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視点移動が容易な月の満ち欠け確認ボード 山内 直樹 平成 28 3 23 日 版 1 ねらい、目的 月については、小学校では、観察を通して、月の輝いている側に太陽があること、月の形や見え方 は太陽と月の位置関係によって変わることを学んでいる。そのことをふまえ、中学校では、月の公転 により、太陽と月、地球の位置関係が変化し、月の形や見え方が変わることを理解させることが大切 となってくる。 太陽、月、地球の位置関係を考えるとき、生徒は、地球が自転していることすらあまり自覚したこ とがないうえ、地球上のある地点に立った状態で天体を観測しているといった実感がない。そこで、 月の満ち欠け確認ボードを活用し、地球を自転させたときに、観測者の位置から、月がどのように見 えるかを実際に確かめさせたいと考え、観測者の立っている位置に視点を移動させるための手立てを 組み入れた教材を作成した。 2 教材の内容 (1) 準備物 【100 円ショップで購入したもの】 ホワイトボード(28cm×38cm)1 枚、マグネットシート(A4)1 枚、マグネット(小)8 個 マグネットタックピース(長方形、正方形)各 1 個、マグネットピン1個、接着剤 【ホームセンターで購入したもの】 グロメット 172 円 【手芸店で購入したもの】 カシメ(大)1対、発泡スチロール球~直径 3cm(手芸店で購入)8 個 【自分で用意したもの】フィルムケース1個、月の満ち欠け確認シート(自作)、はさみ、カッター 【インターネット上のサイトから取りこんだもの】地球・・・・WEBサイト『世界地図を作ろう』 URLhttp://atlas.cdx.jp/projection/prj02.htm (使用許諾をもらっています) ホワイトボード マグネットシート マグネット() マグネットピン 216 108 108 108 グロメット カシメ(大) 月の満ち欠け確認シート 接着剤 172 257 36

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視点移動が容易な月の満ち欠け確認ボード

山内 直樹

平成 28 年 3 月 23 日 版

1 ねらい、目的

月については、小学校では、観察を通して、月の輝いている側に太陽があること、月の形や見え方

は太陽と月の位置関係によって変わることを学んでいる。そのことをふまえ、中学校では、月の公転

により、太陽と月、地球の位置関係が変化し、月の形や見え方が変わることを理解させることが大切

となってくる。

太陽、月、地球の位置関係を考えるとき、生徒は、地球が自転していることすらあまり自覚したこ

とがないうえ、地球上のある地点に立った状態で天体を観測しているといった実感がない。そこで、

月の満ち欠け確認ボードを活用し、地球を自転させたときに、観測者の位置から、月がどのように見

えるかを実際に確かめさせたいと考え、観測者の立っている位置に視点を移動させるための手立てを

組み入れた教材を作成した。

2 教材の内容

(1) 準備物

【100 円ショップで購入したもの】

ホワイトボード(28cm×38cm)1 枚、マグネットシート(A4)1枚、マグネット(小)8個

マグネットタックピース(長方形、正方形)各 1個、マグネットピン1個、接着剤

【ホームセンターで購入したもの】 グロメット 172 円

【手芸店で購入したもの】

カシメ(大)1対、発泡スチロール球~直径 3cm(手芸店で購入)8 個

【自分で用意したもの】フィルムケース 1個、月の満ち欠け確認シート(自作)、はさみ、カッター

【インターネット上のサイトから取りこんだもの】地球・・・・WEBサイト『世界地図を作ろう』 URL:http://atlas.cdx.jp/projection/prj02.htm (使用許諾をもらっています)

ホワイトボード マグネットシート マグネット(小) マグネットピン 216 円 108 円 108 円 108 円 グロメット カシメ(大) 月の満ち欠け確認シート 接着剤 172 円 257 円 36 円

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平成 28 年 3 月 23 日 版

地球

フィルムケース マグネットタックピース マグネットタックピース (長方形)108 円 (正方形) 108 円 (2) 作成手順

A 月の模型の製作

① ②

① 発泡スチロール球の半分を黒マジック、半分を黄色

マジックで8個分塗りつぶす。

半球のところに細いすじと小さい穴がある。

② 接着剤で、発泡スチロール球の中心部にマグネット

(小)を深く押し込むように接着する。(8個分)

B 地球(シート中心部)の作成

③ 添付の「台紙」を A3 用紙の大きさに印刷し、そこから

それぞれはさみで切り取る。

④ WEB サイトから取り込んで印刷した地球の部分をはさみ

で切り、のりしろに注意して、接着剤で地球からの視点

方位シートを貼り付ける。

⑤ 月の満ち欠け確認シートを下、地球を上にして重ね、

中心部をカシメで止める。

カシメ金具を使い、木づちで軽くたたき固定する。

下に固いものを敷くここを一番慎重に

完成(地球が滑らかに回転するように)

<表> <裏>

C 月の満ち欠け確認ボード本体の製作

⑥ 月の満ち欠け確認シートの裏面にマグネットタックピース

(長方形8個)を付け、ホワイトボードに固定する。

⑦ 太陽の光シートの裏面にもマグネットタックピース

(正方形)を8個付け、ホワイトボードに固定する。

<確認ボード本体のようす>

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平成 28 年 3 月 23 日 版 D 観測者の製作

⑧ フィルムケースの底の部分をカッターで切り落とし、上端から1cm ほどの位置に電気ドリルで

7mm 程度の穴を開ける。

⑨ マグネットピンを先端からその穴に差し込み、内側に入った先端部分にグロメットを通し入れ、

フィルムケースに固定する。

①底を切り落とす ②上端から1cmほどの位置に7mm程度の穴をあける

出来上がり(外側にマグネットピンの磁石の部分がくる> 穴の部分に少し押し込む形で差し込む。

E 月の画像の製作

⑩添付の「月の画像」をそれぞれはさみで切る。

これは、実際の形を確認するときに、

使用するもので、使わなくても構いません。

(3) 工夫・コツ

教材作成時に、だれでも、できるだけ手軽に、作成できるものになるよう心がけた。上の写真では

8個の月を用意したうえで、太陽が当たる面にも黄色を塗り、月の画像まで作成する形をとったが、

次のように簡略化して仕上げることも可能である。

月は1つだけにし、影のところを黒く塗りつぶす程度にすると、地球のシートと月の満ち欠け確認

シートの中央部をカシメ(画びょうでも良い)で1つに合わせ、マグネットピンとフィルムケースを、

グロメットを使わずに接着剤で固定すると、材料さえあれば1セット5分程度で誰でも作成できる。

完成した月の満ち欠け確認ボード 斜めから見たようす

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平成 28 年 3 月 23 日 版

台紙(月の満ち欠け確認シート、太陽の光シート、地球からの視点方位シート)~A3をA4に縮小している

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平成 28 年 3 月 23 日 版

月の画像(デジカメCanon EX-ZR300で約1ヵ月間かけて撮影~マグネットシートに印刷すれば利用しやすい)

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平成 28 年 3 月 23 日 版

3 教材の使用方法、活用例

この教材を作る際に意識した点を、具体的に挙げながら、説明する。

①観測者からの視点へと容易に移動

天体学習では、視点移動をスムーズに行わせ、自分がどの地点で、どのようにして観察している

かを、いかにイメージさせられるかがポイントである。月の満ち欠け確認ボードを使うと、地球、

月、太陽の全体的な位置関係と、地球のある地点から見たときの月の見え方を、自分自身で視点移

動しながら、容易に確かめることができる。

②観測者の視点に限定するためのフィルムケース

観測者から月を見るとき、どうしても全体が見えてしまうので、視点が

ぼやけてしまい、方位もはっきりしないため、フイルムケースをのぞきな

がら月模型を見ることにした。

③ 地球の自転や月の公転をふまえ、地球の時刻や月齢などを、具体的にわかりやすく表示

月が太陽や地球とどのような位置関係のとき、どの時刻に、どんな形で見えるのかを月の写真と

対比しながら、ボード上の位置関係から確かめることができる。

④ 視点移動のようすを全員で確かめられる

この月の満ち欠け確認ボードは裏に磁石が付いているので、移動式の大きなホワイトボード黒板

上に月の満ち欠け確認ボードをくっつけて固定できる。そのホワイトボード黒板自体を移動・回転

させることで、視点移動して、フィルムケースをのぞきながら月模型の見え方を全員で確認できる。

⑤ フィルムケースをのぞいて見える月模型を実際にカメラで確認

観測者に見立てたフィルムケースにあらかじめ購入した小型 Wi-Fi カメラ「Ai-Ball」を装着(大

きさがほぼ同じなので着脱が簡単)し、スマートフォン上の画像を HDMI ケーブルで TV に映すと、

フィルムケースをのぞいて見える月模型のようすを、確認する

ことが可能となる。iPhone などスマートフォンの設定から無線

LAN 設定を開き「Trek Ai-Ball」を選択。スマートフォンとカ

メラを接続した状態で専用 App の「Ai-BallAV Recorder」を開く

と、カメラが撮影した映像を、リアルタイムで見ることができる。

4 おわりに

天体の学習において、視点移動など、生徒に正しい空間概念を身に付けたうえで、総合的な見方や

考え方をさせるのは、それ相応の教材なり、教具が必要となってくる。ただ、忘れてはならないのは、

実際に天体を目で見ることである。月の場合、ほぼ毎日身近に見ることができ、毎日観測していると、

地球、月、太陽の位置関係なども、少しイメージできるようになる。教材も重要だが、やはり、自然

への直接的な働きかけが最も重要である。今回の教材が、直接体験への補助的なものとして、生徒の

理解を助け、正しい科学的認識や空間概念を身に付けることに役立てば幸いである。

予算(一人当たり) マグネットシート 108 円、ホワイトボード 216 円、マグネット小 8個入 108 円

発泡スチロール球(5個入り×2=328 円)、その他 40 円 合計概算で 800 円

【参考文献】 ・第 37 回香川県中学校教育研究会高松大会要項、平成26年11月

・萩原庸平・小林辰至、月の運行モデル教材と観測を組み合わせた学習が月の見え方の

理解に及ぼす効果、 上越教育大学理科教育学研究、Vol.50(2010)、pp.43-56