60
1 §E. ヘクシャー=オーリンモデル 複数生産要素 国間で要素賦存量の差異 国間で同一生産技術でも (i.e., 技術的に同質な国間でも) 貿易が起こる 前半2×2×2モデルでの一般均衡の導出 後半:小国解放経済モデル(国際貿易の主要2定理の紹介) 参考文献: 前半: Helpman and Krugman (1985, Ch.1) 後半: Jones (1965), 伊藤・大山 (1985, Ch.3)

E. ヘクシャー=オーリンモデル...1 E. ヘクシャー=オーリンモデル •複数生産要素 •国間で要素賦存量の差異 国間で同一生産技術でも (i.e.,

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1

§E. ヘクシャー=オーリンモデル• 複数生産要素• 国間で要素賦存量の差異

国間で同一生産技術でも (i.e., 技術的に同質な国間でも) 貿易が起こる

• 前半:2×2×2モデルでの一般均衡の導出• 後半:小国解放経済モデル(国際貿易の主要2定理の紹介)

参考文献:

前半: Helpman and Krugman (1985, Ch.1)

後半: Jones (1965), 伊藤・大山 (1985, Ch.3)

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2

§E.1. 仮定

仮定E.1 (2×2×2) 2国×2財×2要素仮定E.2 (完全競争)仮定E.3 (要素賦存量所与)仮定E.4 (自由貿易)仮定E.5 (要素の国際移動不可)

国A 国B

貿易

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3

>>>>

限界代替率一定

仮定E.6 (共通の生産関数)

(i) 収穫一定, (ii) 強凹, (iii) 各要素不可欠

ホモセティック

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4

等量曲線(産出量=1):

単位量生産費用 (要素価格所与:     )

一意に決定 (強凹性)

任意産出量に対する最適投入量:

投入係数の決定

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5

仮定E.7 (共通の効用関数)(i) ホモセティック, (ii) 強準凹 (i.e., 強単調), (iii) 各財の消費不可欠

単位所得下の予算集合

一意に決定 (強準凹性)

任意所得水準 I 下の需要関数:

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6

※ 均衡における生産財・要素価格

資源制約に不整合:

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7

仮定E.8 (不完全特化) 要素賦存比率に極端な差無し

・国間で要素価格の均等化 → 比較優位無し i.e., 発展水準の似た国間での水平貿易のメカニズム・(要素賦存比率が極端に違う場合 → 完全特化)

仮定E.2 (完全競争) ⇒ ゼロ利潤

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8

統合経済アプローチ

統合経済:要素が(仮想的に)国際移動自由とする

統合経済の均衡の存在・一意性の確立

(要素移動不可能な)国際経済均衡 = (配分以外の)統合経済均衡

世界/国際経済均衡の存在・一意性の確立

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9

13未知数 (価格は相対値のみ)

生産財価格:生産要素価格:生産量:

消費量:}

(i) 資源制約 (生産要素の需給均衡)+生産費用最小化 (4式)

(ii) 効用最大化: xC� = φ(p∗)I∗�

�I∗� ≡ p∗ · xP

aK1(ω∗� )

aL1(ω∗� )

xP1� +

aK2(ω∗� )

aL2(ω∗� )

xP2� =

K�

L�

(iii) 財需給均衡:

(iv) 自由参入・退出: pi = c(ω∗A) = ci(ω

∗B)

(4式) (2式)

(4式)

※ ワルラス法則:14式中13式独立

定義E.1 (世界均衡 - world equilibrium Ver.1)

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10

世界均衡導出の手順

ステップ 1:不完全特化 → 要素価格均等化定理

ステップ 2:統合経済均衡の存在と一意性

KA, LA KB, LB

KA + KB, LA + LB

国A 国B

統合経済

ステップ 3:世界均衡の存在と一意性 (統合経済均衡との一致)

ステップ 4:生産・消費・貿易パターン

ステップ 5:貿易の利益

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11

:等費用線

費用最小化投入ベクトル

ステップ 1:要素価格均等化定理

ホモセティック技術

r�K + w�L = ci(ω�)

Fi(K, L) = 1

ci(ω�)/r�

ci(ω�)/w�

要素価格比の確定:

各財の要素投入量比確定: ki(ω�)

θ�(ω�) = w�/r�

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12

F2(K, L) = 1/p2

財価格 p

単位価値等量曲線の確定:

要素価格比の確定: θ�(p)

θ�(p)

各財の要素投入量比確定:

Fi(K, L) = 1/pi

ki(p)

k1(p)k2(p)

両財で同じ利潤水準

F1(K, L) = 1/p1

不完全特化:

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各要素価格の確定

�θ(p) ≡ θA(p) = θB(p)ki(p) ≡ kiA(p) = kiB(p)

補題E.1 (要素価格・投入量比の一致)

ゼロ利潤条件

k2(p)k1(p) F2(K, L) = 1/p2

F1(K, L) = 1/p1

1/r(p)

1/w(p)θ(p)

国間で共通の生産技術・財価格 ⇒ 各国共通の単位価値等量曲線

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14

θ(p)

aKi(p)

aLi(p)

xi = 1

�p1p2

�=

�aK1(p) aL1(p)aK2(p) aL2(p)

��rw

�rw

�=

�aK1(p) aL1(p)aK2(p) aL2(p)

�−1 � p1p2

ゼロ利潤条件

pi/w(p)

pi/r(p)両国共通

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15

|A| ≡����

aK1(p) aL1(p)aK2(p) aL2(p)

���� �= 0

仮定E.9 (要素集約度非逆転): k1(p) > k2(p) ∀p > 0

要素集約度の逆転が無ければ常に非ゼロ

= aK1aL2 − aK2aL1

= aL1aL2

�aK1aL1

− aK2aL2

� �� �

i.e., 財1は任意の価格下でより資本集約的

wA = wB, rA = rB

定理E.1 (要素価格均等化定理 - factor price equalization theorem)

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16

完全特化の場合

最小化費用に差

c1� < c2�

π1� = 1 − c1� > π2� = 1 − c2�

単位価値産出量当たり利潤:

均衡において財2は生産されない

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17

生産財価格:生産要素価格:生産量:消費量:

ω(p) ≡ (r(p), w(p))

�aK1(p)aL1(p)

�xP

1j +

�aK2(p)aL2(p)

�xP

2j =

�KjLj

�(i) 資源制約+生産費用最小化+ゼロ利潤(Ver.1-iv) (4式)

(ii) 効用最大化: xC� = φ(p∗)I∗�

�I∗� ≡ p∗ · xP

(iii) 財需給均衡:

(4式) (2式)

定義E.2 (世界均衡 - world equilibrium Ver.2)

:要素均等化定理未知数:9{

13-4(iv)

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ステップ 2:統合経済均衡の存在と一意性

�aK1(ω)aL1(ω)

��xP

1A + xP1B

� �� �=xP

1

+

�aK2(ω)aL2(ω)

��xP

2A + xP2B

� �� �=xP

2

=

�KA + KBLA + LB

�(i) 資源制約

仮定E.1’ (1×2×2) 1国×2財×2要素仮定E.2 (完全競争)仮定E.3 (要素賦存量所与)×仮定E.4 (自由貿易)×仮定E.5 (要素の国際移動不可)仮定E.6 (生産技術)仮定E.7 (選好)×仮定E.8 (不完全特化)仮定E.9 (要素集約度非逆転)

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19

生産財価格:生産要素価格:

生産量:

消費量:

ω ≡ (r, w)

xP ≡�

xP1 , xP

2

xC ≡�

xC1 , xC

2

�aK1(ω)aL1(ω)

�xP

1 +

�aK2(ω)aL2(ω)

�xP

2 =

�KA + KBLA + LB

xC = (φ1(p), φ2(p)) IW

�IW ≡ p · xP

xP = xC�i.e., xP

i = xCi , i = 1, 2

pi = raKi(ω) + waLi(ω)

(i) 資源制約:

(ii) 効用最大化:

(iii) 財需給均衡:

(iv) 自由参入・退出:

{未知数:7

(2式)

(2式)

(2式)

(2式)

定義E.3 (統合経済均衡 Ver. 1)

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1/r(p)

1/w(p)

xo1

xo2

θ(p)k1(p)

k2(p)

a1(p) a2(p)· ·p1/r(p)

p1/w(p) p2/w(p)

p2/r(p)

x2 = 1

x1 = 1

仮定E.9 (要素集約度非逆転):

k1(p) > k2(p) ∀p > 0

財価格所与

(i) 資源制約 + (iv) ゼロ利潤:

要素価格の確定:�

rw

�=

�aK1(p) aL1(p)aK2(p) aL2(p)

�−1 � p1p2

(ii) 効用最大化 + (iii) 財需給均衡: x ≡ xP = xC = φ(p)IW

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生産財価格:ω(p) ≡ (r(p), w(p))生産要素価格:x ≡ (x1, x2)生産・消費量:

{未知数:3

�aK1(p)aL1(p)

�x1 +

�aK2(p)aL2(p)

�x2 =

�KA + KBLA + LB

�(i) 資源制約 (Ver.1-i, iv) (2式):

(ii) 財需給均衡 (Ver.1-ii, iii) (2式):x = (φ1(p), φ2(p)) IW

定義E.4 (統合経済均衡 Ver. 2)

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(ii) 財価格所与 → 財供給・消費量の導出

xPi = φi(p)IW(≡ xC

i )

xP1

xP2=

φ1(p)φ2(p)総産出量比: :単位所得当たり需要比

需給均衡条件:

(必要性:自明)

十分性:xP

1 − φ1 IW = xP1 − φ1

�p1xP

1 + p2xP2

=φ1φ2

xP2 − φ1

�p1

φ1φ2

xP2 + p2xP

2

� �∵ xP

1 =φ1φ2

xP2

=φ1φ2

xP2 (1 − p1φ1 − p2φ2)� �� �

=0

= 0

証明:

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(i) 資源制約

財価格所与:p

供給量比:xP

1 (p)xP

2 (p)=

φ1(p)φ2(p)

(ii) 財需給均衡

:需要量比

p の決定

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24

財1の要素投入・産出量

財2の要素投入・

産出量

財価格 p 所与下での供給量の決定

)(1 px

)(2 px

)(1 pk

)(2 pk

)(2 pK

)(1 pK

p )(ȟ

)(2 pL

)(1 pL

※ 投入量・産出量∝OiQ

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25

財価格 p の変化に伴う供給量の変化

資本集約財1の価格⤴:

(元の要素価格下で) 利潤機会

資本集約財1の産出量⤴

財2→1への要素移動

資本レンタルの相対的⤴

労働集約度⤴

p1 → p�1

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26

K

L

労働集約度⤴

労働集約度⤴財1供給量⤴

財価格 p の変化に伴う供給量の変化

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27

財価格 p の変化に伴う需要量の変化

1ホモセティック・強準凹効用関数

財1の価格⤴: p1 → p�1

財1の需要量⤵:�

φ1(p) > φ1(p�)φ2(p) < φ2(p�)

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28

φ1/φ2

x1/x2p1

O

0

仮定E.7(選好) (i) ホモセティック, (ii) 強準凹, (iii) 各財の消費不可欠

仮定E.6 (生産技術) (i) 収穫一定, (ii) 強凹, (iii) 各要素不可欠

均衡の存在・一意性

x1/x2, φ1/φ2

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仮定E.1’ (1×2×2) 1国×2財×2要素仮定E.2 (完全競争)仮定E.3 (要素賦存量所与)仮定E.6 (生産技術)仮定E.7 (選好)仮定E.9 (要素集約度非逆転

(i) 統合経済均衡は一意に存在する。(ii) 均衡において両財とも生産される。

補題E.3 (統合経済均衡の存在と一意性)

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30

ステップ 3:世界均衡の存在と一意性

�aK1(p)aL1(p)

�xP

1j +

�aK2(p)aL2(p)

�xP

2j =

�KjLj

�(i) 資源制約

�aK1(p)aL1(p)

��xP

1A + xP1B

� �� �=xP

1

+

�aK2(p)aL2(p)

��xP

2A + xP2B

� �� �=xP

2

=

�KA + KBLA + LB

xP1 (p), xP

2 (p)

要素集約度非逆転

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31

xCi� = φi(p)I�

�≡ p · xP

xCi ≡ xC

iA + xCiB = φi(p) (IA + IB)

�≡ p · xP

xC1

xC2=

φ1(p)φ2(p)

xP1

xP2=

φ1(p)φ2(p)

xPi = xC

i

(ii) 効用最大化

(iii) 財需給均衡:

世界需要⇔ 統合経済の場合と同様の証明

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32

補題E.4 (世界均衡と統合経済均衡の一致)

生産財価格:生産要素価格:ω(p) ≡ (r(p), w(p))

仮定E.1-9

世界均衡:

xP ≡ xPA + xP

B =�

xP1A + xP

2A, xP1B + xP

2B

xC ≡ xCA + xC

B =�

xC1A + xC

2A, xC1B + xC

2B

�統合経済均衡:

{

{配分以外一致

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33

ステップ 4:生産・消費・貿易パターンの導出�p∗x∗i = xP

iA + xPiB = xC

iA + xCiB

AO

BO統合経済均衡値:

不完全特化(要素価格均等化(FPE)集合)

完全特化

完全特化

要素賦存点∈ FPE

不完全特化

要素価格均等化

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34

E

収穫一定技術 → 財の単位設定:

�x∗1 = OAQ∗

x∗2 = OAQ∗

生産パターンの決定:

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35

AL

BL

BK

AD

BD

E

C

生産点Eを通る等所得線r∗K + w∗L = I∗A

xC

1A

xC

1B

=φ1(p

∗)I∗A

φ1(p∗)I∗B

=I∗A

I∗B

=I∗A

/w∗

I∗B

/w∗

=OADA

OBDB

=OAC

OBC

=x

C

2A

xC

2B

:生産点

:消費点

消費パターンの決定

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36

E

C G

C A x 2

C A x 1

C B x 2

C B x 1

D A x 2

A O

B O

1AE1BE

2BE

2AE

国Aの財1輸出:

国Bの財2輸出:

:国Bの 財1輸入

:国Aの財2輸入

貿易と貿易の要素構成

国Aの資本純輸出

国Bの労働純輸出

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37

KALA

>KBLB

⇒xP

1AxP

2A>

xP1B

xP2B

⇒�

E1A > 0E2B > 0

ヘクシャー=オーリンの分業定理

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完全特化が起こる場合

価格 p の下で利潤最大化と整合する要素投入パターン

資本が相対的に豊富

)(1 pk)(2 pk

L

KE

AK

AL

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39

)(1 pk)(2 pk

L

KE

AK

AL

1/r�

1/r

1/w� 1/w

:完全特化

価格調整:資本レンタル⤵, 賃金⤴

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40A O

B O 国 Aは財1に完全特化 国 Aは両財を生産

国 Bは財2に完全特化

国 Bは両財を生産 両国とも不完全特化

要素価格均等化

xP1A

xP2A

>xP

1BxP

2B

�E1A > 0E2B > 0

�rA < rB

wA > wB

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41

生産要素の国際移動と要素価格均等化

E

ErA < rB

wA > wB

rA > rB

wA < wB

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42

ステップ 5:貿易の利益

自給自足下での国Aの均衡

自由貿易下での国Aの均衡

価格:

xA ≡ (xA1 , xA

2 )

x ≡ (x1, x2)

p ≡ (p1, p2), ω ≡ (r, w)

価格:消費量:

pA ≡ (pA1 , pA

2 ), ωA ≡ (rA, wA){

消費量:{

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43

p1xA1 + p2xA

2 ≤ c1(ω)xA1 + c2(ω)xA

2 [∵ pi ≤ ci(ω)]

= (r, w)

�aK1(ω) aK2(ω)aL1(ω) aL2(ω)

��xA

1xA

2

≤ (r, w)

�aK1(ωA) aK2(ωA)aL1(ωA) aL2(ωA)

��xA

1xA

2

= rK + wL= p1x1 + p2x2

(∵非正利潤)

(∵費用関数定義)

(∵資源制約)(∵ゼロ利潤)

(∵費用最小化)

補題*:自給自足下の均衡消費量は自由貿易均衡において購入可能

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44

uA < u均衡効用水準:自給自足経済: :自由貿易経済

e(p, uA) ≤ p1xA1 + p2xA

2

≤ p1x1 + p2x2

= e(p, u)

(∵支出関数定義)(∵補題*)(∵支出関数定義)

定理:貿易の利益

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貿易の利益(図説)

① 生産財変形曲線の凹性

··

変形曲線上の生産点

x1

x2

·xγ =12

�xα,+xβ

�xα

{xαi = Fi(Kα

i , Lαi )

xβi = Fi(K

βi , Lβ

i )

{:投入可能 ∵

1 + Kδ2 = K

Lδ1 + Lδ

2 = L

Kδi = 1

2

�Kα

i + Kβi

Lδi = 1

2

�Lα

i + Lβi

xδi ≡ Fi(Kδ

i , Lδi )

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(∵ 生産関数の凹性)

··

x1

x2

·xα

xβxγ

·

xδi ≡ Fi

�Kδ

i , Lδi

�≥ 1

2

�Fi (Kα

i , Lαi ) + Fi

�Kβ

i , Lβi

��

=12

�xα

i + xβi

�≡ xγ

i

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)(1 pk)(2 pk

L

K

··

xo1

xo2

EA

EB

同じ価格 p → 国A:財1の生産量が相対的に大国B:財2の生産量が相対的に大{

w/r

国Aが相対的に資本豊富な場合:KALA

>KBLB

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x1

x2

·

·国A

国B

//

//

国間の限界変形率の関係

x1

x2

·

·国A

国B

·pA1 /pA

2

pB1 /pB

2

pA1 /pA

2 < pB1 /pB

2

UA

UB

自給自足経済均衡※ ホモセティック効用関数

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x1

x2

·

·国A

国B

·UA

UB·

·

·p1/p2

輸出

輸出

輸入

輸入

p1/p2

pA1 /pA

2 < p1/p2 < pB1 /pB

2

自由貿易経済

国A (資本豊富):資本集約財の輸出国B (労働豊富):労働集約財の輸出{

両国とも効用水準上昇

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§E.7. 拡大効果

設定:小国開放経済(small open economy)

「小国」自国における財価格は国際価格として外生的に与えられる「開放」外国と自由に貿易を行える

仮定E.1’’ (2×2×2) 小国・外国×2財×2要素仮定E.2 (完全競争)仮定E.3’ (要素賦存量所与) K, L仮定E.4 (自由貿易)仮定E.5 (要素の国際移動不可)仮定E.6 (生産技術)仮定E.7 (効用関数)仮定E.8 (不完全特化)仮定E.9 (要素集約度非逆転)

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分析準備

資源制約:

不完全特化+ゼロ利潤:

要素投入量シェア:

要素生産費用シェア:

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均衡条件の「Jones流」整理:

資本の資源制約条件:全微分

両辺 K で割る

(変化率: )

daK1x1 + aK1dx1 + daK2x2 + aK2dx2 = dK

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資源制約・ゼロ利潤条件の「Jones流」整理:

= 0

∵費用最小化条件:

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仮定E.9 (要素集約度非逆転)

∴投入量・費用とも財1は資本シェアが大

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§E.7.1. リプチンスキー定理

小国開放経済:

[∵ホモセティック生産関数]

= 0

∵要素集約度非逆転

拡大

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図説(      の場合):

Q

Q

1 O

2 O

1 K

2 K

1 L

2 L

1 O ’

2 O ’

労働賦存量の増加分

==

=-w/r

Z 要素投入比率不変

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=

=

U

T

F

S

M N

Z

1 x

2 x O

u

uF

P = C消費

生産

超過需要超過供給

この範囲で均衡

要素賦存量変化の一般均衡効果

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ストルパー=サミュエルソン定理

∵要素集約度非逆転

∵要素集約度非逆転

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要素価格フロンティアを用いた図説:

単位産出量当たりの等費用曲線

> > >

> > > >

>

O r

w p�2

p2=

OF

OE<

OG�

OG=

w�

w

r�

r=

OH�

OH< 1

① 要素価格フロンティアのシフト

② 短期の調整(産業内の価格調整)

③ 長期の調整(産業間の要素移動・価格調整)賃金率上昇

資本レンタル下落

�p2 > �p1 = 0

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単位価値等量曲線を用いた図説: �p2 > �p1 = 0

L

K

O AB C

1/r�

1/rxo

1

xo2

xo2�

1/w1/w�

E

D

p�2

p2=

OA

OC<

OA

OB=

w�

w

r�

r=

OD

OE< 1