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衛星測位工学 (毎週木曜日1限目 111教室) 情報通信工学研究室 久保信明

衛星測位工学 (毎週木曜日1限目 教室) · 2020. 12. 7. · 講義要目 第1回はじめに(航法の歴史と無線航法)4/12 第2回測位衛星の代表であるgpsの概要4/19

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衛星測位工学(毎週木曜日1限目 111教室)

情報通信工学研究室

久保信明

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講義の概要

• 目的は、衛星測位工学に関わる要素技術をおおまかに把握すること。

• 教材は主に「精説GPS」の1章から3章。資料はこちらで準備。

• 成績は、出席と試験の両方を考慮(5割ずつ)→試験問題を作りにくいので出席(毎授業の理解度)を重視します。

• 毎回簡単なレポートを授業終了時に提出してもらうので、それを出席代わりにします。

• 質問は第4実験棟の5Fの研究室へ。• 再試験の予定はないです。• 半分PPT、半分黒板くらいの割合です。

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講義要目

第1回 はじめに(航法の歴史と無線航法) 4/12第2回 測位衛星の代表であるGPSの概要 4/19第3回 GPS概要つづき 4/26第4回 GPS概要つづき 5/10第5回 信号強度について 5/17第6回 スペクトラム拡散について 5/24第7回 DOPと位置推定手法について 6/7第8回 DOPについて 6/14第9回 DGPSについて 6/21第10回 座標系とGPS時刻について 6/28第11回 衛星軌道について 7/5第12回 授業のまとめとレポート課題 7/12

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はじめに

• 航法とはA地点からB地点までの航路を計画したり、その航路維持するための科学技術である。そのテーマには、広大な海を渡航した我々の先祖には星だけを頼って船を進めた人もいたというような、長い魅惑的な歴史がある。これらは勇気が要ることである。なぜなら星はいつも見えるとは限らないからである。

• 20世紀の科学は上空に人工の星を配置することによりほとんど完全にこの問題を解決した。これらの星はいつでも非常に弱い電波信号を放射し、輝き続けている。未加工の電波に欠けているものを賢明な設計で補い、完璧な晴天の夜間に昔の水夫が星からかつて得ていた情報よりもはるかに多くの情報を提供している。

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航法の歴史概観

• 推測航法(dead reckoning:DR)→初期の探検家(コロ

ンブス)は、一航海ごとの航行距離と方位を維持することにより出発点から相対的に位置を推定するという単純な考え方を用いた(方位は12世紀に中国で発明された磁気コンパスを利用)。

• 経度と時刻

• 天文学的方法

• 20世紀の開発:慣性航法と無線

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推測航法の問題点

• 平面上と球面上の推測航法。

• 平面上の航法では北への航路と東への航路の順を変えてもP点に達する。一方、球面上では北向きの航路は収斂するので問題が発生。

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経度について

• 二地点間の経度の差は、それらの地点の地方時の差に直接関係している。地球は24時間で360度、1時間で15度自転している。2地点間の経度の差は2地点間の地方時の差が分かれば決定される。ただし正確な時計が必要。1500年代は1日に10分程度の誤差。他にも天体観測を利用。

• 正確な時計の開発に努力がなされてきた。1657年→約10秒/1日 1726年→月に約1秒

地方時で0:00にここを出発(その時計を持参)

0度(0:00) 15度E(1:00)

到着時に持参した時計は2:00。地方時は3:00→この差より経度を計算

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問題

• 緯度の1分が1海里(1854m)とほぼ等しいとする。1cmまで正確な位置を度で表わす

には、整数値以下の何桁の有効数字が必要か?(1度=60分、1分=60秒)

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解答

• 1分が1854mだから、1854mは1/60度。

• 1cmは1854mの1/185400だから、1cmは(1/60)×(1/185400)度となる。

• 計算すると、0.00000008989572……• よって8桁は必要。

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新旧の航法システム

• 推測航法

• 誘導システム 自身の位置を知る必要はなく、目的地に向けることによりコースに合わせることができる。灯台や無線ビーコン。ILS(計器着陸システム)なども。

• 測位システム 正しく定義された座標系においてユーザの位置を決定する。ロラン、オメガ、トランジットそしてGPS(GPSは速度と時刻も測定できる)。

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慣性航法

• ジャイロスコープ→物体に働く角速度を検出する計測器(ジャイロコンパス:北を指す)。

• ジャイロスコープの空間の方向を維持する安定なあるいは感性プラットフォームを提供する機能は慣性航法システム(inertial navigation system:INS)を生み出した。

• INSは推測航法システムであり、その特性として誤差が蓄積する(普通の精度のINSで1時間で2km)。

• GPSとINSは一方の弱みが他方の強み。INSが耐性を持つ妨害や干渉に対して、GPSは弱い。INSに礎を置く測位は誤差が蓄積するが、そのようなドリフトのないGPS測位結果でリセットできる。

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無線航法

• 電波伝搬の基本原理を活用

• 電磁波のスペクトルは多くの競争的利用要求がある限られた資源である。規制と強調が必要であることが20世紀の初期に認識されたために1934年に国際電気通信連合(ITU)が設立された。ITUは様々な無線サー

ビスを持った周波数帯に電磁周波数スペクトルを分割する。

• 無線は、航法(次)、電話、電報、レーダ、AM/FM、移動体通信、衛星通信のさまざまなサービスが存在する。

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無線周波数の類別

周波数帯 周波数 波長

超長波(VLF) <30kHz >10km長波(LF) 30-300kHz 1-10km中波(MF) 30kHz-3MHz 100m-1km短波(HF) 3-30MHz 10-100m超短波(VHF) 30-300MHz 1-10m極超短波(UHF) 300MHz-3GHz 10cm-1mセンチ波(SHF) 3-30GHz 1-10cm

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無線航法の種類

• 長距離地上系無線航法(ロラン、オメガ、デッカ)→VLFおよびLF

• 航空用短距離の視線無線誘導システム(VOR、ILS、MLS)→VHSからSHF

• 衛星航法(トランジット、GPS、GLONASS)→VHFとUHF

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三辺測量

• 電波を用いて推定位置を得る技術は、通信と同じくらい古い。第2次世界大戦中には航空機の無線航法援助の開発が加速された(VOR、TACAN、ILS、MLS)。

• 電波伝搬の原理の最も簡単なことは、電波が既知の速度で伝わること。よって送信局からの信号の伝搬時間が測定できれば、送信者と観測者の間の距離が決定される。位置が分かっている三つの送信局からの距離が与えられれば、観測者の位置が決まる。

• 伝搬時間測定には、送信機と受信機の時計が同期している必要がある。光速は300000000m/sなので、1μsの同期誤差は300mの距離測定誤差になる。

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三辺測量の概観図

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双曲線測位

観測者は既知点にある二つの局への距離差を測定する。1対の局からの同一距離差の点の軌跡は双曲線である。到達時間差(TDOA)システムと呼ばれる。

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ドップラー効果

• ドップラー効果とは、波(音波や光波や電波など)の発生源(音源・光源など)と観測者との相対的な速度によって、波の周波数が異なって観測される現象のこと。発生源が近付く場合には波の振動が詰められて周波数が高くなり、逆に遠ざかる場合は振動が伸ばされて低くなる。

観測者も音源も同一直線状を動き、音源S(Source)から観測者O(Observer)に向かう向きを正とすると、観測者に聞こえる音波の振動数は、

となる。ここで、f : 音源の出す音波の周波数、V : 音速、v0 : 観測者の動く速度、vs : 音源の動く速度

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音源に近づく場合

波の重要な公式V=fλ

観測者についてはV+v=f’λ

以上2式よりf’=f(V+v)/V

周波数は高くなる

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音源より遠ざかる場合

波の重要な公式V=fλ

観測者についてはV-v=f’λ

以上2式よりf’=f(V-v)/V

周波数は低くなる

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ドップラ測位

ドップラシフトは送信源の周波数と受信周波数の差である。上のドップラシフト曲線の形は軌道からの距離を決定する。もし列車が時刻表に従って正確に運行し、観測者の時計がずれていなければ自身の位置を正確に求めることができる。

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問題

• 車の音の周波数(=回転数とする)を調べるために、観測者が走行軌跡上にいたとする(実際はありえないが)。車は常に時速360kmで直線道路を走行していたとする。観測者が測定した車の通過前後の周波数(回転数)の差が193Hzだったとすると、車の回転数はいくつだったか? なお、回転数はrpm(revolution per minute:1分間での回転数)で回答すること(最後の答えは整数で)。音速は340m/sとする。

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4月19日の授業

• GPSの概要

• どのようにして距離を測るのか?

• 精密な時計の役割

• 位置を求めるのになぜ4つの衛星が必要か?

• ドップラーの演習

ノートは各自工夫しながらとるようにしてください!レポートはおそらく英訳と用語説明おそらく、出席5割、レポート5割

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GPS(Global Positioning System)

地球上のいかなる場所でも以下の2つを決定することができる

・1cmから10m以内の精度で緯度、経度、高度を・5nsから60nsの精度で正確な時刻を

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GPS設計者の考察

• 能動型か受動型か?→受動型は無限のユーザ

• 測位方法:ドップラ、双曲線、三辺測量→三辺測量は合理的

• パルス波信号か連続波か?→GPSは符号分割多元接続(CDMA)の最初の普及例

• 搬送波周波数→Lバンドは折衷案

• 衛星配置と軌道→各ユーザはその位置を求めるために衛星4機以上を視野に入れる必要があった。

• GPSの開発コストは約100億。年ごとの運用経費や維持費は約5億ドルといわれている。

• 三辺測量技術についての古代の考えをGPSへ適合させた4つの技術は、予測可能な軌道上の安定な宇宙プラットフォーム、超高安定度の時計、スペクトル拡散信号、集積回路であった。

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軌道について

• 低高度軌道(LEO:2000km以下)→1回に10-20分間しか見えない。ドップラシフト大、大気の抗力大、打上げ費低、低送信電力

• 中高度軌道(MEO:5000~20000km)→数時間視野、打上げ費LEOより高い、衛星数は24~36機。GPSのために選ばれた。

• 静止軌道(GEO:36000km)→少ない衛星で全世

界カバー、高緯度地域をカバーできず、打上げ費高

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距離の決定

雷の場合、距離=伝搬時間×音速(330m/sくらい)眼でスタート時間を、耳で到着時間を

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6つの軌道面に配備されたGPS衛星

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GPSによる伝搬時間

距離=伝搬時間×光速

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平面内で位置を決定する時

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3つの球による位置決定

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1.列車が東京駅から越中島駅に向けて時速50kmの等速で動いているとする。東京駅を正確に9:00(正しい時刻)に出発し、越中島駅を通過したときの自分の時計は9:08ちょうどであった。東京-越中島間がちょうど5kmとすると、自分の時計のずれはいくらか?

2.次に、上記の自分の時計でGPS衛星から発射された電波を受信した。衛星から正確に10:00(正しい時刻)に発射された電波を受信した時刻は10:02分0.07秒であった。このとき、電波発

射時の衛星位置と自分の位置(静止点)との距離はいくらであったか?電波の速度は光速(30万km/s)とする。

時刻に関する問題

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4つの衛星が3次元の位置を求めるのに必要

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衛星航法の原理

ユーザと衛星の距離測定値は信号の送信時間と受信時間から求められるが、共通のバイアスがあり、擬似距離と呼ばれる。ユーザの位置と時計のバイアスを求めるために、少なくとも4機の衛星が必要。

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GPS→GNSS

• GPSは衛星航法の唯一のシステムではない。

• 世界的に与えられている名称はGNSS(世界的航法衛星システム)

• 米国→GPS• ロシア→GLONASS• 欧州→Galileo• 日本→QZSS(準天頂衛星)

• 中国→Beidu(北斗)

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ドップラー効果の問題

• GPS衛星の軌道運動による、地球上のある固定点でのドップラー周波数の計算。

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4月26日の授業(GPSとそのtechnology)

• GPSはどのようなセグメントから成るのか?

• GPS衛星はいかに構成されているか?

• どんな情報が地球に送られるのか?

• 衛星の信号がどのように生成されるのか?

• 衛星からの送信時刻はどのように決定されるのか?

• 「相関」とは?

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システム構成

スペース・セグメントGPS衛星

JB

ユーザ・セグメント

利用者

コントロ-ル・セグメント

地上管制局

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衛星の型式 II/IIA IIR IIF

衛星数 28 21 12初打上 1989 1997 2005衛星重量(kg) 900 1100 2900設計寿命 7.5年 10年 15年価格 50億円 40億円 34億円

スペースセグメント

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衛星と地球の中心を結んだときに地球上のどこを通るか

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全衛星の分布

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GPS衛星

全ての衛星は、同じ周波数で原子時計によって同期されており、時刻信号とデータを送信している。

地球上で受信する信号の強さは-158dBW程度。

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通信リンクの解析

0

110

0

1 log10PP

PP

dB

例えば、1Wを基準にすると、0.1Wは-10dBWとなる。よって、-160dBWとは10-16 Wとなる(-130dBm)。

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信号電力

• 地球上で受信されるGPS信号は非常に弱い(地表面全体にわたって一様な輻射)。衛星のアンテナ入力ポートでのRF電力は50ワット程度。

• 電気工学では広範囲の電力レベルを扱うために、デシベル単位の対数目盛で電力比を表わす。

0

110

0

1 log10PP

PP

dB

ここで、 P1とP0は比較する電力レベルである。電力の絶対値は1Wあるいは1mWに対して、それぞれdBWもしくはdBmの単位で同様に表現できる。

-10dBWもしくは20dBmと表現される。

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衛星からの信号に含まれるもの

• 衛星の時刻と同期信号

• 軌道情報(エフェメリスと呼ばれる)

• 衛星時刻(GPS時刻)を正確に求めるための補正値

• おおよその軌道情報(アルマナック)

• 電離層の情報

• 衛星の健康状態

各衛星は1023個の疑似雑音符号を持つ

この符号は1msごとに繰り返されており、非常に重要な役割を持つ・他の衛星との識別 ・信号の伝搬時間の測定

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衛星の信号を生成

衛星には、4つの非常に精密な原子時計があり、下記の信号パルス生成のタイミングを司る

50HzのデータパルスC/Aコードのパルス(1.023MHz)L1の搬送波位相の周波数(1575.42MHz)なお、変調方式はBPSK(Bi-Phase-Shift-Keying)

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実際のデータの中身

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さらに詳細な衛星内部のブロック

黒板で説明・C/Aコードの役割・10.23MHzが基本

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コントロールセグメント

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主な機能

• 衛星軌道を監視すること

• 衛星健康状態の監視と維持をすること。

• GPS時間を維持すること。

• 衛星のエフェメリス(軌道情報)と時計パラメータを推定すること。

• 衛星の航法メッセージを更新すること。

• 衛星を維持するために操縦する指示をだすこと。必要ならば故障した衛星を補うために配置転換を行うこと。

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ユーザセグメント

• GPSの民生利用が拡大したのは、集積回路の革新に負うところが大きい。

• 高精度用(数cm)で、1980年代中盤は10万ドル→現在は1万ドル以内。精度をあまり要求しなければ100ドル以内(ハンディ型)。

• 現在市場には何百種類ものモデルの受信機が出回っている。

• 世界全体におけるGPSの製品とサービスの年間の販売高は、2003年までに160億ドルに達する。

• GPSは商業基盤と社会基盤に欠くことのできないものになりつつある。

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ユーザ側の距離計算

67~68msecの間に衛星を発信したC/Aコードが受信機に届いたとする。当然、1msecの整数倍で受信することは考えられないので、相関をとって信号を同期させることにより、1msecの端数の値を算出することになる。なお、1msec分のあいまいさは、1msecが300㎞に相当することより、容易に求めることができる。

疑似距離=(67msec+0.??????????msec)×光速

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ユーザ位置の計算

• ユーザは自身の位置を求めるために、4つの衛星の情報を必要とする。

• それは、ユーザの3次元座標と受信機の時計のずれを求めるためである。

• 全ての衛星は同一周波数かつ異なるC/Aコードで送信(CDMA)。

• 信号の復調と識別は相関という作業によって行われる。相関によって、前述のコードのタイミングのずれ(距離計算)も計算できる。

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相関

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評価について

• 授業の評価ですが、毎回の出席をレポートを見て5点でつけています。欠席した人は0点になりますので、注意してください。

• 12回のうち良い点数の10回分を計算して50点満点です。

• さらに最後の授業でレポートの課題をだします。それが50点満点です。

• 合計100点となります。

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5月10日の授業

• GPSの航法メッセージについてGPS衛星からどんな情報が送られてくるか?

必要最低限の情報入手に何秒必要か?

フレームとサブフレームについて

なぜ同じデータが繰り返し流されるのか?

• 位置計算について

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最初に

• 航法メッセージは1秒間に50ビットの連続

データである。各衛星は下記の情報を地球に向けて送信

①GPS時刻と衛星自身の時刻補正値

②自身の正確な軌道情報(エフェメリス)

③おおよその軌道情報(アルマナック)

④衛星の健康状態

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データ概要

• データストリームは前にも述べたように高周波の搬送波に変調されて送信。

• 1フレームで1500ビット(30秒かかる)

• 1フレームは5つのサブフレームから成る

• 全てのアルマナック情報を得るために25個

の異なるフレームが必要。よって、全ての情報を得るには12.5分要する。ただし、、、

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航法メッセージの構成

25個のフレームで全部

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特徴

• 1つの衛星のみより、全ての衛星のアルマ

ナック(おおよその軌道情報)情報を取り出すことができる

• 各衛星は、自分自身のエフェメリス(正確な軌道情報)情報を自分の分のみ放送している。

• エフェメリスは摂動等の補正項も含むのに対して、アルマナックはケプラーの6軌道要素のみ。また、表現するビット数も異なる。

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位置計算(以下の項目について学ぶ)

• 座標位置と時刻がどのように決定されるか?

• 疑似距離とは何か?

• どのように非線形の方程式を用いて、4つの未知数を求めるのか?

• GPSによって、どのくらいの精度が保障されているのか?

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GPSの公称精度

• 使用する受信機にもよるが、実際には上記の精度よりも倍以上良い。

• DGPSを用いて1m程度まで低減可能

• 疑似距離だけでなく、搬送波位相を用いる技術で1cm程度まで低減可能。

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伝搬時間を求める原理

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つづき

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方程式

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方程式の線形化

• 線形とは簡単に言うと、方程式が1次式で表せること。非線形は表せないもの。

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ユーザ位置の推定について

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推定の続き

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方程式を解く

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つづき

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測位計算の概観

SV1

SV2SV3

SV4

P1

P2

P3P4

P1

P2

P3

P4

仰角の低い順

左から、受信機時計、電離層、対流圏、マルチパス、真距離?

衛星時計誤差は擬似距離に含まれているものとする

全ての衛星に等しい誤差は測位計算に影響を及ぼさないことに注意(時計誤差等)

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誤差の概要と衛星の信号

• 衛星の時計⇒10ns以内 3m以内

• 衛星の軌道⇒1~5m• 光速⇒真空中は定数で良いが、電離層や対

流圏を伝搬する際に速度が落ちるので、もはや定数ではない。

• マルチパスやノイズ⇒環境良い場所で1m以内。悪い場合は数m以上

• 衛星の配置⇒誤差×衛星配置の係数

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誤差要因

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衛星配置DOPについて

• 衛星からアンテナまでの距離が正確であれば自身の位置を正確に算出できる(解は1点)。しかし、距離に誤差が含まれる場

合は衛星の配置によってその精度への影響が異なる。

S1

S2S2

S1

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衛星配置について

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可視衛星数とGDOPの1日の変化

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良い配置と悪い配置

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今日の演習

• 数値計算の分野において、ニュートン法(またはニュートン・ラプ

ソン法)とは、方程式系を数値計算によって解く為の反復法による解法(アルゴリズム)の1つである。方程系に対する条件は領

域における微分可能性と2次微分に関する符号だけであり、方程式系の線型性などは特に要求せず、収束の速さも2次収束なので古くから数値計算で使用されていた経緯をもっている。

• ここでは、考える問題を f: R → R, x∈ Rとしてf(x) = 0 となる xを求めることに限定する。このとき、x の付近に適当な値 x0 をとり、次の漸化式によって、x に収束する数列を得ることができる。

√2を上記の方法で求めよ(条件は授業で)。

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5月18日 座標系について

• Geoidとは何か?

• なぜ地球は楕円として表現されるのか?

• 世界にはなぜ200以上の異なる基準座標系があるのか?

• WGS-84とは?

• 直交座標と楕円座標

• 各国の地図はどのように作成されるか?

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今日のレポート

• 標高、楕円体高、ジオイド高について簡単に説明せよ→授業中に必ず説明するので、自分でまとめてください。

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最初に

• GPS利用開始時の問題の1つに各国が採

用している座標系の問題があった。座標系が異なるために、予想する位置にそのままでは表示されないということ。

• 地球科学の知識がないと、なぜGPS受信

機が、異なる基準座標に即した系を選択する必要があるのかが理解できない。

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Geoids

• 地球はどのような形をしているのか?という疑問は何世紀にもわたって議論されてきた。

• おおよその形はGeoidで定義される。平均海水面をスムーズにした面。

• 地球の重力は場所によって異なる。

• 実際の地球の形とは異なり、Geoidは重力ベクトルに対して必ず90度に交わる。

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回転楕円体(spheroid)

• Geoidそのままでは、計算時に扱いが困難なので、回転楕円体を定義

• 回転楕円体は2つのパラメータのみで定義される

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局所的な基準楕円体

• 地球中心のGeoidと楕円体は、当然、一致

するとは限らない。そこで、その差をできるだけ小さくするために、各国は独自の楕円体基準面を定義して、できるだけGeoid(その国の平均海水面)に合うようにしている。

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各国の基準面について

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基準楕円体の例

日本はBessel楕円体を使用 6377397.155 1/299.152813最近は世界中で統一した座標系を使用する傾向がある。

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WGS-84• (WGS-84)World Geodetic System 1984は

地球中心と楕円体の中心が一致するように生成されている。ECEFとも呼ばれる。

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直交座標と測地座標

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ローカル座標からWGS-84への変換

• 完全に座標系を変換するには?

• 3つの回転角と3つ

の移動量、そして拡大もしくは縮小係数(合計7つ)を決める必要がある。

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実際の数値例

日本測地系の場合は、移動量に関しては、X方向:-146m y方向:507m z方向:681m

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座標系、時刻標準、人工衛星の軌道

• ユーザやGPS衛星の位置を表し、衛星の移動を記述するための、座標系の定義。

• 瞬間の時刻と時間間隔の特性

• 衛星軌道の性質と、ある瞬間における衛星の位置および速度の決定。

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座標系

GPSではWGS-84座標系を使用している.地球中心地球固定座標系 (米国が定めている座標系)

Z軸 : 北極の方向

(地軸の平均回転軸)

X軸 : 経度0度の方向

Y軸 : Z,X軸と右手直交系を成す.

原点(0,0,0)

地球中心

北極グリニッジ天文台

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直交座標と測地座標

• さきほどの地図のx,y,zで表わされる値は直交座標系(1510886,-4463460,4283906)。→北半球に

いることくらいはわかる。三角関数に強ければ、中緯度地域くらいはわかる。

• しかし、地表面上にいるかどうか、あるいは空中か地中か、またどの程度地表から離れているかを知ることは難しい。→測地座標系(緯度、経度、高度)のほうがわかりやすい。

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楕円体と楕円体座標系

• 世界的な基準系のためには、楕円体を、地球重心を共通の原点にもち楕円体の回転軸をz軸とするECEF直交座標系とあわせて定義するのが合理的。

上の関係により、ECEF直交座標系によるある地点の座標(x,y,z)が与えられれば測地座標(緯度、経度、高度)が与えられる。

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高度の定義(ジオイド)

• 平均海水面に全世界的にもっともよく一致する等ポテンシャル面は、ジオイドと呼ばれる。

• 地球の形状を表す楕円体の大きさは、ジオイドに最小二乗法の意味でもっともよく合うように定められている。

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世界測地系(WGS84)

• WGS84は実質的な世界標準の国際測地系。さまざま

な測地系を統一し、地図作成の作業を単純化したことは、GPSの重要な成果である。

• 特徴→*ECEF直交座標系

*地球形状の幾何学モデルとしての回転楕円体

*地球重力場およびジオイドの詳細

*矛盾のない基礎定数群

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ジオイド高の分布

全世界におけるジオイド高は、インド南端での-104mからニューギニアにおける+75mまでの範囲がある。WGS84ジオイド高の全世界にわたるRMS値は約30mであり、全世界的には楕円体がジオイドに対してこの程度の良さで合致している。

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6月7日の授業

• DGPSについて

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位置の推定方法

• ユーザがGPS受信機から得られる位置の品質(または精度)は次の2つによっている。

*可視衛星数と衛星配置(DOP)

*擬似距離の精度

• 擬似距離の精度に含まれるいくつかの主な誤差要因は以下の通り。

*電離層と対流圏遅延量

*衛星のクロックの精度

*マルチパス誤差

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精度は数値の相対誤差の大きさを計り,確度は絶対誤差の大きさを計る.

バイアスバイアス

精密な測定精密な測定

ばらつきばらつき

正確な測定正確な測定真の位置真の位置

正確かつ精密な測定正確かつ精密な測定

ばらつきばらつき

正確でも精密でもない測定正確でも精密でもない測定

ばらつき(標準偏差ばらつき(標準偏差== ))

RMSRMS

バイアスバイアス

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天頂方向の写真(魚眼レンズ)

緑:可視 黄:回折 赤:直接波は届かない

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イメージ図

ρ1:擬似距離

ρ2ρ3

ρ4

(x,y,z) b:受信機時計のバイアス

(x(k), y(k) , z(k))

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測位計算の簡単な説明(黒板)

xx )(2)(2)(2)()( kkkkk zzyyxxr

衛星とアンテナ間の関係式は以下の通り。ここに、受信機時計のバイアスと各種誤差が加わる

残念ながら、上記の式は線形ではないので、理論的に方程式で解くことが不可能。そこで最小二乗法が使用される。

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最小二乗法を用いた簡単な例

1 320

40

80

時間(秒)

速度(km/h) 車が一定の加速度を保って走行していた。緑丸が各秒での実測値。このとき、その加速度を最小二乗法を用いて求める

(1,46)(2,54)

(3,58)

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補強システム(DGPSについて)

• 測位誤差の軽減方法。結論からいうと、普通のGPS受信機での測位精度が5mとすると、DGPSで1m程度まで低減可能。

• 理由:大きな誤差源による誤差は互いに「遠く離れていない」位置のユーザに対して同じように現れ、一緒に「ゆっくり」変化する。換言すると、誤差は空間的・時間的に相関がある。もし、受信機の位置が既知であれば、はっきりと測定誤差を推定できる。そのような誤差推定値が付近のGPSユーザに与えられれば、測定誤差を軽減するためのディファレンシャル補正値として利用できる。DGPS(ディファレンシャルGPS)と呼ばれる。

• 上記の補正情報を、基準局から無線リンク等でユーザに対して送信する必要がある。

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ディファレンシャルGPS

誤差要因誤差要因 補正の可否補正の可否 備考備考

衛星軌道衛星軌道 ○○ 長基線では精度低下長基線では精度低下

衛星クロック衛星クロック ◎◎ よく補正できるよく補正できる

電離層遅延電離層遅延 ○○ 活動が激しいと精度低下活動が激しいと精度低下

対流圏遅延対流圏遅延 △△ 高度差に注意高度差に注意

マルチパスマルチパス ×× むしろ増加むしろ増加

受信機雑音受信機雑音 ×× むしろ増加むしろ増加

基準局基準局移動局移動局

測定誤差測定誤差基準局と同じ基準局と同じ測定誤差測定誤差

基準局から誤差情報を送信基準局から誤差情報を送信

•• GPSGPSの誤差要因の多くは空間的な相関の誤差要因の多くは空間的な相関

があるから、離れた地点間でも測距誤差があるから、離れた地点間でも測距誤差

は似ている。は似ている。

•• 位置がわかっている基準局で測距誤差位置がわかっている基準局で測距誤差

を求め、この誤差情報を移動局に送信、を求め、この誤差情報を移動局に送信、

移動局側で補正する。移動局側で補正する。

•• ディファレンシャル補正の精度は移動ディファレンシャル補正の精度は移動

局ー基準局間の距離(基線長)に依存。局ー基準局間の距離(基線長)に依存。

•• 基準局受信機に加え、無線リンクなどが基準局受信機に加え、無線リンクなどが

必要。必要。

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説明続き

• 越中島校舎をユーザ、品川校舎を基準局として、SV15番のGPS衛星の誤差要因を考えると、

• 品川校舎のアンテナ位置は既知なので、衛星-アンテナ間の真の距離(21000km)がわかる。これに対して、衛星クロック(3m)、電離層(10m)、対流圏(5m)、その他(50cm)の誤差が加わったものが擬似距離として測定される。このとき、それらの誤差量(18.5m)を測定できる。

左から衛星クロック、電離層、対流圏、その他、真の距離これら全てを足した距離が擬似距離として品川アンテナで測定される。

SV15(品川)

SV15(越中島)

越中島でも上記の前の3つの誤差はほとんど変わらない。よって自分で推定するよりも、品川の誤差情報を使用したほうが良い。

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説明続き

• このSV15の持つ誤差量を越中島のGPS受信機に教えれば、越中島のGPS受信機は良い誤差推定値を持つことになる。

• 越中島のGPS受信機が、この情報を持たない場合は、単独測位で上記の誤差量をモデル等で推定して計算しなければならない。その推定精度は、上記の品川から送られてくる誤差情報よりも悪いことが知られている。

• 単独測位とDGPSの違いは、下記の主要な誤差を自分自身で推定するのか?それとも付近の基準局の誤差情報をもらうのか?にある。

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ディファレンシャルGPSの効果

-20 0 20-20

0

20

測位誤差(東方向), m

測位誤差(北方向), m

-20 0 20-20

0

20

測位誤差(東方向), m

測位誤差(北方向), m

1周波・2周波受信機による測位結果例 ディファレンシャル処理した結果(1周波)

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•• 既存の中波ビーコンに既存の中波ビーコンにDGPSDGPS補正データを重畳して放送する。補正データを重畳して放送する。•• 放送データは放送データはRTCMRTCM--SC104SC104フォーマットで、フォーマットで、ITUITU--R M.823R M.823--11として規格化されとして規格化され

ている。ている。•• 世界中で使用されている、もっとも普及している世界中で使用されている、もっとも普及しているDGPSDGPSシステム。システム。

(海上保安庁)(海上保安庁)

中波ビーコンDGPS

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(海上保安庁(海上保安庁HPHPより)より)

伝送速度伝送速度 200 bps200 bps送信出力送信出力 75 W 75 W 有効範囲有効範囲 200 km200 km以内の海上以内の海上伝送フォーマット伝送フォーマット ITUITU--R M.823R M.823--11

(RTCM SC(RTCM SC--104) 104) メッセージタイプメッセージタイプ Type 3, 5, 6, 7, 9 Type 3, 5, 6, 7, 9

•• 世界各国の沿岸に整備中世界各国の沿岸に整備中•• 日本では日本では2727局が運用中、沿岸をカバー局が運用中、沿岸をカバー•• 中波なので電波が届きやすい中波なので電波が届きやすい•• 2424時間放送、無料時間放送、無料•• ビーコン一体型受信機も市販ビーコン一体型受信機も市販

•• インテグリティ情報は少ない(未対応のインテグリティ情報は少ない(未対応の受信機もある)受信機もある)

日本の整備状況

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•• FMFMラジオ放送のサブキャリアを使用してラジオ放送のサブキャリアを使用してデータを多重化し、放送。データを多重化し、放送。

•• 国内では衛星測位情報センター(国内では衛星測位情報センター(GPexGPex)が)が19971997年より運用中。年より運用中。77基準局、放送局は基準局、放送局はJFNJFN系列他系列他4141局。局。

•• 主にカーナビ用。精度は数主にカーナビ用。精度は数mm。。

•• DARCDARC方式の多重データの一部に補正情方式の多重データの一部に補正情報を入れてある。報を入れてある。55秒で秒で11フレーム。数回にフレーム。数回に一度の受信でもOK。一度の受信でもOK。

•• 利用料金は対応受信機の価格に含まれる。利用料金は対応受信機の価格に含まれる。

•• TVTV放送の放送のFMFM音声信号や垂直ブランキング音声信号や垂直ブランキングも利用できる。国内でも実験例あり。も利用できる。国内でも実験例あり。

(衛星測位情報センター)(衛星測位情報センター)

FM多重DGPS

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開発中のSBAS(広域DGPS)

((R. Fuller, Stanford Univ.R. Fuller, Stanford Univ.))

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民生利用分野

• 精密測位(mm~cmレベル)

• 航空と宇宙の航法のような特殊な利用

• 陸上輸送と海上利用

• 消費者製品

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精密測位

• 主に測地学者と地球物理学者が利用

• 地殻変動、地震、火山活動、地球自転の変動

• 大規模土木建造物の実時間の歪みの監視

• 航空機の位置や姿勢の精密測定

• 電離層中の電子密度、対流圏の水蒸気量の精密な実時間調査

• 農業、建設、採鉱産業で使用される機械の実時間制御

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第2回 GPSの概要

• 目的・現況・政策

• システム構成

• 信号→第3回、4回の内容含む

• 受信機と測定値

• 補強システムとDGPS• 民生利用

• 近代化計画

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目的

• 米国国防総省(DOD)の主な目的は、米軍に高精度な位値、速度そして時刻を地球規模で提供することであった。

• 平和的な民生利用のための標準測位サービス水平100m以内(SPS)。SA(Selective Availability)により100mに制限された。

• 国防総省が認めたユーザのための精密測位サービス。水平10m以内(PPS)。

• 米国に敵対するものには、そのシステムの便益の完全な享受を拒否できることであった。

• 大韓航空機の航法問題でコースを外し、ソビエト連邦に撃墜された惨事によって、民間航空にGPSが有効であることが注目され、レーガン大統領によって民生利用が再確認された。この10年後にGPSの運用開始。

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政策

• GPSの民生分野でのサービス拡大とともに、ずっとGPSに頼り続けることは良い事態ではないという動きがでてきた→欧州のガリレオ

• 米国は、GPSを世界標準として認めさせることを念頭にSAを解除した。また管理体制もDODからDOD+DOTに変わった。

• 初期のGPSにおいては、DODと民生ユーザとの間

に相当な緊張があったが(米軍は、驚くべき新しい装備品を敵国とさえも共有することにためらった)、最近の関係は良好である。

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衛星から流される信号

• 各GPS衛星はL1(1575.42MHz)とL2(1227.6MHz)と呼ばれるLバンドの二つの無線周波数を使用し

て連続的に電波を送っている。1575.42MHz=2×77×10.23MHz(衛星搭載の原子標準の周波数)

• UHFの一部。L1とL2の波長はそれぞれいくらか?(光速を30万km/sとする)

• GPS衛星はさらにL3(核爆発検知システム)とL4(他の軍事目的)も送信。ほとんど知られていない。

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信号構成

• 搬送波→2つの周波数のRF正弦波信号

• 測距コード→各衛星に割り当てられていて、0と1の固有の系列。各二進数の系列はランダムで、擬似ランダム雑音と呼ばれている。すべての衛星がお互いに干渉しないよう設計されている。C/Aコード(チップレートは1.023MHz)とPコード(チップレートは10.23MHz )の2つがある。C/Aコードは1msごとの繰り返し。Pコードは1週間後に繰り返される。

• 航法データ→2進数で衛星の軌道情報などが50bpsでのせられている。

各コードは、排他的論理和(両方が0または1であれば0、異なれ

ば1)で合成している。合成された2値信号は、2値位相変調

(BPSK)と呼ばれる方法で搬送波にのせられている。

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信号の構造

0のビットでは搬送波信号は変化せず、1のビットは‐1と搬送波を掛け算する。これは搬送波信号の位相を180度変化させること。

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イメージ図

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信号の電力スペクトル

上図に示すように、2値のコードによって変調すると、初めは単一周波数に集中していた信号エネルギーが、搬送波周波数を中心にして、C/Aコードでは2MHz、Pコードでは20MHzの広い周波数帯域にわたって拡散する。この方法は、電力スペクトル密度を、雑音のRF放射電力以下に減少させる。このような信号はスペクトル拡散信号と呼ばれるが、通信と航法の利用において多くの魅力的な特性を持つ。コードが既知であれば、信号エネルギーは受信機で「逆拡散」できる。 →黒板で説明

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スペクトルとは?

• 「スペクトル」という言葉を聞いて何を連想するか?• 一般には、プリズムを用いて白色光を赤黄‥紫の7色に

分解した虹のようなものを 思い浮かべるのではないでしょうか。 光は一種の波です。赤い光の波長は長く、紫の光は逆に短くなっています。

• 周波数(振動数)は波長の逆数ですので、赤は低い周波数、紫は高い周波数の光に相当します。

• 白色光には、様々な波長(周波数)の光が含まれており、プリズムによりそれぞれの成分に分解 されます。この周波数(あるいは波長)に対する各成分の分布をスペクトルと言います。

• 光だけでなく波動で表現できる物理量すべてに、このスペクトルという概念を適用することが可能です。 例えば、電波や電気信号だけでなく、為替の相場等にも適用できます。

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スペクトルの利用例

• 例えば、人間の音声信号を分析して、男女や個人の違いを識別することができます。

• ディジタルオシロスコープを用いて時間の関数として記録し、その波形を細かく観察しても、 それらを識別することはそれほど簡単ではありません。

• しかし、スペクトルアナライザという装置を用いて、周波数の分布を調べることにより、 時間軸では判別できなかった周波数の分布の違いを検出することが可能です。

• すなわち信号のスペクトルを分析して、その信号源を同定したり、特徴パラメータを抽出してパターン認識に利用 する方法があります。

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さらに

• ここに火星から持ち帰った岩石がある。この岩石がどのような成分から成っているかを調べること、これを分析という。

• 各成分の有無を決定する定性分析と、各成分の含有量まで調べる定量分析がある。

• 定量分析で得られた各成分の含有量をある順序で並べたものをスペクトルという。

• ある物質xが成分s1,s2,…,snをそれぞれa1,a2,…,anずつ含むとき、次のように表わす。

x=a1s1+a2s2+…+ansn• 各元素はお互いに無関係、すなわち、互いに他を含

んでいないことが重要。

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イメージ図

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フーリエ解析(黒板で)

• 周波数とは

• フーリエ級数展開

• 周期信号のスペクトルは棒グラフ

• フーリエ係数からフーリエ変換へ

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PRN系列の2つの特徴

• 各衛星のPRN系列はお互いにほぼ直交しており、2つの系列の項ごとの積の和は、互いに任意にずらしたとしてもほとんど0である(無相関)→相互相関関数。

• PRN系列はそれ自身ともほとんど無相関である→自己相関関数。

• 信号の捕捉と追尾において、これらの特徴は非常に重要である。

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ASとSA(米国によるGPSの能力の制限)

• AS(Anti-spoofing)→Pコードの暗号化。コードが分かっているよりも脆弱で、より多くの雑音を含んでいる。また2周波受信機は現在も高価。

• SA(Selective availability)→衛星時計にゆれを与えて測位誤差を通常よりも5-10倍に増大させていた(2000年5月2日に解除された)。

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信号伝搬損失と送信アンテナ利得(黒板で説明)

• 天頂の場合と低仰角衛星の場合の受信出力を求める。

• アンテナの実効面積の説明→Pu [W/m2] の電力密度を有する空間にある開口面積 A [m2] の受信アンテナがすべての電波を吸収したとすれば、給電点に現れる電力 Pi は、Pi = Pu A [W] となる.電力密度が Pu [W/m2] の空間で、あるアンテナの給電点に現れる電力が Pe であると仮定すれば、このアンテナは Ae = Pe / Pu となる面積の空間で電波エネルギーを吸収したことになる. このAe を実効面積と言う.

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信号電力

• 地球上で受信されるGPS信号は非常に弱い(地表面全体にわたって一様な輻射)。衛星のアンテナ入力ポートでのRF電力は50ワット程度。

• 電気工学では広範囲の電力レベルを扱うために、デシベル単位の対数目盛で電力比を表わす。

0

110

0

1 log10PP

PP

dB

ここで、 P1とP0は比較する電力レベルである。電力の絶対値は1Wあるいは1mWに対して、それぞれdBWもしくはdBmの単位で同様に表現できる。0.1Wの電力(P1)を考えると、この電力レベルは-10dBWもしくは20dBmと表現される。第2の信号(P2)が100Wの電力なら、第1の信号より30dB強い。第3の信号(P3)が200Wの電力なら、第2の信号より3dB強い。

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GPS信号の受信電力レベル

• 地球上のユーザが受信するレベルは、L1帯(C/Aコード)で-160dBW程度である。なんと、電力はたったの10-16Wである。

• GPSの信号はアンテナで検知されたRF雑音レベル以下(例えば、-145dBW程度→信号波形を観測するには、少なくとも20dB程度は必要。dBの場合、そのまま足し算引き算で換算可能)である。受信機が雑音に隠された信号を取得し、精密な測定を行うためには信号構造がわかっていることが必要である。この信号の増幅は処理利得と呼ばれる。

• 信号対雑音比(C/N)というものを定義できて、上記では、-15dBとなる。通信の分野では、この信号対雑音比は非常に重要なファクターである。

• 特に軍用では、信号電力が弱いことがGPSのアキレス腱である。民生利用でも、GPSの依存性が高まってきているので、信号の脆弱性に関心が高い。

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どのように処理利得をかせぐのか?

• 前項にも書いたように、信号を捕捉(信号としてとらえる)するためには、同調(tune)を試み、それ以後は連続的に信号の変化を追尾する必要がある。

• 信号を捕捉するため、受信機は衛星から送られてくる各衛星のコードと同じもの(レプリカという)を発生させ、それを少しずつスライドさせることによって自己相関を試みる。信号の自己相関特性から、レプリカと衛星から受信した信号が一致したときに鋭いピークを示すことになる。このピーク分の利得によって雑音以下であった信号が意味のあるものに変わる。

鋭いピーク黒板で説明

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相関値の生データ

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

5 25 45 65 85 105 125

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受信機の内部

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問題

• 伝搬距離20000kmと30000kmの地点で受信できるGPS衛星からの信号強度を求める。なおGPS衛星からは27W(=14.3dBW)

で送信されているものとして、伝搬損失のみ計算すること。またlog10300,000,000=8.5、log10200,000,000=8.3とする。

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受信機と測定値(6月8日)

• GPS受信機の基本的な機能は、以下の通り。

*上空を飛行する衛星から送信されたRF信号を捕捉すること。

*信号の伝搬時間とドップラシフトの測定を行うこと。

*衛星の位置、速度、そして時計パラメータを決定するために、航法メッセージを解読すること。

*ユーザの位置・速度・時間を推定すること。

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航空と宇宙の航法

• 指定された航空路を飛行するための慣性航法システム→非精密進入。

• 精密着陸進入、自動着陸

• 米国ではWAAS、LAASと呼ばれている。

• 低軌道衛星にGPSを搭載→位置、速度、姿勢、

時刻などが得られるので、大量のセンサを取り外し、費用の削減と衛星設備の複雑さの解消ができる→スペースシャトルも。

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陸上と海上の航法

• 現在、GPSの最大の応用は陸上輸送、特に移動体航法と追跡である。最も人気のあるものが、カーナビ(国内累計出荷台数で2000万台以上)。

• GPSの3次元航法には最低4機必要。しかし、地形、樹木の葉、建物等によってしばしば4機以上の衛星を追尾することが困難→推測航法センサーが必要(ジャイロ、磁気コンパス、走行距離計、加速度計)。

• 海上に関しては、既に広く利用されている。石油タンカー事故等(非常に大きな問題)では、積極的な監視用として利用されている。

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消費者市場• 3次元測位について熟知するのは、ほとんどのユーザ

にとって学術的な興味のみ。

• もしこれから向かう経路に関連して位置が与えられ、関心のある場所や危険性のある場所が示されるなら、非常に貴重→登山、自動車。

• テレマティクスの技術は移動中の情報を提供するものだが、現在の位置が容易に取得できればサービスを広げることが可能(例えば、5マイル以内のホテルに対して、50ドル出せると提供するだけで、後は提供者を待つ)。

• 値段の割には質のよいシングルチップのGPS受信機がよく売れている。携帯、PDA、自動車からコンピュータまでの広範囲に及ぶ個人所有のセキュリティデバイスに組み込まれようとしている(緊急通報E911)。

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近代化計画

• 米国の優先政策としての商業の発生がSAの停止(誤差が100mから10m以内)につながった。

• GPSへの依存度が増すにつれて、他の懸念も発生。GPSは信号が非常に弱く、干渉に対するスペクトル拡散の処理利得が大きくないので、特に影響を受けやすい→安全に関わるシステムに利用する場合バックアップが必要。

• 今後、ガリレオ(欧州の測位衛星で既に試験衛星打ち上げ済み。日本も準天頂衛星打ち上げ予定)との共存や周波数の追加が行われ、サービス向上が期待される。

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座標系、時刻標準、人工衛星の軌道

• ユーザやGPS衛星の位置を表し、衛星の移動を記述するための、座標系の定義。

• 瞬間の時刻と時間間隔の特性

• 衛星軌道の性質と、ある瞬間における衛星の位置および速度の決定。

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基準時刻とGPS時刻

• 何百年の昔は、田植えの時期を逃さない程度に時間を知ることができれば十分だった。今日ではナノ秒(10-9 s)あるいはピコ秒(10-12s)の精密さで時間を測ることができる。

• 宇宙機上で精密に同期した信号を生成してその送信時刻を測定することは、GPSの核心である→衛星搭載クロックの1μsの同期誤差は擬似距離に300mの誤差を生じ、位置の計算でもこれに対応する誤差が混入する。メートル級の測位精度が必要ならば、各衛星の搭載クロックは数ナノ秒以内で同期していなければならない。

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時間について

• 瞬間の時刻を決定するための時刻の開始時点については、明確な物理現象はない。

• 時計とは、本質的には、周期的な現象を発生させ、それを数える装置である。そのような時間を計測する際の精度は次に依存する。

*最初に設定した周波数の誤差

*周期的な現象を維持する能力(周波数安定度)

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時間尺度:天文時

• 太陽を基準とした場合の時刻と恒星を基準とした場合の時刻→1視太陽日の間に地球は公転軌道の1/365だけ太陽のまわりを周るため、恒星に対しては1回転より少し多く回ることになる。

• 平均太陽日はおよそ4分だけ恒星日より長い→GPS衛星の周回周期は1/2恒星日なので、地球のまわりを2周すると水平線の同じ位置から昇るが、その時刻が前日よりも4分だけ早くなる。

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精密な時刻への需要が高まるにつれて

• 1秒の長さの再定義が必要となった。予測

不能な極運動や自転速度の変動の影響を受けない、地球の公転を基準とした新しい時刻標準が導入された→最終的に原子時

• 1967年に国際的に合意された現行の1秒

の定義は、セシウム原子の共振周波数に基づいている。

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つづき

• 原子時によりこのように定義された連続的な時間尺度は、国際原子時(TAI)と呼ばれる。これは、地球の自転や公転に拘束されない精密かつ一様な時間尺度である。しかし。地球自転による時刻との関係を捨て去るわけにもいかない→このため、妥協として協定世界時(UTC)が考えられた。

• 1958年1月1日0時の時点では、UTCとTAIは一致していた。2001年1月1日現在では、32秒の差(TAI-UTC=32)である。よって、UTCとTAIは必ず1秒の整数倍だけずれている。閏秒(地球の自転速度に応じて)で調整。

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周波数源の安定性

• 水晶発振器は短時間であれば10-9~10-10程度の安定度を持つが、長時間に対しては2~3桁ほど悪くなる。

• 水晶の共振周波数は温度により変化するから、温度を制御あるいは補償する必要がある。TCXOは温度センサーにより温度変化を補償する。

• OCXOの場合は、水晶の温度がヒータにより一定の温度に保たれる。OCXOは3桁ほど安定度を改善できるが、電力を要し、大きくそして高価である。

• セシウムおよびルビジウムによるクロックは、水晶と同程度の短時間安定度を持ち、長時間に対しても10-12~10-13の安定度がある。さらに時間が長くなるとセシウムはOKだが、ルビジウムはやや悪くなる。現在最も安定な原子時計は水素メーザで、その安定度は10-15のオーダである。

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異なるタイプのクロックの安定度

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ホイヘンスの振り子から原子時計に至る計時法の進歩

他の物理量と比べて時間は最も高精度かつ精密に測定できる。このため、1983年からは1mの長さは原子時を用いて定義されており、真空中で光が1/299792458秒の間に進む距離である。

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GPS時刻

• UTCと同じように、GPS時刻は人工的に合成された時刻。セシウム及びルビジウム周波数標準群の測定に基づいている。

• GPS時刻とUTCとの大きな違いは2つあり、第1にリアルタイムに生成されるものであり、第2に連続した時刻である。GPS時刻はUTCの小数部分と1μs以内で一致するように「制御」されている。2006年現在、ちょうど14秒の開きがある。

• GPS時刻は1980年の運用開始から連続したエポックを刻んでいるが、1023週目でロールオーバーが起きている。GPSの1週間は604800秒。

• GPS衛星同士のクロックは、地上側での管制により、5~10ns以内の同期を保っている。

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GPSの軌道と衛星位置決定

• GPSの運用には、信号の送信された時点における衛星の位置を正確に予測する機能が不可欠。

• 各衛星が航法メッセージの一部として放送する軌道要素に基づいて、衛星の位置は真の位置から2-3m以内の精度で計算される。

• 実にすばらしいのは、こうした軌道要素は24~48時間前の測定値に基づいて予測されているということである。

• これらは、宇宙時代が幕を開けた1957年以来の人工衛星に関する経験による成果である。次より、上記の軌道要素について少し詳しくみていく。

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GPS衛星の軌道と衛星位置決定について

話のポイント・衛星の位置はどのように求めるのか?その精度は?・アルゴリズムとは?

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概要

• 背景

• ケプラーの法則

• 理想的な楕円軌道(ケプラー6軌道要素)

• 衛星の位置と速度

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背景

• GPSは衛星を利用して位置を測定するシステムであり、正確な衛星の位置を知る必要がある。

• 各衛星から放送される軌道パラメータ(放送暦:Broadcast ephemeris)を利用することによって誤差2~3m以内で決定される。

• 軌道パラメータは24~48時間前に予測される。

• 上記は500年にわたる天体力学における知識の蓄積と1957年来の人工衛星の開発経験によるものである。(スプートニクⅠ ソビエト連邦)

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GPSシステム

宇宙部分

利用者部分 地上制御部分

6軌道面×4~5衛星衛星ごとにPRNコード

5モニタ局からのデータをもとに主制御局で衛星軌道、衛星時計補正値を計算し、3つのグランドアンテナより衛星に送信

擬似距離など測定されたデータから、位置・速度時刻を算出

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実際の軌道予測精度

Time(hours)1 2 3 4

Erro

r(m

)

-2.5

2.5

0.0

精密暦(誤差10cm以内)と放送暦の差を表す

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ケプラーの法則

• 惑星は太陽を1つの焦点とする1平面上で楕円軌道を描く。

• 惑星が太陽のまわりを回るときの面積速度は一定である。

• 惑星の公転周期の2乗は、軌道長半径の3乗に比例する。

天動説 不断の観測により法則性を発見

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太陽を1つの焦点とする楕円軌道

遠地点近地点

ab

ae

a:長半径b:短半径e:離心率

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面積速度一定

太陽から遠い惑星ほど、速度が遅い

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実際の公転周期と軌道長半径

惑星 周期T(年)

軌道長半径a(AU)

T二乗/(a三乗)

水星 0.24 0.39 0.971

金星 0.61 0.72 0.997

地球 1.00 1.00 1.000

火星 1.88 1.52 1.006

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地球と人工衛星の関係

• 今まで太陽と惑星の関係(ケプラーの法則)について述べてきましたが、この関係は地球と月の関係、ひいては地球と人工衛星(GPS衛星)の関係にもあてはめることができます。

太陽と惑星(地球)

地球と月

地球と人工衛星

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万有引力の法則

• ケプラーの死後、ニュートンがケプラーの法則に科学的な根拠を与えた。ケプラーの発見はニュートンの万有引力の発見に大きな貢献をした。

EsrrGMm rrrrF 2

rs

rE

r

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運動方程式による人工衛星の軌道

• 万有引力による衛星の地球まわりの運動を二体問題(両者を質点とみなす)と考える。前述のニュートンの運動方程式から算出される。これは理想的な二体問題。

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地球以外による衛星への力

• 衛星には質点と考えた地球以外に多くの微妙な力が作用している。よって理想的な2次曲線からずれる。このずれを摂動と呼ぶ。以下主なもの。

1、地球の重力ポテンシャルの非球状成分

2、地球大気の抵抗

3、月・太陽の引力

4、太陽輻射圧

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WGS84について

• GPS衛星はWGS84という地球中心を原点とする座標系を用いています。赤道上経度0度の方向をx軸、そこから右回りに直交してy軸、北極方向をz軸としています。

• 上記の座標系に対して日本測地系というものがあり、これは日本付近の地表と地球を表す基準楕円体が一致するような楕円体を用いているので地球中心からは各軸方向に数百mずれています。

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ケプラーの6軌道要素

• 上記で述べた理想的な状態では、GPS衛星の運動は地球を1つの焦点とする楕円軌道によって特徴づけられる。この軌道は6つのパラメータより表される。これらのパラメータはある時刻での衛星の位置及び速度を決定するものである。

• 6つのうちの5つは宇宙空間での方向、軌道の形状、大きさを決定。6つ目はある時刻での位置を決定する。

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楕円軌道の特徴を決定(2/6)

• 軌道長半径(a):軌道の大きさを表す

• 離心率(e):楕円のつぶれぐあいを表す

長半径(a)

短半径(b) 2

2

1abe離心率

e=0で円、0<e<1で楕円、e=1は放物線、e>1は双曲線

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軌道面の向きを決定(2/6)

• 軌道傾斜角(i):軌道面と赤道面のなす角

• 昇交点赤経(Ω):軌道面と赤道面の交点のうち、衛星が赤道面を南側から北側へ通過する点

赤道面

軌道面

春分点方向 i:軌道傾斜角

Ω:昇交点赤経

遠近点

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軌道面内での楕円の向き決定(1/6)

• 近地点引数:軌道面内の楕円の長軸の向き

赤道面

軌道面

i:軌道傾斜角

Ω:昇交点赤経

遠近点

ω:近地点引数

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軌道面内の衛星位置決定(1/6)

• 平均近点離角:ある時刻における衛星の軌道上の位置

赤道面

軌道面

i:軌道傾斜角

Ω:昇交点赤経

近地点

ω:近地点引数

M:平均近点離角

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GPS衛星の位置を実際に算出

• 放送暦や天体暦(almanac)を利用して算出。

• 通常、放送暦は2時間ごと、天体暦は1週間ごとに更新される。衛星からの電波に情報として組み込まれている(要解読)。

• これらの暦には、前述のケプラーの6軌道要素や、さらに摂動を考慮した予測係数等が示されている。この予測により精度を向上させている。

• 放送暦は2~3mの精度、天体暦は数百m~数kmの精度である。

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天体暦(アルマナック)について記号 内容 単位

IDHEALTHetoa

i0

Ω-dot√AΩ0

ωM0

a0

a1

WEEK

衛星のPRN番号

衛星の健康状態

離心率軌道要素の元期(基準時刻)

軌道傾斜角昇交点赤経の時間変化率

軌道長半径の平方根昇交点赤経近地点引数平均近点離角衛星時計補正係数の0次項

衛星時計補正係数の1次項

現在時刻のGPS週番号

srad

rad/sm1/2

radradrads-

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実際の天体暦(アルマナック)

******** Week 65 almanac for PRN-01 ********

ID: 01

Health: 000

Eccentricity: 0.4962921143E-002

Time of Applicability(s): 503808.0000

Orbital Inclination(rad): 0.9623416489

Rate of Right Ascen(r/s): -0.7897471819E-008

SQRT(A) (m 1/2): 5153.587891

Right Ascen at Week(rad): 0.8094426381E+000

Argument of Perigee(rad): -1.746035655

Mean Anom(rad): -0.1816641466E+001

Af0(s): 0.1535415649E-003

Af1(s/s): 0.0000000000E+000

week: 65

米国のUSCGのHPより取得可能。YUMAファイルと呼

ばれており本来のアルマナックとは少し異なる。

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GPS衛星位置算出アルゴリズム

手持ちの資料を参照

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離心近点離角と真近点離角の補足説明余弦

M E ν

a

b

ae

M:平均近点離角E:離心近点離角ν:真近点離角

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まとめ

• 衛星の軌道を表現する暦(Ephemeris)には天体暦、放送暦、精密暦等がある。

• アルゴリズムとは簡単にいうと、問題を解決するための処理手順である。

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主な誤差の要因

衛星軌道情報の誤差衛星軌道情報の誤差

対流圏対流圏

電離層電離層 電離層遅延(~電離層遅延(~100m100m))周波数に依存周波数に依存

対流圏遅延(~対流圏遅延(~20m20m))

マルチパスマルチパス

衛星クロック誤差衛星クロック誤差

高度高度250250~~400km400km程度程度

高度高度7km7km程度まで程度まで

太陽光線太陽光線