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06 学 術 33 921Key words: Gastric cancer Population-based screening Barium study Image reading support Report form AbstractSome support for image reading by radiological technologists has been notified as a part of promoting team medicine. In order to such image reading support in population-based screening for gastric cancer, we have created a report form suitable for radiological technologists. The contents described in the report are evidence of judgment and categorization. If there are abnormal findings in images, the number of lesions and the location of lesions should be described in the report. In addition, the blanks for schema and comments are provided in order to writing property and morphology of the lesions. The prototype form of the report was evaluated by six members of this study and 55 participants to the workshop, who were all radiological technologists. Based on their evaluations and comments on convenience to be used in population-based screening for gastric cancer, a proper report form has been made for the support of image reading by radiological technologists. 【要旨】 チーム医療推進一環として読影補助通達された.対策型胃がん検診における診療放射線技師一次読影・読影補助推進るために,読影レポート用紙作成した.記載内容カテゴリー分類判定根拠2種類である.異常所見がある場合,病変数, 存在部位表記できるようにしたまた病変性状形態記入できるシェーマとコメントの記載欄けた.試作レポート用紙使用 ,研究班員6 研修会受講者55 により評価ったこれらの評価結果まえ,通常検診現場使用した経験意見反映 させて改善,読影レポート用紙作成した学 術 Arts and Sciences 原 著 1. 目的・背景 本邦における悪性新生物による死亡数増加一途 をたどっているがそのがんは死亡率・罹患率 減少しているしかし,死亡率男性2 位, 女性3 位,罹患率男性1 位,女性3 といまだに日本人疾患である 1.胃がん死亡率 減少,白壁,市川らの千葉大消化器グループがしたX 線二重造影法導入したがん検診展開 ,内視鏡検査機器進歩診断・治療技術向上よるところがきいのはをまたないがん検診有効性評価づくがん検診ガイ ドライン2によれば,科学的有効性証明されて いる検診法推奨グレードB X 線検査のみで,対 策型検診および任意型検診への実施推奨されてい .対策型検診とは,対象者集団全体死亡率減少目的とする公共的予防対策としてわれる検診のこ とである.任意型検診,個人死亡リスクをげる 目的検診であるがん検診におけるX 線検査 ,検診機関ごとに技術があるとの指摘がされて おり,適切撮影できる技師正確読影できる医師 確保および養成重要であるがん検診検討会中間報告会 3げられている.適切できる技師についてはNPO 法人日本消化器がん 検診精度管理評価機構によるがんX 線検診基準撮 影法普及により,撮影技術てん普遍化られている.一方,読影医師については,検診施設 読影医師不足不在により他施設読影依頼して いるということもあり,正確読影ができる医師養成困難状況にある平成22 4 月,厚生労働省医政局長から医療スタ ッフの協働・連携によるチーム医療推進についての Toshimasa Ogawa 115555, Kenyu Yamamoto 244891, Masahumi Takai 334541, Takaaki Matsuoka 443150, Satoshi Hosomi 5, Akane Shirahase 61Butsuryo College of Osaka 2Osaka Center for Cancer and Cardiovascular Disease Prevention 3Saiseikai Shin-Sennan Hospital 4Nakai Memorial Hospital 5Kyoto Industrial Health Association 6Midori Health Care Foundation 診療放射線技師による 対策型胃 がん検診 レポートの作成 Creating a report form of image reading by radiological technologists in popula- tion-based screening for gastric cancer 小川 利政 115555) 山本 兼右 244891) 高井 正史 334541)  松岡 孝明 443150) 細見 5白波瀬 61)大阪物療大学 保健医療学部 診療放射線技師 2)大阪がん循環器病予防センター 放射線技師室 診療放射線技師 3)済生会新泉南病院 放射線課 診療放射線技師 4)中井記念病院 放射線科 診療放射線技師 5)京都工場保健会 診療放射線技師 6みどり健康管理センター 放射線室 診療放射線技師 (日本消化管画像研究会レポート班)

診療放射線技師による レポートの作成 · ポート記載の実態把握アンケート結果4),5)を検証し た.また先行文献6-12)の検索を行い精査した.それら

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Page 1: 診療放射線技師による レポートの作成 · ポート記載の実態把握アンケート結果4),5)を検証し た.また先行文献6-12)の検索を行い精査した.それら

06

学 術 ◆ 33(921)

Key words: Gastric cancer Population-based screening Barium study Image reading support Report form

【Abstract】 Some support for image reading by radiological technologists has been notified as a part of promoting team medicine. In order to such image reading support in population-based screening for gastric cancer, we have created a report form suitable for radiological technologists. The contents described in the report are evidence of judgment and categorization. If there are abnormal findings in images, the number of lesions and the location of lesions should be described in the report. In addition, the blanks for schema and comments are provided in order to writing property and morphology of the lesions. The prototype form of the report was evaluated by six members of this study and 55 participants to the workshop, who were all radiological technologists. Based on their evaluations and comments on convenience to be used in population-based screening for gastric cancer, a proper report form has been made for the support of image reading by radiological technologists.

【要旨】 チーム医療推進の一環として読影の補助が通達された.対策型胃がん検診における診療放射線技師の一次読影・読影の補助を推進するために,読影レポート用紙を作成した.記載内容は,カテゴリー分類と判定の根拠の2種類である.異常所見がある場合は,病変の数,存在部位が表記できるようにした.また病変の性状と形態が記入できるシェーマ欄とコメントの記載欄を設けた.試作レポート用紙を使用し,研究班員6人と研修会受講者55人により評価を行った.これらの評価結果を踏まえ,通常の検診現場で使用した経験や意見を反映させて改善を行い,読影レポート用紙を作成した.

学 術Arts and Sciences

原 著

1. 目的・背景 本邦における悪性新生物による死亡数は増加の一途をたどっているが,その中で胃がんは死亡率・罹患率共に減少している.しかし,死亡率は男性が第2位,女性が第3位,罹患率は男性が第1位,女性が第3位といまだに日本人に多い疾患である1).胃がん死亡率の減少は,白壁,市川らの千葉大消化器グループが開発したX線二重造影法を導入した胃がん検診の展開と,内視鏡検査機器の進歩と診断・治療技術の向上によるところが大きいのは論をまたない.

 胃がん検診は「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」2)によれば,科学的に有効性が証明されている検診法は推奨グレードBのX線検査のみで,対策型検診および任意型検診への実施が推奨されている.対策型検診とは,対象者集団全体の死亡率減少を目的とする公共的な予防対策として行われる検診のことである.任意型検診は,個人の死亡リスクを下げる目的の検診である.『胃がん検診における胃X線検査は,検診機関ごとに技術の差があるとの指摘がされており,適切に撮影できる技師と正確に読影できる医師の確保および養成が重要である』と,がん検診に関する検討会の中間報告会3)に挙げられている.適切に撮影できる技師については,NPO法人日本消化器がん検診精度管理評価機構による「胃がんX線検診基準撮影法」の普及により,撮影技術の均てん化と普遍化が図られている.一方,読影医師については,検診施設の読影医師不足や不在により他施設へ読影を依頼しているということもあり,正確な読影ができる医師の確保や養成は困難な状況にある. 平成22年4月,厚生労働省医政局長から医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進についての

Toshimasa Ogawa1)(15555), Kenyu Yamamoto2)(44891),Masahumi Takai3)(34541), Takaaki Matsuoka4)(43150),Satoshi Hosomi5), Akane Shirahase6)

1) Butsuryo College of Osaka2) Osaka Center for Cancer and Cardiovascular

Disease Prevention3) Saiseikai Shin-Sennan Hospital4) Nakai Memorial Hospital5) Kyoto Industrial Health Association6) Midori Health Care Foundation

診療放射線技師による対策型胃がん検診レポートの作成Creating a report form of image reading by radiological technologists in popula-tion-based screening for gastric cancer

小川 利政1)(15555) 山本 兼右2)(44891) 高井 正史3)(34541) 松岡 孝明4)(43150) 細見 聡5) 白波瀬 茜6)

1)大阪物療大学 保健医療学部 診療放射線技師 2)大阪がん循環器病予防センター 放射線技師室 診療放射線技師3)済生会新泉南病院 放射線課 診療放射線技師 4)中井記念病院 放射線科 診療放射線技師

 5)京都工場保健会 診療放射線技師 6)みどり健康管理センター 放射線室 診療放射線技師 (日本消化管画像研究会レポート班)

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34(922)◆ 日本診療放射線技師会誌 2014. vol.61 no.742

通達が出され,各医療スタッフが実施することができる業務の具体例として,診療放射線技師について次の2点を挙げている. ①画像診断における読影の補助を行うこと. ②放射線検査等に関する説明・相談を行うこと. これらを踏まえ,日本消化管画像研究会レポート班(以下,研究班)では,対策型検診および任意型検診の診療放射線技師(以下,技師)による一次読影精度向上を目的に,胃がん検診における読影補助の一環として技師による読影レポート記載法に取り組んでいる.本研究の目的は,技師による対策型胃がん検診一次読影における所見記載のレポート用紙(以下,レポート用紙)を作成し,その実用性について検証を行い,胃がん検診における読影の補助の一助とすることである.

2. 方 法 研究班が作成したレポート用紙への記入および評価者は,研究班員6人と(公財)大阪府保健医療財団大阪がん循環器病予防センター(以下,センター)の技師12人と医師1人の計13人,そして平成26年2月に開催したセンター胃がん症例検討会(大阪府精度管理委託事業)を受講した技師55人である.班員の消化管検査業務経験年数は5年以上:1人,10年以上:1

人,20年以上:2人,30年以上:2人で,うち5人が胃がん検診専門技師の有資格者である.またセンターの技師12人の消化管検査業務経験年数は,5年未満:3人,5年以上:2人,15年以上:2人,20年以上:4人,25年以上が1人で,うち9人が胃がん検診専門技師の有資格者である.レポート用紙の使用経験の調査期間は,平成25年10月1日から31日までである. 本研究は,センターで開催された倫理委員会の承認を得ている.

2-1.レポート記載様式と記載内容の検討 胃がん検診における読影レポートの記載様式と内容について,研究班が行った対策型検診施設におけるレポート記載の実態把握アンケート結果4),5)を検証した.また先行文献 6-12)の検索を行い精査した.それらを踏まえ①簡潔に記載できる項目と内容②良悪性の鑑別を示すカテゴリー分類の導入③画像の読影精度が評価できる判定の根拠分類の導入④透視下での異常所見記入欄の設定を記載様式の骨格として,6人の班員により検討した.

2-2.レポート用紙の使用とその検証2-2-1.班員によるレポート用紙の使用と評価 レポート用紙を用いて,結果の判明しているセンターの対策型検診30症例について,各班員が記入・評価を行い,その記載項目・評価結果を検証した.2-2-2.班員群と受講者群による評価の比較 班員以外へのレポート使用は,センター胃がん症例検討会受講者55人(以下,受講者群)へ実施した.使用症例は班員6人(以下,班員群)の評価に乖

かい

離り

認められた病理組織結果の判明している早期胃癌10

症例である.これらの症例について班員群と受講者群における評価の比較・検証を行った.

2-3.検診現場におけるレポート用紙の使用経験の調査と検証

 センターの検診業務に従事している技師12人と医師1人に通常の胃がん検診業務が終了した時点で,レポート用紙への記入とその使用経験を調査し検証した.

2-4.統計学的検定法 班員群と受講者群のレポート用紙の判定に関する比較評価を行い,その統計学的検定法をカイ2乗検定で行った.統計解析ソフトはPASW Statistics 18を使用し,有意水準は両側検定で5%未満とした.

3. 結 果3-1.レポート記載様式と記載内容 評価項目は,病変の数,病変存在部位,病変壁在部位,カテゴリー分類(6段階),判定の根拠分類(3段階)の5項目とした.評価項目とその内容をTable1に示す.1)病変の数 病変の数が「単発」か「多発」かに大別した.「多発」の場合何個あるかを記載できるようにした.2)病変存在部位 「穹窿部(噴門部を含む)」「胃体部」「胃角部」「前庭部(幽門前部含む)」の4区分とした.3)病変の壁在部位 「前壁」「後壁」「大彎」「小彎」「全周」の5区分とした.4)カテゴリー分類(6段階評価) 臨床疫学におけるスクリーニング検査の判定は,全員を要精密検査と精密検査不要に分けるのが基本である.カテゴリー分類に,一連のシリーズ画像における

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原 著診療放射線技師による対策型胃がん検診レポートの作成

学 術Arts andSciences

06

学 術 ◆ 35(923)

造影剤付着不良による粘膜描出能13)不良と,不十分な撮影体位や過度の造影剤流出などによる区域描出能 14)不良により,病変が存在しても病変の拾い上げができないと想定されるケースを,画像不良による判

定困難な症例としてカテゴリー0を設けた.この判定をした場合は画像不良の理由を記載して,撮影技術へフィードバックさせるようにした.カテゴリー分類は,0:画像不良による判定困難,1:異常なし,2:良性病変,3:悪性病変を否定できず,4:悪性病変の疑い,5:悪性病変,に分類し,1・2は精密検査不要,3・4・5については要精密検査に区分している.5)判定の根拠分類(3段階評価) 病変を指摘した場合,存在診断と質的診断が可能かを評価する.判定の根拠分類はA・B・Cの3段階評価とした.A:病変の全体像が描出できており,良悪性の判定が可能,B:病変の全体像は描出できていないが,良悪性の判定は可能,C:病変の全体像が描出できておらず,良悪性の判定も困難,である. 基本情報として撮影日時・撮影技師名,受診者情報として撮影番号・氏名・性別・年齢記載欄を設けた.背臥位正面像と腹臥位正面像に食道と十二指腸のシェーマを入れて,病変存在部位が視認できるようにした.またImp.欄を設置し,A4用紙1枚に5病変の所見が記載できるレポート用紙を作成した(Fig.1). 症例について記入したレポート用紙の一部をFig.2

に示す.

3-2.レポート用紙の使用とその検証結果3-2-1.班員によるレポート用紙使用の評価結果 作成レポート用紙の評価に用いた対策型検診30症例の内訳をTable 2に示す.班員群による良性病変

Table 1 Evaluation items and contents in the report

items contents of evaluation

lesion number 1. single  2. multiple ( places )

lesion location 1. fornix  2. body  3. angle  4. antrum

lesion location 1. A.W  2. P.W  3. G.C  4. L.C  5. circ.

categorization(6 stages)

0. judgment diffi cult by poor image (write the reason)

1. no abnormal fi ndings

2. benign lesion

3. malignant lesion not negative

4. malignant lesion suspect

5. malignant lesion

evidence ofjudgment(3 stages)

A. lesion detection full image, judgment possible benign or malignant

B. not lesion detection full image, judgment possible benign or malignant

C. not lesion detection full image, judgment diffi cult benign or malignant

Fig.1 Proposed form of the report

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36(924)◆ 日本診療放射線技師会誌 2014. vol.61 no.742

10症例の評価結果をFig.3に,早期癌14症例のカテゴリー分類と判定の根拠分類評価結果をFig.4-aと

Fig.4-bに,進行癌6症例の評価結果をFig.5に示す.良性病変10症例の評価結果は「5.悪性病変」は0で

あるが「4.悪性病変の疑い」が陥凹性病変でわずか

に見られた.判定の根拠分類の評価結果は,ほとんど「判定A」と判定した.早期癌14症例のカテゴリー分類評価結果は,一部「2.良性病変」があるものの,ほとんど「3.悪性病変を否定できず」以上を判定している.しかし,判定の根拠分類評価結果に乖離を認

Table 2 Contents of 30 cases evaluation

benignpolypoid lesion 8 (26.7%)

depressed lesion 2 (6.7%)

early ca.

invasion depth:M 4 (13.3%)

invasion depth:SM 6 (20%)

unknown 4 (13.3%)

advanced ca. 6 (20%)

Fig.2 Notation of cases

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100polypoid:8casesdepressed:2cases

%

Fig.3 Evaluation by this study members on the re-ports of 10 cases with benign lesions

17

33

42

50

67

50

33

58

50

33

33

33

Ⅰ,SM:1

Ⅱa,M:1

Ⅱa+ⅡcSM:4

Ⅱc,M:3

Ⅱc,SM:1

judg.A judg.B judg.C

100%

Fig.4-b Evaluation of the judgment by this study members on the reports of 14 cases with early cancer

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

cat.3 cat.4 cat.5 judg.A judg.B judg.C

%

Fig.5 Evaluation by this study members on the re-ports of 6 cases with advanced cancer

17

17

33

67

12

17

33

17

50

44

17

38

39

100

Ⅰ,SM:1

Ⅱa,M:1

Ⅱa+ⅡcSM:4

Ⅱc,M:3

Ⅱc,SM:1

cat.2 cat.3 cat.4 cat.5

100%

Fig.4-a Evaluation of the categorization by this study members on the reports of 14 cases with early cancer

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原 著診療放射線技師による対策型胃がん検診レポートの作成

学 術Arts andSciences

06

学 術 ◆ 37(925)

めた.進行癌6症例の評価結果は,ほとんどの班員が「5.悪性病変」と判定した.判定の根拠分類の評価結果は「判定A」と「判定B」に乖離し拮抗していた.3-2-2.班員群と受講者群による評価結果の比較 班員群で評価が乖離した早期癌10症例について,班員群と受講者群のカテゴリー分類評価結果をFig.6

に示す.全ての症例において班員群と受講者群間に有意差を認めた(P<0.05).また班員群と受講者群の判定の根拠分類評価結果をFig.7に示す.全ての症例において班員群と受講者群間に有意差を認めた(P<0.05). 早期癌10症例の中で,存在・質的読影が難しいと推定した前庭部・後壁大彎寄りに存在する14×12mm,tub1,M,0-Ⅱa型の症例をFig.8-a,8-b

に示す.受講者群の回答率は69%で,カテゴリー分類の評価結果は「2」が26%,「3」が47%,「4」と「5」

が共に11%,「未記入」が5%であった.判定の根拠分類においては「A」が18%,「B」が37%,「C」が16%,「未記入」が29%であった.

3-3.検診現場におけるレポート用紙の使用経験 センターの検診業務に従事している技師12人と医師1人の計13人のレポート用紙の使用経験の調査結果をFig.9~Fig.14に示す.病変の数・存在・壁在・所見記入は「使いやすい」が多かった.カテゴリー分類判定の容易さは「普通」であるとの回答が多かった.判定の根拠分類は「判定しづらい」が多かった.レポート用紙への記入時間と使用感想は「普通」であるとの回答が多く,使用については「今はしない」が多かった.

0102030405060708090

100m

embe

rs

part

icip

ants

mem

bers

part

icip

ants

mem

bers

part

icip

ants

mem

bers

part

icip

ants

mem

bers

part

icip

ants

Ⅰ,SM:1 Ⅱa,M:1 Ⅱa+Ⅱc,SM:4

Ⅱc,M:3 Ⅱc,SM:1

cat.0

cat.1

cat.2

cat.3

cat.4

cat.5

Blank

**

*

%

*:P<0.05

*

Chi-square test

(Case of Fig.

8-a・8-b)

Fig.6 Comparison between the categorization for evaluation by the participants to the work-shop and that by this study members on 10 cases of eary cancer

01020304050607080

mem

bers

part

icip

ants

mem

bers

part

icip

ants

mem

bers

part

icip

ants

mem

bers

part

icip

ants

mem

bers

part

icip

ants

Ⅰ,SM:1 Ⅱa,M:1 Ⅱa+Ⅱc,SM:4

Ⅱc,M:3 Ⅱc,SM:1

judg.A

judg.B

judg.C

Blank

% *

*

**

*

*:P<0.05

Chi-square test

(Case of Fig.

8-a・8-b)

Fig.7 Comparison between the evidence for evaluation by the participants to the workshop and that by this study members on 10 cases of early cancer

Fig.8-a The 0-Ⅱa lesion in the supine frontal image of the antrum

Fig.8-b The 0-Ⅱa lesion in the prone left anterior oblique image of the antrum

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38(926)◆ 日本診療放射線技師会誌 2014. vol.61 no.742

4.考 察 対策型胃がん検診において,撮影は技師,読影は医師という厳然たるすみ分けが存在していたが,近年,読影医の高齢化と若手医師の消化管造影検査離れが急

速に進み,検診施設において遠隔読影を依頼する施設もあり,読影医の不足が表面化している15).これらの要因に厚生労働省通達の読影の補助を背景として,技師の一次読影が注視されている. 研究班の対策型検診施設の技師へのアンケート結

user-friendly46%normally

39%

user-unfriendly

15%

Fig.9 Description of the abnormal fi ndings, num-ber of lesions, and location of lesions (For-nix, body, angle, antrum and AW, PW, LC, GC).

AW: anterior wall PW:posterior wall

LC: lesser curvature GC:greater curvature

user-friendly15%

normally15%

user-unfriendly39%

non-response31%

Fig.11 Usability for evidence of judgment

user-friendly15%

normally39%

non-response46%

Fig.10 Usability of the categorization

not take time31%

normally46%

take time23%

Fig.12 Entry time of the image reading report form

user-friendly8%

normally61%

user-unfriendly31%

Fig.13 Usability of image reading report form

yes15%

not now54%

non-response31%

Fig.14 Do you want to use the image reading re-port form

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原 著診療放射線技師による対策型胃がん検診レポートの作成

学 術Arts andSciences

06

学 術 ◆ 39(927)

果 4)では,レポート記載の必要性は84%と高い結果であった.しかし,実際には65%の施設しか実施していない現状がある.記載内容は,異常所見の記載が66%を占め,異常所見の拾い上げが技師読影レポートにおける目的の一端であることが推定できる. 読影についての文献報告 6-12)は,画像所見の判定法としてマンモグラフィ検診精度管理中央委員会16-17)

と日本消化器がん検診学会超音波部会委員会18)が施行している,5段階のカテゴリー分類が最も多く認知され普及していると推定した.研究班のアンケート結果と読影に関する文献報告から,レポート記載様式についての基本骨格を決定した. 評価項目の病変存在部位については,領域区分として松江らの提唱する胃77区域分類(すとまっぷ)19)

を基本として,食道・胃接合部(EGJ)の下端部から上部を穹窿部,胃77区域分類における胃角部を胃角部と規定し,穹窿部と胃角部の間の領域を胃体部,胃角部から幽門輪までの領域を前庭部の4区域に分類した.病変の壁在区分については,胃癌取扱い規約の胃壁の断面区分 20),前壁・後壁・小彎・大彎・全周を導入した.また技師の読影力向上を目指して,判定の根拠分類を記載する項目を設けた.病変を指摘したときに全体像が描出されているか,また良悪性の判定が可能であるかの画像評価を行うためである.評価項目に,有所見時の肉眼分類・深達度・組織型などを記載する項目は設置していない.しかし,読影医への情報提供が必要な場合にはImp.欄に記載するようにした.これらの分類については,使用経験の調査結果からも使いにくいという意見は少なく,使用上の問題は少ないと判断した. 班員群による良性病変10症例の評価結果では,隆起性病変においては「2.良性病変」が83%,判定の根拠分類においても「判定A」が90%で,隆起性病変の読影法が確立していると推定した.陥凹性病変においては「3.悪性病変を否定できず」と「4.悪性病変の疑い」の要精密検査が25%,判定の根拠分類においても「判定B」が25%を占め,陥凹性病変の判定が難しいことが推定された.早期癌14例のカテゴリー分類評価結果は,隆起型の癌(0-Ⅰ,0-Ⅱa)で一部「2.良性病変」があるが,陥凹型の癌(0-Ⅱc)と隆起+陥凹型の癌(0-Ⅱa+Ⅱc)では全例「3.悪性病変を否定できず」以上を判定している.しかし,早期癌14例の判定の根拠分類評価結果は乖離している.検査時に陥凹性病変を発見した場合は,悪性を疑って検査することが反映されている結果と推定した.

進行癌6症例の評価結果は,カテゴリー分類「5.悪性病変」86%,「4.悪性病変の疑い」11%で,ほとんどの班員が悪性と判定した.判定の根拠分類の評価結果は「判定A」と「判定B」に乖離している.これは,病変の全体像を捉え切れていないので「判定B」とした結果である.これらの班員による評価結果の検証から「カテゴリー分類」「判定の根拠分類」の記載様式が使用できると判断し,班員以外への使用とその結果の検証へと移行した. 班員群と受講者群の評価結果では,カテゴリー分類,判定の根拠分類共に乖離が見られた(P<0.05).これは,受講者群に初級者が多く,研修会や研究会に参加して症例を数多く経験していないことと併せて,読影に必要な基本的知識や系統的な読影の知識が習得されていないことが要因であると推定した.また一部の症例で受講者群に未記入が見られたことは,胃X線画像の読影が難しいことと併せて,判定の根拠分類の事前説明が不十分であったことが要因であると推定した. Fig.8-a,8-bに示す0-Ⅱaの症例は,班員群と受講者群の判定が「カテゴリー2」の精密検査不要と「3,4,5」の要精密検査とに乖離した症例である.班員群では,隆起辺縁の性状がやや不整であるが,隆起辺縁の立ち上がりが山田Ⅱ型で大きさが2cm以下であることから,積極的に悪性と読影していない結果が表れている.この症例の要精密検査数は,班員群が「3・4」合わせて83%,受講者群が「3・4・5」合わせて69%で,班員群が上回っている.精密検査不要の「カテゴリー1・2」と要精密検査の「カテゴリー3・4・5」の判定は,受診者への影響が大きく,注意を要して読影する必要がある.これらのことを日常検査で常に意識するためにも,レポート用紙を使用することにより読影における弱点をピックアップし,読影力の向上へつなげる必要性があることの結論が示唆された. 受講者からはレポート用紙が使いにくいという声は聞かれず,レポート用紙を使用することの有用性の評価が得られた. センター技師と医師によるレポート用紙使用経験の調査では,病変の数・存在・壁在・所見記入については「使いやすい」が最も多かった.カテゴリー分類については「判定しづらい」はなく,学会や研修会を通じて技師間に浸透していることがうかがえた.判定の根拠分類については「判定しづらい」が39%,「未記入」が31%あり,使用に際しては判定の根拠分類に関する補足説明や,具体的な基準や事例を示す必要があると考える.記入時間については「時間を要する」

Page 8: 診療放射線技師による レポートの作成 · ポート記載の実態把握アンケート結果4),5)を検証し た.また先行文献6-12)の検索を行い精査した.それら

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が最も少なかった.使用感想については「使いにくい」が31%,研究班のレポート用紙の使用については「今は使用しない」が54%を占めた.これは,自施設におけるレポート記載用紙に慣れ親しんで使い勝手が良いことと,研究班作成レポート用紙の判定の根拠分類が十分に理解されておらず,判定・記入に迷ったことが要因であると推定した. 作成したレポート用紙について,今後も使用に関するアンケートを施行し改善を進めていき,対策型胃がん検診読影の補助の一助としたい.技師による読影の補助・レポート作成と報告を周知させ推進するには,消化管画像所見の拾い上げや病変の読影方法を系統的に学ぶことが第一義である.そのためには研修会や勉強会に積極的に参加し,撮影者個々の基本的な読影能力を向上させることが重要である.十分な読影力を身に付けた上で,レポート作成による読影の補助を実施することが肝要である.

5.結 論 対策型胃がん検診における,技師のレポート用紙を作成した.簡潔に使用できるようにカテゴリー分類の判定法と判定の根拠分類の記載を骨格に作成した.レポート用紙の使用経験とその検証結果から,いまだレポート記載をしていない施設や読影の初級者にもレポート用紙の使用が可能である.

謝 辞 本論文の要旨は,第29回日本診療放射線技師学術大会一般演題で発表した.本研究は,日本消化管画像研究会のレポート班による日本診療放射線技師会の平成25年度委託研究助成事業の一環である. 本研究の対策型検診レポート用紙作成に当たり,調査にご協力いただきました技師諸兄,平成25年度第2回胃がん症例検討会に参加されて,レポート記載にご協力いただきました技師諸兄,検診現場でのレポート記載にご協力いただきました大阪がん循環器病予防センターの技師諸兄,読影レポート用紙作成に多大なるご指導を賜りました大阪がん循環器病予防センター副所長山崎秀男先生に深甚の感謝の意を表し,厚くお礼申し上げます.

参考文献1) 独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター 最新がん統計 2014.05.02更新http://ganjoho.ncc.go.jp/public/statistics/pub/ statistics02.html(2014.5.7入手)

2) 平成24年度厚生労働科学研究費補助金3次がん「内視鏡による新たな胃がん検診システム構築に必要な検診方法の開発とその有効性評価に関する研究」班 他:有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン 2013年版・ドラフト.2013.

3) がん検診に関する検討会:市町村事業における胃がん検診の見直しについて.がん検診に関する検討会 中間報告,2007.

4) 山本兼右:レポート班活動報告 読影レポートの作成について.日本消化管画像研究会雑誌,8,64-67,2013.

5) 山本兼右:レポート班活動報告 読影レポートの作成について.日本消化管画像研究会雑誌,9,57-62,2014.

6) 河島輝明 他:新しい胃間接読影判定基準の提案.日消集検誌,88,37-39,1999.

7) 吉田諭史 他:新・胃X線撮影法(間接)に即した読影基準試案.日消集検誌,43,415-429,2005.

8) 高橋伸之:技師によるレポートのあり方 胃集団検診について.日本消化管画像研究会雑誌,2,4-6,2006.

9) 吉田諭史 他:胃X線カテゴリー分類と胃癌X線検診の精度管理.The GI forefront 3,176-179,2007.

10) 永井 信 他:胃X線検診における技師一次読影の基準化への試み-カテゴリー分類読影ツールVer.1の作成と評価-.日消がん検誌,47,405-462,2009.

11) 伊藤高広 他:胃がん検診におけるX線造影診断の役割と新・読影基準の提唱-ヘリコバクタピロリ時代における奈良県の実績を踏まえて-.日消がん検誌,48,493-502,2010.

12) 佐々木宏之 他:胃X線検査読影所見の現状とその標準化に向けて-読影精度向上のために-.日消がん検誌,51,543-551,2013.

13) 大阪消化管撮影技術研究会画像評価委員会:実践上部消化管造影臨床画像評価法.12-13, 68-84,金原出版, 2003.

14) 大阪消化管撮影技術研究会画像評価委員会:実践上部消化管造影臨床画像評価法.14-15, 29-49, 85-88,金原出版,2003.

15) 入口陽介:臨床医の立場から期待すること―迅速で高度な医療を提供するために.INNERVISION,28,58-59,2013.

16) 日本医学放射線学会・日本放射線技術学会,マンモグラフィガイドライン委員会:マンモグラフィガイドライン.2000.

17) 精度管理マニュアル作成に関する委員会:マンモグラフィによる乳がん検診の手引き-精度管理マニュアル-.2007.

18) 日本消化器がん検診学会超音波部会委員会:腹部超音波がん検診基準.日消がん検誌, 49,667-685,2010.

19) 松江寛人 他:高位の胃病変のX線診断.胃と腸,5,1071-1083,1970.

20) 日本胃癌学会:胃癌取扱い規約第14版.5-6,金原出版,2010.