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1 57 Fe メスバウアー分光法と 核共鳴散乱法 兵庫県立大学 大学院物質理学研究科 物質科学専攻 教授 小林 寿夫

核共鳴散乱法 - 新技術説明会...1 57Fe メスバウアー分光法と 核共鳴散乱法 兵庫県立大学 大学院物質理学研究科物質科学専攻 教授 小林

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57Fe メスバウアー分光法と核共鳴散乱法

兵庫県立大学

大学院物質理学研究科 物質科学専攻

教授 小林 寿夫

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メスバウアー効果

原子核の基底状態と励起状態の無反跳共鳴遷移(γ線吸収)1957年 メスバウアー(ドイツ)により実験的示される

メスバウアー分光法・核共鳴散乱法原子核をプローブとして電子状態や局所構造を元素選択的に測定電子状態:原子の磁気モーメントや価数 化学結合局所構造:物質内で原子の置かれている環境

結晶であればサイトの対称性

どのように測定するのか(概要)メスバウアー分光法:放射性同位体から照射されるγ線の吸収(実際にメスバウアーが行った方法と同一)

核共鳴散乱法:放射光X線により励起された原子核から放射されるγ線の干渉

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メスバウアー同位体の数メスバウアー遷移の数

メスバウアー効果

メスバウアー元素:メスバウアー効果の観測されている元素43の元素の測定が可能

元素選択性:どの元素(同位体)を測定できるのか

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超微細相互作用:原子核と電子の相互作用(概要)・原子が有限の大きさを持つことによる効果原子核の基底状態と励起状態ではその有効的な大きさが異なる。

原子核の遷移エネルギーの変化

・原子核の持つ電気四重極モーメントや磁気モーメントと電子の作る原子核位置での電場勾配や磁場との相互作用

原子核の縮退していた状態の縮退が解ける原子核の遷移する数が変化

原子核をプローブ:どのように原子核状態から原子状態を知るのか

メスバウアー効果

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57Fe : Eg= 14.413 keV Ig=1/2 Ie=3/2

14.4413 keV

超微細相互作用:原子核と電子の相互作用(具体的に)

静電相互作用

d’ ~ 20 neV

磁気的相互作用

DEM ~ 400 neV

電気的四重極相互作用

DEQ ~ 50 neV

原子核をプローブ:どのように原子核状態から原子状態を知るのか

EgEg + DEM

Eg + DEQ

メスバウアー効果

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Eg =14.4413 keV

57Fe メスバウアー分光法

測定:原子核の共鳴吸収をどのように測定するのか

E = Eg + DE

検出器線源(57Co)

試料

加振機

v

DE:数百 neV

v ~ 10 mm/s

測定試料固体(粉末、単結晶) 液体多相の試料でも分離可能

温度変化室温から1.5K

磁場変化最大 8 T

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E = Eg + DE

検出器線源(57Co)

試料加振機

v

Ie = 3/2

Ig = 1/2

速度 (mm/s)

透過率

金属鉄(強磁性体) 57Fe メスバウアースペクトル

57Feγ-ray

Eg

57Fe メスバウアー分光法

測定:原子核の共鳴吸収をどのように測定するのか

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Rel

ativ

e tr

ansm

issi

on

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

Velocity(mm/s)

57Fe メスバウアー分光法:Sr フェライトを例にして

透過率

●・・・Sr2+

●・・・Fe3+

●・・・O2-

TC = 750 KSrFe12O19:フェリ磁性体

Fe Site Spin

12kocta ↑

2aocta ↑

2bpyra ↑

4f1tetra ↓

4f2octa ↓

粉末試料

速度 (mm/s)

速度 (mm/s)

透過率

単結晶試料

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●・・・Sr2+

●・・・Fe3+

●・・・O2-

(Sr,La)(Fe,Co)12O19:フェリ磁性体

Fe Site Spin

12kocta ↑

2aocta ↑

2bpyra ↑

4f1tetra ↓

4f2octa ↓

永久磁石材料としての Sr フェライトLa-Co 置換により保磁力が上昇

Co2+ イオンの残留軌道角運動量

フェライトの結晶構造は複雑Fe サイトにより配位子の状況が異なる

Co2+ イオンの置換サイトを決定

永久磁石材料としての性能の向上の点に重要な課題

過去に多くの研究はあるが結果は、結果は混沌としている。

測定試料や解析方法・解釈に問題

57Fe メスバウアー分光法:Sr フェライトを例にして

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●・・・Sr2+

●・・・Fe3+

●・・・O2-

(Sr,La)(Fe,Co)12O19:フェリ磁性体

Fe Site Spin

12kocta ↑

2aocta ↑

2bpyra ↑

4f1tetra ↓

4f2octa ↓

Co2+ イオンの置換サイト

57Fe メスバウアー分光法:強度比から 置換 Fe サイトを決定

吸収強度:Feの量と無反跳分率

57Fe メスバウアー分光法:Sr フェライトを例にして

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Sr1-xLaxFe12-yCoyO19: Co2+ イオンの置換サイトを決定する

速度 (mm/s)

透過率

x=0, y=0

x=0.310, y=0

x=0.192, y=0.152

2a

2b

4f1

12k

4f2

M. Oura et al. JAP 123 033907

57Fe メスバウアー分光法:Sr フェライトを例にして

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Sr1-xLaxFe12-yCoyO19: Co2+ イオンの置換サイトを決定する

2a

2b

4f1

12k

4f2

2b

2b

Sr

Sr

57Fe メスバウアー分光法:Sr フェライトを例にして

M. Oura et al. JAP 123 033907

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Sr1-xLaxFe12-yCoyO19: Co2+ イオンの置換サイトを決定する

2a

2b

4f1

12k

4f2

鉄サイト間の結合

4f1

2a

4f2

12k

2b

Co2+ イオンの置換サイト: 4f1 2a

57Fe メスバウアー分光法:Sr フェライトを例にして

M. Oura et al. JAP 123 033907

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TC = 750 KSrFe12O19:フェリ磁性体

速度 (mm/s)

透過率

θm

Hhf

Hex

Fe Site Spin

12kocta ↑

2aocta ↑

2bpyra ↑

4f1tetra ↓

4f2octa ↓

速度 (mm/s)

透過率

57Fe メスバウアー分光法:Sr フェライトを例にして

M. Oura et al. JAP 123 033907

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0 100 200 300

100

101

102

103

104

Inte

nsity

(cou

nts)

Time (nsec)

57Fe 核共鳴散乱法:放射光を用いた測定の原理

検出器

金属鉄放射光

分光結晶

高分解能分光結晶

遅延時間 (ns)

強度

Ie = 3/2

Ig = 1/2

57Fe

金属鉄(強磁性体) 57Fe 核共鳴前方散乱スペクトル

完全偏光

Eg

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57Fe 核共鳴散乱法:放射光を用いた測定の原理

検出器

金属鉄放射光

分光結晶

高分解能分光結晶

遅延時間 (ns)

強度

完全偏光

57Fe 核共鳴散乱法の特徴:入射X線が完全偏光している。

放射性同位体から照射されるγ線:無偏光

超微細相互作用をより詳細に議論できる。

エネルギー

吸収量

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想定される用途

• 永久磁石、軟磁性材料、磁気メモリー、磁気センサーなど 磁性材料の測定により磁気特性と鉄原子の電子状態との関係の解析

• 微量な鉄原子を含む材料中での鉄原子の局所構造と電子状態の解析

• 鉄を含む材料の原子による置換効果

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産学連携の経歴

• 2010年-2011年、2015年

株式会社三徳と共同研究実施

• 2010年-2016年

JST研究成果展開事業

産学共創基礎基盤研究プログラム事業に採択

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お問い合わせ先

兵庫県立大学 知的財産本部

知的財産コーディネーター 宮武 範夫

TEL 079-283- 4560

FAX 079-283- 4561

e-mail [email protected]