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皆様は「高専」をご存じでしょうか。高専とは高等専門学校の略称であり、産業界で活躍できる実践的技術者を養成するために設立された高等教育機関です。高専には中学を卒業した方が入学し、5年かけて一般科目と専門科目を学びます。高専卒業後の進路はおもに企業への就職、高専卒業後さらに2年間の技術教育を受ける専攻科への入学、そして大学編入学があり、皆様の近くにも高専卒業生がいるかもしれません。私は大学院博士過程を修了してすぐに沼津高専の物質工学科に就職しました。私自身も高専生だったので高専にはなじみがあり、研究室を与えられることも知っていたので高専教員になっても研究ができると考えていました。しかし、実際に高専教員になってわかったことは仕事の大変さはもとより、仕事の種類が多く、研究に取り組める時間の確保は簡単ではないということでした。高専教員のおもな仕事として、授業科目や学生実験の担当、卒業研究の指導、クラブ活動の顧問、場合によっては学級担任、寮務や学生生活などの各種委員会の運営などが挙げられます。中でも学級担任はクラスの学生生活をサポートする重要な役割であり、時間も多く費やします。担任業務の基本は毎朝の出席確認から始まり、授業中に何ごともなければ、放課後に教室を掃除させて清掃具合を確認して終わります。ほかにも講演会など学校行事でのクラスの誘導、提出物の回収、個別面談、学生の保護者面談、ホームルーム、学生の緊急時対応など、それぞれの内容がものすごく難しいわけではないかもしれませんが、仕事内容の幅が広く次から次へとやることが途絶えません。もちろん、担任業務のほかの仕事もあり、気付くと一日が過ぎていて、自分の研究は後回しになってしまいます。そんな中で研究を続けるため、研究室に配属された学生たちに実験を頑張って進めてもらいます。最高学年である5年生は各研究室に配属され、約1年かけて卒業研究を行います。私の研究室にも毎年3 ~ 4人の5年生がやってきます。専攻科生がやってくることもあります。研究室では基本的に、合成操作や分析機器の扱いなど、すべて私が教えます。まずは私が操作を学生にやって見せ、次に学生が操作するところを横で見て確
認し、そしてやっと学生が一人で操作できるようになる、それを繰り返して少しずついろいろな操作を覚えてもらいます。卒業研究発表会が近くなるにつれ、卒研生たちも各自で実験計画を組んで実験ができるようになり、学生の吸収力と可能性にはいつも感心しています。しかし、やっと研究らしいことができるようになったところで卒業してしまうので、正直なところ惜しまれ、進路先で卒研での経験が少しでも役立てばと願うばかりです。研究室の運営は私の経験を基にやっており、うまくいかないときは同僚の先輩に話を聞いてもらったり、その手の本を読んだりしますが、今の結論としては、多少は学生に譲歩しつつも、へこたれずに私自身が目標に向かい続けるしかないと思っています。気になる研究費ですが、学校からの配分だけで研究室を運営することは非常に厳しいです。着任当初、同僚の先輩に装置や実験器具をたくさん分けていただきました。そして、私が学生時代にお世話になった研究室の先生方は、今でも分析機器装置などを借用させてくださいます。また、高専研究シーズ集の私のページをご覧になった長岡科学技術大学の先生に誘っていただき共同研究に繋がるなど、多くの方々のお力添えで高専での研究活動が成り立っていて、とても感謝しています。学会ではなかなか発表できませんが、参加するたびにもっと研究に取り組みたい気持ちになって高専に帰ってきます。たまに、学会で精力的に研究をされている高専教員の方に出会うことがありますが、それにもまた励まされています。ところで「仕事と私事」の私事のほうですが、休日には料理や掃除、買い物をしています。買い物では「研究室にあると便利」「実験に使えそう」「授業で板書するときに腕を上げてもいろいろな部位がかくれる洋服」「数ページでも授業で活用できそうな内容が載っている本」が購入時の判断基準になっており、自分でもちょっと面白く思っています。最近は高分子の本がたくさん出版されており、とてもうれしいです。私が高専教員となって丸7年がたちましたが、今まで続けられたのは周りの方々のご協力のおかげです。これからも高専教員である限り研究にかかわり続けていきます。
688 ©2016 The Society of Polymer Science, Japan 高分子 65巻 12月号 (2016年)
先輩からのメッセージ ―仕事と私事―Messages: “Work and Life”
高専教員でも研究がしたい
山根説子沼津工業高等専門学校物質工学科
[410-8501]沼津市大岡3600講師,博士(学術).専門は生体材料,有機-無機複合材料.[email protected]