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順 第 一 次 十 一 隔 ご こ 一 増 れ は 3- 冖 を 藤 丶 メ 原 解 説 公 … · 紙 と は 色 彩 あ る 紙 の 意 で あ る 。 今 日 定 ま つ て ゐ

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紙;

圭日

 色紙をいはゆる色紙として書いたも

ので、現存して最も古いものは藤原定家の書

いたといふ小倉色紙であらう。定

家の歌名が高いのと、その書風に

一種枯淡の趣があるのとで、甚しく有名になり、御家の寶物

として、その紛失に蓮

關して、

一代の忠臣義婦が活躍するなど、劇にも仕組まれて觀客の涙を誘ふにも至つてゐる。

 しかし、小倉色紙以前の色紙はいはゆる色紙

として書かれたものではな

い。その

一は器子の斷片である。その他は

卷物の斷片である。册子に歌を書いた。それがいつしか散逸して、

一面に

一首

(時には二首)を書いたものが、色紙

と呼ばれた。卷物に書

いたものが切斷せられて

一紙

一首とな

つた

のも、また色紙と云はれた。而してそれらが某々等

名家

の名を附して、諸家に秘藏せられて今日に及んでゐる、

 元來、色紙とは色彩ある紙

の意である。今日定ま

つてゐる竪七寸横六寸

の色紙等

の稱ではな

い。しかし、今口はこ

れになつてゐる。從つてその書法も生すべきである。

 小倉色紙以後色紙の書法とも云ふべきものがいつしか生じた。乃ち散らし書

の法はこれであ

る。立石、藤の花、雁

       

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  三六九

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三七Q

の亂れ等、その形によつて書方が出來た。しかし、た穿技巧に過ぎて、參考にはなるが、專らそれに依るべきではな

い。近衛豫樂院は、月次色紙形を書

いて二十四樣

の變

つた體を作

つてゐる。素直な立派なものもあるが、數が多いた

めに、無理な、不眞面目なものもある。豫樂院の大手腕でも、獪かやうな始末である。後の書法などは、書

に志ある

ものは、殆んど顧みすして可なりであらう。

 全體今日は復古

の時代である。從來も復古は唱

へたが、獪中途牛端なものであつた。眞

の復古は今日に於いて起つ

てゐる。草假名は李安朝のほどい丶ものはない。この時の

一片

一紙も、獪孟ふべからざる價がある。況んや、その散

らし書の、後にいふ色紙の態をしたものは、無價の寳珠、人聞のものでない心持さ

へする。今

日色紙を書くものは必

これを範としなければならぬ。決して、後世の方式的

のもの、技巧的

のものに顧慮してはならぬ。これをすれば、

たサ氣品を下し、弊竇に陷るのみである。

 今こ製に雫安時代の劇蹟の色紙の模範す

べきものを例示し、その書き方を説明してみる。勿論古人の意氣は自分に

はない。云ふところは、穿鑿に過ぎるも

のもあらう。しかし、その意の幾分かは現はし得ると信じてゐる。

 第

一と第二とは紀貫之の筆を傳

へられる寸松菴色紙である。

 第三と嬉四とは小野道風

の筆と傳

へる繼色紙である。

 第五と第六と策七とは藤原行成

の筆と傳へる升色紙

である。

 第八と第九とは藤原公任の筆と傳

へる堺色紙と大色紙とである。

 第十は藤原行成の筆と傳

へる色紙である。

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第十

一は藤原公任の筆と傳

へる糟色紙である、

 

 

 

 

 

 

、        冖  丶

∵だ昏

 

 

 

 

一一、ご

∴、隔

 

 

 

.増3-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

'      ρ

'、遜

へ∴

・、

 

、   

㍉    

稿         、 

 

 

・響W      馬           ' 

 

Ψ ㌔'ニ ズギ

 '鼓澱ひ綾、教妄

た。

が、

筆を

三行

りも

丶高

た。

も、

に準

て全

せし

くな

つた

ので、

最後

には左

に大

が出

る結

 

  

 

 

 

 

   第

 歌は春の歌

「梅の香を袖に移して留めたらば春は

過ぐとも

かたみならまし。」

である。 これを五行に

散らしたo第

一行は始をや丶大きく、速度は綏く、

眞直に下まで書きおろした。第

二行は頭をや瓦下げ

て、これを始を大きく綏やかに、漸次や丶速くして

極めて下まで績けたが、終を右に傾かしめた。第三

行は頭を

一暦低くして、速度

ぱ些、か早く、しかも前

行に倣つたので、終はおのつから右に傾いた。が、

終筆は第

一行よりも高くした。第四行は、頭が行を

趁つて下り來

つたので、纂二行以上に上げ、しかし

一行と同水雫にならぬやう

にして、や丶速く書き

             

この右傾の度は順次に

  

この塞白を

「志」

一字

を少しく大きくし、し

            

三七】

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三七こ

かも第四行の絡よのも位置を高く書いて巧みに埋めて歌を絡

つた。で、杢體を通觀すると、牛開

いた扇の形で上が廣

く下が狹く、それで居て各行の上が整ぱす、下が附かす、參差としてゐるところに多大の風情があるが、更に最後の

一字で,傾いた励形ぱ秦體眞直な形と變じて極形の隙間もなく埋まつてしまつて居るところは、

云ふべからざる妙味

蟻 葬饗餐 驫.∫.セ〉

灘痃轟   ぺ

    ヂるぐロ .    礁

  曽 ∵

く、 ,

  瀞v'

  ・ 戸'、   レ

皰'浅嘱 瓣 惣 顕 .

<♂ '  くく七

  6  ㌔   、

  せら1も         '〉 "!   、   !

、ノ       、曳亭                      ル

苳施評'f,舞'レ.く ニ  へ婁、奪     犠"

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蕪撫纛   髴韈靉

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薩 碣'、

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      '漸,'

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罐鸛'  く   、  ,

汐'ぐ〆 卜

置 し

〆救霾

'1:气鰍

・.,欝

贈飜 薹

がある。その上に各行、上は綏やかに下は速く、處

濃く多くは薄く、綏急の具春,濃淡

の程度が、極めて適

當で、Hに快く心に響くものがあるのは能手にあらざ

れば出來・ぬところである。況んや.かやうな小色紙に

封すると手が萎縮しザ丶

字もおのつから小さくなるも

のであるが.毫もその氣がなく、大きく大膽に書き上

げ書き下して紙外にも浴れむとしてゐるのは、熟逹の

度の尋常ならぬのを示してゐる。

   第呂

第∴

と同じく春の歌、「射恒[]わが宿の花見がてらに

來る人は散りなむ後

ぞ戀しかる

べき。」

を五行に書い

た。第

一行は先づ名を眞直に書

いた。第二行は高くや

曳左に傾かしめて更に右

に轉じた。で、杢體は弓なり

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になった。その絡は窮まる如くに見

える

が、

窮まらす悠然と筆

を牧め

た。第三行は頭を少し低く、が眞直

にして、前行と離れる如き態度を見

                 、

せながら、急に最後の

一字を右に寄

せて、第

一行との聞に出來た歓を補

はしめてゐるのは巧慧であらう、策

四行は前行よりも高く書き初めて中

途から右に傾けて、前から生じた右

邊の鋏を補

つてゐる。第五行は前行

よりも低く書き初めて、これは大體

垂直にして、前行と即かすまた離れ

ぬ態度を取らしめてゐる。以上のや

うで、此

一紙は第ム

と異なつた趣を

見せてゐる。第

二策四行の濃は第

行の淡を挿んで目を聳てしめる。こ

        色

}

凱露

ら到ら

斯ぎ

       

熟鍾

.∵・

r

畴騒』凝

 

 

 

}   レ

、.▽

離~

騰鎖.詳

・-い

.滋

の濃淡は、緩急と自然に

一致しげ丶

體の調和の妙を示してゐる。

   第三

 冬の歌

「大筌

の月の光し塞ければ影

見し水ぞまつ氷りける。」を八行に書い

た。二頁であ

るので、まつ第

一頁に初

二三句を書いて、まとめる

とを

た。第二頁に第四五句を書

いてそれを

またまとめることをした。この兩頁を

對照せしめて、全體の統

一を作り上げ

た。まつ第∴

頁の第二行の

「おほぞら

の」は大體垂直に書いたが、最後を些

か右に轉じた。第二行は前行よも低く

書いたが、前行に準じて最後を右に…轉

じた。第四行は鋸二行よりも高く眞直

に書き下したが、前行に倣つて終を右

      

三七三

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' 

!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4

勾ら廊卑

}

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   傷

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、:ξ訊

'

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、、

          气

 

 

瓶、

丶・

    

・苺

 

 

     》

・ん

                     

三七四

に曲げた。第五行ぱ前行よりも大いに低く書き始めたが、今度ぱ電直に

した。而してこれが築

一行の書き出しと相應じ

て、

こ玉で立派な統

一が

出來上

つてゐる。最後の行がこの位地を取らなかつたならば、全體が散

漫なものとなつてしま

つたであらう。

轡第二頁の第

一行は第

]頁の第四行と相封する位地から書き初めたが、

それも絡を右に傾かしめてゐ

が、第∴

の第二三行と同樣であ

る。第二行は第

一行よりも低く書き出してそれも絡を右に傾かしめた。

第三行は前行よりもや

丶高く書き出しイ丶

全體

を稍右曲せしめた。第四

行ぱ前行よりも低く、これも稍右傾せしめた.

この各行ともに、終が右

傾しつつ列んだところに調和が生じて、第二頁

はまとま

つてゐる。この

各頁が高低參差し、濃淡の度が増してまつ小統

}があり、また小統

一が

あり、而して大統

一があるところが、筆者の技倆である。

       第四

 夏の歌

「夏の夜はまだ霄ながら明けにけり雲

のいつこに月隱るらむ。」

を書

いた。これも、第

一頁に四行、第二頁に三行に分けて書

いたのであ

つて、各頁が各小統

一をしてゐることは第三の通である。第

}頁の第

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行は垂直に書き下した。第二行は第

一行よわもや

曳低ぐ書き初めて、また眞直に書

いた。第三行は前行よりもやや高

く書き出して.これも垂直

に、第四行は大いに低く落筆してまた眞直にした。との各行ぱ從來

のと異なつて、いつれ

も垂直

に書くべく努めた。垂直は眞面目のものであ

つて、風趣を少なくする炭があるが、これは實力が十分

にあるの

で、その弊に陷らす、萬葉假名を巧みに混入して、 「よ」と

「よ」

と相並ぶ場合にも、單調

にならぬやう變化を示し

てゐる。ただ第三四行の

「け」

の位置は異なりながらも、重複してゐるのは、や

曳遺憾

の感を起さしめる。しかし、

杢體の統一は漏勗派に出來上つてゐ発

 

 

源灘

、\

取\

、雪、㍑

、・ 

L

.

頁は箜

第貢

の第二行吉

もぞ

低い

い菟潔

ζ

,

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヂ でもいぐなへけル  

メち                             

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノノノ も いノ ノ  キ                                              ノ

.、・

, 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・ 

 

' 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ム                                                               ル

し㌃

行は前行よー

の筑二行と第

 

λ

・気

プみ

難鑛鬻骸越崇糶辭鮎

,

ヤξ㌦

転∴瓠乳

た、すべてこれも

垂直を理想として全髏を統

一せしめ  

  

 

  

  

  

  

 

  

  

  

 

 .,

めるのはこの方法による吉

外はあワ⇔まい9

その點で

 

、、、

 

、り

、,.

これは理想的のものであるe            

、                         

       

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  三七五

9

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三七六

   第五

 清原深養父の

「杏花と云題を口逢

ふからも物はなほこそ悲しけれ別れむことをかねて思

へば。」を六行に書

いた。第

一行は垂直に題を書いた。第二行はや

丶高くから書き出して終

までに至つた。第三行はや

瓦低く書き初めて、これも

大鱧垂直に至ったが、墨が蠱きたので絡

の二字目で附けた。第四行は前行よりもや絮高くこれも乖直に書

いた。第五

行は思ひ切つて低く書き出して、やΣ右

に傾け

て絡とした。全體が垂直を理想にして眞面目に書

いたことは、第四の

                            やうである。沈著

の趣がすべてにあつて、流暢であり

. 

. 

, 

 

、ー

 

 

丁ゼ

ながら、悠然とした風情は及

ぶべからぬものがある。

」"赱

㌧ら

馬、疑醫

て鶴齣標

に蹄勸黥論

     、     

.・・ 

、    

・柔

  、ン

9

菊■

r∴

、・

'

}名

夙ン

こうミ

蚕丶.

濠髦

ノ恥~

ノ纛

ll  、 畠

', 

.

體に十分に活氣を與

へて、觀者

の眼を醒まさせてゐる。

   第六

 前者と同じく清原深養父の歌

「今は

丶や戀

ひ死なま

しをあひ見むとたのめし事ぞ命なりける。」を四行に書

いた、第

一行は極めてゆ

っくりと垂直に書き下した。

そのま

丶第二行はや

丶低く書

き初めて、終までまた垂

直にした。墨が蠱きないので、漸次線條は細くなり薄

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くな診つ玉、字形も小さくなり

つ丶續いた。而してこれを第

一行に密接せしめた。これは、第『行を遠く離して、第

四行を

一暦それと密接せしめむとの意鬪から發してゐる。第三行は思ひ切つて高く、垂直に

一氣に書き下した。こ玉

で第

一行からの墨が盡きたので、しかし餘りの字數が

少ないので、多くは附けすして、窮二行よりも低い高

さから第四行善

そして、密奪

しめた輦

一払

6

兩行の混合を來して、時にはこれが主となり、前行を

                                

}《

㌦~

從とせしめるまでに至

つた。この放膽的所行は著しい

                                        糟♪ー

效果を生じて、觀者をして禪驚かしめる。變化を欲す                  3

る人はこれを宗とすべきで餮

 

 

 

 

  

、∴

 

   第七

                             

、献 丶燼簿   ㌧   

、ぐh

同じく清原深養父の歌

「思ぴけむ人をぞともに田心は

 

バ∴

、'

ましまさしや報なかりけりやは。」を四行に書いた。第

                         μ渉 

 

 

 

酬 

一行

は高

て殆

ど電

た。

二行

は思

 

 

  

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

、斑

ひ切

つて高

び最

に修

の・文字

 

 

  

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

ジし

た。

つが全

に暢

の感

しく

した

, 

。熱

.・

三行嫁や丶低く、前行の最後が右曲したのを承けて、中途から思ひ切

つて右傾せしめた。

        色

誰構

摺、・き

か寺

、∴

鋼叢

∵㌻

留骸

いΨ从冥^^ 

 

空̂

 

搾 

 

 

 、、

 

ま                           く

凶     くY、      

    ^、  

 、   σ

ノ舷

盤孅

ノ♂}ξ,~ゼー

~認

 

  隔

秘~ゾ

. 

 

 

 

v

 

 

 

 

 

 

キ                  ノ ばサ

 

 

 

 

 

 

ズノおデキ              

ノ    

帽鸚

気ぎ笹蜘籔齢黔鍵内

     

これもまた變化を起さしめ

      三七七

廴縛厂く          、

    く  ノ

鞭   ・ポザ    '轟

ザ     ぞ

鑓 ・、

1撫~~砂歸解 崎 き{飆

  "、      、

     ,!

型      ㌧

        卜     弓'、

∫∵\ ヤ ㌧    ・     、営'  〃  ㌔

、 霹蔀、    _、

  ハ)

.ノ   丶

'こ 為

!      φ

  く ノ   

^、」6ノ

.  ・  ぐ

飆 聯

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籌七八

たのみでなく、右の余白を十分に補

つた。第五行は、+分に低く、前行に準じて垂直

として杢體を收めた。而して全

體が羊に偏し

てオを塞白を廣くしたのは、脂子を書き來

つたその終が、おのつから此くの如くなつたのであつヴ丶敢

                            

て故意にしたのではない。今

Hこれに倣つて見るのも

.

}㍊解

.

.

.

贏ハでー

しかし茎

紙の生餐

その線條の

                            

流暢明快であるにもあり、綏急疾徐の適度なのにもあ

                             

讚 灘,、贊 溝譜ゲ

亂 ~◇㌧∴,    、、ン    '   島          ㌔

    ナ     ・ ・ い ざ〉'  ・

      、         ザ    { 、

麟覊ぐ 濁

そく

rl

\ 曇:擁蘇導

ノ ・

    ・ "

冖ボ

 

 

 

 

 

 

'へ廠

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趨、.

 

'

 

 

《佑

燕弋

,

と 璽

彖 麟 ∴す  ・

笠酸 ジ嘘

箜肴

振く

轉     .じ  '

た    ・Q

これで小統

奄呉

面 は 一 ~目 や 行の 乂 の 堯中 低 初 遡に く め σ出 起 を 霓來 筆 獨 彦上 し 草 えつ て 的 く

た'に 譖り 獪 し 力

間 獨 て そを 草 漸 ~大 的 次 斗き に 連 ハく し 綿 オ明 た に 選けoし ¢て そ た と'の が 茨

第 終 、 交四 は 第 て行 蓮 二に 綿 行 寡

り 各字の大小の配合

の巧みなのにもあるが、更に濃

處の突如としてあり、淡處と相對して、細大の妙云ふ

べからざるところにある、故意に此の如くすれば、厭

味に陷るであらうが、模範としては上乘なものである。

   第八

 賀

の歌

「いたづらに過ぐす月日は多かれど花見て暮

らす春ぞすくなき。」を六行に書

いた.全體をゆ

つくり

と、急遽の態度なく書かうと考へたものと見えて、第

一行の初めを獨草的にして漸

次連綿にしたが、第二行

はや

乂低く起筆して、獪獨草的にした。その終は蓮綿

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入り、大體獨草的に垂直に書き、第五行に入り、や

乂低くして獪獨草

の態度を改めす、第六行を低くして牧結して、

こ、.でまた小統

}を

つく

つた。而して初の小統

一と相合して、大統

一を作り上げた.この風

は學び易くて、その結果

は破綻を見せぬので、後世これを逐ふものが多く、今日色紙と云へば、すぐこの體を書くのが多い。眞面目ではある

が變化が、なくて興味の多くない形である、こればか       冨

り模亠,るやうで嫁

面白い境地には達せられない。

 

つ零

.

   第九                          、

 

「五月やみ木の下闇にともす火は鹿のたちどのしる         ワ       

"      〉了

・・,

べな

妻。」

(拾

は初

「五月

山」とあ

る。)を

五 

  

 . 

 

  

 

・  

  

 

〉 

 

  

  

 

 

`

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

ハ  な

行鬟

れ秦

八と握

眞曹

にと譲

6

9〆

の下に書いたと見える。第

一行は獨草的に、上から

』 

・   

.

                   

もとくさ 

 

、謳

∴. 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

`、

殆んど下までに及んだ、箜

行はいはゆる本草で、そ

 

 

、乏

と試

、、

、・ 

 

・ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・.、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ち                                                             さ

ザ撫

嫉擁

濕钁

撚即望、 

 

の垂直

のと異

て右

て、

しめ

.

つめ

い口上

定述

Σ、

最後

に破顏

一笑

た樣

であ

る、

「し」の重複

て、

こと

に同

であ

のは

調

に過

る。

これ

は筆

も悔

".κと

う。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  三七九

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三八0

   第十

 

「忘れてぞ我身ありとは恩ひける谷の煙となりにしも

のを。」の

一首を八行に書

いた。最初

一行はや曳右寄りに・

綾やかにや

乂右傾しつ」書き下した。第二行はや

丶低く書き初めて、殆んど垂直にした。第三行は前行よりも高くし

て右傾せしめた。これだけではや

玉散漫の弊があるが、第四行を低く右端に垂直にし、第五行を低くして、第

一行と

                

'          

密接

せしめ、更に右傾して右

の筌白を補

つたので、變

              

駕      ・《

   ー

 

・ 

 

睡旨.臓

〆、誕

耄、汽弱

肩あ.廓

、て《

3

・、             ー暖

      

"ら

 

 

 

 

//ー 

 

 

 

' 

 

 

 

 

 

 

ト             

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

や      なも

、 

 

鰍\.

辷函

・㌢-

. 

 

 

 

 

 

 

    ボ                     

 

                   

駅起气㌔奮

       

一 

苧  

》 

{醗ザ

,羨

  渉駕ム

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レペ                      ぜ

げ 

 

 

 

4、・、

一・点

弔、一隼

観獵

駕、

化が著しく見える。第六行は第三行の右傾してゐるの

に拌つ

て右傾せしめて、大いに低く左端の筌白を補つ

た。更に第七行もそれに準じ

て、右傾したのを垂直に

直し、而して第八行の

一字を垂直に置いた。これによ

つて、散漫

の弊はすつかりなくなり、杢體が餘裕ある

一をして、しかも觀者の意想の外に出

てゐる、更に

一々、

勁健

で、流暢で、

明快清爽

の極を

盡くしてゐ

る。この技倆に連するには非凡の天分を要する。た穿

練習

の度を重ねるのみでは至り難いであらう。それの上にこの叡布の妙があるのである。紳品

といふべきである・

   第十

源順の

「弓射る處□春深き山にいれはや梓弓弓風にミ

花の散るらむ臼四月黎

る處臼棘のます森の下草風吹けば

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!

  細  評瘢へ 》図へず      バ

鴇 壷1.

    、 、    ・叉熊

  嘱 内 湾    ゆ ム

穏 鰍 ぎ      ぎ乗

    丶3奮   ・ 凝ぐ

   漣 職

、螂 ・磁,       匸

    。ど    鱒 狸     へ~      丶

    、3    唐》

!》

逮察 ㌧々

    へく へ      茎冲

φ  ,、

 

 

 

 

 

趣黛

鷺・集

≧ 

 

.碧、

短撫

 

 

 

冒多

守        タ

 

 

 

 

ぷキ ち            く

 

 

 

 

~      や

 

 

 

 

 

 

'廷

♪轄

    丶ノ

 

・、、

・ 

慧毘

 

 

 

 

 

 

 

V

 

 

 

 

 

 

 

塾▼

鼻癰

》 、

ぐプ1

~茨饗

 

 

、纛欝

、謡

丶、㌔、、 

 

、滝  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

、 

,扇ご繍

 

 寃蝦

 

 

 

 

ノ  

  

汎、藝

     、零瓦

瑠 

 

 

 

 

 

 

 

〉 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鴬 、'

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(

 

 

 

 

 

 

 

グ  

ういく

 

 

 

 

 

 

 

め     ヘ へ

 

 

 

 

 

 

 

ど や      ン                  ノ

 

 

 

 

 

 

 

で ギノ   も

 

 

避 

 

 

、 

 

 

 

}

・い

 

 

 

 

 

 

'

 

 

ひ                     ミ も

 

 

 

 

 

 

、鰯

  

ノ㌧

 

 

 

 

 

 

ヤ       

 

ブ・ひ}ポみ

厨丶

   ぐ

、莎

堰知

.、

畢 》.蓋 沸 ¢

V

  ¥  い     線茅

冨黶    γ◇

、・

 

ツ鱸券汐

 

(

、擁

漆。てもみ(な蔡

、、、頃

。Lの

二首

を上

 

 

に分

て書

いた。

  鑼轍罷轍

  

に通つてゐるところ

  

から、歌はおのつか

  

ら二ヶ處に書かれね

  

ばならなかつた。

   

一首の第

一行の

  

歌は低く直に、第二

  

行は高く、第三行は

  

それより低く、且つ

  

前行に接して下まで

  

及ぼし、三行で

一の

  

小統

一を作

つた。聞

 三八一

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                                         ヨ八二

を置いて、第四行をや㌧低くして 眞直

に、第五行をそれに接して低く、最後

の二字を左に附記してまた

輔の小統

を作つた。

第六行は直にその最後の二字を附記して、

また小統

桶をつくつた。

この小統

}は他の小

一と根調和し

て、大統

一をなしてゐることは見て明らかなところである。

 第二首も、第

一行のや玉低

い題と、第

二行のや玉高く眞直

に書き下したのが、第三行

の密接

したのとで小統

一をな

してゐる。第四行も、や

玉高くして第

一二行の間から起筆し、眞直に下して次の二字を魂轟の體として小統

一をつく

り、第五行の第三行よりすこし低く初めて垂直に下したのと相對し、更に前の小統

】と合して大統

一をなしてゐる。

二首の色紙は少ない。これは立派な模範である。

 以上の十

一種は、甼安朝の色紙を蠱くしてゐるのではないが、その主なものは含んでゐる。寸松菴色紙、綾色紙、

堺色紙、大色紙、叉は升色紙、糟色紙等

には他

の種類がある。これらを悉く參照せられるならば、草假名の散布の妙

を感じ得るのみでなく、自得して、應用するに十分であらう。 

(完)