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膣内留置型黄体ホルモン製剤(CIDR)を用いた受胎率向上試 誌名 誌名 宮崎県畜産試験場試験研究報告 = Bulletin of the Miyazaki Livestock Experiment Station ISSN ISSN 09187278 巻/号 巻/号 20 掲載ページ 掲載ページ p. 1-4 発行年月 発行年月 2007年12月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

膣内留置型黄体ホルモン製剤(CIDR)を用いた受胎率 …腫内留置型黄体ホルモン製剤IJ (CIDR)を用いた受胎率向上試験 2 )移植前挿入(平成18年度)移植2日前(発情5日後)から7日間留置での

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Page 1: 膣内留置型黄体ホルモン製剤(CIDR)を用いた受胎率 …腫内留置型黄体ホルモン製剤IJ (CIDR)を用いた受胎率向上試験 2 )移植前挿入(平成18年度)移植2日前(発情5日後)から7日間留置での

膣内留置型黄体ホルモン製剤(CIDR)を用いた受胎率向上試験

誌名誌名宮崎県畜産試験場試験研究報告 = Bulletin of the Miyazaki LivestockExperiment Station

ISSNISSN 09187278

巻/号巻/号 20

掲載ページ掲載ページ p. 1-4

発行年月発行年月 2007年12月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

Page 2: 膣内留置型黄体ホルモン製剤(CIDR)を用いた受胎率 …腫内留置型黄体ホルモン製剤IJ (CIDR)を用いた受胎率向上試験 2 )移植前挿入(平成18年度)移植2日前(発情5日後)から7日間留置での

睦内留置型黄体ホルモン製剤IJ(CIDR)を用いた受胎率向上試験

腫内留置型黄体ホルモン製剤~(CIDR) を用いた受胎率向上試験

内山浩子・谷口岳 1)・高牟礼陽一2)・徳本清

(1)宮崎家畜保健衛生所 ・2)宮崎県畜産課)

Effect of CIDR on Pregnancy Rate in Bovine Embryo Transfer.

Hiroko UCHIYAMA, Takashi TANIGUCHI, Youichi TAKAMURE, Kiyoshi TOKUMOTO

<要約>受匪牛に腫内留置型黄体ホルモン製剤Ij(CIDR)を挿入することでプロジェステ ロン値

を上昇させ、受胎率の改善効果について検討を行った。また、受胎率向上のための最適なCIDR

の留置期間および、挿入時期についても検討を行った。

血中プロジェステロン濃度は、 CIDR留置期間中、対照区に比べ高値で推移した。

産歴別に見ると、経産牛においては移植直後争ら12日間の留置、未経産件では移植5日後から

7日間の留置で受胎率が良好であ った。未経産牛では移植前 2日から 7日間のCIDR留置で低い

受胎率であった。

匹移植による受胎率は、全国的にここ数年横ばい

状況である。近年、受匪牛にhCGやGnRHを移植

前後に投与し受胎率向上効果の検討がなされてお

り1)2)、本県では平成13年度から平成15年度にかけ

て受精卵移植普及定着化事業共同試験においてhCG

投与による受胎率向上効果を認めている 3)。しかし、

hCGの投与は獣医師に限られており、頻回投与に

よる抗体の産生が懸念され連用に問題がある。

一方、CIDRは獣医師の指示により使用が可能で、

挿入は簡易であり、抜去により作用期間を調節でき

るという利点がある。

そこで、本試験では、簡単な手法で更なる受胎率

の向上を図るため、受匹牛に睦内留置型黄体ホルモ

ン製剤 (CIDR)を挿入し、受胎率向上効果につい

て検討を行った。

この試験は、 11府県(青森県、秋田県、宮城県、

神奈川県、静岡県、奈良県、大阪府、 山口県、高知

県、大分県、宮崎県)による共同試験を実施した。

試験方法

1 供試牛

受匹牛は、県内の農家で飼養して・いるホルスタイ

ン種、黒毛和種、および当場で飼養しているホルス

タイン種、計105頭を用いk。

発情 7日目または 8日目に直腸検査を行い、排卵

側の卵巣に黄体形成を認めたものについて匪移植を

行った。

2 供試匪

当場で供卵牛として飼養している黒毛和種経産牛

に過剰排卵処理し人工授精後7日目に子宮濯流を実

施、回収した匹をA、A'、B、B'、C、Dランクに分

けAからB'ランクまでを凍結または新鮮匹で移植試

験に供した。移植匹のランク、ステージ、凍結方法

等は各試験区に均等に割り振った。

3 方法

受匪牛の腫内に、発情後または発情前より一定期

間CIDR(イ ージーブリード)を留置し発情 7日固

または 8日目に匪移植を行い、各試験区における受

胎率を比較した。

妊娠鑑定はday30(発情日をday0とする〉から

day60の聞に超音波診断装置または胎膜触知により

行った。

Page 3: 膣内留置型黄体ホルモン製剤(CIDR)を用いた受胎率 …腫内留置型黄体ホルモン製剤IJ (CIDR)を用いた受胎率向上試験 2 )移植前挿入(平成18年度)移植2日前(発情5日後)から7日間留置での

宮崎県畜産試験場試験研究報告第20号 (2007)

4 試験区分

1) CIDR挿入期間の検討(平成16年度)

試験 1区移植直後から 7日間留置

試験 2区移植直後から12日間留置

対照区無処置

2) CIDR挿入時期の検討

i )移植後挿λ(平成17年度)

試験 l区移植直後から 7日間留置

試験 2区移植 5日後から 7日間留置

対照区無処置

ii)移植前挿入(平成18年度)

試験区移植2日前から 7日間留置

対 照区無処置

5 調査項目

1)血柴中プロジェステロン濃度

2 )受胎率

3 )受匪牛の年齢、産次、 BCS、卵巣所見他

結果及び考察

1 CIDR挿入期間の検討(平成16年度)

移植直後から 7日間(試験 1区)および移植直後

から12日間(試験 2区)CIDRを留置し無処置のもの

と移植成績を比較したところ受胎率は試験 1区45.5

% (5/11頭)、試験 2区63.6%(7 /11頭)、無処

置区54.5%(6/11頭)であった。(表1)

表 1 CIDR挿入期間別受胎率

移植頭数 受胎頭数 受胎率(%)

試験 1区 11 5 45.5

試験 2区 11 7 63.6

対照区 11 6 54.5

言十 33 18 54.5

産歴別に見ると、経産牛において試験 2区で受胎

率が71.4%(5/ 7頭)と良好であった(表 2)。

本県の成績では、試験 2区で良好な受胎率であっ

たが、有意な差は認められず、受精卵移植普及定着

化事業(受精卵移植技術高度化)で共同試験を行っ

た11県の移植成績では試験 2区の受胎率 (39.5%、

2

表 2 産歴別受胎率

移植頭数受胎頭数受胎率(財)

試験 1区 O 0.0

未経産試験 2区 4 2 50.0

対照区 6 4 66.7

試験 1区 10 5 50.0

経産試験2区 7 5 71.4

対照区 5 2 40.0

計 33 18 54.5

47/119頭)は対照区の受胎率 (51.5%、'67/130頭)

と比較して低い傾向を示した (P=0.0567)。また、

不受胎の場合、長期間CIDR留置による発情回帰の

遅れも考慮し、 CIDR挿入期間は 7日間として九 17

年度以降のCIDR挿入時期の検討を行った。

2 CIDR挿入時期の検討

1 )移植後挿入(平成17年度)

移植直後から 7日間(試験 1区)および移植 5

日後から 7日間(試験 2区)CIDRを留置し無処

置のものと移植成績を比較したところ、受胎率は

いずれの区も57.1%(8/14頭)であった。(表

3 )

産歴別に見ると、未経産牛では試験 2区で、受

胎率カ:i100%(5/5頭)と良好であった(表 4)。

表 3 CIDR挿入時期別受胎率

移植頭数 受胎頭数 受胎率(%)

試験 1区 14 8 57.1

試験 2区 14 8 57.1

対照区 14 8 57.1

百十 42 24 57.1

表4 産歴別受胎率

移植頭数受胎頭数受胎率(財)

試験 1区 3 2 66.7

未経産試験 2区 5 5 100.0

対照区 5 3 60.0

試験 1区 11 6 54.5

経産試験2区 9 3 33.3

対照区 9 5 55.6

5十 42 24 57.1

Page 4: 膣内留置型黄体ホルモン製剤(CIDR)を用いた受胎率 …腫内留置型黄体ホルモン製剤IJ (CIDR)を用いた受胎率向上試験 2 )移植前挿入(平成18年度)移植2日前(発情5日後)から7日間留置での

腫内留置型黄体ホルモン製剤IJ(CIDR)を用いた受胎率向上試験

2 )移植前挿入(平成18年度)

移植 2日前(発情5日後)から 7日間留置での

受胎率は46.7%(7 /15頭)、無処置区では60.0

% (9/15頭)であった。(表 5)

産歴別に見ても試験区が対照区を上回る結果は

得られなかった。(表 6)

表5 CIDR挿入時期別受胎率

植頭数 受胎頭数 受胎率(%)

試験区 15 7 46.7

対照区 15 9 60.0

5十 30 16 53.3

受胎頭数 受胎率(財)

1 33.3

466.7

6 50.0

5 5 5 . 6

16 53.3

3 血中プロジェステロン濃度の測定

血中プロ ジェステロン (P4)濃度はCIDR腫内留

置期間中、試験区が対照区に比べ高値で推移し、抜

去後低下したが、受胎牛では抜去数日経過後、再度

上昇が見られた。(図 1、 2)

20

18

16

12

10

8

6 一←ー鼠蛾1区(妊+)

4 一・ー猷般2区(妊+)

一合一猷厳2区(妊→

一持ー対照区(妊ー)

10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21

性周期日数(発情日 0)

図1 血中プロジェステロン温度の推移(移植後挿入)

試験 l区 :移植直後 (day7)-7日間挿入

試験 2区:移植 5日後 (day12)-7日間挿入

対照区:無処置

2

0

8

8

4

(室、苦

E喜善邑

10 11 12 13 14 15 16 11 18 19 20 21

性周期回数獲情日:0)

図2 血中プロジェステロン温度の推移(移植前挿入)

試験区:移植 2日前 (day5)-7日間挿入

対照区:無処置

以上の結果より、 CIDR留置期間については、本

県成績では 7日間留置区よりも12日間留置区(いず

れも移植直後にCIDR挿入)で受胎率が良好であっ

たが、 11府県による共同試験では12日間留置区で低

い傾向を示した。 CIDR挿入時期については、移植

直後、移植 5 日後、移植 2 日前(~,ずれも 7 日間留

置)にCIDRを挿入して受胎率を比較したが、いず

れも試験区が対照区を上回る結果は得られなかった。

ただし、受匹牛の産歴別に見ると、経産牛におい

ては移植直後かる12日間の留置、未経産牛では移植

5日後から 7日間の留置で受胎率が良好であった。

加藤らは育成牛において移植直後から 7日間のCID

R留置で受胎率が向上したと報告している ヘ 本県

の17年度の試験でも、未経産牛において移植直後か

ら7日間のCIDR留置で対照区より高い受胎率であっ

た。移植 2日前からの挿入では、低い受胎率となっ

ており、この方法での使用は避けた方が良いと思わ

れた。

11府県による共同試験では、全体の成績および経

産、未経産の区分において、試験区の受胎率が対照

区を上回る結果は得られなかったが、受旺牛の品種

別にみると、黒毛和種で対照区の受胎率32.1%(18

/56頭)と比較し、移植直後から 7日間のCIDR留

置で47.6%(30/63頭)と良好な受胎率であった。

本県の供試牛は主にホルスタイン種乳牛であるため、

品種別による検討はできなかったが、受旺牛の品種

によるCIDR留置の効果についても再度検討する必

要があると思われた。

3

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宮崎県畜産試験場試験研究報告 第20号 (2007)

参考文献

1) Ellington JE, Foote RH, et aL

Theriogenology, 1991, 36, 1035-42

2) Rajamahendran R et al.

J Reprod Fertil, 1992, 95, 577 -84

3 )谷口岳 ・中武誠司 ・長友隆典 ・赤塚裕人

宮崎県畜産試験場研究報告、 2004、17、 7-11

4)加藤聡 ・堀津純 ・小糊裕子 ・砂川政広

群馬県畜産試験場研究報告、 2003、10、44-49

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