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学術創成研究費
記号過程を内包した動的適応システムの設計論
生物数理G 「生体の記号過程の数理モデル」
工学研究科機械理工学専攻 富田直秀
情報学研究科複雑系科学専攻 青柳富誌生
情報学研究科システム科学専攻 谷口忠大
代表: 椹木哲夫
生物数理グループの位置づけ
双対的関係にある適応系設計・環境設計を含み「記号過程を内包した動的適応システム」を支える数理的構造を捉える「記号過程を内包した動的適応システム」を支える数理的構造を捉える..
【適応系設計G】・土屋
・横小路・中西
【環境設計G】・門内・水山・堀口
【生物数理G】・富田・青柳・谷口
バーロ・モデル(二項関係的なコミュニケーション図式)
記号過程(semiosis)とコミュニケーション
sign object
interpretant
Peirceの記号三項関係
EncoderReceiver SignalSignal Transmitter messageDecodermessage
UserMachine
慣習・規範・経験
状況
コード表の共有を前提(不変・一義) 情報はSignalそのもの
解釈者の自律性と適応性を仮定 情報は解釈者が生成するもの(可変・多義)
記号過程を内包した動的適応システム
コミュニケーションの為の用法や意味の制約
環境との相互作用に基づく記憶システムの組織化
記号的相互作用
物理的相互作用
SymbolEmergence
記号過程を内包した動的適応システムの特徴
• 個体のみならず組織として環境適応的に振る舞う.
• コミュニケーションの仕様自体が適応的に変化する.
• 慣習・文化・場的な存在が創発しそれがコミュニケーションを規定する.
• 結果として個体が持つ環境適応性より,より高度な環境適応性が発現する.
このような抽象的属性を持つのは人間を構成素とする系だけか?
仮に記号圏と呼ぶ[Hoffmeyerに倣う]
生体組織内における記号過程と動的適応システムとしての生物
生物記号論~主体性の生物学[川出07]より(p.107)
生命記号論 [Hoffmeyer ‘93]
(ホルモン・サイトカイン系の意味の多義性について述べた後に)
「信号分子系と人間の言語との類似は偶然のことではなく,両者の諸特性に共通性があるからだと思います.どちらも意味の創成と伝達に関わること,自己組織的なシステムとして完結しながら柔軟で,変化を許容する開放性がある,などの同型性が感じられます.」
力学的生体環境設計と組織分化
•• 力学刺激の有無力学刺激の有無による比較
ES細胞ESES細胞細胞
コラーゲンゲルコラーゲンゲルコラーゲンゲル
軟骨様組織の形成軟骨様組織軟骨様組織の形成の形成
奇形腫の形成奇形腫奇形腫の形成の形成
(worked with Dr. Wakitani)
術後:
関節運動あり関節運動あり
術後:
関節運動なし関節運動なし
富田らのグループの結果
力学的環境により生体組織は環境適応的に分化の仕方を変化させる.異なる分化状態では,異なる遺伝子発現,異なる細胞間相互作用を行なう.
生物数理Gのビジョン
記号過程を内包した動的適応系における記号過程を支える数理構造を解明し,「育てる設計論」構築を支援する.
記号生成のダイナミクス
組織分化を通じた環境適応
記号圏の創発とそれによるコミュニケーションの制約構造
異なる記号圏の接続についてのシステム的理解
記号論的コミュニケーションを可能にするロボット
記号過程を内包した動的適応系の性質としての一般性を確保するために,生物系と人間系における同型的を探求する.
生物数理Gの研究成果
1. 人間の記号過程を支える認知適応機能神経ネットワークのダイナミカルな記号生成 [青柳]自動化機械に対するユーザの記号過程の構成 [谷口]
2. 環境適応的な組織分化ダイナミクス力学的生体環境設計による細胞分化誘導 [富田(谷口)]エージェント組織に於ける分業形成ダイナミクス [谷口]
3. 記号圏接続のシステム論的理解生体軟骨へ適応させるための力学的生体環境設計に基づくin vitro再生軟骨の移植実験 [富田]
※(全て)~についての研究
個別研究発表(青柳)
1.人間の記号過程を支える認知適応機能
人間が記号形成を行ない環境認識やコミュニケーションすることを可能にする神経機構・認知機構の計算論的な理解.
人間の環境認識の計算論的理解に基づく環境設計の展開
記号過程を実現するロボットの設計論を探求する.[記号接地・創発問題]
神経ネットワークのダイナミカルな記号生成 [青柳]
自動化機械に対するユーザの記号過程の構成 [谷口]
招待講演尾形先生の研究に関係
運転支援
自動制御
航空機自動操縦
人間機械間コミュニケーションの齟齬が,ユーザが自動化機械のモードを取り違えてしまうモード誤認識モード誤認識として顕在化する.
安全性向上!高付加価値化!
1
2 3
4
5
ββ
α
αα
γγ
γ
μ μ
δ
δδ
1
2 3
4
5
ββ
α
αα
γγ
γ
μ μ
δ
δδ
モードを持つ自動化機械モード誤認識モード誤認識
((mode error)mode error)
複数のモードを有する自動化機械 ~モード誤認識問題~
自動化機械に対するユーザの記号過程の構成 [谷口]
自動化機械に対するユーザの記号過程の構成
Bモードのときはこんな挙動をするなぁ
Aモードのときはこういう入力に対してこういう出力が
返ってくるなぁ
自動化機械
環境
• 変化する状況を分節化し,複数の内部モデルとして獲得していく.
• 相互作用を通して環境変化のサインとその意味解釈を獲得していく.
相互作用
ユーザ
γ
αβ
δ
α
Dモード
Bモード
Aモード
signsign
signsign
signsign
こういう状況はDモードを意味してるぞ・・・
自動化支援の行動意図
),(1̂ uxfx =&
),(3̂ uxfx =&
),(2̂ uxfx =&α̂β̂
κ̂
γ̂
機械ユーザ
),(1 uxfx =&
),(3 uxfx =&
),(2 uxfx =&
モード2
モード3
モード1
α
β
κ
γ
環境
多モード機械と遷移事象を含んだユーザの複数内部モデル
Acquisition!!
Recognition!!
η
1+ty
YX,
Activeなとき追加
線形最小二乗法
予測誤差
記憶のキュー
m
尤度
計算
P
最大 maxτ
†tx
mÂ+
−
tz
1−tθ
G
L
Prior
Likelihood
tθ各モードの尤度
Activem
尤度最大をActiveに
+
−最急降下法
入出力関係の手がかり
遷移事象の手がかり
モード認識
遷移前のモードで割り振り
モジュール
1ˆ +ty
Transitional Mixture of Experts [谷口 ‘07]
ベイズ則に基づく選択
複数内部モデル
idle
car-following constant-speed
• “set”[V>50km/h]
V は自車速度[ ] は操作可能となる条件を表す
• “cancel”• brake
• “cancel”• brake• V
ドライバのモード認識を模倣する複数内部モデルによる実験
• 被験者実験の時間について約80%の精度で被験者のモード認識を予測できた.
500 510 520 530 540 550 560 570 580 590
タスク経過時間[s]
ユー
ザ認
識モ
ード
実際
のモ
ード
idle
constant
idle
follow
constant
follow
constant
idle
follow
シミ
ュレ
ータ
認識
モー
ド
ⅠⅠ
Ⅱ
Ⅴ
Ⅲ
Ⅳ
認識していない • モード誤認識を起こしている時間帯については50%の割合でモード誤認識を予測できた.
• モード遷移事象についても学習する事が出来た.
0.00
0.20
0.40
0.60
0.80
1.00
1.20
-1.50 -1.00 -0.50 0.00 0.50 1.00 1.50
g
g12
g22
g32
7650 7670 7690 7710 7730 7750 7770 7790 7810 7830 7850
タスク経過時間[s]
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
ICF
ICF
ICFICF
シミュレーション(入出力関係の手がかり)
実際のモード
シミュレーション(遷移事象の手がかり)
ユーザの認識モード
ユーザのアクセル量
F: fo
llow
ing
mod
eC
: con
stan
t-spe
ed m
ode
I: id
le m
ode
IECEFE
01
ロスリップ
イ
ニ
ハ
各モジュール評価値
ダイナミクスとモード遷移事象のユーザの認識への寄与についての計算論モデルに基づく考察
突発的なモード誤認識からの復帰では入出力関係の寄与が優位であることが示唆された.
自動化機械に対するユーザの記号過程の構成[谷口]の課題
ユーザのモード認識の認知実験との更なる照合が必要
ユーザの注意などモデルに取り込めていない項もあり,モデルの検討が必要.
モデルを踏まえて「どのような自動化機械を設計すべきか?」といった適応環境設計論への展開が必要
2.環境適応的な組織分化ダイナミクス
生体における組織分化を記号過程を内包した動的適応システムという観点から理解する.
人間組織における役割分化のダイナミクスを計算論的に理解する.
力学的生体環境設計による細胞分化誘導 [富田・谷口]
エージェント組織に於ける分業形成ダイナミクス [谷口]
力学環境と組織形成
• 力学環境変化による組織形成の違い
3.5mm1mm
軟骨様組織軟骨様組織軟骨様組織 軟骨様組織軟骨様組織軟骨様組織 軟骨様組織軟骨様組織軟骨様組織
表面組織表面組織表面組織
層状構造層状構造層状構造
表面組織
ラット尾部骨切部の軟骨様組織形成Harada Y, Tomita N,
Tissue Eng., 8 (2002), 969-978.
表面組織表面組織
力学的生体環境設計による細胞分化誘導 [富田]
セルオートマトン法の利用 [山本‘05]
局所的な相互作用の原理に基づく計算手法
⇒『自己組織化(self-organization)』の研究ツール力学環境力学環境
T=T1 T=T2
力学的ルール
力学的ルール
生物学的ルール
生物学的ルール
生物学的ルール
T=10 T=25 T=60T=10 T=25 T=60 T=10 T=25 T=60T=10 T=25 T=60
触媒反応ネットワークモデルにおける力学的環境設計の検討 [谷口]
古澤らは細胞の活動を単純な触媒反応ネットワークモデルで捉えた.
各成分濃度の振動状態(アトラクタ)を細胞組織の分化状態と見なし,細胞分化の過程を追った [Furusawa ‘98].
古澤らの研究をベースに触媒反応ネットワークモデルに力学的環境を導入し検討を行なった.
・・・現在の所,有意な結果は得られず
Preliminary workPreliminary work
本日,招待講演
[Acknowledgement] Mr. Otaka
3. 記号圏接続のシステム論的理解
構成素間の協調状態が安定している系から別の安定した系へ構成素を移植した場合に,どの様な条件で移植すれば動的適応システムとしての安定性を維持し,持続的に育てる事ができるか?
生体軟骨へ適応させるための力学的生体環境設計に基づくin vitro再生軟骨の移植実験 [富田]
in vitro で培養し,in vivoへ移植する場合のシステム的問題
再生医療において,生体外部(in vitro)で培養した組織を生体内部(in vivo)に移植するという方法論が研究されている.
生体外部で育てた組織が生体内に必ずしも定着しない.
in vitroin vivo
■ Engineered Cartilage for Engineered Cartilage for Regenerative MedicineRegenerative Medicine
1. 組織産生や構造構築を可能とする培養環境の設計
2. 移植を前提とした培養軟骨の摩擦特性の評価および機能改善
0 200 400 600 800 1000 12000
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
Time [s]
Friction c
oeff
icie
nt
CartilageEngineered Cartilage
(Mean±SD.)
● 培養軟骨は摩擦係数の増加率が高い ● 機能改善後の組織は生体内でも機能的に作用する * Chueh et al., Tissue Engineering, 13 (2007), 483-492.
2.0 m
m
Defect area
5.0 mm
1.0 mm
機能改善組織の生体内における作用
改善後組織の移植 改善前組織の移植
● 表層構造(物質)の成熟・産生具合に関係
Tribological Properties of Engineered Cartilage
2
軟骨組織:Engineered Cartilage & Intact Articular Cartilage
Motion Continuous Sliding 24 h/day
Rotation Velocity 5 rpm (center: 12.0 mm/s)
軟骨細胞の単離&播種 相対すべり運動負荷培養
生体関節軟骨組織の採取
ブタ大腿骨遠位部より直径8mmの試験片を採取
3
Stirring Chamber■ Development of stirring chamberDevelopment of stirring chamber11 for tissue culture under for tissue culture under tribological stimulationstribological stimulations
● Sterilization condition (clinical application)
● Mass production (clinical application)
● Tribological stimulations
1. Chueh et al., Tissue Engineering, 13 (2007), in press.
Stimulation Continuous Sliding 24 h/dayRotation Velocity 5 rpm (center: 12.0 mm/s)Number of Specimens 56
負荷履歴: Design of Loading History■ Loading history was designed according to Loading history was designed according to the orderthe order of culture methods and of culture methods and the periodthe period..
4
結果: Friction Test
Data represent mean ±SD. (n=3).● 単一の培養環境(D0S11,D11S0)より,相対すべり負荷後静置する方が摩擦特性に改善が見られる
● D1によって初期の摩擦特性が改善されるが,長期の摩擦特性改善には至らない7
生体軟骨へ適応させるための力学的生体環境設計に基づくin vitro再生軟骨の移植実験 [富田]のまとめと課題
Stirring Chamber内の力学的環境下で培養すると,in vitroで組織潤滑機能の改善が見られる条件があり,機能改善が見られた組織を移植するとin vivoでも機能的に作用する可能性がある.
どの様な培養状態であればin vivoに移植した際に機能的に作用するのかをシステム論的に説明出来る枠組みが求められる.
生物数理G まとめ
「記号過程を内包した動的適応システム」の図式的描像を示した.
各研究室の研究成果について触れた.
グループ内の研究の多様性を活かし,「記号過程を内包した動的適応システム」を支える数理的構造を捉えて行きたい.
Thank you for your attention!!
次は,青柳先生
学術創成研究費�記号過程を内包した�動的適応システムの設計論�生物数理G 「生体の記号過程の数理モデル」生物数理グループの位置づけ記号過程(semiosis)とコミュニケーション記号過程を内包した動的適応システム記号過程を内包した�動的適応システムの特徴生体組織内における記号過程と�動的適応システムとしての生物力学的生体環境設計と組織分化生物数理Gのビジョン生物数理Gの研究成果1.人間の記号過程を支える認知適応機能複数のモードを有する自動化機械 ~モード誤認識問題~多モード機械と遷移事象を含んだ�ユーザの複数内部モデルTransitional Mixture of Experts [谷口 ‘07]実験の設定 及び�各モードの性質とモードロジックドライバのモード認識を模倣する�複数内部モデルによる実験ダイナミクスとモード遷移事象のユーザの認識への寄与についての計算論モデルに基づく考察自動化機械に対するユーザの記号過程の構成[谷口]の課題2.環境適応的な組織分化ダイナミクス力学環境と組織形成セルオートマトン法の利用 [山本‘05]触媒反応ネットワークモデルにおける力学的環境設計の検討 [谷口]3. 記号圏接続のシステム論的理解in vitro で培養し,in vivoへ移植する�場合のシステム的問題Tribological Properties of Engineered Cartilage軟骨組織: �Engineered Cartilage & Intact Articular CartilageStirring Chamber負荷履歴: Design of Loading History結果: Friction Test生体軟骨へ適応させるための力学的生体環境設計�に基づくin vitro再生軟骨の移植実験 [富田]�のまとめと課題生物数理G まとめThank you for your attention!!