飼料用米の家畜への利用に関する最新情報

新潟大学農学部

高田良三

「北陸地域飼料用米生産利用推進会議」平成26年2月27日 石川県教育会館

1

背景

米の家畜栄養学的な研究の重要性が高まっている

耕作放棄地を利用した飼料用米生産

飼料自給率の低迷

増え続ける耕作放棄地

2018年の減反廃止

2

飼料用米の栄養的評価は？

主要飼料原料の栄養成分（％）

水分 粗蛋白質 粗脂肪 NFE 粗繊維

トウモロコシ 13.5 8.0 3.8 71.7 1.7小麦 11.5 12.1 1.8 70.5 2.4 大麦 11.8 10.6 2.1 68.8 4.4玄米 13.8 7.9 2.3 73.7 0.9大豆粕 11.7 46.1 1.3 29.4 5.6

穀類間には栄養成分の違いは認められない

→ 新規機能性の発見はない？

飼料用米の栄養評価についてはこれまで研究が

少なかった。

3

中国産玄米のトウモロコシとの代替が離乳子豚の飼養成績および消化率に及ぼす影響

Defa Liら、Asian-Aust. J. Anim. Sci. 2002, 15(8), 1191-1197

Corn and brown rice ratio P100:0 50:50 0:100

0-4 wksADG, kg 0.36 0.40 0.35 0.22FI, kg 0.62 0.63 0.57 0.49FCR 1.72 1.57 1.62 0.01

開始体重7.4 kg、4週間、穀物53.18%, ホエーパウダー5%, 魚粉5%含む

4

１．離乳子豚への加熱処理トウモロコシおよび破砕米給与が飼養成績に及ぼす影響

G.G. Mateosら, Animal Science 2006, 82: 57-63

21 to 41 days 41 to 54 days Overall

ADG FI FCR ADG FI FCR ADG FI FCR

Rice 320 452 1.41 643 973 1.52 447 659 1.47

Maize 285 393 1.38 622 987 1.58 418 623 1.49

Significance * ** * ** **

開始体重 6.1kg、トウモロコシ、破砕米は53%配合、乾燥ホエー15%配合、

5

子豚への飼料用米給与は、生トウモロコシと比べて血中インスリン濃度が高くなる

Menoyoら, J.Anim.Sci. (2011)

タンパク質蓄積量増加の一因か？

しかし、飼料に使われるトウモロコシは加熱トウモロコシが大半では ？

6

豚への飼料米給与による新規栄養機能の解明およびその実用化

平成21年度新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業（平成21年～23年）

新潟大学農学部高田良三

7

１．離乳子豚への飼料米給与試験

（１）消化管機能に及ぼす影響

新潟大学農学部

（２）一般穀物飼料と飼料米との給与効果の比較

新潟県畜産研究センター

（３）飼料米の品種の違いの検討

富山県畜産研究所

（４）乳成分含量（脱脂粉乳等）の検討

群馬県畜産試験場

8

２．飼料米の栄養価に関する研究

（１）飼料米の品種、栽培方法、貯蔵条件による

栄養価の変動の評価

（独）畜産草地研究所

（２）飼料米の加工処理が栄養価に及ぼす影響

（社）日本科学飼料協会

３．飼料米の実用化に向けての検討課題

（１）養豚場レベルにおける離乳子豚への飼料米給与（株）フリーデン

（２）飼料米流通に係わる諸問題新潟大学農学部

9

飼料米給与が離乳子豚の飼養成績に及ぼす影響

新潟大学農学部

10

日増体量および飼料摂取量

0

100

200

300

400

500

600

700

800

0-1週 1-2週 0-2週

トウモロコシ区

飼料米区

日増体量

(g/d

)

*

*

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

0-1週 1-2週 0-2週飼料摂取量

(g/d

)

*

* P<0.05

飼料米は飼養成績を改善させた11

小腸膜酵素活性

0102030

40506070

8090

100

十二指腸 空腸 回腸

シュークラーゼ

(μm

ol/m

in/3

0cm

) トウモロコシ

飼料米

0102030405060708090

100

十二指腸 空腸 回腸

マルターゼ

（μm

ol/m

in/3

0 cm

)

*

0

2

4

6

8

10

十二指腸 空腸 回腸

ジペプチジルペプチダーゼⅣ

（μm

ole/

min

/30

cm)

0

5

10

15

20

25

30

十二指腸 空腸 回腸

アミノペプチダーゼ

（μm

ole/

min

/30c

m)

* P<0.05

*

12

血漿尿素態窒素濃度（BUN）

0

2

4

6

8

10

12

トウモロコシ区 飼料米区

BUN

(mg/

dL) **

** P<0.01

飼料米はタンパク質蓄積量を向上させる13

一般穀物飼料と飼料米との給与効果の比較検討

新潟県農業総合研究所

畜産研究センター

14

表３ ふん便の４段階スコアによる評価

スコア３以上

ﾄｳﾓﾛｺｼ (n=20) 8.3％b

飼料用米 (n=20) 3.6％a

加熱米 (n=20) 6.4％

１：正常、２：水分が高いが有形、３：水分が高く無形４：水様性 ab:P<0.01

15

表４ 給与開始後１週目および３週目の各消化率

１週目 ３週目

乾物 粗蛋白質 乾物 粗蛋白質

ﾄｳﾓﾛｺｼ(n=4) 76.7Bb 67.9 85.9B 81.5

飼料用米

(n=4) 82.5a 67.6 88.4A 79.0

加熱米(n=4) 83.5A 71.5 88.2A 80.9

平均値±標準偏差 単位：％ AB:P<0.01, ab:P<0.05ＤＭ:乾物、ＧＥ：総エネルギー、ＣＰ：粗タンパク質

16

飼料米給与効果に最適な乳成分含量に関する技術開発

群馬県畜産試験場

17

日増体量の推移

18

２．飼料米の栄養価に関する検討

（１）飼料米の品種、栽培方法、貯蔵条件による栄養価の変動の評価

畜産草地研究所

分子栄養研究チーム

勝俣昌也・石田藍子

19

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

Arg His Ileu Leu Lys Phe Thr Val

ふくひびき

モミロマン

アミノ酸含量（％）

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

Arg His Ileu Leu Lys Phe Thr Val

ふくひびき

モミロマン

可消化アミノ酸含量（％）

40

50

60

70

80

90

100

Arg His Ileu Leu Lys Phe Thr Val

ふくひびき

モミロマン

真の消化率（％）

飼料用米の品種の違いによって可消化アミノ酸含量は異なる20

飼料米の加工処理が栄養価に及ぼす影響

社団法人 日本科学飼料協会

21

供試玄米同一の玄米（飼料米）を

1mmメッシュのスクリーンを装着したハンマーミルで粉砕（細目粉砕）

ダブルミルロール方式で2つ割り程度粉砕

ダブルミルロール方式で4つ割り程度粉砕

左から 細目粉砕、4つ割り、2つ割り、未粉砕22

粒度分布

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90 H21 細目

H21 荒目

H22 細目

4つ割り

2つ割り

23

２つ割および４つ割り玄米の消化率および栄養価

消化率（%） 栄養価

CP EE NFE Cfib GE DE（Mcal/kg)

TDN（%）

H21・22細目粉砕 88.4a 77.5a 99.9a 66.0 96.7a 3.60a 84.8a

4つ割り 82.3a 47.9ab 97.7a 65.9 92.7a 3.47a 81.9a

2つ割り 59.7b 18.9b 83.4b 99.6 77.5b 2.90b 68.5b

SEM 3.9 23.4 0.1 35.3 0.2 0.003 0.11

P値 <0.01 <0.01 <0.01 0.07 <0.01 <0.01 <0.01

2つ割り玄米の消化率および栄養価は細目粉砕および4つ割り玄米に比べ、明らかに劣った4つ割り玄米の消化率および栄養価は細目粉砕玄米に比べやや劣る傾向を示したが、有意差は認められなかった

24

養豚場レベルでの実証試験（株）フリーデン

慣行飼料区 n=122飼料米区 n=126

脱脂粉乳含量を10％に低減しても飼料米給与により、慣行飼料（脱脂粉乳20％含む）と同等の発育を示す。

トウモロコシ（慣行飼料区）および飼料米の配合割合はいずれも44％

0

2

4

6

8

10

12

20日離乳時 35日齢

慣行飼料区(脱脂粉乳20％）

飼料米区（脱脂粉乳10％）

離乳子豚の体重の推移

25

まとめ１）離乳子豚への飼料米給与・飼養成績の改善・下痢症状の軽減・小腸膜酵素活性の亢進・タンパク質蓄積を促進

飼料用米は、優れた栄養機能を有する飼料用米を配合すれば高価な脱脂粉乳の配合割合を低減することが可能である。

人工乳の飼料価格下に繋がる２）飼料用米は品種によって真の可消化アミノ酸含量が異なる

３）飼料用米の粉砕は4つ割り程度で十分である。

26

2010年 飼料米プロジェクト開始

農林水産省

飼料米稲

牛 鶏豚

家畜

・品種開発・生産技術開発 など・・・

・給与技術開発(九州大学他)・生産性(千葉・山梨研究センター他)・消化性(岩手大学・香川大学)・ストレス低減(東北大学)・初期成長(新潟大学)・肉質(新潟大学) など・・・

成果の情報

委託研究プロジェクト「自給飼料を基盤とした国産畜産物の高付加価値化技術の開発」（H22～26）

農林水産技術会議ホームページ 注目情報 現場直結型プロジェクト研究で開発中の技術情報明日の農業のための技術シーズ集 ・・・・・・２０１３年国産飼料による畜産物生産に関する取組 27

富山県農林水産総合技術センター畜産研究所

28

宮城県畜産試験場 29

清水港飼料（株）

山形県畜産試験場

山形大学農学部

30

山梨県畜産試験場

31

千葉県畜産総合研究センター

32

岩手県農業研究センター畜産研究所

33

飼料名＼区 対照 挽き割り 圧ぺん混合割合（乾物％)

イネWCS 25 25 25イタリアンライグラス 10 10 10トウモロコシ 15 0 0大麦 10 0 0飼料用玄米 0 25 25乳生産

乾物摂取量（kg/日） 25.1 26.1 24.2乳量（kg/日） 40.7 41.0 42.5乳脂率（％） 4.0 3.9 3.8乳蛋白質率（％） 3.4 3.4 3.4

トウモロコシ等と飼料用玄米の25％代替は可能34

①乳生産に影響を及ぼすことなく、泌乳中期～

後期の乳牛にトウモロコシ・大麦と飼料用米

を25％代替できる②泌乳前期の乳牛に対しても、泌乳中期～後期

と同様に飼料用米は利用可能と考えられる

③牛の健康を損なわず、どこまで飼料用米を

給与できるのか？

加工処理した飼料用米は、

輸入穀類の代わりに乳牛に利用できる35

玄米区 (n=18) 籾米区 (n=18)

あり 100*** 100***

なし 0 0

分析型官能評価 （呈味） 対照区をコントロールとした時の玄米区・籾米区の評価

呈味の差(%)

***: p<0.001

二点識別法

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0味の濃さ

酸味コク*

対照区

玄米区*: p<0.05

プロファイル法・味強い・後味が強い・香りが強い

シェッフェの一対比較法

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0味の濃さ

酸味コク

対照区

籾米区

プロファイル法・コク強い・うま味がある・すっきり、さっぱり

36

◆総括

物性 呈味

＜長期＞

コクの付与

微酸味の増加

色調

黄色味の低下

ジューシー さの増加傾向

歯ごたえの付与の傾向

＜短期＞

長期の方が影響大

＜長期＞

＜短期＞

黄色味の低下

＜長期＞

＜短期＞

↓さっぱり感

↑うま味や甘味を呈するアミノ酸の変化

↑ドリップロスの低下

(玄米区)

(籾米区)

→ 鮮やかな肉色

・飼料米給与により、色調に加え、新たに呈味、物性が見られた。・給与期間、飼料米(玄米、籾米) の違いにより異なる特徴を示した。

呈味物性

37

肉用鶏前期への各種飼料用米給与

対照区 ： 一般的なトウモロコシベースの

飼料を給与（トウモロコシ50%配合）

もちだわら区 : もち米の玄米（品種：もちだわら）を50%配合した飼料を給与

こしひかり区 : うるち米の玄米（品種：こしひかり）を50%配合した飼料を給与

ふくひびき区 : 飼料米品種の玄米（品種：ふくひびき）を50%配合した飼料を給与

38

飼養成績対照区

全飼料米区 P値もちだわら区 こしひかり区 ふくひびき区 分散分析 t検定1)

増体量(g)0-1週 224 ± 10.5 277 ± 15.9 275 ± 26.0 255 ± 16.0 0.1328 ＜0.051-2週 426 ± 25.5 439 ± 26.8 474 ± 29.9 454 ± 20.6 0.6091 0.3257 0-2週 650 ± 32.6 716 ± 37.8 749 ± 54.8 709 ± 33.3 0.3783 0.1046

飼料摂取量(g)0-1週 297 ± 7.27 327 ± 15.4 332 ± 23.9 316 ± 17.1 0.4652 0.1455 1-2週 555 ± 18.0 550 ± 25.1 583 ± 32.9 574 ± 22.2 0.7623 0.6194 0-2週 852 ± 21.6 877 ± 34.2 915 ± 56.0 890 ± 36.6 0.7087 0.3351

飼料効率(gain/feed)0-1週 0.751 ± 0.02 0.845 ± 0.02** 0.821 ± 0.02* 0.807 ± 0.01¶ ＜0.01 ー1-2週 0.764 ± 0.02 0.794 ± 0.02 0.812 ± 0.01 0.789 ± 0.01 0.2638 0.0787 0-2週 0.760 ± 0.02 0.813 ± 0.01* 0.816 ± 0.01* 0.796 ± 0.01 ＜0.05 ー

平均値±SE n=8（こしひかり区は n=7）対照区と比較して *：P＜0.05 **：P＜0.01 ¶：傾向あり（P＜0.10）1)対照区と全飼料米区の比較

増体量は、1週目において全飼料米区で増加した。飼料効率は、1週目および試験期間全体においてもちだわら区、こしひかり区で対照区と比較して有意に高い値を示した。 39

実験２：窒素蓄積率・蓄積量

01020304050607080

窒素蓄積率(%)

* **

0.01.02.03.04.05.06.07.08.0

窒素蓄積量(g/3d)

窒素蓄積率は、こしひかり区およびふくひびき区で有意に高い値を示し、もちだわら区で高い値となる傾向が見られた

平均値±ＳＥ、n=8（こしひかり区は n=7）、対照区と比較して *：P＜0.05 **：P＜0.01 ¶：傾向あり（P＜0.10）

¶

40

まとめ

・飼料米の品種によって効果の表れ方に違いが認められた。・玄米を給与したブロイラー体内においてタンパク質分解速度が低下していた可能性がある。

・玄米を給与した３試験区において対照区と比較して飼料効率、肝臓重量、乾物および窒素の蓄積率の改善が見られたが、その差の大きさには品種による違いがあった。

・こしひかり区およびふくひびき区では血漿中尿酸濃度の低下が見られ、玄米を給与した３試験区で血漿中３-メチルヒスチジン濃度も低下した。タンパク質分解関連遺伝子の発現量は品種によるばらつきが大きかった。

41

離乳子豚へのもちだわら、コシヒカリ給与

供試動物

離乳子豚（LWD種 ） 、平均開始体重 7.2±0.2kg2頭の母豚から6頭ずつ 計12頭

飼料給餌

不断給餌・自由飲水、飼料残渣は毎日記録

試験期間

3週間、体重は毎週記録

サンプル

血液 糞尿 胃内容物

42

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

0-7d 7-14d 14-21d 0-14d 0-21d

日増体量（g/d） 対照区

もちだわら区

コシヒカリ区

***

**

¶¶

離乳子豚へのもちだわら、コシヒカリ給与飼養成績

**：P<0.01

* ：P<0.05

¶ : P<0.10

0

200

400

600

800

1000

1200

0-7d 7-14d 14-21d 0-14d 0-21d

飼料摂取量（g/d）¶

**

*

¶

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

0-7d 7-14d 14-21d 0-14d 0-21d

飼料効率（gain/feed）

** * *

43

胃内容物

**：P<0.01

0

10

20

30

40

50

対照区 もちだわら区 コシヒカリ区

胃内容物滞留量（g）

0

5

10

15

20

25

対照区 もちだわら区 コシヒカリ区

胃内容物滞留率（%）

**

（200g定量給与から4時間後の胃内容物）

**

もちだわら飼料は胃から小腸へ早く排出される飼料摂取量の増加へ繋がる

44

0

2

4

6

8

10

12

14

16

BUN濃度（mg/dl）

*

血漿中尿素体窒素(BUN)濃度

*：P<0.05

0

2

4

6

8

10

12

14

BUN濃度 / Feed Intake

*

BUN濃度の低下 タンパク質蓄積量の増加を示唆している

45

日増体量、飼料摂取量

BUN濃度 / FI

コシヒカリ給与は、摂食量が対

照区と同等であり、効率的なタ

ンパク質蓄積が行われた

胃内容物滞留量、滞留率

もちだわら給与は、胃内容物

の滞留時間が短縮し、これが

摂食量増加に影響した可能性

もちだわら区＞対照区

コシヒカリ区＜対照区

もちだわら区＜対照区

日増体量

コシヒカリ区＞対照区

まとめ

46

市販飼料に飼料用米を添加した時の飼料代

• 離乳子豚の場合：餌付け用飼料(300円/kg)を用いる

３０％配合の時

300×0.7 + 30×0.3 + 10 = 229円・・・

５０％配合の時

300×0.5 + 30×0.5 + 17 = 182円・・・

飼料用米 アミノ酸、ミネラル等

７０円/kg安くなる

118円/kg安くなる

47