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博士論文 L a c t o b a c i l l u s 属細菌の環境適応能の 解析とその応用に関する研究 平成27年3月 渡邊 正行

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博士論文

Lactobacillus 属細菌の環境適応能の

解析とその応用に関する研究

平成27年3月

渡邊 正行

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目次

第1章 序論 1

第2章 乳を生育環境とする Lactobacillus helveticus の馬乳酒アイラグ中での

環境適応と至適生育条件の変化

緒言 10

実験材料と実験方法 10

結果 12

考察 19

要約 20

第3章 植物を生育環境とする Lactobacillus plantarum における呼吸鎖の発現と

ストレス耐性の変化

緒言 22

実験材料と実験方法 23

結果 26

考察 35

要約 38

第4章 消化管内を生育環境とする Lactobacillus gasseri のストレス耐性と

生残性向上方法

緒言 40

実験材料と実験方法 41

結果 44

考察 50

要約 51

第5章 総括 52

謝辞 57

参考文献 58

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第1章

序論

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1.人類と乳酸菌の関係

乳酸菌は発酵により乳酸を生成することで食品中の pH を下げて保存性を向上させるだ

けでなく、フレーバー物質の生成やタンパク質などの分解により風味を向上させるという

ことが知られている。このような特長を生かし、古来より人間の生活に深く結びついた微

生物であり、さまざまな飲食品に利用されている。伝統食品などでは残った部分を次のス

ターターとして使用する場合もあるが、工業的に製造されるものは純粋あるいは混合培養

したスターター乳酸菌を添加することで発酵を制御することが多い。乳酸菌を利用した飲

食品として各種の発酵乳製品や、ビールやワイン、清酒などアルコール飲料のほか、野菜

を発酵した漬物のザワークラウト、ソーセージなどの肉製品、味噌や醤油のような調味料、

サイレージなどにも工業的に利用されている。また各地域に伝統的な乳酸菌発酵食品があ

り、モンゴル地域の伝統的なアルコール発酵乳である馬乳酒アイラグ、日本のすんきなど

牛乳だけでなく世界中で多種多様な発酵食品の製造に利用されている。

2.乳酸菌の分類

乳酸菌は分類学上の名称ではなく、糖を発酵して多量の乳酸(50%以上)を生成するグ

ラム陽性細菌の総称である。球菌としては Streptococcus 属、Lactococcus 属、Pediococcus属、Leuconostoc 属、Enterococcus 属などが含まれる。桿菌としては Lactobacillus 属な

どが挙げられる。また乳酸生成量は 50%に満たないが Bifidobacterium 属も広い意味で乳

酸菌に分類されることもある。乳酸菌はグルコースを糖源として最終産物の 85%以上が乳

酸であるホモ発酵、最終産物が乳酸とエタノール、二酸化炭素となるヘテロ発酵の 2 種類

の発酵様式を持つ。さらにペントース代謝経路の有無により、偏性ホモ発酵型、通性へテ

ロ発酵型、偏性へテロ発酵型に分類される。また生成する乳酸の光学異性体の比率によっ

ても分類されることもある。

3.乳酸菌の分布と利用

乳酸菌はヒトの生活環境と密接に関係した自然環境に生育することが知られている。そ

の生育環境は以下の 3 つに大別される。

(1)乳

人類が利用する乳の中では牛のものが多数を占めているが、牛以外にも羊や山羊、水牛、

ラクダ、馬などの乳が食用とされている。いずれの乳もそのまま飲用される以外に加工し

てクリームと脱脂乳に分離してそのまま食されるほか、それらをさらにバター、チーズ、

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ヨーグルトなどに加工して食用とされる。乳はいずれも栄養分を豊富に含むため、乳酸菌

にとっては格好の生育場所となる。

乳酸菌を利用した乳製品であるチーズの起源は諸説あるが、紀元前から牛の胃袋に乳を

保管しており、牛の胃の中のレンネットと呼ばれるプロテアーゼと乳酸菌が働くことによ

り、固形分の塊(カード)と液体(ホエー)への分離が偶然生じたと考えられている。こ

のように得られたカードをさらに熟成という工程を経ることにより乳酸菌の持つプロテア

ーゼやペプチダーゼなどの酵素の作用により、独特の風味を生み出している。

伝統的な製法では残ったヨーグルトや発酵乳製品を次の種菌として使用したり、チーズ

製造時に生成するホエーという液体を次の製造のスターターとして使用している。このよ

うな方法では雑菌汚染のリスクが大きいことから、商業的には選抜した乳酸菌を純粋培養

し、単独または複数を組み合わせてスターターとして使用することが多い。ヨーグルトで

は Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus や Streptococcus thermophilus が、チー

ズでは Lactococcus lactis subsp. lactis や Lactococcus lactis subsp. cremoris が用いられ

る。また伝統的な発酵乳製品では Leuconostoc mesenteroides や Lactobacillus helveticusなどが分離されることがある 1), 2)。

(2)植物 3)

植物にも乳酸菌は分布しており、花の蜜や樹液、植物体(葉、茎、花、果実、根など)

の堆積土、傷付いた果実などから分離される。また、穀類や豆、いも、野菜などの植物の

発酵食品は世界各地で認められる。例えば朝鮮半島のキムチ、ドイツのザワークラウト、

日本のすんき、中国のパオツァイなどの野菜を使った漬物や、味噌や醤油などの調味料、

さらにワインや日本酒、ビールなどの醸造酒も植物成分を微生物により発酵させた食品で

ある。これらはいずれも乳酸菌だけでなく、酵母やその他の微生物も共存して発酵するこ

とで独特の風味を醸し出している。また食品だけでなく、畜産で必要なサイレージにも乳

酸菌による発酵工程が製品の出来に重要となる。これらの発酵物は乳酸菌の生成する乳酸

で pH が低下し、有害微生物の繁殖を抑制し、保存性を高めることに寄与している。また

パンやアルコール発酵などでは酵母が炭酸ガスやアルコールを生成することが発酵の主と

して考えられているが、乳酸菌が風味に大きな影響を与えることが知られている。

これらの発酵物で検出される乳酸菌は食塩濃度によって異なり、食塩濃度が 10%以上で

はTetragenococcus halophilus が主体で 10%以下ではLactobacillus属、Leuconostoc属、

Pediococcus 属が主体となる。中でも Lactobacillus plantarum や、Leuconostoc mesenteroides、Pediococcus petosaceus などがよく検出される。

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(3)消化管

人の腸内には 100 種以上、100 兆個以上の微生物が生息している。また、人以外の生物

の腸管内や牛など反芻動物のルーメンにも多くの微生物が存在し、栄養分消化吸収に寄与

している。人の消化管内においては嫌気度や消化液に由来する pH によって存在する菌種、

菌量が変化することが知られている。

これらの消化管内細菌のうち、乳酸菌に含まれるのは Bifidobacterium属、Lactobacillus属、Enterococcus 属が挙げられる。Bifidobacterium 属は偏性嫌気性菌であり、1 モルの

乳糖から2モルの乳酸3モルの酢酸を生成するため、乳酸菌の定義(糖からの代謝物の 50%

以上が乳酸)からは外れるが、広義の乳酸菌とされることが多い。

4.乳酸菌の生理機能

乳酸菌のもつ生理機能として古くはメチニコフの不老長寿説にさかのぼる。その後アン

チバイオティクス(抗生物質)に対して Fuller の提唱したプロバイオティクスという考え

が知られている 4)。その後変遷を経てプロバイオティクスは FAO/WHO により、「十分な

量を与えたときに宿主に健康上の利益をもたらす生きた微生物」と定義されている 5)。最

近では微生物が作り出した有効物質についてバイオジェニクスという考えも提唱されてい

る 6)。これは「腸内フローラを介することなく、直接、血圧降下作用、免疫賦活作用、コ

レステロール低下作用、整腸作用、抗腫瘍作用などの生体調節・生体防御・疾病予防・老

化制御などに働く食品成分」と定義され、実際に効果も確認されている 7)。

しかし、現状ではプロバイオティクスとして生きた菌での効果が多く報告されており、

主なものでは下痢や便秘などの改善といった整腸効果 8)、病原菌の感染防御効果 9)だけで

なく、血中コレステロール低減効果 10)や内臓脂肪蓄積抑制効果 11)といった脂質代謝に関連

する効果も見出されている。さらに腸内細菌叢と脳機能がお互いに影響を与えるという脳

腸相関という関係も報告され 12)、乳酸菌の生理機能に関する研究はさらに進むことが期待

されている。

発酵飲食品だけでなく、整腸剤やサプリメントの形態でも乳酸菌が販売されており、特

に整腸効果において機能を発揮するためには生きた状態の菌が必要とされている。

5.乳酸菌の生育と生残性

乳酸菌に限らず、生物が生育、増殖し、生残していくうえで栄養源、pH、温度(低温、

高温)、酸素(酸化物)、浸透圧(乾燥)といった物理化学的な環境因子は適度な範囲であ

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ることが必要である。また、これらの範囲から外れた場合には死滅する方向へ向かうこと

もある。乳酸菌の生育、増殖に対するこれらの環境因子への対応についてはこれまでの研

究で以下のようなことが調べられている。

(1)栄養源

エネルギー獲得のために必要な糖類など炭水化物、菌体組織や酵素などのタンパク合成

に必要なタンパク質、ペプチド、アミノ酸などの窒素源、菌体内で機能する酵素の補因子

としてのビタミン、ミネラル類などがある。これら以外にも代謝経路で一部が欠損してい

る場合はそれに相当する栄養源を添加する必要があるが、活性が低い別の合成経路で必要

とする成分を合成できる場合もある。生育域や菌種、菌株により栄養要求性は異なり、特

に消化管内や乳などを生育域とする乳酸菌は他の微生物と比較して栄養要求性が高い。特

に他の微生物と共存している場合はその微生物の代謝物を要求する場合もある。

(2)pH

乳酸菌は一般的に酸素呼吸をせずに嫌気代謝によりエネルギーとなる ATP を生成して

おり、いずれも糖から有機酸を生成する。そのため、環境中の pH が低下し、多くの微生

物は生育が難しくなるが、乳酸菌はその様な状況下でも、他の微生物と比較して生育でき

るものが多い。塩酸などの強酸は解離してイオンとなっているため、菌体膜を通過しにく

いが、乳酸や酢酸といった有機酸は弱酸であるため、非解離型の状態で菌体膜を通過し、

菌体内で解離することで菌体内酵素などのタンパク質や DNA に損傷を与えると考えられ

る。乳酸菌の低 pH 耐性機構としては菌体内 H+の排出能力の向上 13)、グルタミン酸やリ

ンゴ酸の脱炭酸反応を利用した菌体内 pH の上昇 14), 15)、ウレアーゼによるアルカリ生産 16)

など様々な報告がされている。

(3)温度

乳酸菌は芽胞を形成せず、至適温度は 20℃から 30℃の中温菌または 35℃から 45℃の高

温菌に分類されることが多い。同じ菌種でも生育環境により至適温度は異なる。高温に対

応するメカニズムとして分子シャペロン(DnaK, GroESL, Clp)などのヒートショックプロ

テイン(HSPs)と呼ばれるタンパクの関与が報告されている 17), 18)。HSPs により熱変性した

タンパクの修復や除去が行われ、代謝がスムースに行われるように管理されている。

また低温では酵素反応速度の低下や、mRNA の安定化による翻訳効率の低下、それに伴

う代謝速度の低下などが起きる。それを防止するためにコールドショックプロテイン(Csp)

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の関与 19)などが示唆されている。

(4)酸素

一般的に乳酸菌は通性嫌気性を示し、クエン酸回路(TCA 回路)は一部しか持たないた

め、生育に酸素は必要なく、むしろ酸化ストレスの発生源となるため、嫌気的環境で生育

が向上するものが多い。

酸素だけでなく、酸素が菌体内などで変換されることによって生じる過酸化物などの活

性酸素種(ROS)も生育や生残性に影響を与えることが知られている。ROS は以下のよう

に生じると考えられている。酸素からスーパーオキシドアニオンラジカル(O2-)を生じ、

そこから過酸化水素、さらに共存する Fe2+によりフェントン反応が起きてさらにエネルギ

ーの高いヒドロキシルラジカル(•OH)が生じる。これらの ROS は細胞内のタンパク質や

DNA にダメージを与え、死に至ることが知られている 20)。そのため好気的な生物におい

ては防御機構を持っており、発生した O2-はまずスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)によ

って過酸化水素に変換され、ついでカタラーゼによって無害な酸素と水に変換される。し

かし乳酸菌では SOD、カタラーゼのどちらか、あるいはいずれも持たない菌種が多い。そ

のため、酸素の存在によって生じた ROS により、死滅することがあるが、SOD やカタラ

ーゼを持たない乳酸菌が ROS などの酸化ストレスによる影響を低減するためにいくつか

の防御機構が報告されている。例として NADH を利用して酸素を過酸化水素または水に

変換する NADH オキシダーゼやペルオキシダーゼ 21), 22)、カタラーゼ以外の過酸化水素分

解酵素としてマンガンを中心金属に持つシュードカタラーゼ 23)、菌体内の Fe2+を取り込ん

でフェントン反応を置きにくくするフェリチン様鉄結合タンパク質 24)、 また酸化された

タンパクを修復するチオレドキシン-チオレドキシンレダクターゼ 25)などが報告されてい

る。

一方、近年の研究でヘムあるいはヘムとメナキノン(ビタミン K2)を加えることで電子

伝達系が発現し、酸素を最終電子受容体として消費する乳酸菌がいくつかの菌種で存在す

ることが明らかになっている 26), 27)。解糖系のみから ATP を獲得する嫌気発酵と比較して

電子伝達系を利用した場合に ATP の獲得量が増加することから、生育が向上すると報告さ

れている 28)。

(5)浸透圧

塩類、糖類など溶質の濃度が高くなると水分活性が低下し、浸透圧が高くなる。また、

加熱や膜処理による濃縮によって水分を除去した場合も浸透圧は高まる。菌体内外の浸透

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圧の差により、栄養分の取り込みや代謝物の排出などが行われなくなる。浸透圧に対する

防御機構としては菌体内にグリシンを取り込んだり、ベタインを合成したりすることで浸

透圧差をなくすことで対応することが報告されている。また Lc. Lactis において ATP 結

合カセット(ABC)トランスポーターである OpuA の関与が示唆されている 29)。醤油中で生

育する Tetragenococcus halophilus は高塩濃度中での生育、生残性が高いことが知られて

いる。

6.ストレス耐性研究

上述したように乳酸菌に限らず、生物が生きていくうえで栄養源、pH、温度、酸素、浸

透圧といった物理化学的な因子は生育するために適切な範囲にあることが必要である。こ

れらの因子が適切な範囲から外れると生物にとってはストレスとなり、生育阻害だけでな

く、死滅要因になりうる。また他の生物が産生した抗生物質、化学物質などで生育阻害や

死滅要因となる場合もある。

微生物のストレス耐性に関する研究は乳酸菌より病原菌で先行している。人類は病原菌

を死滅させるためにさまざまな抗生物質や殺菌剤を探索し、開発してきた経緯にある。し

かし微生物の変異速度は速く、これらの物質に耐性を持ち、生育できるような病原菌も現

れている。このような遺伝子レベルの変異ではなく、同じ遺伝型でも異なる表現型を表す

ことが知られている。その一つの理由としてストレス適応があげられる。ストレス適応と

は弱いストレスを与えることでその後の致死的なストレスへの耐性が向上するというもの

である 30)。例えば L. gasseri を乳酸により pH4.8 として 30 分処理することでその後の

pH2.5 での生残性が向上すること 31)などが知られている。

またこの弱いストレスは同種のものである必要はなく、ある種類の弱いストレスを与え

ることで別の種類の致死的な強いストレスへの耐性も向上するクロスプロテクション(交

差ストレス耐性)という効果も報告されている 32)。例えば L. johnsonii における高温ショ

ックによる凍結耐性の向上 33)や、L. plantarum におけるエタノールストレスによる高温

ストレスへの耐性が向上 34)、胆汁酸による Enterococcus faecalis の高温耐性の向上 35)な

どがあげられる。

さらに酸や抗生物質といった特定のストレスが菌体内の ROS 生成を促進し、生成した

ROS によって菌が死滅する可能性についても大腸菌 36)や Bacillus 属細菌において見出さ

れている 37)。このように病原菌において殺菌作用向上やストレス耐性メカニズム解明のた

めに行われた研究を乳酸菌にあてはめると生残性向上という課題の答えにつながる可能性

がある。

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7.本論文の構成

乳酸菌と称される細菌群の中でも Lactobacillus 属細菌は上述したように幅広い生育環

境から分離され、乳や乳以外の発酵食品のスターターとしてだけでなく、プロバイオティ

クスとしても利用されており、工業的にも利用価値が非常に高い。このような背景をふま

え、本論文では生育環境の異なる 3 種の分離源に由来する Lactobacillus 属細菌に着目

し、以下のように研究を進めた。

第 2 章では乳を主な生息環境とする Lactobacillus 属細菌として Lactobacillus helveticus を対象とし、生育の pH、酸素、アルコールの影響について調査し、環境適応

のための生育戦略、遺伝子レベルでの進化の可能性について考察した。

第 3 章では植物から多く分離される L. plantarum をモデルとして調査した。乳酸菌は

酸素呼吸しないと定義されているが、ある一定の条件では電子伝達系が発現して酸素を利

用できる状態になり、生育が向上することが報告されている。しかしこの状態の菌体にお

けるストレス耐性は不明な点が多い。そこで L. plantarum WCFS1 の電子伝達系を発現さ

せた時の酸化ストレスおよび低 pH ストレス耐性への影響について調べ、菌の状態変化に

よるストレス耐性への影響について考察した。

第 4 章ではヒト腸内を生育環境としてプロバイオティクス効果が確認されている L. gasseri を対象とし、飢餓ストレスでの前処理によるクロスプロテクション効果を利用し

た生残性向上方法について検証した。

これらの結果から、生育環境の異なる Lactobacillus 属細菌が環境ストレスに適応し、

生き残るための方法を知ることにより、これらの菌を工業的に使用する際に極めて重要で

ある生残性の向上に貢献することを目的として本研究を進めた。

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第2章

乳を生育環境とする

Lactobacillus helveticus の馬乳酒アイラグ中

での環境適応と至適生育条件の変化

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緒言

Lactobacillus helveticus は世界各地の乳製品から分離される。イタリアのパルメジャー

ノレッジャーノチーズは伝統的製法では製造時に排出されたホエーを次のスターターとし

て使用しており、クッキング温度が高い(53-56 °C)ため、高温に適応した L. helveticusが自然の選択圧により選抜されていることが知られている 38) 。またタンパク分解能が高

く、アジャンクトスターターとして大手スターターメーカーでの商品化も行われており、

その性質についても詳しく調べられている 39), 40) 。

一方、L. helveticus はヨーロッパのチーズだけでなく、モンゴルや中国などのアジア地

域における乳製品からも分離される。モンゴル国で製造、飲食に供されている乳製品とし

てアイラグやツェゲーと呼ばれる馬乳酒がある。それらから Lactococcus 属、Leuconostoc属および Lactobacillus 属の乳酸菌や Saccharomyces cerevisaie などの酵母が分離される

1) 。これらの微生物によりアイラグの pH は 3-4、アルコール度数は 1-3%程度となってい

る 41) 。アイラグは泌乳期の夏に作られ、冬期は乾乳期のため乾燥して保存され、翌年の

スターターとなる 42)。

このようにヨーロッパのチーズとアジアの乳製品とでは温度やアルコール、乾燥といっ

た製造条件や共存する微生物が異なっている。そのため、同じ L. helveticus という菌種の

中でも選択圧や、環境へ適応した遺伝子の変化が起こる可能性が高い。

本研究ではモンゴル国の馬乳酒から分離した L. helveticus について生育に最適な pH、

培地成分などの培養条件を調べることにより、L. helveticus がどのような環境適応をして

きたのかを明らかにすることを目的とする。

実験材料と実験方法

(1)使用菌株

L. helveticus の基準株である JCM1120T、モンゴルの馬乳酒から分離された SBT11087

および SBT11261 を使用した。

(2)使用培地

液体培地は MRS broth(Bekton&Dickinson)、Reinforced Clostridial broth(RC,

OXOID)を使用し、平板培地として使用する際はこれらに寒天(1 級、純正化学)を

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1.5%(w/v)添加して使用した。滅菌前に 10%塩酸で pH 調整後に 121 °C、15 分間滅菌して

培地を調製した。MRS 培地成分添加試験では硫酸マグネシウム七水和物(和光)、硫酸マ

ンガン一水和物(和光)およびツイーン 80(関東化学)をそれぞれ 10 g/L、4 g/L、50 g/L

となるよう溶解し、121 °C、15 分滅菌したストック溶液を調製した。これらをそれぞれ培

養体積の 1/100、1/100、1/50 量を添加して調製した。アルコール添加試験ではエタノール

(和光特級)を使用し、培地滅菌後に所定濃度となるよう添加して調製した。

(3)静置培養

各菌株を MRS 液体培地で 37 °C、16 時間静置培養した菌体をリン酸緩衝液(PBS、ダ

ルベッコ)で洗浄し、同量の PBS に懸濁したものを前培養物とした。各液体培地 8 ml を

15 ml 容のねじ口試験管に入れ、前培養物を 1%接種し、37 °C の恒温水槽で 16 時間静置

培養した。

(4)定 pH 培養

培養中の pH を一定にするため、2L ジャー培養システム(BMJ-02NC、エイブルバイ

オット)を使用して定 pH 培養を行った。窒素ガスを上面に通気して嫌気状態とし、撹拌

速度を 100 rpm、培養温度を 37 °C とし、上述した前培養物を 1%接種して培養を実施し

た。中和剤として 20% (w/v)の炭酸アンモニウム(国産化学)を使用し、所定 pH となる

ように自動添加することで培養中の pH を制御した。

(5)生育の測定

Ultrospec 2100 Pro system (GE Healthcare)を使用して 660 nm の吸光度を測定し、

菌体密度(OD660)とした。培養物の pH は pH メーター(F-22、ホリバ)を使用して測定

した。生菌数は培養物 1 ml を 9 ml の A 希釈液(4.5 g/L の二リン酸カリウム(和光)、6.0

g/L のリン酸二ナトリウム(和光)、0.5 g/L の L システイン塩酸塩(Wako)、0.5 g/L のツイ

ーン 80 (関東化学)、0.5 g/L のバクトアガー(BD))で段階希釈し、平板培地に 0.1ml 塗抹

し、特に記載のない場合は嫌気状態で 37 °C、3 日間培養後に生育したコロニー数を計数

して算出した。嫌気培養はアネロパックケンキ(三菱ガス化学)を使用し、インジケータ

(Bekton&Dickinson)で確認した。なお一部についてはアネロパックキャンピロ(三菱ガス

化学)を使用して微好気条件で培養した。いずれの測定も培養を 2 回実施し、結果を平均

値で表した。

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結果

(1)L. helveticus の平板培地での生育に対する pH と嫌気度の影響

L. helveticus3株の MRS 液体培地培養物を RC 寒天プレートに塗抹し、嫌気培養で生

育したコロニー数から算出した生菌数を Fig. 1 に示す。JCM 1120Tおよび SBT11087 は

平板培地の pH が 6.0 から 4.5 の間で検出されるコロニー形成数に変化はなかった。一方、

SBT11261 は pH4.5 と pH5.0 ではほぼ同程度のコロニー形成数であったが、pH5.5 では

1/20 に、pH6.0 では 1/1000 以下に減少した。

Fig. 1 Colony counts of L. helveticus on RC plate of various pH. Black bars: pH 4.5,

dark gray bars: pH 5.0, light gray bars: pH 5.5, white bars: pH 6.0

SBT11261 について RC 平板培地の pH が高いほど形成コロニー数が少なくなったこと

から、酸素の影響を調べるため、微好気培養でも同様に測定した。また、MRS 平板培地

でも同様に生菌数を測定した。RC 平板培地での形成されるコロニー数(生菌数)は嫌気

培養、微好気培養とも pH 5.9 以上では検出限界以下となった(Fig. 2a)。

一方、MRS 平板培地で形成されるコロニー数は、寒天培地の pH が 5 から 6 の間では

嫌気状態によらず 5E+08 cfu/g でほぼ一定であった(Fig. 2b)。しかし、寒天培地の pH が 6

以上では、微好気状態で培養した場合は嫌気状態で培養した場合より形成されるコロニー

数が減少した。

1.0E+04

1.0E+05

1.0E+06

1.0E+07

1.0E+08

1.0E+09

JCM1120 SBT11087 SBT11261

viab

le ce

ll co

unt (

cfu/

g)

T

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13

Fig. 2 Effect of oxygen and pH for colony counts of L. helveticus SBT11261 on RCA (a)

and MRS (b) plate. Black bars: anaerobic, white bars: micro aerobic (ND: under

detecting limit 1.0E+03 cfu/g)

(2)L. helveticus の液体培地での生育に対する初発 pH の影響

平板培地だけでなく、pH の異なる液体培地を使用して JCM 1120T および SBT11261

の生育に対する培地の種類と初発 pH の影響について静置培養 16 時間後の生育度(到達

OD)を比較した。

1.0E+06

1.0E+07

1.0E+08

1.0E+09

5.0 5.4 5.9 6.3 6.5 6.8

viab

le ce

ll co

unt

(cfu

/g)

pH of plate

1.0E+06

1.0E+07

1.0E+08

1.0E+09

5.0 5.4 5.9 6.3 6.5 6.8

viab

le ce

ll co

unt

(cfu

/g)

pH of plate

ND ND ND ND

a

b

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14

JCM 1120Tは、MRS 液体培地は pH 5.0 以下で、RC 液体培地は pH 4.5 以下で到達 OD

が低下する傾向がみられた(Fig. 3a)。一方、SBT11261 は、MRS 液体培地の場合、pH4.5

で到達 OD が低下する傾向がみられたが、RC 培地では pH 5.0 のときに到達 OD が最大と

なり、次いで pH 4.5 となった。pH 5.5 以上では到達 OD が減少する傾向がみられた(Fig.

3b)。JCM 1120T、SBT11261 ともいずれの pH においても MRS 液体培地培養物のほうが

RC 液体培地培養物より到達 OD が高くなった。

Fig.3 Effect of initial pH of L. helveticus JCM 1120T (a) and L. helveticus SBT11261 (b)

grown in liquid medium. Black bars: RC broth, white bars: MRS broth

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

4.5 5.0 5.5 6.0 6.5

OD

660

initial pH

0.01.02.03.04.05.06.07.08.0

4.5 5.0 5.5 6.0 6.5

OD

660

initial pH

b

a

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15

(3)ジャーファーメンターによる SBT11261 の定 pH 培養時の生育

初発 pH を変えても培養中に生成する乳酸により pH が低下してしまうことから、

SBT11261 についてジャーファーメンターを使用して pH を一定にした定 pH 培養で生育

の違いを評価した。MRS 培地を使用し、窒素で嫌気状態を保持し、培養中の pH を 6.0、

5.5、5.0 に制御した場合、同じ培養時間では pH が低い方が OD はやや高くなる傾向がみ

られた(Fig. 4a)。また生菌数も OD と同様の挙動を示したことから、培養中に菌の死滅が

起きていないことも確認した(Fig. 4b)。培養時間が 16 時間から 24 時間の間では OD、生

菌数ともほとんど変化しなかった。

Fig.4 Effect of pH on growth (a) and viable cell count (b) of L. helveticus SBT11261 in

MRS medium using pH controled jar fermentation system. White bars: no pH control,

light gray bars: pH 5.0, dark gray bars: pH 5.5, black bars: pH 6.0

0

2

4

6

8

10

16hr 20hr 24hr

OD

660

time (hr)

1.0E+06

1.0E+07

1.0E+08

1.0E+09

16hr 20hr 24hr

viab

le c

ell c

ount

(cfu

/g)

time (hr)

a

b

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16

(4)L. helveticus SBT11261 の生育における pH 感受性に対する培地成分の影響

RCA 培地と MRS 培地で生育に対する pH の影響が異なっており、RC 培地では到達 OD

が低かった。そこで RC 培地には SBT11261 の生育にとって不足している成分があると考

え、MRS 培地と RC 培地の成分を比較した(Table 1 および Table 2)ところ、硫酸マグ

ネシウム、硫酸マンガン、ツイーン 80 の 3 成分が RC 培地に添加されていないことがわ

かり、高 pH における SBT11261 の生育に関与する可能性が考えられた。そこでこれらの

成分を RC 培地に添加して静置培養し、生育を比較した。その結果、ツイーン 80 を添加

すると初発 pH4.5 から pH6.0 での生育が向上した(Fig. 5)。一方、硫酸マグネシウム、

硫酸マンガンでは無添加とほぼ違いがみられなかった。また図示していないが、3 成分全

て添加した場合はツイーン 80 のみ添加したときと到達 OD の違いはみられなかった。

Table 1 composition of MRS medium Table 2 composition of RC medium

Ingredients

concentration

(g/L)

Peptone No.3 10Beef Extract 10Yeast Extract 5Glucose 20Di ammonium citrate 2Sodium acetate 5Di potassium phosphate 2Tween 80 1Magnesium sulfate 0.1Manganese sulfate 0.04

Ingredients

concentration

(g/L)

Peptone 10Lab-Lemco powder 10Yeast extract 3Glucose 5Soluble starch 1Sodium acetate 3Sodium chloride 5Cysteine hydrochloride 0.5Agar 0.5

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17

Fig. 5 Effect of additives on growth of L. helveticus SBT11261 in RC medium. White

bars: no addition, light gray bars: magnesium sulfate, dark gray bars: manganese

sulfate, black bars: tween80

(5)L. helveticus SBT11261 の生育に対するエタノールと pH の影響

SBT11261 は馬乳酒由来であることから、MRS 液体培地にエタノールを添加し、静置

培養時の生育に対する影響を調べた。エタノール濃度の増加に伴い、培養 16 時間後の生

菌数は減少した(Fig. 6a)。到達 OD は初発 pH によってエタノール濃度に対する挙動が異

なり、培地中のエタノール濃度が 3.75%の時に初発 pH による差が最大となり、pH6.0 よ

り、pH5.0 で到達 OD が高い値を示した(Fig. 6b)。

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5 5.0 5.5 6.0 6.5

OD

660

initial pH

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18

Fig.6b Effect of ethanol concentration and initial pH on growth (a) and viable cell count

(b) of L. helveticus SBT11261. white bars: pH5.0, gray bars: pH5.5, black bars: pH6.0

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

0.00 1.25 3.75 6.25 12.50 18.75 25.00

OD

660

Ethanol (%)

1.0E+03

1.0E+04

1.0E+05

1.0E+06

1.0E+07

1.0E+08

1.0E+09

0.00 1.25 3.75 6.25 12.50 18.75 25.00

viab

le ce

llcou

nt (c

fu/g

)

Ethanol (%)

a

b

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19

考察

RC培地のpHが 5.5以上のとき、SBT11261の生育は液体培地、平板培地とも抑制され、

高pH感受性が示唆された。RC液体培地にツイーン 80添加により、ツイーン添加で pH 6.0

と pH 5.5 の OD が増加しただけでなく、pH 4.5 と pH 5.0 も増加した。しかし pH 6.5 は

向上せず、pH に対する感受性の傾向に変化が見られなかったことから、ツイーン 80 は生

育因子であり、高 pH 感受性に対して影響は与えないことが推察された。

一方、他の株では RC 培地で pH が 5.5 以上でも生育が阻害されなかった。Lactobacillus属では生育にオレイン酸を要求する菌株が多いことが知られており 43)、MRS 培地など

Lactobacillus 属用の培地ではツイーン 80 をオレイン酸源として添加している。

SBT11261 は pH が 5.5 以上で他の株より pH による生育阻害を受け、高 pH 感受性と

なっている理由として馬乳酒中のアルコールの存在が考えられる。アルコールは乳酸菌を

含む微生物の生育を阻害する。SBT11261 は馬乳酒由来であるため、馬乳酒と同程度のア

ルコール(1%-3%)存在下では pH による生育の差がより明確になったと推察される。

以上の結果から、SBT11261 は 1%-3%のアルコール、pH 3 から pH 4 という馬乳酒に

おける環境に適応したと考えられる。

SBT11261と同様にモンゴルの馬乳酒アイラグから分離された L. helveticus SBT11087

の生育至適温度は 35-40 °C で L. helveticus の他の株(40-45 °C)より低い 44)。その理由

としてこの株の持つプロテイナーゼ(PrtH-SBT11087)の至適温度が低いためと述べてい

る。また PrtH-SBT11087 の基質特異性は馬乳に多いβカゼインに適応していると推察し

ている 45)。

このようにモンゴルの伝統的発酵乳から分離された L. helveticus は基準株やチーズの

アジャンクトスターターとして使用される他の株と比較して特徴的な性質を持つことがわ

かった。馬乳酒という独特の環境に適応して獲得した性質であると考えている。

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20

要約

モンゴル国の伝統的アルコール発酵乳であるアイラグから分離された Lactobacillus helveticus SBT11261 を MRS 寒天培地と Reinforced Clostridial (RC)寒天培地に塗抹し

た際、培地の種類、培地の初発 pH および培養時の嫌気度によりコロニー形成数が変化し

た。MRS 寒天培地を嫌気条件で培養した場合、培地の初発 pH によるコロニー形成数に差

はみられなかった。しかし、微好気条件で培養した場合は培地の pH が 6.5 のとき、コロ

ニー形成数が減少した。RC寒天培地では嫌気および微好気条件のいずれにおいてもpH6.0

以上ではコロニーを形成せず、pH5.0 でコロニー形成数の最大値を示した。

次に液体培地を使用し、静置培養またはジャーファーメンターによる pH 制御培養を実

施した。RC 液体培地を使用した静置培養では初発 pH が 5.5 以上で生育が抑制された。

MRS 液体培地では RC 液体培地ほど顕著ではないが、初発 pH および培養中の pH が高い

時に生育度(OD 値)と生菌数の減少する傾向がみられた。そこで MRS 培地に含まれて

おり、RC 培地に含まれていない成分を RC 培地に添加したところ、ツイーン 80 を添加し

た場合に、初発 pH6.0 での生育が向上した。しかし pH5.5 以下でも生育が向上し、高い

pHでの生育が抑制される傾向は変化しなかったことから、ツイーン 80は生育因子であり、

高 pH 感受性には影響しないことが推察された。

さらに、培地にエタノールを添加して培養したところ、エタノール濃度の増加に伴い、

16 時間培養後の生菌数は減少した。生育度(OD 値)は初発 pH によってエタノール濃度

に対する感受性が異なり、培地中のエタノールが 3.75%の時に初発 pH による差が最大と

なり、初発 pH は pH6.0 より、pH5.0 の方が高い OD 値を示した。

これらの結果から、L. helveticus SBT11261 は生育至適 pH が 5.5 以下であり、酸素、

エタノールの存在や栄養分の不足により、pH による生育の差がより明確になることが示

唆された。

このようにモンゴル国のアイラグから分離された L. helveticus SBT11261 は基準株を

含めた分離源の異なるL. helveticusと比較して至適 pHとエタノール耐性が異なる特性を

持つことを見出した。この株は伝統的な発酵乳中で他の乳酸菌や酵母と共存した状態で生

育しており、生存するためにこれらの形質を進化させてきた可能性が考えられる。

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21

第3章

植物を生育環境とする

Lactobacillus plantarum における

呼吸鎖の発現とストレス耐性の変化

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22

緒言

Lactobacillus plantarum はさまざまな発酵食品に使用されており、いくつかの菌

株では健康機能等のプロバイオティクスとしての機能も研究されている。プロバイオ

ティクスとは「宿主の健康に寄与する生きた微生物」と定義されている 4), 5)。これらの

効果には下痢改善や免疫賦活作用などが上げられている。L. plantarum WCFS1 はヒ

トの唾液から分離された乳酸菌であり、ゲノムが公開されており 46)、最も良く研究さ

れている 乳酸菌のひとつである。この株の消化管内における機能はよく研究されてお

り 47-49)、ヒトに対する作用についても調べられている 50)。

L. plantarum は電子伝達系(electron transport chain (ETC))やクレブス回路を

持たないため、通性嫌気性菌として知られている。しかし、近年の研究でヘミンとメ

ナキノン(ビタミン K2)を添加した特定の条件において、NADH デヒドロゲナーゼ、

メナキノン、酸素を最終電子受容体とするシトクロムオキシダーゼで構成される ETCが活性化されることが示された 28)。この呼吸鎖が発現した条件下においては嫌気発酵

と比較してエネルギー効率が向上するため、L. plantarum の菌体量は増加する。さら

に呼吸による生育はストレス耐性にも好影響を与える可能性がある。乳酸菌は悪条件

にさらされたときに自らを守るためにさまざまなストレス応答メカニズムを持ってい

る 19)。L. plantarum WCFS1 のストレス応答として、高温 51)、高浸透圧 52)、胆汁酸 53)、

低 pH54)、酸化ストレス 25)などの条件で調べられている。しかしながら、呼吸状態での

L. plantarum の酸化ストレス応答と生残性については調べられていない。

呼吸状態で生育することの副作用として、ETCの中間体から電子がもれることによ

り、スーパーオキシドアニオン(O2-・)やヒドロキシルラジカル(OH・)などの活性

酸素種(ROS)を生成する可能性がある36)。これらROSは菌体内のDNAやタンパクな

どに深刻なダメージを引き起こすことになる20)。ほとんどの細菌はスーパーオキシド

アニオンを過酸化水素に変換するスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)を持ってい

る。しかしながら、L. plantarum はSODを持たない。そのかわりにスーパーオキシ

ドを過酸化水素に変換するマンガンを菌体内に蓄積する55)。L. plantarum WCFS1においては生育培地中に高濃度のマンガンを要求し、MRS培地における生育に最適なマ

ンガン量は0.24 mMであった56)。L. plantarumの生息する土壌や植物の根圏、植物や

動物由来の食物におけるマンガン濃度は180 nMから9 mMまでさまざまである57-59)。

そのためL. plantarumの菌体内のマンガン濃度は環境によって異なるかもしれない。

過酸化水素はカタラーゼにより分解される。乳酸菌は通常カタラーゼを持たないと

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23

考えられているが、Lactobacillus属、Pediococcus属、Leuconostoc属のいくつかの種

でカタラーゼ活性を持つことが報告されている60-62)。カタラーゼは大きく2つのタイ

プがあり、ヘムを必要とするヘム依存カタラーゼとマンガンを含むシュードカタラー

ゼ23)に分けられる。L. plantarum WCFS1はヘム依存カタラーゼを持っていることが

明らかになっている27), 46)。

L. plantarum を呼吸状態で生育させると呼吸状態でない好気培養や嫌気培養と比

較して菌体内 ROS 濃度は増加すると予想される。そのため、呼吸状態の菌体はこれら

の酸化ストレスに対応するメカニズムを誘導し、適応した状態になっていると考えら

れる。生育中のこれらのメカニズムの発現誘導は消化管や、商品製造、保存時に必要

なストレス耐性の高い菌体となるかもしれない。Lactococcus lactis では呼吸状態で

培養した菌体は長期保存中の生残性が向上し、この理由として菌体内酸素濃度の低下

によると示唆されたという報告がある 26), 63)。しかしながら Lc. lactis は SOD を持っ

ているがカタラーゼは持たないという点が L. plantarum とは異なっている。

本研究では L. plantarum WCFS1 を用い、培地中のマンガンによる生育、過酸化水

素耐性への影響を調査した。また呼吸状態の培養と呼吸状態で無い好気培養、嫌気培

養で菌体の生育の違いとそれら菌体の過酸化水素、低 pH ストレス条件下での生残性

を調査した。さらに L. plantarum のヘム依存型カタラーゼの遺伝子発現および過酸化

水素分解活性と過酸化水素耐性の関係、および低 pH ストレス下における菌体内 ROS生成、菌体膜透過性と低 pH 耐性についても調査した。

実験材料と実験方法

(1) 使用菌株と培養条件

L. plantarum WCFS1 を MRS 培地(Melck)またはマンガンを除去した改変 MRS 培

地で培養して使用した。改変 MRS 培地は 10 g のカゼインペプトン (Merck), 8 g の肉エキ

ス(Sigma-Aldrich), 4 g の酵母エキス(Oxoid), 20 g の D(+)グルコース 1 水和物(Merck), 2

g のリン酸水素二カリウム(Merck), 1 g の Tween 80 (Merck), 2 g クエン酸二アンモニウム

(Merck), 5 g酢酸ナトリウム(Merck), 0.2 g硫酸マグネシウム七水和物(Merck)に0.04 g の

硫酸マンガン(II)一水和物(Merck)を添加あるいは無添加とし、イオン交換水に溶解して1

L とした。ETC 活性の誘導はヘミン(Sigma-Aldrich)、メナキノンとしてビタミン K2

(Sigma-Aldrich)をそれぞれ最終濃度として 10 mg/ml、50 mg/ml となるように添加し

た 27), 28)。前培養物は 10 ml の MRS 培地で 30 °C、1 晩静置培養して調製した。前培養物

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24

をリン酸緩衝液(PBS;pH7.4)で 1 回洗浄し、同量の PBS に懸濁し、1% (v/v)で本培養培

地に接種した。本培養は 30℃で静置または振とうしてそれぞれ発酵培養物、好気培養物と

した。好気培養は 100 ml の三角フラスコに培地を 15 ml 入れ、200 rpm で振とうして行

った。培養物の OD600 を測定し、菌体量とした。

(2) ストレス条件と生残性測定

対数増殖期培養物(OD600=0.7)と定常期培養物(25 h)を用いて、過酸化水素または低 pH

条件下の生残性を測定した。過酸化水素(30% (w/v)を 15 ml の培養物に対し、対数増殖期

の菌体は 0.2% (w/v)、定常期の菌体は 0.5% (w/v)となるように添加し、0、10、20、30 分

後にサンプリングした。低 pHストレスは培養物に 6 N塩酸を添加して pHを調整し、30 °C

で 30 分保温後にサンプリングした。サンプルはペプトン生理食塩水(中和微生物用ペプ

トン(Oxoid)1 g、NaCl 8.5 g、水 1 L)で段階希釈後、MRS 寒天培地に 0.1ml 塗抹した。

このプレートを 30 °C で 72 時間培養後生育したコロニーを計数した。

全ての生菌数測定試験は 3 回繰り返し、平均値と標準偏差を計算した。またスチューデン

トの t 検定を行い、P<0.05 で有意差を評価し、ボンフェローニの補正を行った。

(3) カタラーゼ活性測定

カタラーゼ活性は den Besten らの報告 64)に従い、吸光度法で測定した。菌体を PBS で

1 回洗浄後、PBS に懸濁し、最終濃度が 40 mM となるよう過酸化水素を加えた。30 °C

に保温した状態で過酸化水素の吸収波長である 240 nm の吸光度の変化を分光光度計

(Spectramax Plus 384; Molecular Devices)で測定した。カタラーゼ活性は 240 nm の吸光

度の 1 分間あたりの変化量をユニット/min として定義した。それぞれのサンプルの減少速

度は菌体量(OD600 の値)で補正した。全ての実験は 3 回実施した。

(4) 遺伝子発現量測定

1)RNA の単離

全 RNA はストレスを与える前の各培養物から分離した。培養物を 4℃、15,000×g で

30 秒間遠心分離して菌体を回収した。この菌体ペレットを 1 ml の TRI reagent (Ambion)

に懸濁し、液体窒素で急速凍結後、使用まで-80 °C で保管した。凍結サンプルを融解後、

Lysing MatrixB (MP Biochemicals) に移し、FastPrep-24(MP Biochemicals)を使用して

スピード6で 2 分間運転を 2 回実施することでホモジナイズした。ここから RNA の分離

は TRI reagent の説明書に従って実施した。TURBO DNase (Ambion)を使用してサンプ

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25

ルに混入した DNA を破壊し、使用した DNase は DNase inactivation agent (Ambion)で

失活させた。この処理後、100 µl の RNA に対し、酢酸ナトリウム溶液(3 M、pH 5.2)を

10 µl、96% (v/v)エタノールを 250 µl 加え、-80 °C で 1 晩静置した。遠心分離でペレッ

トにした RNA を 70% (v/v)エタノールで洗浄し、50 µl の nuclease-free water(Ambion)

に溶解した。Eppendorf biophotometer を使用して分離した RNA の 260 nm と 280 nm

の吸光度を測定し、定量と品質チェックを行った。RNA 分離は同じ条件で 2 回実施した。

2)cDNA の合成と定量的 PCR

ファーストストランド cDNAの合成は各サンプルから採取した2 µgの全RNAを使用し、

Superscript III Reverse transcriptase (Invitrogen)を用いて、メーカーのプロトコルに従

って実施した。定量的 PCR は 7000 sequence detection system (Applied Biosystems)を

使用し、7000 system SDS software で解析した。反応液は 10 µl の 2×SYBR green PCR

Master Mix(Applied Biosystems)、1 µl の各プライマー(16S rRNA に対しては 16S

rRNA-fwd TGATCCTGGCTCAGGACGAA お よ び 16S rRNA-rev

TGCAAGCACCAATCAATACCA を 使 用 、 kat 遺 伝 子 に 対 し て は kat-fwd

TGAAAACGACATGGGGGAAT と kat-rev TTTCACCGGCAACTTGTGAG を使用)、6 µl

の水、2 µl の cDNA 溶液を混合して調製した。それぞれのプライマーセットに対し、PCR

効率を求めるため、キャリブレーションカーブを作成した。ターゲットである kat 遺伝子

の発現量を標準化するため、16S rRNA を内部標準として使用した。定量的 PCR 測定は 2

回実施し、1 回の測定でそれぞれのサンプルについて 2 回実施した。

(5) フローサイトメーターによる菌体内 ROS、菌体膜透過性測定

菌体内の ROS は Herrera らの報告 65)にしたがってジヒドロエチジウム (DHE;

Invitrogen, Leiden, The Netherlands)を使用して測定した。菌体膜の健全性についてはプ

ロピジウムヨーダイド(PI;Invitrogen, Leiden, The Netherlands)を使用し、メーカーの

プロトコルにしたがって測定した。これらの蛍光染色したサンプルは Becton Dickinson

FACS Calibur flow cytometer を使用し、光電子増倍管(PMT)の電圧を前方散乱光[FSC]

は E00、側方散乱光[SSC]は 350、蛍光チャンネル 2 [FL2]は 650、蛍光チャンネル 3[FL3]

は 650 に設定した。流速は中速(medium)に設定し、データは 20,000 カウントまで収集

して Cellquest Pro (version 4.0.2)および WinMDI 2.9 (Joseph Trotter, Salk Institute for

Biological Studies, La Jolla, CA; http://facs.scripps.edu/software.html)で解析した。

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26

結果

(1) L. plantarum WCFS1 の生育に対する培地中マンガンと呼吸の影響

L. plantarum WCFS1 の生育に対するマンガンと呼吸の影響を調べるため、マンガン添

加または無添加の MRS 培地を使用し、静置、振とう、培地にヘムを添加して振とう、培

地にヘムとメナキノン(ビタミン K2)を添加して振とうの 4 つの培養条件(それぞれ発酵、

好気、ヘム入り好気、呼吸とする)で培養し、それぞれ生育を測定した(Fig. 1)。MRS

培地にマンガンを添加した場合、8 時間までの対数増殖期では 4 つの培養条件で生育に顕

著な差はみられなかった(Fig. 1a)。しかし、12 時間以降は呼吸条件で菌体量が他の条件と

比較して有意に増加した(P<0.05)。25 時間培養後の OD600 は発酵が 6.55±0.03、好気が

6.79±0.66、ヘム入り好気が 6.67±0.26、呼吸が 8.50±0.29 で、呼吸は他の条件より有意に

高い値となった。L. plantarum WCFS1 は生育とともに pH が低下し、16 時間までは全

ての培養条件で同様に低下した(Fig. 1b)。しかし呼吸条件のみ 16 時間以降に pH が上昇

し、25 時間では他の条件(発酵:pH 3.87±0.07、好気:pH 3.97±0.09、ヘム入り好気:

pH 3.99±0.09)より有意に高い値(pH 4.45±0.11)を示した(P<0.05)。呼吸条件での pH の

増加は Lactococcus lactis における以前の報告 66)であるように、グルコース枯渇後の乳酸

から酢酸への変換によることが考えられる。

4 つの培養条件におけるマンガンの役割を調べるため、マンガン除去 MRS 培地での生

育を測定した。生育(Fig. 1a)、pH(Fig. 1b)とも 4 つの培養条件間での差はみられず、

菌体量も通常のマンガン添加 MRS と比較して明らかに低い値であった。これらの結果は

発酵、好気条件で L. plantarum は高濃度(200 µM 以上)のマンガンを要求するという以

前の報告 65)を支持するものであった。

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27

Fig. 1 Effect of oxygen utilization and manganese on the growth performance of L. plantarum WCFS1. The graphs present growth (a) and acidification (b) of L. plantarum WCFS1 in MRS medium with (solid lines) and without (dashed lines) added

manganese under fermentative (), aerobic (), aerobic with heme (), and

respiratory () growth conditions at 30 ˚C. *, significantly different from values for all

other conditions with and without added manganese (P<0.05, Bonferroni).

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28

(2) L. plantarum WCFS1 の過酸化水素耐性とそのメカニズムに対するマンガンと呼

吸の効果

酸化ストレスに対するマンガンと呼吸の影響を調べるため、マンガン添加または無添加

の MRS 培地を使用して前項の 4 つの培養条件で培養して得られた対数増殖期および定常

期の菌体に過酸化水素ストレスを与え、生菌数を測定した(Fig. 2、Fig. 3)。

マンガン添加 MRS で培養した場合、対数増殖期の菌体については、0.2% (w/v)の過酸

化水素中、10 分、20 分保温後の生残率は、呼吸菌体が発酵、好気、ヘム入り好気の各菌

体より高い値を示した(P<0.05、Fig. 2a)。さらに定常期の菌体については、0.5%過酸化水

素中で 30 分保温後の生残率は、呼吸およびヘム入り好気菌体が発酵、好気菌体より高い

値を示した(P<0.05、Fig. 2b)。

マンガン無添加 MRS 培地で培養した場合、対数増殖期の菌体については、0.2% (w/v)

過酸化水素中で 20 分保温後の生残率は呼吸菌体が発酵、好気、ヘム入り好気の各菌体よ

り高い値を示した(P<0.05、Fig. 3a)。さらに定常期の菌体については、0.5%過酸化水素中

で 20 分保温後の生残率は、他の条件の菌体より高い値を示した(P<0.05、Fig. 3b)。

興味深いことに、マンガン添加 MRS 培地で生育した対数増殖期の菌体のうち、呼吸条

件の 20 分後と他の条件の 10 分後は同じ条件、時間のマンガン無添加の菌体より過酸化水

素に感受性を示した(P<0.05、Fig. 2a、Fig. 3a)。これらの結果は呼吸菌体が過酸化水素耐

性を向上させること、およびマンガンの効果が回収して試験に供したときの菌体の生育段

階によることを示唆している。

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29

Fig. 2 Effect of oxygen utilization on hydrogen peroxide resistance of L. plantarumWCFS1 grown in MRS medium with added manganese. The graphs present the

survival of exponential phase (a) and stationary phase (b) cells of L. plantarum WCFS1

grown under fermentative (), aerobic (), aerobic with heme (), and respiratory ()

conditions at 30 ˚C after exposure to 0.2 % (w/v, exponential phase) or 0.5 % (w/v,

stationary phase) H2O2. Samples were taken at 0, 10, 20 and 30 min and the colony

forming units per ml were counted and expressed in log (N/N0). *, significantly

different from values for all other conditions (P<0.05, Bonferroni).

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30

Fig. 3 Effect of oxygen utilization on hydrogen peroxide resistance of L. plantarumWCFS1 grown in MRS medium without added manganese. The graphs present the

survival of exponential phase (a) and stationary phase (b) cells of L. plantarum WCFS1

grown under fermentative (), aerobic (), aerobic with heme (), and respiratory ()

conditions at 30 ˚C after exposure to 0.2 % (w/v, exponential phase) or 0.5 % (w/v,

stationary phase) H2O2. Samples were taken at 0, 10, 20 and 30 min and the colony

forming units per ml were counted and expressed in log (N/N0). *, significantly

different from values for all other conditions (P<0.05, Bonferroni).

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31

細菌の過酸化水素に対する抵抗性においてカタラーゼは最も重要な酵素であることか

ら、各培養条件、菌体生育段階におけるカタラーゼ遺伝子(kat)の発現量とカタラーゼ活性

を測定した(Fig. 4)。対数増殖期菌体においては各培養条件で kat 遺伝子発現量の違いは

みられなかった(Fig. 4a)。しかしながら、定常期菌体では発酵条件を除いた 3 条件の菌体

がマンガン添加の有無にかかわらず kat 遺伝子の発現が誘導され、有意に増加した

(P<0.05)。これらの結果は、発酵条件では発生しにくい菌体内への酸素の流入が振とうに

より発生し、kat 遺伝子の発現誘導を引き起こすことを示唆している。

4 つの培養条件についてカタラーゼ活性も測定した。対数増殖期のヘム入り好気菌体お

よび呼吸菌体はマンガン添加の有無にかかわらず、発酵菌体、好気菌体より有意に高いカ

タラーゼ活性を示した(P<0.05、Fig. 4b)。同様の結果は定常期菌体でも観察され、ヘム入

り好気菌体および呼吸菌体のカタラーゼ活性は対数増殖期より有意に増加した(P<0.05)。

呼吸菌体は多くの条件で他の菌体より高い過酸化水素耐性を示したが、カタラーゼ活性は

ヘム入り好気菌体と同等であった。これらの結果は呼吸菌体の高い過酸化水素耐性はカタ

ラーゼ以外にも別の因子が関与する可能性があることを示唆している。

また、呼吸菌体において対数増殖期、定常期いずれもマンガン添加よりマンガン無添加

の方が高いカタラーゼ活性を示した(P<0.05)。これらの結果は L. plantarum WCFS1 の対

数増殖期、定常期菌体のヘム依存カタラーゼ活性と過酸化水素耐性にマンガンの利用性が

影響していることを示している。

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32

Fig. 4 Effect of oxygen utilization and manganese addition on catalase expression and

activity in L. plantarum WCFS1. The graphs present the relative catalase gene (kat) expression (a) and catalase activity (b) of L. plantarum WCFS1 grown in MRS medium

with (grey bars) and without added manganese (white bars), under fermentative,

aerobic, aerobic with heme, and respiratory conditions at 30 ˚C. *, significantly

different from values for exponential phase cells grown statically with added

manganese; #, significantly different from exponential phase cells; +, significant

difference between values with and without added manganese (P<0.05, t test).

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33

(3) L. plantarum WCFS1 の低 pH ストレス耐性と耐性メカニズムに対する呼吸の影

MRS 培地で定常期まで培養した酸素利用状態が異なる 4 種の菌体(発酵菌体、好気菌

体、ヘミン添加好気菌体、呼吸菌体)を使用し、低 pH ストレスへの酸素利用性の効果を

調べた(Fig. 5)。発酵菌体と比較して呼吸菌体は低 pH ストレスへの感受性が高い結果を

示した。いずれの菌体も pH が 0.15 下がるだけで生残性は大きく低下する pH があり、こ

の pH は発酵菌体では pH 2.00、呼吸菌体では pH 2.30、好気菌体はヘミン添加の有無に

かかわらず pH 2.15 であった。

Fig. 5 Acid resistance of L. plantarum WCFS1 grown in MRS broth under fermentation,

aerobic, aerobic with hemin, and respiration conditions. The graphs present the

survival of stationary phase cells of L. plantarum WCFS1 grown under fermentative

(F), aerobic (S), aerobic with hemin (S+H), and respiratory (R) conditions at 30 ˚C after

30 min exposure to pH 2.45 (light blue), 2.30 (green), 2.15 (yellow) and 2.00 (red).

*Below the detection limit. a-dSignificant difference levels (P<0.05, Bonferroni).

-6.0

-5.0

-4.0

-3.0

-2.0

-1.0

0.0

F S S+H R

log

(N /

N0)

a a, b

c, d

b

a, ba

c, d

c, d

a a

c, d

c, d

a, b

c

d

*

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34

これまでの蛍光色素を使用した研究でBacillus cereusに低pHストレスを与えると菌体

内にラジカルなどの ROS が生成し、菌体死を引き起こす可能性が示唆されている 73),74)。

そこでフローサイトメトリーを用いて各 pH での DHE による ROS 生成(Fig. 6)、および

PI による菌体膜の透過性(Fig. 7)を評価した。いずれの菌体も pH の減少に伴い、ROS

生成が増加し、膜の透過性も増加した。ROS 生成と膜透過性の変化は発酵菌体では緩やか

であったが、好気菌体と呼吸菌体は生残性が急激に低下する pH で ROS 生成、膜の透過

性は明確に増加したことから、低 pH 耐性と ROS 生成、膜の透過性に何らかの関係があ

ることが示唆された。さらにいえば pH 減少時の ROS 生成と膜透過性の変化は生残率の

変化とおおよそ合致した。

Fig. 6 Effect of growth conditions on radical formation during acid exposure of L. plantarum WCFS1. The graphs present the distribution of the fluorescent signal of

20.000 stationary phase cells (Events) of L. plantarum WCFS1 grown under

fermentative (F), aerobic (S), aerobic with hemin (S+H), and respiratory (R) conditions

at 30 ˚C before stress (blue) and after 30 min exposure to pH 2.45 (light blue), 2.30

(green), 2.15 (yellow) and 2.00(red). The formation of radicals is indicated with a shift

to the right (increase) of the fluorescent signal.

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35

Fig. 7 Effect of growth conditions on the membrane integrity during acid exposure of L. plantarum WCFS1. The graphs present the distribution of the fluorescent signal of

20.000 stationary phase cells (Events) of L. plantarum WCFS1 grown under

fermentative (F), aerobic (S), aerobic with hemin (S+H), and respiratory (R) conditions

at 30 ˚C before stress (blue) and after 30 min exposure to pH 2.45 (light blue), 2.30

(green), 2.15 (yellow) and 2.00(red). A decrease in the membrane integrity is indicated

with a shift to the right (increase) of the fluorescent signal.

考察

マンガン添加または無添加の MRS 培地中での L. planatarum WCFS1 の発酵、好気、

ヘム添加好気、呼吸の各条件での生育とストレス耐性について調べた。

これまでの研究で、L. plantarum は呼吸条件で生育させると発酵条件で生育するより菌

体量が増加し、培養物の最終pHも高くなることが示されている 27), 28)。これらの結果は我々

のマンガン添加時の結果と一致する。しかしながら、マンガン無添加 MRS 培地で生育し

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36

た L. plantarum WCFS1 は菌体量、最終 pH とも顕著な差はみられず、マンガン添加培地

での培養時より有意に低い値を示した。また、培地にヘムを添加しないで発酵、好気で培

養する際には L. plantarum は高濃度のマンガンを要求することが示されている 56), 67)。L. plantarum WCFS1 はマンガンを添加しない MRS 培地でも生育したのは MRS 培地中の

酵母エキスや、肉エキス、ペプトンなどに含まれる微量のマンガンによるものと考えられ

る。

酸化ストレスに対する生育条件の影響を調べるため、各条件の対数増殖期、定常期の菌

体を使用して過酸化水素中での生残性を測定した。その結果、対数増殖期、定常期いずれ

も呼吸状態の菌体が過酸化水素に対し、最も高い生残性を示した。L. plantarum WCFS1

は過酸化水素を分解するヘム依存型カタラーゼを持っている 27), 28), 46)が、他の lactobacilli

で報告されているマンガン依存型カタラーゼ 68)は持っていない。そこで我々は各生育条件

におけるヘム依存カタラーゼの過酸化水素に対する役割を調べた。呼吸条件では発酵条件

と比較してカタラーゼの発現量、活性とも高い値を示した。カタラーゼ遺伝子(kat)の発現

は振とうによる菌体内への酸素の流入によって誘導され、カタラーゼ活性は培地へのヘム

の添加に依存するようにみえた。にもかかわらず、ヘム添加好気菌体と同等の発現量、活

性を示す呼吸菌体が最も高い過酸化水素耐性を示した。しかしながらカタラーゼは過酸化

水素を水と酸素に変換することから、菌体内の酸素レベルが上昇し、酸化ダメージを与え

ている可能性がある。ヘム添加好気培養菌体と比較して呼吸菌体が高い過酸化水素耐性を

示すのは、以前の研究で Lc. lactis の呼吸菌体が好気培養菌体より長期保存中の生残性が

向上した 63)ように、ETC の活性化による酸素消費の速さと関係している可能性がある

(Fig.8)。別の方法として呼吸状態の L. plantarum の耐性向上は ETC の中間体である電

子が漏れる 36), 69), 70)ことにより生成するスーパーオキシドラジカルのようなROS生成に対

する酸化ストレス耐性メカニズムの誘導と関係するかもしれない。これまでの L. plantarum の発酵および好気菌体の研究で、この菌種はスーパーオキシドラジカルを捕捉

するための SOD を持たないことから、菌体内にマンガンを高濃度に蓄積することが知ら

れている 55)。今回の研究では高マンガン濃度培地で生育した定常期菌体は低マンガン濃度

培地で培養した中では高い過酸化水素耐性を示したヘムカタラーゼを誘導した菌体(呼吸

菌体、ヘム添加好気菌体)より高い耐性を示した。しかしながら、対数増殖期においては、

低マンガン濃度培地で生育した L. plantarum WCFS1 は高マンガン濃度培地で生育した

カタラーゼ誘導菌体(呼吸菌体、ヘム添加好気菌体)より高い過酸化水素耐性を示した。

低マンガン濃度は L. plantarum の他の酸化ストレス耐性メカニズム、例えばチオレドキ

シン、グルタチオンレダクターゼ、NADH オキシダーゼ、NADH ペルオキシダーゼ 25), 46),

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37

71)が活性化されるのかもしれない。最近の研究では過酸化水素耐性におけるマンノース

PTS を制御する別のシグマ因子 54(rpoN)の役割が同定されている 72)。

Fig.8 Schematic representation of the effect of oxygen utilization, heme and

manganese availability on (heme-dependent) catalase expression/activity and H2O2

resistance of L. plantarum WCFS1.

低 pH ストレス耐性に対する各培養条件の影響を調べた。その結果、呼吸菌体が最も高

い感受性を示した。Bacillus cereus において酸ストレスにより、菌体内の ROS が増大す

ることが知られている 73), 74)ことから、菌体内の ROS 生成を調べたところ、呼吸菌体でも

っとも ROS を生成しているようにみえた。これは呼吸菌体で発現している ETC が攪乱さ

れ、中間体から電子の漏れが起きたことによると考えられる 36)。ラジカルは DNA や、タ

ンパク質、リン脂質などの菌体内構造物にダメージを与える 20)。本研究の結果は呼吸状態

の Lc. lactis での結果 63)と対照的であるが、この違いは SOD やヘム依存カタラーゼによる

ものと考えられる 27), 63)。

以上をまとめると、L. plantarum WCFS1 を呼吸状態で培養することで菌体量が増加し、

kat

O2

Heme Vitamin K2

Mn(II)

H2O2

H2OO2

O2-

O2

H2OETC

H2O2

-

Catalase

katkatkat

O2

Heme Vitamin K2

Mn(II)

H2O2

H2OO2

O2-

O2

H2OETC

H2O2

-

Catalase

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38

酸化ストレス耐性が向上することを明らかにした。さらにマンガンが菌体の生育段階に依

存的に酸化ストレス耐性に影響することも明らかとなった。一方、呼吸菌体は低 pH スト

レス耐性が低下すること、pH 低下による急激な生残性低下にはラジカル生成と菌体膜透

過性の増加が関与していることを明らかにした。

これらの結果はスターター、プロバイオティクスのストレス耐性において呼吸などの培

養条件の最適化など工業利用に生かす基礎的な知見となるだろう。

要約

Lactobacillus plantarum は通性嫌気性菌として知られており、酸素呼吸しないものと

考えられていたが、ヘミンとメナキノン(ビタミン K2)を添加して好気培養することで酸

素呼吸に似た状態(呼吸状態)が誘導されることが報告されている。そこで L. plantarum WCFS1 の呼吸状態で生育した菌体(呼吸菌体)、呼吸状態を誘導しない好気培養で生育し

た菌体(好気菌体)および静置培養で生育した菌体(発酵菌体)の生育の違いと酸化スト

レスや低 pH ストレスに対する耐性の違いについて調査した。

その結果、MRS 培地を用いた場合、呼吸菌体は発酵菌体や好気菌体よりも高い菌体濃

度を示した。また過酸化水素による酸化ストレスに対して呼吸菌体は発酵菌体より高い耐

性を示した。さらに呼吸菌体と好気菌体は定常期においてカタラーゼ遺伝子が発現し、呼

吸菌体のみカタラーゼ活性を示すことを確認した。低 pH ストレスを負荷すると pH の低

下に伴い、いずれの菌体も生菌数が減少した。同じ pH で保存した場合、発酵菌体が好気

菌体より高い生残性を示し、呼吸菌体はさらに生残性が低下した。生残性の低下とともに

菌体内に活性酸素種(ROS)が生成し、菌体膜の透過性が上昇していることを確認した。

Bacillus cereus などでは低 pH ストレスにより菌体内に ROS が生成することが知られて

いるが、L. plantarum WCFS1 についても呼吸菌体は菌体膜透過性の増大と菌体内 ROS

の増加が認められ、これらが低 pH ストレス耐性に関与している可能性が示唆された。

以上の結果から、呼吸状態で培養することにより、低 pH には高い感受性を示すが、酸

化ストレスに高い耐性を持つ菌体を大量に生産できる可能性が示唆された。

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39

第4章

消化管内を生育環境とする

Lactobacillus gasseri のストレス耐性と

生残性向上方法

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40

緒言

Lactobacillus gasseri のプロバイオティクス効果の研究は大規模に行われている。特に

この菌種の消化管での機能 75)、特異的な宿主への免疫応答 76-78)が調べられている。国際連

合食糧農業機関(FAO)世界保健機関(WHO)ではプロバイオティクスを「十分な量を

与えたときに宿主に健康上の利益をもたらす生きた微生物」と定義している 5)。プロバイ

オティクスがその機能を示すには生きていることが重要である。

Lactobacillus gasseri SBT2055 (LG2055 株)は健康な成人から分離され、さまざまなプ

ロバイオティクス機能が調べられている。LG2055 株を投与中止してから 90 日後も糞便

から検出され、腸内に長くとどまることが確認されている 79)。この菌株は整腸効果だけで

なく、ロタウイルス特異的免疫グロブリン A の増強 11)や、内臓脂肪低減 80)などの効果が報

告されている。これらの効果を示すには LG2055 株は生きている必要がある。しかしなが

ら、プロバイオティクスはさまざまなストレス、例えば製造時のせん断、保存中の酸化、

消化管通過時の低 pH などにさらされる。そのため、製品化にあたってストレス耐性を向

上することがその機能性を増強するためにも必要となっている。

プロバイオティクスのストレス耐性を改善するために、さまざまな研究がおこなれてき

た。非致死的なストレスが致死的なストレスへの耐性を向上させることも知られている。

あるストレスに対して細菌が適応するとほかのストレスに対しても耐性が向上する -この

現象をクロスプロテクションと呼んでいる 32)。例えば Lactobacillus plantarum でエタノ

ールストレスに適応させると低温耐性が向上することが示されている 34)。また糖源の枯渇

が Lactobacillus acidophilus の冷凍耐性を向上させることが報告されている 81)。

スーパーオキシドアニオン(O2-)、過酸化水素、水酸化ラジカルといった活性酸素種(ROS)

は DNA などの生体組織にダメージを与え、細胞を死に導く 20)。ROS 生成は大腸菌や

Bacillus cereus において抗生物質 36)、高温ストレス 82)、あるいは酸ストレス 83)にさらさ

れたときに細胞内に検出されることが報告されている。LG2055 株でも同様にストレスに

よりROSが生成するか、またROS生成とストレス耐性との関係を知ることは重要である。

本研究では LG2055 株の低 pH および酸化ストレス耐性に対する糖飢餓の効果を調べた。

さらに LG2055 株の ROS 生成とストレス耐性の関係について調べた。

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41

実験材料と実験方法

(1)使用菌株と培養条件

本研究では Lactobacillus helveticus JCM1120T (LH), Lactobacillus acidophilus

JCM1132T (LA), Lactobacillus fermentum JCM1173T (LF), Lactobacillus johnsoniiJCM2010T (LJ), Lactobacillus gasseri JCM1131T (LGT)および Lactobacillus gasseriSBT2055 (LG2055株)を使用した。これらの菌株をde Man, Rogosa, and Sharpe (MRS)

培地に接種し、37℃で5時間、18時間静置培養した培養物をそれぞれ対数増殖期菌体、定

常期菌体とした。この菌体をpH7.4のリン酸緩衝液(PBS)で1回洗浄し、PBSに懸濁した

ものを未処理菌体とした。バイオフォトメーターTN-1506 (ADVANTEC)を使用し、10分

ごとのOD660を測定して菌体量とした。

(2)前処理方法

飢餓処理はグルコース無添加のMRS培地に 10% (v/v)となるように未処理菌体を加え、

37℃で 5 時間または 18 時間静置しておこなった。飢餓処理後、PBS で 1 回洗浄した後、

PBS に懸濁した菌体を飢餓処理菌体とした。グルコースを除いた改変 MRS 培地を飢餓処

理の基礎培地として使用した。この培地はパンクレアチン消化カゼインペプトンを 10 g

(Merck, Germany)、肉エキスを 8 g (Sigma-Aldrich, USA)、酵母エキス 4 g (Oxoid,

England)、リン酸二カリウムを 2 g (Wako, Japan)、ツイーン 80 を 1 g (Wako)、クエン

酸二アンモニウムを 2 g (Wako)、酢酸ナトリウムを 5 g (Wako)、硫酸マグネシウム七水和

物 を 0.2 g (Wako)、硫酸マンガン一水和物を 0.04 g (Wako)、これに 10 g の糖を添加、ま

たは無添加とし、脱イオン水で 1 L とした。グルコース(Wako)、フルクトース (Wako) を

資化できる糖、キシロース(Wako)、アラビノース(Wako)を資化できない糖として使用した。

20 g/L の糖の溶液をストック溶液とし、基礎培地にこの溶液または脱イオン水を 200 ml

添加して使用した。

(3)ストレス条件と生残性測定

高浸透圧となる異性化糖、過酸化水素または低pHにさらすことで各ストレスに対する菌

の生残性を評価した。高浸透圧溶液は異性化糖(王子コーンスターチ)をBrixが26%とな

るように調製した。過酸化水素は30% (w/v)のストック溶液を15 mlの培養液に対し、最終

濃度が25 mg/Lとなるように加えた。低pHストレスは0.1 M酢酸緩衝液(pH 3.6)を使用し

た。すべての溶液は菌の懸濁液と9:1 (v/v)で混合し、10 °Cで6日間保管した。このサンプ

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42

ルをA希釈液(4.5 g/Lの二リン酸カリウム(和光)、6.0 g/Lのリン酸二ナトリウム(和光)、

0.5 g/LのL-システイン塩酸塩(Wako)、0.5 g/Lのツイーン80 (関東化学)、0.5 g/Lのバクト

アガー(BD))で段階希釈した。適当な希釈液0.1 mlをMRS寒天培地に塗抹し、アネロパッ

クケンキ(三菱ガス化学)で嫌気状態として37 °C、72時間培養し、生育したコロニーを

計数した。すべての試験は3回実施し、スチューデントのt検定によりP<0.05で有意差を評

価し、ボンフェローニの補正(N=3)を行った。

(4)RNAの分離

全 RNA はストレスを与える前の各培養物から分離した。培養物を 4℃、15,000×g で

30 秒間遠心分離して菌体を回収した。この菌体ペレットを 1 ml の TRI reagent (Ambion)

に懸濁し、液体窒素で急速凍結後、使用まで-80℃で保管した。凍結サンプルを融解後、

Lysing MatrixB (MP Biochemicals) に移し、マルチビーズショッカー(安井機械)を使用し

て 2,500 rpm で 1 分間運転を 3 回実施することでホモジナイズした。ここから RNA の分

離は TRI reagent の説明書に従って実施した。TURBO DNase (Ambion)を使用してサン

プルに混入した DNA を破壊し、使用した DNase は DNase inactivation agent (Ambion)

で失活させた。この処理後、100 µl の RNA に対し、酢酸ナトリウム溶液(3 M、pH 5.2)

を 10 µl、96% (v/v)エタノールを 250 µl 加え、-80 °C で 1 晩静置した。遠心分離でペレ

ットにした RNA を 70% (v/v)のエタノールで洗浄し、50 µl の nuclease-free water

(Ambion)に溶解した。Ultrospec 2100 Pro system (GE Healthcare)を使用して分離した

RNA の 260 nm と 280 nm の吸光度を測定し、定量と品質チェックを行った。RNA 分離

は同じ条件で 2 回実施した。

(5)cDNA の合成と定量的 PCR

ファーストストランド cDNAの合成は各サンプルか2 µgの全RNAを使用し、Superscript

III Reverse transcriptase (Invitrogen)を用いて、メーカーのプロトコルに従って実施した。

定量的 PCR は ViiaTM 7 Real-Time PCR system (Applied Biosystems)を使用し、ViiaTM 7

system SDS software で解析した。反応液は 10 µl の 2×SYBR green PCR Master

Mix(Applied Biosystems)、1 µl の各プライマー(Table1)、6 µl の水、2 µl の cDNA 溶液

を混合して調製した。それぞれのプライマーセットに対し、PCR 効率を求めるため、キャ

リブレーションカーブを作成した。各遺伝子の発現量を標準化するため、16S rRNA を内

部標準として使用した。定量的 PCR 測定は 2 回実施し、1 回の測定でそれぞれのサンプル

について 2 回実施した。

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43

Table 1 Primers for RT-qPCR, designed from the completed genome sequence of

LG2055 (unpublished in-house data).

geneSequence (upper: forward, lower:

reverse)Function

atpD GCCAGAATGCGTGTTGCATT F0F1 ATP synthase subunit B

AACCAGCCTGAGTGAAACGGA

cfa TGGAAATGCTTCGTCGTCACTcyclopropane-fatty-acyl-phospholipid

synthase

AAATCGTTCCCCCAGCATG

clpC TCGTCCTTTACGTCGTGCAA Clp ATPase protein

ATTTTCCCTGATGAGCGCC

dnaK CAAAGGCTGCTCAAGATTTAGCTG chaperon/refolding of misfolded proteins

CCGTTGCTTGAGCCATTATCAT

ftsH CAGCATTGCTTCCGCATTC cell division protein

GCAGAAGCATAAGAGCCGAGAT

groEL GCTTTGGCGATCGTCGTAA Chaperon

TACAGTGACCTTGCCAGCCTT

hsp20 TGGCAACCTTATTCACCGTGA heat shock protein

AAAACGCCGTCGATGTCCT

ldh TTGGTCGTGAAGTTCGTGACC lactate dehydrogenase

CAATAACCTTTGCGCCGAAA

mscL TGCAGCATTTACCGCAATTG mechanosensitive channel

GAACGTAGCTTCACCGACAGTG

pox TGCCAATTGCCTTAGCCAC pyruvate oxidase

GCGCCGATAACACCTTTGA

opuA TCGAAAAGAGCGACGCAAGA glycine betaine/carnitine/choline transporter

TGCTCACCACCAGAAAGCTCA

ptsH CTCGTCCAGCTACTTTGTTGGT PTS system HPr component

TACATCTGCACCTTGGCCA

rpoD GAACGATCCAGTGCGGATGTA primary sigma factor- sigma70

TCTTCGTCGCCAGCTTCAA

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44

trxA CAACTTGGTGTGGTCCATGTAA Thioredoxin

CCATGATTCCTAAGTTTCGAGC

uvrA AGGCCAAATGGATAAGGCTGA nucleotide excision repair

TTCCAACTGTTGAACGCGG

(6)フローサイトメトリーと蛍光顕微鏡観察

菌体内の ROS 生成はこれまでの報告 65), 83)にしたがって、ジヒドロエチジウム(DHE;

invitrogen) を使用して解析した。蛍光染色したサンプルは Becton Dickinson

FACSCantoTM II flow cytometer を使用し、光電子増倍管(PMT)の電圧を前方散乱(FSC)

は 300、側方散乱(SSC)は 300、PE チャンネル(PE)は 600 にして測定した。流速は中速

(medium)に設定し、データは 20,000 カウントまで収集して、Facs Diva version 6.1.3

および WinMDI 2.9 (Joseph Trotter, Salk Institute for Biological Studies, La Jolla, CA;

http://facs.scripps.edu/software.html)で解析した。

結果

(1)LG2055 株の生育と低 pH あるいは酸化ストレス下での長期生残性に対する飢餓処

理の効果

低 pH あるいは酸化ストレス耐性を評価するためと長期保存時の生残性を調べるための

モデル生物として LG2055 株を使用した。LG2055 株の MRS 培地での生育曲線を作成し

(Fig. 1)、対数増殖後期(左矢印、5 時間)、定常期(右矢印、18 時間)を定義した。

Fig. 1 Optical density of LG2055 grown statically in MRS medium at 37 °C

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

0 120 240 360 480 600 720 840 960 1080 1200

time (min)

OD

660

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45

LG2055 株の対数増殖期の菌体に飢餓処理を 5 時間あるいは 18 時間することで、pH 3.6

および 10 mg/L の過酸化水素中で 10 °C、6 日間保存後の生残性が有意に向上した(Fig. 2)。

定常期の菌体も同様に生残性は向上したが、飢餓処理時間を変えても有意な差はみられな

かった(データは示していない)。

Fig. 2 Effect of sugar starvation on stress resistance of LG2055. The exponential

phase cells incubated in MRS without addition of glucose for 0, 5, or 18h at 37 °C were

used to asses the survival after 6 d exposure to 0.1 M acetate buffer pH 3.6 (a) or 25

mg/L hydrogen peroxide (b). Ratio of viable cell count before storage (N0) and after 6 d

of storage (N6). * P<0.05, Bonferroni

-7.0

-6.0

-5.0

-4.0

-3.0

-2.0

-1.0

0.0

0 h 5 h 18 h

starvation period

log

(N6/N

0)

**

-7.0

-6.0

-5.0

-4.0

-3.0

-2.0

-1.0

0.0

0 h 5 h 18 h

starvation period

log

(N6/N

0)

*

a

b

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46

(2)飢餓処理した LG2055 株の遺伝子発現

飢餓処理の効果を評価するため、15 遺伝子の RNA 発現量を測定した。通常の MRS 培

地で 37 °C、18 時間生育した菌体と比較して、グルコース無添加 MRS 培地で 37 °C、18

時間糖飢餓処理した菌体はいずれの遺伝子発現レベルも抑制された (Fig. 3)。生菌数は飢

餓処理で有意な変化がなかった(データは示していない)ので、この結果は遺伝子発現レベ

ルだけが抑制されたことを示している。

Fig. 3 Relative gene expression in LG2055 cells incubated at 37 °C for 18 h in MRS

without added sugars, compared to that in cells grown in MRS medium at 37 °C for 18

h.

-4.5

-4.0

-3.5

-3.0

-2.5

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

atpD

cfa

clpC

dnaK

ftsH

groEL

hsp20

ldh

mscL

pox

opuA

ptsH

rpoS

trxA

uvrA

gene

exp

ress

ion

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47

(3)LG2055 株の長期保存後の ROS 生成に対する飢餓処理の効果

これまでに Bacillus cereus と Lactobacillus plantarum において蛍光色素を用いて低

pH ストレスを与えた時の菌体内の ROS 生成と細胞死について報告されている 20), 83)。そ

こで、赤色蛍光色素である DHE(Fig. 4)を用いて ROS 生成を評価した。対数増殖期菌

体を低 pH ストレスにさらすと飢餓処理前の菌体は内部に ROS を生成したが、5 時間飢餓

処理した菌体は ROS 生成が減少した(Fig. 5a)。一方、過酸化水素ストレスに対しては、飢

餓処理で生残性は向上した(Fig. 2)が、ROS 生成には影響を与えなかった(Fig. 5b)。

Fig. 4 The micrographs show phase contrast (left) and fluorescence (right) images of

DHE-stained LG2055 cells stored at pH 3.6 for 6 d at 10 °C.

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48

Fig. 5 Effect of sugar starvation on ROS formation in LG2055 after long-term exposure

to low pH. Stationary phase cells stored in 0.1 M acetate buffer pH 3.6 (a) or 15 ppm

H2O2 in PBS (b) at 10 °C after 6 d. The graphs present the distribution of the

fluorescent signal of 20,000 cells (events) of LG2055 treated in MRS broth without

sugar at 37 ˚C for 0 h (red), 5 h (green), and 18 h (blue).

b

a

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49

(4)高浸透圧ストレス下での低温保存時の他の Lactobacillus 属細菌の生残性に対する

飢餓処理の効果

他の 6 種の Lactobacillus 属細菌について生育とストレス耐性に対する糖飢餓処理の効

果を調べた。MRS 培地に添加する糖の種類を変えて 37 °C で 16 時間静置培養した後の生

菌数を測定した結果、資化できる糖を添加した場合は資化できない糖を添加した場合と比

較していずれの Lactobacillus 属細菌も有意に高い生菌数を示した(データは示していな

い)。そこで資化できる糖を添加した場合の結果としてグルコースを添加した際のデータを、

資化できない糖を添加した場合の結果として糖無添加のデータを Fig. 6a に示した。

高糖濃度(高浸透圧)溶液中で 10℃、6 日間保存した時の生残性を評価した(Fig. 6b)。

その結果、LJ、LGT および LG2055 株の 3 菌株は糖飢餓により有意に生残性が向上した。

一方、LH、LA および LF の 3 菌株は生残性において糖飢餓処理による有意な差はみられ

なかった。

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

LH LA LF LJ LGT LG2055

viab

le c

ell c

ount

(log

[CFU

/g])

a

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50

Fig. 6 Growth of lactobacilli in MRS broth at 37 °C for 16 h (a) and the effect of sugar

starvation on the survival of lactobacilli after 10 d in PBS at 10 °C (b). Gray bars show

the cells incubated in MRS, and white bars show the cells incubated in MRS without

added sugars. * P<0.05, t test.

考察

原核生物において定常期菌体は一般的にストレス耐性が向上することが知られている

19)。本研究において 6 種の Lactobacillus 属細菌のうち 3 菌株(LH、LA、LF)のストレス

耐性は糖飢餓処理により改善しなかった。一方、LG2055 株は糖無添加 MRS 培地で培養

すると低 pH および酸化ストレス下、10 °C で 6 日保存後の生残性が向上した(Fig. 2)。

本研究では全ての培養は静置で実施しており、微好気環境となる。そのため、溶存酸素が

細胞に浸透し、ROS に変換される可能性がある。ROS は DNA やタンパクなどの細胞組

織に深刻なダメージを与える 20)。Bacillus cereus において、低 pH ストレスは細胞死への

影響を与えかねない ROS の生成を引き起こす 84)。一方、過酸化水素と菌体内 ROS の生成

に有意な関連はみられなかった。本研究で糖飢餓が低 pH ストレス下での ROS 生成を抑

制することを見出した。菌体内 ROS は代謝経路からの発生が考えられる 36)ため、代謝、

ストレス耐性、トランスポーターなど 15 種類の遺伝子発現量を測定した。しかしながら

測定した全ての遺伝子発現は抑制されていた。同様の現象は Lactococcus lactis IL-1403

-9.0

-8.0

-7.0

-6.0

-5.0

-4.0

-3.0

-2.0

-1.0

0.0

1.0

LH LA LF LJ LGT LG2055

log

(N10

/N0)

*

*

*b

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51

での炭素飢餓への適応においても観察されている 85)。これらの結果は代謝経路から続くタ

ンパク合成を糖飢餓が抑制することを示唆している。代謝速度の低下が ROS 生成の低下

を引き起こし、低 pH ストレス耐性を向上させている可能性が考えられる。L. gasseri とL. johnsonii の多くはヒトの糞便から検出され、ヒトの腸内に生育している 86)。さらにこ

の 2 つの菌種は分類学上、L. helveticus や L. fermentum とは違うグループに分類されて

おり、飢餓ストレス負荷時の性質の違いは分類の違いによって説明できるかもしれない。

以上の結果から、糖飢餓が Lactobacillus gasseri SBT2055 のストレス耐性を向上させ、

酸ストレス時においては遺伝子発現と菌体内 ROS 生成を抑制することを示した。糖飢餓

という前処理が製造時および保存中の生残性向上のためのツールとなる可能性を見出した。

要約

糖を含まない MRS 培地で培養することで糖飢餓処理し、Lactobacillus 属細菌のストレ

ス耐性に対する糖飢餓処理の効果を調査した。糖飢餓処理した Lactobacillus gasseriSBT2055は pH 3.6 あるいは 25 mg/Lの過酸化水素中における 10 °C 保存での生残性が向

上した。しかし、各種のストレス耐性への関与が示唆される遺伝子(atpD, cfa, clpC, dnaK,

ftsH, groEL, hsp20, ldh, mscL, pox, opuA, ptsH, rpoD, trxA, uvrA)の発現レベルは飢餓

処理後に低下した。また、保存する pH の低下とともに ROS 生成が増加し、生残性は低

下したが、飢餓処理した菌体は処理しない菌体と比較して pH 3.6 で保存時の ROS 生成の

増加が抑制され、生残性も改善した。さらに糖を添加しない MRS 培地で 37 °C、18 時間

糖飢餓処理した Lactobacillus 属細菌 6 菌株のうち、消化管内を生育環境とする L. gasseriSBT2055、L. gasseri JCM1131Tと Lactobacillus johnsonii JCM2010Tの 3 株のみ、高糖

濃度溶液中における 10 °C 保存時の生残性が向上した。

これらの結果は糖飢餓処理が製造時および保存中の生残性を向上させる可能性がある

ことを示唆している。

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52

第5章

総括

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53

乳酸菌と称される細菌群の中でもLactobacillus属細菌は幅広い生育環境から分離され、

乳や植物などを原料とした発酵食品のスターターとしてだけでなく、プロバイオティクス

としても利用されており、工業的にも利用価値が非常に高い。スターターやプロバイオテ

ィクスとして工業利用する場合には生育だけでなく、製造時および製品保存時における生

残性が重要になる。そこで、本論文では生育域の異なる 3 種の Lactobacillus 属細菌に着

目し、生育に適した培養条件、培養条件によるストレス応答変化、そしてストレス応答を

利用した生残性向上方法について検討した。

1.乳を生育環境とする Lactobacillus helveticus の馬乳酒アイラグ中での環境適応と至

適生育条件の変化

Lactobacillus helveticus SBT11261 を MRS 寒天培地、Reinforced Clostridial (RC)寒

天培地に塗抹した際、培地の種類、培地 pH および培養時の嫌気度によりコロニー形成数

が変化した。MRS 寒天培地、嫌気条件で培養した場合は培地のコロニー形成数に差がな

かったが、微好気条件で培養した場合は培地の pH が 6.5 のとき、コロニー形成数が減少

した。RC 寒天培地では嫌気、微好気とも pH 6.0 以上ではコロニーを形成せず、pH 5.0

でコロニー形成数の最大値を示した。MRS 液体培地を使用し、静置培養、定 pH 培養した

場合、RC 培地ほど顕著ではないが、初発 pH、および培養中の pH が高い方が到達 OD、

生菌数が減少する傾向がみられた。RC 液体培地を使用した静置培養では pH 5.5 以上で生

育が抑制された。RC 培地にツイーン 80 を添加したところ、初発 pH が 6.0 での生育が向

上した。しかし pH 5.5 以下でも生育が向上し、高 pH で生育が抑制される傾向は変化しな

かったことから、ツイーン 80 は生育因子であり、高 pH 感受性には影響しないことが推

察された。

さらに、L. helveticus SBT11261 は馬乳酒由来のため、培地にエタノールを添加して培

養したところ、エタノール濃度の増加に伴い、16 時間培養後の生菌数は減少した。到達

OD は初発 pH によってアルコール濃度に対する挙動が異なり、培地中のエタノールが

3.75%の時に初発 pH による差が最大となり、pH 6.0 より、pH 5.0 で到達 OD が高い値を

示した。

これらの結果から、Lactobacillus helveticus SBT11261 は生育至適 pH が 5.5 以下であ

り、酸素、アルコールの存在や栄養分の不足により、pH による生育の差がより明確にな

ることが示唆された。

このようにモンゴル国の馬乳酒から分離された L. helveticus SBT11261 は基準株を

含めた他の L. helveticus と比較して至適 pH、アルコール耐性が異なるという特性を持つ

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54

ことを見出した。この株は伝統的な発酵乳で他の微生物と混合した状態で生育し、生存す

るためにこれらの形質を進化させてきた可能性が考えられる。

乳という環境は栄養分が豊富であるが、それ故に競争相手も多い環境である。L. helveticus と同じように乳を生育環境とし、特にヨーグルトスターターとして使用される

L. delbrueckii subsp. bulgaricus (LB) と Streptococcus thermophilus (ST) はゲノムサ

イズが 180万塩基で植物由来の乳酸菌 L. plantarum の 300万塩基などと比較して非常に

小さい。これは LB と ST がヨーグルトで長期間共生している間にゲノム中の遺伝子の水

平伝播が起きている可能性が考えられる。他の微生物と共存する伝統的発酵乳では遺伝子

の水平伝播などが起こり、その環境に適応した菌株が選抜されてきたことが推察される。

L. helveticus SBT11261 もアイラグ中で他の微生物と長期間共存する間に、生育温度、生

育 pH が変化し、環境に最適化した菌株が選抜されてきた可能性がある。乳酸菌を産業利

用する際の生育条件を検討するには目的の菌が分離された環境を知ることも重要になる。

2.植物を生育環境とする Lactobacillus plantarum における呼吸鎖(ETC)の発現とス

トレス耐性の変化

Lactobacillus plantarum は通性嫌気性菌として知られており、酸素呼吸しないものと

考えられていたが、最近の報告でヘミンとメナキノン(ビタミン K2)を添加して好気培養

することで酸素呼吸に似た状態(呼吸状態)が誘導されることが見出された。しかしこの

状態でのストレス耐性は調べられていない。そこで本研究では Lactobacillus plantarumWCFS1 を用い、呼吸状態で生育した菌体(呼吸菌体)、呼吸状態を誘導しない好気培養で

生育した菌体(好気菌体)、静置(微好気)状態で生育した菌体(発酵菌体)の生育の違い

と酸化ストレス、低 pH ストレスに対する耐性の違いについて調べた。

その結果、マンガンを含む通常の MRS 培地で生育させた場合、呼吸菌体は発酵菌体、好

気菌体より高い菌体濃度に到達した。また過酸化水素による酸化ストレスに対して呼吸菌

体は発酵菌体より高い耐性を示した。さらに呼吸菌体、好気菌体は定常期においてカタラ

ーゼ遺伝子が発現し、呼吸菌体のみカタラーゼ活性を示すことを確認した。

低 pH ストレスを負荷すると pH の低下に伴い、いずれの菌体も生菌数が減少した。低

pH 耐性は培養時の酸素の利用性によって変化し、同じ pH で保持した場合、発酵菌体が

好気菌体より高い生残性を示し、呼吸菌体はさらに生残性が低下した。生残性の低下とと

もに菌体内に ROS が生成し、菌体膜の透過性が上昇していることを確認した。これらの

結果は菌体膜の透過性の変化と菌体内 ROS 生成は酸ストレスによる死滅と関連があるこ

とを示唆している。

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55

以上の結果から、呼吸状態で培養することにより、低 pH には感受性が高いが、酸化ス

トレスに高い耐性を持つ菌体を大量に生産できる可能性が示唆された。

呼吸鎖(ETC)が発現誘導される状態で L. plantarum WCFS1 は酸化ストレス耐性が

向上し、その原因はカタラーゼ遺伝子の発現と活性の増加によるものと考えられた。一方、

この ETC が発現している菌体は低 pH ストレス耐性が低下し、その原因として菌体膜の

健全性の低下と菌体内 ROS の増加が示唆された。植物を生育環境とする Lactobacillusplantarumのゲノムサイズは330万塩基程度で、乳を生育環境とするL. delbruecki subsp.

bulgaricus(約 180 万塩基)や L. helveticus (180-220 万塩基)、消化管を生育環境とする

L. gasseri(約 190 万塩基)よりゲノムサイズが大きく、これらの菌より多くの代謝経路

を保有している。一般的にゲノムサイズが大きいと自己を複製する際に労力が大きくなる

ため、増殖には不利になる。しかし植物という生育環境は栄養源や温度、酸素などの変化

が大きく、これらに対応するためにゲノムサイズが大きいままであると考えられる。ETC

のような代謝経路も好気的条件下においては嫌気発酵よりエネルギー獲得量が増加するた

め、他の嫌気発酵で酸を生成する細菌より菌体増殖において有利となる。そしてこれらの

酸生成細菌を抑えることができれば低 pH 耐性は不要になることが予想される。このよう

に ETC の発現とその時の酸化ストレス耐性の向上は植物などの好気条件で生存するため

の戦略の一つであると考えられる。

3.消化管内を生育環境とする Lactobacillus gasseri のストレス耐性と生残性向上方

Lactobacillus 属細菌を、糖を含まない MRS 培地で培養することで糖飢餓処理し、スト

レス耐性に対する糖飢餓処理の効果を調査した。糖飢餓処理した Lactobacillus gasseriSBT2055 は pH 3.6 あるいは 25 mg/L の過酸化水素中における 10℃保存中の生残性が向

上した。しかし各種のストレス耐性への関与が示唆される遺伝子(atpD, cfa, clpC, dnaK,

ftsH, groEL, hsp20, ldh, mscL, pox, opuA, ptsH, rpoD, trxA, uvrA)の発現レベルは糖飢

餓処理後に低下した。また、保存する pH の低下とともに ROS 生成が増加し、生残性は

低下したが、糖飢餓処理した菌体は処理しない菌体と比較して pH 3.6 で保存時の ROS 生

成の増加が抑制され、生残性も改善した。さらに糖を添加しない MRS 培地で 37 °C、18

時間培養することで糖飢餓処理した Lactobacillus 属細菌 6 株のうち、消化管から検出さ

れる頻度の高い菌種である L. gasseri と L. johnsonii のみが高糖濃度(Brix 26%)溶液中

で 10 °C 保存、10 日後の生残性が向上した。

この結果は消化管内を生育環境とする Lactobacillus 属細菌を糖飢餓処理することによ

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56

りストレス耐性が高まり、製造時および保存中の生残性を向上させる可能性があることを

示唆している。

消化管内で Lactobacillus 属細菌が生育に必要な栄養源は宿主に依存し、常に栄養源が

存在する状態ではない。また栄養源が無い状態でも消化液による低 pH などのストレスに

さらされることがある。芽胞形成菌ではそのような状態では芽胞を形成して環境が好転す

るまで代謝を抑制し、ストレス耐性を高めた状態をとることができる。しかし

Lactobacillus 属細菌は芽胞を形成しないため、栄養源が無い飢餓状態でも生存できるよう

な耐性メカニズムを獲得した可能性が考えられる。

本研究において Lactobacillus 属細菌は多様な生育環境に適応し、代謝経路やストレス

耐性メカニズムなど異なる生存戦略を保有していることを見出した。特に伝統的発酵乳製

品における他の乳酸菌や酵母との共存による環境適応のための生育条件の変化、培養条件

によるストレス耐性メカニズムの変化、そして具体的な生残性向上方法の一端を明らかに

した。

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57

謝辞

本研究を進めるにあたり、ご指導、ご鞭撻を賜りました岡山大学大学院環境生命科学研

究科 宮本拓教授、ならびに環境生命科学研究科 上村一雄教授、環境生命科学研究科 坂

口英教授に心より感謝の意を表します。

本研究の機会ならびにご高配を賜りました、雪印メグミルク株式会社取締役研究開発部

長 小西寛昭氏、雪印メグミルク株式会社ミルクサイエンス研究所長 吉岡俊満氏、雪印

メグミルク株式会社ミルクサイエンス研究所主幹 川﨑功博氏、和洋女子大学 中島肇教

授に深く感謝いたします。さらに本研究の実施にあたり、絶大なるご努力、ご支援をいた

だきました雪印メグミルク株式会社ミルクサイエンス研究所主席研究員 瀬戸泰幸氏、

Wageningen 大学 Tjakko Abee 教授に深謝いたします。また、本研究を進めるにあたりご

協力をいただきました雪印メグミルク株式会社ミルクサイエンス研究所の皆様、

Wageningen 大学 Food Microbiology 研究室の皆様、そしてご支援いただいた全ての皆様

に感謝いたします。

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