23
卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置換ジフルオロアルケンの合成法 理工学群 化学類 指導教員 市川 淳士 山田 淳史 学籍番号 201210943

卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

卒業論文

ジチオエステルのジフルオロメチレン化による

硫黄置換ジフルオロアルケンの合成法 理工学群 化学類

指導教員 市川 淳士 氏 名 山田 淳史 学籍番号 201210943

Page 2: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

目次

第一章 序 1

第二章 硫黄置換ジフルオロアルケンの合成

第一節 ジチオエステルの合成 6

第二節 条件検討 7

第三節 反応機構研究 9

第四節 硫黄置換ジフルオロアルケンの合成 11

第五節 従来のカルベン発生法との比較検討 13

総括 14

実験項 15

参考文献 17

謝辞 18

Page 3: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

1

第一章 序

1,1-ジフルオロアルケンは、フッ素の電子的効果により特徴的な二重結合を有する。すな

わち、二重結合のπ電子とフッ素原子上の非共有電子対との静電反発により、フッ素原子

のα位の炭素上は電子不足に、β位の炭素上は逆に電子豊富となり、大きな分極を示す。

当研究室では、この性質とフッ素の脱離能を利用した SNV 反応により、フルオロインドー

ル 1の合成(式 1)1)やフルオロフェナントレン 2の合成(式 2)2)

、[4]ヘリセン 3の合成(式 3)

3)等、環骨格の構築を達成している。このように、ジフルオロアルケンは種々の環状有機化

合物を合成するための有用な合成中間体となっている。

従来ジフルオロアルケンの合成には、カルボニル化合物 4 に対してリンイリドを作用さ

せるWittig型の反応(C1ユニット導入法, 式 4)4)が多く用いられてきた。この他、有機ボロ

ン酸 5 に対して触媒量のパラジウムとブロモジフルオロエチレンを作用させるカップリン

グ反応(C2ユニット導入法, 式 5)5)も広く利用されている。

R1 R2

OCF2Br2 (1.0 eq)

P(NMe2)3 (2.0 eq)

R1 R2

F F(4)

25−82%

Ar1B(OH)2

cat. PdCF2=CAr2Br

CsF

5(1.1 eq)

Ar1 Ar2

F F

72−93%

(5)

4

O P(NHMe2)3

R2R1F

F

– +

FF NHTs TsNF

nBunBu

CF22 mol% [Pd(MeCN)4](BF4)2

BF3・OEt2 (1.0 eq)F

DMF, 80 ºC, 7 h

NaH (1.2 eq)

HFIP, RT, 23 h

2 54%

1 84%

(1)

(2)

CF2HFIP, 0 ºC, 10 min

FSO3H・SbF5 (2.0 eq)CF2

H

+

CF2

Pd2+

FF NTs

nBu

3 80%

(3)

Page 4: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

2

一方、1,1-ジフルオロアルケンのβ位にヘテロ原子の一種である硫黄が置換したジフルオ

ロアルケン(硫黄置換ジフルオロアルケン)6には、その硫黄官能基を利用する合成中間体と

しての有用性が期待できる。例えば、硫黄置換ジフルオロアルケン 6に対して、mCPBAに

よる酸化、スズへの置換、Stille クロスカップリングを行うことにより、アリール基を導入

できる(式 6)6)。

しかし、ヘテロ元素官能基を導入したジフルオロアルケンの合成に、上で挙げた従来の

ジフルオロアルケン合成法を適用するのは難しい。例えば Wittig 型の反応では、対応する

チオエステルの求電子性が足りないため、イリドとの反応は期待できない。また、ブロモ

ジフルオロエチレンのクロスカップリング反応にアルコールやチオールを用いると、これ

らの求核種が式1のような求核的なフッ素置換を起こす。実際これまで硫黄置換ジフルオ

ロアルケン 6 は、トリフルオロメチルアセトフェノン 7 とベンゼンチオールから得られた

チオアセタール 8 に対して、四塩化チタンと水素化アルミニウムリチウムから生じる低原

子価チタンを作用させるという、強塩基性条件下で還元的に合成されていた(式 7)6,7)。

筆者は、ヘテロ元素が置換したジフルオロアルケンにも対応可能な、C1 ユニット導入に

よる合成法として、チオケトンからチイラン生成を経る手法に着目した。すなわち、チオ

ケトン 9に対してトリフルオロメチル(フェニル)水銀から発生させたジフルオロカルベンを

作用させるとチイラン中間体が生成した後。さらに脱硫黄を起こし、ジフルオロアルケン

10を与えることが知られる(式 8)8)。しかしその反応例は、ジフェニルチオケトンおよびシ

クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

この反応では、チオカルボニル部位の電子密度が高いほど、チイラン中間体が効率良く発

O

Ph

PhSH (2.0 eq)AlCl3 (1.0 eq) FF

Ph SPh(7)

CH2Cl2, –78 ºC, 20 hCF3 Ph SPh

TiCl4 (2.0 eq)LiAlH4 (4.0 eq)

THF, reflux, 3 h

8 92% 6 78%7

SPhF3C

FF

Ph

1) mCPBA (2.2 eq) FF

Ph Ar(6)

2) Bu3SnH (4.0 eq)AIBN

SPh

FF

Ph SnBu3

10 mol% Pd(PPh3)410 mol% CuIArI (3.0 eq)

DMF, 80 ºC, 5 h

58% 5−82%6

Page 5: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

3

生すると考えられる。そこで筆者は、チオケトンよりも電子豊富なジチオエステル 11を用

いることで、硫黄置換ジフルオロアルケンを収率良く得られると考えた(式 9)。

上記の戦略では、ジフルオロカルベンの発生条件が問題となる。従来ジフルオロカルベ

ンの発生には、強塩基性条件(式 10)9)、高温条件(式 11)10)という過酷な反応条件や、毒性の

高いカルベン源(式 12)11)を必要とした。一方当研究室では、強塩基性条件を必要としない

温和な条件下で進行する触媒的ジフルオロカルベン発生法を開発した。すなわち、ジフル

オロカルベン源である 2,2-フルオロ-2-フルオロスルホニル酢酸トリメチルシリル 12(TFDA)

に対し、イミダゾリウム塩 13から発生させた N-ヘテロサイクリックカルベン(NHC)を作用

させることで、ジフルオロカルベンを発生させ、アミドの酸素原子上のジフルオロメチル

化を達成している(式 13)12)。

ClF F

ONa

O(2.0 eq)

Dioxane-H2O (5:6), 70 ºC, 1 h

Triglyme, 165 ºC, 30 min

HCClF2 (1.25 eq)KOH (5.0 eq)

OH OCHF2

OC4H9

FF

OC4H9

(10)

(11)

65%

42%

FF

Benzene, reflux, 19 h

PhHgCF3 (1.0 eq)NaI (2.3 eq)

(12)

83%

Ph Ph

SPhHgCF3 (1.1 eq)

NaI (1.1 eq)

Ph Ph

S CF2

Ph Ph

FF– S

R1 SR2

S

R1 SR2

S CF2

R1 SR2

FF– S:CF2

Benzene, reflux, 36 h

チイラン中間体

10 55%

(8)

(9)

11 6

9 チイラン中間体

Page 6: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

4

この反応ではまず、反応系中で発生した NHCが TFDAのトリメチルシリル基に求核攻撃

する。これを起点に脱炭酸、脱二酸化硫黄を経て、ジフルオロカルベンが発生する。さら

に、ジフルオロカルベンと共に発生したフッ化物イオンとシリル化された NHC から NHC

が再生する、と考えている(Scheme 1)。

さらに当研究室では、有機触媒の構造を変化させることにより触媒活性を調節すること

に成功している。これにより、基質に適した速度でジフルオロカルベンを発生させること

ができ、本手法の適応範囲が広がった。例えば、有機触媒として 1,8-ビス(ジメチルアミノ)

ナフタレン 14(Proton-sponge®)を用いることで、チオアミドの硫黄原子上のジフルオロメチ

ル化を高収率で達成している(式 14)13)。これら有機触媒によるジフルオロカルベンの発生

法を利用することで、強塩基性条件や高温条件、有毒試薬を必要としない、硫黄置換ジフ

ルオロアルケンの優れた合成法になるものと考えた。

R NHAr

S

R NAr

SCHF2

Toluene, 80 ºC, 10 min

TFDA (2.0 eq)10 mol% Proton-sponge®

(14)

51%−quant

Me2N NMe2

14Proton-sponge®

R1 NHR2

O

R1 NR2

OCHF2

Toluene, 80 ºC, 20−30 min

5 mol% 1320 mol% Na2CO3

FSO2CF2CO2SiMe3 12 (2.0 eq)

62−81%

(13)N

N N MesMes

SMe+ Br–

13

O

OSiMe3SF

OO

F F

N N RR N N RRSiMe3

++ F

FSiMe3

[:CF2] +CO2 SO2+

NHC

Scheme 1 推定触媒サイクル

12

NHC

Page 7: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

5

こうした考えから筆者は、ジチオエステル 11を基質として用い、本手法により発生させ

たジフルオロカルベンを作用させて脱硫ジフルオロメチレン化を検討した。その結果、硫

黄置換ジフルオロアルケン 6 が収率良く得られることを明らかにした。以下、その詳細に

ついて述べる。

SR2

S 5 mol% Proton-sponge®

TFDA (2.0 eq)

Toluene, 110 ºC, 30 minR1 SR2R1

F F

(15)

11 6 42−96%

Page 8: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

6

第二章 硫黄置換ジフルオロアルケンの合成

第一節 ジチオエステルの合成

出発物質であるジチオエステル 11は文献に従って次のように調製した 14, 15)。まず、硫黄

原子上にメチル基を有するジチオエステル 11a,bを合成した。すなわち、アルゴン雰囲気下、

ブロモベンゼンまたは p-ブロモアニソールから調製したアリールマグネシウムブロミドに

0 ºCで二硫化炭素を加え、10分間撹拌した。その後、室温でヨードメタンを作用させるこ

とによりジチオエステル 11a,bをそれぞれ収率 99%, 93%で合成した。

硫黄原子上がフェニル基のジチオエステル 11c,dは以下のように合成した。すなわち、ア

ルゴン雰囲気下 0 ºCで、ベンゼンチオールのジクロロメタン溶液にトリエチルアミンを滴

下し、10分間撹拌した。その後、室温でベンゾイルクロリドまたは p-メトキシベンゾイル

クロリド 16を滴下し、2時間撹拌することでチオエステル 17を得た。さらにチオエステル

17を Lawesson試薬で処理することにより、ジチオエステル 11c,dを収率 56−73%で合成し

た。

PS

PSS

SMeO

OMe

Lawesson's Reagent

Br1) Mg (1.2 eq)2) CS2 (10 eq)

THF, 0 ºC−RT, 3 h

S

SMe

15 11a, 99% (R=H)11b, 93% (R=OCH3)

MeI (2.0 eq)S

SMgBrR R R

PhSH (1.2 eq)NEt3 (1.5 eq)

CH2Cl2, 0 ºC−RT, 2 h

S

SPh

16 11c, 73% (R=H)11d, 56% (R=OCH3)

O

SPh

O

Cl

17c, 84% (R=H)17d, 94% (R=OCH3)

Lawesson'sReagent (0.75 eq)

Toluene, reflux, 10 hR R R

Page 9: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

7

第二節 条件検討

ジチオエステル 11aのトルエン溶液を、あらかじめある温度に加熱した。これに対して、

10 mol%の 1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(Proton-sponge® )の存在下、2 倍モル量の

TFDAを 10分間かけて滴下した(Table 1)。その後、同温度にて 30分間撹拌した。まず反

応温度を 40 ºC(Entry 1)としたところ、目的の硫黄置換ジフルオロアルケン 6aが収率 17%

ながら得られた。この際、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で確認したところ、11a

の多くが未反応であった。そこで、反応温度を 60 ºC(Entry 2), 90 ºC(Entry 3), 110 ºC(Entry 4)

と上げたところ 11aの消費が増えて硫黄置換ジフルオロアルケン 6aの収率がそれぞれ 48%

(Entry 2), 60%(Entry 3), 60%(Entry 4)に向上した。ただし反応温度を 60 ºC 以上にすると、

テトラフルオロシクロプロパン 18a が副生した。反応温度を上げることで、6a の望まない

ジフルオロシクロプロパン化が進行したことになる。

過剰なジフルオロカルベンの発生を防ぎ、6a のジフルオロシクロプロパン化を抑えるた

め、有機触媒として用いている Proton-sponge®の使用量を減らす検討を行った(Table 2)。基

質としてジチオエステル 11dを用い、触媒の量を 5 mol%(Entry 1), 10 mol(Entry 2), 20 mol%

(Entry 3)として検討を行った。しかし、いずれの場合も良好な選択性は得られず、テトラ

フルオロシクロプロパン 18dの副生を抑えることはできなかった。

S

SMe SMe SMe

FF CF2F2C10 mol% Proton-sponge®

TFDA (2.0 eq, over 10 min)

Toluene, Temp, 30 min

6a11a 18a

Me2N NMe2

Proton-sponge®

Entry

1

2

3

4

Temp / ºC

40

60

90

110

6a / %a 18a / %a

17

48

60

60

0

2

8

39

TFDA = FSO2CF2CO2SiMe3a : 19F NMR yield based on (CF3)2C(C6H4p-CH3)2.

Table 1

Page 10: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

8

カルベン源(TFDA)の滴下時間を遅くすることにより、テトラフルオロシクロプロパン

18aの副生を抑えられると考えた。そこで、TFDAの滴下時間をこれまでの 10分間から 20

分間として検討を行ったが、テトラフルオロシクロプロパン 18aが 18%で得られ、その副

生を抑えることはできなかった(Entry 1)。ここで筆者は予想とは反対に、滴下時間を短く

する検討を行った。滴下時間を 10分間から 5分間(Entry 3), 1分間(Entry 4), 10秒(Entry 5)

と短くしたところ、副生するテトラフルオロシクロプロパン 18aの収率はそれぞれ 14%

(Entry 3), 6%(Entry 4), 0%(Entry 5)と低下した。すなわち、滴下時間を短くするほどテトラ

フルオロシクロプロパン 18aの副生を抑えられることがわかった。滴下時間として 1分間

を最適時間とした。

S

SMe SMe SMe

FF CF2F2CX mol% Proton-sponge®

TFDA (2.0 eq, over 10 min)

Toluene, 110 ºC, 30 min+

6d11d 18d

MeO MeO MeO

S

SMe SMe SMe

FF CF2F2C5 mol% Proton-sponge®

TFDA (2.0 eq, over X min)

Toluene, 110 ºC, 30 min+

6a11a 18a

Entry

1

2

3

X mol%

5

10

20

6d / %a 18d / %a

60

56

57

30

28

25

a : 19F NMR yield based on (CF3)2C(C6H4p-CH3)2.

Table 2

Entry

1

2

3

4

5

Addition time / min

20

10

5

1

10

6a / %a 18a / %a

74

73

77

82

74

18

16

14

6

0

a : 19F NMR yield based on (CF3)2C(C6H4p-CH3)2.

Table 3

sec

Page 11: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

9

第三節 反応機構研究

まず、TFDAと Proton-sponge®からジフルオロカルベンが発生する機構について、以下に

示す。TFDA中には、TFDAの前駆体であるカルボン酸 19が微量(<2%)含まれている。こ

れと Proton-sponge®から対応する塩 20が生じていると考えられる(式 16)。塩 20が生成する

と、そのフッ化物イオンが TFDAのケイ素原子上を求核攻撃し、ジフルオロカルベンが生

成する(式 17)。塩 20が TFDAからのジフルオロカルベン発生に関与していることを確かめ

るため、次の検討を行った。すなわち、カルボン酸 19と Proton-sponge®から塩 20のアセト

ニトリル溶液を調製し、TFDAに対して作用させた。その結果、チオアミドの硫黄原子上の

ジフルオロメチル化が進行した(式 18)。このことから、TFDAと Proton-sponge®を用いた場

合でも反応系中で塩 20が生成し、塩 20が真の触媒となって TFDAの分解を引き起こして

いると考えている。

次に、ジフルオロカルベンを用いた硫黄置換ジフルオロアルケン合成の推定反応機構を

以下に示す。TFDAと Proton-sponge®から発生させたジフルオロカルベンとジチオエステル

11がイリド中間体を経てチイラン Aを与える。最後にチイラン Aが脱硫黄を起こすことに

より、硫黄置換ジフルオロアルケン 6が生成する(Scheme 2)。

NH

O

STFDA (2.0 eq)20 (30 mol%)

MeCN, 50 ºC, 10 min N O

SCHF2

80% (19F NMR)

(18)

O

OSiMe3S

F

OO

F F

Me2N NMe2H

F– F

– SO2 :CF2 CO2 Me3SiF+ + + (17)+

+

O

OHSF

OO

F F

Me2N NMe2+

Me2N NMe2H +

F– SO2 :CF2 CO2+ + + (16)

19 20

Page 12: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

10

前節で述べたように、TFDAをゆっくり加えると硫黄置換ジフルオロアルケン 6からさら

にジフルオロシクロプロパン化が進行して、テトラフルオロシクロプロパン 18を副生する。

一方 TFDAを素早く加えると、硫黄置換ジフルオロアルケン 6が選択的に得られる。TFDA

を素早く加えると、チイラン Aから脱硫黄によって硫黄置換ジフルオロアルケン 6が生成

する前にジフルオロカルベンが全て消費されるため、テトラフルオロシクロプロパン 18が

生成しなかったものと説明できる。

Mlonstonらは、ジフェニルチオケトンにジフルオロカルベンを作用させることで、ジフ

ェニルジフルオロエチレンを得た(第一章, 式 8)。ここでは、中間体としてチイランを提唱

している。チイラン中間体はシクロブタンチオンの場合で単離もされている(式 19)8)。シク

ロブタンチオンの場合、チイラン生成の過程でチオカルボニル炭素の混成状態が sp2から sp3

へと変化することで、環ひずみが解消されるが、ここから脱硫黄が進行するとこの環ひず

みが復活するため、チイラン中間体が単離されたものと理解できる。

筆者は当初、チイラン Aからの脱硫黄が、もう一分子のジフルオロカルベンの働きによ

るもので、チオホスゲンを副生していると考えていた(式 20)16)。この仮説が正しければ、

硫黄置換ジフルオロアルケン 6を得るには、2倍モル量の TFDAを必要とすることになる。

そこで、TFDAの使用量と硫黄置換ジフルオロアルケン 6の収率の関係を調べた(Table 4)。

S S CF2– S

CF2sp2sp3sp2

(19)

O O O

PhHgCF3 (1.1 eq)NaI (1.1 eq)

Benzene, reflux, 36 h

R1

S

SR2

:CF2

R1 SR2

CF2S

R1

CF2

SR2

– S

slow

:CF2

R1 SR2

CF2F2C

Scheme 2 推定反応機構

11 チイランA 6

18

R1

S

SR2

CF2+–

イリド中間体

fast

Page 13: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

11

すなわち、ジチオエステル 11aのジフルオロメチレン化を 2.0倍モル量の TFDAで行うと、

硫黄置換ジフルオロアルケン 6aが収率 73%で得られた(Entry 1)。次に、TFDAを 1.2倍モ

ル量まで減らしたが、硫黄置換ジフルオロアルケン 6aの収率は 70%に保たれた(Entry 2)。

式 18の反応で 70%の 6aを得るには TFDAが 11aの 1.4倍モル量必要となる。実際には TFDA

を 1.2倍モル量しか加えていないことから、少なくとも一部はチイランからの 0価硫黄(S8)

の脱離で硫黄置換ジフルオロアルケン 6が生成していることになる。

S

SMe SMe SMe

FF CF2F2C5 mol% Proton-sponge®

TFDA (X eq, over 10 min)

Toluene, 110 ºC, 30 min+

6a11a 18a

Entry

1

2

2.0

1.2

6a / %a 18a / %a

73

70

18

4

a : 19F NMR yield based on (CF3)2C(C6H4p-CH3)2.

Table 4

X / eq

F F

SR1 SR2

S

R1 SR2S CF2

R1 SR2

FF:CF2

チイラン中間体

(20)

11 6

:CF2

Page 14: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

12

第四節 硫黄置換ジフルオロアルケンの合成

最適化した条件を用いて、種々のジチオエステル 11から硫黄置換ジフルオロアルケン 6

を合成した (Table 5)。すなわち、5 mol%の Proton-sponge®存在下、ジチオエステル 11aのト

ルエン溶液に対して 2倍モル量の TFDAを 1分間で滴下し、110 ºCで 30分間撹拌した。こ

れにより、硫黄置換ジフルオロアルケン 6aを収率 82%で得た。次に、アリール基を p-メト

キシフェニル基とした 11bや、硫黄原子上の置換基をメチル基からフェニル基に変更した

11c,dを用いて同様にジフルオロメチレン化を行ったところ、対応する硫黄置換ジフルオロ

アルケン 6b−dが収率 42−96%で得られた。

ジチオエステル 11a−dの中で最も電子豊富と考えられる、硫黄原子上にメチル基とアリ

ール基上にメトキシ基を有する 11bにおいて、6bの収率が 42%と中程度に低下した。先に

述べたように筆者は、チイラン中間体がジフルオロカルベンとジチオエステル 11から生じ

たイリド中間体の閉環で生成していると考えている(Scheme 2)。R1, R2に電子供与基が置換

するとチオカルボニル炭素が電子豊富となり、閉環反応が進行し難くなったため、硫黄置

換ジフルオロアルケン 6の収率が低下したと考えている。

ジチオエステルのジフルオロメチレン化の応用として、筆者はジチオカルボン酸 21に着

目した。まず、ジチオカルボン酸 21にジフルオロカルベンを作用させ、硫黄原子上のジフ

ルオロメチル化を行う。得られたジフルオロメチルジチオエステル 22はひきつづきジフル

オロカルベンによりジフルオロメチレン化され、ジフルオロメチルサルファニル基が置換

したジフルオロアルケン 23を与えるはずである(Scheme 3)。一般にジフルオロメチル基は

SR2

S

R1

5 mol% Proton-sponge®

TFDA (2.0 eq)

Toluene, 110 ºC, 30 minSR2

R1

F F

11 6

SMe

F F

SMe

F F

MeO

SPh

F F

MeO

SPh

F F

6a (82%)a 6d 72% (89%)a6c 78% (96%)a6b (42%)a

Table 5

a : 19F NMR yield based on (CF3)2C(C6H4p-CH3)2.

Page 15: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

13

トリフルオロメチル基に続く有用な含フッ素官能基として医農薬開発の分野で注目を集め

ている。またこのような背景のもと、特にヘテロ原子上のジフルオロメチル化は最近活発

に研究が進められているが、ジチオカルボン酸の硫黄原子上のジフルオロメチル化はこれ

まで全く報告例がない。

そこで実際に、10 mol%の Proton-sponge®存在下、ジチオカルボン酸 21の p-キシレン溶液

に対して 1 倍モル量の TFDA を加え、室温で 4 時間撹拌した。これにより、ジフルオロメ

チルジチオエステル 22 が収率 71%で生じた。そのまま 90 ºCに昇温した後、2倍モル量の

TFDA を 10分間でかけて追加すると、期待したジフルオロメチルスルファニル化されたジ

フルオロアルケン 23が収率 92%で得られた(二段階収率 64%)。

R

S

SH

:CF2R

CF2

SCHF2

Scheme 3 ジフルオロメチルスルファニル化されたジフルオロアルケンの生成過程

R SCHF2

2221 23

S:CF2

MeO

S

SHTFDA (1.0 eq)

Proton-sponge (10 mol%)

21

p-Xylene, RT, 4 h

TFDA (2.0 eq)

p-Xylene, 90 ℃, 1 h MeO

SCHF2

23 92% (19F NMR)2 steps 64% (19F NMR)

MeO

S

SCHF2

22 71% (19F NMR)One-Pot

FF

Page 16: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

14

第五節 従来のカルベン発生法との比較

序で述べたように、従来のジフルオロカルベン発生法は強塩基性条件や高温条件を必要

としていた。一方筆者は本反応において、強塩基性を必要としない有機触媒による温和な

条件下でのジフルオロカルベン発生法を用いた。本節では、ジフルオロカルベン発生法が

ジチオエステルのジフルオロメチレン化に及ぼす影響について述べる(Scheme 4)。

まず、強塩基性条件を必要とするジフルオロカルベン発生法 17)を用いてジチオエステル

11aのジフルオロメチレン化を行った(式 21)。この発生法では、ブロモジフルオロアセト

フェノン 24に対する水酸化物イオンの付加を契機としてジフルオロカルベンが発生する。

この条件で反応を行ったところ、硫黄置換ジフルオロアルケン 6aは得られず、出発物質 11a

も全く回収できなかった。つまり強塩基性条件でのジフルオロカルベン発生法は、ジチオ

エステルの分解を誘発し、硫黄置換ジフルオロアルケンを与えない。次に、高温条件を必

要とするジフルオロカルベン発生法 10)を用いた(式 22)。この反応では、クロロジフルオロ

酢酸ナトリウム 25の熱分解として脱炭酸が起こり、ジフルオロカルベンが発生する。ジグ

リム中、本反応(式 23)と同じ温度である 110 ºCで反応を試みたところ 25が分解せず、6a

を痕跡量で与えるのみであった。反応温度を 160 ºCまで上げたところ、ジフルオロカルベ

ン源は全て分解したが、6aは 41%と中程度の収率でしか得られなかった。この際に出発物

質 11aが 48%回収されたことから、11aの分解はほとんど問題ではない。一方で、本反応で

も溶媒をトルエンからジグリムにすると収率が 20%に低下したことから、溶媒が反応に適

していなかった可能性は残るが、より低い温度(110 ºC)で収率良く硫黄置換ジフルオロアル

ケンが得られるのは、本反応の利点と言える。

S

SMe

BrF F

O

ClF F

ONa

O(2 eq)

(2 eq)

FS

OO

F FOSiMe3

O(2 eq)

SMe

F F

SMe

F F

SMe

F F5 mol% Proton-sponge®

0%

trace, 110 ºC(41%,160 ºC)

82%

KOH, MeCN-H2O, 80 ºC

Diglyme

Toluene, 110 ºC

6acomplex mixture

Scheme 4 従来のジフルオロカルベン発生法との比較

11a

(21)

(22)

(23)

Page 17: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

15

総括

本論文において筆者は、TFDAと Proton-sponge®(触媒)から発生させたジフルオロカルベ

ンをジチオエステルに作用させることで、硫黄置換ジフルオロアルケンが得られることを

明らかにした。これにより、強塩基性条件を必要としない温和な条件下での効率的な硫黄

置換ジフルオロアルケン合成が可能になった。得られる硫黄置換ジフルオロアルケンには、

合成中間体としての用途が広く期待できる。

5 mol% Proton-sponge®

TFDA (2.0 eq)

Toluene, 110 ºC, 30 minR1 SR2

S

R1 SR2

F F

R1 SR2

CF2S

42−96%

– S

Page 18: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

16

実験項

1.分析機器

核磁気共鳴スペクトル(NMR)は、Bruker製 AVANCE500を用いて測定した(1H 核: 500

MHz, 13C 核: 126 MHz, 19F 核: 470 MHz)。1H NMRはテトラメチルシラン(0.00 ppm)を、13C NMRは溶媒として用いた重クロロホルム(77.0 ppm)を、19F NMRはヘキサフルオロベ

ンゼン(0.00 ppm)を、それぞれ内部標準とした。赤外吸収(IR)スペクトルは、Horiba製

FT300Sを用い ATR法で測定した。質量分析スペクトルは日本電子製 GCv JMS-T100GCVを

用い、EI法、イオン化電圧 2100 Vで測定した。

2.溶媒と試薬

溶媒は、特に断らない限り Glass Contour社溶媒精製装置を用いて脱水、脱酸素したもの

を使用した。アセトニトリル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(Diglyme)、は水

素化カルシウムで乾燥した後、蒸留したものに MS4Aを加えて乾燥、保存したものを用い

た。TFDAは文献に従い合成した 18)。反応試薬は特に断らない限り市販品を再結晶、また

は蒸留で精製して用いた。生成物の精製は、関東化学(株)のシリカゲル 60N (球状、中性、

63-210 µm)を用いて行った。特に断らない限り反応操作は、アルゴン雰囲気下で行った。

3.硫黄置換ジフルオロアルケンの合成

典型的な反応例として 6dの合成法を示す。窒素雰囲気下、Proton-sponge(5.4 mg, 0.025

mmol)のトルエン(2 ml)溶液にジチオエステル 11a(84.2 mg, 0. 500 mmol)を加えて撹拌した。

130 ºCに加熱した後、TFDA(200 µl, 1.015 mmol)を 1分かけて滴下し、30分撹拌した。炭酸

水素ナトリウム水溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥を

行った。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)により精製を行った後、

ゲル浸透クロマトグラフィーにより硫黄置換ジフルオロアルケン 6dを収率 72%で得た。

Page 19: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

17

6a

1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.50 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.38 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 7.31 (t, J = 8.0

Hz, 1H), 2.07 (s, 3H). 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ = 154.7 (dd, J = 288, 288 Hz), 131.9 (dd, J = 1, 1 Hz), 129.0 (dd, J =

3, 3 Hz), 128.5, 128.0, 91.0 (dd, J = 21, 21 Hz), 16.4. 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ = 84.0 (d, J = 24 Hz, 1F), 81.8 (d, J = 24 Hz, 1F).

HRMS (EI): m/z calcd. for C8H8F2S([M+]): 186.0315; Found: 186.0317.

IR(neat): ν~ = 2925, 1695, 913, 748.

6b

1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.50 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.38 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 7.31 (t, J = 8.0

Hz, 1H), 2.07 (s, 3H). 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ = 154.7 (dd, J = 288, 288 Hz), 131.9 (dd, J = 1, 1 Hz), 129.0 (dd, J =

3, 3 Hz), 128.5, 128.0, 91.0 (dd, J = 21, 21 Hz), 16.4. 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ = 84.0 (d, J = 24 Hz, 1F), 81.8 (d, J = 24 Hz, 1F).

HRMS (EI): m/z calcd. for C8H8F2S([M+]): 186.0315; Found: 186.0317.

IR(neat): ν~ = 2925, 1695, 913, 748.

SMe

F F

SMe

F F

MeO

Page 20: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

18

6d

1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.46 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.22 (mp, 4H), 7.12 (t, J = 6.8 Hz, 1H),

6.84 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 3.78 (s, 3H). 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ = 159.2, 156.7 (dd, J = 290, 290 Hz), 134.5, 129.9 (t, J = 4 Hz),

129.0, 128.0, 126.3, 124.3 (d, J = 4 Hz), 113.8, 88.5 (t, J = 21 Hz), 55.2. 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ = 85.2 (d, J = 16 Hz, 1F), 83.1 (d, J = 16 Hz, 1F).

HRMS (EI): m/z calcd. for C15H12F2OS([M+]): 278.0577; Found: 278.0576.

IR(neat): ν~ = 2836, 1683, 912, 744.

22

1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 8.04 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.54 (t, J = 54.8 Hz, 1H), 6.90 (d, J = 9.0

Hz, 1H), 3.88 (s, 3H). 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ = 218.5, 164.8, 137.2, 129.3, 123.2 (t, J = 272 Hz), 113.9, 55.7. 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ = 61.3 (d, J = 54.8 Hz, 2F).

HRMS (EI): m/z calcd. for C9H8F2OS2([M+]): 233.9985; Found: 233.9988.

IR(neat): ν~ = 2841, 904, 725.

SPh

F F

MeO

MeO

S

SCHF2

Page 21: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

19

23

1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.44 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 6.91 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 6.63 (t, J = 56.8

Hz, 1H), 3.82 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ = 159.5, 157.0 (dd, J = 291, 291 Hz), 129.9 (t, J = 2 Hz), 123.7 (d, J

= 4 Hz), 119.5(t, J = 271 Hz), 114.0, 83.1 (mp), 55.2. 19F NMR (470 MHz, CDCl3) δ = 88.9 (dt, J = 57, 3 Hz, 1F), 87.5 (d, J = 57 Hz, 1F), 69.4 (dt, J = 57,

3 Hz, 1F).

HRMS (EI): m/z calcd. for C10H8F4OS([M+]): 252.0232; Found: 252.0237.

IR(neat): ν~ = 2836, 1683, 912, 744.

MeO

SCHF2

FF

Page 22: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

20

参考文献

1) Ichikawa, J.; Wada, Y.; Okauchi, T.; Minami, T. Chem. Commun. 1997. 16. 1537.

2) Yokota, M.; Fujita, D.; Ichikawa, J. Org. Lett. 2007. 9. 4639.

3) Fuchibe, K.; Jyono, H.; Fujiwara, M.; Kudo, T.; Yokota, M.: Ichikawa, J. Cheme. Eur. J. 2011.

17. 12175.

4) Burton, D. J. J. Fluorine Chem. 1983. 23. 339.

5) Fujita, T.; Suzuki, N.; Ichitsuka, T. J. Fluorine Chem. 2013. 155. 97.

6) Choi, J. H.; Jeong, I. H. Tetrahedron Lett. 2008. 49. 952.

7) Jeong, I. H.: Min, Y. K.; Kim, Y. S.; Cho, K. Y. Bull. Korean Chem. Soc. 1991. 12. 355.

8) Mloston, G; Romanski, J.; Heimgartner, H.; Heterocycles 1999. 50. 403.

9) Miller, T. G.; Thanassi, J. W. J. Org. Chem. 1960. 25. 2009.

10) Wheaton, G. A.; Burton, D. J. J. Fluorine Chem. 1976. 8. 97.

11) Seyferth, D.; Hopper, S. P.; Darragh, K. V. J. Am. Chem. Soc. 1969. 91. 6536.

12) Fuchibe, K.; Koseki, Y.; Aono, T.; Sasagawa, H. Ichikawa, J. J. Fluorine Chem. 2012. 133. 52.

13) Fuchibe, K.; Bando, M.; Takayama, R.; Ichikawa, J. J. Fluorine Chem. 2015. 171. 133.

14) Meijer, J.; Vermeer, P.; Brandsma, L. Rec. Trav. Pays Bas 1973. 92. 601.

15) R. J. Hewitt.; M. J. H. Ong.; Y. W. Lim.; B. A. Burkett. Eur. J. Org. Chem. 2015. 30. 6687.

16) Mloston, G; Romanski, J.; Swiatek, A.; Helv. Chim. Acta 1999. 82. 946.

17) Zhang, L.; Zheng, J.; Hu, J. J. Org. Chem. 2006. 71. 9845.

18) Dolbier, W. R., Jr.; Tian, F.; Duan, J. X. J. Fluorine Chem. 2004. 125. 459.

Page 23: 卒業論文 ジチオエステルのジフルオロメチレン化による 硫黄置 … · クロブタンチオンが報告されているのみであり、基質の一般性については不明であった。

21

謝辞

本研究を行うにあたり、有益かつ熱心な御指導、御鞭撻を賜り、また快適な研究環境を

与えて下さいました、本学教授 市川 淳士 先生に心より感謝致します。

実験を進める上で数々の指導を賜りました、本学准教授 渕辺 耕平 博士に御礼申し上げ

ます。

実験を進める上で有益なご助言を頂きました、本学助教 藤田 健志 博士に御礼申し上げ

ます。

本研究を進める上で、直接御指導くださいました、高山 亮 氏に深く感謝致します。

研究生活の楽しさや厳しさを共に分かち合った市川研究室の皆様に感謝致します。

最後に、筆者の研究生活を温かく見守り励ましてくれた、両親、姉、親戚の方々に心か

ら感謝致します。

2016 年 3 月