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講演8 実験研究の安全管理と 組織の危機管理 東京大学環境安全本部 小山富士雄

講演8 実験研究の安全管理と 組織の危機管理 東京大学環境安全本 … · 目的:事故・災害・環境汚染を未然に防止 構成員の健康を守り安全で快適な教育・研究の環境を保持

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講演8

実験研究の安全管理と組織の危機管理

東京大学環境安全本部小山富士雄

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安全と安心

安心

不安

安全危険

安全で安心(理想)危険だけど安心

(危険要因排除の努力必要)

危険で不安(存在が許されない)

安全だけど不安(リスクコミュニケーショ

ンの重要性)

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技術者・研究者に求められているもの

1.健全な社会人としての倫理観、常識2.研究者等に必要な知識(技術、法令等)3.組織の一員としての知識(大学・企業・学会)

組織の構成員としての判断基準・遵守基準

1.絶対遵守事項 (災害防止・法違反防止)2.業務遂行のための規則 (組織維持)3.より良い結果を求めての行動 (改善・成果)

大学の教育・研究で上記基礎分野の取り扱いはどうなっているのだろうか。

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企業の環境保全、安全確保の取り組みに対する社会的な関心の高まり

・環境汚染物質の排出削減と削減努力・成果の公表

・保安事故ゼロ(大地震等如何なる場合でも安全確保)

・製品品質問題(100%安全で安心して使える製品提供)

・法令遵守・情報開示・社会貢献

これらの対応を誤ると、企業の存在が否定される。

環境経営からCSR(企業の社会的責任)へ

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1.社長をトップに組織、体制の確立2.法令遵守を超えた企業倫理の徹底3.環境、安全、品質のマネジメントシステムの整備

ポイント ・全社方針の制定、周知・リスク項目の拾い上げ、対策の順位付け・実施計画の策定、実施・内部監査・外部監査・毎年のスパイラルアップ

4.内部コミュニケーション・トップへの速やかな情報伝達(悪い話ほど速く)・各種事例の速やかな水平展開、事故再発防止・環境・安全教育(個人ベースの教育記録へ)

5.情報開示(製品情報、環境報告書、Webの活用)

企業の環境・安全活動のポイント

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1.法対応から自主的取り組みへ・品質管理MS(ISO9001他)・グリーン調達、取り扱い物質や製品の安全情報開示・EMS(ISO14001他)、環境報告書・自主保安体制の確立

高圧ガス、労安法(ボイラー、一圧)、OHSMS他・法を先取りした自主的取り組み(PRTR、大防法、他)

2.環境・安全から企業の社会的責任(CSR)へ・格付け(環境格付け→SRI)、メディアや学会による格付け・情報開示

CSR報告書、マイナス情報開示、製品情報(原料~廃棄)・社会の一員としての企業活動、社会からの信頼確保

遵法、企業倫理、安全・安心の確保、社会貢献

企業の環境・安全活動の方向

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製造工場の安全管理のポイント製造工場の特徴

終製品、中間製品の製造 → 定常的な作業構成員の大半は工場労働者 → 労務管理の重要性

(地域の男女社員、外国人、派遣、パート、)製造技術者の業務 → 生産、技術、工程管理大型の機械設備、大量の原材料・薬品や製品取り扱い

安全管理のポイント種々の知識レベルの社員 → 教育、SOP遵守徹底日々の作業における危険要因の排除従業員の安全確保(作業環境、労働災害発生防止)事故災害発生防止と万一の対応如何なる場合も有害物の排出・漏洩はない

→ 近隣住民に不安を与えないこと

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実験研究の安全管理のポイント研究機関の特徴

未知の分野、未知の物質を対象多種多様な構成員(外国人、派遣パート、客先研究員)研究開発のグローバル化、スピードアップ特殊な設備・機器(クリーンルーム、バイオ、病原菌等)

社会の眼緑に囲まれた環境の中での 先端分野研究専門家集団(社会を先導すべき科学者群)研究環境から有害物の排出・漏洩はない

裏切られた時の反発科学不信、化学物質悪者論マッドサイエンティスト

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工場と大学・研究所の違い

研究機関の業務は研究開発と関連する分析・解析

取り扱い数量が小さい→事が起きてもたいした事無しとする変な安心感

新しい物の取り扱い →自らの手で安全配慮要過剰な専門家意識 →正常化の偏見管理を嫌う風土 →安全確認の手抜き少量だが危険なもの →毒劇物、水銀、レーザー,RI勤務時間管理不可能、スペシャリスト化

→過労、メンタルヘルス研究への過度の集中 →社会常識から遊離組織より個人を優先 →規則を無視

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大学の安全管理大学の特徴

構成人員が流動的・レベル差大学生の数は教職員の数倍、研究者・スタッフの移動も多く、短期間で移動する人員が多い。

先端研究の場研究では、決まり切った作業ではなく、非定型作業が多い。未知の反応・実験操作への挑戦がおこなわれる。

情報伝達・管理の継続の問題トップダウン的伝達が困難で、引き継ぎも不確実になりやすい。

上記より、大学に潜在する事故発生危険は大きいと考えられ、より一層の安全管理が求められる。研究機関等でも同様の問題があると考えられる。また、大学は人材育成の場であり、模範的安全管理をおこなうことが求められる。

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大学・企業・研究所の安全管理の基本

・組織の大目標の設定、周知・個別テーマの研究目的確認・組織管理及び安全管理体制の明確化・リスクアセスメント(RA) → KY、HH、MSDS活用・リスク対応(出来るところから改善、禁止事項)・適用される法令規則、組織の規則、その他の明確化・緊急時の対応・教育訓練、教育記録作成・PDCAサイクル運用によるスパイラルアップ・内部コミュニケーション(パトロール、各種委員会)・情報公開、社会の信頼確保

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安全管理体制構築目的:事故・災害・環境汚染を未然に防止

構成員の健康を守り安全で快適な教育・研究の環境を保持安全関係法令への適切な対応事故・災害・環境汚染発生時、被災者救助と災害の拡大防止事故・災害・環境汚染発生後の処理・対応、再発防止策策定

管理体制• 平常時:関係法令を遵守し、事故・災害・環境汚染の未然防止をはか

るとともに、構成員の健康にも配慮した環境を維持するために、責任体制を明確にした管理組織をつくり、管理活動をおこなう

実務管理組織(安全衛生管理室など)の設置が有効• 緊急時:事故・災害の規模に応じた体制(災害対策本部設置など)を速

やかにとれるよう、あらかじめ準備しておく(死傷者、外部への影響など勘案し重大災害、軽災害等にランク付け)

法令で要求される管理者多くの事業場で、衛生管理者、放射線取扱主任者、防火管理者、危険物取扱者、産業医等の選任が必要となるが、これらの管理者は管理組織に組み込むべきである。

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安全管理組織の例

部局等責任者(学部長など)

安全管理委員会 安全衛生管理室 (メンバー例) 専任スタッフにより 部局等執行部 実務を担当 学科の担当者 建物の担当者 専門委員会、WG等 事務担当者 化学薬品専門委員会 法令等で選任された管理者 放射線専門委員会 パトロールWG

各学科長 各学科長 ...

各研究室責任者 各研究室責任者 ...

...

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安全管理活動

安全管理計画

安全管理活動

安全点検

安全巡視

安全管理委員会、方針・目標設定(必要によりワーキンググループ)

マニュアル作成、更新

安全教育、講習会

安全に関する点検(自主的点検)

安全巡視

問題点対策により、安全管理計画・活動を修正改善問題点改善、フォロー

Plan

Do

Check

Act

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1.作業環境の整理、整頓、作業者の自主的取り組み5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)自主的活動(KY、HH、TPM)

事業所内、社内での相互チェックや競争

2.環境・安全衛生教育体系的な教育、個々人の教育記録完備

3.法的資格ライン管理者は資格必須、なければ任命なし

4.個々人のキャリアアップ安全確保は現場管理の重点事項、昇進へ必須項目

環境・安全衛生に対する要求事項

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あるべきコミュニケーション

平常時内部コミュニケーション

TOPから第一線(理念・方針の公表伝達、現場確認)現場からTOPへ(現場の活動状況、成果、問題点報告)

外部コミュニケーション企業から外部へ絶えざる情報発信、信頼感の醸成ステークホルダーの意見収集、対話

緊急時内部コミュニケーション

TOPによる陣頭指揮、情報の流れ整理悪い情報も含めて事実を速やかにTOPへ報告

外部コミュニケーション事実を速やかに、情報の受け手のニーズに合わせ公表メディア、住民、社会の誤解の防止

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東京大学の環境安全組織体制

実務情報の交換

総    長

本 部 長

実務担当チーム

防火・防災対策部会

環境安全部会安全管理委員会

アイソトープ総合センター原子力国際専攻

環境安全研究センター

保健センター

連携部局長

各研究室他

部局安全衛生管理室

放射線安全部会

環境安全本部

連携連携

環境安全担当理事

副 本 部 長

主   査

(事務局は環境安全本部)

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・放射線部門・防火・防災部門・環境安全部門・安全衛生教育部門・衛生管理部門・安全管理部門・薬品・機器管理部門

・安全担当理事・本部長・副本部長・主査 4名・専任教員 3名・専任産業医 3名・統括長他事務担当 13名・各部局からの構成員 19名

環境安全本部の構成

環境安全本部

本部長

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産業医巡視

講習会風景

• 安全衛生管理計画の策定

• 事故災害データの収集・分析・フィードバック・再発防止

• 安全衛生教育・講習会の実施、諸規定の整備及びマニュアル・資料の作成とその周知

• 化学物質管理、高圧ガスの管理

• 各種危険作業・作業環境の管理、危険有害物質(アスベスト等)の取り扱い

• RI.放射性物質の管理、関連教育

• 安全衛生パトロール、衛生管理者巡視(毎週)、産業医巡視(毎月)、総長・部局長安全パトロール

• 健康診断の支援

• 防火・防災体制の整備、消防訓練・救命救急講習の実施

• 緊急時対策、緊急時対応の体制整備、緊急用資材確保

• フィールドワーク安全対策、事故防止指針作成

• 環境報告書の作成

• 社会と連携しての防災・環境保全活動

• 教育研究安全衛生マネジメントシステムの導入

冊子:事故防止指針

環境安全本部の業務

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健康被害の防止

環境の保全

輸出入管理 危険性の防止

オゾン層保護法ダイオキシン類対策法農薬取締法大気汚染防止法水質汚濁防止法悪臭防止法土壌汚染対策法廃棄物処理法

毒劇物取締法薬事法食品衛生法労働安全衛生法作業環境測定法じん肺法有害物質含有家庭用品規正法

化学物質排出管理促進法

化学物質審査規制法有害廃棄物輸出入規正法

外国為替及び外国貿易法

化学兵器禁止法

製造物責任法家庭用品品質表示法

消防法火薬類取締法高圧ガス保安法

化学物質国内規制法:分類別

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大学・研究所の安全管理に関わる関連法規

1.安全衛生管理関連法規

(1)労働安全衛生法

(2)消防法

(3)毒物及び劇物取締法

(4)高圧ガス保安法

(5)放射線障害防止法

(6)薬事法等に関する法律(麻薬及び向精神薬取締法など)

(7)研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令

2.環境保全関連法規

(1)環境基本法,循環型社会形成推進基本法,廃棄物関連法令

環境保全関連法令,廃棄物の処理に関する指針等

(2) PRTR制度とこれに関する法律

経済産業省・厚生労働省・環境省

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労働安全衛生法

目的 労働災害の防止のための災害防止基準 の設定

職場の安全衛生確保のための責任体制の明確化職場の安全衛生の向上のための自主的活動の促進

労働災害の防止,労働者(研究者)の安全と衛生の確保

危険有害作業における安全衛生確保のための規定遵守の義務化危険有害化学物質の使用放射線・放射性物質の使用高所作業,潜水作業,低酸素作業,粉塵作業など

危険を伴う機械類の安全点検の義務化小型圧力容器,局所排気装置,遠心機など

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法人化前後の大学における労働安全衛生に関する規定の違い

法人化前

人事院規則10-4等

所管が人事院(監督機能が緩やか)

高責任者は文部科学大臣

罰則規定が不明確

法人化後

労働安全衛生法

所管が厚生労働省(労働基準監督署の監督)

高責任者は大学総長、学長

罰則規定が明確(書類送検、罰金、懲役など)

総括安全衛生管理者、衛生管理者、産業医衛生委員会

などの選任、設置が必要

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1.労安法等による書類送検、処罰法人、責任者等の個人(両罰規程)

2.刑事責任個人対象(含む命令権者)

3.民法による補償法人、個人(双方又は片方)

4.大学・事業者による懲戒処分個人

5.資格・免許剥奪個人・法人(研究機関の研究許可取り消し含む)

6.設備の使用禁止、改善命令、機関の廃止・解散法人

事故発生時の責任・罰則

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環境保全関連法令・廃棄物関連法令への大学の対応(1)

「環境基本法」

「環境配慮促進法」

「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)

「循環型社会形成推進基本法」

「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」

(容器包装リサイクル法)

「特定家庭用品機器再商品化法」(家電リサイクル法)

など

資源リサイクルの促進省エネルギーの促進環境報告書の作成・公開

「持続的な社会」の形成のために、大学においても

が求められている

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環境保全関連法令・廃棄物関連法令への大学の対応(2)

「下水道法」

「水質汚濁防止法」

「大気汚染防止法」

「ダイオキシン類対策特別措置法」

「悪臭防止法」

「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)

「特定化学物質の環境への排出量の把握及び管理の改善の促進に関する法律」(化学物質管理促進法)など

大学は一般家庭と異なり、企業の工場などと同じ特定事業場として指定されている

↓・大学から出る不燃物は産業廃棄物として取り扱われる・下水等の環境監視が必要

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PRTR( Pollutant Release and Transfer Register)制度日本語:「環境汚染化学物質排出・移動登録」制度

事業者による化学物質の排出・移動の管理を強化し汚染を未然に防止することが目的

「特定化学物質の環境への排出量の把握及び管理の改善の促進に関する法律」 (PRTR法) 1999年制定

第一種指定化学物質 354種類(うち12種類は特定第一種指定化学物質 : 発癌性物質など)

第二種指定化学物質 81種類

大学はキャンパス(事業所)ごとに取扱量の総計が第一種指定化学物質では1t以上、特定第一種指定化学物質 では0.5t以上

のものについて、その排出、移動の内容を都道府県知事に報告する義務がある

第一種指定化学物質、第二種指定化学物質について化学物質安全性データーシート(MSDS)の提供が義務付けられている

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MSDSとICSC

MSDS:化学物質安全性データシート

・化学物質の名称(商品名),物理化学的性質,有害性情報,取扱い上の注意事項,廃棄の際の留意事項,応急処置などが記載

・法的にMSDS提示を義務づけているものと化学物質製造企業・販売企業が自主的に作成したものがある

法的に提示を義務づけているもの、GHS対応労働安全衛生法の通知対象物質PRTR法の第一種指定化学物質・第二種指定化学物質毒物及び劇物取締法で指定された毒物・劇物

企業が作成したMSDS 日本試薬協会MSDS検索サイトhttp://www.j-shiyaku.or.jp/home/msds/労働安全衛生法指定のMSDS 安全衛生情報センター化学物質情報サイトhttp://www.jaish.gr.jp/user/anzen/kag/kag_main01.html

ICSC : 国際化学物質安全性カード

・ 国際的に統一した化学物質危険有害性情報の提示を目的として作成国立医薬品食品研究所 日本語版ICSCサイト

http://www.nihs.go.jp/ICSC/

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安全管理(労働安全衛生法への対応)

大学で対応が必要となる主要な点

・ 管理体制管理組織構築(責任体制、衛生委員会、実務担当者 等)

安全衛生教育実施職場巡視健康診断

・有機溶剤、特定化学物質使用時の管理

局所排気装置保護具使用掲示、表示作業環境測定特殊健康診断

・設備の届出と点検圧力容器、ボイラー、クレーン、局所排気装置、乾燥設備 等

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安全管理(消防法への対応)消防法への対応で必要となる主なものは以下の点

・ 防火管理

学校は防火管理が義務付けられている防火管理者選定消防計画作成初期消火、通報及び避難の訓練の実施

・ 消防法危険物の適正な貯蔵、取扱い性質を把握し適正に貯蔵、取扱い危険物の数量管理規定量以上の保有には届出・許可が必要

少量危険物取扱所、危険物貯蔵所など管理者は資格を有する必要がある(危険物取扱者)

・ 消防用設備等の設置、維持

点検・報告、整備、適正な維持管理

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安全管理(毒物及び劇物取締法への対応)

毒物及び劇物取締法で求められる管理の要点

管理体制、緊急連絡体制(連絡網、応急処置)の整備

保管• 施錠できる堅固な保管庫

• 表示(医薬用外劇物、医薬用外毒物)

• 毒劇物以外の薬品を一緒に置かない

使用記録と在庫管理

その他、以下の点も注意すべきである• 物質の危険性を知り安全な使用をおこなう

• 実験室での飲食・喫煙禁止

• 適切な廃棄

• 飲料ビンなどに入れて保管しない

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安全管理(放射線関係法規への対応)

放射線関連法規• 放射性同位元素による放射線障害の防止に関する法律• 核原料物質・核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律• 電離放射線障害防止規定

(人事院規則10-5(職員の放射線障害の防止) )

放射性物質使用、放射線発生装置設置、核燃料物質使用⇒監督官庁の承認等が必要

取扱者⇒放射線取扱者の認可を受け登録することが必要

教育訓練の受講および特別健康診断の受診が必要

厳格な管理が要求される(管理区域、保管・使用・廃棄の記録、緊急時の連絡体制等)⇒放射線管理組織作成、管理者選任が必要

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安全管理(化学物質排出把握管理促進法への対応)

化学物質排出把握管理促進法は、PRTR制度の遂行を定めている

PRTR制度(Pollutant Release and Transfer Register )環境(大気、水、土壌)への排出量及び廃棄物に含まれての事業所外への移動量を、事業者が自ら把握し国に届け出るとともに、国は届出データや推計に基づき、排出量・移動量を集計し、公表する。

•以下の取扱量以上の指定化学物質については、的確な量的管理・把握が必要となる。取扱量が届出対象未満であっても説明責任果たすためのデータを残しておくべき。

第一種指定化学物質:1t以上特定第一種指定化学物質:0.5t以上

対象物質の含有量が1質量%未満のものや固体で溶融、蒸発等しないものは対象外

•「使用量」、「環境への排出量」、「移動量」の把握が必要大学等では集中管理が困難であり、各研究室単位でのデータの集積が必要薬品管理システムが有効

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安全点検(1)

• 安全管理、危険性のある装置、保安設備等の状況をチェックするため安全点検を実施する

• 安全点検には、法令で要求された点検があり、必ず実施しなければならない。

• 法令で要求された点検に加えて、自主的な点検も実施すべきである。

自分の研究室の安全管理について自ら点検することで安全意識の高揚にもつながる

• 点検は、漏れなく忘れずに実施し記録を残す

• 点検結果、問題点をフォローアップし,対策実行するしくみも必要

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安全点検(2)法令で規定された点検労働安全衛生法• 以下の機器を使用する場合は点検(自主検査)が必

要となる圧力容器、ボイラー、クレーン、遠心機、局所排気装

置、乾燥設備 他• 作業場の安全衛生環境を点検するための、作業環

境測定が規定されている

消防法• 消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上

必要な施設の点検及び整備が規定されている

上記以外の装置等においても安全上の点検が要求されるものがあるので、詳細は各法令を参照のこと

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安全点検(3)

法定点検以外の自主点検• 法令で定められた法定点検のみならず、以

下の対象についての自主的点検を実施すべきである

• 実験環境(避難路,防災設備,火気・喫煙管理 など)

• 実験材料(消防法危険物,毒劇物,高圧ガス,放射性物質等管理 など)

• 実験設備(ドラフト,レーザー,無人運転装置,高圧装置,高電圧装置,工作機械 など)

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安全点検(4)点検項目の例

実験室で点検すべき項目の例を以下に挙げる。法定の点検の場合は法令で定められた項目について実施する必要がある

• 整理整頓• 避難路確保• 棚・家具等の転倒防止• 防災設備• 連絡体制• 火気管理• 作業環境• 電気設備(コンセント等)• ゴミ、廃棄物処理• 喫煙管理、薬品使用室での飲食禁止• 化学物質管理(薬品、ガス、放射性物質 等)• 実験設備管理(危険性のある装置・設備、安全装置 等)• その他

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安全巡視(1)

• 第三者により職場や実験室の安全巡視をおこない、問題点を把握し改善を図る

• 労働安全衛生法では、衛生管理者による巡視、および産業医による巡視の実施が規定されている

• 指摘事項改善のフォロー体制構築も重要

・書面で問題点を指摘し、改善結果を報告

・共通的な問題が見つかったときは,部局とし

ての改善を検討する

・予算措置についても配慮必要

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安全巡視(2)労働安全衛生法で規定された巡視

衛生管理者による巡視

• 衛生管理者は、少なくとも毎週一回作業場等を巡視し、労働者の健康障害上の問題に対し措置を講じなければならない。

産業医による巡視

• 産業医は、少なくとも毎月一回作業場等を巡視し、労働者の健康障害上の問題に対し措置を講じなければならない。

巡視記録の作成、フォロー体制構築も重要

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安全巡視(3)• 責任ある立場の人を巡視メンバーに入れて安全巡

視を実施することも有効である• 全研究室の巡視が困難な場合には、重点事項を決

めて関連の研究室をまわる方法や、研究室同士でお互いに指摘し合う方法などもある

• 巡視項目の詳細については、安全点検(4)にあげた項目が参考となる

安全巡視指摘事項の例• 整理整頓不十分• 薬品管理の問題• 避難路の問題• ドラフト管理不十分• 棚、ボンベ転倒防止未設置• タコ足配線

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防災訓練

訓練の重要性:実地体験,問題点の洗い出し

訓練の種類:消防訓練(消防法で実施義務)地震訓練その他特定の目的(薬品流出など)

訓練結果の活用:結果をまとめ,安全管理の問題点を

点検・検討し,修正していくことが重要

消防訓練の実施:消防計画に基づき実施年1回以上実施消防機関への事前通知が必要建物ごとの実施が望ましい

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消防訓練の内容

• 通報訓練火災の想定⇒初期の措置⇒消防機関への通報⇒館内への連絡

• 消火訓練火災の想定⇒消火活動⇒防火区画構成

• 避難訓練火災の想定⇒放送設備による避難誘導⇒避難誘導員の配置・誘導⇒エレベーター使用禁止,避難口の開放など⇒消防隊への情報提供

• 総合訓練上記を組み合わせ,実際的想定のもとで一連の行動訓練

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地震と薬品出火

・わが国における地震の被害

発生する火災によるもの >

家屋や施設等の崩壊によるもの

出火原因の20~30%が化学薬品

・研究施設=研究開発を使命とする

⇒ 多種類の化学薬品を使用・保有 &

扱う化学薬品が研究開発の進展と共に変動

⇒ 安全管理が困難で出火の潜在危険大

⇒ 化学薬品の安全な保管、地震対策が必要

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地震と薬品による被害との関係

地震 薬品漏洩 発火 火災

健康被害

その他

漏洩した薬品による出火の主な原因・引火性物質(エーテル、ガソリン、メタノール、エタノール等)に

引火

・自然発火性物質(黄リン等)が空気中で自然発火

・禁水性物質(ナトリウム等)が水と接触して発火

・化学物質の混触発火(塩素酸ナトリウムとエチレングリコール等)

漏洩した薬品同士が混触し反応熱で発火

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化学薬品の地震対策 安全な薬品貯蔵キャビネット

1.薬品の漏洩防止

1)薬品戸棚の転倒防止

2)薬品容器の転落防止

3)薬品容器の衝突防止

2.薬品の適正保管配置

1)薬品の保管配置の実態調査

2)薬品出火危険性の評価

3)薬品の保管配置の変更

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・大学研究機関の特徴・独立した多数の研究部署・人員の入れ替えが頻繁・薬品、高圧ガスの保管、使用は少量多種

化学物質の安全且つ遵法管理のためには統括的なシステムを用いた管理が必要

8.24. 化学物質管理と管理システム

管理用サーバーコンピュータ

User’s PC

薬品情報データベースカタログ番号、容量などの情報

に加えて、PRTRや劇毒物、消防法などの法令情報も含んでいる

システム全体の管理・データベース管理・ユーザー管理・セイキュリティ管理 など

研究部署における薬品管理・薬品の入出庫登録・使用記録・集計作業 など

・コンピュータ支援薬品管理システム

サーバーコンピュータによる一元管理で機関全体の統括的な管理が可能

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8.25. 化学物質管理システムを用いた管理

・入庫、使用記録から廃棄までを簡単に・安全且つ遵法な管理を簡単に

・MSDSデータのオンライン閲覧・法令に基づいた検索や集計

・災害時の速やかな対応・部屋単位の薬品、高圧ガスの保有状態を管理者は

速やかに把握可能・統一管理による機関全体の安全の確保

・単一の研究部署を超えた管理・消防法に基づいた防火区画管理・高圧ガス保安法に基づいた建物管理 など

・コンピュータ支援薬品管理システムの特長と利点