10
18 回復期リハビリテーション 2020.4 当協会会員施設に毎年多大なご協力をいただい ている全国実態調査(「回復期リハビリテーション 病棟の現状と課題に関する調査」)からみたこれ までの診療報酬改定の影響と、今回の2020年度改 定の及ぼす影響について、直近の2019年度調査の 結果を交えてみていきたい。 今回改定では、リハビリテーションに関して、 入院料、施設基準、対象疾患、摂食嚥下訓練等の 見直しや業務効率化・合理化のための見直しが行 われた。本丸である入院料に関してはまず全体と して「リハビリテーション実施計画書」の見直し が行われた。これは業務遂行上、非常に重要な事 項である。次に、大きな改定項目として患者要件 の「発症から入院までの期間」が削除になった。 これは運用面からみると2006年度改定以来の大 きなインパクトではないかと考えている。回復期 リハビリテーション病棟では実績指数の基準値が 入院料1で37から40、入院料3で30から35へと上 昇し、入院料 1 での管理栄養士の専任常勤配置が 要件化され、重症度の評価に日常生活機能評価の 代わりにFIM 総得点を用いてもよい等の見直し が行われた。 中でも「発症からの期間」の削除に対するイン パクトに関しては、長らく減少基調で毎年推移し、 2017年度以降、整形外科疾患系を下回っている脳 血管疾患患者の割合にもすくなからず影響を及ぼ すのではないかと考えている。 図1は、ヨコ軸に人口10万あたりの病床数、タ テ軸に回復期リハビリテーション病棟に占める脳 血管疾患の患者の割合をプロットしたものである。 かなりきれいな線形関係がみられるのは脳卒中の 疫学を反映しているためである。人口10万あたり 年間約200人が脳卒中を発症し、その半数の約100 人が回復期リハビリテーション病棟に転棟・転院 し、3か月弱の在院日数で退院している。3か月弱 だと 1 床あたり年に12÷3=4 人の患者を入れら れるので、脳卒中に限ると100÷4=25床あれば ベッド数としては十分であり、それ以上の発症例 はそもそもないと推定される。 図1のグラフを少し注意をして見ていただくと、 2005年から2006年にかけて脳血管疾患の患者の 割合が65%弱から55%弱に約10%減っている。こ れは2006年度改定で脳血管疾患患者の発症から入 棟までの日数が1か月短くなったためで、この 10%の減少はまさにそれに当たる。2020年度改定 では発症から入棟までの期間がすべて削除された Part2 実態調査報告 全国実態調査からみる 2020年度診療報酬改定 ――2020年度診療報酬改定説明会(3月20日・WEB配信) 当協会副会長 保険・調査委員会委員長  宮井 一郎 特集 2020年度診療報酬改定 適切な評価・計画でスピード感ある回復期リハビリテーション・ケアを 「発症からの期間」削除はインパクト大 「脳血管疾患割合、増加に転じるか

全国実態調査からみる 2020年度診療報酬改定 - …18 回復期リハビリテーション 2020.4 当協会会員施設に毎年多大なご協力をいただい ている全国実態調査(「回復期リハビリテーション

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Page 1: 全国実態調査からみる 2020年度診療報酬改定 - …18 回復期リハビリテーション 2020.4 当協会会員施設に毎年多大なご協力をいただい ている全国実態調査(「回復期リハビリテーション

18 回復期リハビリテーション◆2020.4

当協会会員施設に毎年多大なご協力をいただい

ている全国実態調査(「回復期リハビリテーション

病棟の現状と課題に関する調査」)からみたこれ

までの診療報酬改定の影響と、今回の2020年度改

定の及ぼす影響について、直近の2019年度調査の

結果を交えてみていきたい。

今回改定では、リハビリテーションに関して、

入院料、施設基準、対象疾患、摂食嚥下訓練等の

見直しや業務効率化・合理化のための見直しが行

われた。本丸である入院料に関してはまず全体と

して「リハビリテーション実施計画書」の見直し

が行われた。これは業務遂行上、非常に重要な事

項である。次に、大きな改定項目として患者要件

の「発症から入院までの期間」が削除になった。

これは運用面からみると2006年度改定以来の大

きなインパクトではないかと考えている。回復期

リハビリテーション病棟では実績指数の基準値が

入院料1で37から40、入院料3で30から35へと上

昇し、入院料1での管理栄養士の専任常勤配置が

要件化され、重症度の評価に日常生活機能評価の

代わりにFIM総得点を用いてもよい等の見直し

が行われた。

中でも「発症からの期間」の削除に対するイン

パクトに関しては、長らく減少基調で毎年推移し、

2017年度以降、整形外科疾患系を下回っている脳

血管疾患患者の割合にもすくなからず影響を及ぼ

すのではないかと考えている。

図1は、ヨコ軸に人口10万あたりの病床数、タ

テ軸に回復期リハビリテーション病棟に占める脳

血管疾患の患者の割合をプロットしたものである。

かなりきれいな線形関係がみられるのは脳卒中の

疫学を反映しているためである。人口10万あたり

年間約200人が脳卒中を発症し、その半数の約100

人が回復期リハビリテーション病棟に転棟・転院

し、3か月弱の在院日数で退院している。3か月弱

だと1床あたり年に12÷3=4人の患者を入れら

れるので、脳卒中に限ると100÷4=25床あれば

ベッド数としては十分であり、それ以上の発症例

はそもそもないと推定される。

図1のグラフを少し注意をして見ていただくと、

2005年から2006年にかけて脳血管疾患の患者の

割合が65%弱から55%弱に約10%減っている。こ

れは2006年度改定で脳血管疾患患者の発症から入

棟までの日数が1か月短くなったためで、この

10%の減少はまさにそれに当たる。2020年度改定

では発症から入棟までの期間がすべて削除された

Part2 実態調査報告

全国実態調査からみる2020年度診療報酬改定

――2020年度 診療報酬改定説明会(3月20日・WEB配信)

当協会副会長 保険・調査委員会委員長  宮井一郎

特集 2020年度診療報酬改定 適切な評価・計画でスピード感ある回復期リハビリテーション・ケアを

「発症からの期間」削除はインパクト大

「脳血管疾患割合、増加に転じるか

18-27_宮井先生0420ato 20.4.21 4:56 PM ページ18

Page 2: 全国実態調査からみる 2020年度診療報酬改定 - …18 回復期リハビリテーション 2020.4 当協会会員施設に毎年多大なご協力をいただい ている全国実態調査(「回復期リハビリテーション

回復期リハビリテーション◆2020.4 19

●●●●●●●●●●●

●●●

●●●●

●2001

2002

2003

2004

2005

20062007

20082009

20102011 2012

2013201420152017

2018 2019

y =-0.3974x + 69.529R² = 0.9212

40

45

50

55

60

65

70

75

0 10 20 30 40 50 60 70 80

脳卒中が10万人に年200人発症最重症や軽症例を除くと半数100が回リハへ平均在院日数は3か月でベットが年4回転→脳卒中に限ると25床/10万で充足(それ以上の発症がない)

2020発症後日数削除脳卒中割合増加?

病床数(床/人口10万)当協会 2019 年度実態調査より改変

脳卒中3→2か月へ脳卒中3→2か月へ

脳血管疾患患者の割合

(%)

ことから、おそらく今後は脳血管疾患の患者の割

合が増加に転じ、グラフの線形に崩れが生じるの

ではないかと予想している。

図2左は、2010年から2019年までの病院の病床

図1 回復期リハビリテーション病棟の病床数と脳血管疾患患者の割合の年次推移

●●

●●

● ●

●●

●2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

2019

86.0%

86.5%

87.0%

87.5%

88.0%

88.5%

89.0%

89.5%

40 45 50 55 60 65 70

84%

85%

86%

87%

88%

89%

90%

当協会 2019 年度実態調査より改変

病床利用率と回リハ病床数病床利用率の推移

人口10万あたりの病床数

2020発症後日数削除利用率上昇?

y=-0.0005x+0.9056R²=0.1675

20102011

20122013201420152016201720182019

全体的には病床数増加とともに徐々に低下改定年度には利用率が微減する。2016 年の実績指数導入後は特に振れ幅が大きい→稼働よりアウトカムを優先??

図2 回復期リハビリテーション病棟の病床数と病床利用率の年次推移 

利用率の推移を表した折れ線グラフ、図2右は、

人口10万あたりの病床数と病床利用率をプロット

したものであるが、診療報酬の改定年度に病床利

用率が少し下がるという特徴がみられ、特に実績

Part2 実態調査報告 全国実態調査からみる2020年度診療報酬改定

全体的には病床数増加とともに徐々に低下改定年度には利用率が微減する。2016年の実績指数導入後は特に振れ幅が大きい

脳卒中が10万人に年200人発症最重症や軽症例を除くと半数100が回復期リハビリテーション病棟へ平均在院日数は3か月でベッドが年4回転

18-27_宮井先生0420ato 20.4.21 4:56 PM ページ19

Page 3: 全国実態調査からみる 2020年度診療報酬改定 - …18 回復期リハビリテーション 2020.4 当協会会員施設に毎年多大なご協力をいただい ている全国実態調査(「回復期リハビリテーション

20 回復期リハビリテーション◆2020.4

毎年のことであるが、通常なら正規分布に近い

形状になるはずが、日常生活機能評価9点のとこ

ろで急激に減り、10点のところで突出して増えて

いる。入院時の日常生活機能評価10点部分にはお

そらく、実際には9点の患者が多数含まれている

と考えられる。

同じ現象は、入院時日常生活機能評価と入院時

FIM(総得点)との相関を示した図4にも表れて

いる。同図で入院時日常生活機能評価11点のFIM

中央値が45点、同9点のFIM中央値が57点であり、

これでいくと同10点のところのFIMの中央値は

50点ぐらいになるはずだが56点と、9点のところ

とあまり変わらない。ということで今回、55点と

いう数値が日常生活機能評価10点以上に相当する

点数としては比較的緩く設定されたとみている。

FIMの利得に関してはどうか。入院時日常生活

機能評価が10点以上の患者において、FIM利得

と日常生活機能評価の改善(同評価では改善する

と点数は減る)の相関をみた(図5)。結果は、日

指数を導入した2016年度以降は振れ幅が大きくな

ってきている。改定年には入院料の新基準を確保

するため、病床稼働よりアウトカムを優先した運

営を行った結果、利用率が下がり、翌年はその運

営が安定して利用率が上がり、戻ってくるという

変化が2年ごとに起こっているのではないか。

2020年は改定年なので例年通りなら「下がる」

はずだが、実績指数の基準値上昇のインパクト以

上に「発症からの日数」削除の影響のほうが大き

いため、病床利用率はさらに「上がる」と予想さ

れる。これは病床稼働率、運営全体にはかなりプ

ラスに働くのではないか。

日常生活機能評価で規定された重症患者の基準

に代えてFIM総得点を用いてもよいことになった。

日常生活機能評価の「10点」「4点以上の改善」が

F IM総得点の何点程度にそれぞれ当たるのか、

2019年度実態調査のデータ(図3)からみてみる。

00 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13

1415

16

123456

1718

19

5001000150020002500

3000

3500

4000

入院時日常生活機能評価

料院入

10 点には本来の9点が含まれている(たぶん )

(病棟)

図3 入院料別の入院時日常生活機能評価(当協会2019年度実態調査、n=39,770)

特集 2020年度診療報酬改定 適切な評価・計画でスピード感ある回復期リハビリテーション・ケアを

重症度のFIM評価――55点、16点の妥当性

18-27_宮井先生0420ato 20.4.21 4:56 PM ページ20

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回復期リハビリテーション◆2020.4 21

常生活機能評価の3点改善群(-3)ではFIM利得

の中央値が12点、4点改善群(-4)では中央値18

点ということであるが、今回「16点」以上に設定

された。いずれも若干緩めというか、優しい設定

になっているかと思う。

先ほどの原澤課長補佐のお話では「日常生活機

120

100

80

60

40

20

0 1 2 3 4 5 6入院時日常生活機能評価7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

55点

57 56 45

0

入院時FIM総点

(点)

図4 入院時日常生活機能評価とFIM総得点(当協会2019年度実態調査、n=36,838)

日常生活機能評価改善16点 12点

12 918

100

90

80

70

60

50

40

30

20

10

0-19-17-16-15-14-13-12-11-10 -9 -8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0

FIM利得

図5 日常生活機能評価改善とFIM利得(当協会2019年度実態調査、入院時10以上, n=12,654)

Part2 実態調査報告 全国実態調査からみる2020年度診療報酬改定

18-27_宮井先生0420ato 20.4.21 4:56 PM ページ21

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22 回復期リハビリテーション◆2020.4

能評価を使うのか、FIMを使うのか、毎月変わる

というのも想定しにくいので1年ぐらいで決めて

ください」とのことであった。病院の運用として

どのような形で評価体系を作っていくか、考慮で

きる期間は十分ある。慌てずに対処したい。

図6は、2015年から2019年までの実績指数、

FIM運動項目(FIM-M)利得、発症後日数、在院

日数、入院時、退院時FIM-Mを示している。実績

指数は導入された2016年に跳ね上がり(2015年の

値は当協会全国実態調査データから保険・調査委

員会が算出した予測値)、改定のはざまの2017年

はあまり上がらず、改定年度の2018年に再び跳ね

上がっている。在院日数の推移をみると、2016年

が65.7日、2018年度が63.0日と、3~4日の短縮効

果があることが伺える。

入院時FIM-Mは、2016年に51.0点から48.0点

に3点、2018年にはさらに2点下がり、実績指数

算出式の分母・分子ともに変動している。

同図の2015年と2019年の両端で各データを比

較すると、実績指数は23.4から37.6へ4年間で

14.2上昇している。主な要因としてはFIM-M利得

の8点上昇(入院時FIM-Mは5点低下が主因)、在

院日数の6日短縮などが大きい。今回、「入棟後2

週間以内に入棟時のFIM運動項目の得点につい

て、(中略)その合計及び項目別内訳を記載した

リハビリテーション実施計画書を作成し、説明の

上で患者の求めに応じて交付すること」との文言

が要件に明記されたが、上記のような実態をふま

え、入院時FIM-Mを含めた適正評価を医療機関

側に促したものであろう。これにはしっかり対応

していく必要がある。

23.4

30.4 32.1

37.5 37.6

13.0

17.0 18.0

21.0 21.0

24.0 23.0 23.0 21.0 22.0

69.0 65.7 66.0

63.0

51.0 48.0

46.0

75.0 75.0 76.0 77.0 76.0

5

10

15

20

25

30

35

40

10

20

30

40

50

60

70

80

2015 2016 2017 2018 2019

実績指数FIM-M利得発症後日数在院日数入院時FIM-M退院時FIM-M

実績指数:14.2 上昇の要因

実績指数導入

2020:入院時FIMおよび目標とするFIMについて、リハビリテーション実施計画書を用いて説明し、計画書を交付

63.0

48.0 46.0

• FIM-M利得:8点上昇• 入院時FIM-M:5点低下• 退院時FIM-M:1点上昇• 在院日数:6日短縮• 発症後日数:2日短縮

図6 実績指数と関連アウトカムの推移(中央値)(当協会2015~2019年度実態調査より改変)

特集 2020年度診療報酬改定 適切な評価・計画でスピード感ある回復期リハビリテーション・ケアを

「入院時のFIM運動項目含め適正評価促す

18-27_宮井先生0420ato 20.4.21 4:56 PM ページ22

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回復期リハビリテーション◆2020.4 23

図7は、ヨコ軸に発症から回復期リハビリテー

ション病棟に転院・転棟するまでの日数をとり、

タテ軸には当該日数を要した患者群の実績指数の

中央値を脳血管疾患、整形外科疾患、廃用症候群

の症例ごとに示したものである。各グラフをみる

と、脳血管疾患では発症後4週程度、整形外科疾

患では2週弱程度でそれぞれ実績指数の中央値が

入院料1の新基準である40のラインを切ってく

る。入院料3の新基準35のラインを切るのはそれ

ぞれそこから数日~1週あとである。廃用症候群

に関してはもともと実績指数40という数値自体、

ハードルが高く、実質的にクリアし維持していく

ことは無理ではないか。

全体の運用としては、全身状態が安定した患者

さんは早期受け入れが重要である。機能回復の本

来的な姿と実際の病棟運営から考えると、今回の

40、35という値は妥当な線ではある。発症から入

棟までの平均日数が今後どの程度延長するか、発

症から日数の長い患者の運用上の扱い(どの程度

除外するか)等々、2020年度調査でどう変わるか

が注目される。

発症から入棟までに長い日数が経過している患

者の中には、リハビリテーションの必要な方もい

るし、FIMの点数はほとんど改善がみられなくて

も介助量を減らすことが患者・家族にとっては非

常に重要な例もある。一概に「発症から長い日数

が経った患者にリハビリテーションは必要ない」

とはまったくいえないわけで、むしろ積極的に

「どういうことができるのか」を考えるのがわれ

われの使命かと思う。実績指数からの除外という

形での対処法もある。適切な形で制度が患者をよ

りよく活かせるものであればよいと考えている。

05

1015202530354045505560657075

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60

中央値では脳血管で発症後4週・整形で発症後2週が40ライン・廃用は40無理→全身状態が安定した患者は早期受け入れが重要

廃用実績指数(n=2,336)

発症後日数(日)

実績指数

脳血管実績指数(n= 16,035)

整形実績指数(n= 17,626)

当協会 2019 年度実態調査より改変

来年度どう変わるか注目!••

発症から入棟までの平均日数は延長?発症から日数の長い患者は実績指数から除外?

図7 発症から回復期リハビリテーション病棟転院・転棟までの期間と実績指数

Part2 実態調査報告 全国実態調査からみる2020年度診療報酬改定

「脳血管系の40ライン 目安は発症後4週

18-27_宮井先生0420ato 20.4.21 4:56 PM ページ23

Page 7: 全国実態調査からみる 2020年度診療報酬改定 - …18 回復期リハビリテーション 2020.4 当協会会員施設に毎年多大なご協力をいただい ている全国実態調査(「回復期リハビリテーション

24 回復期リハビリテーション◆2020.4

図8は2019年度調査データで、1~6の各入院

料における実績指数を箱ひげ図で表したものだ。

入院料1では中央値が44.0、入院料3では38.7と、

すでに現状でも全体の約75%の病棟が新しい基

準をクリアしていることになる。

図9は管理栄養士の専任・専従配置状況である。

入院料1で2割、2~6では5割以上、病棟全体で

は全体の約3分の1で専任配置が未達成であるが、

今回の改定で入院料1での専任常勤配置が要件に、

入院料2~6での同配置が「望ましい」要件に掲げ

られた。今後の展開をにらんで管理栄養士の雇用

が全国的に進むのではないかと思われる。

管理栄養士の専任・専従配置は当協会が主に要

望してきたもので、図10はその根拠となるデータ

である。管理栄養士が専任・専従配置している病

棟では実績指数、FIM-M効率が高い。管理栄養

士の専任・専従配置が機能予後の独立した改善因

子であることも当協会栄養委員会の論文で証明さ

れている。当協会の要望がこの4年間、比較的よ

い形で認められてきたととらえている。

摂食機能療法の加算の見直しについては、従前

の経口摂取回復促進加算のハードルがかなり高か

ったため、算定施設は全体の4.4%に留まり、摂

食機能療法も約9割の病棟で未実施の実態がある。

その点、今回の「摂食嚥下支援加算」はプロセ

ス評価でありチームとしてのいろいろな取り組み

が評価される。ただ、施設基準を含めた要件中、

看護師の要件が摂食嚥下認定看護師を指すとのこ

とから、養成にはしばらく時間がかかりそうであ

る。算定が増えてくるのも少し先のことになりそ

うだ。

日本医療機能評価機構における病院機能評価で

は2012年以降、リハビリテーション病院としての

本体機能評価受審が可能になり、回復期リハビリ

80

70

60

50

40

30

20

10

01 2 3

入院料4 5 6

現状の入院料 1、3はおおむね75%が新基準をクリア

中央値44.0 32.5 38.7 27.6 37.5 25.2実績指数除外後

図8 入院料別の病棟実績指数の分布(当協会2019年度実態調査より改変、1,100病棟)

特集 2020年度診療報酬改定 適切な評価・計画でスピード感ある回復期リハビリテーション・ケアを

管理栄養士の専任配置が全国的に進む

アウトカム向上に第三者評価の利用は有効

18-27_宮井先生0420ato 20.4.21 4:56 PM ページ24

Page 8: 全国実態調査からみる 2020年度診療報酬改定 - …18 回復期リハビリテーション 2020.4 当協会会員施設に毎年多大なご協力をいただい ている全国実態調査(「回復期リハビリテーション

回復期リハビリテーション◆2020.4 25

テーション病棟病棟に関しては2019年10月から

付加機能改め「高度専門機能」の機能評価受審が

可能になり、安心・安全、地域との切れ目ない連

携、より高い専門性の発揮といった領域の評価体

系が強化された。

図11は同機能評価の実際の認定状況を示した

ものである。調査協力いただいた回復期リハビリ

テーション病棟をもつ施設の約5割が本体評価で

すでに認定を受けており、付加機能(旧称)は

10%を超えた。高度専門機能への名称変更後、申

0.31

0.32

0.33

0.34

0.35

0

5

10

15

20

25

30

35

40

なし 専任あり 専従あり

実績指数 運動FIM利得

ADL改善が良好

運動FIM効率

度数 11,147 18,562 8,712

当協会 2019 年度実態調査より改変

21.4%

57.9%49.0%

57.1% 60.0% 62.5%

33.0%

55.9%

30.7% 44.3%35.7%

20.0%31.3%

49.7%

22.7%11.4% 6.7% 7.1%

20.0%6.3%

17.4%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

入院料1 入院料2 入院料3 入院料4 入院料5 入院料6 合計

なし 専任あり 専従あり

当協会 2019 年度実態調査より改変

Part2 実態調査報告 全国実態調査からみる2020年度診療報酬改定

図9 管理栄養士専任・専従配置の状況(当協会2019年度実態調査より改変、1,146病棟)

図10 管理栄養士の専従・専任配置とアウトカム(当協会2019年度実態調査より改変、n=38,421)

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26 回復期リハビリテーション◆2020.4

込みが増えているようなので2020年度は認定割

合が高まりそうである。

図12は、診療報酬改定前年度の2017年度と改

定年度の2018年度とで入院時と退院時の運動FIM

(FIM-M)、入院期間、FIM-M効率、実績指数を医

療機能評価の認定状況別にみたものである。

3連の柱状グラフの各左端が「認定なし」、中央

が「本体のみ」認定、右端が「本体+付加」認定病

院である。結果は「本体+付加」認定病院では2018

年度の入院時FIM-Mは前年度比100%で変化な

し。ところが、退院時FIM-Mは3%、実績指数は

26%伸びていた。「認定なし」病院では入院時

FIM-Mが94%と6%下がり、退院時FIM-Mは変

化なし。入院期間もそれぞれ短縮していたが、「本

体+付加」認定病院が92%で最も短縮していた。

つまり、「本体+付加」認定病院では入院時

FIM-Mは変わらず、退院時FIM-Mが改善し、在

院日数が短縮。これらにより実績指数が向上して

いるという本来目指すべき形がデータとしても示

されたものと思われる。

図13は、2019年度実態調査データであるが、こ

こでも「認定なし」病院に比べて「本体」認定病

院、「本体+付加」認定病院で実績指数が高いこと

が示された。病院機能評価は診療報酬そのものに

は依然、組み込まれてはいないが、さまざまな視

点でその病院の病棟運営プロセスを改善し、アウ

トカムの向上を目指すのには1つのツールとして

適したものではないかと考えている。

◇ 

2020年度改定の回復期リハビリテーション病棟

への影響を、あくまで予想であるが、以下まとめ

ると、(1)脳卒中の割合が増える、(2)病床利用率

が高くなる、(3)発症から転院までの日数が伸び

る、(4)実績指数の厳格化の影響は比較的軽微

(除外割合が増える、回復期リハビリテーション

入院料1の算定割合は横ばい)、(5)摂食嚥下障

害への介入向上の取り組み活発化が期待され、

管理栄養士の雇用が進む、病棟への常勤専任

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

14%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

55%

2014 2015 2016 2017 2018 2019

付加認定(数値:左)

本体認定(数値:右)

付加V3認定(同)

本体3Gリハ認定(同)

当協会 2019 年度実態調査より改変図11 日本医療機能評価機構認定病院の状況

特集 2020年度診療報酬改定 適切な評価・計画でスピード感ある回復期リハビリテーション・ケアを

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回復期リハビリテーション◆2020.4 27

配置が進む、摂食嚥下支援加算算定に向けた

看護師・医師の養成等の準備に着手する施設が

増える、嚥下機能評価の取り組みが充実に向

かう、(6)アウトカムの向上の工夫が進む(急

性期病院からの患者早期受け入れ態勢が強化、

入院中のリハビリテーション・ケアの充実の工夫、

適正な評価とチーム医療充実に資する第三者

評価の利用増)――などである。

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

10

15

20

25

30

35

40

認定なし 本体認定実績指数 補正在院日数

当協会 2019 年度実態調査より改変

運動FIM効率

運動FIM利得・実績指数

本体+付加V3認定運動FIM利得 運動FIM効率

図13 病院機能評価の認定状況とアウトカム(n=38,421)

94%

100%

95%

116%

120%

96%

101%98%

118%

126%

100%103%

92%

127% 126%

80%

85%

90%

95%

100%

105%

110%

115%

120%

125%

130%

なし 本体 本体+付加V3

入院時運動FIM(2018/17)

退院時運動FIM(2018/17)

算定上限日数に対する入院期間(2018/17)

運動FIM効率(2018/17)

実績指数(2018/17)

認定病院(特に本体+付加)の入院時FIMは変わらず、退院時FIMが改善し、在院日数が短縮することで実績指数が向上している

当協会 2017・2018 年度実態調査より改変

図12 診療報酬改定前後(2017-18)における臨床指標の中央値変化率(n=74,403)病院機能評価認定(本体・付加機能Ver.3)の有無による比較

Part2 実態調査報告 全国実態調査からみる2020年度診療報酬改定

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