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模擬口頭審理の実演の見どころ
1.口頭審理の配置図、人物相関図、経緯
※この模擬口頭審理はフィクションであり、実在する、人物・事件・製品とは一切関係あり
ません。また、特許発明に関する技術内容は簡略化させています。
知財金属 代理人 瀧川
パテント技研 代理人 副島
特許庁 審判長 折田
右陪席 徳永、左陪席 阪脇
不参加
本人 知財金属
代表取締役 渋田
証人 知財金属 技術者 粕谷
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2.審理の対象となっている特許や証拠
(1)審理の対象となっている特許(出願日:平成29年3月1日)
発明の名称:高強度ドリル
特許権者:株式会社パテント技研
特許請求の範囲:
引張強度が650~750MPa(メガパスカル)、表面の硬さが180~
220Hv(ビッカース硬さ)である鉄系素材からなる、精密加工用ドリル。
(2)証拠(甲第○号証は、請求人が提出した証拠、乙第〇号証は、被請求人側
が提出した証拠を指します。)
甲第1号証
平成 28年 7 月 1 日に、パテント技研と知財金属との間で締結されたマイナ
スドライバー共同開発についての合意書(パテント技研と知財金属が、共同でマ
イナスドライバーを開発すること、知財金属はパテント技研以外に K4を売却
しないこと等が記載されている)
甲第2号証
新素材K4で製造されたマイナスドライバーに関する学会発表(予稿集)
講演予稿集の表紙 講演概要
甲第3号証
鉄系の線材を成形する技術を開示した一般文献(塑性加工に関するハンドブ
ックであり、当業者に周知されている)。切削加工によるドリル成形方法のみな
らず、様々な鍛造方法や、圧延方法、レーザー加工方法等が紹介されている。
第 123 回 機械加工学会
加工熱処理セミナー
講演予稿集
平成 28 年 12 月 24-26 日
於:竹静大学工学部
A 会場 12/25 10:00-10:30
高強度、高硬度の鉄系材料を
利用した工具の製造
株式会社パテント技研 三輪 長重
有限会社知財金属 粕谷 丈典
概要:高強度、高硬度を有する鉄系の線材を利用
した強度に優れる工具(マイナスドライバー)の
製造に成功した。鉄系の素材として、工具用に新
たに開発した引張強度700MPa、硬さ200
Hvを有する線材を利用した。・・・
<以下、省略>
3
乙第1号証
知財金属が開発したK4の技術説明資料(プレゼンテーション資料)
<スライド1>
<スライド2>
4
3.今回の見どころ(無効理由について)
(1)無効理由1について
無効理由1:本件ドリル発明は、パテント技研が単独で特許出願したものである
が、その素材として知財金属の新素材K4を利用しており、パテント技研と知財
金属との共同発明と呼べるものであるから、パテント技研が単独で特許を受け
ることはできない(特許法38条、特許法123条1項2号に違反)。
<無効理由1の見どころ>
パテント技研と知財金属とは、新素材K4を利用した工具の開発を共同で行
っているが、甲第1号証の合意書にあるとおり、契約上はマイナスドライバーの
開発を共同で行う点に合意されているのみであり、ドリルを共同で開発するこ
とに合意した確実な物証はない。
本人(知財金属の代表取締役)の供述から、本件ドリル発明が、共同開発され
た物といえるのか。
(2)無効理由2について
無効理由2:甲第2号証(学会発表の予稿集)に記載された発明(新素材K4で
製造されたマイナスドライバー)と技術常識(甲第3号証)に基づいて、新素材
K4をドリルの素材として用いることは容易。K4を利用したドリルの効果は、
K4の諸特性から想定される範囲のものであり、格別顕著な効果は無い(特許法
29条2項に違反)。
<無効理由2の見どころ>
証人(新素材K4の開発者)の証言、甲第2号証及び甲第3号証を踏まえて、
新素材K4のドリルへの応用の可能性を、どのように立証しようとするのか。
技術説明(プレゼンテーション)(乙第1号証)において、被請求人がどのよ
うな論理で証人の主張に反論をするのか。
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4.口頭審理の進行
① 開廷
② 出頭者の確認
③ 本日のスケジュールの確認
④ 発言についての注意事項
⑤ 提出書類の確認(実演は省略)
請求人側が提出した甲第1~3号証の確認を行う。
⑥ 当事者の主張の概要(実演は省略)
⑥-① 請求人の主張の概要
請求人は、本件特許の請求項1に係る特許は無効とすべきものである旨主
張する。
⑥-② 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件審判請求は成り立たない旨主張する。
⑦ 争点の整理・確認、当事者尋問及び証人尋問
無効理由1(共同出願違反(特許法38条、特許法123条1項2号))、
無効理由2(進歩性(特許法29条2項))について
⑦-① 争点整理・確認の開始
⑦-② 口頭審理の中断・当事者尋問及び証人尋問
本人及び証人が宣誓書を朗読
本人:共同出願違反について供述
証人:進歩性について証言
⑦-③ 口頭審理の再開
被請求人による技術説明(プレゼンテーション)(進歩性を主張)
⑦-④ 合議体からの確認事項
⑧休廷、調書案作成
※今回の模擬口頭審理では、調書記載事項のポイントの投影を行いますが、実
際に投影を行うか否かは、事案と合議体の判断次第です。
⑨口頭審理の再開
⑩閉廷