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日本伝承通信 ♢ 西武堤一族が会社を失った日 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 ♢ 後継者が押さえておくべき会社法の基礎知識 ・・・・・・・・・・・・・・6 ♢ オーナー様がこれだけは押さえておきたい株主の権利(少数株主権) ・・・・8 ♢ サントリーの事業承継と自社株対策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・12 ♢ 持株会社の必要性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 ♢ 持株会社の運営 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 ♢ 株式移転や現物出資で持株会社を作ってはいけない ・・・・・・・・・・18 ♢ 事業承継税制について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 ♢ 従業員持株会は危険という大嘘 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 ♢ 事業承継の専門家とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22

伝承通信...≪西武堤一族が会社を失った日≫ 平成28年2月西武グループ元オーナー堤義明氏は、西武グループの全株式を売却し、これにより西武グル

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Page 1: 伝承通信...≪西武堤一族が会社を失った日≫ 平成28年2月西武グループ元オーナー堤義明氏は、西武グループの全株式を売却し、これにより西武グル

日本伝承通信

♢ 西武堤一族が会社を失った日 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

♢ 後継者が押さえておくべき会社法の基礎知識 ・・・・・・・・・・・・・・6

♢ オーナー様がこれだけは押さえておきたい株主の権利(少数株主権) ・・・・8

♢ サントリーの事業承継と自社株対策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・12

♢ 持株会社の必要性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

♢ 持株会社の運営 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16

♢ 株式移転や現物出資で持株会社を作ってはいけない ・・・・・・・・・・18

♢ 事業承継税制について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19

♢ 従業員持株会は危険という大嘘 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20

♢ 事業承継の専門家とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22

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≪西武堤一族が会社を失った日≫

平成28年2月西武グループ元オーナー堤義明氏は、西武グループの全株式を売却し、これにより西武グル

ープと堤家との関係は完全に解消された。

日本全国に4500万坪もの土地を所有し、バブル期には時価総額12兆円とも言われ、“世界一の金持

ち”と称された堤氏が、なぜ全株式を売却し、会社を手放さなければならなかったのか?

西武グループの創業者は堤義明氏の父である堤康次郎氏であり、西武鉄道やプリンスホテル、西武百貨店を

代表とした巨大企業グループを一代で築き上げた。

堤康次郎氏は 1889年(明治 22年)に生まれて、1964年(昭和 39年)に亡くなっている。

自分が苦労して心血を注いで築き上げてきた財産を子孫へ引き継ぎ、堤家の繁栄を願うのは親の心理として

は当然のことである。

しかし、引き継ぎにあたって2つの壁が大きく立ちはだかった。

1つは民法の改正である。

1945年(昭和 20年)第二次世界大戦が終結し、1947年(昭和 22年)大日本帝国憲法から日本国憲法に改正

され、これにともない民法が改正された。

旧民法は ”家督相続” であり、家督相続とは戸主となる一人が全財産を相続する単独相続であり、自分

の全財産は一人に引き継がれるため、資産は分割されることなく、また、遺産をめぐるトラブルも起こりえ

ない。

しかし、新民法は ”法定相続” であり、子供であれば平等に相続できる権利を持つため、資産が分割さ

れることが避けられず、また、遺産をめぐったトラブルといったことにもなりかねない。

古来から “たわけ” という言葉があるように、資産が分割されれば弱体化するし、遺産をめぐって肉親

同士で争うようなことになれば、繁栄どころか堤家の崩壊にすらつながりかねない。

旧民法では相続によって資産が分割されることを恐れる必要はなかったが、新民法では、資産が分割される

だけでなく、家そのものの存在を脅かされることにもなりかねないため、資産が分割されることなく、ま

た、肉親同士で争うことがないよう、引き継ぎの手立てを講じる必要があった。

そして、もう一つの大きな壁が相続税である。

当時の相続税の最高税率は70%であり、何ら手立てを講じなければ、ほとんどが税金で持っていかれてし

まう。

相続による引き継ぎコストをできるだけ抑え、かつ、資産が分割されないようにする手立てはないものか?

そこで、堤康次郎氏はすべての資産を会社で所有するようにした。

会社には相続はないし、相続がなければ、資産が分散することもなく、また、相続税は個人にかかる税金だ

からである。 2

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昭和22年 民法改正

旧民法 新民法

家督相続 法定相続

家を継ぐ人が全財産を相続 平 等

100% 引継ぎ

1/3 1/3 1/3

※資産は分割されない ※資産は分割される

※遺産トラブルも起こらない ※遺産トラブルが起こりやすい

『たわけ者』 の由来

子供の人数で田畑を分けると、子の代、孫の代へ受け継がれていくうちに、それぞれの面積は狭くなり、

少量の収穫しか入らず、家系が衰退する。

そのような愚かなことを馬鹿にして 『たわけ者』 と呼ぶようになったとされている。

堤康次郎

堤義明

戸主

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西武グループの支配関係は国土計画という会社が西武鉄道やプリンスホテルをはじめグループ企業約70社

の株式を直接または間接に所有する支配構造となっており、堤家は国土計画の株式を所有することで、西武

グループ全社の支配権を掌握する形になっている。

ここまでの対策は完璧であった。

しかし、この後の対応が、堤一族が西武グループの全株式を手放さなければならなくなる最大の原因にな

る。

留保金課税のためにとった対策である。

留保金課税とは、同族会社の内部留保した金額に対して、追加的に課税される税金であり、法人税を払った

後に、さらにもう一回税金がかかってしまう税金である。

留保金課税を回避するためには、同族会社と認定されないようにしなければならないが、そのためには、

株式の一部を堤家以外の他人が所有する必要がある。

会社の株式を堤家以外の他人に所有させることなどもってのほかではあるが、かといって、二重に税金を

支払うのもばからしいと考えたのであろう。

そこで考え出された手立てが名義株という方法である。

自分の株式の一部を名義だけ他人名義とすることで、同族会社と認定されなくなり、留保金課税からは逃れ

られる。

また、万が一にも名義を借りた名義人から権利を主張されることのないように、株券と印鑑はすべて自分の

管理下に置き、万全な対策を施したはずだった。

しかし、その後どうなったかは周知のとおりである。

堤康次郎氏が亡くなって40年たって、堤義明氏は有価証券報告書虚偽記載等による証券取引法違反によっ

て逮捕され、西武鉄道は上場廃止となった。

そして、名義を借りていた名義株についても、平成26年10月最高裁は 『これは名義株ではなく名義人が

真実の株主であり堤家の株式ではない』 と認定した。

さらに、西武鉄道の上場廃止にともなって、一般株主が被った損害の賠償のため、平成28年2月堤義明氏

は西武グループの全株式を売却し、これにより西武グループと堤一族との支配関係は完全に解消され、堤一

族が築き上げてきた巨大西武グループのすべてを失ってしまった、というのが一連の事件の結末である。

【ポイント】

経営に失敗して会社を手放したのではない

【原 因】

株の対策を間違ったから 4

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文明は進化しても古来から変わっていない

古 来 現 代

※お家騒動 ⇒お家取り潰し ※お家騒動 ⇒会社衰退、倒産、乗っ取り

※後継ぎなし⇒お家断絶 ※後継者不在⇒会社売却、清算

※源平の昔より骨肉の争いは枚挙にいとまがない

≪相続税の最高税率の推移≫

※相続税が昔のようにさらに引き上げられる可能性も・・・・・(55%⇒?)

日本全国の4500万坪(12兆円)の土地を国土計画はじめ西武グループで所有

昭和 25年~ 昭和 27年~ 昭和 50年~ 昭和 63年~ 平成 15年~ 平成 27年~

90% 70% 75% 70% 50% 55%

国土計画

西武鉄道

(上場) プリンスホテル 西武ライオンズ

堤義明氏

名義株

※国土計画が西武鉄道はじめ、グルー

プ企業すべての株式を直接または間

接に所有しているため、国土計画の

株式を堤義明氏が所有することで、

西武グループ全社を支配している構

造になっている。

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≪後継者が押さえておくべき会社法の基礎知識≫

①出光と昭和シェルの 合併

②トヨタがダイハツ工業を 株式交換 により完全子会社化

③取締役の選任 議案の可決

④決算の承認、配当金の決定

⑤日産が三菱自動車の 34% の株式を取得

会社法の骨格である3つの比率

議決権比率 権利内容 該当番号

3分の2以上(66.7%) 特別決議の承認 ①、②

2分の1超(50.1%) 普通決議の承認 ③、④

3分の1超(33.4%) 特別決議の拒否権 ⑤

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(1)会社の大きな方向性を決定する際には2/3以上(66.7%)の特別決議の承認が必要

(2)日常の会社運営(取締役の選任等)においては1/2超(50.1%)の普通決議の承認が必要

また、1/3超(33.4%)を自分以外の他の誰かが所有している場合は、自分の一存では会社の大きな方

向性(特別決議事項)を決定することができず、

(3)1/3超を所有している方の承認なくしては、特別決議事項を決定することができない ので拒否権と

言われるゆえんです。

会社運営のメインルールは会社法ですので、会社法を理解しておくことは重要です。

しかし、約1,000条にもわたる会社法の条文をおさえておくことは、法律家でもなり限り必要ありません

ので、オーナー家及び後継者の方が会社法で知っておくべきことは、

(1)2/3以上(66.7%)

(2)1/2超(50.1%)

(3)1/3超(33.4%)

この3つのことだけで必要十分です。

※未上場オーナー企業であれば、2/3以上の確保は最重要であり、できれば、後継者単独で2/3以上を確

保できることが理想です。

2/3以上を確保していなかったばっかりに、会社運営の停滞や、同族間での権力争いは、競争力の低下、

ひいては会社の衰退につながることにもなりかねません。

また、取締役の選任は1/2超の承認が必要になりますので、1/2超を持っていなければ自分を役員に選

任することすらできませんので、未上場オーナー企業であれば、後継者単独で1/2超の確保は、最低限必

要な議決権となります。

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〜わずかだからといってあなどってはいけない〜

≪オーナー様がこれだけは押さえておきたい株主の権利≫

- 少数株主権 -

☆ 株式買取請求 (会社法140条、785条他)

【制度の概要】

株主が任意に買い取りを請求してくるケースと、一定の事由(合併等の組織再編に反対の株主、譲渡承認請

求が拒否された株主等)が生じたことにより、法律的に買取請求権が発生するケースがあります。

後者のケースでは法律に従って、淡々と手続きが進められていきますが、前者のケースでは、法的に認めら

れた権利ではないため、買い取りを拒否することもできますが、対応のわずらわしさや、経営への悪影響を

考えると、実際問題買い取らざるを得ないケースがほとんど です。

【コメント】

弁護士は自社株トラブルをことのほか喜びます。

特に優良未上場会社のトラブルは金額が大きくなりがちなため、自分の手数料も大きくなり、また、未上場

会社で会社法をきっちり守って運営できている会社は少ないため、そういったことを指摘して裁判を有利に

進めやすいからです。

また、買取裁判となれば、多額の買取資金だけでなく、莫大な供託金、弁護士費用、鑑定費用等の莫大なコ

スト負担や、時間的ロス、心労負担等、その損害は甚大で、裁判で勝つ負けるの問題ではなく、経営どころ

ではなくなるため、株主とは絶対にケンカはしてはいけないし、ましてや、買取裁判にだけは絶対に発展さ

せてはいけない ため、分散している株式があれば、トラブルになる前に回収しておくことが、会社運営上必

要不可欠となります。

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株式買取裁判の流れ

※絶対に株式買取裁判に発展させてはいけない 9

裁判の前に供託金を供託する必要がある

☆莫大な供託金 (簿価純資産価額×買取株式数)

裁判開始

一審で決着することはほぼない

(一審はそれぞれ好き勝手に言い合うため)

二審、三審へと審理の長期化

裁判終結

買取金額の決定・・・☆多額の買取金額

☆多額の弁護士費用

☆多額の株価鑑定費用・・・審理ごとに株価鑑定を実施

☆心労負担・・・経営どころではなくなる

☆時間的ロス

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☆ 株主代表訴訟 (会社法847条)

【制度の概要】

株主が取締役などの役員に対して、法的責任を追及するために提起する訴訟で、取締役などの役員は、会社

に与えた損害を賠償する責任があります。

株主代表訴訟は、たった1株 持っているだけで訴えを起こすことができます。

【コメント】

株主代表訴訟というと上場会社のイメージがありますが、実際に起こっている 株主代表訴訟の7割は未上場

会社で起こっています。

そして、未上場会社で起こっている株主代表訴訟のほとんどが、身内での争いや、嫌がらせ です。

例えば、ゴルフ場が倒産し会員権が当時2000万円で買ったものが0円になってしまった、会社に200

0万円の損失を与えたため、社長がこれを賠償してくださいとか、社長が使っている交際費が多過ぎるの

で、高額な交際費10年分をさかのぼって社長が賠償してください、等々、未上場会社で起こっている株主

代表訴訟の理由は、こういった 身近にある問題や、まさに嫌がらせとしか思えないような内容で、裁判を

起こしてくるケースが多い です。

株主が株主代表訴訟を提起して勝った場合、訴えられた役員は損害を 会社 に賠償する必要があります。

つまり、会社が被った損害は会社に賠償されるため、株主代表訴訟を提起した株主には1円も入ってきませ

ん。にもかかわらず、なぜ株主は株主代表訴訟を提起するのでしょうか?

理由は、先に記載した 株式買取請求が本当の目的で、少しでも高く買ってもらうために、そのための布石

として、まず株主代表訴訟を提起する、というやり方をしてくることがほとんど です。

☆ 会計帳簿閲覧謄写請求権 (会社法433条)

【制度の概要】

3%以上の株式を持つ株主 は、会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧または謄写の請求をすることができ

る権利です。

【コメント】

わずか3%の株式を所有するだけで、おおよそ会社に関する会計関係の資料を見ることができる ため、例

えば、どこからいくらで仕入れて、どこにいくらで売っているか等、商売上最重要な秘密情報を、わずか

3%の株主は知ることができるため、万一この情報を悪用されれば、会社にとっては死活問題になりかねな

い権利です。見せるか見せないかで実際に裁判で7年に渡って争ったケースもあります(未上場同族会社)。

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少数株主権

持株比率 株主権

1株以上

・ 議決権

・ 株式買取請求権

・ 株主代表訴訟提起権等

1%以上 ・ 株主提案権等

3%以上

・ 会計帳簿閲覧謄写請求権

・ 株主総会招集請求権

・ 取締役等の解任請求権等

10%以上 ・ 解散請求権

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≪サントリーの事業承継と自社株対策≫

純資産が1兆円を超す巨大企業サントリー。

ご存じの方も多いと思うが、サントリーは未上場である。創業は1899年、明治32年である。

120年の歴史の中で、何度も世代交代や相続を繰り返してきているにもかかわらず、サントリーの株式の

90%を創業一族が所有している。

いったいどうやって株式を引き継いできたのか?

日本の法律は事業承継をとてもやりにくくしている。

一つは民法。平等相続である。

何もしなければ株式は分散し、トラブルの元となる。

同族会社において、お家騒動で会社がなくなってしまった事例は枚挙にいとまがない。

同族会社において、身内でのトラブルは絶対に避けなければならないにもかかわらず、その根本の原因を法

律が作っている。

もう一つは相続税。立派に経営し会社が良くなればなるほど、株価は高くなる。

しかし、未上場会社の株式は容易に換金できるものではなく、言ってみれば紙切れ同然のものに多額の相続

税が課せられるため、高収益で財務内容がいい会社であればあるほど事業承継が難しくなる。

にもかかわらず、純資産1兆円を超すサントリーの株式のほとんどを創業一族で所有しているのである。

なぜか?

答えは、創業一族は“個人”では本体の株式は所有していない。

創業一族は本体の株式を個人で所有するのではなく、別会社を通じて所有しているのである。

法人に相続はない。よって、本体の株式は分散しないし、相続も関係がない。

『高額な自社株式は個人で持つのではなく相続のない法人に持たせる』 これが未上場会社の自社株式につ

いての考え方である。

あとは別会社の株をうまくコントロールしながら代々引き継いでいけばよい。

別会社は本体と比べれば利益は少ないから、株価も当然安いし、本体の株式を個人で直接所有するより、

別会社を通じて所有することによる株価評価上のメリットもある。

こうすることで、子供だけでなく、孫の代まで助かるし、純資産が1兆円を超えようとも、サントリーの株

式のほとんどを創業一族で所有できている理由がここにある。

ぜひ、事業承継で悩まれているオーナー様は、この考え方と仕組みを取り入れてみたらどうか。

サントリーだからできるのではなく、サントリーですらできるのだから。

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株価は高い 株価を低く

サントリー 寿不動産

オーナー家

90%

支 配

引き継ぎ

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≪持株会社の必要性≫

事業承継対策において持株会社は非常に有効で効果的である。

実際に私自身の長年の事業承継の実務経験においても、そのほとんどで持株会社を実際に活用し、その効果

も極めて高い。

最初から持株会社ありきではないが、特に株価の高い優良未上場会社において、株の問題を、相続も含めて

バランスよく長期的な観点で根本的に解決する方法は持株会社をおいてほかにないといっても過言ではな

い。

もちろん持株会社以外の方法も事業承継対策としてはあるが、実際に検証してみればわかるが、どれも帯に

短し襷に長しで、その場限りの対応策で、長期的な観点ではなく根本的な解決策にはなっていない。

例えば、相続税に重きを置き過ぎるあまり、会社運営がやりにくくなる対策であったり、問題を先送りした

に過ぎない対策であったり、後々トラブルやお家騒動につながりかねない対策であったり、中には経営その

ものにリスクを及ぼしかねない本末転倒の対策もあったりする。

個人で所有するのと、持株会社を介して所有するのとでは何が違うのかといえば、個人には相続があるた

め、相続の都度、株の分散や相続税の問題で悩まされる。

しかし、法人には相続がないため株が分散せず、また、持株会社を介して所有することで、本体の株を個人

で直接引き継ぐ場合と比べて格段に安く引き継ぐことができるため、一代のみならず代々に渡って、後継者

に集中して、かつ、スムーズに引き継いでいくことができるのである。

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株価は高い 株価を低く

支 配

支 配

引き継ぎ

引き継ぎ

【持株会社のメリット】

(1)株が引き継げる=事業承継ができる

(2)相続で困らない

自社株から現金に換わることで

①納税資金に困らない ②相続でもめない ③相続税対策がしやすい

(3)株式が分散しない(法人所有に相続なし=経営権の安定化)

(4)株価の上昇を抑えられる

※持株会社の株価算定にあたって純資産価額算定上、含み益については37%控除が可能

(5)一代のみならず代々に渡って株式を引き継いでいける仕組みができる

本体会社 持株会社

社長

後継者

社長

株式売却

会社にとって一番大事

家族にとって一番大事

トラブルの原因を防止

これだけでもかなりの株価対策

サントリーが純資産1兆円を超えても一族で90%支配できている理由

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≪持株会社の運営≫

持株会社を作り、そこに株を移せば事業承継対策は完了ではないし、持株会社に株を移すことだけをメイン

に提案し、その後はほったらかしといった無責任なアドバイザーもたくさんいるが、持株会社は運営がうま

くいってこそ、その効果が最大限に発揮できるので、持株会社の運営は、持株会社に株を移すこと以上に重

要、といっても過言ではない。

持株会社には株を持つだけの純粋持株会社という形態もあるが、事業承継において活用する持株会社は、純

粋持株会社ではなく、事業持株会社がよい。

事業持株会社であるから、何らかの事業を行っていくために、持株会社の事業付けが必要となる。

事業付けといっても、商売を大々的に行うために作った会社ではないため、また、利益がたくさん出れば、

持株会社自体の株価も高くなってしまうため、事業付けにあたっては、そのあたりも十分考慮して行ってい

く必要がある。

持株会社の事業付けについては、『本体の成長に合わせて持株会社にも収入が落ちる仕組みを作る』、とい

う考え方である。

持株会社の事業としては、不動産賃貸業がやりやすいし最も適している。

不動産賃貸業といっても、今流行の賃貸アパートを建築するといったたぐいのものではなく、あくまでも本

社と関連した不動産賃貸業がよい。

例えば、本社の土地、建物を持株会社で購入し、それを本社に賃貸して賃料収入を得るといったものであ

る。

また、不動産賃貸業の他には、本社関連業務等、あくまでも本社と関連した業務がよい。

本社と関連したものがいい理由は、コントロールがしやすいからだ。

そして、こうやって持株会社に事業付けを行い、収益が出るようになってくれば、その収入をオーナー及び

後継者等が役員報酬で受け取り、持株会社の利益をコントロールしながら、同時に株価もコントロールしつ

つ、代々の後継者の株式引き継ぎ費用等、オーナー家で必要となる費用負担を、持株会社で確保できる仕組

みを整えるのである。

持株会社からの報酬は、株を所有していくという役割の対価である。

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☆会社の繁栄と,社員の繁栄と,一族の繁栄のバランスと好循環の形

会社の繁栄 社員の繁栄

一族の繁栄

持株会社を活用

会社の成長に合わせて持株会社にも収入が落ちる仕組みを作る

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業界高水準

・給料、賞与

・退職金 等

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≪株式移転や現物出資で持株会社を作ってはいけない≫

事業承継対策として持株会社は非常に有効で効果的ではあるが、その作り方を間違えてはいけない。

持株会社の作り方にはいくつかの方法があるが、株式移転や現物出資で持株会社を作り、株価対策を行うス

キームは税務否認のリスクが極めて高い。

実際に、最近ではキーエンス、トステムなどで否認されており、キーエンスにおいては300億、トステム

においては60億もの追徴課税がされている。

その仕組みを要約すると、株式移転や現物出資で持株会社を設立し、類似業種比準価額と純資産価額の価額

差を意図的に作りだし、さらに、持株会社が株式保有特定会社(※)である状態を、株式保有特定会社でな

くなるようにすることで、価額の低い類似業種比準価額を適用できるようにし、実態とはかけ離れた低い株

価を適用できるようにすることで税金の軽減を図る、というやり方である。

何がダメかといえば、一連の行為が、相続税の軽減を図ることだけのために行われており、そこに経済合理

性や経営上の目的、といったことの説明がつかないからだ。

つまり、明らかに見え見えなのであり、事業承継の実際の実務経験に乏しい、法律の上部だけをとらえて行

った安易な提案に他ならない。

昨今事業承継のアドバイザーを名乗る人たちがたくさん増えているが、ぜひこういった無責任な提案にご注

意いただきたい。

(※)

株式保有特定会社とは、総資産に占める株式の割合が50%以上の場合は株式保有特定会社となり、株式保有特定会社は純資

産価額で評価する。

持株会社が株式保有特定会社に該当すると、類似業種比準価額は使えず、純資産価額で評価することになるため、株式移転や現

物出資で持株会社を作っただけでは、本体の株の評価がそのまま持株会社に反映される。

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≪事業承継税制について≫

☆特例承継計画を提出したものの、実際の活用をためらうオーナーが多い。

【不安要因】

〇 問題の先延ばしに過ぎない(免除ではなく猶予)。

〇 『株』と『代表権』の両方を継ぐことが大前提の制度なので、株は継げても、会社の代表権までこの先

ずっと継いでいける保証などできない。

〇 株は継ぐが、会社(代表)を継がない場合は使えないため、所有と経営の分離の選択肢が取れない。

〇 結局はその場限りの対応で、会社を長く続けていくことを前提とした解決策になっていない。

(10年限定!10年後はどうする?)

〇 一度使うと、税金を払わない限り、二度とはずすことができない鎖につながれる感覚。

※変化に対応できなくなる

税制に会社を合わせざるを得ず、そのために会社運営がやりにくくなっては本末転倒

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≪従業員持株会は危険という大嘘≫

従業員持株会は事業承継対策において極めて有効で効果的である。

『従業員持株会が解散して時価で買取請求されるから危険である』、といたずらに不安心理をあおるアドバイ

ザーもいるが、従業員持株会の経験がないか乏しいために、従業員持株会のことを知らないだけであり、た

とえ従業員持株会が解散して時価で買取請求されたとしても、当初規約で定めた合意価額(額面あるいは配

当還元価額)で買い取ることが可能であり、裁判所もそれを認めているし判例も確立されているため、まっ

たくもって心配ご無用である(東京地裁 平26(ヒ)第22号、第24号 平27.11.12決定)。

株が分散している場合には、株の時価は買い手で決まるため、従業員持株会を買い取りの受け皿として活用

することで分散株の集約が図れるし、また、オーナー家の株の一部を従業員持株会に移すことで、相続税対

策の一環としても非常に効果的である。

間違っても、従業員持株会とは名ばかりの、箱だけ作っただけで、名義だけ借りて、配当もしないような運

営だけはしてはいけないし、そういった誤った運営をするからトラブルの元になるのである。

大事なことは、従業員持株会の規約をきっちり整備しておくことと、かつ、従業員持株会への配当を行うこ

とで、従業員持株会のメンバーにも喜んでもらえるような運営を行うことである。

そこさえ間違わなければ、従業員持株会は極めて有効で効果的であり、これを活用しない手はない。

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オーナー

60%

役員

10%

社員

10%

親戚

10%

社外

10%

社員持株会へ

オーナー

60%

社員持株会

40%

☆ 分散している株式買い取りの受け皿

☆ 株の時価は買い手で決まる

☆ 買取請求の防止

☆ トラブルが起こらないようにするためのルール

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≪事業承継の専門家とは≫

株価計算を正確にきっちりできる税理士は意外に少ない。

理由は、株価の計算方法は税法ではなく、通達、正式には財産評価基本通達で定められており、財産評価基本

通達に精通している税理士は、資産税を専門とする税理士である。

ところが、税理士の中で資産税を専門とする税理士は非常に少なく、100人のうち1人か2人であり、ほと

んどが法人税や所得税を専門とする税理士である。

そして、株価計算は財産評価基本通達ではあるが、株の法律は税法ではなく、会社法で定められており、相続

については民法で定められている。

また、株の移動には多額の資金移動がともなうため、金融についても精通している必要がある。

つまり、本当に正しい事業承継のアドバイスをしようと思ったら、最低でもこれだけの法律はすべて熟知して

いる必要がある。

個々の専門家はたくさん存在する。

例えば金融機関。

金融についてはプロフェッショナルであり、ここ数年金融機関が事業承継の提案に非常に力を入れているが、

その内容は事業承継とは名ばかりの融資を目的とした提案になっている。

税理士が事業承継ができるようでできない理由は、資産税の専門ではない、あるいは、事業承継で一番大事な

会社法をわかっていないからである。

事業承継の提案を受けられた方で、どこか違う、あるいは、どれも帯に短し襷に長しと感じられているのであ

れば、こういう理由であり、その提案はどこか偏っており、全体を見据えた提案になっていないからである。

ぜひ相談する相手を間違えないようにしてほしい。

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☆ 株 価 ・・・ 財産評価基本通達

☆ 税 金 ・・・ 資 産 税

☆ 株 式 ・・・ 会 社 法

☆ 相 続 ・・・ 民 法

☆ 資 金 ・・・ 金 融

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事業承継対策の指針

□ 会社は社長のものではなく株主のもの。

□ 後継者には社長のイスと支配者のイス両方とも引き継ぐ。

□ 事業承継対策はお元気なうちに行う。

□ 会社の永続にあたっては同族内において紛争の原因を作らない。

□ 同族でもめたら会社はもたない。

□ 安易な株の分散はトラブルの元。

□ 株主とは絶対にケンカをしてはいけない。

□ 株主は税務署よりも怖い。

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□ 税金の観点のみでの対策は節税額以上の損失となる。

□ 自社株については相続のない世界へ移す。

□ 支配権は握るが自社株式は持たない。

□ 自社株の相続税は子供に払わせるのではなく自分で払う。

□ 会社の株の対策は会社のお金で行う。

□ 一代のみならず代々に渡って引き継いでいける仕組みを作る。

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プロフィール

事業承継・資本政策・自社株対策の専門家。

事業承継コンサルタントとして、全国の優良未上場会社の事業承継対策の立案、実行、

メンテナンスを実施。

幅広い法律知識と高い技術力の背景には、自身が資格者である経歴を持ち、専門家ごと

の強み、特徴を把握し、独自の専門家ネットワークを構築。

オーナー経営者一人ひとりの問題を総合的に解決するコンサルティングに定評。

株式会社日本伝承

代表取締役 太田 久也

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会 社 概 要

商 号 株式会社日本伝承

本 店 〒104-0045 東京都中央区築地2丁目4番3号 東銀座富岡ビル5階

TEL.03-6280-4622 FAX.03-6280-4623

資 本 金 5,000万円

ホームページ http://www.nihon-densho.co.jp/

メールアドレス [email protected]

事 業 内 容 〇事業承継コンサルティング

株価評価、自社株管理、株式譲渡

持株会社の設立、持株会社の運営サポート、社員持株会の設立

社員持株会の運営サポート、無議決権株式、配当優先株式の導入 他

〇資本政策コンサルティング

増資、合併、会社分割、株式交換、金庫株

株主総会運営サポート、配当政策、社債発行、上場支援 他

〇後継者支援

後継者サポート、オーナー家サポート、株主対応サポート 他

〇M&A コンサルティング

M&A戦略立案、M&A仲介、MBO 他

お問い合わせ ・ご相談窓口

☎ 03-6280-4622

[email protected]

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〜日本伝承は 事業承継・株主対応・資本政策 に特化した専門会社です〜

このようなケースにお応えいたします

□ 株価が高く後継者への引き継ぎに不安がある

□ 毎年株の贈与を行っているが株価が高くて追いつかず他の方法を検討している

□ 子供同士でもめたり主導権争いが起こらないようにしておきたい

□ 後継者に集中してスムーズに株式が引き継げるようにしておきたい

□ 家族が相続で困らないようにしておきたい・・・他

□ 社歴が古く一族に株が分散しておりお家騒動やトラブルが起こらないようにしておきたい

□ 分散している株をできるだけ買い集めておきたい

□ 社員に株を渡しており退職時に買取価格や返却がスムーズにできるようにしておきたい

□ 元社員が株を所有しており自分がいるうちに解決しておきたい

□ 名義を借りている株があるため早く処理したい・・・他

□ 増資、合併、会社分割、株式交換等のアドバイスが欲しい

□ 株主総会のアドバイスが欲しい

□ 所有と経営を分離するためのアドバイスが欲しい

□ 上場のためのアドバイスが欲しい

□ M&A戦略のアドバイスが欲しい・・・他

株主対応

事業承継

資本政策