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東京電力株式会社 森林の CO2 吸収・生物多様性調査 平成 22 3 株式会社 富村環境事務所 1.対象林業地の概要 ------------------ 2.森林管理・経営に関する評価 ------------------ 3.森林吸収源の評価 ------------------ 12 4.生物多様性の評価 ------------------ 14 5.評価・算定数値向上のための指摘事項 ------------------ 15 6.今後のモニタリングのためのデータ ------------------ 15

東京電力株式会社 森林の CO2 吸収・生物多様性調査尾瀬国立公園に係る多数の利害関係者がいる。関係協議会・委員会へは東京電力および尾瀬林

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東京電力株式会社

森林の CO2吸収・生物多様性調査

報 告 書

平成 22年 3月

株式会社 富村環境事務所

目 次

1.対象林業地の概要 ------------------ 1

2.森林管理・経営に関する評価 ------------------ 3

3.森林吸収源の評価 ------------------ 12

4.生物多様性の評価 ------------------ 14

5.評価・算定数値向上のための指摘事項 ------------------ 15

6.今後のモニタリングのためのデータ ------------------ 15

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1.対象森林の概要

1.1 森林所有者の名称、対象森林面積

名称: 東京電力株式会社 3,452.98 ha

面積合計 3,452.98 ha

1.2 対象森林の所在地

所在地: 群馬県利根郡片品村

1.3 森林吸収源・生物多様性等評価基準

平成 22年 3月時点の有効基準

1.4 沿革

明治から大正にかけて電力の需要が急速に高まり、当時発電の中心であった水力発電所

建設が我が国において大きな課題であった。そこで大正時代、当時の電力会社が尾瀬の豊

富な水を発電に活用すべく、土地および水利権を取得した。1951 年東京電力設立時にそれ

らは東京電力に引き継がれた。また、東京電力が所有する土地(尾瀬戸倉山林)は、水源か

ん養機能の発揮を目的として、同年設立された尾瀬林業観光株式会社(現 尾瀬林業株式会

社)により管理されている。

2007年 8月、尾瀬は国立公園および特別天然記念物に指定され、ラムサール条約の登録

湿地ともなった。東京電力(株)尾瀬戸倉山林は、尾瀬国立公園のほぼ全域を占める。そのた

め、林業活動のみならず自然保護活動にも力を注いでいる。

1.5 会社と林業等の概要

東京電力(株)が所有する管理区域 16,000ha のほとんどが尾瀬国立公園に指定され、森

林法のみならず、自然公園法、文化財保護法、河川法等に準拠した森林等管理が行わ

れている。

管理・運営は、東京電力(株)と協議の上、子会社である尾瀬林業(株)により行われてい

る。

伐採・造林対象となる森林に関しては、森林施業計画を樹立し、認定を受けている。

施業計画面積 3,452.98ha の森林のうち約 1,300ha がカラマツ人工林であり、約 300m3/

年が伐採・搬出され、一部は地元製材所で製材し、尾瀬の木道に利用されている。木道

の設置は東京電力㈱、管理は尾瀬林業(株)により行われている。残る約 2,150haは広葉

樹・針葉樹二次林である。

国立公園に指定されている尾瀬には、毎年約 30 万人強ほどの入山者があり、彼らに対

してガイド、資料提供などを行っている。また、環境教育としてネイチャーツアーの企画、

植林ボランティアの受け入れなども行っている。尾瀬林業㈱は山小屋をはじめとした施

設等の経営を行っている。

植林で使用するブナの苗木は、尾瀬戸倉山林で採取した種から自家苗圃で生産してい

る。

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1.6 森林構成

施業計画面積3,452.98haの

うち人工林率は約 38%で、

そのほとんどの 98%がカラ

マツである。

人工林に関しては、9 齢級

をピークとして 7~11 齢級

に集中している。

天然林は全体の約 62%を

占め、そのうち約 98%は二

次的な針葉樹林・広葉樹林

であり、16 齢級が突出する

高齢林である。

注)『H19年度森林施業計画』より編集

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2.森林管理・経営に関する評価

2.1 森林管理・経営に関する定性評価

森林管理・経営面の具体的な審査チェックリストとして整理すると、以下のような評価法が

提示できる。なお、評価・採点の方法はチェックリストの下欄の「水準適合度」に基づく。

森林管理・経営面評価チェックリスト

1. 生物多様性・水土保全面

評価項目 所見 適合水準度

景観レベルでの多様性が維

持されているか

全管理面積 16,000ha のうち施業計画地域は約3,450ha であり、約 20%の占有率である。カラマツ人工林は広葉樹・針葉樹二次林のなかに散在し、二次林も比較的成熟した豊かな森となって、景観的には全域の自然林と遜色ない。景観の多様性を示す資料として、現存植生図、植生分布図、景観自然等分布図、空中写真等を有し、自然景観を重視した森林管理が高いレベルの生物多様性を保っている。

渓流沿いに広葉樹等の緩衝

林帯(バッファゾーン)がある

渓流沿いは自然に成立する広葉樹渓畔林で形成されており、渓流の生物の生息及び景観を維持できるような緩衝帯が維持されている。

林分内は広葉樹が亜高木

層まで達しているか

カラマツ人工林においては、広葉樹の侵入度合いが地域ごとに違い、上木に達しているところは少ないものの、低木類・草本類の発達は十分である。

鳥類種数は多いか

管理区域全域の生息動物の多様性に関しては、鳥類 86 種という報告がなされており、種数は極めて多い(「片品川上流の自然」独立行政法人水資源機構発行より)。

人工林が間伐遅れ等で荒廃

していないか

公道・林道沿いは比較的管理が成されているが、

アクセスが悪い林分では手入れ遅れが多い。 2

自然保護区域等を設けているか

管理区域ほぼ全域が国立公園の特別保護地区と特別地域第 1 種~3 種に指定されている。指定区域は尾瀬国立公園区域及び公園計画図によりその範囲は明確である。 また、自然を守る活動としては、当該国立公園に関わる尾瀬国立公園協議会や、その下部組織の各種分科会により監視され、自然を守る活動が活発に行われている。

根上りや雨裂など、土壌侵

食の兆候が見られないか

台風などの豪雨時でもほとんどの渓流は濁らない地域で、現地での降雨時観察でも渓流は清冽で、河川・林道等に土砂まじりの流れは見られなかった。また、すべての林地に一切の雨裂や土壌侵食は観察されていない。

林分内の樹木は根元が太

く、根張りが良いか

形状比が 0.7~0.9 で、全体的にカラマツ人工林の間伐遅れが多い。根張りの良い状態は観察されなかった。

立木密度が適正で、等間隔

で育っているか

樹高からみた ha あたり立木本数は標準本数に対して 300%の値(立木密度指数)を越えるものも混じるが、平均立木密度指数は 158%であり、ほぼ適正な状態にある。

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林縁木は葉量が多く、また

周囲に低木群落があるか

林縁木の葉量は十分であり、カラマツ林分は広葉樹林の中に散在し、周囲は低木群落や高木の広葉樹林に隣接し、風に対する抵抗力は比較的強い状態にある。

災害の多発地帯でないか 山地崩壊はほとんど見られない。安山岩など火成岩地帯で、山地は安定している。また、林道誘因型の土壌侵食も見られない。

病虫害などが蔓延していないか

病虫害被害は見られない。シカによる食害の兆候が出てきているが、高標高と積雪の深さで現在は低被害に収まっている。

環境影響軽減について認識しているか

伐採等の森林に及ぼす影響に関しては、委託先に対して、作業仕様書にて環境保全について記述し、指導している。その取り組みは始まったばかりであるが、システムとしては完成している。

保安林、鳥獣保護区、砂防指定地がある場合、これを理解しているか。

同左の法指定は認識し、順守している。 4

林道等の維持管理状況は適切か

既設林道・作業道の維持管理状況が問題ない。林道面における侵食も見られない。林道の維持管理は管内の村有道にも及ぶ。

2. 社会貢献面

評価項目 所見 適合水準度

収穫材のトレーサビリティは

明確か

収穫材は多くなく、300m3/年程度である。収穫された材は尾瀬林業土場に集積され、1/4 ずつ木道用材、合板用材、土木用材、チップ用材として仕分けされ出荷されている。販売に係る伝票は保管されている。 木道用材に関しては、地元製材工場で製材し、尾瀬湿原等の木道として利用している。 収穫材のトレーサビリティ」は明確である。

地域住民等との関わりが深

いか

尾瀬国立公園に係る多数の利害関係者がいる。関係協議会・委員会へは東京電力および尾瀬林業も参画している。例えば、尾瀬山小屋組合(組合長 :尾瀬林業顧問)、尾瀬美化愛護協会事務局、尾瀬交通システム検討委員会、尾瀬保護協会など。 また、片品村が建設した尾瀬ぷらり館(観光 PR 展示施設)の活用・借受運営、をしており、地元・観光客とのつながりは深い。

地域の経済の発展・維持に

役立っているか

尾瀬林業(戸倉支社)の職員 36 名は全員地元雇用である(沼田市までの範囲)。また、現場作業員等 90名程度の雇用も発生(山林作業、巡視員、山小屋運営等)している。 観光客への自然ガイド事業、尾瀬の木道整備、年間約 30 万人強の入山客が利用する山小屋(山荘)等の維持管理など観光業への寄与は大きい。

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森で働く人の安全を確保し

ているか

山林作業・木道整備等は地元事業体に委託しており、作業上の安全確保については委託仕様書(戸倉山林保育作業仕様書等)にて『安全の確保、打ち合わせ、装備、悪天候時の対応、作業環境の整備、作業時の注意事項』等について指示している。 また、尾瀬地区公共的施設整備工事施工安全計画書(木道設置)においては緊急連絡体制図や安全管理組織図を示し、安全管理に努めている。 毎年度初めは、新規入場者教育として作業員に対して安全作業についての指導をしている。 作業員全員に対して労災保険がかけられている。

森林を対象とした体験学習

等を行っているか

植林ボランティア活動(ブナ植林)や、グリーンボランティア活動(ごみ拾い)の企画・実行を行っている。また、尾瀬ぷらり館にて、尾瀬の自然等の展示や、東京電力自然学校(ぷらり館内)でのネイチャーツアー等を実施している。

管理森林に関わる各種法を

順守しているか

関係法令集を保持し、それに基づき全ての法を順守している(自然公園法、森林法、労働基準法、文化財保護法、河川法等)。 隣接山林との境界は明瞭であり(境界杭設置、自然地形)、境界紛争はない。 尾瀬戸倉山林敷地内には、山小屋(10 軒)のほかに、養蜂場、NTT、KDDI、Softbank、ビジターセンター、木道敷地等に土地を貸している。これら貸借等のすべての契約書は揃っている。

3. 経済面

評価項目 所見 適合水準度

多様な林齢で構成され、林

齢構成が平準化しているか カラマツ人工林は、9・10 齢級をピークとして偏っており、標準化されていない。

森林から何らかの持続的収

穫があるか 現在は 300m3/年収穫、販売しているが、持続的な収穫についての見通しは立っていない。

管理の基盤となる森林簿・

森林基本図などは正確か

施業計画範囲の森林基本図、森林簿、地形分類

図(地形の多様性の評価)、現存植生図(環境省と

作成)、植生分布図、景観自然等分布図(景観の

ランドマーク)、空中写真等を有し、各種のデータ、

地図が準備されている。ただし、小班の位置やデ

ータに不正確なところがある。

林道密度が高く、かつ機械

化が進んでいるか

林道密度は 10.1m/ha とやや低く、アクセスの悪い

林分は手入れが遅れている。 3

森林経営は健全で、毎年収

益を持続して上げているか

林業としての収支は成立していない。経費の約 5割は東京電力の持ち出しである。 今後、経済的側面の強化を計画しているが、実現にはしばらくの時間経過が必要である。

森林作業に従事する場を提

供し、安定雇用となっている

現場作業は地元事業体に委託しており、雇用の場となっている。また、尾瀬林業(戸倉支社)も安定雇用の場となっている。

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『採点』

森林管理・経営面評価チェックリストの「2.社会貢献面」、「3.経済面」の各項目の水準適

合度を合計し、1.25倍して、60点満点を最優良として評価した。その結果を下表に示す。

社会貢献面、経済面の水準適合度による評価では、総合得点は48点である。

『水準適合度』

0点:全体的な水準に関して森林資源が十分に管理されていない。このような状況が続くまたは正

しい行動がなされないと多大なる危険を生む可能性がある。

1点:水準の最も大切な部分は満たされているが、長期的に見て森林管理責務遂行のためには

改善の余地がある。

2点:一定の規模、種類、多様性において良く管理されたとされるレベルを表している。このレベル

は良質な森林管理と言える。

3点:森林管理者が結果を生むために特殊な障害を乗り越えた場合や、いくつかの水準における

特に高い評価が下された場合に付けられる。

4点:革新的なまたはすばらしい管理状態によって、規準を達成して目覚ましい成果となったことを

認めるものである。

社会貢献面 24

経済面 15

合計 39

総合得点 48

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■現地写真とコメント

低木から亜高木層まで発達したカラマツ林 ササが繁茂する森林は植生貧弱

ツルの巻き上がったカラマツ林 林縁木の維持

ヒトリシズカ

その他林床には様々な草花が咲く

多様性を生む美しい針広混交林

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発達した渓畔林が創る川の風景 厚い A0層と黒ボク土 A層による肥沃な土壌

場所により A層に軽石が混ざる

土壌、森林等の効果により降雨時も水は濁ら

ない

シカ防護柵にかかった雌シカ

尾瀬戸倉山林から収穫した材を利用した木道

(鳩待峠~尾瀬ケ原)

尾瀬ぷらり館内の東京電力自然学校、展示

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大清水の休憩所および展示室 境界杭の設置

ブナ植林用苗畑 第 1回ブナ植林ボランティアによる植栽地

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2.2 林況指標による定量評価

現地で標準地を設定して、樹種、樹木間隔、直径、樹高、樹冠長、曲がり度、病虫害等を

調査し、信州地方カラマツ林収穫表(地位Ⅰ)を用いて、林況を以下の総括表にまとめた。

この結果、対象地の森林に関しては次のような特徴等が所見として指摘される。

本数密度指数(収量比と同指標)の平均が 158%とやや高い数値を示すが、平均的な密

度であると言える。本数密度指数が 312%の非常に高い数値を示すものもあるが、これ

は、樹高成長が良いため樹高からみた標準本数が低く算定されるためである(本数密度

指数は標準本数に対する現立木本数)。

完満度の平均は 80%であり、通常 60~70%前後までが適当とされているためやや高い

値を示す。調査地では、完満度 80%を超える林分が半数あり細長い立木が多い。カラマ

ツは特に風害に弱いため直径成長を促す施業、密度管理を行っていく必要がある。

樹冠長比が平均 22%あり、肥大成長を促す葉量に満たない。

曲がり率は平均 39%、病虫害率は平均 16%、枯損率は 12%と特に形状に難が見られ

る。NO9~16 はアクセスのやや悪いところであり、手入れが遅れているためツルの巻き

上がりが目立ち病虫害率・枯損率も高くなっている。

樹冠開放度は 27%と高く、下層まで光りを届ける構造となっている。

立木材積は、ha 当り平均 351m3であり、スギ・ヒノキと比較すると少ないが、材積の少な

いカラマツ林としては高蓄積の森林であることが伺える。

以上、定量的な林況指標からは、調査地によりばらつきがあり、曲がり率が高く形状が

悪い立木が多いと言えるものの、全体的には平均的な森林として評価される。

林況調査総括表

林齢 平均直径 平均樹高 平均樹冠長 曲がり率 病虫傷率 枯損率 樹冠開放度 樹冠長比 立木本数 立木材積 完満度 最大/最小直径比 直径指数 本数密度

NO 樹種 年 cm m m % % % % % 本/ha m3/ha % % %1 カラマツ 27 22.1 17.9 3.8 56 0 0 15 21 1,073 294.7 81 1.4 106 1582 カラマツ 19 24.2 17.5 4.0 67 0 0 25 23 647 207.7 72 1.4 119 923 カラマツ 60 33.6 26.6 6.0 60 0 0 35 23 453 426.8 79 1.5 97 1624 カラマツ 47 27.6 24.7 3.3 40 0 9 35 13 1,064 628.3 90 2.4 88 3125 カラマツ 42 32.4 23.5 7.3 0 0 0 40 31 522 403.9 73 2.2 111 1356 カラマツ 52 30.4 24.6 3.3 14 0 0 50 13 703 499.6 81 1.4 98 2037 カラマツ 54 31.4 22.6 4.1 64 0 0 40 18 1,125 786.3 72 2.3 113 2658 カラマツ 38 27.6 20.1 6.4 71 0 0 40 32 740 356.0 73 1.9 115 1359 カラマツ 47 21.2 20.6 2.5 71 0 26 40 12 1,402 408.8 97 2.2 86 269

10 カラマツ 65 28.1 19.6 6.2 21 14 30 15 32 354 171.8 70 2.3 121 6111 カラマツ 65 32.9 23.2 6.6 10 10 41 25 28 251 198.4 71 1.7 114 6312 カラマツ 65 26.0 19.8 5.1 44 13 38 15 26 401 168.2 76 2.3 110 7113 カラマツ 65 31.2 25.5 5.5 59 0 15 20 21 535 417.1 82 1.9 95 17114 カラマツ 65 23.2 20.4 4.7 18 58 17 20 23 639 220.1 88 2.4 95 12015 カラマツ 65 24.6 21.3 4.2 41 52 11 20 20 825 332.8 86 2.6 96 16816 カラマツ 52 18.6 16.3 2.8 17 57 9 10 17 1,348 238.3 88 2.5 99 17317 カラマツ 52 20.5 18.4 4.1 13 61 14 10 23 885 214.9 90 2.3 96 136

27 21 5 39 16 12 27 22 763 351 80 2.0 104 158平均

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『林況主要定量指標による評価』

林況は約 1,300haあるカラマツの人工林について評価したものである。

『採点』

林況指標による定量評価の各項目の得点を合計し、2 倍して、40 点満点を最優良として評

価した。その結果、林況指標による定量評価では、総合得点が22点である。

2.3 森林管理・経営に関する評価

『採点・評価』

社会貢献面、経済面の水準適合度による評価及び林況指標による定量評価の得点を合

計し、100点満点を最優良として以下の得点範囲で評価した。その結果を下表に示す。

森林管理・経営面では、総得点が70点であり、「良」と評価される。

林況 優良 良 平均的 不良 荒廃

評価採点 4 3 2 1 0

林況指標 本数密度指数 100以下 101~150 151~200 201~300 301以上

完満度# 70以下 71~80 81~90 91~100 101以上

枯損木率 5%以下 6~10% 11~15% 16~20% 21%以上

樹冠長率 50%以上 30~49% 20~29% 10~19% 9%以下

最大・最小直径比 1.5倍以下 1.6~2.0 2.1~3.0 3.1~4.0 4.1倍以上

森の健全度 優良 良 平均的 不良 荒廃

評価採点 4 3 2 1 0

林況指標 本数密度指数 2

完満度# 3

枯損木率 2

樹冠長率 2

最大・最小直径比 2

各事項得点 0 3 8 0 0

合計 11

総合得点 22

社会貢献面・経済面の水準適合度 48

林況指標による定量評価得点 22

総合得点 70

総合得点 100~81 80~61 60~41 40~21 21~

林況評価 優良 良 平均的 やや不良 不良

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3.森林吸収源の評価

3.1 森林吸収量

森林吸収源の評価に関しては、東京電力(株)社有林16,000ha の内、国立公園特別保護

地区とその周辺の自然林を除くカラマツ人工林とその周辺の二次林を合わせた施業計画面

積 3,452.98haを対象とした。

スギおよびマツ人工林は小面積であり、カラマツが人工林の 98%を占めるため、すべてカ

ラマツとして計算した。また、広葉樹・針葉樹二次林はクロベ等の針葉樹が二次林のうち98%

を占めるため、すべて針葉樹としてカウントし、その他 1 の拡大係数等を使用した。なお、年

間成長量は、当該森林施業計画の森林資源構成表より算出した。

炭素吸収量に関する計算は以下の計算式を用いた。

炭素量=材積成長量×容積密度×拡大係数×(1+地下部比)×炭素含有率(0.5)

3.2 森林吸収源の算定期間:平成 22年 4月 1日~平成 23年 3月 31日

3.3 森林吸収源に関わる森林状況と炭素吸収量

カラマツ林 齢級別蓄積、年間成長量及び年間森林吸収量

面積 蓄積 次齢級の蓄積 年間成長量 年間の森林吸収量

A B (B-A)/5(ha) (m3) (m3) (m3/年) (C・t/年)

1 0.00 0 0 0 02 1.70 0 0 0 03 0.00 0 0 0 04 0.00 0 0 0 05 23.03 3,442 4,698 251 756 0.00 0 0 0 07 93.87 23,315 26,070 551 1658 69.08 19,185 21,318 427 1289 516.18 159,296 170,630 2267 67910 410.11 135,567 144,224 1731 51911 163.64 57,548 59,828 456 13712 42.76 15,633 16,338 141 4213 6.25 2,388 2,550 32 10

合計 1326.62 416,374 445,656 5,856 1,755

齢級

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天然林 齢級別蓄積、年間成長量及び年間森林吸収量

面積 蓄積 次齢級の蓄積 年間成長量 年間の森林吸収量

A B (B-A)/5(ha) (m3) (m3) (m3/年) (C・t/年)

1 5.89 0 18 4 22 0.00 0 0 0 03 12.03 298 753 91 554 5.00 313 455 28 175 4.77 434 543 22 76 0.00 0 0 0 07 0.00 0 0 0 08 0.22 33 36 1 09 23.98 3925 4231 61 1910 0.00 0 0 0 011 40.04 7525 7944 84 2612 0.00 0 0 0 013 0.00 0 0 0 014 133.81 29020 30122 220 6915 18.68 4205 4349 29 916 1,881.94 438123 451698 2715 845

合計 2,126.36 483,876 500,149 3,255 1,049

齢級

年間炭素吸収量は、2,804 C・tで、炭酸ガスに換算すると10,291 CO2・tである。

3.4 主伐・更新により吸収量から控除又は追加される森林吸収量(当初1年間)

◎吸収量から控除される樹種別齢級別主伐等の内訳

平成21年主伐実績分 : 該当なし

平成22年主伐計画分 : 該当なし

◎吸収量に加算される樹種別更新植量等の内訳

平成21年更新植実績分 : 該当なし

平成22年更新植計画分 : 該当なし

当初の 1 年間の主伐による控除される炭素排出量、更新による追加される炭素吸収量は

ない。

『採点・評価』

評価対象森林3,452.98 haの年間炭素吸収総量は、2,804 C・tで、炭酸ガスに換算する

と10,291 CO2・t である。

また、当初 1 年間の実炭素吸収量は、2,804 C・ t で、炭酸ガスに換算すると

10,291 CO2・tである。

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4.生物多様性の評価

『生物多様性主要定量指標による評価』

『採点・評価』

定量指標の 5 項目の得点(20 点満点)を合計し、それを 2倍して(40 点満点)評価し、これ

に定性指標である森林管理.経営面評価チェックリストの「1.生物多様性・水土保全面」の 15

項目の水準適合度(60点満点)を合算して以下の得点範囲で評価した。その結果を下表に示

す。

生物多様性面では、総得点が86点であり、「優良」と評価される。

森の健全度 優良 良 平均的 不良 荒廃

評価採点 4 3 2 1 0

生態・環境

指標

相対照度 30%以上 20~29 10~19 5~9 5%未満

植物種数 60種以上 40~59 20~39 10~19 10種未満

植生被度 80%以上 50~79 20~49 10~19 10%未満

A0層の厚さ 5cm以上 3~4cm 1~2cm 1cm未満 裸地状態

土壌 A 層厚さ 20cm以上 10~19cm 5~9cm 1~4cm 1cm未満

森の健全度 優良 良 平均的 不良 荒廃

評価採点 4 3 2 1 0

生態・環境

指標

相対照度 3

植物種数 2

植生被度 4

A0層の厚さ 4

土壌 A 層厚さ 4

各事項得点 12 3 2 0 0

合計 17

生物多様性指標による定量評価得点 34

生物多様性・水土保全面の水準適合度 52

総合得点 86

総合得点 100~81 80~61 60~41 40~21 21~

林況評価 優良 良 平均的 やや不良 不良

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5.調査・算定数値の向上のための指摘事項

カラマツ人工林では、本数密度指数が 200%を超えるような林分に対して早急に間伐を行

うことが望ましい。

アクセスのやや悪いカラマツ林においては、ツルの巻き上がりが多く見られ、また広葉樹

による被圧も見受けられた。まずは、ツル切りを行う必要がある。

立木間隔のバラツキや残存木の形質から、選木調査が適正に行われていないと思われ

る。選木調査は将来の森林・立木の質を決定する重要な作業の一つであるため、慎重

に行うことが望まれる。

下草が刈られ、林床植生が林内掃除によって貧弱な林分が散見された。これらの林分

に対しては森林の多面的機能の発揮、また生物多様性を保つためにも出来る限り林内

掃除は行わない方が良い。

森林資源構成が高齢級に偏っており、平準化されていない。人工林においては、小面積

でも森林の更新も行っていくことにより、所有地全体で見た森林の健全化が図られる。

5年後のフォレストック認定モニタリング調査時に上記事項を確認することとしたい。

6.今後のモニタリングのためのデータ

(1) 森林認証データ

森林認証の種類: FSC

森林認証を認定した機関の名称 : ソイルアソシエーション ウッドマーク

認証の有効期間 : 平成 22年 2月 25日~平成 27年 2月 24日

認証対象面積 : 16,334 ha

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認定調査 補足情報

1.調査日程

2009年 5月 16日~19日

2.調査者名簿

名前 所属 役職

富村周平 株式会社森林再生システム 取締役

望月亜希子 株式会社森林再生システム 研究員

原田敦子 国立大学法人横浜国立大学 研究補助

3.調査認定者

本認定調査の認定は、FSC審査員の富村周平により行われた。

4. 調査地点数

調査名 地点数

針葉樹林(カラマツ林) 広葉樹林

林分構造調査 17 0

植生調査 12 3

土壌調査 10 2

計 39 5

5.調査地点図

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森林の CO2吸収・生物多様性・管理経営の

評価証明書

証明森林の所在:群馬県利根郡片品村

森林所有者代表名:東京電力株式会社

評価対象森林面積:3,452.98ha

証明年月日:平成22年 3月19日

森林吸収源の算定対象期間の開始日:平成22年4月1日

1.森林吸収源の評価

年間炭素吸収総量 :2,804 C・t/年

同上の炭酸ガス換算 :10,291 CO2・t/年

実炭酸ガス吸収量: 10,291 CO2・t/年

2.生物多様性の評価

生物多様性面では、総合得点が86点であり、「優良」である。

3.森林の管理・経営の評価

森林の管理・経営面では、総合得点が70点であり、「良」である。

証明者住所:〒157-0076東京都世田谷区岡本2-18-5

証明者所属機関:株式会社富村環境事務所

審査員職名・氏名: FSC審査員 富村周平 印

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