:東芝提供:東芝提供:東芝提供:東芝

Subset

Iteration

FBP

OS-EM

2222----3333----4444. SubsetととととIteration

2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

投影データ投影データ投影データ投影データ

散乱補正散乱補正散乱補正散乱補正

逆投影逆投影逆投影逆投影((((BackBackBackBack    ProjectionProjectionProjectionProjection))))

FBP

画像再構成画像再構成画像再構成画像再構成withwithwithwith

散乱補正散乱補正散乱補正散乱補正吸収補正吸収補正吸収補正吸収補正

分解能補正分解能補正分解能補正分解能補正

OS-EM(ML-EM)

吸収補正吸収補正吸収補正吸収補正

スムージングフィルタ(スムージングフィルタ(スムージングフィルタ(スムージングフィルタ(Butterworthなど)など)など)など)システム分解能以上のシステム分解能以上のシステム分解能以上のシステム分解能以上の高周波数成分に真実の高周波数成分に真実の高周波数成分に真実の高周波数成分に真実の情報はない情報はない情報はない情報はない

収集データは真実。但し、収集データは真実。但し、収集データは真実。但し、収集データは真実。但し、統計的に揺らいでいる統計的に揺らいでいる統計的に揺らいでいる統計的に揺らいでいる

FWHM=1cm↓↓↓↓

T=2cmf=0.5cycle/cm 逆投影逆投影逆投影逆投影

投影(収集)投影(収集)投影(収集)投影(収集)

但し、現状のソフトウェアにはこれらの但し、現状のソフトウェアにはこれらの但し、現状のソフトウェアにはこれらの但し、現状のソフトウェアにはこれらの補正は組み込まれていない補正は組み込まれていない補正は組み込まれていない補正は組み込まれていない

再構成フィルタ再構成フィルタ再構成フィルタ再構成フィルタ((((RampRampRampRampなど)など)など)など)

2222----3333----5. 5. 5. 5. 再構成の流れ再構成の流れ再構成の流れ再構成の流れ

2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

最後に、FBP法と比べての利点を見ていきますが、はじめに画像再構成の流れの違いを見てみます。

スライド左側のFBP法では、基本的にFBP法とは別な処理として散乱補正や吸収補正、スムージング等の処理が行われています。OS-EM法では、画像再構成の段階で散乱補正、吸収補正、及び、分解能の補正を行います(但し、現在各機器メーカが提供しているソフトウェアではこれらの補正は行われていません)。

OS-EM法でもスムージング処理は別な処理ということになりますが、スムージング処理を画像再構成の前に行うか後に行うかは機器メーカごとに違いがあるようです。また、原理的にはML-EM法のような統計を基礎とする再構成を行う場合、収集した個々のデータは真の値であるが統計的なゆらぎを持っていると考えますので、スムージング処理を行うにしてもその意味合いはFBP法とは違ったものになります。現在のところ、OS-EM法による画像再構成に適したスムージングフィルタの種類や条件に関する文献は出ていないと思います。

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

◆◆◆◆ FBP法における再構成フィルタに起因する問題の改善法における再構成フィルタに起因する問題の改善法における再構成フィルタに起因する問題の改善法における再構成フィルタに起因する問題の改善

•ストリークアーチファクトが発生しないストリークアーチファクトが発生しないストリークアーチファクトが発生しないストリークアーチファクトが発生しない•低カウント領域での低カウント領域での低カウント領域での低カウント領域でのS/Nが良いが良いが良いが良い•SPECT値のサイズ依存の問題が発生しない値のサイズ依存の問題が発生しない値のサイズ依存の問題が発生しない値のサイズ依存の問題が発生しない

半影により、距離に半影により、距離に半影により、距離に半影により、距離に依存したボケが発生依存したボケが発生依存したボケが発生依存したボケが発生

単純投影単純投影単純投影単純投影

◆◆◆◆ 式に、測定系で起る物理現象を織り込むことによって、 式に、測定系で起る物理現象を織り込むことによって、 式に、測定系で起る物理現象を織り込むことによって、 式に、測定系で起る物理現象を織り込むことによって、 

        さまざまな補正が可能(吸収、散乱、分解能:ボケ)さまざまな補正が可能(吸収、散乱、分解能:ボケ)さまざまな補正が可能(吸収、散乱、分解能:ボケ)さまざまな補正が可能(吸収、散乱、分解能:ボケ)

Rampフィルタ(実空間)フィルタ(実空間)フィルタ(実空間)フィルタ(実空間)投影投影投影投影

クリスタルクリスタルクリスタルクリスタル

コリメータコリメータコリメータコリメータ

2222----3333----6. 6. 6. 6. FBP法と比べての利点法と比べての利点法と比べての利点法と比べての利点

2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

FBP法と比べての利点を紹介します。

最初は、FBP法における再構成フィルタ に起因する問題の改善に関してです。スライド上段の図のように各方向から収集した投影データを単純に逆投影しただけでは、被写体の周りにボケが生じます。 FBP法において、この周辺に生じるボケを補正するためにかけるフィルタが再構成フィルタです。OS-EM法ではFBP法でのこのフィルタに起因する問題が改善することが知られています。具体的には、ストリークアーチファクトが発生しない、 低カウント領域でのS/Nが良い、SPECT値のサイズ依存の問題が発生しない、です。

次の利点は、式に、測定系で起る物理現象を織り込めむことによって、さまざまな補正ができることです。この物理現象とは具体的には吸収・散乱・分解能:ボケですが、ここで分解能:ボケと言っているのは右下の図に示しますようにコリメータの半影によって目的方向以外の場所からのガンマ線も入射してくることによるコリメータと対象物の距離に依存した分解能の劣化を意味しています。この問題はスライド下段の図のように対象物が回転中心付近に存在する場合には、各角度のデータが同程度にボケるために右側の再構成画像の対象物に単純なボケを発生させます。一方、対象物が回転中心にない場合にはこの問題はボケとともに画像歪みを発生させることがあります。個人的にはOS-EM法が普及するためにはOS-EM法にこの分解能:ボケに対する補正を組み込むことが必須であろうと考えていますが、この補正に関しては、まだ一般臨床で使用できる段階にはありません。

それでは、これらの利点を実際の画像で見ていきたいと思います。

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

最初は、OS-EM法によるストリークアーチファクトの改善についてです。

スライドはストリークアーチファクトに関してFBP法とOS-EM法の違いをファントムを使用して見ています。左側は線線源、右側は直径8cmのボトルと1.5cmのバイアルを使用してのファントム実験の結果です。両方ともテクネを使用しています。ボトルとバイアルの放射能濃度の比は1対10です。各々上が収集データ、左下がFBP法、右下がOS-EM法での再構成画像で、線線源ではTransaxial像、ボトルとバイアルではCoronal像を表示しています。尚、再構成画像の表示は負の値が分かるように表示のロアレベルをマイナスにしていますので、0カウントにも色が付いています。画像を見ると明らかなように、FBP法で発生しているストリークアーチファクトがOS-EM法ではほとんど消えています。

ここで、注意していただきたいのは、線線源によるストリークアーチファクトは両端の2つの線源から発生していることです。つまり、各角度の収集データにおいてその線源のカウントやボケの程度が変化する場合にストリークアーチファクトが目立ってくるこいうことです。逆に言うと各角度の収集データにおける線源のカウントやボケの程度が一定である中央の線源によるストリークアーチファクトはそれほど目立ちません。

FBP OS-EM

収集データ収集データ収集データ収集データ収集データ収集データ収集データ収集データ

FBP OS-EMCoronalTransaxial

2222----3333----7. 7. 7. 7. ストリークアーチファクトの改善(ストリークアーチファクトの改善(ストリークアーチファクトの改善(ストリークアーチファクトの改善(Phantom))))

2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

スライド左側の骨SPECTでは、肋骨への転移病巣に極めて強い集積があり、FBP法ではストリークアーチファクトが発生しています。右側のガリウムの全身SPECTではマルチにHot Spotが存在しますが、FBP法では矢印で示す小さなHot Spotが隣の強いHot Spotからのストリークアーチファクトによって消されてしまっています。

このように、FBP法ではより強いHot Spotによってその周辺の小さな、または、弱いHot Spotが覆い隠されてしまう可能性があります。そういう例でもOS-EM法では分離して見えてきますので、骨やガリウムのようなマルチのHot Spotが存在する画像に有用であることが分かります。

FBP

OS-EM

提供:千葉がんセンター提供:千葉がんセンター提供:千葉がんセンター提供:千葉がんセンター

FBP OS-EMMIP

Transaxial

2222----3333----8. 8. 8. 8. ストリークアーチファクトの改善(骨、ストリークアーチファクトの改善(骨、ストリークアーチファクトの改善(骨、ストリークアーチファクトの改善(骨、Ga))))

2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

360度度度度180度度度度FBP

提供:昭和大学藤が丘提供:昭和大学藤が丘提供:昭和大学藤が丘提供:昭和大学藤が丘

CoronalTransaxial

収集データ収集データ収集データ収集データ

2222----3333----9. 9. 9. 9. FBP法における法における法における法における180度収集でのアーチファクトの増強度収集でのアーチファクトの増強度収集でのアーチファクトの増強度収集でのアーチファクトの増強

2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

CoronalTransaxial

FBP法では180度という不完全な収集において極端なストリークアーチファクトを発生させる可能性があります。スライドはFBP法における180度収集でのストリークアーチファクトの増強を心肝ファントムで見ています。スライド左上の収集データの正面の画像を見ると分かりますが、このファントムは肝臓の右葉を極端に起上させています。臨床データにおいても時々肝臓が心臓と同じ高さに起上してくることがありますが、このファントムはそういうデータを模擬しています。また、ヨード製剤やテクネ製剤では肝臓に心筋と同等かそれ以上の強い集積を示すことがありますので、今回の実験では放射能濃度の比を心筋の1に対して肝臓が0の場合と3の場合の2種類のデータを収集して比較しています。スライド右側は全てFBP法で再構成した画像です。左側が180度収集、右側が360度収集で上が肝臓が0、下が3の画像です。尚、再構成画像の表示は心筋Maxに対してアッパーレベルを100%に、ロアレベルを-30%にセットしていますので、0カウントが色をもっています。まず、肝臓を0、つまり、ただの水だけを入た場合ですが、結果は180度収集でも360度収集でも心基部側に若干の違いはありますがほぼ同等の画像になっています。ところが、肝臓にRIを入れたデータの場合、180度収集では肝臓の横方向に強い負の扇を作って矢印で示すように心筋の下壁に欠損が発生しています。スライド左側は臨床の収集データですが、この画像でも分かりますように肝臓がよく写っている角度の端の角度の投影方向に沿ってより強い負のベルトを作ることがあります。このベルトが発生する原因はスライド左下のように再構成フィルタで処理した後の肝臓のプロフィールカーブの負の部分が180度という不完全なデータであるために最終的に相殺されずに残ってしまうためです。このベルトによって心筋の基部側が削られたり、中隔、下壁に欠損を作る可能性があるわけです。一方、360度収集の場合には、ストリークアーチファクトが多少残るために心筋の分布を不均一にしてはいますが、負の扇やベルトが抑えられるために、180度収集で発生していた下壁の欠損は明らかに改善しています。

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

スライドは先ほどと同じファントムを使って実験したデータで、180度収集で左側がFBP法で右側がOS-EM法で再構成した画像です。上から、Transaxial像、Vertical像、Short(短軸)像です。Transaxial像の表示は心筋Maxに対してアッパーレベルを100%に、ロアレベルを-30%にセットしています。

FBP法で発生している中隔や下壁の欠損がOS-EM法で改善していますが、完全ではありません。これは吸収・散乱・分解能補正をしていないのが原因であると考えています。尚、このデータはTransaxial像を見ると分かりますがファントムを傾けて収集しましたので左上に表示している先ほどの画像と比較すると負の扇やベルトの角度が変わっています。また、負の扇やベルトの影響が弱くなっていますが、これは今回の実験では放射能濃度の比を心筋の1に対して肝臓を2に抑えたことと縦隔に水を入れなかったために吸収が少なかったことで肝臓が全方向から見えていたことが原因です。

FBP OS-EM

提供:松下記念提供:松下記念提供:松下記念提供:松下記念

Transaxial

Vertical

Short

2222----3333----10. 10. 10. 10. ストリークアーチファクトの改善(心筋)ストリークアーチファクトの改善(心筋)ストリークアーチファクトの改善(心筋)ストリークアーチファクトの改善(心筋)

2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

スライド左側はテクネ製剤を使用した180度心筋SPECTの臨床データです。この例のようにテクネ製剤やヨード製剤を使用した場合には肝臓や胆嚢に高集積が見られることがあります。スライド上段は左から収集データの正面像、Coronal像、Vertical像、Short(短軸)像で、断層像は各々上がFBP法、下がOS-EM法の画像です。尚、中央のCoronal像の表示は心筋Maxに対してアッパーレベルを100%、ロアレベルを-30%にしています。

FBP法でのCoronal像を見ると下壁の欠損は肝臓の高集積によって生じた水平に走るストリークアーチファクトの影響であることが分かります。各断層像を見ると、FBP法で発生した下壁の欠損がOS-EM法で改善していることが明らかです。下段の短軸中央スライスにおけるCircumferential profile解析では、カーブ中央の下壁の%UptakeがFBP法の約50%からOS-EM法では約70%と改善しています。%Uptakeが50~60%をCritical line(ポジティブかネガティブかの境界値)にする施設が多いようですが、その場合スライドの症例ではFBP法とOS-EM法で診断結果が変わることになります。

スライド右側もテクネ製剤を使用した180度心筋SPECTの臨床データです。この例はLAD7番に狭窄を有する症例ですので、心尖部に限局しての低カウントは臨床と合っていますが、FBP法ではその他に肝臓からのストリークアーチファクトによって下壁に抜けを作ってしまっています。

提供:札幌医大提供:札幌医大提供:札幌医大提供:札幌医大

2222----3333----11. 11. 11. 11. ストリークアーチファクトの改善(心筋)ストリークアーチファクトの改善(心筋)ストリークアーチファクトの改善(心筋)ストリークアーチファクトの改善(心筋)

2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

FBP

FBP

OS-EM

OS-EM

Planar((((ANT))))

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スライド左側は健常者9名から作製したMIBGの平均Bullseye画像です。左側がEarly、右側が3時間後のDelayedで、上段がFBP法、下段がOS-EM法の画像です。Early、Delayedとも下壁領域がOS-EM法に比らべてFBP法でより低カウントになっていることが分かります。また、FBP法では負のベルトの影響だと思いますが、心基部側がOS-EM法に比べて低カウントになっています。

スライド右側は平均Bullseye画像の%Uptakeを領域ごとに評価したものです。左側がEarly、右側が3時間後のDelayedです。また、領域は左から心尖部、前壁、中隔、下壁、側壁の5領域に分けています。各々左側がFBP法、右側がOS-EM法の結果です。OS-EM法ではEarly、Delayedとも全領域で%Uptakeが上がり、より均一な分布になっていることが分かります。また、下壁では両者の間に有意差があることを示しています。

提供:札幌医大提供:札幌医大提供:札幌医大提供:札幌医大

2222----3333----12. 12. 12. 12. ストリークアーチファクトの改善(心筋)ストリークアーチファクトの改善(心筋)ストリークアーチファクトの改善(心筋)ストリークアーチファクトの改善(心筋)

2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

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次は、OS-EM法による低カウント領域でのS/Nの改善についてです。

スライド左側はノイズを加えた数値ファントムです。左側が低いカウントの場合、右側が高いカウントの場合で、上がOS-EM法、下がFBP法での再構成画像です。FBP法の場合、再構成フィルタによって統計ノイズも強調されてしまいます。従って、スライドの画像を見ても分かりますように、特にカウントの低い画像においてOS-EM法でより安定した画像が得られると言われています。

スライド右側はFDGを使用したPETのイメージで、同じ収集データを再構成法を変えて見ています。上がOS-EM法、下がFBP法で再構成したCoronal像です。スライドでも明らかなように、OS-EM法ではFBP法に比べて低カウント領域でのS/Nが改善しています。この利点はSPECTでもガリウムやタリウムを使用した腫瘍イメージングにおいて威力を発揮すると言われています。

2222----3333----13. 13. 13. 13. 低カウント領域での低カウント領域での低カウント領域での低カウント領域でのS/Nの改善の改善の改善の改善

提供:提供:提供:提供:GEYMS

FBP

OS-EM

低カウント低カウント低カウント低カウント 高カウント高カウント高カウント高カウント

2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

数値数値数値数値Phantom FDG-PET

提供:島津製作所提供:島津製作所提供:島津製作所提供:島津製作所

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スライドはタリウムを使用した上段が肺、下段が脳の腫瘍SPECTのCoronal像で、それぞれ左がFBP法、右がOS-EM法の画像です。表示はロアレベルをマイナスにしています。

これらの画像や正常領域のROI内のCV値(変動係数)からもOS-EM法ではFBP法に比べて低カウント領域でのS/Nが改善していることが分かります。OS-EM法では正常領域のカウントがより安定して得られるためにTumor to Normal Ratio(TNR)等のROI解析の精度も向上することが期待されています。但し、スライドのようにTNRの値自体はFBP法に比べて低い値になる傾向があります。従って、FBP法で求めた悪性度等の診断基準はOS-EM法では使えません。OS-EM法を採用する場合にはOS-EM法での新たな基準が必要になっています。

提供:横浜南共済提供:横浜南共済提供:横浜南共済提供:横浜南共済

FBP OS-EMTumor

Mean = 52.7%cv = 42.0

Normal Mean = 7.11%cv = 98.9

TNR = 7.4

Tumor Mean = 13.7%cv = 27.3

Normal Mean = 0.47%cv = 326.2

TNR = 29.1

Tumor Mean = 89.9%cv = 37.7

Normal Mean = 28.6%cv = 29.5

TNR = 3.2

Tumor Mean = 26.5%cv = 6.8

Normal Mean = 7.25%cv = 21.1

TNR = 3.7

2222----3333----14. 14. 14. 14. 低カウント領域での低カウント領域での低カウント領域での低カウント領域でのS/Nの改善(の改善(の改善(の改善(Tl腫瘍)腫瘍)腫瘍)腫瘍)

2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

吸収・散乱補正はSPECTの定量精度を向上させるための必須条件になっています。現在、OS-EM法の吸収・散乱補正への応用は各機器メーカごとに独自に進められていて、今後、一般臨床にどう降りてくるかは分かりません。但し、共通して言えることは定量のためには吸収補正と散乱補正は両方行う必要があるということです。例えば、スライドの心筋SPECTにおいて吸収補正だけで散乱補正をしないと下壁が過補正されることになりますし、スライドにはないのですが散乱補正だけで吸収補正をしないと下壁が低カウントになって評価しづらくなります。

提供:提供:提供:提供:GEYMS

•μμμμマップマップマップマップ((((X線線線線CT,TCT))))

•AC-,SC-

•AC+,SC-下壁の過補正下壁の過補正下壁の過補正下壁の過補正

•AC+,SC+

式内に吸収・散乱の項目を織り込むことで、再構成の段階で補正ができる式内に吸収・散乱の項目を織り込むことで、再構成の段階で補正ができる式内に吸収・散乱の項目を織り込むことで、再構成の段階で補正ができる式内に吸収・散乱の項目を織り込むことで、再構成の段階で補正ができる

OS-EM

2222----3333----15.15.15.15. 吸収・散乱補正への応用吸収・散乱補正への応用吸収・散乱補正への応用吸収・散乱補正への応用

2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

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次は、分解能補正についてです。

コリメータの半影によるボケの問題は、中央上段の図のように対象物が回転中心付近に存在する場合には、各角度のデータが同程度にボケるために下段の再構成画像の対象物に単純なボケを発生させます。一方、対象物が回転中心にない場合にはこの問題はボケとともに画像歪みを発生させることがあります。右の画像は180度収集の心筋SPECTでこの問題を見たものです。この症例はLCx13番に狭窄を有する症例ですので、後側壁のカウント低下は臨床に合っていますが、その他に画像歪みにより、Short(短軸)像の歪みとBullseye及びShort(短軸)像の10時方向にスジ状の抜けができています。左上の収集データを重ね合わせたイメージはアップワードクリープやトランケーションが発生していないことを示しています。SPECTでは目的臓器を回転中心におくことが基本ですが、多検出器システムでは心筋SPECTにおいて心筋を回転中心におくことが困難であり、体に近接してのデータ収集を行う場合もありますので、今後もこの問題が発生するのではないかと考えています。個人的には、精度の違いはあるにせよ吸収や散乱に対する補正はFBP法でもできていますので、通常のFBP法では補正できない分解能の補正を組み込んだOS-EM法のソフトウェアこそ、OS-EM法の一般臨床への普及の起爆剤になる思っています。但し、この補正に関しては、まだ一般臨床で使用できる段階にはありません。

アップワードクリープ:負荷心筋検査で問題になる収集中の呼吸数の減少に伴う心筋の傾きの変化(下壁を中心に低カウント領域が発生)

トランケーション:目的臓器を含む同一水平面内の各臓器が収集角度によって視野から外れること(画像歪みが発生)

半影半影半影半影

画像歪み:収集角度ごとに目的臓器のボケの程度が変化することによって発生する画像歪み:収集角度ごとに目的臓器のボケの程度が変化することによって発生する画像歪み:収集角度ごとに目的臓器のボケの程度が変化することによって発生する画像歪み:収集角度ごとに目的臓器のボケの程度が変化することによって発生する

FBPクリスタルクリスタルクリスタルクリスタル

コリメータコリメータコリメータコリメータ

2222----3333----16. 16. 16. 16. コリメータの半影による画像のボケと画像歪みコリメータの半影による画像のボケと画像歪みコリメータの半影による画像のボケと画像歪みコリメータの半影による画像のボケと画像歪み

2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

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最後は、FBP法におけるSPECT値のサイズ依存の問題の改善に関してです。スライドはこの問題を円柱ファントムの再構成画像で見ています。ファントムの直径は左から 225mm、185mm、145mm、125mmです。

各ファントム内の放射能濃度は一定にしていますので、本来は同じSPECT値になるはずですが、スライド上段のオリジナル画像ではファントムサイズによってSPECT値が変化してしまっています。尚、TEWで散乱補正を行っていますので、この問題は散乱線の影響によるものではありません。下段はこの問題を改善させる一つの方法であるZero Padding法を行ってから再構成した画像です。FBP法における再構成フィルタに起因するこの問題はFBP法でも処理の工夫により改善させることができますが、OS-EM法では原理的にこの問題は発生しません。

2222----3333----17. 17. 17. 17. FBPFBPFBPFBP法における法における法における法におけるSPECT値のサイズ依存の改善値のサイズ依存の改善値のサイズ依存の改善値のサイズ依存の改善

OS-EM法では、法では、法では、法では、FBP法での法での法での法でのRampフィルタのエリアジングの問題は発生しないフィルタのエリアジングの問題は発生しないフィルタのエリアジングの問題は発生しないフィルタのエリアジングの問題は発生しない

SC+ , AC+ (μμμμ= 0.153/cm )

225225225225mm 185mm 145mm 125mmmm 185mm 145mm 125mmmm 185mm 145mm 125mmmm 185mm 145mm 125mm

提供:横浜南共済提供:横浜南共済提供:横浜南共済提供:横浜南共済

97% 100% 102% 97% 100% 102% 97% 100% 102% 97% 100% 102% 102%102%102%102%

81% 100% 110% 115%81% 100% 110% 115%81% 100% 110% 115%81% 100% 110% 115%

Zero Padding

Original

FBP

2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

◆◆◆◆ 統計ノイズを含む臨床の統計ノイズを含む臨床の統計ノイズを含む臨床の統計ノイズを含む臨床のSPECTデータに応用する際のデータに応用する際のデータに応用する際のデータに応用する際の一般的な規則がない→一般的な規則がない→一般的な規則がない→一般的な規則がない→Iteration, Subset

◆◆◆◆ OS-EM法を単独で使用する場合の問題点が十分検法を単独で使用する場合の問題点が十分検法を単独で使用する場合の問題点が十分検法を単独で使用する場合の問題点が十分検

討されていない討されていない討されていない討されていない・臓器毎の・臓器毎の・臓器毎の・臓器毎のFBP法の画像との違い法の画像との違い法の画像との違い法の画像との違い・各種(定量)解析結果への影響・各種(定量)解析結果への影響・各種(定量)解析結果への影響・各種(定量)解析結果への影響

→心筋→心筋→心筋→心筋SPECT解析、脳血流解析、脳血流解析、脳血流解析、脳血流SPECT定量解析、定量解析、定量解析、定量解析、腫瘍腫瘍腫瘍腫瘍SPECTののののROI解析(解析(解析(解析(TNR,Retention Index))))

◆◆◆◆ 吸収・散乱・分解能補正への応用も含め、基礎、及び、吸収・散乱・分解能補正への応用も含め、基礎、及び、吸収・散乱・分解能補正への応用も含め、基礎、及び、吸収・散乱・分解能補正への応用も含め、基礎、及び、

臨床データの蓄積が必要である臨床データの蓄積が必要である臨床データの蓄積が必要である臨床データの蓄積が必要である

2222----3333----18. 18. 18. 18. 現時点での課題現時点での課題現時点での課題現時点での課題

2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

スライドにOS-EM法の現在の課題をまとめてみました。

そのまま読みます。

です。

OS-EM法のこのような課題がいろいろな施設で検討され、また、吸収・散乱・分解能補正への応用が進むことで、OS-EM法が核医学検査の価値を向上させることを期待しています。

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

n

���� xii=1

参考:最尤(参考:最尤(参考:最尤(参考:最尤(ML)推定→もっとも確からしい値の推定)推定→もっとも確からしい値の推定)推定→もっとも確からしい値の推定)推定→もっとも確からしい値の推定

検出器検出器検出器検出器

x

n

λλλλ

…………

…………

◆ 濃度濃度濃度濃度λλλλ[[[[MBqMBqMBqMBq]]]]ののののRIRIRIRIをををを1111つの検出器でつの検出器でつの検出器でつの検出器でnnnn回測定回測定回測定回測定((((x1 ,,,, x2 ,,,, x3 ,,, ,,, ,,, ,,, xn))))

計数計数計数計数 x のののの最尤推定値最尤推定値最尤推定値最尤推定値 = :最尤推定において最も基本的な計算:最尤推定において最も基本的な計算:最尤推定において最も基本的な計算:最尤推定において最も基本的な計算

=

n

���� xii=1

nc濃度濃度濃度濃度λλλλのののの最尤推定値最尤推定値最尤推定値最尤推定値 =

cc ::::検出確率(検出確率(検出確率(検出確率(DCFDCFDCFDCFを含む)を含む)を含む)を含む)

λλλλ::::RIRIRIRI濃度濃度濃度濃度 [MBq]

x ::::計数計数計数計数 [count/min]

x1+x2+ +xn

c+ c + + c

参考に、 ML-EM法の原理について簡単にご紹介します。

まず始めにML-EM法の基本である最尤(ML)推定、つまり、もっとも確からしい値の推定の考え方について見てみます。

スライドのように濃度λMBqのRIを1つの検出器でn回測定する場合を考えます。ここでは、各々の計数をx1,x2,x3,,,xn、RIから放出された光子が検出器で検出される確率をcとしています。この検出器をドーズキャリブレータ(キューリーメータ)と考えた場合、カウントをドーズMBqに変換するドーズキャリブレーションファクター:DCFもこのcの中に含まれることになります。

スライド下段の式のようにこの場合の計数xの最尤推定値、つまり、もっとも確からしい計数は全ての計数の総和を測定回数nで割ったものになります。これが最尤推定において最も基本的な計算で、こうなる理由はきちんと証明されていますが、その証明方法を知らなくても経験的に納得できる計算式です。同様に、濃度λの最尤推定値、つまり、もっとも確からしい濃度は全ての計数の総和を全ての検出確率の総和で割ったものになります。検出確率という確率を足すということに躓く人がいますが、分母、分子ともそれぞれ計数、検出確率の平均を求めるための測定回数nで割る部分が省略されていると考えれば納得しやすいかもしれません。この総和同士で割るという式は各々の測定における検出確率が違っている場合でも適用できるという意味で重要になります。

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

参考:最尤(参考:最尤(参考:最尤(参考:最尤(ML)推定→もっとも確からしい値の推定)推定→もっとも確からしい値の推定)推定→もっとも確からしい値の推定)推定→もっとも確からしい値の推定

980 + 1000 + 1020 + 0 + 0 + 1980 + 1000 + 1020 + 0 + 0 + 1980 + 1000 + 1020 + 0 + 0 + 1980 + 1000 + 1020 + 0 + 0 + 1

�� RIRIRIRIから検出器に向かって毎秒平均から検出器に向かって毎秒平均から検出器に向かって毎秒平均から検出器に向かって毎秒平均1000100010001000個の光子が放出されている。個の光子が放出されている。個の光子が放出されている。個の光子が放出されている。

それを検出器でそれを検出器でそれを検出器でそれを検出器で6666回測定したが、その内回測定したが、その内回測定したが、その内回測定したが、その内3333回の検出確率は回の検出確率は回の検出確率は回の検出確率は1111、残りの、残りの、残りの、残りの3333

回は回は回は回は0.0010.0010.0010.001であった。それぞれの計数が(であった。それぞれの計数が(であった。それぞれの計数が(であった。それぞれの計数が(980,1000,1020,0,0,1980,1000,1020,0,0,1980,1000,1020,0,0,1980,1000,1020,0,0,1)であっ)であっ)であっ)であっ

た場合の放出光子数のた場合の放出光子数のた場合の放出光子数のた場合の放出光子数の最尤推定値は?最尤推定値は?最尤推定値は?最尤推定値は?

=

n

���� xii=1

n

���� cii=1

1 + 1 + 1 + 0.001 + 0.001 + 0.0011 + 1 + 1 + 0.001 + 0.001 + 0.0011 + 1 + 1 + 0.001 + 0.001 + 0.0011 + 1 + 1 + 0.001 + 0.001 + 0.001

3001300130013001=

3.0033.0033.0033.003= 999.3999.3999.3999.3

=xi

ci

980980980980

=

1111

= 666.7666.7666.7666.7

n

����i=1

1000100010001000

1111

1020102010201020

1111

0000

0.0010.0010.0010.001

0000

0.0010.0010.0010.001

1111

0.0010.0010.0010.001++++ ++++ ++++ ++++ ++++/ n / 6666

( 980 + 1000 + 1020 + 0 + 0 + 1000 ) / 6( 980 + 1000 + 1020 + 0 + 0 + 1000 ) / 6( 980 + 1000 + 1020 + 0 + 0 + 1000 ) / 6( 980 + 1000 + 1020 + 0 + 0 + 1000 ) / 64000400040004000

=6666

スライドには濃度λの最尤推定値を求める簡単な例を示しています。説明を簡単にするために、ここでは検出確率にドーズキャリブレーションファクターを加味しない場合、つまり、求めるものはRIから検出器に向かって放出された光子の数ということにしています。

ここで、求めたい放出光子数は毎秒平均1000個であることが分かっています。枠内の最尤推定値を求める式の答えは999.3ですが、スライド下段のように測定条件の違う測定値の平均を求める場合によく用いられる測定条件を規格化した後に加算平均する式を使用してしまうと答えが違ってきてしまいます。一つの原因に対して複数の条件の違う結果が選られた場合には枠内の式のように結果の総和を全ての測定条件の総和で割る式を使わなくてはならないことが理解できます。

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

::::

::::

::::

投影データ投影データ投影データ投影データ投影データ投影データ投影データ投影データ

断層画像断層画像断層画像断層画像断層画像断層画像断層画像断層画像

参考:最尤(参考:最尤(参考:最尤(参考:最尤(ML)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用

((((投影データ投影データ投影データ投影データ上の上の上の上の1画素)画素)画素)画素)

検出器検出器検出器検出器

x

::::

λλλλ c

n

���� xii=1

x1+x2+ +xn

c+ c + + c

n…………

…………

計数計数計数計数 x のののの最尤推定値最尤推定値最尤推定値最尤推定値 = :最尤推定において最も基本的な計算:最尤推定において最も基本的な計算:最尤推定において最も基本的な計算:最尤推定において最も基本的な計算

=

n

���� xii=1

nc濃度濃度濃度濃度λλλλのののの最尤推定値最尤推定値最尤推定値最尤推定値 =

c ::::検出確率検出確率検出確率検出確率

◆ 濃度濃度濃度濃度λλλλ[[[[MBqMBqMBqMBq]]]]ののののRIRIRIRIをををを1111つの検出器でつの検出器でつの検出器でつの検出器でnnnn回測定回測定回測定回測定((((x1 ,,,, x2 ,,,, x3 ,,, ,,, ,,, ,,, xn))))

λλλλ::::断層画像上の1画素の断層画像上の1画素の断層画像上の1画素の断層画像上の1画素のRIRIRIRI濃度濃度濃度濃度

x ::::投影データ上の投影データ上の投影データ上の投影データ上の1画素の画素の画素の画素の計数計数計数計数

最尤(ML)推定を画像再構成に応用する場合、λは断層画像上の1画素のRI濃度、検出器は投影データ上の1画素、xはその計数になります。

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

1 2 3 ・・・・ ・・・・

cij

n

���� ciji=1

n

���� xiji=1

c1j+c2j+ +cnj

x1j

◆ 画素画素画素画素jの濃度の濃度の濃度の濃度λλλλjののののRIRIRIRIををををnnnn方向の検出器で測定方向の検出器で測定方向の検出器で測定方向の検出器で測定((((x1j 1j 1j 1j ,,,, x2j 2j 2j 2j , , , , x3j 3j 3j 3j ,,, ,,, ,,, ,,, xnjnjnjnj))))

::::

::::

::::

検出器検出器検出器検出器 2検出器検出器検出器検出器 3 x1j+x2j+ +xnj…………

…………=画素画素画素画素 j の濃度の濃度の濃度の濃度λλλλj のののの最尤推定値最尤推定値最尤推定値最尤推定値

x2jx3j

=

検出器検出器検出器検出器 1((((投影データ投影データ投影データ投影データのののの1画素)画素)画素)画素)

・・・・ ・・・・ m

投影データ投影データ投影データ投影データ投影データ投影データ投影データ投影データ

断層画像断層画像断層画像断層画像断層画像断層画像断層画像断層画像

nxij::::画素画素画素画素 j から放出され検出器から放出され検出器から放出され検出器から放出され検出器 i

で検出される光子数で検出される光子数で検出される光子数で検出される光子数

i ::::投影データ上の各画素投影データ上の各画素投影データ上の各画素投影データ上の各画素 (1(1(1(1----n)n)n)n)

(各画素を検出器と考える)(各画素を検出器と考える)(各画素を検出器と考える)(各画素を検出器と考える)

j ::::断層画像上の各画素断層画像上の各画素断層画像上の各画素断層画像上の各画素 ((((1111----mmmm))))

λλλλj::::画素画素画素画素 jののののRIRIRIRI濃度濃度濃度濃度

cij::::画素画素画素画素 j から放出された光子がから放出された光子がから放出された光子がから放出された光子が

検出器検出器検出器検出器 i で検出される確率で検出される確率で検出される確率で検出される確率

(吸収・散乱・分解能:ボケ)(吸収・散乱・分解能:ボケ)(吸収・散乱・分解能:ボケ)(吸収・散乱・分解能:ボケ)

λλλλj

参考:最尤(参考:最尤(参考:最尤(参考:最尤(ML)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用

それでは、最尤(ML)推定を画像再構成に応用してみます。

最初に記述の説明をします。

iは投影データ上の各画素(1-n)で、各画素を検出器と考えます。この画素(検出器)の総数nは投影データのマトリクスサイズと投影方向を掛けたものになります。

jは断層画像上の各画素 (1-m)で、マトリクスサイズが64であれば画素の総数mは64*64(=4096)になります。

λjは画素jのRI濃度です。

cijは画素jから放出された光子が検出器iで検出される確率で、この確率には吸収・散乱・分解能:ボケが影響します。

xijは画素jから放出され検出器iで検出される光子数です。

今、画素jの濃度λjのRIをn方向の検出器で測定する場合を考えます。ここでは、各

検出器の計数をx1j,x2j,x3j,,,xnjとします。吸収体の存在により、各方向ごとに検出確

率が変わりますが画素jの濃度λjの最尤推定値、つまり、もっとも確からしい濃度を

求める式は先ほどと同じで、全ての計数の総和を全ての検出確率の総和で割ったも

のになります。

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cij

m

���� cij’λλλλj’j’=1

ci1λλλλ1+ci2λλλλ2+ +cimλλλλm

検出器検出器検出器検出器 1((((投影データ投影データ投影データ投影データのののの1画素)画素)画素)画素)

y1

検出器検出器検出器検出器 2検出器検出器検出器検出器 3 yicijλλλλj

………… =xij ののののMAPMAPMAPMAP推定値推定値推定値推定値=yicijλλλλj

y2y3

投影データ上の各画素の投影データ上の各画素の投影データ上の各画素の投影データ上の各画素の

カウント(カウント(カウント(カウント(yi)から推定する)から推定する)から推定する)から推定する

必要がある必要がある必要がある必要がある

◆ 実際には周辺の画素にも実際には周辺の画素にも実際には周辺の画素にも実際には周辺の画素にもRIRIRIRIが存在するのでが存在するのでが存在するのでが存在するので xij は直接測定できないは直接測定できないは直接測定できないは直接測定できない

最大事後確率推定最大事後確率推定最大事後確率推定最大事後確率推定

((((MAPMAPMAPMAP推定)推定)推定)推定)

・・・・ ・・・・ m

λλλλj

1 2 3 ・・・・ ・・・・

n

::::

::::

::::

参考:最尤(参考:最尤(参考:最尤(参考:最尤(ML)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用

ところが、実際には周辺の画素にもRIが存在しますので、xijは直接測定できません。従って、検出器iにおける各画素からの計数値の総和である投影データ上の各画素のカウントyiから推定する必要があります。この時に用いるのが最大事後確率推定(MAP推定)という考え方です。スライド下段はxijのMAP推定値の計算式で、投影カウントyiと各画素の推定RI濃度、検出確率からxijを推定しています。この式は、 結果であるyiが与えられたという条件の下で、その原因であるxijを推定することを意味しています。

具体的に説明します。スライドの検出器1の投影カウントy1を例に考えた場合、散乱やボケの問題を無視すれば、検出確率は画素jを含む投影方向(横方向)の画素以外は全て0になります。従って、この投影方向の全画素の推定RI濃度と各々の検出器1への検出確率を掛け合わせた値(計算上の投影カウント)に対する画素jの推定RI濃度λjと検出確率c1jを掛けた値(計算上のx1j)の割合に、y1(実際の投影カウント)を掛けることで、 y1が与えられたという条件の下でのx1jを推定しています。

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n

���� xiji=1n

���� ciji=1

◆ つまり、、、、つまり、、、、つまり、、、、つまり、、、、最尤(最尤(最尤(最尤(MLMLMLML))))推定によって求めたい未知数である推定によって求めたい未知数である推定によって求めたい未知数である推定によって求めたい未知数である画素画素画素画素jのののの

濃度濃度濃度濃度λλλλjををををcijととととxijから推定するが、から推定するが、から推定するが、から推定するが、xijは直接測定できないため、は直接測定できないため、は直接測定できないため、は直接測定できないため、

MAPMAPMAPMAP推定によって求めることになる推定によって求めることになる推定によって求めることになる推定によって求めることになる

=λλλλj m

���� cij’λλλλj’j’=1

xij ��������������������������������

yicijλλλλjMLMLMLML推定推定推定推定MLMLMLML推定推定推定推定 MAPMAPMAPMAP推定推定推定推定MAPMAPMAPMAP推定推定推定推定

1n

���� ciji=1

=n

����i=1

m

���� cij’λλλλj’j’=1

yicijλλλλj

この式はこの式はこの式はこの式はλλλλjについて解けないので、について解けないので、について解けないので、について解けないので、EMEMEMEM法による逐次式を作成する法による逐次式を作成する法による逐次式を作成する法による逐次式を作成する

参考:最尤(参考:最尤(参考:最尤(参考:最尤(ML)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用

つまり、ML推定によって最終的に求めたい未知数である画素jの濃度λjをcijとxijから推定しますが、xijは直接測定できないため、MAP推定によって求めることになります。スライド下の式はML推定の式のxijにMAP推定の式を代入したものですが、この式には右辺にもλj があり、λjについて解けませんので、EM法による逐次式を作ることになります。

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���� cij ���� cij’λλλλj’k

◆◆◆◆ ML-EM法の基本式法の基本式法の基本式法の基本式

λλλλjk yicij

i ::::投影データ上の各画素投影データ上の各画素投影データ上の各画素投影データ上の各画素 ((((1111----nnnn):):):):各々の画素を検出器と考える各々の画素を検出器と考える各々の画素を検出器と考える各々の画素を検出器と考えるj , j’ :断層画像上の各画素:断層画像上の各画素:断層画像上の各画素:断層画像上の各画素 ((((1111----mmmm))))

λλλλjk,λλλλj

k+1 , λλλλjjjj’’’’k ::::画素画素画素画素 j , j’ におけるにおけるにおけるにおける k 回目、回目、回目、回目、 k+1 回目回目回目回目の逐次近似での推定の逐次近似での推定の逐次近似での推定の逐次近似での推定 RI RI RI RI 濃度濃度濃度濃度

yi ::::検出器検出器検出器検出器 i で検出された全光子数(投影カウント)で検出された全光子数(投影カウント)で検出された全光子数(投影カウント)で検出された全光子数(投影カウント)

cij, cij’ ::::画素画素画素画素 j , j’ から放出された光子がから放出された光子がから放出された光子がから放出された光子が検出器検出器検出器検出器 i i i i で検出される確率で検出される確率で検出される確率で検出される確率

(吸収・散乱・分解能:ボケが影響)(吸収・散乱・分解能:ボケが影響)(吸収・散乱・分解能:ボケが影響)(吸収・散乱・分解能:ボケが影響)

i=1

j’=1

λλλλjk+1 = ����

λλλλjk

yi

i xij

i=1

n

n

m

参考:最尤(参考:最尤(参考:最尤(参考:最尤(ML)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用

ということで、スライドがML-EM法の基本式になります。先ほどの式の右辺のλjを逐次近似におけるk回目の推定値、左辺のλjをこの式の計算によって得られたk+1回目の推定値としています。

実際の計算では、点線内の値を補正係数のように扱い、 k回目の推定値にこの係数を掛けることでk+1回目の推定値を求めています。

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

◆◆◆◆ ML-EM法を理解するための簡単なモデル法を理解するための簡単なモデル法を理解するための簡単なモデル法を理解するための簡単なモデル投影方向数を投影方向数を投影方向数を投影方向数を2222、、、、断層画像のマトリクスサイズを断層画像のマトリクスサイズを断層画像のマトリクスサイズを断層画像のマトリクスサイズを3*33*33*33*3とし、各検出確率とし、各検出確率とし、各検出確率とし、各検出確率cijはははは

投影方向にのみ投影方向にのみ投影方向にのみ投影方向にのみ1111、他は、他は、他は、他は0000と仮定と仮定と仮定と仮定

12 15 1812 15 1812 15 1812 15 18

→→→→ 6666

→→→→15151515

→→→→24242424

最初に、全ての最初に、全ての最初に、全ての最初に、全てのλλλλ値(値(値(値(λλλλ11110000,λλλλ2222

0000,λλλλ33330000,,,λλλλ9999

0000))))

をををを 1 1 1 1 と仮定し、推定計算を行うと仮定し、推定計算を行うと仮定し、推定計算を行うと仮定し、推定計算を行う

λλλλ11111111 = 1 * (12/3 + 6/3) / 2 = 3.0= 1 * (12/3 + 6/3) / 2 = 3.0= 1 * (12/3 + 6/3) / 2 = 3.0= 1 * (12/3 + 6/3) / 2 = 3.0

λλλλ22221111 = 1 * (15/3 + 6/3) / 2 = 3.5= 1 * (15/3 + 6/3) / 2 = 3.5= 1 * (15/3 + 6/3) / 2 = 3.5= 1 * (15/3 + 6/3) / 2 = 3.5

λλλλ33331111 = 1 * (18/3 + 6/3) / 2 = 4.0= 1 * (18/3 + 6/3) / 2 = 4.0= 1 * (18/3 + 6/3) / 2 = 4.0= 1 * (18/3 + 6/3) / 2 = 4.0

::::

λλλλ99991111 = 1 * (18/3 + 24/3) / 2= 1 * (18/3 + 24/3) / 2= 1 * (18/3 + 24/3) / 2= 1 * (18/3 + 24/3) / 2 = 7.0= 7.0= 7.0= 7.0

1回目の推定値1回目の推定値1回目の推定値1回目の推定値

1111 2222 3333

4444

7777

5555

8888

6666

9999

真の値真の値真の値真の値

3.03.03.03.0 3.53.53.53.5 4.04.04.04.0

4.54.54.54.5

6.06.06.06.0

5.05.05.05.0

6.56.56.56.5

5.55.55.55.5

7.07.07.07.0

↑↑↑↑ ↑↑↑↑ ↑↑↑↑

���� cij’λλλλj’k

yicij

i=1j’=1

λλλλjk+1 = λλλλj

k ���� ��������������������������������������������������������������������������������������������n

mi=1

n���� cij

λλλλ1111 λλλλ2222 λλλλ3333

λλλλ4444

λλλλ7777

λλλλ5555

λλλλ8888

λλλλ6666

λλλλ9999

投影カウント投影カウント投影カウント投影カウント yi

推定値推定値推定値推定値

参考:最尤(参考:最尤(参考:最尤(参考:最尤(ML)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用

ML-EM法の原理は複雑に感じますが、計算の仕方としては実は意外とシンプルです。スライドは、ML-EM法を理解するための簡単なモデルを示しています。

ここでは、投影方向数を2、断層画像のマトリクスサイズを3*3とし、各検出確率cijは投影方向にのみ1、他は0と仮定しています。つまり、投影方向以外の画素からは計測されないと仮定していますので、スライド左の断層画像の各画素の値を真の値とした場合には2方向の投影データの各計数値は投影方向の画素値の総和になります。ここでは、この2つの投影データから逆に断層画像の各画素の値λ1からλ9を推定してみます。

スライド左下はML-EM法の基本式ですが、最初にλ1からλ9までの全ての値を1であると仮定して、この式で計算を行います。 λ1の1回目の推定値を求める式の中で最初の項である(1)はλ1の初期値です。 点線内が補正係数を求める部分ですが、(12/3)の項は、λ1の縦方向の実際の計数値(12)とλ1,λ4,λ7の値から推定した計数値(1+1+1=3)の比です。この方向しか投影データがなければ補正係数はこの比4になり、初期値に対して4倍すれば良いことになります。同様に横方向に対しても(6/3)で比を求め、その和をcijの総和である2で割って、平均の補正係数を求めています。

同じことを全ての画素で行い、1回の逐次近似が終了します。左下の値が1回目の推定値です。

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

1111回目の推定値を用い、同じ計算を繰り返す回目の推定値を用い、同じ計算を繰り返す回目の推定値を用い、同じ計算を繰り返す回目の推定値を用い、同じ計算を繰り返す

λλλλ11112222 = 3.0 * (12/(3.0+4.5+6.0) + 6/(3.0+3.5+4.0)) / 2 = 2.2= 3.0 * (12/(3.0+4.5+6.0) + 6/(3.0+3.5+4.0)) / 2 = 2.2= 3.0 * (12/(3.0+4.5+6.0) + 6/(3.0+3.5+4.0)) / 2 = 2.2= 3.0 * (12/(3.0+4.5+6.0) + 6/(3.0+3.5+4.0)) / 2 = 2.2

λλλλ22222222 = 3.5 * (15/(3.5+5.9+6.5) + 6/(3.0+3.5+4.0)) / 2 = 2.8= 3.5 * (15/(3.5+5.9+6.5) + 6/(3.0+3.5+4.0)) / 2 = 2.8= 3.5 * (15/(3.5+5.9+6.5) + 6/(3.0+3.5+4.0)) / 2 = 2.8= 3.5 * (15/(3.5+5.9+6.5) + 6/(3.0+3.5+4.0)) / 2 = 2.8

λλλλ33332222 = 4.0 * (18/(4.0+5.5+7.0) + 6/(3.0+3.5+4.0)) / 2 = 3.3= 4.0 * (18/(4.0+5.5+7.0) + 6/(3.0+3.5+4.0)) / 2 = 3.3= 4.0 * (18/(4.0+5.5+7.0) + 6/(3.0+3.5+4.0)) / 2 = 3.3= 4.0 * (18/(4.0+5.5+7.0) + 6/(3.0+3.5+4.0)) / 2 = 3.3

::::

λλλλ99992222 = 7.0 * (18/(4.0+5.5+7.0) +24/(6.0+6.5+7.0)) / 2= 7.0 * (18/(4.0+5.5+7.0) +24/(6.0+6.5+7.0)) / 2= 7.0 * (18/(4.0+5.5+7.0) +24/(6.0+6.5+7.0)) / 2= 7.0 * (18/(4.0+5.5+7.0) +24/(6.0+6.5+7.0)) / 2 = 8.1= 8.1= 8.1= 8.1

この計算を指定した回数この計算を指定した回数この計算を指定した回数この計算を指定した回数だけ繰り返すだけ繰り返すだけ繰り返すだけ繰り返す

3.03.03.03.0 3.53.53.53.5 4.04.04.04.0

4.54.54.54.5

6.06.06.06.0

5.05.05.05.0

6.56.56.56.5

5.55.55.55.5

7.07.07.07.0

投影データ投影データ投影データ投影データ yi

1回目の推定値1回目の推定値1回目の推定値1回目の推定値

2.22.22.22.2 2.82.82.82.8 3.33.33.33.3

4.34.34.34.3

6.46.46.46.4

5.05.05.05.0

7.37.37.37.3

5.85.85.85.8

8.18.18.18.1

2回目の推定値2回目の推定値2回目の推定値2回目の推定値

1111 2222 3333

4444

7777

5555

8888

6666

9999

真の値真の値真の値真の値

↑↑↑↑ ↑↑↑↑ ↑↑↑↑12 15 1812 15 1812 15 1812 15 18

→→→→ 6666

→→→→15151515

→→→→24242424

参考:最尤(参考:最尤(参考:最尤(参考:最尤(ML)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用)推定の画像再構成への応用

2回目の近似では、1回目の推定値を初期値として、先ほどと同じ計算を行います。

以下、同じことを指定した回数だけ繰り返すことになります。投影像にノイズが含まれない場合は、最終的に真の値に収束することが保証されています。

これがML-EM法による画像再構成のごく基本的な計算になります。

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

最後に、臓器別画像解析の注意事項として、摂取率法による腎機能解析、脳血流定量解析、心筋SPECT解析での解析上の注意事項を紹介します。

本テキストの内容本テキストの内容本テキストの内容本テキストの内容

1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-1.核医学画像の特性1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果1-2.各種フィルタ処理の効果

2-1.再構成の概要2-1.再構成の概要2-1.再構成の概要2-1.再構成の概要2-2.技術的な問題点とその対策2-2.技術的な問題点とその対策2-2.技術的な問題点とその対策2-2.技術的な問題点とその対策2-3.2-3.2-3.2-3.ML-EM法法法法

3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析

3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋SPECT解析解析解析解析

1.画像処理の基礎1.画像処理の基礎1.画像処理の基礎1.画像処理の基礎

2.2.2.2.SPECTの基礎の基礎の基礎の基礎

3.臓器別画像解析の注意事項3.臓器別画像解析の注意事項3.臓器別画像解析の注意事項3.臓器別画像解析の注意事項

Index

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摂取率法による腎機能定量解析の技術的な問題点を示します。最初は、静注前のシリンジの収集で問題になる数え落しについてです。

アンガー型ガンマカメラでは正確な位置信号、エネルギー信号を得るためには各フォトマルの出力を積分する900nsec程度の時間が必要になります。この時間を不感時間と言いますが、検出器に入射するガンマ線が多くなると、この不感時間のために数え落としが発生します。最新のシステムでも185MBq、5mCiで約3%の数え落としがあると言われています。

よく勘違いすることですが、数え落としの問題は波高分析器の前で発生するので、Window幅を狭めることでは解決しません。また、テクネとヨード123の数え落としが極端に違う原因もWindowには入ってこないガンマ線の数の差によるものです。

3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析

3333----1111----1111.数え落とし.数え落とし.数え落とし.数え落とし

実測値実測値実測値実測値

予測値予測値予測値予測値

0

coun

t ra

te ( c

ps )

activity ( MBq )提供:山形大学提供:山形大学提供:山形大学提供:山形大学

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左の図は画素当たり8Bit、つまり最大255カウントのシステムで点線源のオーバーフローを見ています。

右の図のように収集時間を伸ばしていくとオーバーフローを起こす画素が増えることにより全収集カウントも低下してきます。最近の主流である16Bitマシンでも370MBq、10mCi以上のシリンジを1分間収集するとマトリックスによってはオーバーフローを起こします。

オーバーフローの問題で躓いているのはこの問題を普段気にしていないせいか、8Bitマシンのユーザではなく、16Bitマシンのユーザに多いようです。この問題はマトリクスサイズを細かくするか収集時間を短くすることで回避できます。

3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析

3333----1111----2222.オーバーフロー.オーバーフロー.オーバーフロー.オーバーフロー

8bit : max pixel count = 255実測値実測値実測値実測値

予測値予測値予測値予測値

0

coun

t

Sampling Time提供:山形大学提供:山形大学提供:山形大学提供:山形大学

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摂取率法による腎機能定量解析を行う場合、症例によってはバックグラウンドROIの設定位置が結果に大きな影響を及ぼすことがあります。

スライドは、腎機能低下例での2コンパートメント解析で求めたTERと2種類のバックグラウンドROIで求めた摂取率との相関を見ています。右のバックグラウンドROIでの結果の方が相関が良く、バラツキが少なくなっていることが分かります。

左の図は、Gatesの提案以来一般化したバックグラウンドROIの位置です。腎機能低下例では、腎臓の上部にオーバーラップする肝臓や脾臓のカウントが相対的に高くなるために、その影響が無視できなくなります。従って、こういう症例でも摂取率の算出精度を維持するために、右の図のようなROI設定が提案されています。

3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析

3333----1111----3333.バックグラウンド.バックグラウンド.バックグラウンド.バックグラウンドROIの設定 (腎機能低下例での影響)の設定 (腎機能低下例での影響)の設定 (腎機能低下例での影響)の設定 (腎機能低下例での影響)

0 50 100 150 200 2500

5

10

15

20

25

y = -0.14+0.075xr = 0.95n = 18

TER by 2 comp. analysis

Rena

l up

take

(%)

0 50 100 150 200 2500

5

10

15

20

25

y = 3.79+0.069xr = 0.89n = 18

Rena

l up

take

(%)

TER by 2 comp. analysis提供:山形大学提供:山形大学提供:山形大学提供:山形大学

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従来の摂取率法の原理は摂取率と腎機能指標(GFR,ERPF,TER)との相関から直接回帰式を求めていましたが、この方法ではスライド左側のように体格の小さい小児に対しては、別の回帰式が必要になるなどの問題がありました。

この問題は体格の違いを補正した参照値との間で作成した回帰式を使用することで解決します。通常、体格の違いを補正するために体表面積(Body Surface Area:BSA)が使用されています。

3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析3-1.腎機能定量解析

3333----1111----4444.小児への応用.小児への応用.小児への応用.小児への応用

250mL/min

従来法従来法従来法従来法

摂取率摂取率摂取率摂取率

腎機能指標腎機能指標腎機能指標腎機能指標 mL/min

:成人:成人:成人:成人:小児:小児:小児:小児

200mL/min

摂取率摂取率摂取率摂取率

腎機能指標腎機能指標腎機能指標腎機能指標 mL/min/1.73mmmm2222

200mL/min/1.73m2

体表面積補正法体表面積補正法体表面積補正法体表面積補正法

:成人:成人:成人:成人:小児:小児:小児:小児

提供:山形大学提供:山形大学提供:山形大学提供:山形大学

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採血法のようにSPECT値自身が定量解析に使用される場合には、いくつかの注意事項があります。

再構成条件について、

まず、再構成時に使用するフィルタ・吸収補正法・散乱補正法はファントムや患者間で統一しておく必要があります。このことは、特に、画質を合わせる目的でフィルタ条件を個々の患者で変えている施設で問題になることがあります。

次に、IMPのSplit Dose法やECDのRVR法のようなDiamox負荷検査の定量解析を行う場合のように、同じ患者の複数のデータから定量画像を作成する場合には、それぞれの再構成において同じ吸収補正用の体輪郭を設定することが重要になります。

SPECT値のサイズ依存について、

先ほど紹介したように、SPECT値にサイズ依存がある場合には、CCF測定を複数のサイズのファントムで行い、患者の頭部サイズにあったCCF値を用いる必要があります。

3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析

3333----2222----1111....SPECT値の信頼性値の信頼性値の信頼性値の信頼性

SPECT値に影響を及ぼす要因値に影響を及ぼす要因値に影響を及ぼす要因値に影響を及ぼす要因

◆◆◆◆ 再構成条件再構成条件再構成条件再構成条件•フィルタ・吸収補正法・散乱補正法はフィルタ・吸収補正法・散乱補正法はフィルタ・吸収補正法・散乱補正法はフィルタ・吸収補正法・散乱補正法はCCFと患者データ、及び、 と患者データ、及び、 と患者データ、及び、 と患者データ、及び、 

 患者データ間で同一とする 患者データ間で同一とする 患者データ間で同一とする 患者データ間で同一とする•Diamox負荷サブトラクションでの定量解析を行う場合には、同一負荷サブトラクションでの定量解析を行う場合には、同一負荷サブトラクションでの定量解析を行う場合には、同一負荷サブトラクションでの定量解析を行う場合には、同一

 の体輪郭を使用して吸収補正を行う の体輪郭を使用して吸収補正を行う の体輪郭を使用して吸収補正を行う の体輪郭を使用して吸収補正を行う

◆◆◆◆ SPECT値のサイズ依存値のサイズ依存値のサイズ依存値のサイズ依存•複数サイズの円柱ファントムで複数サイズの円柱ファントムで複数サイズの円柱ファントムで複数サイズの円柱ファントムでCCFを測定し、サイズ依存があるを測定し、サイズ依存があるを測定し、サイズ依存があるを測定し、サイズ依存がある 場合には、患者の頭部サイズに合った 場合には、患者の頭部サイズに合った 場合には、患者の頭部サイズに合った 場合には、患者の頭部サイズに合ったCCF値を使用する値を使用する値を使用する値を使用する

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Patlak Plot解析で設定するAortaのROIはそのサイズも解析式に使用されています。従って、ROI内は全てAortaである必要があります。 Aortaをはみ出しすことでの入力関数の過小評価、肺や肺動脈を含むことでの入力関数の過大評価が問題になる。スライドの右側は肺動脈を含んだ場合の特徴的なTime Activity Curveを示しています。このような場合には再度ROIを取り直す必要があります。

Patlak Plot解析によってmCBF値を算出した後、Lassenの補正を行い定量画像を作成しますが、この時のmSPECT値を求めるための参照領域の設定も定量画像に大きな影響を及ぼします。一般的には、基底核スライスを対象としてのThreshold法を用いていますが、各施設で常に一定の条件(Threshold値)にすることが重要です。

3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析

3333----2222----2222....Patlak Plot解析での解析での解析での解析でのROI設定設定設定設定

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3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析

3333----2222----3333.統計学的な手法を用いた画像解析.統計学的な手法を用いた画像解析.統計学的な手法を用いた画像解析.統計学的な手法を用いた画像解析

ECD-SPECTを用いたを用いたを用いたを用いたSPM解析の一例解析の一例解析の一例解析の一例(((( ボリュームボリュームボリュームボリューム レンダーレンダーレンダーレンダー ))))

    複数名ボランティアでの右手指運動負荷複数名ボランティアでの右手指運動負荷複数名ボランティアでの右手指運動負荷複数名ボランティアでの右手指運動負荷

SPM 3D-SSP

S.S.S.S.MinoshimaMinoshimaMinoshimaMinoshima----JNMJNMJNMJNM vol.36,no.7,1995vol.36,no.7,1995vol.36,no.7,1995vol.36,no.7,1995

アルツハイマー病アルツハイマー病アルツハイマー病アルツハイマー病

脳血流定量解析の最後に局所の脳血流を統計的手法を用いて解析するソフトウェアであるSPM(Statistical Parametric Mapping)と3D-SSP(Three Dimensional Stereotactic Surface Projections)を見てみます。

SPMはロンドンのハマースミス病院で開発されたMATLABという数値解析ソフト上で動作するソフトウェアです。これをWindow上で動作するように移植したものがロシアで開発されました。一方、3D-SSPはミシガン大学の箕島先生(現、ワシントン大学)が開発したソフトウェアで、Unixの他、MacやWindows(MS-DOS)上で動作します。

これらのソフトは、異なるデータ群(多:多 あるいは 多:1)を比較して統計処理を行い、結果を表示します。脳の形は個人により異なりますが、これらのソフトでは基準脳に合わせ込む処理を施してから統計的な比較を行いますので、客観的な評価が可能です。もともとはPET画像の解析用に開発されたものですが、理論的にはSPECTにも応用が可能であり、現在複数の施設で検討が進められています。当面の課題として機種ごとのノーマルデータベースの蓄積が必要になっています。

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3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析3-2.脳血流定量解析

◆◆◆◆ SPECT画像を対象とした場合の処理条件が確立していない画像を対象とした場合の処理条件が確立していない画像を対象とした場合の処理条件が確立していない画像を対象とした場合の処理条件が確立していない

解析結果上のアーチファクトが十分検討されていない解析結果上のアーチファクトが十分検討されていない解析結果上のアーチファクトが十分検討されていない解析結果上のアーチファクトが十分検討されていない

◆◆◆◆ 解析に不適な病態・画像が存在する解析に不適な病態・画像が存在する解析に不適な病態・画像が存在する解析に不適な病態・画像が存在する

強度の脳虚血領域強度の脳虚血領域強度の脳虚血領域強度の脳虚血領域度の脳萎縮や変形度の脳萎縮や変形度の脳萎縮や変形度の脳萎縮や変形脳以外の強い集積の存在(頭皮、鼻腔など)脳以外の強い集積の存在(頭皮、鼻腔など)脳以外の強い集積の存在(頭皮、鼻腔など)脳以外の強い集積の存在(頭皮、鼻腔など)

◆◆◆◆ 正常データベースがガンマカメラの種類や収集・再構成条件等正常データベースがガンマカメラの種類や収集・再構成条件等正常データベースがガンマカメラの種類や収集・再構成条件等正常データベースがガンマカメラの種類や収集・再構成条件等

によって変化するために、他施設で作成したデータが使えないによって変化するために、他施設で作成したデータが使えないによって変化するために、他施設で作成したデータが使えないによって変化するために、他施設で作成したデータが使えない

3333----2222----4444....SPM、、、、3D-SSPの普及上の問題点の普及上の問題点の普及上の問題点の普及上の問題点

現在、我々が把握しているSPMや3D-SSPが普及する上での問題点を列記してみます。

SPECT画像を対象とした場合の処理条件が確立されていないことです。このことにより、解析結果上のアーチファクトが十分検討されているとは言えないのが現状です。

解析に不適な病態や画像が存在することです。強度の脳虚血領域、強度の脳萎縮や変形、脳以外の強い集積の存在など基準脳と大きく異なる画像の場合には、Normalize等の処理において問題が発生することがあります。

正常データベースがガンマカメラの種類や収集・再構成条件等によって変化するために、他施設で作成したデータが使えないことです。このデータベースがないとジャックナイフ検定を行うことができません。

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左の図はBullseye画像の簡単な作成方法を示しています。Bullseye画像はちょうど、心尖部を掴んでバナナの皮を剥くように心基部を広げたようになっています。従って、Bullseye画像では心基部側が過大評価されることになります。

右にはBullseye画像と平均的な冠状動脈の走行の関係を示しています。この走行を覚えておくとBullseye画像に発生するアーチファクトがある程度は識別できると言われています。例えば、冠状動脈は心基部から心尖部に向かっていますので、心基部側に円弧状に限局したヌケを作った場合には、臨床結果というよりはスライス選択の可能性が高いことになります。

3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋SPECT解析解析解析解析

3333----3333----1111....Bullseye Map

札幌医大の札幌医大の札幌医大の札幌医大のHome Pageからダウンロードからダウンロードからダウンロードからダウンロード

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海外に比べて、国内では心筋SPECTにおけるWashout解析や%Increase解析が普及しています。ここでは、それぞれの解析での注意事項を紹介します。スライドはMIBIを使用したBullseyeで、上は左からRest、2時間半後のDelayed、3時間半後のStress。下は、左からWashout、RestとStressから求めた%Increase、Rest、Delayed、Stressから求めた%Increaseです。

Washout解析に関する注意事項としては、使用する薬剤や負荷の有る無しによって正常心筋での薬剤の有効半減期が違っていることが挙げられます。右に薬剤ごとの大体の有効半減期を示しています。個々の患者のWashout値を評価する場合には、Delayedの時間と有効半減期から求めた正常値を元に異常正常を判断する必要があります。

テクネ製剤で行われている%Increase解析に関しては、この解析にDelayedのデータを使用するかどうかで%Increaseの値が違ってきます。スライドのDelayedでのBullseyeの下壁のように、AMIの再疎通例やPTCA・CABG等の治療後の心筋では局所のWashoutが更新することがありますので、そういう患者を対象とした場合には、この解析の精度を上げるためにも、Delayedを追加することを推奨しています。

3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋SPECT解析解析解析解析

3333----3333----2222....Washout解析、解析、解析、解析、%Increase解析解析解析解析

◆ Washout解析上の注意解析上の注意解析上の注意解析上の注意– Effective Half-Life

» Tl (Rest) = 360 min» Tl (Stress) = 240 min» MIBG (Rest) = 450 min» MIBI (Rest) = 210 min» MIBI (Stress) = 200 min

◆ %Increase解析上の注意解析上の注意解析上の注意解析上の注意– Delayed データを解析に加味データを解析に加味データを解析に加味データを解析に加味するかどうか?するかどうか?するかどうか?するかどうか?

Rest Delayed Stress

    Washout %Increase

MIBI

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平均値-平均値-平均値-平均値-2SD以下を以下を以下を以下をBlackout表示表示表示表示

Extent Map

異常の程度を異常の程度を異常の程度を異常の程度をSDごとにごとにごとにごとに

色分けして表示色分けして表示色分けして表示色分けして表示

Severity MapRaw Map

3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋SPECT解析解析解析解析

3333----3333----3333.ノーマルファイルとの比較.ノーマルファイルとの比較.ノーマルファイルとの比較.ノーマルファイルとの比較

各セグメントごとにノーマルファイルと患者データを比較します。ノーマルファイルの各セグメントごとの平均値と標準偏差(SD)から、例えば平均-2SDを下限値としてそれ以上低い部分をBlackoutしたものがExtent mapで、SDの大きさに応じて異常の程度を色分けしたものがSeverity mapです。Extent mapは病変の広さを、Severity mapは異常の深さ(重傷度)を表す指標になります。これらの指標は画像以外に数値としても算出されますが、その算出方法は使用するソフトウェアによって違っていますので、確認する必要があります。

「ノーマルファイルとの比較」というところがポイントですが、このノーマルファイルをどのようにして得ているのかが意外に盲点になります。

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スライドはそれぞれ別の施設で作成したMIBGとMIBIのノーマルファイルで、左側が平均画像、右側が1SD画像です。上段のMIBGでは、下壁の低カウントとバラツキがあります。一方、下段のMIBIを見ると、平均画像はほぼ均一ですが、1SD画像はバラツキを持っています。これは異常として認識しやすい場所と認識しずらい場所があることを示しています。

MIBGの下壁に関しては臨床的に良く知られていますが、MIBIでの中隔の心基部側に関しては、このノーマルファイルに特有の問題です。この施設では心基部スライスを遠めに設定していますので、心基部側が平均画像で低カウントに、1SD画像で高カウントになっています。従って、このノーマルファイルでは心基部側の異常の検出感度は非常に低くなっています。現在各施設で使用しているノーマルファイルがどういうパターンを示しているかを覚えておくとノーマルファイルとの比較で発生するアーチファクトがある程度は識別できます。

3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋SPECT解析解析解析解析

3333----3333----4444.ノーマルファイルの特性.ノーマルファイルの特性.ノーマルファイルの特性.ノーマルファイルの特性

MIBG mean

MIBI mean

MIBG 1sd

MIBI 1sd

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Bullseye画像を作成するための心尖部、心基部スライスの設定には一定の条件がありません。各施設で安定した結果が出るように工夫しているのが現状です。ノーマルファイルと比較する場合には、ノーマルファイルと同じ条件にする必要があります。

スライドは先ほどのMIBIのノーマルファイルを使用した解析結果です。左上のRaw-Bullseyeや右下の断層像を見ると前壁中隔から下壁にかけて心尖部を含め欠損になっていますが、ノーマルファイルと比較したExtent画像やSeverity画像を見ると心尖部と中隔の基部側が異常として認識されていません。このBullseyeは右下の短軸像を心尖部、心基部のスライスとしています。この結果はノーマルファイル自体の問題の他に、スライス設定がノーマルファイルに比べて両方とも内側に取りすぎていることが原因として考えられます。

3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋SPECT解析解析解析解析

3333----3333----5555.ノーマルファイルとの比較 (スライス設定).ノーマルファイルとの比較 (スライス設定).ノーマルファイルとの比較 (スライス設定).ノーマルファイルとの比較 (スライス設定)

Raw

Severity

Extent

Long Axis

Short Axis

MIBI

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スライドは健常者でのタリウムの負荷心筋です。この例のWashoutはほぼ均一ですが平均が20%台と異常に低くなっています。教科書的には3枝病変ですが、実際は生食でフラッシュしていないために一部のタリウムが静脈の血管壁にへばり付いたためで、右下の腕のStatic画像を見ても分かりますようにStress時に腕に残っていたタリウムが徐々に心筋にWashinしたために全体としてWashoutが低下したように表現されていました。タリウムの負荷心筋では、生食でのフラッシュは必須です。

3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋SPECT解析解析解析解析

3333----3333----6666....TlClの血管壁への付着の血管壁への付着の血管壁への付着の血管壁への付着

DelayedStress

Washoutmean = 20% Injection Site

Stress Delayed

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3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋SPECT解析解析解析解析

3333----3333----7777....Gated SPECT

心筋SPECT解析の最後に、Gated SPECT解析について紹介します。

エネルギーが高く大量投与が可能なテクネ製剤が実用化されたことにより、心電図と同期させてのSPECT収集を行うことで、心筋血流と壁運動の同時評価が可能になりました。但し、現在はガンマカメラの性能が大きく向上したこともあり、タリウムでGated SPECTを行うところも増えてきています。

Gated SPECTでは、R-R間隔を8~16分割して、角度あたり40-100心拍分のデータを収集します。再構成画像をフレームごとにコマ送りさせることで心筋の壁運動や、それに伴う血流変化などが視覚的に観察できます。また、専用の解析ソフトを使用して血流分布とともに心筋の壁運動や心機能が再現性良く評価できるようになっています。

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2001年4月改訂 : Rev.3.1核医学における画像処理

3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋3-3.心筋SPECT解析解析解析解析

3333----3333----8888....Gate画像の診断能画像の診断能画像の診断能画像の診断能

最近、Gated SPECT画像の診断能に関して気になる発表があったので紹介します。

スライド左側は正常な冠状動脈を有する症例での画像の比較です。左から、NonGate、ED、ESの短軸データで、上段がStress、下段がRestです。右上のStressのES画像上に欠損があり、Restで消えていますが、冠状動脈は正常であり、血流評価としてはFalse Positiveであった症例です。

スライド右側は、NonGateデータとED、ESのGateデータでの血流に対する診断能の比較を行っています。左からSensitivity、Specificity、Accuracyです。各々左からNonGate、ED、ESの結果で、この結果からは、血流評価に関してはGateによる診断能の向上はなく、反って診断能を下げてしまっています。

現在、Gateによる診断能低下の原因ははっきりしていません。従って、とりあえず血流評価に関してはGateで撮像したとしても左側のような重ねあわせたNonGateの画像を作成し、評価する必要があると考えています。

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