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© 2012 Microchip Technology Inc. DS01336A_JP - p. 1 現在、各種の DC/DC コンバータ トポロジが存在しま すが、通常それらの中から、相反する各種ニーズ間の トレードオフにより、いずれかのトポロジを選択しま す。多くの場合、設計時に効率、電力密度 ( コンバー タのサイズ )、コストが重視されます。 本アプリケーション ノートで取り上げる共振コン バータ ( 特に LLC 共振コンバータ ) は、 上記の全ての 特性を備え、コンパクトで高効率な設計が可能です。 これらのコンバータは、非常に広い入力電圧レンジで 出力電圧を一定に制御でき、システムの総コストの低 減に寄与します。 これらのコンバータのアーキテクチャは比較的単純で あるため、マイクロチップ社の小型少ピン dsPIC DSC を使って制御および監視 / 管理機能を実装できます。 dsPIC DSC DSP 能力は高度な制御を可能とします。 共振コンバータ 共振コンバータは、数多く存在するコンバータの一種 です。共振コンバータを使う事により、パルス幅変調 (PWM) に基づく従来のコンバータ実装方式に共通す る欠点 ( 高いスイッチング損失 ) を克服して効率の高 いコンバータを設計する事ができます。近年、各種の 方式が提唱され、実証されてきました。そして現在、 それらの多くが市販品に幅広く使われています。 共振コンバータの理論 正弦波電圧で MOSFET を動作させるか、あるいは正 弦波電流を MOSFET に流すというのが、共振コンバー タの基本的な考え方です。スイッチングのタイミング は、正弦波電圧または正弦波電流がゼロに交差するタ イミング近くに設定する必要があります。これにより、 電力損失を非常に低く抑える事ができます。 「共振スイッチング」コンバータは、大部分のコンバー タに使用可能なアプローチです。この場合、上記の正 弦波電圧または電流を生成するために、スイッチの近 くに受動素子 ( コンデンサとインダクタ ) を追加しま す。このアプローチは大部分のトポロジで使えますが、 部品点数が増えるため、回路の複雑化に見合う総合的 なメリットは得られません。 共振トポロジ 共振コンバータは、主として下記の 3 タイプに分類さ れます。 直列コンバータ ( 負荷をタンクに直列に接続 ) 並列コンバータ ( 負荷をタンクに並列に接続 ) 直列 - 並列コンバータ ( 直列型と並列型のコンバー タを組み合わせてタンク回路を形成 ) これらのコンバータの基本的なアーキテクチャは、全 1 に示すブロック図で表す事ができます。この図 内の共振タンク部の回路は、上記のタイプによって異 なります ( 2 参照 )1: 共振コンバータの基本ブロック図 Authors: Antonio Bersani, Alex Dumais and Sagar Khare Microchip Technology Inc. + _ Switching Network Resonant Tank R l V d Rectifier AN1336 dsPIC ® DSC を使った DC/DC LLC リファレンス デザイン 注意 : この日本語版文書は参考資料としてご利用ください。最新情報は必ずオリジ ナルの英語版をご参照願います。

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AN1336dsPIC® DSC を使った DC/DC LLC

リファレンス デザイン

注意 : この日本語版文書は参考資料としてご利用ください。最新情報は必ずオリジナルの英語版をご参照願います。

現在、各種の DC/DC コンバータ トポロジが存在しますが、通常それらの中から、相反する各種ニーズ間のトレードオフにより、いずれかのトポロジを選択します。多くの場合、設計時に効率、電力密度 ( コンバータのサイズ )、コストが重視されます。

本アプリケーション ノートで取り上げる共振コンバータ ( 特に LLC 共振コンバータ ) は、 上記の全ての特性を備え、コンパクトで高効率な設計が可能です。これらのコンバータは、非常に広い入力電圧レンジで出力電圧を一定に制御でき、システムの総コストの低減に寄与します。

これらのコンバータのアーキテクチャは比較的単純であるため、マイクロチップ社の小型少ピン dsPIC DSCを使って制御および監視 / 管理機能を実装できます。dsPIC DSCのDSP能力は高度な制御を可能とします。

共振コンバータ

共振コンバータは、数多く存在するコンバータの一種です。共振コンバータを使う事により、パルス幅変調(PWM) に基づく従来のコンバータ実装方式に共通する欠点 ( 高いスイッチング損失 ) を克服して効率の高いコンバータを設計する事ができます。近年、各種の方式が提唱され、実証されてきました。そして現在、それらの多くが市販品に幅広く使われています。

共振コンバータの理論

正弦波電圧で MOSFET を動作させるか、あるいは正弦波電流をMOSFETに流すというのが、共振コンバータの基本的な考え方です。スイッチングのタイミングは、正弦波電圧または正弦波電流がゼロに交差するタイミング近くに設定する必要があります。これにより、電力損失を非常に低く抑える事ができます。

「共振スイッチング」コンバータは、大部分のコンバータに使用可能なアプローチです。この場合、上記の正弦波電圧または電流を生成するために、スイッチの近くに受動素子 ( コンデンサとインダクタ ) を追加します。このアプローチは大部分のトポロジで使えますが、部品点数が増えるため、回路の複雑化に見合う総合的なメリットは得られません。

共振トポロジ

共振コンバータは、主として下記の 3 タイプに分類されます。

• 直列コンバータ ( 負荷をタンクに直列に接続 )• 並列コンバータ ( 負荷をタンクに並列に接続 )• 直列 - 並列コンバータ ( 直列型と並列型のコンバータを組み合わせてタンク回路を形成 )

これらのコンバータの基本的なアーキテクチャは、全て図 1 に示すブロック図で表す事ができます。この図内の共振タンク部の回路は、上記のタイプによって異なります ( 図 2 参照 )。

図 1: 共振コンバータの基本ブロック図

Authors: Antonio Bersani, Alex Dumais and Sagar KhareMicrochip Technology Inc.

+_

SwitchingNetwork

ResonantTank RlVd Rectifier

© 2012 Microchip Technology Inc. DS01336A_JP - p. 1

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図 2: 各タイプの共振タンク回路

MOSFET 損失

共振コンバータ方式について詳細に説明する前に、MOSFET スイッチング時の損失発生プロセスについて、図 3 に示す単純な回路 ( ハーフブリッジ レッグ )を使って説明します。図には、各スイッチング素子を表現するための逆並列ダイオードも表示しています。これらは外付けダイオードでも素子のボディダイオードでもかまいません。この回路に入力電圧 (Vd) を印加した時の出力電流 (I0) について考えます。最初閉じていたローサイド MOSFET を時間 t0 で開き、その後、時間 t1 で再び閉じます。この場合の概念的な電圧および電流波形を図 4 に示します。緑の領域は電力損失を表し、これは各 PWM サイクルで発生します。このようなスイッチングを「ハード スイッチング」と呼びます。

図 3: ハーフブリッジ回路

図 4: MOSFET のスイッチング損失

Series Resonant Tank Parallel Resonant Tank LLC Resonant Tank

+

Vd

_

+Vt

-

itIo

t

Vt

it

Switching Power Losses

t0 t1

OFF transition ON transition

DS01336A_JP - p. 2 © 2012 Microchip Technology Inc.

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高い電圧および電流を短時間でスイッチングする事に起因するもう 1 つの問題として、MOSFET は通信中に( 過大な ) ストレスに耐える必要があります。過電圧および過電流は、高速通信の副作用として容易に発生します。

図 5 に、MOSFET の電圧 - 電流軌跡を示します。この図の横軸は MOSFET の電圧、縦軸は MOSFET に流れる電流です。ターンオン遷移中に、電圧は最大値でほぼ一定ですが、電流が増加します。電圧は遷移終了の直前にゼロまで低下します。ターンオフ遷移の挙動は、これとは逆傾向となります ( 図 4 参照 )。この部品の過大ストレスを防ぐために、R、C、L とダイオードを使ったスナバ回路が従来から使われてきました。スナバ回路は部品のストレス対策として良好に機能しますが、電力を消費するため、エネルギ削減の妨げとなります。図 6 に、スナバ回路を使った場合の電圧 - 電流軌跡を示します。

スイッチング損失を低減するには、スイッチング中のMOSFET電圧および /または電流を可能な限りゼロに近付けるようにスイッチング回路を設計するか、あるいはそのようにシステムを動作させる事が、最良の対策となります。このような対策により、スイッチングによる電力損失 ( 消費電力 ) を非常に低く抑える事ができます。図 7 に、そのような対策を施した場合の電圧 - 電流軌跡を示します。

図 5: スイッチング時の MOSFET 電圧 - 電流軌跡

図 6: スナバ回路を使った場合の MOSFET 電圧 - 電流軌跡

図 7: ソフト スイッチング使った場合のMOSFET 電圧 - 電流軌跡

SOATurn ON

Turn OFF

Vd Vt

it

Io

Vd Vt

it

Io

SOA

Turn ONTurn OFF

SOA

Vd Vt

it

Io

© 2012 Microchip Technology Inc. DS01336A_JP - p. 3

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LLC コンバータ

回路の単純化と総合効率の観点から、さらに魅力的なアプローチとして、「負荷共振」コンバータがあります。一般的に回路はハーフブリッジまたはフルブリッジ コンバータで構成され、その後のタンク回路を介して負荷に接続されます ( 直列または並列に接続 )。タンク回路によって電圧 / 電流は正弦波となり、これにより、スイッチング動作を電圧または電流のゼロ交差タイミングに同期させる事ができます。その結果、スイッチング損失が減少します。

以下では、このようなコンバータの基本動作について説明します。スイッチング回路の MOSFET を PWM 信号で駆動して矩形波を生成し、これを共振タンク回路へ供給します。しかしタンク回路の働きにより、基本周波数の正弦波成分だけが回路を通過します。正弦波を整流して DC 出力電圧を得るために、出力整流器を使います(出力整流器には各種トポロジが存在します)。共振トポロジには、並列インダクタンスとしてトランスを使え、これにより電気的に絶縁された環境での動作が可能となります。

これらのコンバータは、下記の 2 つの動作周波数を持ちます。

1. 制御エレクトロニクスによるスイッチング周波数(MOSFET が動作する周波数 )

2. タンクの共振周波数

共振周波数は回路の部品 ( コンデンサ、インダクタ、トランス ) の選択によって決まる固定周波数ですが、スイッチング周波数は動的に変化させる事ができます。

以上のように電力変換を行う事により、負荷と入力電圧の変化に対して出力電圧を一定に制御します。スイッチング周波数と共振周波数の関係は電圧ゲインとして解釈でき、これについては後続のセクションで説明します。

前記した 3 種類の共振コンバータの基本的な動作方法は同じですが、それぞれに短所と長所があります。

トポロジを比較する場合、無負荷条件でのコンバータの挙動を考慮する必要があります。これらのコンバータにおいて重要なのは、回路の共振によって無負荷状態でもある程度の電流が流れるという事です。この電流は通常「タンク循環電流」と呼ばれ、入力から出力への電力の伝達に寄与しません。このため、この電流をできるだけ小さく抑える事が設計目標の 1 つとなります。この電流は、出力負荷電流にほとんど依存しないため、低負荷時の効率の悪化にも影響します。

3 種類の共振コンバータ トポロジ ( 直列、並列、直列- 並列 ) の違いは、効率と損失に注目すると明らかになります。

直列共振コンバータ

• 直列共振コンバータは、スイッチング周波数が共振周波数から高い側または低い側に大きく離れていれば、出力の短絡に耐える事ができます。スイッチング周波数が共振周波数に近い場合、回路のインピーダンスが極めて低くなるため、非常に高い電流が流れて MOSFET を破損する可能性があります。

• 直列共振コンバータの長所の 1 つは、無負荷時に共振回路に電流が流れない点にあります。しかしこの場合、出力電圧を制御する事はできません。

• 直列共振コンバータの効率は、全負荷時よりも部分負荷時に高くなります。

並列共振コンバータ

• 並列共振コンバータは、出力の短絡に対して自己防衛します。

• スイッチング周波数が共振周波数に近い場合、並列共振コンバータは開回路状態で動作すると破損する可能性があります。

• 並列共振コンバータでは、負荷抵抗が増加すると効率が低下します。

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LLC コンバータ アプリケーション

LLC コンバータを使ったアプリケーションでは、主に下記の 2 つの利点が得られます。

1. 非常に低いスイッチング損失 ( 高効率 )2. 全ての負荷およびライン条件で出力電圧を制御可能

電気通信アプリケーションでは、AC-DC システムのPFC の後の DC/DC コンバータとして LLC コンバータが広く使われています。標準的な PFC 出力電圧は約400 V であり、この電圧を直接 LLC コンバータに供給できます。

一般的にこのようなシステムでは、AC 電圧の供給が停止した時に、一定の時間 ( ホールドアップ時間、一般的に 20 ms) が経過するまで定格電力で出力電圧を維持する事が要求されます。これは、電気通信機器がシャットダウン前に状態監視機能を実行するための時間を必要とするためです。

代表的な状況を図 8 に示します。Vpfc は LLC コンバータに供給される PFC 出力電圧、Vo はシステム機器に供給されるコンバータ出力電圧です。従来システムでは、ホールドアップ時間中に定格出力電圧を維持するために、DC リンク内に大きなコンデンサを必要とします。これはシステムのサイズとコストに直接影響します。非常に広い入力電圧レンジ (80 ~ 100 V が妥当なレンジ ) で出力電圧を制御できる共振コンバータを使うと、大きなバルク コンデンサを小さなものに交換できます。

このようなコンバータは、サイズと高さが重視されるアプリケーションにも適します。そのようなアプリケーションでは、ファンを省略し、ヒートシンクも小型化または省略して限られたスペースに配置可能な非常に高効率の小型ユニットが要求されます。そのような例として、フラットパネル型のテレビが挙げられます。

図 8: PFC 出力電圧と、DC/DC コンバータに要求される出力電圧

Vpfc 400 V

Vo

Holdup time

(20 ms)

Note: 少なくとも決められたホールドアップ時間中、システムは公称出力電圧を維持する必要があります。

© 2012 Microchip Technology Inc. DS01336A_JP - p. 5

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LLC リファレンス デザイン

図 9 に、マイクロチップ社の LLC 共振コンバータ リファレンス デザインの概略ブロック図を示します。設計仕様の要約を表 1 に示します。

スイッチング回路にはハーフブリッジ トポロジを採用し、出力電圧振幅を 0 ~ Vd = 400 Vdc ( 公称値 ) としています。フルブリッジ回路も使えますが、回路を単純化して部品点数を削減するためにハーフブリッジを選択しました。

共振タンク回路はコンデンサ、インダクタ、絶縁トランスで構成しています。第 2 の「欠けている」インダクタは、トランスの磁化インダクタンスにより実装されます。場合によっては、第 1 インダクタもトランスに「複合化」できます。このようなコンフィグレーションにより、コンバータのサイズとコストを低減し、回路を単純化できます。二次側には同期整流器を採用してシステムの総効率を改善しています。

小型の受動部品 ( トランスを含む ) を使うという要件から、スイッチング周波数は 200 kHz としました。制御ループは複雑ですが、dsPIC DSC が異常監視や通信等の補助機能も実行できるように、十分な処理能力を残しています。

システムは完全にデジタルで動作します。dsPIC DSCに PID を実装する事により電圧ループを形成します。dsPIC DSC は異常および温度監視を含む全てのシステム動作を処理します。

システムは 2 つの低電圧電源 (MOSFET ドライバ用に+12 V、dsPIC DSC とアナログ部品用に 3.3 V) を必要とします。起動時および異常発生後の正常動作への復帰時に、補助電源回路を使います。この電源回路は、高電圧入力レールから 12 V 出力を生成します。12 Vからコントローラ用に 3.3 V を生成するために、高効率の降圧型コンバータを使います。LLC コンバータが動作する正常動作時は、コンバータ出力からドライバ用 12 V 電源を直接供給します。この電圧は降圧型コンバータにも供給されます。補助電源回路は ON/OFF可能です。2 つの 12 V 電源間の非干渉化のために、1 個の直列ダイオードを使います。高効率化を主要設計目標の 1 つとするため、補助電源回路の実装には特別な注意を払って消費電力を可能な限り低減しています。

図 9: リファレンス デザインの概略ブロック図

Input Filter Half-BridgeDC-AC Converter

Resonant Tank Secondary

Control Loop dsPIC® DSCAuxiliary Power

and Transformer Synchronous

Supply

Rectifier

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表1に、本リファレンス デザインの仕様を記載します。

表 1: マイクロチップ社リファレンス デザインの仕様

表 2に、本回路で使う dsPICのリソースを記載します。

表 2: 回路で使う dsPIC (dsPIC33FJ16GS502)のリソース

仕様 値

入力電圧レンジ DC350 ~ 420 V公称値 : DC400 V

出力電圧 DC12 V

定格電力 200 W

公称共振周波数 210 kHz

公称スイッチング周波数 205 kHz

効率 95% ( 目標値 )

リソース 値

プログラムメモリ 3.5 Kb

データメモリ 650 bytePWM 2 チャンネル

ADC 4 チャンネル

コンパレータ 1 チャンネル

© 2012 Microchip Technology Inc. DS01336A_JP - p. 7

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LLC 回路の解析とモデリング

図 10に、システム挙動を表す方程式の導出に使う LLCの基本モデルを示します。図の左側から順に各段について説明します。

1. DC 入力

入力電圧は電圧ジェネレータで表現します。通常この電圧は約 DC400 V です。

2. スイッチング回路

スイッチング回路はハーフブリッジで構成します。MOSFET のボディ ( または外部 ) 逆並列ダイオードと寄生出力容量は回路の動作と性能に重要な影響を持つため、モデルで明確に表現しています。

3. 共振タンク

この回路は 3 つの要素 ( 共振容量 (Cr)、共振インダクタンス (Lr)、トランス磁化インダクタンス(Lm)) により構成します。Cr、Lr、Lm によって LLCコンバータの特性が決まります。このトポロジでは、磁化インダクタンスは大きな影響を持つ設計パラメータである事に注意してください。これらの受動部品により、回路内で 2 つの共振周波数を生成します ( 後述 )。

4. 理想トランス

磁化インダクタンスを明確に表現するために、トランスを理想モデルに置き換える事ができます。しかし、一次側および二次側の漏れインダクタンスも表現する必要があるため、この置き換えは完全に正確な表現ではありません。これらの漏れインダクタンスはトランスの仕様を決める際に重要となりますが、システム全体の挙動を決定する現段階では重要ではないため、モデルから省略しています。

5. 整流器

図にはダイオードを使う全波整流器を示しています。整流器には各種のトポロジ ( 単ダイオード型、全波ブリッジ型、さらには同期型 ) を使えます。本リファレンス デザインでは同期型を使います。現段階では整流器回路の詳細は重要ではないため、計算には全波整流器で十分です。

6. ローパスフィルタ

このフィルタには 1個のコンデンサ (Co)を使います。

7. 負荷

出力負荷は抵抗 Ro により表現します。

図 10: LLC 回路の部品とセクション

+_Vdc

Q1 D1 C1

Cr Lr

Lm

D3

D4

Co Ro

DC Input Switch Circuit Resonant Tank IdealTrans-

Rectifier Low-PassFilter

Load

Vin Vsw(t) Vrect(t) Vo

Q2 D2 C2

1 2 3 5 6 7

V2 +

Vo

_

4

former

DS01336A_JP - p. 8 © 2012 Microchip Technology Inc.

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回路の各段の境界における状態は、① : DC 電圧、② :矩形波 ( 通常時 )、③ : 正弦波、⑥ : 整流された正弦波となり、これにより DC 電圧が得られます。回路の動作は非常に複雑であるため、古典的な線形系解析手法を用いて本システムの伝達関数を直接求める事はできません。このためタンク回路に着目してアプローチします。タンク回路の伝達関数は、共振周波数を中心とする釣鐘型です。このため、共振周波数の正弦波だけが伝達され、その他の周波数成分 ( 高調波 ) は減衰します。

通常動作時に MOSFET のスイッチング周波数がタンク共振周波数に一致するようにシステムを設計し、タンク部品を選択しました。従って、タンク回路が良好に動作すれば、出力には正弦波だけが伝達されます。

2 個の MOSFET (Q1 と Q2) は、固定されたデッドタイム ( 貫通電流を回避するため ) と 50% デューティ( 通常固定 ) を使って、相補的に動作します。電圧 V2は、MOSFET Q1 が閉じた時に Vdc と等しくなり、Q2が閉じた時に 0 V となります。従って、スイッチング回路の出力 (vsw(t)) は、0 ~ Vdc V のレンジで変動するオンタイム 50% の矩形波となります。

以下では、入力電圧と出力電圧の関係を単純化して表現するために、システムモデルの方程式を導出します。この際に、タンク回路が存在するため、基本周波数の電圧と電流だけを考慮します。

以下の計算では、いくつかの基本的な数学的手法を使います。特に、矩形波を解析的に記述するためにフーリエ級数を幅広く使います。これにより、どのような周期的信号でも、基本周波数 ( 矩形波の周波数 ) とその高調波周波数 ( 整数倍の周波数 ) を持つ無限数の正弦波および / または余弦波の和として、解析的形態で記述する事ができます。

入力スイッチング回路からは矩形波が生成されるため、ここでは矩形波だけについて説明します。式 1 に、振幅 A を持つ矩形波のフーリエ級数を示します。

式 1:

スイッチング回路のモデル

図 10 に基づき、スイッチング回路の出力電圧の矩形波は式 2 のように表せます。

式 2:

この電圧は、DC レベル (Vdc/2: これはタンクコンデンサ (Cr) によりブロックされる ) と無限数の正弦波の和として式 2 のように表せます。この基本周波数成分はk = 1 として式 3 のように求まります。

式 3:

この正弦波電圧のピーク値、平均値、RMS 値を式 4 に示します。

式 4:

前述のように、共振タンクの共振周波数を正確にスイッチング周波数に一致させた場合、共振タンクは基本周波数に対して有限のインピーダンスを持ち、その他の全ての高調波に対して無限の ( 現実的には非常に大きな ) インピーダンスを持ちます。この結果、タンク回路には正弦波電流が流れます。受動素子の影響により、電圧と電流の間に位相シフトが生じます ( 図 11参照 )。

)2sin(122

)(,...5,3,1

kftk

AAtsk

ππ

∑=

+=

( ) )2sin(122 ,...5,3,1

tkfk

VVtv swk

dcdc

sw ππ

∑=

+=

fsw: MOSFET のスイッチング周波数

)2sin(2)(1, tfVtv swdc

sw ππ

=

πdc

pkswVV 2

,1, =

0,1, =aveswV

πdc

rmsswVV 2

,1, =

sw = スイッチング回路の出力電圧1 = 基本周波数項のみを考慮pk = ピーク二乗値ave = 平均二乗値rms = 二乗平均平方根

© 2012 Microchip Technology Inc. DS01336A_JP - p. 9

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図 11: タンク回路の電圧に対する電流の遅れ

従って、共振タンク電流は式 5 のように表せます。

式 5:

MOSFET Q1 が閉じた時、入力電圧ジェネレータからの DC 電流は、タンク電流の 1 周期中の平均値として式 6 のように計算できます。

式 6:

式 3、式 5、式 6 により、実際の入力回路を図 12 のモデルに置き換える事ができます。左側の回路は入力を表し、ジェネレータが電圧 (Vdc) を生成します。電圧源から引き込まれる電流は、タンク電流の平均値 (DC値 ) と見なせます。

図の右側は共振タンクの等価回路を表し、ここでは基本周波数の正弦波だけを考慮します。

ここで、平均入力電力は式 7 のように求める事ができます。

式 7:

図 12: 入力スイッチング回路モデル

Vsw,1

Isw,1

ϕ

)2sin(,1,1, ϕπ −= tfIi swpktt

t = 共振タンク1 = 基本周波数項pk = ピーク値ϕ = 電圧 - 電流間の位相遅延

ϕπ

ϕπ

cos2cos1,1,,1, rmstpktdc III ==

ϕπ

cos2

2,1,, rmstdcavedc IVP =

+

Vdc

_

it 1, It 1 pk, , 2πfswt ϕ–( )sin=

vsw,1 t( )2VDC

π-------------- 2πfsw t⋅( )sin=

IDC2

π-------It,1,rms ϕcos=

DS01336A_JP - p. 10 © 2012 Microchip Technology Inc.

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共振タンク

トランスのモデルでは、磁化インダクタンス (Lm) を明確に表現します。一方、一次側および二次側の漏れインダクタンスは無視します ( 現時点では重要ではないため )。前記したように基本周波数の正弦波にのみ着目する事により、図 13 に示す共振タンク回路の伝達関数 (H(s)) を求める事ができます。ここでは、出力回路を等価抵抗 (Re) に置き換えます。この抵抗値については次のセクションで計算します。

図 14 に基づき、入力インピーダンス Zin(s) は式 8 のように計算できます。

式 8:

回路部品を直列インピーダンス (Zs: Cr、Lr) と並列インピーダンス (Zp: Lm、トランス、出力負荷 ) に集約して置き換える事により、回路の伝達関数を容易に計算できます。それらの計算式を式 9 ~式 11 に示します。

Zs(s)と Zp(s)は、それぞれ直列ブランチと並列ブランチのインピーダンスであり、それぞれ式 9 と式 10 で表されます。これらから式 11 により、入力インピーダンスが求まります。

式 9:

式 10:

式 11:

図 13: 共振タンク回路とその伝達関数

Zin s( ) Zs s( ) Zp s( )+=

Zs s( ) 1sCr-------- sLr+=

Zp s( ) n2Re sLm||=

merr

psin sLRnsLsC

sZsZsZ )(1)()()( 2++=+=

n2: トランスの巻き数比 ( 図 15 参照 )

CrLr

LmRe

Ideal Transformer

n:1

Vsw,1 Vrect,1

TransferFunction

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図 14: 共振タンクの入力インピーダンスの計算

図 15: 共振タンク回路とその等価回路

CrLr

Lm

Zin(s)Re

Ideal Transformer

n:1

CrLr

Lm

Zin(s)

n2Re

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以上により、図 13 の回路は図 16 のように表現できます。

図 16: 伝達関数の計算に使う共振タンク回路

タンク回路では、基本周波数の正弦波だけが振幅に影響するため ( その他の周波数成分は全てタンクの伝達関数によって減衰するため )、基本周波数における伝達関数を式 12 のように定義できます。

式 12:

いずれの場合も、添え字「1」は、基本周波数成分だけを考慮している事を示します。係数 (1/n) は、一次側に対する二次側の電圧比に基づきます (式13参照 )。

式 13:

整流器モデル

繰り返しますが、タンク回路の働きにより、トランスの二次側には正弦波電流 (irect(t)) が流れます。この電流は、極性に従ってダイオード D3 と D4 に交互に流れます ( 図 17 と図 18 参照 )。

回路を見れば、この電流によってトランス二次側の電圧値が決まる事は明らかです。図 17 と図 18 から下記が言えます。

電流の極性が正である場合、D3 が導通し、vrect(t) = Vo

電流の極性が負である場合、D4 が導通し、vrect(t) = -Vo

Zp

Zs

Vsw,1 Vrect,1

in

me

ps

p

rmssw

rmsrect

ZsLRn

nZZZ

VV

sH)(1)(

2

,1,

,1, =+

==

Vrect,1,rms= トランス二次側電圧の RMS 値

Vsw1,rms = タンク入力電圧の RMS 値

primaryondary vn

v 1sec =

© 2012 Microchip Technology Inc. DS01336A_JP - p. 13

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図 17: ir(t) > 0 の時の二次側回路

図 18: ir(t) < 0 の時の二次側回路

0 V を中心電圧とするこの矩形波のフーリエ級数に基づき、整流器の入力における電圧は式 14 のように表せます。

式 14:

基本周波数成分は式 15 のように求まります。

式 15:

この電圧の平均値と RMS 値を式 16 に示します。

式 16:

D3

D4

Co Ro

+

Vo

_

+

Vo,sw

_

+

Vrect

_

ir(t) > 0

ir(t)

D3

D4

Co Ro

+

Vo

_

_

Vo,sw

+

+

Vrect

_

ir(t) < 0

ir(t)

)2sin(14)(,..5,3,1

ψππ

−= ∑=

tkfk

Vtv swk

orect

ψ : 入力電圧 (vsw(t)) に対する位相遅れ

)2sin(4)(1, ψππ

−= tfVtv sworect

πo

pkrectVV 4

,1, =

0,1, =averectV

ormsrect VVπ

22,1, =

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図 19 に示すように、トランス出力における正弦波電流 irect,1(t) は、ダイオードによって整流されます。整流後の電流は式 17 により表されます。

図 19: 整流器入力における電流

式 17:

整流器入力電流は式18のように表せます (基本周波数成分のみ )。

式 18:

整流器出力電流は式 19、その平均値は式 20 により表せます。

式 19:

式 20:

t

t

D3

D4

Co Ro

+

Vo

_

irect,1(t)

| irect,1(t) |

irect(t) = | irect,1(t) |irect(t)

)()( 1,,1, titi rectoutrect =

)2sin()( ,1,1, ψπ −= tfIti swpkrectrect

)2sin(,1,,1, ψπ −= tfIi swpkrectoutrect

pkrectoaveoutrect III ,1,,,1,2π

==

Io: 負荷 ( 図 20 の抵抗 Ro) に流れる平均 (DC) 電流

© 2012 Microchip Technology Inc. DS01336A_JP - p. 15

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以上を要約すると、二次側では、矩形波電圧の基本周波数項は式 15 で表せ、そこに流れる正弦波電流は式 18 ~式 20 で表せます。ここで重要なのは、電流および電圧信号の位相は一致する ( すなわち抵抗における電圧と電流の関係と同じである ) という事です。これはすなわち、整流器の動作を適切な値の抵抗に置き換える事ができるという事です。

この等価抵抗の値は、式16と、式20から求まる Irect,1,pkから、式 21 のように計算できます。

式 21:

整流器のモデルを図 20 に示します。

図 20: 整流器モデル

Revrect,1 t( )irect,1 t( )-----------------------

4Voπ

--------- 2πIo--------

8

π2-----Ro== =

+

_

Re

+

Vo

_

Ro

irect,1 t( ) irect,1,pk 2πfswt ψ–( )sin= Io2π---Irect,1 ,pk=

vrect,1 t( ) 4π---Vo 2πfswt ψ–( )sin=

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コンバータ モデル

以上により、図 10 のコンバータモデルの全てのセクションを同定し、それらの伝達関数を求める事ができました。これらから、コンバータ全体の伝達関数を求める事ができます。

図 12、図 13、図 14、図 15、図 20 のブロック図を結合して得られる総合モデルを図 21 に示します。各回路要素は、基本周波数信号だけに着目して定義されているため、このモデルは一般的に「一次高調波近似」(FHA) と呼ばれます。

図 21: LLC コンバータの全体モデル

総合的な入出力関係は、出力 / 入力電圧比 ( ともに DC値 ) として、図 21 に基づいて式 22 のように求める事ができます。

式 23 は、「電圧変換比」の定義を導きます。その結果、式 24 が得られます。

次項の「電圧変換比」では、各種パラメータと M(fsw)の関係について解析します。

式 22:

式 23: 式 24:

Re

+

Vo

_

+

Vdc

_

Cr Lr

Lm

n:1

H(s)

)(21

2

)(22

,1,

,1,

,1,

,1,sH

V

V

sHV

VV

VVV

VV

VV

dc

dc

o

o

dc

rmssw

rmssw

rmsrect

rmsrect

o

dc

o === π

π

)()( sHnfM sw = nfM

VV sw

dc

o

2)(

=

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電圧変換比

まず、これから使ういくつかの関係について定義する必要があります。LLC 回路は 2 つの共振周波数を使います。1 つは Lr と Cr によって決まる共振周波数(fr: 式 25 参照 )、もう 1 つは Lm の影響を追加した共振周波数 ( 式 26 参照 ) です。以降、「共振周波数」と呼ぶ場合、常に前者の fr を指します。

式 25:

後者の共振周波数を式 26 に示します。

式 26:

式 27 に示すように、現在の周波数 (f) と共振周波数 (fr)の比として正規化周波数を定義すると便利です。

式 27:

以降の全ての周波数値は、正規化周波数として扱います。

加えて、インダクタンス比 ( 式 28 参照 )、特性インピーダンス(式29参照)、品質要素(式30)を定義します。

式 28:

式 29:

式 30:

式 12 と式 23 により、電圧伝達比の解析的表現が式 31のように得られます。

式 31:

言い換えれば、伝達比は正規化周波数とタンク部品値の複素関数として表せます。全てのパラメータを計算し終えるまで、回路の M(fsw) 関数を導き出す事はできません。しかし、パラメータ λ および Q の値を個々に与えて一連の M 曲線を描く事ができます。

図 22 に、そのような曲線の一例を示します。この図には fr 共振周波数を明記しています。もう 1 つの共振周波数 (fr2) は、左側 ( 低周波数側 ) の高いピークに影響します。図 23 に、Q = 0.2 に固定して、λ を 0.1 ~0.9 の範囲で 0.1 おきに変化させた時に得られる一連の曲線を示します。図 24 に、λ = 0.2 に固定して、品質要素 Q を 0.1 ~ 0.9 の範囲で 0.1 おきに変化させた時に得られる一連の曲線を示します。

rrr CL

fπ2

1=

( ) rmrr CLL

f+

=π2

12

rn f

ff =

m

r

LL

rrr

ro CfC

LZπ2

1==

out

outo

e

o

VnIZ

RZQ 2

2

==

),()( , QfffM nsw λ=

DS01336A_JP - p. 18 © 2012 Microchip Technology Inc.

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図 22: 電圧変換比 M(f)

図 23: λ をパラメータする電圧変換比 M(f)

0

0,5

1

1,5

2

2,5

3

3,5

1,00

E-0

1

1,26

E-0

1

1,59

E-0

1

2,00

E-0

1

2,52

E-0

1

3,17

E-0

1

3,99

E-0

1

5,02

E-0

1

6,32

E-0

1

7,96

E-0

1

1,00

E+0

0

1,26

E+0

0

1,59

E+0

0

2,00

E+0

0

2,52

E+0

0

3,17

E+0

0

3,99

E+0

0

5,02

E+0

0

6,32

E+0

0

7,96

E+0

0

Resonant Frequency

0

2

4

6

8

10

12

14

1,00

E-01

1,26

E-01

1,59

E-01

2,00

E-01

2,52

E-01

3,17

E-01

3,99

E-01

5,02

E-01

6,32

E-01

7,96

E-01

1,00

E+0

0

1,26

E+0

0

1,59

E+0

0

2,00

E+0

0

2,52

E+0

0

3,17

E+0

0

3,99

E+0

0

5,02

E+0

0

6,32

E+0

0

7,96

E+0

0

M @ L=0,1

M @ L=0,2

M @ L=0,3

M @ L=0,4

M @ L=0,5

M @ L=0,6

M @ L=0,7

M @ L=0,8

M @ L=0,9

© 2012 Microchip Technology Inc. DS01336A_JP - p. 19

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図 24: Q をパラメータする電圧変換比 M(f)

これらの図から次の事が言えます。λ の増加にともなって曲線のピークはより先鋭になり、Q の増加にともなって曲線はより平坦になります。

コンバータは、入力が公称電圧の時に共振周波数で動作するように設計します。この場合、式 24 から式 32が得られ、これにより式 33 が得られます。

式 32:

式 33:

図 23 と図 24 の曲線から、全ての曲線は fn = fr に対応する 1 点 ( すなわち共振周波数 ) で交わり、この点における電圧変換比は1 (巻き数比に対応 )となる事がわかります。これはすなわち、n を適切に選択する事により、システムが現在どの M 曲線上で動作していても、公称条件において適正な出力電圧が生成されるという事を意味します。

図 25 に、回路の入力インピーダンスのグラフを示します (Zin は式 11 の定義に従う )。この図の色付きの領域 ( 周波数軸で f ≤ fn) は、入力インピーダンスが正の傾きを持つ領域を示しています。インダクタの伝達関数も同様の挙動を持つ事から、入力回路から見た LLC回路は、正弦波入力電圧に対してインダクタとして動作すると見なす事ができます。これは、コンバータのターンオン スイッチング損失を非常に低く抑えるために極めて重要です。これについては後続のセクションで説明します。一方、図の左側では Zin は負の傾きを持ち、これはシステムが容量性の挙動を持つ事を意味します。さらにこれは、容量性挙動と誘導性挙動の境界となる点が Z 曲線上に存在する事を意味します。

入力インピーダンス Zin は、複素関数を使って式 34 のように表せます。

式 34:

0

0,5

1

1,5

2

2,5

3

3,51,

00E

-01

1,26

E-0

1

1,59

E-0

1

2,00

E-0

1

2,52

E-0

1

3,17

E-0

1

3,99

E-0

1

5,02

E-0

1

6,32

E-0

1

7,96

E-0

1

1,00

E+0

0

1,26

E+0

0

1,59

E+0

0

2,00

E+0

0

2,52

E+0

0

3,17

E+0

0

3,99

E+0

0

5,02

E+0

0

6,32

E+0

0

7,96

E+0

0

Qz@0,1Qz@0,2Qz@0,3Qz@0,4Qz@0,5Qz@0,6Qz@0,7Qz@0,8Qz@0,9

12)(,

, ==nomin

nomor V

VnfM

nomo

nomin

VV

n,

,

2=

),,( QffZ nin λ=

DS01336A_JP - p. 20 © 2012 Microchip Technology Inc.

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図 25: 入力インピーダンス

電圧ゲインと同様に、入力インピーダンスも λ と Q をパラメータとして一連の曲線を描く事ができます。各曲線では、コンバータの挙動が上記のように容量性から誘導性に変化する点を特定できます。これらの点の軌跡を図 26 に青で示します。共振周波数より低い周波数レンジ (f < fn) において、この軌跡より右側の領域( 図 26 の色付きの領域 ) では、コンバータは誘導性の挙動を示します。共振周波数より低い周波数では、動作点はこの領域内に入る必要がある事は明らかです。

M 平面上の動作領域のもう 1 つの制限は、「負の Q は意味を持たない」という事から定義できます。すなわち Q の許容最小値は 0 だという事です。この条件を満たすゲイン曲線も描く事ができます。その結果、図 27に示す許容領域が得られます。

上記の 2 つの許容領域が重なる領域を図 28 に示します。

さらに、最小および最大入力電圧による制限を加える事ができます。式 31 を使って、2 つの限界電圧値から式 35 と式 36 の関係が得られます。これをプロットした図を図 29 に示します。

式 35:

式 36:

周波数レンジ f < fn において、以上で定義した全ての制限を満たす領域を図 30 に色付の領域として示します。これがコンバータの動作に使える領域です。

|Zn|

1

10

100

1,00

E-0

1

1,26

E-0

1

1,59

E-0

1

2,00

E-0

1

2,52

E-0

1

3,17

E-0

1

3,99

E-0

1

5,02

E-0

1

6,32

E-0

1

7,96

E-0

1

1,00

E+0

0

1,26

E+0

0

1,59

E+0

0

2,00

E+0

0

2,52

E+0

0

3,17

E+0

0

3,99

E+0

0

5,02

E+0

0

6,32

E+0

0

7,96

E+0

0

max,min 2)(

in

o

VVnfM =

min,max 2)(

in

o

VVnfM =

© 2012 Microchip Technology Inc. DS01336A_JP - p. 21

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図 26: 共振周波数より低く、かつ、誘導性挙動を満たす許容領域

図 27: 共振周波数より低く、かつ、Q ≥ 0 を満たす許容領域

0

0,5

1

1,5

2

2,5

3

3,51,

00E

-01

1,26

E-0

1

1,59

E-0

1

2,00

E-0

1

2,52

E-0

1

3,17

E-0

1

3,99

E-0

1

5,02

E-0

1

6,32

E-0

1

7,96

E-0

1

1,00

E+0

0

1,26

E+0

0

1,59

E+0

0

2,00

E+0

0

2,52

E+0

0

3,17

E+0

0

3,99

E+0

0

5,02

E+0

0

6,32

E+0

0

7,96

E+ 0

0

1,26

E+00

1,59

E+00

2,00

E+00

2,52

E+00

3,17

E+00

3,99

E+00

5,02

E+00

6,32

E+00

7,96

E+00

0

0,5

1

1,5

2

2,5

3

3,5

1,00

E-0

1

1,26

E-0

1

1,59

E-0

1

2,00

E-0

1

2,52

E-0

1

3,17

E-0

1

3,99

E-0

1

5,02

E-0

1

6,32

E-0

1

7,96

E-0

1

1,00

E+00

DS01336A_JP - p. 22 © 2012 Microchip Technology Inc.

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図 28: 誘導性挙動、かつ、Q > 0 を満たす M 平面内の許容領域

図 29: 最小許容ゲインと最大許容ゲイン

0

0,5

1

1,5

2

2,5

3

3,51,

00E-

01

1,26

E-01

1,59

E-01

2,00

E-01

2,52

E-01

3,17

E-01

3,99

E-01

5,02

E-01

6,32

E-01

7,96

E-01

1,00

E+0

0

1,26

E+0

0

1,59

E+0

0

2,00

E+0

0

2,52

E+0

0

3,17

E+0

0

3,99

E+0

0

5,02

E+0

0

6,32

E+0

0

7,96

E+0

0

0

0,5

1

1,5

2

2,5

3

3,5

1,00

E-0

1

1,26

E-0

1

1,59

E-0

1

2,00

E-0

1

2,52

E-0

1

3,17

E-0

1

3,99

E-0

1

5,02

E-0

1

6,32

E-0

1

7,96

E-0

1

1,00

E+0

0

1,26

E+0

0

1,59

E+0

0

2,00

E+0

0

2,52

E+0

0

3,17

E+0

0

3,99

E+0

0

5,02

E+0

0

6,32

E+0

0

7,96

E+0

0

Mmax

Mmin

© 2012 Microchip Technology Inc. DS01336A_JP - p. 23

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AN1336

図 30: M 平面内の最終的な許容領域

0

0,5

1

1,5

2

2,5

3

3,5

1,00

E-0

1

1,26

E-0

1

1,59

E-0

1

2,00

E-0

1

2,52

E-0

1

3,17

E-0

1

3,99

E-0

1

5,02

E-0

1

6,32

E-0

1

7,96

E-0

1

1,00

E+00

1,26

E+00

1,59

E+00

2,00

E+00

2,52

E+00

3,17

E+00

3,99

E+00

5,02

E+00

6,32

E+00

7,96

E+00

Mmax

Mmin

DS01336A_JP - p. 24 © 2012 Microchip Technology Inc.

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LLC コンバータの動作

MOSFET ターンオン損失のゼロ化

共振周波数の下側および上側のコンバータ動作について詳細に説明する前に、タンク回路に電圧矩形波を印加した時の挙動について理解しておく必要があります。既に説明したように、矩形波電圧によってタンク回路には正弦波電流が流れます。電圧波形に対する電流波形の位相は、「進む」か「遅れる」か 2 つの状態が考えられます。電流の位相が電圧に対して進んでいる場合、その挙動はコンデンサの挙動に相当します。しかし、この状態には興味はありません。

なぜならば、上記したようにタンク入力電流に対して誘導性の挙動を示す電圧変換比M(f)でシステムを動作させますが、これはすなわち電流が電圧に対して遅れる事を意味するからです。図 31 に、 これから説明する回路を示します。この図はハーフブリッジのスイッチング セクションだけを示しています。タンク電流の極性は、電流がタンク (2 個のコンデンサの中間点 ) から出る方向を正とします。D1 と D2 および C1 と C2 は、システムの各種部品を複合した等価部品です。

図 31: MOSFET ターンオン挙動の説明に使う回路

図 32 に、MOSFET のゲート波形とタンク電流を示します。

時間 t0 において、電流の極性は負であり、電流はこの回路に流れ込みます ( 図 33 参照 )。スイッチはしばらくの間 ON にならないと仮定します。電流はハイサイド ダイオード D1 を通って図のように流れます。これは、スイッチにかかる電圧が非常にゼロに近い事を意味します。この状態では、スイッチは非常に小さな損失で動作できます。従って、スイッチを期間 t0 ~ t1 内の任意のタイミングで動作させると、損失を非常に低く抑える事ができます。

期間 t1 ~ t2 では、スイッチ Q1 は閉じられており、ここに電流が流れます ( 図 34)。

時間 t2 で Q1 が開きます。この時、ローサイド スイッチを即座に動作させなければ、電流の極性は正であり、電流はローサイド ダイオード D2 を通って容易に流れます ( 図 35)。再び、ローサイド MOSFET にかかる電圧がゼロに近付き、損失のない通信が可能となります。Q1 の場合と同様に、ローサイド スイッチは、この期間中の任意のタイミングでターンオンできます。理想的な MOSFET ターンオン タイミングは、MOSFET のドレイン - ソース間電圧がゼロの時です。

次の期間 t3 ~ t4 では、ローサイド MOSFET が導通します ( 図 36)。

+_Vdc

Q1 D1 C1

Q2 D2 C2

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図 32: 電圧波形と電流波形

t0 t1 t2 t3 t4 t

Q1

Q2

Tank Current

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図 33: t0 ~ t1: タンク電流はダイオードを流れる

図 34: t1 ~ t2: タンク電流はハイサイド スイッチを流れる

図 35: t2 ~ t3: タンク電流はダイオードを流れる

図 36: t3 ~ t4: タンク電流はローサイド スイッチを流れる

+_Vdc

Q1 D1 C1

Q2 D2 C2

it

+_Vdc

Q1 D1 C1

Q2 D2 C2

Vdc

+_Vdc

Q1 D1 C1

Q2 D2 C2

it

+_Vdc

Q1 C1

Q2 D2 C2

Vdc

D1

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共振時の回路の動作

以下では、共振時の LLC コンバータの動作について説明します。「共振」とは、MOSFET が共振周波数と同じ周波数で動作する状態を指します。共振周波数は部品の選択によって決まります。回路図を図 37 ~図 42に示し、最も重要な波形を図 43 に示します。各MOSFET には、逆並列ダイオード ( ボディダイオードまたは外付けダイオード )と寄生容量C1およびC2を追加しています。これらはシステム挙動に影響します。C1 と C2 は各 MOSFET のドレイン - ソース間静電容量と、回路の全ての寄生容量も含みます。次に二次側に目を向けます。実際のリファレンス デザインでは同期整流器を使いますが、ここではダイオードを整流回路として使っています。これは、回路動作を明確にして二次側同期 MOSFET のスイッチング タイミング要件を決定しやすくするためです。

後続のセクションでは、共振周波数の上側および下側についても解析します。

図 43 に下記の信号を示します。

• A: ハイサイド MOSFET Q1 のゲート信号

• B: ローサイド MOSFET Q2 のゲート信号

• C: 一次側電流 ; 磁化電流 ( 赤の破線 ) とタンク電流( 黒の実線 ) を表示

• D: ハイサイドMOSFET Q1のドレイン -ソース間電圧 ; この電圧はコンデンサ C1 にも印加される

• E: ローサイドMOSFET Q2のドレイン -ソース間電圧 ; この電圧はコンデンサ C2 にも印加される

• F: ダイオード D3 を流れる二次側電流

• G: ダイオード D4 を流れる二次側電流

時間を区切って回路の動作を解析します。

一般的に、一次側電流は 2 つの成分を含みます。1 つは磁化電流 (im(t)) であり、これはコンバータ出力への電力の伝達に寄与しません。もう 1 つは電力の伝達に寄与するタンク電流 (it(t)) です ( 図 37)。

t < t0: ( 図 38) Q1 OFF; Q2 ON; D3 OFF; D4 ONこれは解析の初期条件です。Q2 は最初閉じており、時間 t0 で開きます。ハイサイド コンデンサ C1 での電圧降下は Vdc です。

t0 < t < t1: ( 図 39) Q1 OFF; Q2 OFF ( デッドタイム ); D3 OFF; D4 OFF

両方のスイッチが開くため、Vdc から回路へエネルギは供給されません。一次側には磁化電流だけが流れます。この期間中、この電流 (im(t)) は一定です。この電流は 2 つの MOSFET コンデンサに分岐して流れ、C1を放電し、C2 を充電します。ここで重要なのは、デッドタイムが終了する前にこれらのコンデンサの充放電を完了する必要があり、そのためには十分な磁化電流が必要であるという事です。この要件を満たせるように部品とデッドタイムの長さを選択する必要があります。時間 t1 において、C2 の電圧は Vdc よりもわずかに高くなります。一方、C1 の電圧は微弱な負の電圧となるため、D1 の導通が可能な状態となります。

二次側の両方のダイオード (D3 と D4) は導通せず、出力コンデンサ Co がエネルギを出力へ供給して電圧 Voを維持します。

t1 < t < t2 ( 図 40) Q1 OFF→ON; Q2 OFF;D3 OFF→ON; D4 OFF

上記で予期したように、ダイオード D1 の導通が始まります。このダイオードでの電圧降下は微弱です。この期間中、MOSFET Q1 を任意のタイミングで閉じる事ができます。ここでの電圧降下はほとんどゼロであるため、ターンオフ損失も微弱です。すなわちゼロ電圧スイッチング (ZVS) が実現します。D1 だけが導通している間、一次側には再び磁化電流が流れますが、この電流はエネルギの伝達に寄与しません。しかし、Q1が閉じると即座に入力ジェネレータVdcから電力が供給されます。この電力は出力へ伝達されます。Q1 が閉じるまで、タンク電流の極性は負であるため、電流は Vdc に流れ込みます。

t2 < t < t3 ( 図 41) Q1 ON; Q2 OFF; D3 ON; D4 OFF

この期間は、電力の伝達が行われる期間の前半部にあたります。波形からわかるように、一次側電流の両方の成分が顕著に現れます。磁化電流は二次側電圧 (Vo)が一次側へ影響する事によって発生します。この電圧は直接 Lm にかかるため、磁化電流は式 37 のように計算でき、これは線形挙動を示します。

式 37:

図 43 の ΔI ( 波形 C) から、 エネルギ伝達に寄与する電流の量がわかります。

タンク電流は式 38 のように表せます。

式 38:

tLnVtiti

m

omm += )()( 1

)2sin(2)( , ϕπ += tfIti rrmsPt

DS01336A_JP - p. 28 © 2012 Microchip Technology Inc.

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時間 t3 における共振時に、タンク電流は磁化電流に厳密に一致します。Q1 を開く時、Q1 にはこの電流が流れています。ターンオフ スイッチング損失を低減するには、この電流をできるだけ低く抑える必要があります。しかし、磁化電流に関しては 2 つの互いに矛盾する要件が存在します。まず、期間 t0 ~ t1 の説明で述べたように、デッドタイム中に寄生容量を充放電するために十分に大きな電流が必要です。式 37 から、これは Lm の値を小さくする必要がある事を意味します。その一方、損失を低減するために im(t3) を可能な限り小さくする必要があり、これはすなわち Lm の値を大きくする必要がある事を意味します。このため、設計時にトレードオフが必要です。ZVS 要件の達成を優先して Lm に大きめの値を選択する事も 1 つのアプローチとして考えられます。

t3 < t < t4:( 図 42) Q1 OFF; Q2 OFF ( デッドタイム ); D3 OFF; D4 OFF

この期間の回路の挙動は、先のデッドタイム期間に対して相補的となります。再び、一次側には概ね一定の磁化電流だけが流れます。この電流はコンデンサ C1を充電すると同時に C2 を放電します。この期間中、電圧 vds1(t)はVdcをわずかに超えるレベルまで上昇し、同時に C2 の電圧は 0 V をわずかに下まわるレベルまで低下します。前回のデッドタイム時とは対称をなす形で、D2 が導通可能となります。

期間 t4 ~ t7 の回路の動作は、サイクル前半の動作と逆になります。

図 43 の信号 F と G は二次側電流を表し、青の縦線はその振幅を示しています。

図 37: LLC 回路 ( 磁化電流とタンク電流を表示 )

+_Vdc

Q1 D1 C1

Cr Lr

Lm

D3

D4

Co RoQ2 D2 C2

+

Vo

_

it

im

+

Vp

_

+

Vs1

_

+

Vs2

_

© 2012 Microchip Technology Inc. DS01336A_JP - p. 29

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図 38: 期間 t < t0 の LLC 回路の動作

図 39: 期間 t0 ~ t1 の LLC 回路の動作

+_

Vdc

Q1 D1 C1

Cr Lr

Lm

D3

D4

Co RoQ2 D2 C2

+

Vo

_

+

_

+

Vs2

_

+Vds1_

Vp

+_

Vdc

Q1 D1 C1

Cr Lr

D3

D4

RoQ2 D2 C2

+

Vo

_

+

Vp

_

+

Vs1

_

+

Vs2

_

+Vds1_

CoLm

DS01336A_JP - p. 30 © 2012 Microchip Technology Inc.

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図 40: 期間 t1 ~ t2 の LLC 回路の動作

図 41: 期間 t2 ~ t3 の LLC 回路の動作

+_

Vdc

Q1 D1 C1

Cr Lr

Lm

D3

D4

Co RoQ2 D2 C2

+

Vo

_

+

_

+

_

+

Vs2

_

Vs1

Vp

+_

Vdc

Q1 D1 C1

Cr Lr

Lm

D3

D4

Co RoQ2 D2 C2

+

Vo

_

+

_

+

_

+

Vs2

_

+Vds2_

Vp

Vs1

© 2012 Microchip Technology Inc. DS01336A_JP - p. 31

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図 42: 期間 t3 ~ t4 の LLC 回路の動作

図 43: LLC 回路の波形

+_

Vdc

Q1 D1 C1

Cr Lr

Lm

D3

D4

RoQ2 D2 C2

+

Vo

_

+

Vp

_

+

Vs1

_

+

Vs2

_

+Vds1_

Co

Vdc

Vdc

t

t

t

t

t

t

t

A

B

C

D

E

F

G

I

Q1:Gate Drive

Q2:Gate Drive

it(t), im(t)

Vds1(t)

Vds2(t)

id3(t)

id4(t)

t0 t1 t2 t3 t4 t5 t6 t7

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共振周波数の下側での回路の動作

共振周波数より下側での回路動作は式 39 により表せます。

式 39:

回路の挙動は基本的に共振時と同じですが、二次側のスイッチング挙動に直接影響する大きな相違点がいくつか存在します。図 44 に共振周波数より下側での動作波形を示します。比較のために、共振周波数より上側での動作波形を図 45 に示します。

タンク回路の基本周波数正弦波の周期はスイッチング周期よりも短いため、1/2 周期が終了するよりも前にタンク電流が磁化電流に等しくなります。図 44 には、その状態を図示しています。この時点から後では、一次側に磁化電流だけが流れます。

二次側でダイオードを使う場合、電流がゼロになると即座にそれらのダイオードの導通が停止します。しかし、ダイオードのかわりに MOSFET を使う同期方式の場合、MOSFET のゲートを正しく駆動する必要があります。このため、二次側 MOSFET を OFF にするタイミングを決定するための方式を設計時に選択する必

要があります。各種の方式が開発されていますが、一般的に何らかの間接的な電流検出が必要です ( 例 :MOSFET の電圧降下を計測する )。

共振周波数より上側での回路の動作

共振周波数より上側での回路動作は式 40 により表せます。

式 40:

この場合の回路の挙動は、共振周波数より下側での動作と比べて逆の傾向を示します。図 45 を参照してください。共振周期はスイッチング周期よりも長くなるため、スイッチング周期の 1/2 が終了した時点でのタンク電流は、磁化電流よりも高くなります。デッドタイム中に、タンク電流は磁化電流のレベルまで急激に低下し、その後に次の 1/2 サイクルが開始可能となります。

共振周波数より上側では、同期スイッチを一次側スイッチと同時に ON/OFF できます。これにより、制御を大幅に簡略化できます。

以上のように、二次側 MOSFET の制御は、スイッチング周波数と共振周波数の上下関係によって影響されるという事をよく理解する必要があります。この問題にはファームウェアで対応します。

図 44: 共振周波数より下側での回路挙動

rswrsw TTff >⇒<

rswrsw TTff <⇒>

Q1:Gate Drive

Q2:Gate Drive

Vdc

t

t

t

t

t

A

B

C

D

E

t0 t1 t2 t3 t4 t5 t6

it(t), im(t)

id3(t)

id4(t)

© 2012 Microchip Technology Inc. DS01336A_JP - p. 33

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図 45: 共振周波数より上側での回路挙動

Q1:Gate Drive

Q2:Gate Drive

t

t

t

t

t

A

B

C

D

E

Vdc

it(t), im(t)

id3(t)

id4(t)

t0 t1 t2 t3 t4 t5 t6

DS01336A_JP - p. 34 © 2012 Microchip Technology Inc.

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同期整流

既に述べたように、本回路の二次側にはダイオードではなく同期整流器を使います。これは二次側の伝導損失を低減するためです。ダイオードでは、2 つの要因(順方向抵抗 (Rf)とダイオード順方向電圧 )によって損失が発生します。ダイオードの総損失は式 41 のように計算できます。

式 41:

ダイオードをスイッチング動作する MOSFET に置き換えた場合の損失は式 42 のように表せます。

式 42:

LLC コンバータでは、二次側スイッチに流れる電流がゼロの時にスイッチを動作させる事が重要です。図 43の曲線 F と G、および図 44 と図 45 の曲線 D と E を参照してください。既に述べたように、スイッチング周波数が共振周波数よりも低い場合にのみ、二次側スイッチのゼロ電流ターンオフが可能となります。そのような状態を保証できるように、設計時に適切な方式を選択する必要があります。

選択可能なトポロジとして、下記の非常に一般的なトポロジを選択できます。

• 全波整流器、ダイオードブリッジ

• 全波整流器、センタータップ

本リファレンス デザインでは後者を使います。通常は、センタータップを二次側グランドに接続しますが、本リファレンス デザインではセンタータップを正極性出力に接続しています。その理由は、このようなトポロジでは、両方の MOSFET のソースをグランドに接続できるからです ( 回路図参照 )。これにより、ブートストラップ回路が一切不要となるため、ドライバ回路を大幅に簡略化できます。

従来型アプローチの場合、N チャンネル MOSFET が動作するにはソース電圧よりも高いゲート電圧が必要であるため、ブートストラップ回路が必要です。しかし、導通時には、ソース電圧とドレイン電圧がほぼ同じになります。このような状況では、ゲート - ソース間電圧 (Vgs) はしきい値電圧 (Vth) を超える事ができないため、MOSFET は正しく動作しません。

全波ダイオード ブリッジ方式は、高出力電圧 / 低出力電流のアプリケーションで一般的に使われます。

リファレンス デザインのハードウェアの概要

LLC リファレンス デザインは、2 つのセクション ( コンバータ本体と補助電源 ) に分けて考える事ができます。コンバータ本体は、さらに一次側セクションと二次側セクションに分かれます。両セクション間は、共振トランスにより絶縁されます。dsPIC DSC は二次側に配置され、全ての電力伝達および監視動作を制御します。これにより、電源管理通信の実装と、電源およびグランド接続が容易となります。一方では高速で小型の受動部品を使うという要件があり、他方では高度な制御ループおよび周辺機能の実装を可能にするという要件が存在し、両要件をバランス良く満たすために、公称スイッチング周波数 ( 従って共振周波数 ) を 200 kHzに設定しました。

図46に、LLCコンバータの概略ブロック図を示します。

図 47 に、回路全体の概略ブロック図を示します。この図には下記を表示しています。

• 高電圧接続 : 黒の太線

• 12 V 電源ライン : 青線

• 3.3 V 電源ライン : 緑線

フライバック回路が生成する 12 V と LLC コンバータが生成する 12 V は、ショットキー ダイオードによって分離しています。

2,,, rmsDFaveDFdiodeloss IRIVP +=

Vf: ダイオード順方向電圧

Id,ave と Id,rms: 順方向ダイオード電流の平均値と RMS 値

Rf: ダイオード順方向抵抗 ( 通常は数 10 mΩ)

switchingconductionMOSFETloss PPP +=,

Pconduction は伝導損失であり、

下式のように表せます :

onDSrmsMOSFETconduction RIP ,,2=

Pswitching: スイッチング損失

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AN

1336

DS

01336A_JP

- p. 36©

2012 Microchip Technology Inc.

Low-Pass Filter

Load

dsPIC33FJ16GS502

Driver

Temperature

I2C™

源からの12 V出力は起動時に使いま

動後は、コンバータの出力電圧から

ドライバと MOSFET に 12 V を供給

Communication

図 46: LLC コンバータの概略ブロック図

DC Input(350 – 420V)

Half-Bridge ConverterLLC Resonant Tank

Secondary Synchronous Rectification

High-Voltage Isolation

Driver TX

Auxiliary PWR TX

Gate

Gate Driver

12V LM2651 Buck Switch

TX

Cr

Lr

Lm

3.3VNCP1012

Driver TX

CT

Op amp

Opto-

補助電

す。起

ゲート

します

coupler

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© 2012 M

icrochip Technology Inc.D

S01336A

_JP - p. 37

AN

1336

® DSC

tchingulator

D

47: LLC コンバータの概略ブロック図 (D: MOSFET ドライバ、A: 増幅器 )

dsPIC

Tank

SynchMOSFET

SynchMOSFET

MOSFET

MOSFET

SwiReg

Flyback Converter(Auto-shutoff)

D

D

DA

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AN1336

ハーフブリッジの MOSFET2 個の MOSFET は、タンク回路入力を交互に入力高電圧レール (DC400 V、公称値 ) とグランドに接続します。貫通電流を回避するために、各通信エッジには正のデッドタイムを挿入します。これにより、ハーフブリッジ MOSFET に対する一切のターンオン ストレスを防ぎます。最大入力電圧を DC450 V とするため、DC600 ~ 700 V の降伏電圧を持つ MOSFET を選択します。

両方の MOSFET にゲート - ソース間抵抗 (10 kΩ) を追加する事により、ノイズによる無用なMOSFETのターンオンを防ぎます。MOSFET のターンオン / ターンオフ速度を制御するために、直列抵抗を追加しています。

既に説明したように、MOSFET には磁化電流とタンク電流が流れます。タンク電流については、後で簡単に説明します。

出力電力は 200 W です。95% のコンバータ効率を考慮した入力電力を式 43 に示します。

式 43:

最大平均入力電力を式 44 に示します。

式 44:

式 45 に入力電流を示します。

式 45:

余裕を持たせて、Ipk = 2 A に設定します。

入力静電容量 CISS ( より正確には総ゲート キャパシタンス ) は、ドライバの定義において重要なパラメータです。この静電容量が大きいほど充放電に要するドライバ電流が増加します。その他の詳細は本書の「ハードウェア ドライバ」を参照してください。

出力静電容量も重要です。先に述べたように、ゼロ電圧スイッチングを達成するには、この静電容量をデッドタイム中に Vin まで充電または 0 V まで放電する必要があるからです。出力静電容量は、MOSFET のデータシートに COSS として記載されています。しかし、寄生容量を含めるために、計算ではこの値を割り増しする必要があります。

表 3: 入力 MOSFET の概要

タンク回路

タンク回路の設計では、3 つの要素 (Lm、Lr、Cr) を決定する必要があります。これらの値は、式 25 ~式 30により、互いに関連付けられ、さらに目標コンバータ性能に関連付けられます。通常、システムにはこれら以外の変数やパラメータも関連します。このため、設計時には経験や慣例に基づく判断が必要です。部品の選択に各種の手法が存在するのは、このためです。

その中の1つの方法として、前述のように電圧比M(fsw)のグラフを使い、その平面内の制限と許容領域を考慮する事により、適切な λ および Q パラメータの値を選択します。

式 46:

式 47:

式 48:

図 48 に、上で決定した 2 つの値 ( 最小値と最大値 ) を示します。

WPP outin 21095./20095.0/ ===

2max,

min,pk

inrmsrmsinI

VIVP ==

AV

WV

PIin

inpk 85.0

35021022

min,max, ===

パラメータ 値

降伏電圧 650 V

連続電流 9 A @ 25 ℃

RDSon, max 385 mΩ

入力静電容量 (CISS) 790 pF typical

出力静電容量 (COSS) 38 pF typical

総ゲート電荷 (Qg) 17 nC typical

667.16122

400=

•=n

889.045012667.1622)(

max,min =••==

in

o

VVnfM

143.135012667.1622)(

min,max =••==

in

o

VVnfM

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図 48: 電圧変換比 (M(f)) とリファレンス デザインに採用したゲイン制限値

本リファレンス デザインでは、λ = 0.25 および Q = 0.5としました。

これらの値は、対応する電圧ゲイン曲線が約 10% のマージンを許容して要求最大ゲインに対応できるように選択しています。

式 29 と式 30 から Cr は以下のように計算できます。

式 49:

式 50:

式 51:

図 48 からは、次の事がわかります。まず、最低動作スイッチング周波数は、M(f) 曲線と Mmax 直線の交点によって決まり、その値は 155 kHz となります。

同様に、最高動作スイッチング周波数は M(f) 曲線とMmin 直線の交点によって決まり、その値は 220 kHzとなります。

次に、Lm と Lr について説明します。前記したように、これらは両方ともトランスにより実装されます。実際のトランスの総磁化インダクタンスは、Lm と Lr の和として求まります。これは、2 つの試験により容易に検証できます。まず、二次側を開いた状態で一次側インダクタンスを計測します。この場合、計測値は Lm +Lr の値を示します。次に、二次側を短絡した状態で一次側インダクタンスを計測します。この場合、計測値は漏れインダクタンスの値を示します。

0

0,2

0,4

0,6

0,8

1

1,2

1,41,

00E-

01

1,26

E-01

1,59

E-01

2,00

E-01

2,52

E-01

3,17

E-01

3,99

E-01

5,02

E-01

6,32

E-01

7,96

E-01

1,00

E+0

0

1,26

E+0

0

1,59

E+0

0

2,00

E+0

0

2,52

E+0

0

3,17

E+0

0

3,99

E+0

0

5,02

E+0

0

6,32

E+0

0

7,96

E+0

0

Mmax

Mmin

CrπIout

16frQn2Vout

------------------------------- 10nF= =

* 本リファレンス デザインでは、この値を 9.4nF としました。

*

Lr1

4π2fr2Cr

-------------------- 67μH= =

LmLrλ----- 270μH= =

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図 49 に、トランスのモデルを示します。ここでは一次側および二次側漏れインダクタンスと、それらの巻き線抵抗および等価コア抵抗を考慮します。これらの2 つの要素は、トランス損失を特定するために使います。これらのインダクタンス値間の関係と、共振コンバータが必要とする Lm および Lr インダクタンスを特定するために、二次側に関連する要素を全て一次側へ移動しています。図 50 では、両方のインダクタンスを複合してモデルを単純化しています。Lr と Lm は計測可能であるため、このモデルは好都合です。

• R1: 一次側巻き線の抵抗

• Lli: 一次側巻き線の漏れインダクタンス

• Lm: 磁化インダクタンス

• Rm: コア損失をモデル化した抵抗 ( = vm2/Rm)

• L’l2: 一次側へ反映した二次側巻き線の漏れインダクタンス ; L’l2 = n2Ll2、Ll2 は二次側巻き線の漏れインダクタンス

• R’2: 一次側へ反映した二次側巻き線の抵抗 ; R’2 = n2 R2、R2 は二次側巻き線の抵抗

図 49: 漏れインダクタンスと抵抗を考慮したトランスモデル

図 50: 漏れインダクタンスのみを考慮したトランスモデル

R1 Li1 R'2 L'i2

Lm vm Rm

n:1

Lr

Lm

n:1

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図49の一次側端における総漏れインダクタンスは式52により求まります。

式 52:

Lpriは、二次側巻き線を開いた状態で一次側インダクタンスを計測する事により、容易に求まります。その結果を式 53 に示します。

式 53:

式 52 の共振インダクタンスは式 54 のように求まります。

式 54:

これら 2 つの結果から式 55 が得られます。

式 55:

トランスのゲインは式 56 のように定義できます。

式 56:

式 57 に、トランスの巻き数比を示します。

式 57:

この結果、一次側巻き数を 56、二次側の各巻き数を 3とします。

また、トランスのボビンを ETD34、コア材を 3C90 とします。予測される損失は約 2 W です。二次側巻き数は 3、一次側巻き数は 56 であるため巻き数比は 18.667です。リッツ線を二次側 (40 ゲージ 3 本並列線 /175 ストランド ) と一次側 (40 ゲージ 2 本並列線 /10 ストランド ) に使います。ギャップは約 2 mm です。

このトランスを使う場合、漏れインダクタンスを増強するために、外付けインダクタが必要かもしれません。

タンク回路の部品値とパラメータの要約を表 4 に示します。

表 4: タンク回路のパラメータ

ハードウェア ドライバ

高電圧と要求通信速度に対応するために、メインスイッチにはドライバが必要です。

ドライバは、電流源の能力に基づいて選択します。その理由は、MOSFET が高い静電容量値を持つからです。MOSFET の立ち上がり / 立ち下がり時間によってほぼ決まる一定時間内に、この静電容量を充放電する必要があります。MOSFET を高速でスイッチングするために必要な電流を完全に供給できるドライバを設計時に選択する必要があります。高速な立ち上がり / 立ち下がりはスイッチング損失の低減を可能にしますが、その反面 EMI が増加し、リード線と回路のインダクタンスに起因する高周波数のリンギングを誘発する可能性があります。

立ち上がり / 立ち下がり時間が決まると、基本的なコンデンサの式から要求ピーク電流を計算できます ( 式 58参照 )。

式 58:

( )22

1 lmlmrmpri LnLLLLLL ++=+=

Lpri(measured) 330μH=

Lr(measured) 62μH=

Lm Lpri Lr 330μH 62μH 268μH=–=–=

GtransformerLm Lr+

Lm------------------ 330μH

268μH----------------- 1.11= = =

n 16.667 1.11 18.5=⋅=

パラメータ 値

Cr 9.4 nF

Lr 62 µH

Lm 268 µH

Q 0.42

共振周波数 210 kHz

ICVTorT fallrise =)(

V: ゲート電圧

C: ゲート静電容量

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Cの値は、ゲート -ソース間静電容量 (CGS)とゲート -ドレイン間静電容量 (CGD)( ミラー効果に起因 ) の合計です。従って、C に MOSFET のデータシートに記載されている CISS パラメータ値を適用するのは正しくありません。そのかわりに、MOSFET のデータシートに記載されている総ゲート電荷 (Qg) を使って C の値を計算できます。この場合、式 59 に示す電荷と静電容量間の単純な関係式を適用します。

式 59:

式 58 にはこの C の値を使う必要があります。

Qg の値は当然一定ではありません。Qg は電圧 Vgs によって変化します。このため、MOSFET のデータシートには図 51 のようなグラフが記載されているはずです。このグラフから、適切な Vgs と Vds における実効Qg 値を特定できます。

ドライバの出力で 2 個の値の異なる抵抗を使う事により、立ち上がりと立ち下がりエッジで異なる電流経路を可能としています。これにより、MOSFET の立ち上がり / 立ち下がり時間を変える事ができます。

ドライバの出力信号は、複数の信号トランスを経て一次側 MOSFET へ送られます。駆動トランスの飽和を避けるために、DC 除去コンデンサを追加しています。このコンデンサでDCオフセットを除去し、50%デューティサイクル時に約 6 V のゲート電圧を生成します。

変流器

一次側に流れる電流を計測するために変流器を使います。一次側電流を計測すれば、二次側電流も求まります。4000 V の絶縁が要求されるため、変流器の選択は容易ではありませんでした。巻き数比は 1:50 としています。

一次側電圧の計測

一次側電圧は、2 個のスイッチのコモン点で検出します。絶縁バリアを横切るため、高電圧コンデンサを使います。二次側で抵抗分圧器を使って、電圧振幅をdsPIC DSC のアナログ電圧入力レンジ内に収めます。

図 51: 標準的な MOSFET 総ゲート電荷と Vgs の関係

GS

gV

QC =

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同期整流器

トランスの出力は正弦波です。正弦波を整流して DC電圧を生成するために、同期整流器回路を追加します。同期整流器には MOSFET スイッチを使います。前述のように、MOSFET のターンオフ タイミングを適切に選択する事により、スイッチング損失を ( 非常に ) 低く抑える事ができます。この場合、伝導損失が電力損失の主要因として残ります。このため、RDS,on が非常に低い MOSFET を選択する必要があります。

MOSFET のターンオン タイミングは一次側のターンオン タイミングに従うため、ここで検討する必要はありません。

表 5: 同期整流器の MOSFET

出力フィルタ

インダクタは 4.7 µH (DCR = 1.5 mΩ) とします。コンデンサは 330 µF とします。

電流増幅器

変流器で取り出した一次側電流信号のバッファリングと増幅用に、ゲイン 2 の非反転オペアンプを使います。入力側でダイオードを使って全波整流回路を形成します。出力側にもダイオードを追加して、回路と後続段を高電圧過渡から保護します。

補助電源 - フライバック

システムが正常動作している場合、メインコンバータ出力からコントローラ、アナログ部品、ドライバに電源を供給します。コンバータの公称出力電圧 (12 V) から 3.3 V を生成するために、スタンドアロンの高効率同期スイッチング レギュレータ チップを使います。

しかし、起動時と異常発生時は、12 V 出力電圧を利用できません。異常が発生した場合、dsPIC DSC は高速PWMをシャットダウンして重大な損傷を回避します。補助電源はこのような問題に対処する必要があります。

また、フライバック コンバータの消費電力を最小限に抑える事も重要です。これには下記のように対処しました。

• 高効率 3.3 V レギュレータを選択

• 起動後にメイン コンバータが正常動作した時に自動シャットオフが可能な回路を採用

図 52 に、フライバック回路の詳細を示します。以降は、この図を使って説明します。

パラメータ 値

降伏電圧 30 V

連続電流 85 A

RDSon, max 5.8 mΩ

入力静電容量 (CISS) 2150 pF

出力静電容量 (COSS) 480 pF

総ゲート電荷 (Qg) 15 nC typical

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AN

1336

DS

01336A_JP

- p. 44©

2012 Microchip Technology Inc.

D22+12V

L2

22uH

5K

4R

100uF/16VC32

16V

+12V

図 52: フライバック回路

C2447uF/16V

TP1

D23

D18

GND_DIG

330KR23

3.3nFC41 R53

100K/0.5W

HSR312

U9

TX3

GND_DIG

D17

AUX

C2347uF/16V

TP2

2.2KR26

49.9RR25

GND_DIG GND_DIG

330KR24

3

2

1

4

NDT3055Q7

2

1

3

4U7

SFH617A_DIP8

TP3

470uF/16VC25

R44.7

R5180

3 GND 2GND

1 VCC

4 FB

8GND

5DRAIN

U10

NCP1012-DIP7

470uF/C26

Automatic Shut-off

Controller

Snubber

FlybackTransformer

Feedback Network

Output Filters

GND_HV

GND_HV

GND_HV

GND_HV

GND_HV

GND_HV

GND_HV

VIN+

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コントローラ

下記の理由により、ON Semiconductor®社製のNCP1012デバイスを選択しました。

• モノリシック チップである ( ほとんど全ての必要な機能が実装されている )

• 高い入力電圧に耐える ( 最大 DC700 V)• このような高電圧レールからデバイス内部で電源電圧を生成できる

• 電流モード制御を実装した固定周波数コントローラ(100 kHz を選択 )

• 制御ループを容易に実装できる ( このデバイスのフィードバック入力ピンをオプトカプラへ接続、出力電圧で駆動 )

• 容易にスイッチ OFF できる

• 内部保護機能 ( 短絡保護 ) を実装している

フライバック トランス

このトランスの設計仕様は、電力定格とコントローラ要件に基づきます。

巻き数比は、フライバック MOSFET が開いた瞬間のフライバック挙動を考慮して計算します。キルヒホッフの電圧則をフライバックの一次側に適用して、スイッチの電圧を入力電圧(Vin)と一次側へ反映された出力電圧 (nVo) およびヘッドルーム電圧 (Vx: 過渡時に発生する電圧オーバーシュートを考慮 ) の合計として計算できます。 このオーバーシュート電圧に対処しないと、破損の恐れがあります。これを制御するためにスナバ回路を追加します。スイッチにかかる総電圧は、上記に基づいて式 60 のように表せます。

式 60:

当然ですが、この電圧は部品の定格降伏電圧 (700 V)を超えない事が必要です。この関係式から、巻き数比n を 15 としました。

トランスのインダクタンス値は、システムを不連続モード動作に維持するように選択します ( これはチップの要件です )。ON Semiconductor 社のデータシートに従って、インダクタンスは式 61 のように計算できます。

式 61:

トランスの設計では下記を考慮する必要があります。

• コア材 : 主にスイッチング周波数によって決まります。製造者は周波数に対するコア材の性能を示すグラフを提供しています。これらのグラフを使って適切なコア材を選択できます。多くの場合、製造者は、トランスを使うアプリケーションの種類に応じて最適なコア材を選択するためのガイドも提供しています。本アプリケーションでは、フライバックトランスのコア材としてN87を使います(EPCOS社のフェライト / アクセサリ カタログから選択 )。

• コアサイズ : 主に許容可能なコア損失およびコア温度上昇と、総合的な経済性との関係に基づいて選択します。本アプリケーションでは標準コア (EPCOS社製 E20/16/6) を選択しました。

• 巻き数 : フライバック コンバータのインダクタ素子は多くの場合「インダクタ」と呼ばれますが、実際にはトランスとして製造された物を使います。このため、既に定義した値 ( インダクタンス値と巻き数比)だけでは完全に部品を選択する事はできません。

設計を進めるにあたり、標準部品を使うために標準的なセンターギャップを持つコアを選択しました。製造者に標準外のコアギャップを注文する事も可能ですが、その場合、当然ですが費用と納期がかかります。ギャップを変更するとトランスの特性が変化します。設計を容易にするために、製造者はパラメータ (AL) を提供しています。このパラメータにより、特定のコアと巻き線 1 巻あたりのギャップを合わせて得られるインダクタンス値(nH)を知る事ができます。製造者が提供する当デバイスのデータによると、AL は約 100 nH であるため、本回路の一次側巻き数は 272 と求まります。この値と上記で求めた巻き数比から、二次側巻き数は 19 となります。

xoinsw kVnVVV ++=

k は 1 よりも大きな値

uHIfVDL

sw

in 6.7max

minmax ==

Dmax: 最大許容デューティサイクル = 0.5Vinmin: 最小入力電圧 (340 V) fsw: チップのスイッチング周波数

Imax: チップの要件に従う最大ピーク電流 ( 余裕を持たせて 225 mA に設定 )

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• 巻き線径 : コアサイズとギャップ値 (EPCOS 社のデータシートから 5 10-2 cm) を選択した後に、コアの最大磁束Bを一次側巻き数比と最大許容電流から計算できます。その結果 Bmax = 70 mT が得られます。通常、トランスの製造者は、このように求めた磁束強度からコア損失を特定できるグラフを提供しています。

巻き線の選択は、単位体積あたりのコア損失率が巻き線の損失率に等しいという仮定に基づきます。これは、トランスの温度上昇を妥当なレベルに抑えるための妥協です。巻き線の損失率は径によって決まるため、一次側は AWG = 33、二次側は AWG = 20として単純に求まります。

スナバ

既に述べたように、スイッチング時に発生する電圧オーバーシュートを制御 ( 制限 ) するために、一次側にはスナバが必要です。スナバは、MOSFET にかかる総電圧を常に降伏値以下に制限します。本設計では、最大許容オーバーシュート (入力電圧 + 一次側に反映される出力電圧 ) を約 60 V と計算しました ( 追加のヘッドルームを含む )。追加の電圧は、トランス一次側に直列の漏れインダクタンスによるものです。

計算を進めるには、トランスの漏れインダクタンスを知る ( または少なくとも予測する ) 必要があります。スナバは、電圧がスイッチの降伏電圧近くまで上昇した時に、電圧上昇の原因である漏れインダクタンスに蓄えられたエネルギを、ダイオードを通してスナバ抵抗へ導いて消散します。

フィードバック回路

フライバック出力電圧は 12 V に制御する必要があります。Vz = 11 V のツェナー ダイオードにより、出力が 11 V を超えるまでフィードバックパスに電流は流れません。出力が 11 V を超えると、ツェナー電流は2 個の抵抗によって約 300 µA に設定されます。これら 2 個の抵抗の値は、キルヒホッフの電流則および電圧則と、選択したオプトカプラの入力特性から求める事ができます (R1 = 4.7 kΩ、R2 = 280 Ω)。

オプトカプラ出力は、コンバータ出力電圧に比例した電流を生成する電流ジェネレータとして考慮できます。この電流により、ON Semiconductor チップ内部の抵抗の電圧降下が増加します。ON Semiconductorチップは、内部でこの電圧フィードバックを検出し、これを使ってフライバックの一次側巻き線に流れるピーク電流を制御します。

自動シャットオフ回路

既に述べたように、補助電源回路の設計における主要設計目標の 1 つは、メイン LLC コンバータが起動して動作している時に ( すなわち補助電源回路の動作が不要である時に )、補助電源回路の消費電力を削減する事です。この時に補助電源回路が消費する電力は全て無駄となります。この消費電力は比較的高く、総電力の約 1 ~ 1.5% を占めます。

この問題を解決するために、システムが起動した後一定時間が経過すると、内部フィードバック入力をグランドへ短絡して補助電源回路を停止するように設計しています。この遅延時間 ( フライバック回路起動後の動作時間 ) は、2 個の抵抗 (R23 と R24) を使って設定できます。これらの抵抗値を選択する事により、遅延時間の公称値を約 2 秒に設定しています。

この方法により、コンバータの正常動作時にフライバック コンバータをシャットオフできますが、異常発生時に重大な問題が生じます。この場合、dsPIC DSCは LLCコンバータを制御しているPWMをシャットダウンし、出力電圧が 0 V まで低下するため、dsPIC DSCに電源が供給されなくなります。従ってシステムは完全にシャットダウンし、再起動する事はできません。

この問題を解決するには、dsPIC DSC デバイスから何らかのフィードバックが必要です。すなわち dsPICDSC は、これから LLC コンバータをシャットダウンしようとしているという事を、補助電源回路に伝える必要があります。これには AUX 信号を使います。異常が発生した場合、dsPIC DSC はその異常を処理している間に AUX ピンを HIGH に駆動します。この信号はオプトカプラ経由で絶縁バリアを通過し、コンデンサ C24 を放電してフライバック コントローラを再起動します。

この結果、たとえ何らかの理由で LLC が再起動できなかったとしても、dsPIC DSC に電源が供給されます。この方法の重要な利点として、dsPIC DSC は、例えばフォルト条件が発生してコンバータ機能を回復できないという事を外部へ伝える事ができます。

DS01336A_JP - p. 46 © 2012 Microchip Technology Inc.

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補助電源 – 同期降圧型コンバータ

図 53 の回路は、フライバック コンバータまたはメインの LLC コンバータからの 12 V 電圧を DC 3.3 V に変換して dsPIC DSC に供給します。このコンバータには、効率の高いNational Semiconductor™ 社製LM2651デバイスを選択しました。効率の計測値は、公称電流の 75% において約 89% です。スイッチング周波数は300 kHz です。これにより、小型の受動部品を使えます。追加する部品点数が少ないため、回路の設計は比較的単純です。

補償回路の設計には、いくつかの注意が必要です。このチップの開ループ伝達関数は 2 つの極 ( 低周波数の第 1 極 : fp1 と高周波数の第 2 極 : fp2) と、その間に 1つのゼロ (fz) を持ちます。R21、C17、C18 で構成した

補償回路をチップの COPMP ピンへ接続する事により、2 つの極 (fcp1、fcp2) と 1 つのゼロ (fcz) を追加します。これにより、下記が得られます。

• 補償回路の第 1 極 (fcp1) は非常に低周波数となる( チップの低周波数極 (fcp1) の約 1/10)

• 補償回路のゼロはチップの第1極 (fp1)と同じ周波数になる

• 補償回路の第 2極 (fcp2)はチップのゼロ (fz)と同じ周波数になる

結果として、非常に低周波数から非常に高周波数まで-20 dB/dec のループ伝達関数が得られます。このような伝達関数により安定な回路が得られます。

図 53: 高効率の補助電源用降圧型レギュレータ

4.7nFC16

0.1uFC15

TP4

R4110K

GND_DIG

C2033uF

+3.3V_DIG

68uFC37

GND_DIG

47nFC18

GND_DIGL1

150uH

9.31KR21

22uFC14

GND_DIG

GND_ANA

0RR46

D21

16.5KR22

+3.3V_ANA0.1uFC19

GND_DIG GND_DIG

GND_DIG

1000pFC17

L3

10uH0.1uFC38

3V

IN15

PG

ND

12A

GN

D

10 COMP

6VCB8 SD(SS)

11 NC 1SW2SW

5V

IN

7AV

IN

16P

GN

D 9FB

13A

GN

D

4V

IN14

PG

ND

U4

LM2651-3.3

+12V

+ +

+

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リファレンス デザインのファームウェアの概要

図 54 に、LLC コンバータ リファレンス デザインのファームウェアの概略ブロック図を示します。

図 54: ファームウェアの概略ブロック図

Initialization

System Clock IO Ports

PWMAnalog-to-Digital Converter

Comparators

Soft Start Routine

Fault Active?Main Loop

(Fault Check) Fault Loop

InterruptRoutines

Yes

No

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初期化

コードの初期化セクションでは、メインシステムの動作と周辺モジュールの全てを初期化します。

LLC ハーフブリッジ コンバータは周波数制御されるため、全動作温度レンジで許容差を小さく抑えるために、外部オシレータを使ってシステムにクロックを供給します。7.37 MHz の外部水晶発振子から内部オシレータ回路にクロックを供給し、この回路からシステムとPWM および ADC 周辺モジュール用に、それぞれシステム PLL クロックと補助 PLL クロックを生成します。補助クロック回路は内部に 16x PLL を備え、これにより PWM および ADC 周辺モジュール用に 118 MHz のクロック周波数を生成します。システムクロック PLLは 40 MHz のクロック周波数を供給します。

LLC リファレンス デザインは 2つのPWMチャンネルを使います。片方のチャンネルは一次側ハーフブリッジの MOSFET を駆動し、もう片方のチャンネルは二次側同期整流器の MOSFET を駆動します。

表 6 に、2 つの PWM チャンネル動作の初期モードの概要を示します。

表 6: 初期 PWM モード

ADC チャンネルの使用方法の要約を表 7 に示します。

表 7: ADC チャンネル

コンパレータ 1 は、ADC チャンネル 0 と入力ピンを共有します。これにより、出力電流をコンパレータで監視して過電流イベントを検出します。

システムの動作を開始する前に、入力電圧を検出し、電圧が仕様レンジ内に入っているかどうかを確認します。

ソフトスタート ルーチン

電源投入時にユニットは非常に高い周波数(約300 kHz)で動作します。デューティサイクルを手動制御して、コンバータの出力電圧を 0 V から約 10 V ( 入力電圧に依存 ) まで安全に立ち上げます。これ以降デューティを (50% - デッドタイム ) に固定し、周波数を公称値(205 kHz @ 400 V 入力 ) まで下げます。

動作モード一次側 PWMプッシュプル

二次側 PWMプッシュプル

デッドタイム

無効化 ( デューティサイクル値に含める )

無効化 ( デューティサイクル値に含める )

デューティ 1/2 周期 – デッドタイム値

1/2 周期 – デッドタイム値

ADCトリガ

PWM の 4 周期毎に生成

PWM の 4 周期毎に生成

ADCチャンネル

信号 備考

AN0 IOUT_FB 変流器出力、メイントランスへ直列に接続、フィルタ処理あり、U2 により増幅

AN1 VOUT_FB 出力電圧の検出用に抵抗分圧回路を使用

AN2 VIN_FB 二次側で計測、絶縁バリアを横切るために高電圧コンデンサを使用

AN3 TEMP_FB MCHP9700 (U8) 温度センサを使って温度を検出、センサは出力同期 MOSFETの近くに配置

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割り込みの管理

下記の割り込みをサービスします。

• ADC ペア 0 割り込み

出力電圧を計測し、その値を PI 制御ルーチンに渡します。PI 処理は、更新された周波数値 (PTPER レジスタの値 ) を出力します。正常動作時は、更新された周波数値が仕様制限値内であるかどうかを確認します。

出力同期整流器の PWM チャンネルは、動作周波数が共振周波数よりも高いのか低いのかを考慮して更新されます。

ソフトスタート中にシステムは固定周波数で動作し、PI 補償器は無効化されますが、ADC は出力電圧を監視し続けます。この ADC 割り込みの際に、タンク電流も計測されます。

• ADC ペア 1 割り込み

この割り込みは、入力電圧と温度の検出用に使います。

• Timer1 割り込み

この割り込みは遅延の計算用に使います。このタイマ割り込みは 100 µs 毎に発生します。

• コンパレータ 1 割り込み

この割り込みは、過電流イベント ( フォルト ) の検出用に使います。

フォルト管理

各種の信号により異常が検出されます。フォルト管理においては、フォルト信号を受信した時にユニットが即座に動作を停止ししてしまう事を防ぐ必要があります。これは、グリッチやノイズに起因する無用な応答を回避するために必要です。

フォルト条件はメインループで常時監視されます。事実上、これはメインコードがバックグラウンドで実行する唯一の動作です。

各フォルト信号は複数回評価されます。すなわち、フォルト条件が持続する場合、カウンタがサイクル毎にインクリメントします。カウンタが決められた値に達した時にのみ、ファームウェアはフォルト状態が発生したと認識します。詳細は表 8 を参照してください。システムがフォルト状態に移行すると、フォルト LED がそのフォルト状態に対応する回数だけ点滅します。これにより、どのフォルトが発生したのかが示されます。

表 8: フォルト状態

フォルトイベント

フォルト状態を開始するカウンタ値

LED の点滅回数

入力低電圧 250 1

入力過電圧 250 1

過電流 ( コンパレータ )

— 2

過電流 (ADC) 250 2

出力過電圧 250 3

出力低電圧 250 4

温度 250 5

ソフトスタート — 6

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補遺 A: ソースコード

本アプリケーション ノートに関連する全てのソフトウェアは、1 つの WinZip® ファイルに収められています。このファイルは下記のマイクロチップ社ウェブサイトからダウンロードできます : www.microchip.com

ソフトウェア ライセンス使用許諾

Microchip Technology Incorporated ( 以下「弊社」) が供給するソフトウェアは、弊社製品との組み合わせでのみ使われる事を目的として弊社のお客様に供給されます。

ソフトウェアの所有権は弊社および / またはソフトウェアのサプライヤに帰属し、適用著作権法のもとに保護されています。無断複写、複製、転載は禁じられています。上記の制約に違反してソフトウェアを使った場合、使用者はライセンス使用許諾の侵害に対して民事責任を問われ、適用法のもとに罰せられます。

本ソフトウェアは「無条件受け取り」を条件として提供されます。本ソフトウェアの商品性および特定目的に対する適合性の黙示

保証を含む ( ただし必ずしもこれらに限定されない ) 明示、暗示、法的な保証は一切いたしません。弊社は、いかなる場合も、特

殊、偶発的、必然的にかかわらず、いかなる理由があろうとも、一切の賠償責任を負いません。

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補遺 B: 電気試験結果と動作波形

本補遺には、200 W LLC 共振コンバータ リファレンス デザインの試験結果と、一部の動作波形を掲載しています。

LLC共振コンバータの試験には下記の機器を使いました。

• DC 電圧源 : > 450 V、3 A• DC 負荷 : > 12 V、20 A• 4 チャンネル オシロスコープ (100 MHz 以上 )• 高帯域幅電流プローブおよび差動プローブ

• 6.5 桁マルチメータ

• 効率計測ボード ( 効率の計測にのみ使用 )

B.1 ソフトスタートとオーバーシュート

LLC 共振コンバータは、デューティサイクルおよび周波数制御によるソフトスタート ルーチンを実装しています。これにより、出力電圧を 12 V まで安全に立ち上げて、起動時の突入電流と出力電圧のオーバーシュートを防ぎます。

ソフトスタートでは、共振タンクから最小限のゲインを提供するために、スイッチング周波数を 300 kHz に設定します。デューティサイクルを手動で制御して、コンバータの出力電圧を約 10 V ( 入力電圧に依存 ) まで安全に立ち上げます。その後、出力電圧が目標電圧(12 V) に近付くまでスイッチング周波数を下げます。これ以降は、PI補償器を使って周波数を制御しますが、オーバーシュートを除去するために、積分誤差を計算して制御ループに履歴を提供します。

図 B-1 と図 B-2 に、無負荷時と全負荷時のコンバータのソフトスタート挙動を示します。

図 B-1: 無負荷時のソフトスタート、入力電圧 : 約 DC400 V

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図 B-2: 全負荷時のソフトスタート、入力電圧 : 約 DC400 V

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B.2 動的負荷応答

動的負荷応答の計測では、出力の負荷をステップ状に変化させた時の、出力電圧のアンダーシュート / オーバーシュートとセトリングタイムを計測します。

図B-3と図B-4に、スルーレート 1 A/µsで負荷を 25%-75% および 75%-25% でステップ状に変化させた時のシステムの動的負荷応答を示します。

図 B-3: 過渡応答 25%-75% (4A-12A)、入力電圧 : 約 DC400 V

凡例

緑 = 出力電圧

黄 = 出力負荷電流

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図 B-4: 過渡応答 75%-25% (4A-12A)、入力電圧 : 約 DC400 V

凡例

緑 = 出力電圧

黄 = 出力負荷電流

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B.3 出力電圧リップル

出力電圧リップルは、出力コンデンサの両端で計測します ( できるだけ短いプローブ グランド線を使用 )。図 B-5 と図 B-6 に、LLC 共振コンバータの出力電圧リップルを示します。

図 B-5: 出力電圧リップル、IOUT: 17 A、入力電圧 : 約 DC400 V

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図 B-6: 出力電圧リップル、IOUT:17 A、入力電圧 : 約 DC400 V

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B.4 位相およびゲインマージン

図 B-7 に、公称入力電圧 (DC 400 V)、1/2 負荷時の LLC共振コンバータの閉ループ性能を示します。

図 B-7: 位相およびゲインマージン (VIN: DC400 V、IOUT: 8.5 A)

B.5 効率

図 B-8: LLC の効率 (@ DC380 V、DC400 V)

LLC Efficiency

757779

81838587

89919395

97

1 3 5 7 9 11 13 15 17

Output Load Current

Per

cent

(%)

380V400V

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B.6 ゼロ電圧スイッチング

共振タンクの電流と電圧間の位相シフトにより、ハーフブリッジ MOSFET をターンオン損失なしでスイッチングできます。図 B-9 と図 B-10 に、ローサイドMOSFET のゼロ電圧スイッチング挙動を示します。

図 B-9: ZVS、IOUT: 8.5 A、入力電圧 : 約 DC400 V

凡例

緑 = MOSFET ゲート - ソース間電圧

紫 = MOSFET ドレイン - ソース間電圧

黄 = 共振タンク電流

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図 B-10: ZVS、IOUT: 8.5 A、入力電圧 : 約 DC400 V

凡例

緑 = MOSFET ゲート - ソース間電圧

紫 = MOSFET ドレイン - ソース間電圧

黄 = 共振タンク電流

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B.7 ゼロ電流スイッチング

図 B-11 に、二次側整流器のゼロ電流スイッチング挙動を示します。MOSFET 電流がゼロになると、MOSFETのドレイン -ソース間電圧が立ち上がり始めます。これによりターンオフ損失を除去します。

図 B-11: ZCS、IOUT: 8.5 A、入力電圧 : 約 DC400 V

凡例

緑 = MOSFET ゲート - ソース間電圧

紫 = MOSFET ドレイン - ソース間電圧

黄 = MOSFET 電流

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B.8 共振タンク電流

図 B-12 と図 B-13 に、 共振周波数近くでの無負荷時および全負荷時の共振タンク電流を示します。

図 B-12: 共振タンク電流 : 無負荷

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図 B-13: 共振タンク電流 IOUT: 17 A

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B.9 二次側電流

図 B-14 に、全負荷時の二次側 MOSFET 電流を示します。

図 B-14: 二次側 MOSFET 電流 IOUT: 17 A

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B.10 MOSFET ゲート信号

図 B-15: PWM ゲート駆動波形

凡例

緑と赤 = 同期 MOSFET

紫と黄 = ハーフブリッジ MOSFET

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図 B-16: 共振周波数より下側での PWM ゲート駆動波形

凡例

赤 = 同期 MOSFET

紫 = ハーフブリッジ MOSFET

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補遺 C: LLC 共振コンバータの制御システムの設計

C.1 システムのモデル化

どのような電力コンバータであれ、性能を事前に最適化するために、モデル化とシミュレーションが役立ちます。このようなアプローチにより、実際のハードウェアを作製して試験する前に、目標性能の達成に向けて回路を最適化できます。

システムのモデル化の手順は下記の通りです。

• 主要システム パラメータに基づき、制御ループの各種係数を MATLAB® で生成します (.m ファイルを使用 )。

• システム ハードウェアと制御システムのグラフィック モデルを、Simulink® モデル (.mdl ファイル ) を使って作成します。m ファイルから生成した係数をSimulink モデルファイル内で使います。

• ハードウェアと制御システムのモデルを各種動作条件でシミュレートする事により、目標性能を達成しているかどうかを確認します。

• 最後に、制御システムのモデルを dsPIC DSC 上のソフトウェアに実装し、実際のハードウェアで性能を確認します。

C.2 ハーフブリッジ LLC 共振コンバータの動作原理

LLC共振コンバータは一定デューティサイクルで動作し、スイッチング周波数を変化させる事により、負荷およびラインの条件変化に対して出力電圧を一定に維持します。

LLC 共振コンバータの等価回路を図 C-1 に示します。コンバータの動作は、分圧器インピーダンス回路に基づきます。磁化インダクタンスに印加する電圧を変化させる事により、出力電圧を制御します。これを行うために、スイッチング周波数を変更する事により、LLC回路要素の相対インピーダンスを変化させます。このように、ハーフブリッジのスイッチング周波数を変化させる事によって出力電圧を制御できます。

図 C-1: LLC コンバータの等価回路

LrCr

Lm Rpri

DC

Q2

Q1

Vpri

+

-

T

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C.3 解析

LLC共振コンバータは高度に非線形なシステムであるため、解析公式による解析は困難です。しかし、DC/DC コンバータであるため、動作点解析は可能です。

DC/DC コンバータでは、負荷の変化に対して入力および出力電圧がほぼ一定であれば、システムの特性は大きく変化しません。従って、微小信号解析による線形化が可能です。 入力電圧、参照電圧、負荷における微小な変化は、スイッチング周期に線形 ( 比例 ) とみなせる変化しか生じません。数学的には、1 つの動作点に関して、1 次のテイラー級数近似を使って全ての非線形項を近似できます。

下記に例を挙げます。x を入力 ( 独立変数 )、y を出力( 独立変数 ) とし、下記の関係を想定します。

y = x^2

公称動作点 (x0、y0) のまわりのテイラー級数近似は下記となります。

dy = 2x0 .dx

dy/dx は動的変化率を表し、システム挙動の評価に使えます。この方法は、偏導関数を使う事により、任意個数の変数へ一般化できます。

ここでの目的は、ハーフブリッジのスイッチング周期(T) を変化させて、整流器の出力と LC フィルタへの入力で適正な電圧 (Vx) を生成する事です。LLC 共振コンバータの場合、Vx と T の関係は非線形であるため、動作点アプローチを使います。

目標電圧 Vx は、図 C-1 の回路内の各種要素のインピーダンスを変更する事によって得られます。これらのインピーダンスを Xc、Xr、Xm とします。これらはハーフブリッジ スイッチング周波数の関数です。磁化インダクタンスに印加される電圧は式C-1 により与えられます。

式 C-1:

LC フィルタの出力に生じる電圧 Vx は、式 C-2 のように巻き数比を使って求まります。

式 C-2:

電圧 Vpri は、LLC 回路のゲインによって決まります。このゲインを式 C-3 に示します。

式 C-3:

スイッチング周波数 fS を変更する事によって LLC 回路のゲインが変化します。これにより、負荷と入力電圧の変化に対して出力電圧を一定に制御できます。

LLC 回路は下記のいずれの領域でも動作可能です。

• 共振 (Gp = 1)• 共振より下側 (Gp > 1)• 共振より上側 (Gp < 1)システムのモデル化においては、LLC 回路のゲインとスイッチング周波数の関係を特定する必要があります。ゲインの式は非線形であるため、公称動作点 ( すなわち共振周波数 ) に関して動作点解析を行います。動作点解析を行うために、新たな変数 p を共振周波数fr において式 C-4 のように定義します。

式 C-4:Vpri

XmXm Xr Xc–+( )

------------------------------------⎝ ⎠⎛ ⎞ Vin⋅=

Vin: 入力電圧

VxVpri

Turnsratio----------------------------=

GpVpriVin----------=

XmXm Xr Xc+ +( )

------------------------------------=

Gp = LLC 回路のゲイン

Xm = j2πfsLm = 磁化インダクタンスのインピーダンス

Xr = j2πfsLr = 共振インダクタンスのインピーダンス

Xc = 1j2πfsCr------------------- = 直列コンデンサのインピーダンス

p 1Gp------=

Xm Xr Xc+ +( )Xm

------------------------------------=

1LrLm------ 1

4π2fS2CrLm( )

--------------------------------⎝ ⎠⎜ ⎟⎛ ⎞

–+=

VpriVinp

-------=

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この結果、Vpri は式 C-5 のように表せます。

式 C-5:

式の両辺を周波数で微分すると式 C-6 が得られます。

式 C-6:

δVpriは、周波数が微小に変化した時のVpriの変化です。周波数はスイッチング周期の関数として式C-7 のように表せます。

式 C-7:

式 C-7 の結果を式 C-6 に代入する事により、 式 C-8 が得られます。

式 C-8:

周波数の変化は微小であるという仮定から、式 C-8 内の fS を公称周波数 (すなわち共振周波数 fr)に置き換える事ができます。この結果、式 C-9 が得られます。

式 C-9:

以上から、最終的な周期出力は式 C-10 のように定義されます。

式 C-10:

周期の変化は LLC コンバータの動作レンジに対して微小であるという仮定により、式C-10内の項(p0

22π2frCrLm)は 一 定 と み な せ ま す。従 っ て、こ の 項 を 定 数voltagetotimefactorに置き換える事ができ、式C-11が得られます。

式 C-11:

また、δVpri は周期の変化 δT に対応する Vpri の変化です。出力におけるこの電圧変化は、式 C-2 を使って、式 C-12 のように表す事ができます。

式 C-12:

式 C-11 と式 C-12 を式 C-10 に代入する事により、目標スイッチング周期に関する最終的な式が式 C-13 のように得られます。

式 C-13:

VpriVin

1LrLm------ 1

4π2fS2CrLm( )

--------------------------------–+⎝ ⎠⎜ ⎟⎛ ⎞------------------------------------------------------------=

δVpriVin

p2-------– 1

2π2fS3CrLm( )

--------------------------------⎝ ⎠⎜ ⎟⎛ ⎞

δfS⋅ ⋅=

δ は変数の微小な変化を意味します。

fS1TS-----=

δfS1–

TS2

-------- δTS•=

fS δ2 TS=

δVpriVin

p22π2 fSCrLm

---------------------------------⎝ ⎠⎜ ⎟⎛ ⎞

δTS( )⋅=

δVpriVin

p022π2frCrLm( )

-------------------------------------⎝ ⎠⎜ ⎟⎛ ⎞

δTS( )⋅=

p0: 共振周波数におけるゲインの逆数

TS Tnom δTS+=

TnomδVpriVin

-------------⎝ ⎠⎛ ⎞ p0

22π2frCrLm( )⋅+=

voltagetotimefactor p022π2frCrLm=

δVpri Vpri Vpri_nom–=

Vx Vx_nom–( ) turnsratio⋅=

TS Tnom voltagetotimefactor Vx Vx_nom–( ) turnsratioVin

---------------------------⋅ ⋅+=

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Tnom はコンバータの設計から既知であり、voltagetotimefactor は前記したように一定です。電圧 Vxは、目標出力電圧を生成するために必要な制御電圧です。この電圧 Vx は、LLC コンバータのデジタル補償器により生成されます。従って式 C-14 は、出力電圧と入力電圧の計測値に基づいて目標スイッチング周期を導出します。

LLC 共振コンバータには積分 + 比例 (PI)補償器を採用しています。微分項を使っても、システムの直列寄生抵抗が自然減衰係数として作用するため、微分項の効果は無効化されます。

図C-2 に、制御システムの概略ブロック図を示します。LLC コンバータの場合、出力 LC フィルタはシステムのプラントを形成します。出力 LC フィルタと PI 補償器の組み合わせにより、閉ループシステムの特性方程式が式 C-14 のように得られます。

式 C-14:

公称動作点 (Vin = 400 V) における特性方程式の根を-1400 Hz と -900 Hz に選択します。次に特性方程式を解いて未知の Kp と Ki を求める事により、補償器のゲインが求まります。

このように求めた補償器のゲインを使って、補償器のアナログ伝達関数を導出します。さらに双一次変換を使って、このアナログ伝達関数を離散形に変換します。これにより、デジタル PI 補償器の最終的な差分方程式が得られます。

図 C-2: 制御システムの概略ブロック図

s2LC sRC KpKis

----- 0=+ + +

L = 出力インダクタ

C = 出力コンデンサ

R = 回路の複合寄生直列抵抗

Kp = 補償器の比例ゲイン

Ki = 補償器の積分ゲイン

PlantModulationController

-

+

Reference OutputError

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C.4 デジタル制御システムの実装

図 C-3 に、LLC コンバータモデルの基本的なブロック図を示します。このモデルは下記の 2 つのモデルにより構成されます。

• アナログ LLC コンバータモデル

• デジタル LLC コンバータモデル アナログモデルは、補償器の設計に必要なほとんど全ての情報を提供します。デジタルシステムは量子化誤差、有限精度による誤差、サンプリングおよび飽和限界等の各種現象の影響を含みます。アナログシステムもデジタルシステムも、実際のシステムを正確に表現できるようにモデル化する必要があります。単純化するために、アナログモデルにはスケーリングや ADCフィードバック ゲイン等の因子を含めません。

図 C-3: LLC コンバータの SIMULINK モデルの概略ブロック図

Vo*1

12

Vo*

12

Vin1

200

Vin

200

Total Digital System 1

Vref/Vo*

Vin

Iload

Vo

IL

Total Analog System

Vref/Vo*

Vin

Iload

Vo

IL

Scope1

Scope

Load Generation 2

Total Load

Load Generation 1

Total Load

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図 C-4 に、アナログシステム全体の構成を示します。全ての値は標準的な単位を持つ物理値です。アナログシステムは下記の 3 つの主要サブシステムを含みます。

• 出力 LC フィルタ / プラント

• 制御システムブロック

• 変調ブロック

図 C-4: LLC コンバータのアナログシステム モデル

図C-5に示す出力 LCフィルタ /プラント ブロックは、コンデンサESR やインダクタDCR 等の寄生成分を含めて出力インダクタとコンデンサをモデル化しています。このブロックは、制御電圧 Vx と負荷電流 Iload を入力とし、システムの出力電圧を出力します。

図 C-5: 出力 LC フィルタ / プラント

IL

2

Vo 1

turnsratio-K-

Modulation

VinIloadTS

Out1

Control System

VoVinVo*

TS

Transfer Fcn

150e-6s+1

Scope 2

L-C Circuit/Plant1

L_CVx1

Iload

Vo1

IL

Iload

3

Vin2

Vref/Vo*1

IL

2

Vo11

turnsratio-K-

L

Vx

Vo

IL

C

Ic Out1

Iload2

L_C Vx11

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図 C-6 に、LLC コンバータモデルの変調ブロックを示します。このブロックには、LLC 回路のゲイン式( 式 C-1) を適用します。変調ブロックには、制御システムブロックで計算したスイッチング周期値を入力します。ここでは、周期値をトランス一次側電圧 Vpri に変換した後、さらに式 C-2 を使って制御電圧 Vx に変換します。要するに、変調ブロックは LLC 回路の動作を実行するという事です。LLC回路の応答特性により、回路に流れる電流の位相は電圧の位相に一致しません。出力電圧は Vpri 電圧の振幅にのみ依存します。結果として、変調ブロックは Vx を得るために Vpri の振幅を計算します。

図 C-6: 変調ブロック

図 C-7 に示す制御システムブロックは、デジタル PI 補償器と反転変調ブロックを含みます。制御システムブロックは、参照電圧と出力電圧の計測値を入力とし、目標スイッチング周期を出力します。

PI補償器は物理単位値で動作するように設計されており、従って PI ブロック出力の単位は電圧 (V) です。変調反転ブロックは、Vin の変化の影響も考慮して、PI 補償器の出力を目標スイッチング周期に変換します。

図 C-7: アナログ制御システムブロック

Out11

Impedances

In1

Xm

Xs

Xc

Subsystem

Xm

Xs

Xc

1+Z/Xm

Z

RProduct 3 Product 2

Product 1

Product

MathFunction Divide

TS

3

Iload2

Vin1

turnsratio-K-

Scope1

PI

0.47s+1.6e3

den(s)

Modulation inverse

Vx

Constant

12

Vo*3

Vin2

Vo1

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以下では、エミュレーションによるデジタル化を行います。この方法では、まずアナログ制御システムモデルを作成し、これを離散制御システムへ変換します。離散化する際に、ゼロ次ホールド、16 ビット有限精度、10 ビット ADC 量子化分解能、計算遅延をデジタル制御システムモデルで考慮する必要があります。これらの要因を、図 C-8 のようにデジタル制御システムブロックに実装します。

全ての電圧量をベース電圧に対してスケーリングし、全ての時間量をベース時間量に対してスケーリングします。ベース電圧は、フルスケール ADC 値に対応する出力電圧です。ベース時間量は、システムが許容する最大スイッチング周期です。

制御システム内で使う全ての電圧量は、ベース電圧に対する比 ( 小数 ) として表します。同様に、全ての時間量は、ベース周期に対する比 ( 小数 ) として表します。このため、実際の制御システムの実装には Q15 小数フォーマットを使います。

制御システムの全ての入力を Q15 で表現するめ、制御システムの出力では物理値への逆変換が必要です。従って、最終的な出力にベース周期を乗算する事により、周期の更新値を生成します。

Q15 フォーマットでは、全ての値は -1 ~ +1 のレンジに制限されます。特性方程式を解いて導出した係数を離散値に変換すると、このレンジ制限を超える可能性があります。そのような場合、プリスケーラを使って係数を除算する事により、Q15 演算を可能とします。その後、出力にプリスケーラを乗算する事により、正しい結果が得られます。

最終的に実装する計算式を式 C-15 に示します。

図 C-8: デジタル制御システムブロック

式 C-15:

TS1

turnsratio-K-Output Voltage

1

Scope 1

PID

FilteredIout

Pout

Modulation

Vx

Vinsecondary

Constant12

Vo*3

Vin2

Vo1

Error

Decoupling

Inverse/DutyGeneration

TS

TSQ15 TnomQ15 modifier voltagetotimefactor VxQ15 VoQ15 VxnomQ15–+( ) turnsratioVinmin

---------------------------⋅ ⋅ ⋅+=

VxQ15 = デジタル PI 補償器の出力

VoQ15 = 出力電圧の補正項

VxnomQ15 = 出力参照電圧

modifierVinmin

Vin---------------=

voltagetotimefactor p022π2 frCrLm=

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さらに、定数 multiplier を式 C-16 のように定義します。

式 C-16:

式 C-16 の multiplier を式 C-15 に適用する事により、最終的に式 C-17 のようにスイッチング周期を表す事ができます。

式 C-17:

multiplier voltagetotimefactor turnsratioVinmin

---------------------------⋅=

TSQ15 TnomQ15 modifier multiplier PIoutputQ15 VxnomQ15 VoQ15+–( )⋅ ⋅+=TS TSQ15 Tmax⋅=

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C.5 シミュレーション結果

図 C-9: ループゲイン線図 ( アナログとデジタル )

図 C-10: 閉ループ線図 ( アナログとデジタル )

-150

-100

-50

0

50

Mag

nitu

de (d

B)

101 102 103 104 105 106-450

-360

-270

-180

-90

Pha

se (d

eg)

Frequency (Hz)

青 = デジタル赤 = アナログ

凡例 :

-30

-25

-20

-15

-10

-5

0

5

10

Mag

nitu

de (d

B)

101 102 103 104-270

-225

-180

-135

-90

-45

0

Pha

se (d

eg)

Frequency (Hz)

青 = デジタル赤 = アナログ

凡例 :

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図 C-11: 外乱除去線図 ( アナログのみ )

0

10

20

30

40

50

Mag

nitu

de (d

B)

101 102 103 104-90

-45

0

45

90

Pha

se (d

eg)

Frequency (Hz)

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図 C-12: 過渡応答シミュレーション

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補遺 D: デザイン パッケージ

本リファレンス デザインの完全なデザイン パッケージを1つのファイルに収めたWinZip®アーカイブ ファイルを下記のマイクロチップ社ウェブサイトがらダウンロードできます : www.microchip.com

D.1 デザイン パッケージの内容

このパッケージの内容は下記の通りです。

• リファレンス デザイン回路図

• 製作図

• 部品表 (BOM)• 組立図

• ハードウェア設計用ガーバーファイル

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NOTE:

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11/29/11