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論文 ガラス繊維強化ナイロン6製品のクリープ挙動...E n m, A ∆H Parameter FEA Yes Yes Yes No (4) (7) Eq. δ= d – d' δ δ e δ c -33- ケーン技 Vol.1

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-31-

ケーヒン技報 Vol.1 (2012)

ガラス繊維強化ナイロン6製品のクリープ挙動※

Creep Behavior of Glass-Fiber-Reinforced Nylon 6 Products

Knowledge to the reliability of the fiber reinforced plastics is very important amid the trend of changing metallic parts to the plastics. The “creep” is an important phenomenon in order to predict the reliability of the plastics. However, their behavior is complicated and hard to predict. Since the retention forces after high temperature exposure of the press-fit metal collar were needed to be guaranteed in the engine room circumference, we studied the “creep” behavior of the fiber reinforced plastic materials. The retention forces of the press-fit metal collar were measured to study the “creep” behavior of the fiber reinforced plastic materials, then we used the Finite-Element-method Analysis (FEA) to replicate the “creep” behavior to predict the retention forces. The predicted retention forces were in good agreement with the experimental ones. The effects of the fiber orientation on the long term reliability of the press-fit component are also discussed.

Key Words: creep; fibers; injection molding; nylon

1.はじめに

繊維強化樹脂材は,例えば自動車(1)や飛行機(2)等の輸送機器の構造材に多用され,軽量高剛性に代表される多くの利点を持っている.従来から使われてきた金属材に替えて強化樹脂を使用することにより輸送機器の重量軽減だけでなく燃費向上に貢献できる.一方,輸送機器は運用上高温環境にさらされる場合があり,樹脂材にはクリープ変形発生の可能性がある(3),(4).従って繊維強化樹脂製品の長期信頼性を保証する上でクリープ変形への知識は欠かすことのできないものである.しかしながら,クリープ挙動は非常に複雑なため予測することが難しい.樹脂材のクリープ特性は環境温度や湿度,形状にも影響される時間依存性があることが知られている(5)-(11).さらに,繊維強化樹脂材の特性は配向や長さなどの繊維の特性に強く依存している(12)-(14).こういった複雑な繊維強化樹脂材の粘弾性特性を理解し予測するために,FEAが広く使われて

論文

大 道   渉*1 江 口 和 輝*2

Wataru DAIDO Kazuteru EGUCHI

いる(15)-(17).特に均質化法を用いた解析は樹脂複合材非線形域での応力/歪場を正しく表現している(18).この論文ではFEAを用いて繊維強化樹脂製品のクリープを予測する一つの手法について述べる.対象は繊維強化ナイロン6樹脂製品フランジ部の金属カラー圧入部分である.フランジ穴に金属のカラーを圧入した後高温にさらすと,金属カラーと樹脂製品間の接圧は緩和していく.この緩和をクリープ変形による接圧減少と考えて解析を試みた.クリープ解析には材料に依存するクリープ物性値を先ず決定せねばならないが,製品と異なる条件で作られた試験片から得られた物性値は互いに異なる可能性があるので解析に使用すべきではない.今回は製品そのものから切り出された試験片を用いてそれらを決定し解析を行った.さらに,配向の異なる繊維強化ナイロン6材から求めたクリープ物性値を用いて繊維配向が圧入部品の長期信頼性に与える影響を解析し検討を行った.

*1開発本部第二開発部  *2開発本部第八開発部

※2012年8月31日受付,TranslatedandreprintedwithpermissionfromJournalofAppliedPolymerScience,Vol.124,4213-4221(2012),DOI10.1002/app.35393©2011WileyPeriodicals,Inc.

-32-

ガラス繊維強化ナイロン6製品のクリープ挙動

前の領域は遷移クリープ領域と呼ばれる.繊維強化ナイロン6製品のクリープ特性は

FEAを用い δ - t曲線から求められる.図1(b)にクリープ特性の詳細をまとめる.まず,弾性率(E)が δ - t曲線の弾性部分(δ e)により決定される.形状要素を含んだ弾性変位 δ eをFEAで再現し,Eを決定する.活性化エネルギー⊿Hは応力 σを等しくし,

異なる温度 tにてクリープ挙動を求める.夫々の温度でのクリープ速度を(2),(3)式に代入した二つの式の比より⊿H(4)が求まる.

dεc

dtA exp

∆HRT

σnmt m –1= –T= T1 1

(2)

dεc

dtA exp

∆HRT

σnmt m –1= –T= T2 2

(3)

∆H = lndεc dt T= T1

dεc dt T= T2

T1T2

T1 T2R

– (4)

同様に,応力指数 nは等しい温度で異なる荷重でのクリープ速度の比より求まる.σ1,σ2に対する dεc/dtは次式で与えられる.

dεc

dtA exp

∆HRT

σnmt m –1= –σ= σ1

1 (5)

dεc

dtA exp

∆HRT

σnmt m –1= –σ= σ2

2 (6)

n =ln dεc dt σ= σ2

ln dεc dt σ= σ1

ln σ2 ln σ1–

–(7)

2.クリープ特性の決定

樹脂材のクリープ変形は時間依存であり(4)-(7),以下の式で記述できることは広く知られている(19),(20).

dεc

dtA exp

∆HRT

σnmt m –1= – (1)

ここで,εcはクリープ歪,tは時間,Rはガス定数(=8.31447J/mol),Tは絶対温度そしてσは応力である.Aが速度定数,ΔHが活性化エネルギー,nが応力指標,mが時間指標であり,この四つの定数が材料に依存し,材料のクリープ挙動を記述するために決定が必要なクリープ物性値である.図1(a) に示した温度 tでの円筒形資料に対

する一定荷重を作用させて得られる変位について考える.この試料はその中心線に沿って負荷(P)がかけられている.試料の直径は負荷の有無により夫々d,d ' となる.負荷印加点の変位 δ は δ =d-d ' で表される.図1(a) のグラフは樹脂材の変位 δ と時間 tの関係を表しており,δ eと δ cは弾性変形とクリープ変形を夫々表している.負荷印加直後に試料は弾性変形し,クリー

プ変形も開始される.クリープ速度はδ と tの関係の傾き(dδ c/dt)により決定される.傾きは時間とともに徐々に小さくなりやがて一定になる.傾きの一定の領域は定常クリープ領域と呼ばれ,傾きが変化する定常クリープ領域

Figure 1 (a) Schematic of the constant load creep test and creep curve. (b) Details of the determination of the creep properties.

a b

P

P

d'

Time0

①Transient creep region②Steady creep region

① ②①②③④

E

n

m, A

∆H

Parameter FEA

Yes

Yes

Yes

No (4)

(7)

Eq.= d – d'δ δ

-33-

ケーヒン技報 Vol.1 (2012)

σ1と σ2の値は FEA で決定される.試料への負荷印加時に働くミーゼス応力の最大値をσ1,σ2として使用する.パラメータmは材料の時間依存性を表現し,

クリープ挙動の初期の段階の遷移領域からから影響が見える.図1(a) にあるように,ε cは時間に対して急速に増加し定常状態に達する.mが小さいと定常状態に達する時間が短くなる.一方,m が大きいと定常状態に達するのに長時間を要する材料となる.即ち mの大きさはクリープが定常状態に達するまでの遷移クリープに時間より決定できる.しかしながら定常クリープの挙動と遷移クリープの挙動は mに依存するので,mと Aは次に定義するように同時の求める必要がある.残った定数 A

は定常クリープ速度に影響するが,FEAにより決定できる.最初に A(dεc/dt|FEA)を仮定して定常クリープ域の dεc/dtを FEA にて決定する.Aは以下のように決定できる.

A =dεc dt EXP

dεc dt FEA

A FEA (8)

ここで,dεc /dt|EXPは実験で求めフィッティングで Aと mを最適化する.すべてのクリープ定数,A,ΔH,nそして mが以上の手順で求められる.

3.実験手順と数値解析

図2(a) は今回の研究に用いた繊維強化ナイロン6(東レ株式会社製 CM1016G-30)製品の写真である.圧入孔は部分的に補強してある.この材料は重量比で 30% のガラス繊維を含む.圧入孔は上側の直径が大きい傾斜構造をしている.内径は上部で 14.9 mm,下部で14.7 mm 高さは 20.1 mm である.この穴に上部から圧入される金属カラー(図2(b))は機械構造用鋼(S35C)で作られる.外径および内径は夫々15.0mm,8.6mm である.図3(a) は今回の研究に用いたクリープテス

ト装置である.試験片のクリープ特性を決定するために図2(a) の試験片から円筒形のサンプルを切り出した[図3(b)].サンプルの厚さは 3mm,壁の厚さは 1mm である.クリープテスト装置は錘の荷重をワイヤーとプーリーを使用して伝達し,サンプルに一定の荷重を印加できるよう工夫されており,全体を恒温槽内部に設置することにより異なる温度条件での実験も可能である.今回は2種の温度条件と2種の荷重条件を持つ3種類のクリープデータを取得した.荷重箇所の変位は図3(b)の B 平面にて恒温槽の観察窓を介してレーザ変位計により計測した.試験温度は 70℃と120℃にて実施した.繊維強化ナイロン6製品のフィラー配向

の影響を見るためナイロン6の配向の異なる3種の短冊サンプルを準備した.短冊サンプルの長さは 100mm,幅は 5mm 厚さは 3mmであり,図2(a ) の試験片と同様に重量比で

Figure 2 (a) Top and bottom views of the test product. The test product was made of nylon 6 and contained about 30 wt % glass fibers. (b) Metal collar.

a

Top Bottom

20 mm Injection gate location(Size: 2 × 4 mm)

b

15.08.6

19.8

Slide

Weight

aWirePulley

A

50 mm

b

Cut out

Sample

Load

B 20 mm

Figure 3 (a) Overall view of the creep test apparatus. (b) Details of A in (a). Here, the displacement at a point on plane B was measured by a laser displacement sensor.

-34-

ガラス繊維強化ナイロン6製品のクリープ挙動

30% のガラス繊維を含む.この実験では3点曲げクリープテストを図3(a) のクリープテスト装置を曲げ試験用に変更して行った.3点曲げの支点間距離は 87.2 mm とした.クリープテストは 70℃と 120℃で行った.図4は荷重印加近辺の3種サンプルの CT 画像であり3点曲げの荷重方向は図中の矢印で示してある.図より夫々のサンプルで配向が異なることがわかる.短冊サンプル中,繊維配向が加重と垂直になっている物を FV サンプル[図4(a)],ランダムになっている物をFRサンプル[図4(b)],平行になっている物を FP サンプル[図4(c)]と名づけた.フィラーのない非強化ナイロン6の短冊サンプルも用意した.製品形状の圧入力,保持力測定手法を図5

に示す.金属カラーを圧入孔に万能試験機を用いて 10 mm/min にて挿入し荷重と変位の関係を記録した[図5(a)].圧入後の試験片は70℃または 120℃にて 2,6及び 24時間恒温槽中に放置した.24時間の放置後恒温槽から取り出し室温まで冷却した.その後抜き出し試験を実施した[図5(b)].抜き出し試験の試験装置と抜き出し条件は挿入時と同じである.抜き出し中の最大荷重を保持力と定義し,各

条件のサンプルについて測定した.繊維強化ナイロン6製品から切り出したテ

ストサンプルのクリープ挙動の解析を非線形構造解析ソフトMARC(MSCSoftwareCorp.,SantaAna, CA)を使用して行った.クリープ解析の前に Eを確定する必要がある.クリープが起きる前の初期変形は実測できるので,円筒状サンプルの中心部の変形をFEAで再現しフィッティングより Eを求めた.この Eの値を用いて前のセクションで述べたクリープ解析を実施した.図6は圧入部のクリープ解析に用いる FE

のモデルを表す.この解析では 1/2 モデルを使用した.また,金属カラーの Eは繊維強化ナ

Figure 5 Stress relaxation test: (a) insertion of the metal collar into the hole in the test product and (b) the pulling of the collar out of the hole.

1.5

1

0.5

0

Loa

d (k

N) 0.4

0.2

0

Loa

d (k

N)

Displacement (mm)20151050 25 20151050 25

Displacement (mm)

Retention force

Figure 4 Computed tomography images of the (a) FV, (b) FR, and (c) FP samples. The arrow indicates the direction of the applied load in the three-point-bending creep test.

a b cLoad

500 µm 500 µm 500 µm

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ケーヒン技報 Vol.1 (2012)

イロン6製品のそれより十分大きいので,金属カラーは剛体とみなした.繊維強化樹脂のクリープ定数は切り出した円筒形サンプルから求めた物を使用した.次のセクションで議論するように繊維強化樹脂製品のクリープ挙動は異方性を示すので荷重方向が問題になる.ここで,円筒形サンプルのクリープ挙動は半径方向への圧縮テストで求められた.また,圧入製品も金属カラーによる半径方向の荷重にさらされるので,荷重方向は同一とみなすことが出来る.従って,実際の製品の圧入解析は円筒形サンプルから求めたクリープ定数により解析できる.金属カラーの垂直抗力を F保持力を Pとす

ると

P = µF (9)

ここで μは金属カラーと樹脂製品間の摩擦係数である.従って,時間依存,温度依存の F

の挙動は μが一定であれば Pと一致する.摩擦がない場合に金属カラーに働く x軸方向のの反作用力 Fxを FEA により求め,Fを次式のように決定した.

F =2πFx

π0 sin θdθ∫ (10)

θは x軸と金属カラーと垂直な方向とのなす角度である.この解析の中ではすべての構成物のポアソン比は 0.3 で一定とした.

4.実験結果と考察

4-1 クリープ特性図7(a ) は円筒形サンプルの温度と荷重の

3種の組合せの圧縮クリープテストにより求めた時間と変位の関係とその挙動を非線形FEAにより再現したものを示す.実験結果の非線形 FEA による再現はこの論文に記述した手順により行った.FEAの結果は実験結果をよく再現している.この事実は試験片のクリープ定数が正しく決定されたことを示している.決定されたクリープ定数をテーブルⅠに示した.

Figure 6 FE model used in this study.

Plane A:

Plane B:

Line C:

Line D:

= 0

= 0

= 0

= 0

x

z

x

y

δ

δ

δ

δ

Figure 7 (a) Creep curves for the TP sample obtained from the experiment (plot) and from FEA (curve) after fitting. (b) Examples of the creep curves for the FP sample together with the corresponding results of FEA after fitting.

a

Exp.

FEA

(393K, 9.8N)

(393K, 9.8N)

(393K, 4.9N)

20 25151050

2

1

3

0

Time (hour)

Dis

plac

emen

t (m

m)

b

Exp.

FEA

(393K, 4.9N)

(393K, 4.9N)

(393K, 3.1N)

20 25151050

8

6

4

2

10

0

Time (hour)

Dis

plac

emen

t (m

m)

Table I Creep Properties of the TP Cut from the Product

Sample A (Pa-n s-m) n ∆H (kJ/mol) m

TP 1.27 × 10-12 1.72 25.1 0.1

-36-

ガラス繊維強化ナイロン6製品のクリープ挙動

n ∆H (kJ/mol) mSample

FV 7.51 × 10-18

FR 7.04 × 10-11 1.303.18

2.18

2.41

0.10.1

0.1

0.1

16.516.6

15.6

4.04FP 2.01 × 10-28

Nylon 6 2.07 × 10-19

A (Pa-n s-m)

Table II Creep Properties of the Beam Samples with Different Fiber Orientations

Figure 8 Creep properties of the various samples. (a) A, (b) n, (c) ΔH, and (d) m.

a b

dc

FV FR FP Nylon 6

FV FR FP Nylon 6 FV FR FP Nylon 6

FV FR FP Nylon 6

10-10

10-20

100

10-30

20

10

30

0

nm

∆H (

kj/m

ol)

A (

Pa-ns-m

)

0.1

0.2

0

3

2

1

4

0

Figure 9 (a) Behavior of the retention force against time at various temperatures. (b) Comparison of the experimental (plot) and FEA (curve) results for the normalized retention force.

a

343K

393K

423K

343K

393K

423K

20 25151050

1

0.5

1.5

0

Time (hour)

b

Exp.

FEA

20 25151050

Time (hour)

0.8

0.6

0.4

0.2

1

0

Pull-

out l

oad

(kN

)N

orm

aliz

ed p

ull-

out l

oad

Initial value

図7(b ) はクリープ挙動曲線の例を示す,これは FP サンプルの時間と変位の関係とフィッティング後のFEA結果の例である.すべての温度と荷重の組合せで FEA で算出されたクリープ挙動は実験の挙動とよく一致している.FVサンプル及びFRサンプルにおいても実験によって求めた挙動と FEA により計算した挙動はよく一致した.これは非線形FEAが良く成立しており,短冊サンプルのクリープ定数も正確に決定されていることを示している.FV,FR,FP 各サンプルおよび強化繊維を

含まない樹脂サンプルのクリープ定数をテーブルⅡおよび図8にまとめておく.試験したサンプル中FPサンプルの nが最大であるが,これはすべての短冊サンプル中 FP サンプルがもっとも応力に影響されることを表している.一方,ΔHはクリープの温度依存性の高さを表すが,すべての繊維強化ナイロン6製の短冊サンプルでほぼ同様の特性であり,これは ΔHが繊維配向によらないことを示している.

A と n は繊維配向により変化する.テーブ

ルⅡに示した定数はテーブルⅠの試験片と大きく異なっている.これは繊維強化ナイロン6製品のクリープ定数は実際の製品から取得すべきことを示している.

4-2 保持力検討圧入部品(図2)の様々な温度での放置時間

と保持力の関係を図9(a) に示した.すべての例で保持力は初期に低下し時間とともにほとんど一定値に至る.保持力の初期値は 1.5 kNであったが 70℃にて 24時間にて約0.8 kN の一定値に低下した.一方保持力の減少は高温でより顕著であり,120℃と 150℃で 24時間にて低下した保持力は夫々0.4 kN,0.2 kN であった.この保持力の温度依存は繊維強化ナイロン6製品のクリープによっている.図9(b) は FEA 及び実験により求めた 70,

120,150℃に於ける正規化保持力を示す.こ

-37-

ケーヒン技報 Vol.1 (2012)

こで正規化保持力とは P/P0 と定義する,ただし P0 は負荷の初期値である.Fを決定するための FEA においてテーブルⅠに示したクリープ定数を使用している.繊維強化ナイロン6製品が高い温度にさらさられた場合は,その製品の Eの値はより高い温度での値であるとみなした.これは内部応力低下による緩和弾性率を便宜的に考慮した(22).図よりFEAで求めた様々な温度での正規化された応力の低下は実験結果とよく一致していることがわかる.これはFEAにより保持力の予測ができること,またここで求めたクリープ定数の値,さらにその手法の実用性を示している.

4-3 応力低下に関する繊維配向の影響前の節で取り上げた圧入部品における保持

力低下に対する繊維配向の効果を考えてみよう.図10(a-c) は金属カラーとナイロン6製品からなる FV,FR 及び FP サンプルのクリープ挙動を正規化した応力と時間の関係を表す.70,120,150℃の三種の温度にて実験した.全てのケースでFEAに使用したモデルは同一であるが製品の保持力を正規化した値は夫々異なった.これは荷重に対するナイロン6製品の強化

繊維の方向が圧入部品の保持力低下に大きく関連していることを示している.例えば,短冊サンプルの中でもっとも大きな nを持ったFP製品の,正規化保持力はすべての温度範囲で初期の段階から大きく値を下げる.この場合,

圧入部品の応力低下は温度よりも応力におおいに関連しているといえる.図11(a) は温度とその温度に 24時間暴露し

た場合の正規化保持力との関連を示す.圧入製品における正規化保持力の相違はより低い温度で顕著になる.図11(b) は初期と 70℃と150℃にて 24時間経過後の Fと Eの関連を表す.150℃に曝された圧入部品の場合,繊維強化されたもっとも Eの大きなナイロン6製品が今回考慮した試料の中でもっとも大きな F

Figure 10 Behavior of the normalized retention force of artificial products predicted by FEA with the assumption of the creep properties of the (a) FV, (b) FR, and (C) FP samples.

0.8

0.6

0.4

0.2

1

0Nor

mal

ized

ret

entio

n fo

rce

20 25151050Time (hour)

a

343K393K

423K

0.8

0.6

0.4

0.2

1

0Nor

mal

ized

ret

entio

n fo

rce

20 25151050Time (hour)

b

343K

393K

423K

0.8

0.6

0.4

0.2

1

0Nor

mal

ized

ret

entio

n fo

rce

20 25151050Time (hour)

c

343K393K

423K

Figure 11 (a) Normalized retention force after 24 h versus temperature. (b) Relationship between F after 24 h and E.

10 1286420

Young's modulus (GPa)

Temperature (K)

0.8

0.6

0.4

0.2

1

0

Nor

mal

ized

ret

entio

n fo

rce

60

40

20

80

0

Rad

ial f

orce

(kN

)

450400350300

a

b

TP

FR

FV

FP

Before

After (343K)After (423K)

-38-

ガラス繊維強化ナイロン6製品のクリープ挙動

ニクス専攻(当時)の伊藤雄介氏のご尽力を得た.加えて東北大学客員教授の仲野是克氏および弊社の宇都宮次郎氏からご助言を頂いた.ここに付記し,それぞれ謝意を表する.

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の値を示した.一方,70℃に曝された製品では,繊維強化された2番目に大きな Eを示す物が今回の試料の中でもっとも大きな Fの値を示した.有限要素法の解析結果は初期の大きな E による大きな応力場が 70℃での圧入製品の応力間を促進していると示唆している.別な言葉で言えば,繊維強化ナイロン6の圧入製品では大きな繊維強化が常に長期信頼性を改善するわけではない.

5.結論

繊維強化ナイロン6製品のクリープ定数をFEAを用いて決定する方法を提案した.圧縮または三点曲げクリープ試験のデータとFEA解析結果とのフィッティングを行うことにより円筒形及び短冊形の繊維強化ナイロン6製品試験片のクリープ定数を決定した.そのクリープ定数を用いて繊維強化ナイロン6製品の貫通穴に圧入した金属カラーの保持力低下をもたらす応力低下の解析を実施した.その結果,高温下中ごく短時間で応力低下による保持力低下が起こるが(遷移クリープ領域),その低下速度は徐々に小さくなり(定常クリープ領域),最終的に長期に渡り保持力を確保することが出来ることが FEA で確認できた.また,大きな Eを持つ強い繊維強化ナイロン6製品はより大きな応力場を製品中に生じさせるので,しばしば圧入製品の応力低下を促進する場合があることがわかった.この理由としてはクリープ挙動とは異なる内部破壊(繊維の割れ,繊維の抜けなど)が考えられ,今後,検討の必要性がある.

謝辞

本研究にあたり,共同で研究を行った東北大学の燈明泰成准教授から多大なるご指導ご鞭撻を頂いた.また,シミュレーション遂行にあたり,東北大学大学院工学研究科ナノメカ

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ケーヒン技報 Vol.1 (2012)

(17)Wang,H.W.;Zhou,H.W.;Peng,R.D.;Mishnaevsky,L.,Jr.ComposSciTechnol2011,71,980.

(18)Ohno,N.;Wu,X.;Matsuda,T.IntJMechSci2000,42,1519.

(19)Hult,J.A.H.InEngineeringStructures;Blaisdell:Waltham,MA,1966.

(20)MSCSoftwareCorp. InMarcUser’sGuide;MSC:SantaAna,

(21)Tohmyoh, H.; Yamanobe, K.; Saka,M.;Utsunomiya,J.;Nakamura,T.;Nakano,Y.JElectronPackag2008,130,31007

(22)Rogozinsky, A. K.; Bazhenov, S. L.Polymer1992,33,1391.

著 者

大 道  渉 江 口 和 輝

これまで実製品での評価しか出来なかった領域をFEAで再現し,設計段階での検討が可能となり,より短期間で高品質,高信頼性の製品を提供出来るようになると考える.樹脂材の挙動はまだ不明瞭な部分が多く,今後もより高精度に製品設計が出来る技法確立にチャレンジしていきたい.(大道)