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症例3 乳腺 穿刺吸引細胞診(Pap1枚) 70代女性 【主訴】右乳腺乳頭部付近の2cm大腫瘤を自覚 【既往歴】耳鳴りとめまいで耳鼻科通院中 【家族歴】なし 【妊娠/出産歴】2/2 【飲酒・喫煙】なし 【触診】右CDEに径2cmの弾性硬の腫瘤 可動性は保たれている
飯田市立病院 岩田貴博
超音波 R L
マンモグラフィー
右:Cat4:境界不明瞭な腫瘤
右CDE領域に15mm大の境界不明瞭な分葉状~不整形の低エコー腫瘤を認めた。さらに乳頭下に広がる不均一な領域もあり、ドプラではどちらも血流信号を認める。
MRI PET-CT
乳腺組織の形状に沿った不整形腫瘤と 病変から乳頭に達する線状の増強効果(+) →乳管内成分を主とする癌の可能性を示唆
右乳腺内側下部に左右方向に長く連続する淡いFDG集積を認める。 →乳管内を主とする乳癌疑い
背景
軽度の出血性 ×間葉系細胞 ×炎症細胞 ×壊死 ×泡沫細胞
血管構造が豊富
柵状配列を呈した小集塊
全体像
採取量が豊富で散在する腫瘍細胞が主体
二相性不明瞭な重積を伴った大型集塊
細胞所見
・紡錘形・類円形細胞 ・two cell patternで均一 ・偏在核が多い ・核の大小不同は軽度 ・核形不整も軽度
・N/C比は低い(=裸核も) ・クロマチンは細顆粒状 ・核小体は小型で複数個 ・細胞質は豊富・境界不明瞭 →顆粒状、一部好酸性
細胞所見
肉眼所見(乳房切除+SLN生検)
ACE領域 境界不明瞭で光沢のある灰白調病変
病理組織学的所見
HE
AB-PAS
粘液癌
DCIS
その中間
病理組織学的所見
HE
AB-PAS
HE
AB-PAS
HE
AB-PAS
DCIS:充実型 Mucinous carcinoma 細胞外粘液を産生するDCIS(?)
粘液癌の前駆病変 or浸潤前病変
神経内分泌への分化?? →免疫組織学的検索
Synaptophysin CGA CD56
ER:3+ PGR:3+ HER2:-
Ki-67
免疫組織化学的所見
HE
DCIS
Mucinous Carcinoma
9.6%
15.7%
穿刺吸引細胞診はどこから??
NE-DCIS 類円形細胞と紡錘形細胞
充実性増殖
Mucinous carcinoma 粘液性背景・類円形細胞 篩状乳頭型や島状配列
Invasive carcinoma with neuroendocrine differentiation ・腫瘍径:浸潤癌19mm(全体40mm) ・SLN(OSNA法):(+)350copies/μl
穿刺吸引細胞診 →Neuroendocrine DCIS
病理組織診断
NE-DCIS臨床的特徴 【定義】 免疫組織化学的に神経内分泌マーカー( Synaptophysin or Chromogranin A)が50%を超える腫瘍細胞に陽性所見を示すDCIS 【臨床的特徴】《NE-DCIS vs non-NE-DCIS》 頻度:全DCISの6.8% 平均年齢:50.4歳 血性乳頭分泌の臨床症状《72% vs 5%,p<0.01》 術前悪性低診断率《67% vs 95%,p<0.01》 コア針生検《43% vs 93%,p<0.01》 マンモトーム生検《60% vs 96%,p<0.01》 細胞診《31% vs 65%,p<0.05》 【腫瘍割面の肉眼的所見】 腫瘤として認識することがしばしば困難 乳管内出血を示唆する赤褐色調の小円形病巣が散見される
NE-DCIS細胞学的特徴 【背景】 きれい、ときに粘液性ないし出血性 【細胞採取量】 豊富(95%) 【出現パターン】 充実性で結合性の緩い細胞集塊 癌細胞の孤立散在像 発達した血管構造(しばしば腎糸球体様構造を示す)
<細胞> 【核】 円形~類円形や紡錘形、しばしば偏在性(形質細胞様形態) 細顆粒状のクロマチンパターン 核小体は小型、核分裂像は目立たない、低核グレード(86%) 【細胞質】 多角形ないし紡錘形 細顆粒状、豊富、ときに細胞内粘液
NE-DCIS病理学的特徴 【組織学的特徴】《NE-DCIS vs non-NE-DCIS》 腫瘍細胞の充実性増殖パターン《85% vs 15%,p<0.01》 発達した血管網(ときどき硝子化を伴う) 腫瘍細胞は多角形、類円形、紡錘形と多様 胞体は細顆粒状、しばしば好酸性 核は類円形~ときに紡錘形、クロマチンパターンは繊細 低核グレード《90% vs 54%,p<0.01》 低DCISグレード《95% vs 38%,p<0.01》 石灰化(-)《75% vs 15%,p<0.01》 粘液産生(しばしば+)→粘液癌に移行する可能性がある 小腫瘍進展径《平均:22.5mm vs 39.9mm,p<0.01》 【免疫組織化学的特徴】《NE-DCIS vs non-NE-DCIS》 低Ki67(MIB-1)標識率《平均:4.3% vs 8.1%,p<0.01》 エストロゲン受容体陽性《Allred合計値の平均:6.7 vs 5.0,p<0.01》 プロゲステロン受容体陽性《Allred合計値の平均:7.1 vs 4.4,p<0.01》 HER2陰性(score0 or 1+)《95% vs 69%,p<0.01》
NE-DCIS 乳管内乳頭腫 葉状腫瘍 紡錘細胞癌 間質肉腫
背景 きれい
出血性・粘液性 嚢胞液中に存在する
細胞が出現 粘液様物質
壊死・粘液様物質が多い
間質性粘液
構造 小集塊状~散在性 乳頭重積性・篩状 シート状集塊 重積性の集塊 不規則集塊・束状
結合性
緩い 強い 緩い 緩い 緩い
筋上皮細胞
認めない 認める 認める 認めない 認めない
上皮細胞
あり 二相性不明瞭
あり 二相性あり
あり 二相性あり
あり 二相性なし
なし
細胞 全体
採取量多い 類円形・紡錘形
紡錘形~楕円形 紡錘形~類円形 紡錘形・類円形 採取量少ない
紡錘形 N/C 低い 低い 低い 低い
核形 紡錘形・類円形 紡錘形 紡錘形・類円形 楕円形・類円形 紡錘形 核異型
軽度 軽度 軽度~高度 高度 比較的軽度
核縁 薄い 薄い 薄い 厚い 薄い 核小体
小型で数個 小型で1~数個 目立たない 目立つ 目立たない
クロマチン
細顆粒状 細~粗顆粒状 繊細 粗顆粒状 繊細
細胞質
明瞭 細顆粒状 好酸性
レース状 レース状 淡染 不明瞭
明瞭 淡い
境界不明瞭
その他
神経内分泌マーカー 切れ込み核 核内空胞
鑑別疾患の細胞像比較