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転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

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転生者夕立、現代ニ帰還ス

祝とうか

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【注意事項】

 このPDFファイルは「ハーメルン」で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので

す。

 小説の作者、「ハーメルン」の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を

超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。

  【あらすじ】

 とある鎮守府に所属している夕立は、異世界からの転生者であった(しかし元男)。

 彼……もとい彼女はとある作戦に参加していた。

 その作戦行動中、謎の光に包まれた夕立は……気が付けば、再び異世界へとやってき

ていた。

 それも、自分が元々生きていた、現代の日本へと。

  これは「艦隊これくしょん」というゲームキャラに異世界転生した主人公が、夕立の

姿のままでまた逆転移してしまった現代世界で生きる話です。何故こんなものを書こ

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うと思ったのか。

 更新期間不定期。二次創作は7年振りなので稚拙ですがお許しください。

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  目   次  

夕立(中身転生者)、現代世界に帰還する

───────────────

 

1

夕立(中身転生者)、前世の日本だと知る

───────────────

 

9

夕立(中身転生者)、ショッピングで彼ら

───────────

と出逢う 

22

夕立(中身転生者)、営内を歩く 

──────────────────────────────────────────

37夕立(中身転生者)、詰め寄られる 

──────────────────────────────────────────

55夕立(中身転生者)、壮馬をいじる 

──────────────────────────────────────────

71

夕立(中身転生者)、鎮守府を語る 

──────────────────────

87夕立(中身転生者)、壮馬達の仕事を知る

───────────────

 

103

夕立(中身転生者)、事態が進む 

──────────────────────

121

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夕立(中身転生者)、現代世界に帰還する

 「……ぽい?」

  気が付けば、自分は海の上に立っていた。

 つい最近まで激闘を繰り広げていたような、見知った真っ赤な海はどこにもなく、た

だひたすら、穏やかにどこまでも広がっている青海だけがそこにあった。

 「……ここ、どこ?」

  確か、ついさっきまで連合艦隊第一機動部隊の随伴として捷一号作戦に参加、激闘の

果てに深海鶴棲姫を沈めることに成功したことに皆で歓喜していたはずだが……。

 周りを見渡したところで、仲間らしき姿はどこにも見当たらなく、それどころか、深

海棲艦の気配すら全く感じない。

 そういえば、最後に撃沈しかけていた深海鶴棲姫の持つ艤装らしきものの残骸から、

変な光が溢れ出てきて意識がなくなって……。

1 夕立(中身転生者)、現代世界に帰還する

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 「もしかして、あの光が原因っぽい?」

  現状を考えるのならそうとしか考えられないものだが、些か超常的すぎて信じ難い部

分が大きすぎる。

 まあ、そんなことを言ってしまえば艦娘や深海棲艦、妖精さんだってどう考えてもオ

自・

分・

に・

と・

っ・

て・

は・

ゲ・

ー・

ム・

キ・

ャ・

ラ・

で・

あ・

る・

と・

認・

識・

し・

て・

い・

カルトの塊のような存在だし、何より

る・

存・

在・

に自分がなってしまっているのだから今更なところではあるのだが。

  話は変わるが、私……いや、俺は、元々は何の変哲もない、どこにでも居るような男

子大学生だった。

 別に家族関係や友人関係に特別なことがあったわけでもないし、強いて言うなら「艦

隊これくしょん」通称「艦これ」というゲームが大好きなだけの、本当にどこにでも居

るような一般人Aと言ってもいい。

 そんな自分が、今では白露型四番艦「夕立」として同じ艦娘仲間と共に日々深海棲艦

と戦っているのには、それはそれは壮大な理由が……あるわけでもなく、ただ気付けば

自分の身体が夕立のものになっていた、それだけだった。

2

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 思えば、あの頃も気付いた時には海の上に立っていた。

 とはいえ現状とは理由が違っており、あの時は深海棲艦を倒した時に「ドロップ」し

たのが自分だったというだけだったのだが。

 まあそんなこともあり、夕立として過ごすこと3年が経ち、その後に所属した舞鶴鎮

守府ではエースの一角として常に前線を立ち回ってきたわけだが、そこはそれ。

 艦娘達の活躍により制海域は俺が着任した当時とは比較もできない程に拡げること

ができ、ついに日本周辺において最も深海棲艦の活動が活発だったレイテ沖を攻略すべ

く、あらゆる鎮守府の艦隊と連合を組んで発令された捷一号作戦に参加し、見事に成功

……そして、今に至る。

  なるほど、分からん。

 「……! 電探に反応あり! 方角は北東、距離およそ9000!」

  どういうわけだと思案しながらも、ふと電探の反応を確認してみると、大型の反応を

1つ確認することが出来た。

 自分の他に誰も居ないというのについ艦隊行動時の癖が出てしまったが、もう3年間

3 夕立(中身転生者)、現代世界に帰還する

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ずっと繰り返してきたのだから仕方がないことだろう。

 それよりも、この反応体の大きさが気になって仕方がなかった。

 これだけの規模の深海棲艦は戦艦や空母にも存在しない……かと言って、艦娘という

のは有り得ない。

深・

海・

棲・

艦・

が・

出・

現・

し・

て・

か・

ら・

役・

立・

た・

ず・

に・

な・

っ・

た・

実・

際・

の・

駆・

逐・

艦・

か・

ら・

巡・

洋・

艦・

 それこそ、

と同じ

くらいの大きさはある。

 しかし、こんな時勢に艦娘の護衛もなしに艦船が航行しているというのはどういうこ

とだろうか。

  行く宛もなかったこともなかったこともあり、ある程度警戒しながらもその場で待機

していると、やはり思っていた通り、恐らく軽巡ほどのサイズであろう艦船がこちらに

接近していた。

 ただ、なんだろう、その艦船に搭載されている装備に違和感が……?

  呆然としていたところに、見知らぬ艦船がおおよそ500メートル離れた地点に停泊

した。

 そして動きの止まった艦船からいきなり光が放たれたかと思うと、点滅を始めた……

4

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そして気付いた、これはモールス信号であると。

 その内容を大まかに意訳すると「ヘリ着水。搭乗の後、武装解除されたし」とのこと

だった。

 そういえば、と今の自分は作戦中の装備のままであったことを思い出した。

 ちなみに現在の装備は12.7cm連装砲C型改二が2つにSGレーダーと、非常に

火力に特化した装備となっており、自慢ではないが、うちの鎮守府の装備はかなり新し

いものを揃えられていると思う。

 少しだけ待っていると、指示の通り、ヘリが飛んできているのが分かった。

 何故わざわざ俺を乗せるためにヘリを着水させるのかも分からない。

 ただ、ヘリの構造を見る限り着水に特化した設計ではないように見えることもあり手

間をかけるようで気が引けるが、艤装はかなり重いから恐らく縄ばしごだと荷重に耐え

られずに切れてしまうだろうから、割り切るしかない。

 少しして、着水したヘリに乗り込むと、1人の兵士がこちらに拳銃を突きつけて警戒

していた……拳銃だって?

 何やらおかしいと思いつつ、その後は指示通りに艤装を取り外し兵士達へと預ける

と、2人がかりでもものすごく重そうにしていてすごく申し訳ない。

 それから再び浮上したヘリは、艦上の甲板へと降り立った。

5 夕立(中身転生者)、現代世界に帰還する

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 そして艦に下りた先には、第二種軍装を纏った老年の男性と、その後ろには彼とはま

た別の軍装をしている兵士達が整列していた。

 前の男性とは別に簡易的な白い海兵服を着た搭乗員達が集まってざわめいており、恐

らく件の男性の階級が一番高いことを伺わせている。

 歳も見た目では周りの乗員と比較して一回り老けており、目測40超かそこらだろう

か、恐らく艦長かそれに近い役職であると推測出来る。

 それにしてもこの制服、どこかで見たような……?

  ぼうっとしていると、例の艦長さん(仮)が一足分前に歩み出る。

 「突然の乗船指示に訳が分からず困惑していることと思う。すまないとも思っている

……」

「ぽ、ぽいぃ?」

  いきなり艦長さん(仮)に頭を下げられたことでつい変な声が出てしまったが、正直

これは夕立としての性だから仕方がないだろう。

 それよりも、今の声で後ろの人達がクスクスと小さく笑い出したり、逆に目を見開い

6

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て唖然としている人が気になって仕方がない。

 艦長さん(仮)がひとつ咳払いを入れると、途端に静まりかえった。

 

但野湊

ただのみなと

「失礼、先に自己紹介をしようか。私は

。階級としては2等海佐をもっており、こ

の艦、護衛艦はるさめの艦長をしている」

  なるほどやはり艦長だったらしい……2等海佐? 護衛艦はるさめ?

 ……おかしいなぁ、その名称を聞いたのは本当にはるか昔、夕立になる前な気がする

んだが、気のせいだよね?

 「更に、だ。つかぬことを聞くが……さっきまで海に浮かんでいたように見えたが、私の

こ・

ち・

ら・

の・

節穴ということでいいのだろうか。それに、君の容姿や服装はどうにも

とある

ゲームキャラに酷似しているようなのだが、君はそのことについて何かを知っているの

かな? そこのところも含めて、君のことについて色々と知りたいのだがな」

  じっと何かを窺うようにして見つめる艦長さん……但野2佐に見つめられた俺は全

てを察してしまい、混乱しながらも反射的に海軍式敬礼を取っていた。

7 夕立(中身転生者)、現代世界に帰還する

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 「白露型駆逐艦、夕立! 今日も頑張るっぽい!」

  拝啓、提督さんへ。

 どうやら俺、こと夕立は、またもや異世界の日本に来てしまったようです。

  ……提督さん、夕立、どうすればいいっぽい?

8

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夕立(中身転生者)、前世の日本だと知る

  挨拶を済ませた後のこと、但野2佐と2人きりで艦長室に移動し、情報のすり合わせ

を行っていた。

 おかげで、この世界について色々と知ることが出来た。

 まず、夕立が立っていた地点は横須賀沖150キロ程の距離にある太平洋であり、比

較的陸地には近かったようだ。

 ただ、何故比較的南方の海であるレイテ沖からこんなところまで飛ばされてしまった

のか、これがよく分からない。

 俺としては気が付けばあそこに立っていたから分からなかったけど、横須賀基地側か

らは海にいきなり光の柱が立ったと思えば、突然近海にごく小さなレーダー反応が現れ

たから確認のためにやってきたら、俺が居たらしい。

 羅針盤も持っていなかったわけだしおかげで助かったというのはあるが、艦これ世界

では艦娘は電探に反応しなかったのにこっちでは反応があったのには不思議である。

 もしかしたら、これが現代技術の力なのかもしれない。

 

9 夕立(中身転生者)、前世の日本だと知る

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 また、明言はしていなかったものの俺が夕立とバレたのもまあ頷ける。

 俺が居た世界通りであるならば、艦これと海上自衛隊はコラボもやっていたはずだか

らだ。

 それに、どうやらこの但野2佐自身も艦これのプレイヤーだったらしく、護衛艦はる

さめの乗員にもそれなりにプレイしている人は居るらしい。

 さっきの反応はそういうことか、と苦笑を浮かべる。

 正直、最初の邂逅がまだ艦これに理解のある自衛隊であって本当に良かったと思う。

 旅客船とか漁船とか、民間の船と鉢合わせていたらきっととんでもない騒ぎになって

いたに違いない。

  更に話を続けていくうちにこの人は信用出来ると判断した結果、俺は但野2佐にだけ

異世界転生する前から夕立として生きてきた艦娘生まで、全ての事情を話すことに決め

た。

 転生、などと荒唐無稽なことを信じるかどうか、いい所半信半疑で留まるだろうと

思っていたのだが、事のほかすんなりと信じてくれた。

 なんでも、そもそも艦娘という明らかにファンタジーな存在が今ここに居るのだか

ら、転生も有り得ない話ではないだろうというのが彼の言。

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 それもそうか、と納得した。

 「そういえば、君の語尾にもゲームの夕立と同じく、ぽい、というのがついているが、こ

れはいわゆる役なのかな?」

  そう言われた自分の顔はきっと真っ赤だったことだろう。

 実のところ、まだ夕立になったばかりの当初から、ここまでしっかりと板についた夕

立の挙動をしていたわけではない。

 最初の頃はまだ語尾の「ぽい」は多少意識すればなくても会話は出来ていたし、なん

なら男だった頃のような話し方だって出来なくはなかった。

 ここまで挙動が夕立になってしまったのは、ひとえに、練度が上がってより夕立とし

ての完成度が上がっていったのと、何より「改造」を受けたことが最大の要因だった。

 言ったわけでもないのに何故だか自分の事情を知っていた妖精さん曰く、「夕立に

なった頃はまだまだ人間だった頃の魂の名残が残っていたが、改造を受けたことで魂が

艦娘の器としての身体により定着してしまったことで、魂そのものが艦娘のものに近く

なってしまった」からだという。

 確かに改造前はまだ男としての自覚が残っていたのにも拘らず、一度目の改造後には

11 夕立(中身転生者)、前世の日本だと知る

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もう女としての振る舞いにも不自然さはほとんど残っていなかったし、更にはあくまで

ゲームキャラとして認識していたはずが、改造したことでかつて大戦時に駆逐艦だった

頃の記憶まで一部引き継いでしまっていた。

 改二改装まで至った今ではもう魂の9割9分が艦娘になっているらしく、大戦時の記

思・

い・

出・

し・

て・

い・

る・

憶は全て完全に

し、男の頃の記憶なんてものはあくまで記録として捉え

るようになっていた。

 ただ、だからといって前世の自分が他人のように見えるようになったとか、そんなわ

けではなく、あくまでも「自分は昔は男だったが、今は夕立である」という意識が根強

いというだけなので、そこは安心してもいい。

 ただ、男だった頃は物静かとは言えないものの馬鹿騒ぎするほどやかましい性格じゃ

なかったのに、今では子供のようにはしゃいだり、やたらと甘えたがったり、戦闘にな

ると「狂犬」なんてあだ名が付けられるほどに暴走してしまうようになったのは、正直

今でももの恥ずかしいものである。

  さて、これまで但野2佐と互いに色々な話をつつきあって、ひとつ違和感を感じてし

まった。

 それはこの国の首相……総理大臣の名前を聞いて思ったこと。

12

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春野公彦

はるのただひこ

 現在の総理の名前は

という名前だと聞かされ、ここであることに気がつい

た。

 前世の日本……自分が男だった頃に生きていた首相の名前と、全く同じだということ

に。

  いや、そんなまさか……。

 なんて思ったものの、万が一ということもあったためそのことを但野2佐に尋ねてみ

ると、確認を取ってみるから名前を教えて欲しいと言われたので答えられるだけのこと

は答えていった。

蒲原喜人

かんばらよしと

 ちなみに、前世の俺の名前は

という。

 ちょっと珍しい名前だけに、すぐに答えは見つかった。

 「喜べ夕立。君が居たという痕跡が見つかったぞ」

「全くもって喜べないっぽい……」

  但野2佐の持っていた携帯端末で軽く調べて見たところ、3年前に俺と同姓同名の男

子大学生が神隠しが如く行方不明になったというニュースがあったらしく、俺が異世界

13 夕立(中身転生者)、前世の日本だと知る

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に転生したのも3年前だったということもあり、見事にここが俺にとっての本当の故郷

であることが証明されてしまった。

 ついでに異世界とこの世界の時間の流れが同じだったという事実も分かったが、そん

なことは普通にどうでもいい。

 「夕立には、家に帰ってみたいって気持ちはないのかな?」

「うーん、無いわけでは無いっぽい……」

  正直言うなら、帰りたい気持ちは少しだけある。

 ただ、それ以上に、あまりにも恥ずかしすぎるだけなのである。

 普通に女の子になっただけならまだ半歩ほどは譲って気恥しい部分は大分緩和出来

ただろう。

 だが、よりにもよって存在するゲームキャラ……しかも、一部ユーザーからは馬鹿っ

ぽいキャラ、甘えたがり、などなどどう考えてもかつて男子大学生であった自分には受

け入れ難いキャラになってしまっており、しかもまさに今の自分の性格や挙動がそれで

あることを自覚しているからこそ、家族や友達には今の姿を見られたくはなかった。

 家族や友達の前でぽいぽい言って笑われるのは勘弁がすぎる。

14

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  それに、もう一つ懸念点がある。

 俺の左手の薬指にはめられている銀色の指輪。

 そう、艦これユーザーなら誰でも理解出来るであろうそれ……「ケッコンカッコカリ」

の指輪だ。

舞鶴鎮守府

 自慢ではないが、俺の練度は

でも五指に数えることが出来るくらいに高い

……決して、自分から積極的に出撃や演習に出してもらうよう提督さんにねだったわけ

ではない、断じてない。

 とにかく、それだけの高練度なだけあって、俺の練度は既にケッコンカッコカリが出

来るほどに高くなってしまった、というわけだ。

 ということは、その指輪を渡してきたのも必然的に提督さんであるというのは当然の

こと。

 そしてうちの提督は……男である。

  家族から見たら、きっとこんな風に映ることだろう。

 「息子が行方不明になったと思ったら娘になって、しかも異世界の男と結婚して帰っ

てきた」と。

15 夕立(中身転生者)、前世の日本だと知る

Page 20: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

 恐らく、友人達も総じて爆笑することだろう。

 ……間違いではないだけに、余計に腹立たしくなってきた。

 「いいじゃないか、今の君なら首輪がついてても皆納得出来ると思うぞ」

「余計なお世話っぽい。というか、首輪って言わないでほしいっぽい」

  さっきからしきりに指輪に目が行っているのを目敏く見られていたのだろう、ニヤニ

ヤした表情でからかわれてしまった。

 ここで取り付く島もないとばかりに流せたら良かったのだろうが、ど正直と言っても

いいこの身体では頬を膨らませて反論してしまう。

 これのせいで、提督さんにはいつも頬を指で突かれながら笑われたものだった。

 案の定、但野2佐にも苦笑いされてしまった。

 「一体この様を見て、本当に前世が男だったなんて信じられんな……おっと、どうやら港

に着いたようだぞ。ほら、ついて来なさい」

  反論しようとしたが、但野2佐はとりあう前に誤魔化すようにして立ち上がった。

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 本当に着いたのか? とも思ったが、つい先程無線が入っているのも確認していたた

め、嘘ではないのだろう。

 悪運の強い男である。

 仕方がないので着いていこうと思い立ち上がったら、但野2佐はふと思い出したかの

ように「おお、そうだ」と呟いたかと思うと。

 

日野壮馬

「君の親友の一人、

は私の甥でね。いつか絶対に君と引き合せるから、その心づ

もりでいるように」

  とんでもない爆弾を落としてきた。

 「……っぽい!?」

  但野2佐の言う日野壮馬とは中学生の頃から常につるんでいた親友で、軍事的なもの

……特に軍艦のことが好きな、俗に言う軍艦オタクであり、そして俺に艦これを勧めて

きた元凶にもなったやつである。

 もしや、あいつがあそこまでに軍艦に傾注していたのはこの叔父である但野2佐のせ

17 夕立(中身転生者)、前世の日本だと知る

Page 22: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

いではなかろうか……そういえば、この人も艦これプレイヤーとも言っていたし。

 それよりも壮馬の艦これの熱中具合は本当に半端ではなかった。

 聯合1位を取ったこともあるくらいのガチガチの廃人だったあいつに、今の姿で会う

のは正直やばすぎる気がしてならない。

駆逐艦が嫁

 せめてもの救いは、

ではない、ということくらいか。

 いずれにせよ、あいつのことを考えるのは会った時の自分に丸投げすることにしよ

う。

 今は考えたくないだけ、とも言う。

  搭乗口へとやってくると既に架橋がかかっており、確かに到着していたようだ。

 昔、友人達と共にちらと遠目で見た時と変わらぬ横須賀軍港の様相に、やはり現代の

日本に帰ってきたのだと改めて実感させられた。

 港へと下り立つと、敬礼をとりながら整列する自衛官達と、どこからどう見ても重鎮

であろう2人の老人が列の前に立っていた。

 彼らの姿を認めるなり、但野2佐も敬礼を返したので、俺も慌てて返礼をとる。

  どういうこと? と内心パニックになっていると、老人達が微笑みを浮かべて近寄っ

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Page 23: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

てくる。

 

朝凪政義

あさなぎまさよし

「君が件の子、夕立君だね? 私は

。防衛大臣をやらせてもらっている。隣の

柚原徹

ゆのはらとおる

彼が

海上幕僚長という。よろしく頼む」

「朝凪大臣の仰った通り、柚原徹です。よろしくお願いしますね」

「し、白露型4番艦、夕立です! よろしくお願いしますっぽい!」

  まさに重鎮中の重鎮、大本営で言うなら元帥と大将の来訪にどうしようもないほどの

緊張が身体を走る。

 そのせいで震える声を張り上げるように挨拶を返してしまうが、どうやら無礼にはと

られなかったようで、むしろ彼らには笑われてしまった。

 それには、少しだけ安堵することが出来た。

 ほんの少しだけど。

 「そこまで硬くならなくたっていい。この国、日本国は基本的に身分は平等を謳ってい

る。自衛隊こそ上下関係には厳しくしてはいるが、君は軍属ではない。君と私に、上下

の関係など一切ないのだよ」

19 夕立(中身転生者)、前世の日本だと知る

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「そうですよ。そもそも、規律にも無礼打ちなんてものはないですから、別に法律の範囲

内であれば何をしようと私達に君を罰する権利なんてないんですから」

  そうは言われても、やっぱり異世界の経験のせいで、緊張を解くことなんて出来そう

もない。

 あの世界の元帥や大将は……なんというか、怖い人が多かったし……。

 縋るように隣に立つ但野2佐に視線を向けてみるが、無理だとばかりに小さく首を横

に振られてしまった。

 あまりに階級が違いすぎるためどうしようもないとは分かっていたが……小刻みに

肩を震わせて笑ってるのを、俺は見逃さなかった。

 あとで演習仕様のペイント弾の的にでもなってもらおうか……。

威圧思い込み

 そのためにも、今は目の前にそびえ立つ雲の上の存在と言うべき御二方からの

どうにかやり過ごさねばならない。

 仕方ないか、と肩を竦める朝凪大臣と依然変わらぬ微笑を浮かべる柚原幕僚長。

 しかし、どう反応すればいいのかと途方に暮れるしかなかった自分に、朝凪大臣から

ふと、呟くようにしてひとつの提案を出された。

 

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Page 25: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

「ふむ、そうだな。折角横須賀に来たのだから、但野2佐とショッピングに行ってはどう

かね?」

「ぽい?」

  威厳を感じさせられる老人の口から放たれた意外な提案に、緊張も忘れて目を丸くし

ながら、ついいつもの口癖が出てしまうのだった。

21 夕立(中身転生者)、前世の日本だと知る

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夕立(中身転生者)、ショッピングで彼らと出逢う

  結局、何が何だか分からないうちにショッピングに行くことが決定してしまい、但野

2佐によって手を引かれるような形で近くのショッピングモールへとやって来てし

まった。

  基地内でのこと。

 俺が「人間」としてこの日本で生きられるように戸籍を用意してくれるらしく、住む

場所に関しては自衛隊営内の寮を使わせてもらうことになったのだが、服などの生活用

品だけは流石に向こうで用意することは出来なかったようだ……まあ、艦これはキャラ

クターデータはほとんどないゲームだったし、仕方ないね。

 住むにあたって手伝って欲しいこともあるそうだがまあ、駄目なら駄目でいいらしい

から非人道的なことやいかがわしいことをされるなんてことはないだろうし、そこはい

いとして。

 そこまでいたれりつくせりでいいのだろうか、なんて思っていると、いきなり但野2

佐が俺の頭に手を置いたかと思うと「子供なんだから、そんな難しく考えなくても素直

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Page 27: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

に受け取っておけばいいさ」と言われてしまった。

  ……言っていることは確かに格好いいし、普通ならその通りなんだけど、俺、もうとっ

くに成人年齢は超えているんだが?

 なんて野暮なことは言わないでおくことにしよう。

 わざわざほじくり返す必要も無いし、どうせ子供云々でなくてそれ以外の面を鑑みた

上層部の決定であることには違いないわけで、彼にそんなことを言ったところでただ傷

を弄るだけにしかならないのだ。

 まあ、それはおいておくとして、生活用品の中でも特に必要になるものと言えば、や

はり服だろう。

 ファッション的な要素以前に、そもそも着替えにはひとつたりとも持ち合わせがない

というのが現状であり、もちろんここが自衛隊海軍基地である以上、元より女性隊員自

体が割合的に少ないというのに、そこから私と同じサイズの予備を持っている人なん

て、当然居るはずがない。

 また、着替えがないというのも正直かなりの大問題ではあるのだが、それ以上に、今

俺が着ているのが「白露型の制服」であるというのがよっぽどの問題だろう。

 何しろ、亜麻色の長髪に赤い目の見た目というだけでもとんでもなく目立つというの

23 夕立(中身転生者)、ショッピングで彼らと出逢う

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に、この制服に語尾が「〜ぽい」なんて、どこからどう見ても変な勘繰りをする人が出

てくることは間違いない。

  しかし……とふと思ったことがひとつあった。

 「じゃあ、今から行く買い物に着る服はどうするっぽい?」

「無論、そのままだが?」

  いや、それ絶対目立つやーつ……。

 俺的には目立つのはあんまり好ましくないんだけど……。

 特に横須賀周辺ともなれば艦これ関係のものが色々と衆知しているし、何より聖地の

提督

プレイヤー

ような感じで

が集まりやすい場所でもあるから、とんでもなく厄介なことになるの

ではないだろうか。

 「夕立、あんまり悪目立ちしたくないっぽい」

提督

プレイヤー

「諦めろ。お前、これからも外に出ないつもりか? 大体、本当に

共の目を服装変

わったくらいで誤魔化せると思うか? その語尾と特徴的な髪だけでもう充分分かる

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人には分かるだろう。どうせ今ならまだコスプレイヤーで誤魔化せる部分もあるだろ

うし、それなら、今のうちにある程度一般にも姿や存在を認知させておけば、後で公表

された時も受け入れやすくなるし、わざわざ自衛隊基地に人が押しかけてくる確率も少

なくなると考えたら、むしろ今のうちに姿を晒す方がいい」

  うーん……確かに言ってることはあってるのかもしれない。

 どれだけ服を変えようが目立つというのは……まあ、そもそもの髪色と目の色だし

な。

 ゲーム内でも期間限定別衣装とかもあるわけだし。

 せめて改二じゃなかったら色々と誤魔化せたところもあるんだろうけども。

 というか、公表するつもりなのか。

 まあ、この身体は色々と抑えがきかないから窮屈に過ごして面倒なことになるなら、

いっそオープンにした方がいいか。

 上層部がその点を考慮しての決定なのかどうかは不明なところであるが。

 「それに……事情を聞かされた私の考えとしては、もしかしたら、お前の仲間も来ている

可能性もあるだろう? それなら、お前の居場所はある程度分かっている方がいい」

25 夕立(中身転生者)、ショッピングで彼らと出逢う

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「あ……」

  そんなことを言われて、ようやくその可能性もなくはないことに気が付き、愕然とし

た。

 言われてみれば、あの光を見たのは自分だけではない。

 むしろ、あの場にいた艦隊全てに可能性があると言ってもいい。

 どこの海に飛ばされたかにもよるだろうが、きっと艦娘が突然こちらの世界へと身一

つで投げ出されてしまえば、きっと路頭に迷うことだろう。

 だって、この世界には深海棲艦という存在は居ないのだから。

 実質、この世界に艦娘の存在意義は……ない。

 「そういうことだ。しかし、まだ可能性の域でしかない。よって、艦娘という存在が生き

られる地盤を築いてやるのがお前の役割だ。ほら、行くぞ」

「ぽいっ!?」

  こうして、但野2佐によって俵抱きされた俺は半ば強引に自衛隊併置の車に乗せられ

るとそのままショッピングモールへと向かい、今に至るというわけだ。

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 このショッピングモールには、以前にもそれなりに来たことがあった。

 俺や親友達は揃って東京郊外に住んでいたわけだが、高校生に上がってからというも

の、バイトなどで自分でお金が稼げるようになってからは活動範囲が一気に広がったこ

ともあり、横須賀には度々くるようになっていたからだ。

 元々、俺達はミリタリー関係の繋がりで仲が良くなったのが始まりだった。

病的なオタク

 

がぶっちぎっているとは言っても、やはり皆軍艦も好きなジャンルであ

ることには違いなかった。

 観艦式にだって参加したこともある。

 だからこそ、もう来慣れているはずのショッピングモールに来たところで今更問題な

んてものはない。

 そう思っていたのだ。

  しかし現状はどうだろうか。

 耐え難いほどの恐ろしい数の視線に晒され、俺は但野2佐の背中に張り付いたままと

なっている。

 「……」

27 夕立(中身転生者)、ショッピングで彼らと出逢う

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「……せめて隣にしてくれないか? どうにも、歩きづらいのだが」

「いや、っぽい」

  息を吐いてやれやれと肩を竦める但野2佐。

 艦これとて一コンテンツ、聖地に近い場所であるとはいえ、流石にそこまで知ってい

る人は居ないだろう。

 そう思いながらいざ来てみるとこのザマである。

 正直、付近の人達ほぼ全員が俺の方を見ているのではないだろうか。

 そもそも、俺達艦娘は元々滅多に外に出ることはない。

 必要なものは全部酒保で事足りるし、何より艦娘自体は民衆にも明らかにはなってい

たとはいえ、存在自体はいわゆる軍事機密だったから、外出するだけでも手続きは厳し

く、また、提督さんや鎮守府所属の憲兵さん達の随伴が必要だったからだ。

 仮に外出したとしても、艦これ世界はシーレーンのほとんどが断絶されてしまってお

り、また空路も対空射撃の憂き目にあってまともな貿易が出来なくなってしまっていた

ために、日本の技術も数十年単位で衰退していたこともあり、ショッピングモールのよ

うな巨大建築物をそこかしこにぽんぽん建てられるような技術力や資材が不足してい

たようだ。

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 更に鎮守府近くはおしなべて海沿いであるということからも、深海棲艦を恐れてかな

りの人が内地へと引っ越してしまった。

 おかげで、俺も含めて艦娘というのは多くの視線というものに慣れていないのだ。

 なまじ鋭い艦娘の感覚を持っているせいで、見事に凝視されているのが分かってしま

い、余計に視線を怖く感じるようになっていた。

 無意識に但野2佐の袖を掴んでいたらしく、堪らず俺は袖を引きながら、見下ろす彼

へと懇願するように言ってしまっていた。

 提・

督・

さ・

ん・

、早く買い物全部終わらせて、帰ろう?」

「……あ、ああ。分かった」

  但野2佐は何かに耐えきれなかったかのように咄嗟に目を逸らしながらぶっきらぼ

うにそう言った。

 小さく何かを呟いていたみたいだが、俺にはなんて言っているかは聴きとることは出

来なかったが、まあはっきり言わなかったということは些細なことなのだろう。

 おかしな反応だな、と思いながら首を傾げながら周りを見てみると、何故か何人か身

体を震えさせていたが、やっぱりよく分からなかった。

29 夕立(中身転生者)、ショッピングで彼らと出逢う

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  最初に連れられたのは案の定、服飾店であった。

 来たのはいいがレディース専門店だったようで、入るなり但野2佐は「頑張れ」と簡

潔に言葉を残して店から出てしまった。

 ファッションセンス皆無な俺に服を選ばせるか、と男である但野2佐に謂れのない怨

恨を向けながらも服を選ぼうとするが、やはりどうすればいいのか分からない。

 ……さっきから、やたらと目をキラキラさせてこちらを見る女性店員さんに頼んだ方

が良さそうだ。

 自分で服を選ぶのを諦めてキラキラどころかギラギラに近くなっている店員さんに

服の合わせをしてほしい旨を伝えると。

 「分かったわ! お姉さんに任せなさい!」

  と、女性店員は何やら雷みたいなことを言いながら自信ありげに胸を叩いた。

 ……よく見ればこの店員、見た目も結構雷に似ている。

  このパターンは着せ替え人形にされるのではないだろうか、と思っていたのだが、意

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Page 35: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

外と雷似の店員さんが持ってきたのはしっかりピックアップした何着かだけだった。

 そのことについて言ってみると、店員さんはきょとんとした表情をしながら「別に言

われた訳でもないのに、名前も知らない赤の他人のお客様を着せ替え人形にするのは失

礼じゃない」と返されてしまった。

 至極真っ当であった。

  流石に財布を持っている但野2佐が居ないと話が進まないので彼も呼んで、金銭面も

考慮しながら着替え用に何着か購入し、店を出た。

 ちなみに今の服装は白のブラウスの上に小さくレースのついた薄茶の袖なしワン

ピースといった出で立ちである。

  それからの買い物は、思いのほかすんなりと進んでいった。

 途中、スマホの契約までしてもらったことで財布を心配したが、但野2佐に「大丈夫

だ、買い物のお金は全部幕僚長の財布から出ているからな」ととてもいい笑顔で言われ

てしまったので、何か言う気も失せてしまった。

 ただ、柚原幕僚長には帰ってからお礼を言おう。

 そんなこともあって、気が付けば視線にも慣れることが出来たのか、純粋にショッピ

31 夕立(中身転生者)、ショッピングで彼らと出逢う

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ングを楽しめるようになり、あれは何、これは何かと子供のような反応で但野2佐に尋

ねながらも、途中で買ってもらった髪飾りに機嫌よくぽいぽいと鼻歌を歌っていたこと

で、我に返った後に今生の黒歴史を作ってしまったと赤面することを今はまだ知らな

い。

  気付けばもう外は夕暮れが空を支配しており、帰るのにも良い時間になっていた。

 作戦開始の時間が昨日のヒトフタマルマル、そして今の時間がヒトナナサンマルであ

ることを考えれば、ものすごく濃密な1日を過ごしていたように感じられる。

 不意に、右手が左手の指輪を撫でていた。

 ……やはり提督さんが居ないと、寂しいものがある。

 そういえば、今までどの店員さんにもこの指輪について言及されなかったが、何かの

事情があると汲み取ってくれたのかもしれないな。

 今の俺の……夕立改二の見た目年齢なんて中学生くらいだし、これで結婚指輪なんて

つけてたら、そりゃ誰だって何かあるとは思うだろうが。

 「よし……帰るか」

「分かったっぽい!」

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 か・

つ・

て・

提・

督・

さ・

ん・

と・

も・

や・

っ・

た・

や・

り・

取・

り・

 

におかしくなりながらも行きに来たルートを引

き返し、駐車場に向かう。

 と、その時だった、どこか聴き慣れた……懐かしい声が聴こえてきたのは。

 俺は反射的に声の発生源の方を振り向き確認すると、やはりというか、そこには仲の

水瀬磬

みなせかおる

永井遥真

ながいはるま

良かった親友……

、そして日野壮馬の3人が談笑しているのが見えて

しまった。

 じっとその様子を眺めていると、但野2佐も視線の先に居る存在に気がついたよう

で、ひとつ咳払いを入れると、「壮馬!」と大声で呼びかけた。

 俺もまさか呼ぶとは思わなかったためにびっくりしたが、それ以上に壮馬の方が驚い

たようで、身体を震わせて硬直した後にゆっくり振り向いた彼の表情は、まさに「何故

こんな所にいるんだ」とばかりの感情を浮かべているのがはっきり分かる。

 但野2佐が遠慮なく近付いていくものだから、俺も慌ててその後に続くように追いか

けた。

 「お、叔父さん!? なんでこんな所に居るんだよ!」

「それはこちらのセリフだが? 全く、社会に出ても相変わらずということか……それ

33 夕立(中身転生者)、ショッピングで彼らと出逢う

Page 38: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

で、君たちは友達かな?」

「は、はい! 永井遥真です!」

「俺は水瀬磬です……あの、壮馬の血縁者の方ですか?」壮

馬こいつ

「うむ……そうか、君たちが……とにかく、これからも

とはよろしく頼むよ」

  ちら、と一瞬だけ但野2佐はこちらに視線を向けた後、彼らに向き直ってそう締め

括った。

 一方、俺の方は但野2佐が社会人、と言ったのを聞いて、年齢的にももう立派な社会

人であることを思い出した。

 俺としてはこの身体になってすぐに戦いに身を投げるようになっていたし、そもそも

進水日

今と昔では

が違っていたから、実年齢の方はあんまり考えないようにしていた。

 渋い顔をする壮馬だったが、但野2佐の陰に隠れる俺に気付いたのだろう、一転して

驚愕に表情を染めていた。

 「あれ、叔父さん……その子は……?」

但野夕

ただのゆう

「……ああ、今日はこの子の買い物に来たんだ。名前は

。この子のことも、認知し

ていて欲しい」

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  え、と声に出そうとしたがら、但野2佐を見上げると、声には出していないが、口が

動いていた。

 「口裏を合わせろ」と……了解。

 「但野夕っぽ……です! よろしくね!」

  うっかり変な語尾が出そうになってしまった。

 まあ、ギリギリセーフといったところだろう。

 改めて但野2佐の顔を見上げてみると、よくやったと言わんばかりの表情である。

 「よろしい。この娘は訳ありでな。君たちともこれから何度も関わることがあるだろ

う」

「え? でも、この子って……」

そ・

う・

い・

う・

こ・

と・

だ・

。だが、まだ周りに公表する時ではない……まあ、君たちには知ってお

いて欲しかっただけだ。だからこそ、その時は頼んだよ」

 

35 夕立(中身転生者)、ショッピングで彼らと出逢う

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 そう言うと、彼らは何かを理解したように真剣な表情を浮かべて、分かりましたと返

事した。

 折角だから、と契約したばかりのスマホで連絡先を交換して、別れるのだった。

 車に乗り込んだ際、但野2佐に。

 「いつか、明かせる時が来る。その時まで、我慢しろ」

  と言われたから、俺は。

 「はい!」

  と張り上げない程度の声で返した。

 基地への帰り道、窓から見えた空は、久しぶりに陸地から見る夕焼けであった。

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夕立(中身転生者)、営内を歩く

 

夕立俺

 硝煙の烟る戦場から今日も帰還した主力艦隊の中に、

は居た。

夕立俺

 長門を旗艦に、並び随伴を陸奥、瑞鶴、翔鶴、時雨、そして

の超火力特化とも言

舞鶴鎮守府

える艦隊は、自慢ではない……いや、自慢通り

では最強のメンバーであると

自負している。

 元々戦争のせの字も知らない平和ボケした元男子大学生ではあるが、艦娘としての、

ひいては武勲艦としての誇りは強いと言ってもいい。

 努力の甲斐もあり、今では3人居るケッコン艦のうち長門と並んで2人目に選ばれた

のだから。

 ちなみに3人目は瑞鶴である。

 これらの面子のせいで、提督は火力主義なのではないかという噂が立っているが、本

人に知る由はない。

  母港に戻ると、いつも通りと言うべきか、今日の秘書艦である鳳翔さんと一緒に手を

振る提督さんが立っていた。

37 夕立(中身転生者)、営内を歩く

Page 42: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

縣智一

あがたともかず

 ここ、舞鶴第一鎮守府の提督さん、

少将は、齢25という過去にも例を見ない

くらい若い年齢で将官に就いているだけあって、非の打ち所がない程に優秀な司令官

だ。

 軍学校も首席で卒業し、人格面は人間艦娘問わずおおらかで、指揮能力や本人の武術

能力もずば抜けており、そして現に、彼の優秀さに立場を危惧する反対派の重鎮達から

の無理難題を幾度と達成することで文字通り「実力を以て黙らせる」ことでここまで成

り上がってきた程の秀才。

 そればかりでなく、他鎮守府や泊地などとの演習の際も、提督さんの指揮能力やうち

の艦隊の戦法、そして彼の演習分析には舌を巻く司令官も多く、そのこともあって他所

属の司令官や艦娘達からもかなり評判が良い。

ラ・

イ・

バ・

ル・

 おかげで

が多いが、そんな提督さんを、俺も含めてうちの艦娘達は皆誇らし

げにしている。

  海上から提督さんの姿を認めた俺は気付けば艦隊のメンバーを放って飛び出し、その

弾丸の

ヘッドダイビング

駆逐艦の膂力をもって

ように提督さんの腹部へと突っ込んだ。

 初めの頃はこのダイブにたまらず膝をつくことが多かった提督さんも、気付けば回転

することで力を殺し、互いに安全な受け止め方を修得していたのを見て、この人も人間

38

Page 43: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

じゃないのではと思っているのは秘密。

 抱き着いたまま見上げると、やはり何処か頼りなさそうではあるものの、柔和な笑み

を浮かべる提督さんの顔がそこにある。

 これで、いざ艦隊指揮となれば戦神の如き奮迅ぶりを発揮するのだから、本当に凄い

人だと思う。

 「提督さん、ただいまっぽい!」

「おかえり、夕立。怪我は……ないみたいだね」

「夕立は大丈夫っぽい! けど、瑞鶴が中破したっぽい!」

「ってちょっと、夕立!?」

「夕立、報告は私がするから大丈夫だぞ……提督、舞鶴主力艦隊、只今帰投した」

「ああ、ご苦労。長門は報告のため、一度執務室に頼む。瑞鶴は入渠してきてもいいぞ。

他は……まあ、今日はもう出撃もないし、就寝時間まで自由行動ということで」

  普段ならまだあと1つくらいは出撃があるものだが、どうやら今日はもう暇になって

しまったらしい。

 ……最近行われた「光」作戦で艦隊を総動員したから、資材の回復がてら、艦娘達に

39 夕立(中身転生者)、営内を歩く

Page 44: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

休息させるのが目的だろう。

 提督さんはその辺の気遣いが上手いので嬉しいことには嬉しいのだが、どうにもここ

最近は肝心の本人が忙しそうにしているように見える。

 と、なればやることはひとつ。

 「じゃあ、夕立も一緒に執務室に行くっぽーい!」

「……言うと思ったよ」

  肩を落とす提督を労うように背中を叩く長門……いや、よく見たら長門の口角が上

がっている。

長門ロリコン

 そういうことだったか、

め……。

 「じゃあ、僕達は部屋に戻るよ。夕立、あんまり迷惑をかけちゃ駄目だよ」

「分かってるっぽい!」

  分かってるならいいんだ、とそのまま部屋に戻る時雨と、それに追随するように各個

解散する艦隊メンバー達。

40

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 残ったのは提督さんと鳳翔さん、そして長門と俺。

 「よし、行こうか……あ、その前に長門と夕立は艤装は整備場に置いてきてね」

  と、言いながら提督さんは笑って工廠の方へ歩き出した。

 提督さんが着任して2年、俺が夕立として着任してから、約1年と8ヶ月が経った頃

の話だった。

  そうして、俺は何処か心地よく、しかし寂寥が去来する感覚を抱きながら、目を覚ま

した。

 まだ意識は微睡んでいるものの、たった今まで夢を見ていたこと、そしてその夢の中

身をはっきりと覚えている。

ま・

だ・

皆・

が・

居・

た・

頃・

 酷く懐かしい夢……それも、

の記憶だ。

 当時からまだ1年しか経っていないというのに、もう遥か昔の出来事に感じてしまっ

ているのは、それだけ記憶に思い入れが深かったのか、はたまた、ここに来てからの出

来事が強烈なのか、あるいは両方か。

 

41 夕立(中身転生者)、営内を歩く

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「はぁ……」

  こっちに戻ってきてはや3日経ち、今日で4日目。

 2日目、3日目で色々な話し合いや手続きを済ませ、人間としての戸籍「但野夕」と、

艦娘としての戸籍「夕立」の両方を作ってもらう事が出来た。

 早くね? とも思ったりもしたが、朝凪大臣曰く、国の力を行使したらしい。

 何をやってるんだ一体……。

 さらに自衛隊基地に居候するために特務官という、その実決まった役割を持たない、

実質的に自衛隊の遊撃員みたいな役職を与えられた。 

 俺がやることと言えば、非常時の防衛、緊急救助活動への参加、そしてその他諸々の

お願い…つまりは、ものすごく適当かつ曖昧なのである。

 何故そこまでして俺を留めたがるのかと言うと、まず一つ目は単純に艦娘の力が非常

に役に立つから。

 例えば艦娘なら全員が持っている、水上浮上能力。

 あの力だけでも、海上やその他でも溺れかけている人を容易に助けることが出来る。

 そして俺は駆逐艦だから足も速い。

34ノット

時速約63キロ

 夕立の速力は最高で

もあり、改二になった今であれば、もしくはそれ以上

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行くかもしれない。

 それだけの力があれば救命ボートくらいであれば複数でも曳航するのも難しくはな

いし、余程大人数を救助する場合でなければ、巨体で乗員を動員する必要がある護衛艦

を動かすよりも、より迅速に現地に赴くことが出来るのも大きなメリットだろう。

 二つ目は、一歩間違えれば大事故を引き起こしかねない艦娘としての力を監視するた

め。

 これもまあ、現代日本においては当然の反応だと思う。

 これは2日目のことだが、隊内限定の非公開演習の際、普通の人間では実質的に無理

な距離……大体、スナイパーと変わらないレベルから、主砲でど真ん中を連続でぶち抜

いたり、ついでに曲芸じみた動きをしながら再度的のど真ん中を撃ちまくったりもした

ら、非常に驚かれてしまった。

 やってることと言えば高練度であるからこそのなせる業ではあるのだが、確かに艦娘

としての力がこんなものであるならば、例え艤装を鑑みても危険なことには変わりはな

い。

 そもそもの話、艤装自体がまずとてつもなく重い。

 つまり、艤装を扱うための根本的な膂力が人とは比較にならない程に高いというわけ

で、やはり一歩力加減を違えるだけで、惨事になりかねないわけだ。

43 夕立(中身転生者)、営内を歩く

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 だからこその自衛隊……日本でも大きな防衛力を保有する場所の本営に俺は監視さ

れているというわけだ。

 とは言っても、これに関しては外出自体も不自由なくさせてくれるようだし、なんな

ら色々と融通も利かせられると言っていたから、本音は建前のようなものなのだろうと

は思う。

 最後に、三つ目……自衛隊に潤いを与えてくれるから、らしい。

 これもおかしいことではないのだが、自衛隊というのは割合的に女性隊員が非常に少

ない。

 そして当然ながら、俺みたいな子供は居ない。

 ……とどのつまり、簡潔に説明するならば、ここはロリコンの巣窟であった、という

ことだ。

 俺的には、この3つ目こそが本命なのではないか、と正直今では本気で思っている。

 実際、そのことについて朝凪大臣と柚原幕僚長に尋ねてみたら、揃って明後日の方向

に目を逸らしていた。

 あの時ほど、彼らに抱いた最初の頃の緊張を返して欲しいと思ったことは無い。

  と、まあ、これらの事情も諸々全て聞きながらも、俺についての身の振り方は決まっ

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たという訳だ。

 こんな得体の知れない俺に居場所を作ってくれた自衛隊には本当に感謝しかない

……ないのだが、やはり、何故だか心の奥では寂しい気持ちが消えることはなかった。

 思えば、こっちに来てから向こうの世界のことばかりを考えているような気がしてな

らない。

 本来ならばこっちの世界が故郷で、向こうの世界と違って戦わなくてもよくて、そし

て基本的人権や、自由も保証されている。

 条件だけで見るなら、圧倒的にこっちの方が有利なのだ。

  それでも、俺は向こうの海が恋しくなっていた。

 理由は分からない。

 それは艦娘達仲間への想いなのか、それとも……。

 「っぽい! 気合い、入れて、行くっぽい!」

  変な考えに陥る前に自分の頬を両手で叩き、意識の底に感情を沈めそうになっていた

のを無理矢理引き上げると、あの高速戦艦某のような掛け声で声を張り上げる。

45 夕立(中身転生者)、営内を歩く

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 俺……というか、夕立らしくない気の沈みようだったな、本当に。

 気を引き締める意味も込めて、しばらくしてから基地の中を散歩にでも行くことにし

よう。

土曜日

 幸い、今日は

なので、基本的に基地は稼働していない。

 緊急出動があれば当然出る必要もあるが、そう頻繁にあるものでもない。

 休日出動があった場合、代休も入るが、そもそもそんな事柄が頻繁にあるようでは固

定シフト、定時出勤もへったくれもないものだし。

 だからこそ、今ではあれば邪魔にならずに歩き回ることが出来るわけだ。

 もちろん機密のあるような立ち入り禁止場所もあるから、そこには行くことは出来な

いが。

  時間にしてマルナナマルマル。

 この時間であれば、普段総員起こしでとうに起きている時間だから、散歩するには丁

度いい頃合いだろう。

 白露型制服ではなく私服に着替えて身だしなみを整えると、一人部屋を飛び出した。

  散歩とは言ったものの、実は行く場所自体はある程度決めており、今から向かうのは

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護衛艦「はるさめ」の艦内である。

 何故なら、俺の……夕立の艤装を置ける場所が艦内にしかなかったからである。

 基地内部にはある程度武装を置いておける場所はあっても、艤装を整備出来る環境が

何処にもない。

 対して艦内であれば、現代とはまるで艦種が違うとはいえ、艦載装備の点検、整備の

環境は万全と言えるため、結局艤装は艦内に置いておくということになったのだ。

 ちなみに、これも艤装ではあるが、電探だけは常に持ち歩くようにしている。

 電探であれば普段持ち歩いていても危険性はないし、何より艦娘は艤装がないと膂力

が強いだけのただの人間とほとんど変わらないため、水の上に浮かべなくなってしま

う。

 ただ、電探1つでも装備をしていれば水の上に浮かぶことが可能となるため、非常時

のことを考えて持ち歩くようにしている。

 もちろん、これには上の許可も貰っているため、問題ない。

  そういうわけで寮内の廊下を歩いていた訳だが、ふと男性寮の近くを通りがかった

時、一般曹員達が輪になって騒いでいることに気が付いた。

 何をやっているのか、気になった俺はこっそり近付き、覗き込んでみると……。

47 夕立(中身転生者)、営内を歩く

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 「……」

  数枚の写真を囲んで、それを取り合うかのように必死にじゃんけんしている男どもの

姿だった。

夕立俺

 その写真というのが、但野2佐と手を繋いでいる

、食堂の席で物憂げに指輪を撫

夕立俺

夕立俺

でる

、演習後の疲れで昼寝をしている

、などなど……平たく言うならば、全部

夕立俺

だった。

 それも許可した覚えのない、盗撮である。

 まさに最終盗撮全部俺。

  どうやら雌雄を決したらしい、はしゃぐ隊員達の肩をそっと叩く俺。

 「ん?……あ」

「「「あ」」」

「一体、何をやってるっぽい?」

 

48

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 きっと、この時の俺の表情は一見すれば笑っているように見えたことだろう。

 しかし、そんな俺の背後にはとてつもなく重厚な気配が漂っていたとは隊員談。

 「夕立ちゃん? えっとね、これは……」

「問答無用っぽい」

  ここでもし拳骨制裁なんてしてしまうと、艦娘の膂力ではとんでもないことになって

しまうだろう。

 だが、ひとつだけ、怪我の少ない方法で安全に行う方法がある。

 そう……デコピンである。

  ひゅん、と風を切るような音と共に、俺の指が一人の隊員の額へと襲いかかる。

 瞬間、デコピンでは有り得ないような音が鳴り、隊員はあまりの痛みに声も出せずに

悶絶している。

 その痛がりように、他の隊員達の顔も総じて青ざめている。

 もちろん、ここでやめる俺ではない。

 もう一度皆の顔を見て、一言。

49 夕立(中身転生者)、営内を歩く

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 「さあ、ステキなパーティーしましょ!」

  数秒後、全ての男達が、一人の少女を前に力なく倒れるという異様な光景が出来上

がっていた。

 何だこの状況は、とつい溜め息を吐く。

 「もう、次からこんな盗撮はやめるっぽい……」

  なんだかんだと、誰一人としてデコピンから逃げることはしなかっただけに、誠実な

人達だと分かるだけに勿体ない。

舞鶴鎮守府

 向こうの世界でも、

の長門と佐世保鎮守府の提督の手によって国民観艦式

に出る俺も含めた他駆逐艦達の写真が盗撮され、それがバレた2人は駆逐艦達に総叩き

にされたなんてこともあった。

 向こうの世界の人間は何故かバグレベルで頑丈なので、その時は遠慮なくグーパンで

ある。

 戦艦の艦娘である長門はともかく、中将を含めた他司令官達はギャグ時空の世界にで

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も生きているのだろうか……。

  昔の話はもういいとしよう。

 兎に角、彼らは悪い人ではないのは分かっている。

 だから……。

 「だから……つ、次から撮る時には、ちゃんと言いに来るっぽい!」

  ああ、言い切ってしまった……。

 途端に恥ずかしくなって、俺はその場から逃げ出してしまった。

 その際、倒れる彼らの中から呻くように「デレはデコピンの前に見せて欲しかった

……」と呟いているような気がしたのは、きっと本当に気のせいだろう。

  なんだか朝からもう疲れてしまったが、その後は特に何かあったわけでもなく、無事

に護衛艦「はるさめ」へと到着した。

 艤装を見つけた俺は、そこに居るであろう彼女達へと呼びかける。

 

51 夕立(中身転生者)、営内を歩く

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妖・

精・

さ・

ん・

! 出てきて欲しいっぽい!」

  声を張り上げてそう言うと、俺の艤装の中からまあわらわらと出てくる装備妖精さん

達。

 どうやらこの世界に俺がきたと共に、彼女達も一緒に来てしまったようで、おかげで

妖精さん達のバックアップがなければ使えなかった艤装をこちらでも使える。

 故意ではないとはいえ、こちらの世界に無理矢理な形で連れてきてしまったことに申

し訳なさを覚えるが、妖精さん達は気にしていないようだ。

 この装備は俺が着任して1年の後……つまりは2年間つかいつづけてきて、既に改修

も最大値まで行ってあり、装備妖精さん達もその頃からずっといる存在なので、正直俺

にとってはとても安心出来る存在と言える。

 この妖精さん達、普通の人には見えないのだが、提督適性がある人にだけは見えるし、

意思疎通も取れるようだ。

 予想通りというかなんというか、但野2佐や朝凪大臣、柚原幕僚長には見えていたの

で、彼らはやはり優秀だということなんだろう。

  これも向こうに行って知ったことなのだが、艦これというゲームで資材が自然回復す

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る現象、どういう事なのかと思っていたが、どうやら妖精さん達が鋼材やらの不純物を

変換して資材に変えていたらしい。

 非常時の鎮守府の縁の下の力持ち、それが妖精さんだったということだ。

  装備妖精さん達と一緒に艤装の確認をしていると、後ろから人の気配が近付いてきて

いるのが分かった。

 誰かと思い振り向くと……。

 「やっぱりここに居たか」

「あれ? 但野さん、どうしたの?」

  但野2佐だったようだ。

 それにしても、俺の事を探していたようだが……。

 「もうそろそろ配食の時間だ。朝食は要らないのか?」

「あ」

 

53 夕立(中身転生者)、営内を歩く

Page 58: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

 時間を見てみると、確かにもう時間が配食の時間に迫っていた。

 ここでの配食はマルナナサンマルになっており、過ぎれば最悪食べられないため、時

間にはきっちり合わせないといけない。

 きりもよく整備を終わらせることが出来たため、慌てて妖精さん達に断りを入れる。

 「夕立も行くっぽい!」

「そうか……行くぞ」

  俺は但野さんと手を繋ぎ、食堂へと向かうのだった。

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夕立(中身転生者)、詰め寄られる

  食堂についたら既にかなりの数の自衛隊員が揃って食事をとっているようで、休暇で

あるからか、普段よりもやはりかなり人が多い。

 稼業中は基本的に艦艇内で食事をとる自衛官も多いためか、普段は今と比べると本当

に少ない人数しか居ないのだが、今日は俺が最初に世話になった護衛艦「はるさめ」以

外の隊員達もかなりの人数が居るようだ。

 俺が入ると、途端にこちらに視線が集中するが、中には、逆に目を逸らした人も何人

かいた。

 というよりも、つい今朝に見た顔である……例の、写真争奪戦の渦中に居た人達であ

る。

  そんな彼らの視線などは気にせず、俺達2人は適当な、かつがらがらに空いている席

へと座った。

 今日の献立は唐揚げ定食のようだ……自衛隊の食事は意外と絶品なので、俺はこの時

間が結構好きだったりする。

55 夕立(中身転生者)、詰め寄られる

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 いただきます、と食事をとろうとすると、不意に隣に誰かが座った気配がした。

 誰だろう、と思いつつも気にせず食事を進めていく。

 そんな俺に痺れを切らしたのか。

 「あ、あの」

  恐る恐るといったようなどもった声が、件の隣の人物から聴こえてきた。

 流石に無視をするわけにはいかないので一度食事をやめてそちらの方を向くと、なん

と隣に座ったのはさっきの写真争奪戦で見事打ち勝っていた……それも、俺が最初にデ

コピンをした男だった。

 あの悶絶具合からしても相当だったろうに、よくもまあ、自分に痛みを負わせた相手

に恐怖を抱かず近付けるものだと関心する。

 いや、内心では怖がっているって線が濃厚かな……あれだけ必死に写真を手に入れよ

うとしていたわけだし、好奇心が勝ったってところか。

 というか、そろそろ相手が焦れているように見える……返事しないと。

 「ん、どうしたっぽい?」

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  と返してやると、彼はおお、と何かに感動しているようだった……何なんだ、一体。

 「あー、えっと、ですね。ほら、こんな機会じゃないと中々コミュニケーションをとる暇

がないじゃないですか。だから、この機に色々喋りたいなと……」

  そう言いながら視線を右往左往させる彼……何故そんなに恐る恐るなのか、そう思い

ながら彼の視線の行先に気が付き、やっと合点がいった。

 俺は隣で黙々と話を聴きながら食事を取っていた但野2佐へと視線を送ると、但野2

佐もそれに気付き、はあ、とひとつ溜め息を吐くと。

 「まあ、いいぞ。確かに、夕立はまだ俺、朝凪大臣、柚原幕僚長、加えて甥やその友人達

以外とはまだほとんどコミュニケーションを取っていなかっただろう。この際に色々

と話し合うといいさ」

「よっしゃ!」

  我が意を得たり、とばかりにガッツポーズをする男。

57 夕立(中身転生者)、詰め寄られる

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 一連の様子を見ていた周囲が、ざわざわと騒ぎ出した。

 「あ、ずるいぞ!」

「ちょっと待て、それなら俺も!」

  結局、あれやこれやと俺の周りに集るように人が集中してしまった……と、どうしよ

うかと困惑していると、突然、ガタンと誰かが勢いよく立ち上がった音が聴こえてきた。

 それの正体は、何も言わず物静かに、しかし何処かプレッシャーを漂わせながら立ち

上がっている但野2佐であった。

 途端、周囲は空気が凍りついたかのように静寂が覆い、まるで時間が止まったかのよ

うに喧騒が止まる。

  但野2佐は一度じろりと周囲を見渡してから。

 「質問は一度に一回。一定ごとに交代で、だ……分かったな?」

「「「はっ!」」」

 

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Page 63: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

 そう言い放った。

 その他自衛官達はまるで重大な任務を引き受けたかのような真剣な表情で敬礼をし、

その様子を見た但野2佐はようやく何も言わずに席に座るのだった。

 その時、直接言われた訳でもない俺ですら、周囲の人達が尽く安堵したことに気が付

いた。

 うちの提督も、普段は穏和だというのに怒ったらとてつもなく怖かったことを思い出

し、もしかしたら、成り上がるためには怒ったら怖い人であることも条件に含まれてい

るのだろうか、とつくづく思わされた。

  それからは、代わる代わるに質問が飛んでくるようになった。

神楽坂肇

かぐらざかはじめ

 最初は、俺の隣に座ることでこの場を作りだした功労者……名前は

と言うら

しく、階級はなんと海曹長だそうだ。

 バッジからして曹官であることは分かっていたが、細かい区分の違いは分からなかっ

たため、2等海曹かその辺だと思っていたから、素直に驚いてしまった。

 話をしてみると結構軽快な人柄だっただけに、口に出すと本人は本気で気を落とすだ

ろうから言うつもりはないが。

 

59 夕立(中身転生者)、詰め寄られる

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 最初の方の質問は、大体俺の艦娘の能力に関係することばかりだった。

 具体例を挙げるならば……。

 「主に使ってた装備は?」

「基本的に12.7cm連装砲C型改二と水上電探がメインで、夜戦を前提とした戦闘

ではたまに六連装酸素魚雷も使ったっぽい。あとは、仕方なく対潜哨戒要員で出撃した

時とかは爆雷や三式ソナーとかも持っていったりもしたっぽい。けど、夕立は対潜戦闘

が苦手っぽい……」

  実際、対潜戦闘は皐月やサムに任せることがほとんどだった。

 一応、俺も対潜改修は終わっているから、やろうと思えば出来なくはないんだけど、

やっぱり砲雷撃戦こそが俺の本分だと思う。

 あ、改修と言っても、ゲームとは違って艦娘を使うのではなく、建造や海域ドロップ

をした際、何故かひとつの鎮守府では同じ艦娘が生まれてくることはなく、代わりに艤

装が出てくるから、それを素材として使うだけだからそこは安心だったりする。

 「練度って分かったのか? それなら、夕立ちゃんの練度は?」

60

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「夕立は分からないけど、提督さんは確認出来るらしいっぽい! 確か、今の練度は16

8っぽい。鎮守府の一番が長門の171で、夕立が二番目っぽい!」

  うちではケッカリ艦が自分も含めて3隻しか居ないことを考えれば、この練度は群を

抜いていると言えるだろう。

 実際は既に練度99に達している艦はかなりの相当数存在しているのだが、提督さん

はこれ以上指輪を渡す相手を増やすつもりはないらしいし、艦娘の方も受け取ろうとは

しないようだ。

 俺にはよく分からなかったが、何かしら事情があるのだろう。

 「所属していた鎮守府は?」

「舞鶴っぽい! 提督さんはまだ先代さんから引き継いで3年目の新人だけど、凄く優

秀っぽい。ちょっと前、戦果発表で聯合1位にも載ったっぽい!」

  向こうの世界には、ゲームの中に存在したランキングのような、戦果に応じた褒賞制

度が存在していた。

 その中で舞鶴鎮守府は一度だけ1位を取り、元々一般人の覚えのよかったこともあっ

61 夕立(中身転生者)、詰め寄られる

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て記事になったこともあった。

 おかげで、大本営も余計に口出しが出来なくなったのは本当に僥倖だった。

 「鎮守府で仲が良かった艦娘は?」

「うーん、特に仲が良くなかった艦娘がそもそも居ないっぽい。けど強いて言うなら、特

に北上さんと川内さんとは仲が良かったっぽい!」

  そういう問題は全て提督さんが尽力してくれるおかげで、うちで特筆して仲の悪い艦

娘は居ないと言ってもいい。

 精々相性が悪い相手とはあんまり基本的に直接関わりに行くことはほとんどないと

いうくらいで、同じ艦隊に入るとしっかりとしたコンビネーションを取ってくれるし、

作戦会議でも反発し合うこともない……ああ、でも加賀さんと瑞鶴だけはよく喧嘩して

いるのを見かけるな。

 ただ、あれは仲が悪いというよりむしろ喧嘩するほど仲が良い、といった感じがする

が……大体が、素直になれない加賀さんが心配するのを物凄く遠回しに嫌味じみた言い

方をするものだから空回りして瑞鶴が起こる、というのがもはやテンプレと化してい

る。

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 「それってケッコンカッコカリの指輪だよね? これって、認識は結婚しているってこ

とでいいの? というか、夕立はその提督のことが好きだったのか?」

「それに関してはノーコメントっぽい」

  まず、提督さんがどういう意識をもって指輪を渡していたのかが正直分からなかっ

た。

 俺の時はなんでもないというように渡されたし、かと言ってこれ以上増やしたら失礼

だとかなんとか言って3人よりは増やそうとしない。

 全く意識していないのか多少でも意識しているのか、それすらも分からない。

 俺の方は……まあ、好ましいとは思っている。

 が、本当は正直よく分かっていない。

 結局、自分のことも提督さんのことも分かっていないということなのだ。

  ふと、神楽坂曹長が何かを思い出したように呟いた。

 「そういえば、俺達が君を拾った時、なんだってあんなところにいたんだ?」

63 夕立(中身転生者)、詰め寄られる

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「実はよく分かってないっぽい。大規模作戦の攻略に成功したと思ったら、気付けばあ

そこに居たっぽい」

「大規模作戦って?」

「捷一号作戦っぽい」

「捷一号作戦? それって、艦これの一期の締めくくりになったイベントの作戦名と同

じだな」

  まさかの、ゲームのイベントと同じ作戦であったらしい。

 内容的には違いがあるのか、と思って試しに色々と聞いてみたが、ゲームでも相当な

難易度を誇ったイベントだったらしく、ギミック解除や最後に倒したボスとも言うべき

敵旗艦……深海鶴棲姫までもが同じだったようだ。

 そしてそのイベントがあったのが大体1年前……俺が向こうでその作戦に参加した

のがつい先日のことであったが、一応ゲームの方が先行しているらしい。

 実際に体験している俺からしたら予言としか思えないのだが、こっちではゲームだし

な……謎である。

 にしても、一期って何だ?

 艦これにそんな期分けなんてあったっけ?

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  こちらも聞いてみると、どうやら一期が終了したことで、大幅に仕様が変更されたら

しく、主な変化が経験値獲得システムが変わったことで、通常海域でのレベリングが以

前よりも難易度が上がってしまったとのこと。

 これ、まさか俺が居た世界にも適当されたりしないよな?

 「そろそろ時間もいい。質問は次で最後だ」

  今まで傍観を決めこんでいた但野2佐が時計を見ながらそう言うと、彼らはまだ物足

りなさそうな表情をしていたが、確かに結構時間も経過しているのもあって、特に何か

言うこともなかった。

 「じゃあさ、これはなんというか、無神経な質問になっちゃうから答えなくてもいいんだ

けど……」

  彼らの中からそんな声が聴こえてきた。

 が、次の質問は俺を凍らせるのには充分であった。

65 夕立(中身転生者)、詰め寄られる

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 「仲間の轟沈って……その、見たことある、のか?」

  そう言われて、俺はひとつの記憶を思い出していた。

 紅い海に続く激戦。

 疲弊していく艦隊に、俺は皆のために頑張ろうと奮闘していた、あの時。

 気を抜いてしまった隙をついて、ひとつの砲撃が飛んできて……。

 「おい、大丈夫か?」

「え? あ、うん、大丈夫っぽい」

  呆然としていたらしい俺を我に返らせたのは、但野2佐だった。

 普段から仏頂面の多い彼だが、今は特に額に皺が寄っている。

 怒ること自体はいつもそれなりに見かけるが、今のは少しだけ怒りの種類が違ってい

るようだ。

 「いいか。俺達、敵勢力から国を防衛し、また時には人を助けに飛び回ったりもする。

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が、彼女はれっきとした軍人だ。仲間の死が身近にある戦場が当たり前と言ってもい

い。もしかすれば仲間が居なくなることにも慣れている可能性もなくはないが、それで

も良い記憶にはならないだろう。そういう手の質問はするべきではない。分かったか

?」

「は、はい。その、夕立ちゃん、ごめんなさい!」

「あ、うん、大丈夫っぽい」

  質問した彼も相当に無神経であることに気が付いたのか、血の気の引いた顔で何度も

頭を下げていた。

 但野2佐も怒ってくれたし、その姿を見て俺も流石に何かを言う気にもなれなかった

ので、素直に謝罪は受け取っておく。

 ただ、質問には答えてあげようとは思う。

 「夕立は……一回だけ、仲間が沈むのを見たことがあるっぽい。うちでの、唯一の轟沈

艦っぽい」

「夕立?」

 

67 夕立(中身転生者)、詰め寄られる

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 但野2佐が訝しげに俺を見ている。

 周りの彼らも、何かに絶句しているように目を見開いて固まっている。

 別に、質問されたから答えただけなんだけどな。

 「じゃあ、これでもう質問は終わりでいいっぽい?」

「あ、ああ……その、夕立ちゃん、顔が青いけど、本当に大丈夫か?」

  自分では平気なつもりだったけど、相当に顔が青ざめていたらしい。

 なるほど、それで周りがこんなに固まっていたのか……心配されてしまっていたよう

だ。

 少しだけ心が軽くなった俺は、少しだけ噴き出してしまった。

 周りも、空気がほんの少しだけ軽くなった。

 「うん、本当にもう大丈夫っぽい。えっと、ありがとね」

  そう返すと、皆一様に顔を逸らして明後日の方向を向いている。

 だけど俺には見えている、彼らの頬が少し赤らんでいるのが……照れているようだ。

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 うん、やはり夕立の可愛さは万人共通だな。

 「よし、じゃあ、皆食事は終わったな? では、解散だ」

  但野2佐の言葉に皆頷き返すと再び敬礼し、それぞれ皿を返しにいくと、思い思いに

戻って行った。

 俺も皿を返すと、そういえばと但野2佐にとあることの許可を貰いに来たことを思い

出した。

 「夕立、街に出たいの。大丈夫っぽい?」

「うん? ああ、街か。それならこれを持っていけ」

  と、彼が懐から出したのはカードのようなもの。

 「これは外出証だ。外に出る時、または中に入る時に門番に提示してもらえれば出入り

出来るようになっている。ただ、外泊はするなよ? それと、夜の点呼までには帰って

くるように」

69 夕立(中身転生者)、詰め寄られる

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「分かったっぽい! それじゃ、またね、但野さん!」

  但野2佐からある程度の説明を受けると、俺は足早に部屋へと戻った。

財布お小遣い

 そして貰い物のポーチバッグと

を取ると、再び部屋を出た。

  向かうは基地の外……横須賀市だ。

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夕立(中身転生者)、壮馬をいじる

  朝食を食べた後、基地内散策を切り上げて街へと繰り出すことにした俺は、大した身

支度も必要なかったので、部屋を出るとそのまま基地の外へと向かった。

 前に但野2佐にショッピングモールへと連れられた時にも見た門衛さんへと外出証

を見せると、気を付けるんだよと言われながら送り出された。

  ひとまず基地を出てきたは良いものの、この周辺ともなれば店はおろか、騒音の問題

があるため、ないわけではないが、一般市民に配した住宅もかなり少ない。

 ただ、横須賀駅が割とすぐ近くにあるので、とりあえずは駅で何処かへと向かおうと

思う。

 しばらく歩いて横須賀駅へと到着すると、路線図を見て何処へ行くか決める……が、

正直俺は男だった頃も神奈川には横須賀か精々横浜や鎌倉でちょっと降りたことがあ

るくらいしか知らなかったりする。

 前のデパートも車で行ったためにそもそも何処にあるのかも分からないし……。

 まあここで悩んでも時間の無駄だし、ひとまず横浜へと向かうことにした。

71 夕立(中身転生者)、壮馬をいじる

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  というわけで行き先の決定した俺は早速切符を買うと、電車へ乗り込んだ。

 しかし電車に乗ったはいいが、時間的にも通勤ラッシュとまるっきり被ってしまった

せいで、思いのほか人が多い。

 座ることが出来たから横浜までの長い距離を立ちっぱなしにならずに済んだのはよ

かったが、おかげで、かなりの人から凝視される羽目になってしまった。

 居心地の悪さを感じながらも、気を紛らわせるために入れたばかりのSNSを開こう

とすると、何件か通知が入っていることに気が付いた。

 すぐに確認してみると、送り主は但野2佐と壮馬のようだ。

 時間的にも送られてきたのはどうやら基地を出てからのことのようで、とりあえず先

に送られてきた但野2佐の方を確認してみることに。

 『どうせ君のことだから、宛なんてないんだろう? 丁度、今日は壮馬の仕事が休みのよ

うだから君を誘うように声をかけておいたら、快く了承してくれたよ。君が良かった

ら、一緒に行動しなさい』

  あまりに神がかったアシストに思わず涙が出てしまいそうだ。

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 提督さんといい、俺の周りの大人の男達の気の回りようがあまりにも的確な人が多す

ぎる。

 もし男だった頃の俺が大人になったら同じことが出来ていただろうか……いや、ない

だろうな。

 今は人目がつくので心の中で感謝から拝みながら、ありがとうございます、とだけ

送ってから次の通知……但野2佐に言われて送ってきたであろう壮馬の個人チャット

へと移る。

 『叔父さんから聞いたんだけど、今から外に出るんだろ? 俺も丁度今日は仕事も予定

もなかったし、良かったら一緒に何処か行かないか? 夕ちゃんとも色々と直接話をし

たかったし、色々と奢らせてもらうよ。まあ、嫌なら無理に誘わないけど……とりあえ

ず、見たら返事が欲しい』

  壮馬にしては意外に紳士的な内容だった。

 軍艦に関して言えば常にハアハアしてるレベルのド変態が一体どういう風の吹き回

しで……いや、よく考えたらあいつ、異性に対しては割と健常的な思考だったっけ。

 それならおかしくはない、か?

73 夕立(中身転生者)、壮馬をいじる

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 けど俺も今は艦娘だし、あいつのことだからもう既に確信してそうな気がしないでも

ないが、バレたらどんな反応するだろうか……。

 というか、あいつに関してはもはや軍艦に人生注いでるレベルだからやっぱまとも

じゃないな、うん。

 誘ってくれてありがとう、是非ともお願いしたいけど、いいの? と送ってみると、数

秒で既読がついた。

 返事は『よっしゃ! じゃあ、どこで待ち合わせする? 横須賀に行けばいいのか?』

と返ってきたので、そういえば俺は今移動中だったことを思い返し、電車で横浜へ移動

中、確認されたしと旨を送ると、『了解。俺の家が横浜だから丁度良かったな。着いたら

また連絡してくれ』と来たので再度了解と送り、そのままSNSを閉じた。

  それからはネットニュースを覗いてみたりして努めて依然変わらぬ周囲の視線には

気にしないことにした。

 そして数十分が経過した時、ようやく目的地……横浜へとやってきたのだった。

 ただ、来たのは良いのだが、やはり人の目は避けられない。

 別に変装しているわけでもないし、人もやはり横須賀や電車内よりも遥かに多いのだ

から当たり前ではあるのだが、やはりこの視線は相変わらず落ち着ける気がしない。

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  急いで改札口を通り抜けてからSNSで壮馬に連絡を入れると、不意にスマホが震え

だした。

 「ぽいっ!?」

  あまりに突然だったこともあり、相変わらずの声で驚いてしまったが、スマホの画面

を見てみると、SNSを通話がかかってきているようだった。

 送り主には、壮馬とある。

 そういや通話ってこんなだったな、と思いつつ通話に出ると、向こうからも喧騒の音

がマイクを通して聴こえてきた。

 「もしもし、っぽい」

『もしもし、って、ぽいって……あー、そうだったな。俺ももう横浜駅に居るんだが、何

処の改札口が近い?』

「んー、多分西口っぽい」

『お、それなら俺も近くだな……いたいた。やっぱ凄い目立ってるな……』

75 夕立(中身転生者)、壮馬をいじる

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  改めて周りを見ると、確かに壮馬が少し離れたところで手を振っていた。

 電話を切り駆け寄ると、よお、と壮馬は軽い口調で言い放った。

 「壮馬、おはようっぽい!」

「ああ、おはよう……前は取り繕ってたような気がするが、今はいいのか?」

「うん、但野さんが壮馬だけになら明かしてもいいし、外でも自然体にしていても良いっ

て言ってたっぽい。むしろ、正体を明言出来る証拠がないくらいに自然体にしてこいっ

て」

「へえ、なるほど……てことは、名前は今は夕、って呼べばいいんだな?」

「お願いっぽい!」

  そう言うと、壮馬は元気がいいこった、と言いながら俺の頭を乱暴に撫で回してきた。

 こんなことをされても俺の髪質は柔らかいからすぐ戻せるからいいものの、大抵頭が

少しフラフラしてしまうからもっと軽くやってほしい……別に、悪い気がしていないと

か、そういうわけではない。

 どれだけ頭をいじられても水で髪を濡らしてならしても、最終的に犬の耳みたいな癖

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毛だけは戻らないのが本当に不思議である。

 前白露型ほぼ全員に言えることだが、改二改装前はこんなのはなかったのにな。

 「さ、行こうか、お嬢さん?」

  なんて、おどけながら紳士ぶって手を差し出す壮馬。

 そんな壮馬の姿を見て、俺は。

 「え、なにそれ」

  ドン引きしていた。

 表情を引き攣らせたまま固まる壮馬の姿についやっちまった、と思ったが、それ以上

にあまりにも俺の知る壮馬の中身とギャップがありすぎたせいで、どうにも拒否反応を

起こってしまっていたらしい。

モ・

テ・

そ・

 確かに壮馬は見た目で言うなら結構整っており、見た目だけで言うなら非常に

う・

には見える。

 が、俺はこいつとは高校も同じだったからよく知っている。

77 夕立(中身転生者)、壮馬をいじる

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 こいつが女子に告白されたりしていたのは新1年生になって数ヶ月の間だけで、それ

までは彼女なんて一度も出来ていなかったし、高校でもしばらくして女子達がこいつの

中身を知った途端に告白どころか、むしろかなり遠巻きにされて結果告白どころか業務

連絡以外はほとんど女子と関わりがなかったことを。

 何しろこいつ自身が色恋なんて全く興味がなかった上に、もしこいつの琴線に触れて

しまえばひとたび男女問わず恍惚とした表情で軍艦語りを始めるものだから、女子の恋

も急速に冷めていくのが俺ですら分かったくらいだ。

 そんな壮馬が、3年経って落ち着いたというのか……多少ならまあ、有り得なくもな

い。

 けど、女子の心知らずの擬人化とも言うべきこいつがかつての本性を失ってしまった

のか、というと、それはもはや有り得ないと思っている。

 結論、さっきの夢だったか、もしくは疲れているに違いない。

 「大丈夫、さっきのは見た目だけはかっこよかったっぽい。普段からそんなことが出来

たら、多分モテるっぽい」

「夕ちゃん、その慰めは流石に俺もダメージが酷いからやめてくれ」

「あ、でも夕にはもうやらないでほしいっぽい」

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「夕ちゃん、さてはわざとやってるな? そうだよな?」

  壮馬の呟きを無視して、早く行こうと背中を叩いて急かしてやると、項垂れたまま壮

馬は深く溜め息を吐きながら、ようやく歩き出した。

 かと思いきや、いきなり止まったかと思うと、振り向いて手だけを出してくる。

 「ほら、手を繋ぐぞ。じゃないと夕ちゃん、迷子になりそうだからな」

「むっ! 夕は子供じゃないっぽい!」

  いやいやどう見ても子供だろ、と苦笑する姿に、今の自分の姿を鑑みて、渋々その手

を取った。

 「んで、どこ行く? てか、行きたいところとかあるか?」

  壮馬からそんなことを言われるが、ぶっちゃけ何も考えていなかったわけで、当然そ

んな場所があるはずがなかったり。

 まず、横浜自体が3年以上前に来たっきりで、それからは艦娘として外出もほとんど

79 夕立(中身転生者)、壮馬をいじる

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せずに戦ったっきりだったから、何があったのかも全く覚えていない。

 「壮馬にお任せするっぽい!」

  そう言うと、やっぱりなと呆れた顔をされた。

 向こうにも分かっていたようだ。

 「ま、夕ちゃんは横浜来たことないだろうしな。じゃあ折角だし、そうだな、俺が住んで

るシェアハウスにでも来てみるか? 職場も近くだし、もしかしたら、仕事の見学も出

来るかもしれないぞ」

「いや……でも、それは流石に迷惑じゃないの?」

「どうかな……むしろ、うちの職場は変人ばっかだからな。そんなことは気にしないだ

ろうし、むしろ喜びそうだ」

「壮馬がいっぱい居るっぽい!?」

「どういう意味だよ!?」

  だって、当時の俺だけでなく遥真や磬も揃って変人を通り越して変態だと認定してい

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た壮馬にすら変人と言わしめるって、相当な人なのでは?

 壮馬のことを知ってる人なら全員俺でなくても同じ反応すると思うぞ。

 「……なんだ、その目は」

「……なんでもないっぽい。でも、それならなんで寮まで行くっぽい? ……もしかし

て、壮馬はロリコンだったっぽい!?」

「なんでそうなるんだよ! 部屋に子供連れ込んでいかがわしいことしようとしてる怪

しい男みたいなこと言うんじゃねえ! ほら見ろ、周りも変な目で見て……ってちょっ

と待ってください!? 本当に、本当に違うんで通報だけは勘弁を!」

  どうやら通りがかった通行人が事案であると思い込んだのか、本当に通報しかけてい

たようでこのままでは不味いと流石に俺も加わって色々と説明してようやく事なきを

得た。

 ただ、ここでまたさっきのようなコメディをやるとまた同じことが起きかねないの

壮馬達

で、近くにあるらしい

行きつけの喫茶店へと立ち寄ることにした。

  壮馬に連れられてやってきた喫茶店は、外観からはそれほどの特徴はみられなかっ

81 夕立(中身転生者)、壮馬をいじる

Page 86: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

た。

 「前から思ってたけどさ、なんか夕ちゃんの俺のイメージ偏ってない? なんでそんな

変なイメージ持たれてんの?」

  さあ入ろう、といった時に、そんな疑問が壮馬から投げかけられる。

 俺からするとイメージじゃなく事実なんだが……周りも概ねそんな感じだったし。

 「え? だって、壮馬って軍艦好きが高じて異性にも興味を持たなくなったどうしよう

もないピー野郎って」

「おい待て! なんだそれ……もしかして、あの2人だな!? なんてこと言ってるんだ

あいつらは!」

「但野さんから聞いたっぽい」

「叔父さあああん!?」

  なんで叔父さんまで、と今までで一番の落ち込みようを見せる壮馬の腕を引いて、よ

うやく店に入るに至った。

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 時間も時間なためまだそんなに人は居ないようだが、中々落ち着きがあって安らぐ。

  店員に案内されて席に座ると、立ち直った……とは言い難いが、とりあえずは大丈夫

らしい壮馬からメニューを差し出された。

 「ほら、俺が奢るから選べよ。モーニングセットがオススメだぞ」

「夕立、朝ごはん食べたっぽい」

「なんだよ、要らないのか?」

「貰うっぽい」

  ひったくるようにメニューを奪い取りあらかた中身を確認すると、さっき言われた

モーニングのAセットを頼むことにした。

 コーヒーとサンドイッチ、そしてゆで卵とサラダがついたオーソドックスなものだ。

 壮馬は何かを思いついたかのように、いきなり悪戯な笑みを浮かべる。

 「おいおい、夕ちゃん。子供なのにコーヒーが飲めるのか? 紅茶とか、なんならジュー

スとかの方が良かったんじゃないのか?」

83 夕立(中身転生者)、壮馬をいじる

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「ふふん、こう見えても夕はコーヒーが好きっぽい。なんなら、自分でもコーヒーもよく

淹れたっぽい」

「は? 夕ちゃん自身でか?」

「そうっぽい。金剛さんが秘書艦になった時は紅茶を淹れてたみたいだけど、夕が秘書

艦の時は提督さんにコーヒーを出したっぽい。提督さん、いつも美味しいって言ってく

れたよ!」

「……マジか」

「マジっぽい」

  こんな会話を展開している中、先程とは違う店員さんがやってきた。

 艦娘とも引けを取らないほどに綺麗な容姿をしており、おっとりした雰囲気はどこか

赤城さんに似ている。

 「どうしたんですか? 壮馬さん、こんな時間から珍しい」

「美菜さんか……ああ、ちょっとこいつの付き添いにな……」

  驚いたことに、この女性は壮馬の知り合いだったらしい。

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 驚いたのは自分だけではなかったようで、美菜さんと呼ばれた女性も目を瞬かせて俺

を見ている。

 「え? えっと、よく分からないんですが、その子は?」

「た、但野夕です! よろしくお願いしますっぽい!」

「夕ちゃんは俺の叔父さんが今世話している子でな。かなり訳ありなんだが、まあ、仲良

くしてくれ」

高田美菜

「あら……そうなんですか。私は

です。よろしくお願いしますね、夕ちゃん」

「はい!……えっと、壮馬、さん? とはどんな関係っぽい?」

  不躾な直球の質問だが、美菜さんはニコニコしたまま変わらない。

 すると、壮馬からいきなり爆弾が投げ込まれてきた。

 「慣れないさん付けすんじゃねえ……この人はだな、ほら、あのデパートに居た一人、遥

真が居るだろ? あいつの彼女だよ」

「え……?」

 

85 夕立(中身転生者)、壮馬をいじる

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 今度は俺が目を瞬かせる番だった。

 「ぽいぃぃぃ!?」

  思わぬところで、俺は壮馬からの反撃を食らうのだった。

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夕立(中身転生者)、鎮守府を語る

  遥真の彼女、もとい美菜さんが遥真と付き合い始めたのは約2年半前。

 行方不明となってしまった親友の全く進歩の見えない捜索に傷心していた遥真を彼

女が励ましてから仲が進展したらしい。

 そして今気付いたのだが、そういえば美菜さんって高校の1つ下の後輩だった人で、

俺も普通に面識があったことをようやく思い出すことが出来た。

 なんか向こうで色々とありすぎせいか、こっちでのことを忘れてることも多いな

……。

  そこはそれとして、明らかにその親友というのが俺であることは確かなのはともか

く、どうやらあの時の遥真は今のような穏やかさとはまさに別人と言わんばかりに鬼気

迫った顔をしていたようだ。

 あまりの豹変ぶりに、壮馬達ですらも驚きを通り越して恐怖すら抱いてしまったとの

こと。

 美菜さんが彼に献身的に付き添いや励ましをしなかったら、今でもずっと身を削って

87 夕立(中身転生者)、鎮守府を語る

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まで探し続けていたかもしれない、と。

 俺もまさか、遥真がそこまで躍起なまでに必死になることなんて見たことがなかった

から、驚きよりも信じられないといった感想の方が大きい。

  ここだけの話ではあるが、壮馬達の中で付き合いが一番長いのが遥真だった。

 壮馬と磬は中学からであるのに対し、遥真だけは小学校の、それも低学年の頃から続

いているため、もはや切っても切れない仲と言っても過言ではなかった。

 出会いとしては今と変わらず臆病で引っ込み思案だった遥真がいじめられているの

を、たまたま通りがかった俺がいじめっ子を追い払ったのが事の発端だったが、それか

らのあいつとの関わりがまさかここまで深くなるとはあの時は全く思ってもいなかっ

た。

  俺達の中でもっともまともで、常に暴走していた俺を含めた他3人のストッパーにも

なっていた存在だから、遥真自身が暴走するなんて、本当にそんなことがあったのかと

疑わしくなる……とはいえ、壮馬もこういう嘘はつかないのは俺もよく知っているの

で、本当にあったんだろう。

 ……俺が居なくなってもやっぱこいつは俺が居なかった期間は一緒にいたんだろう

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な。

  とまあ、そんな暗い話はここまで、ということで壮馬は話を切り上げたところで、丁

度美菜さんが注文していたもの持ってやってきていた。

 品が並べられたところで、最初はやはりコーヒーを一口。

 豆もだが、淹れ方に相当工夫しているのか鼻の通る香りがよく、コクも深いため、苦

味と酸味のバランスがとれていて非常に好みだ。

 サンドイッチやサラダもとても美味しく、瞬く間に平らげてしまった。

 食事を終えた俺達はほっと一息吐いてから、ふと、壮馬が呟いた。

 「あ、そうそう。遥真も同じ職場だぜ。部署は違うけどな。磬だけは別の仕事なんだが」

「え、そうなの?」

「ああ、そうだ。俺の勤める会社はいわゆるソシャゲ専門のゲーム開発会社でな。大き

い会社でもなく、むしろ無名なところではあるが、俺がエンジニアで、遥真がプログラ

マーをやってる」

  ……こう言っちゃなんだが、意外としか言えなかった。

89 夕立(中身転生者)、鎮守府を語る

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 俺達4人の中でゲームが一番好きなのは半ば廃人に近かった磬、次点で俺、そして壮

馬と遥真はどっこいどっこいであった。

 それ以前に、壮馬と遥真は別にゲームが好きだってわけでもなかったはず。

 知る限りは壮馬は艦隊とか軍事系のステラテジーゲームをよくやっていたのは知っ

ているが、あれは軍艦や武器などを効率的に覚えることも出来るからやっていただけ

だったはずだし、遥真に関しても俺達とゲームは本当によくやっていたが、ゲームが好

きなのではなく、俺達とゲームをやることが好き、といった感じだったと思う。

 そんな2人が揃って方向性は違えど、同じゲーム開発の職業に進むなんて……。

 「ちなみに、元々俺は普通にエンジニア関係の仕事に進もうとしたらなんか成り行きで

向こうに行くことになったってだけだからな。遥真に関しては俺は知らん」

  俺も同じ会社で鉢合わせた時は流石に驚いたわ、とおどける壮馬。

 まさに壮馬らしい如何にもな理由に、俺も流石に苦笑を漏らす。

 「ってわけで、俺の身の上はまあ、こんな感じかな。だから、今度は夕ちゃんの……そっ

ちの話を聞かせて欲しいかな。あ、もちろん嫌なら聞かないし、話していい範囲だけで

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もいいから」

  まさかいきなり俺の身の上話を振られたものだから少し悩んだが、まあ、少しくらい

ならと了承した。

 どうも万が一のために外部にも俺の理解者を作るために壮馬にはもう既に俺の正体

は前世の話を除けば但野2佐からそれなりに教えてもらっているようで、案の定、向こ

うでの話というのは艦これの世界に居た頃の俺の鎮守府の生活ということのようだっ

た。

  ただ、ここで話すには流石に人の目がつくため、一度移動しなければならない。

 続きの話は移動中にしよう、と店を出るために会計を済ませようとするとレジまで美

菜さんがやっていたので最後に一言断り店を出る。

 その際、美菜さんが壮馬に「あとで貴方の家にお伺いさせていただきますね」と言っ

ているのが聴こえたが、壮馬がどんな返事をしたのか、俺には聴こえなかった。

  喫茶店には歩いて行っていたから寮も近くなのかと思っていたが、どうやら少し離れ

たところにあるらしく、駅にも車できていたそうだ。

91 夕立(中身転生者)、鎮守府を語る

Page 96: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

 車の中なら余程大きな声を出さなければ聴こえないだろうし、先程の話の続きをする

ことにした。

 「夕が夕立として生まれたのは3年前っぽい! 階級はないけど、所属は舞鶴鎮守府っ

ぽい」

「3年前? どこかで……それはとにかく、舞鶴か。それだったら司令官も中々の階級

だったんじゃないか?」

  壮馬は何かを考えたかのように数言俺にも聴こえないような小さな声で呟いたと思

うと、何事もなかったのように聞き返してきた。

 「提督さんは少将だったっぽい。けど、実力と結果で大本営の反艦娘派のお偉いさんを

黙らせちゃったとても凄い人なのよ」

「へえ、そいつは凄いな。てか、やっぱ反艦娘派なんているのか。おかしいことではない

が、まるで物語みたいだな」

  確かに、反艦娘派は艦これの二次創作には本当にありがちな設定だよな……。

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 俺が居た世界も例に漏れず反艦娘派の存在はあったが、どうにもかなり少数派だった

らしく、大本営の2割程度しか居なかった。

 元帥はむしろ親艦娘派だし、大将連も大体は同様で、一部に中立派に所属しているく

らいの振り分けのようだった。

 中立派も反艦娘派と大体同数ほどが加わっているが、彼らは別に艦娘と仲良くするつ

もりがないわけではなく、ただ単に公と私を分けろという考えなだけで、要は「作戦行

動中、もしくは戦場では兵器。しかし、陸上に上がって人の営みを行っている間は女性」

という、考えを持っているからこその中立派らしい。

 別に親艦娘派も公私を分けていないわけではなく、あくまで意識としての差で出来た

派閥の違いらしいが、内容的に見れば実質的に中立派も親艦娘派とそう変わらないの

で、中立派と親艦娘派が衝突することは滅多にない。

 ただ、逆に言えば反艦娘派にも2割も居る、ということになり、それが大本営の警戒

をくぐりぬけて反艦娘派から送られてくる無茶な命令が何度も提督さんの元に届けら

れる要因となっている。

 例え内部的な敵対勢力であろうとも、軍では階級は絶対と言っていい。

 提督さんも階級的には少将とかなり高い位置だが、流石に中将や大将からの命令には

従わなければなからなかった。

93 夕立(中身転生者)、鎮守府を語る

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夕立俺

 それでも、

の提督さんはそれらの理不尽な命令を一隻も沈めることなく見事に完

遂するのだから、本当に凄い人なのだ。

 「舞鶴鎮守府って言やあ、日本海軍でもかなり大きい方の基地だけど、そっちだとどんな

艦娘がいたの?」

「んー、正直多すぎてどんな、とは言えないっぽい。けど、総艦数は154隻だったっぽ

い。日本艦だと一航戦とか秋月型とか、あと海外艦もそれなりに居たっぽい!」

  ゲーム的に見るとあれ?意外と少ない?となるかもしれないが、あちらの世界ではど

んな仕組みなのかは知らないが、同じ鎮守府に全く同じ艦娘が建造されないようになっ

ていたりする。

 それもあって、総艦数だけを見るなら、うちの鎮守府は全国で5番目に多かった。

 例に漏れず上から横須賀、佐世保、呉、そして対深海戦艦の最前線とも言うべき柱島

泊地である。

 ただし、だからといって絶対に新規艦が出る、というわけでもなく、被ったら被った

で既存艦の艤装だけが出てくるようになっている。

 要はゴミのようなものなんだが、実はこの艤装こそが艦娘の近代化改修に使われる素

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Page 99: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

材で、元になった艦娘に由来して上昇する能力が変化するということだ。

 夕立?もちろん雷装値ですが?

 「そういえば、夕立ちゃんってケッコンカッコカリの指輪してるよな。それって、あれな

のか。本当に司令官のこと好きだったりするのか?」

「い、いや……それは……よく分からないっぽい」

  自慢ではないが、俺は舞鶴では11番目に生まれた艦だった。

 初めの頃は謎の焦燥感からか、遠征ばかりであった俺は提督さんに何度も直談判して

しまったが、今ならあれは反攻作戦に向けて資源を集めつつ、かつ駆逐艦や軽巡洋艦を

出撃させる前にまずは海に慣れさせようという魂胆があっただろうことは手に取るよ

うにわかる。

 提督さんのおかげで俺もここまで……具体的には指輪をくれるようになったまでは

練度が上がったわけだし、今では艦娘達は日本海外問わず、着任している艦娘は全員が

提督さんを信頼するようになっていた。

 だからこそ、俺はどんな気持ちを抱いているのか分からなくなっていた。

 ただまあ、嫌いではない……むしろ好き、という気持ちは正直言ってある。

95 夕立(中身転生者)、鎮守府を語る

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そ・

の・

気・

持・

ち・

は・

大・

切・

に・

し・

て・

お・

け・

よ・

「ふーん……ま、

。てことは、あれか。向こうに帰りたい

のか」

「ま、まあ、その気持ちもなくはないっぽい」

  壮馬には言っていないのだから当たり前だが、俺の本来の故郷はむしろこっちである

はずだった。

 だけど、やっぱり身体が艦娘になったことで心もだいぶ染まったからか、向こうに戻

りたい、仲間と一緒に戦いたい、という気持ちは正直言って強い。

 問題はそもそも戻れるすべなんてものを知らないのと、例え戻れたとしてもやはりこ

の世界と別れることも踏ん切りがつかないことだろう。

  今の俺には、真に寄る辺となるものがない。

 但野2佐は親身にしてくれるが、どのみち他人でしかなく、またこちらに戻ってきて

向・

こ・

う・

で・

人・

が・

信・

用・

出・

来・

な・

く・

な・

っ・

た・

俺・

に・

は・

からの関係しかないため、

まだまだ真に信用は

出来ない。

 壮馬はそもそも俺の正体を知らない。

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 公表さえすれば明かせる時が来るだろうが、いつになるかも分からない。

 家族……そもそも、まだ顔を合わせてすらいない。

 「もしだけどさ、もし迷っているんならさ……一回、こっちの学校に行ってみたらどうだ

?」

「学校、っぽい?」

  何故今その提案を?と疑問に思ったが、壮馬は俺が何かを言う前に言葉を続けた。

 「ああ。なんていうかな……会った時からずっと思ってたんだけどさ、夕、てか夕立ちゃ

んの目がどっかを向いてる気がしてな。多分、司令官や仲間、あとは姉妹艦達も居ただ

ろうし、急に離れることになったから多分窮屈に思ってるんだろ? だからまあ、これ

は荒療治になっちゃうんだけど、ひとまず現状を忙しくしてしまえば、ある程度は気持

ちも楽になるんじゃないかと思って。それに、夕立ちゃんの見た目にもあった友達が必

要だろうしな」

  なるほど、確かに少しこじつけが強いような気もするが、今はちょっと窮屈なのは間

97 夕立(中身転生者)、鎮守府を語る

Page 102: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

違ってはいない。

 その窮屈な理由が大体が外で思いっきり戦えないことに対する欲求不満ってだけで

……。

 舞鶴鎮守府にも駆逐艦専用の……言わば小学校みたいなものがあった。

夕立俺

 当然

も駆逐艦なわけでその学校にいたわけだが……あそこはなんというか、現代

の学校とは違って、教わることが軍事知識や心構え、あとは難解な数学などものすごく

偏りがあったからな。

 艦娘という存在は、基本的に全員頭がいい。

 もちろん個人差もあるが、艦娘は実戦の際に射程計算、射角計算などを瞬時に行って

発砲するため、特に数学面における知能に関しては生まれながらにして超難関大学の大

学院生と比較して何ら遜色ないレベルの頭脳があるのである。

 俺ももちろん例外ではなく、むしろ前世で大学までを経験している下地があるだけ

あって、やはり数学ほどではなくなってしまったものの、数学面以外でも中々に好成績

だった。

 「けど、夕立が学校に入るのは流石に無理があるっぽい」

 

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 けど、俺がこっちで学校に入るには、正直のところ問題が多すぎた。

 まず、俺という存在はこちらの世界ではゲームキャラである、ということ。

 艦これ、というのはそもそも大元になっているサイトに必要な登録年齢が18歳から

であるため普通ならプレイしている人は居ないだろうが、キャラだけは知っている、と

いう中高生が果たしてどれだけ居ることか。

 それに、俺は艤装を身に付けていない状態でも素の身体能力が半端じゃなく高い。

 かつて岩川基地の司令官から「舞鶴の夕立はゴリラと殴りあっても無傷で勝利する」

とまで言わしめたこの怪力、もちろんその司令官は素敵な発言のお返しとしてきっちり

ぶっ飛ばしてやったが、当然こちらではそんなことをすれば死人が出るし、下手すれば

大事故すら起こしかねない。

 そもそも、艦娘は人間の姿をしているものの、人間ではない。あくまで、深海棲艦に

対応する力を持つために人間の姿を取っている軍艦、というのが俺達だ。

 最後に、何より、また学校というものを中学、もしくは高校からスタートするのが正

直面倒臭い、という気持ちが大きかった。

  他にも色々あるが、要は現状ではそれだけ困難なこと、としか言えなかった。

 それを言ってやると。

99 夕立(中身転生者)、鎮守府を語る

Page 104: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

 「ま、確かに普通ならそうだな。けど多分だけど叔父さん、夕立ちゃんには何も言ってな

いかもしれないけど、その辺りは多分もう何か手を打ってるんじゃないかな」

「ええ?」

  少し困惑してしまったが、確かに但野2佐なら俺が……というか、中学生くらいの見

た目をしている俺が学校に行っていないという状況は普通に気にしそうだ。

 体裁とかそういうのじゃなくて、普通に「このくらいの年齢の子が学校に行けていな

いのは可哀想だ」的な感じで。

 ……尤も、艦娘は改造以外では肉体的に成長することはないので、見た目がそうでも

やっぱり中身は子供、という訳ではないが。

睦月型や暁型

 

を除けば。

 「さて……もうすぐで寮に着く。叔父さんが言うにはお前の存在は出来れば公然の秘密

にしておきたいらしいから、これからは艦娘であることの明言は避けつつ、振る舞いは

自由で良いからな」

「はーい!」

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  このやり取りで提督の秘書艦として大本営に行った時のことを思い出しながら待っ

ていると、それほど間もなく到着したので、促されるようにして車を下りる。

 しかし、壮馬が車を駐車し終えたところで、いきなり彼を呼ぶ声が聴こえてくる。

 「あ、お兄ちゃん」

「あ?……げっ」

  壮馬はその声の主の正体を理解するなり、面倒くさそうに顔を顰めた。

日野要

ひのかなめ

 それを見た壮馬の妹……

は、そんな兄の様子に不満そうな表情を浮かべる。

 「もう……お兄ちゃん! なんでいつもそんな面倒くさそうにするの……あれ?その

子、お兄ちゃんの連れ? 彼女?」

「連れではあるのは確かだが、彼女ではない。そういうとこだぞ、本当……こいつは但野

夕。訳あってあの自衛隊の叔父さんのところが引き取った子だ。まあ、これからも度々

会うかもしれないし、宜しくしてくれ」

「ゆ、夕っぽい。よろしくお願いいたします!」

101 夕立(中身転生者)、鎮守府を語る

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「へー、叔父さんが……」

  俺も見知った顔だったので、少し言動が挙動不審になってしまった。

 そう言って要は意外そうに俺を暫く見ていると。

 「なんか……喜人にぃに似てるね、この子」

  さらっとそんなことを言ってのけたのだった。

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Page 107: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

夕立(中身転生者)、壮馬達の仕事を知る

 日野要

ひのかなめ

 

 彼女との直接の関わりは高校1年生からだが、偶然にも彼女の親しい友人の中に

蒲原三波

かんばらみなみ

……名前から薄々理解出来るだろうが、俺と血の繋がっていた妹が含まれてい

たようで、そこから俺と壮馬、三波と要ちゃんを介しての家族ぐるみの付き合いが出来

てしまったのが始まりだった。

 壮馬はあれで非常に頭がいいが、その妹である要ももれなく秀才と言わんばかりの頭

脳を持っていた。

 俺が大学1年生の頃だったか、その頃小学4年生だった彼女の家庭教師を務めたこと

もある。

 小4で家庭教師って……なんて、当時の俺は顔を引きつらせて渋々承諾したものだ

が、要ちゃんは恐ろしい程に理解力が良く、面白くなって次々に色々なことを教えてし

まったのは良い思い出と言える。

 現況はどうかは知らないが、今の年齢は確か丁度高校1年生くらいだったはず。

 目の前に居る要ちゃんは面影だけを残して当時あった如何にも少女然とした幼さは

103 夕立(中身転生者)、壮馬達の仕事を知る

Page 108: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

ほとんどなくなっており、女性らしいメリハリのある美少女にまで成長していた。

  感慨深くなってぼうっと眺めていると、壮馬が俺の頭に手を置くなり。

 「おいおい、夕ちゃんが喜人に似てるって? 確かにあいつはチビでガキっぽい顔はし

てたが、流石にこんな女っぽくはなかったし、ここまで可愛くもなかったぞ?」

「……!? 頭から手を離すっぽい!」

  チビでガキっぽい顔で悪かったな、と内心で毒づきながら壮馬の手を振り払う。

 てか、ここまでってどういうことだ。

 もしかして、前世の俺は多少なりとも可愛かったってか?へこむぞ流石に。

 要ちゃんの目はそんな俺を何処か興味深そうにしながらも、ふぅんとだけ声を漏らし

た。

 「ま、いいけど。あ、でも後で夕ちゃんちょっと貸してね? なんか面白そうな子だし、

色々喋りたいからさ」

「おいおい……俺、叔父さんから直接夕ちゃんの付き添い頼まれてるんだぞ? そんな

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の、頷けるわけが……」

「そういえば、お兄ちゃんのパソコンのネットショッピングの履歴のことなんだけど」

「しょうがないな。夕ちゃん、大丈夫か?」

「簡単に売ったっぽい!?」

  最初は苦言を呈した壮馬だが、何やら要ちゃんが不穏なことを言い出すと、一瞬にし

て手のひらを返してきた。

 こいつ、妹に弱み握られてんのかよ……てか、めっちゃ顔青いんだが一体ネット

ショッピングで何買ったんだよ。

 俺もめっちゃ気になるんだけど……どの道要ちゃんとの対話はほぼ確定的だろうし、

どうせなら後で彼女に聞いてみたら教えてくれたりとかしないだろうか。

 「やった! あ、お兄ちゃんはこの後何か用事ある?」

「あ、まあ、夕ちゃんに職場を見せようと思ってな……」

「おっけ! じゃ、私はお兄ちゃんの寮で待っとくね!」

  それじゃ、と手を振って立ち去る要ちゃんは、まさに嵐のようであった。

105 夕立(中身転生者)、壮馬達の仕事を知る

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 黙って見送った壮馬は「なんで知ってんだあいつ……」と呟いた後、何処か疲れきっ

た表情で「よし、行くぞ」と力のない声で言った。

 そんな様子に俺もからかう気も起きず、哀愁漂うその背中に合掌すると、その後を追

うのだった。

  まあ、後でさっきのことを要ちゃんに聞くことは辞めるつもりはないんだけどな。

  俺達が入ったのは、何の変哲もない、何処にでもあるようなビルだった。

 会社、というからには至極普通なことだとは思うが、壮馬が変人と言うのだからきっ

と突拍子もない人達ばかりのとんでもないところなのだろうと思っていた。

 とんだ風評被害である。

  社内も大した特徴もなく、意外と普通な会社なのかもしれない。

 強いて言うならあちらこちらで恐らく何かのゲームキャラだろうと思しきイラスト

が飾ってあったりしているが、ゲーム会社であるならそれも普通に有り得ることだと思

う。

 とはいえ、俺はゲーム会社なんて当然入ったこともないので全部憶測でしかないのだ

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が。

  受付へと向かうと、身なりの整ったビジネススーツの美人女性が居た。

 壮馬は社員証らしきものを彼女へと渡し俺の事を伝えると、受付の女性はにこりと微

笑むと俺に向かってボードに止められた一枚の書類を渡してきた。

 「貴女が同伴の子ね? じゃあ、これにお名前、住所、連絡先を書いてくれる? 場所は

こことここ、ここね……」

  そう言われたので受け取り、きっちり必要事項を記入していくのだが、途中で問題が

発生。

 住所と言えば、俺の住んでいる場所は海上自衛隊横須賀基地であるのは言うまでもな

い。

 が、肝心の基地の住所を、俺は知らなかった。

 どうしようかと、不安になりながら壮馬の顔を見上げると、壮馬はぎょっとしたなが

らも書類を見て、ああ、そういうことかと住所の欄だけ代筆してくれた。

 

107 夕立(中身転生者)、壮馬達の仕事を知る

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 そういうわけで無事手続きを終えた俺はネックストラップのついたゲスト証明カー

ドを貰い、ようやく社内に入ることが出来た。

 とはいえ、やはり廊下も特筆しておかしい所もなかったため、内心では拍子抜けして

いた。

 壮馬と遙真の担当部署は上にあるらしく、先に遙真の担当するプログラム管理部門か

ら回るらしい。

 「このエレベーターを上がった先が遙真の職場だ……驚くなよ?」

  なんて言われたが、正直どういう意味で言っているのか全く理解出来なかった。

 だが、エレベーターに乗って上がった先で、俺は絶句することとなる。

 「ほら、着いたぞ。ここが……」

「おい吉田ァ! てめえ、この部分しっかりデバッグしたんじゃないのか!」

「ちゃんと!詳細に!言っただろうが! お前が聞いてなかっただけだろ!?」

「……ここが、遙真が担当してる職場だ」

「ええ……」

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  エレベーターのドアが開かれた先……そこに見えたのは、2人の男が怒鳴り合いなが

ら殴り合っている姿だった。

 周囲も我関せずと黙々と仕事をしているかと思いきやたまに野次を飛ばして煽てて

おり、もはや仕事どころではない。

 え、停めなくていいの?と思って見ていたが壮馬は表情も変えることなく飄々として

おり、これが日常茶飯事で見慣れていることを窺わせていた。

 そんな中、ふと、遠くでその様子をあわあわと慌てて心配そうに喧嘩を見ている人が

居た。

 壮馬もそんな彼の姿を認めたようで、俺達は一緒に彼……遙真の元へと歩みを進め

た。

 「よう……相変わらずカオスだな、ここは」

「あ、壮馬! なんでここに? 今日は仕事休みじゃなかったの?」

「ま、そうなんだけどな。夕ちゃんの為だよ。色々と顔繋ぎさせておきたくてな」

「夕ちゃんって……て、本当に連れてきたんだ。こんにちわ、夕ちゃん。グループではた

まに喋るけど、顔合わせはあのデパートぶりだね」

109 夕立(中身転生者)、壮馬達の仕事を知る

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「こんにちわ、っぽい!」

  遙真はぽい?と呟いて首を傾げて壮馬を見るが、壮馬が首を横に振ると、なるほど、と

何かを察したようにそれ以上聞いてくることはなかった。

 誰も彼も、察しが良すぎる奴らである。

 「まあ、見学するなら壮馬が許可を出した範囲で自由にね。良くも悪くも、ここの人達は

おおらかだから……」

「おおらかってより、人格的に隙間がガバガバ過ぎるんじゃないのか? そのくせ、実際

は隙だらけに見えて日本屈指の技術力を持つ奴らしか居ないからセキュリティ面でも

万全なのがタチが悪い……」

「はは……」

  遙真の苦虫を噛み潰したような表情を見て、遙真も苦笑を浮かべるのみでなにも返さ

なかった。

 遙真から変人とは聞かされていたが、まさかここまでやばいところだとは思っていた

ため正直俺も未だに現状を飲み込めていない。

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 気付けば殴り合いは終わっており、先程殴り合っていた彼らは床に倒れ伏していた。

 なお、周りはそんな彼らに視線を向けることすらせず、むしろ時には無視して談笑し

ている姿すら見受けられる。

 会話の内容としてはあのゲームキャラの胸は大きくて素晴らしい、だとか、いやいや

あの子の慎ましやかな胸こそ正義、だとか、ロリhshs……などなど。

 どこかしこも会話の内容は下劣極まりなく最低であり、やはり本当に壮馬とは勝ると

も劣らない変態達の巣窟であると俺は確信した。

 そして最後の奴は絶対に俺に近付けないようにしよう。

  そんなことを内心で固く誓っていると、いつの間にか、倒れている2人の視線が揃っ

て俺の方へと向いていた。

 疲れて草臥れていた2人は一転、目を輝かせて立ち上がると、勢いよく俺へと近寄っ

てくる。

 「おお……いい! いいぞ! なあ君、良かったらこの後俺と一緒にぶっふう!?」

「どうして君みたいな可愛い子がこんなところに? ほら、こんなゴミの掃き溜めみた

いなところに居るのはよくないからあっちにへぶう!?」

111 夕立(中身転生者)、壮馬達の仕事を知る

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「「おおう……」」

「主任方、殴りあってる暇あるのならさっさと仕事してくれません? まだまだバグは

多いんですよ?」

  いきなり詰め寄ってきた彼らをグーパンで制したのは、なんと遙真であった。

 ニコニコと微笑みながらもさりげない怒気を漂わせる遙真の姿は、俺や壮馬をしてつ

い背筋が伸びてしまうほどのものだった。

 そして、そんな剣呑な空気を漂わせる遙真の怒りの矛先が次に向けた先は、先程まで

野次を飛ばしまくっていたチームメンバー達であった。

 「皆もですよ! そんなふざけたことを言いながら仕事を疎かにしたら……わかってま

すよね?」

「「「い、イエスマム!」」」

「マムじゃない!」

「「「イエッサー!」」」

 

神通さん

 何処の軍隊だここは、と俺はまるで

を想起してしまうほどの仕切りっぷりを

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見せる遙真の戦慄していると、遙真は気を鎮め、申し訳なさそうに。

 「ごめんなさい。僕はまだ仕事があるのでこれで……ほら、主任方も起きてください。

行きますよ」

「いてえし、誰がやったと……あ、いや、何でもない。分かった分かった」

「いや本当、怖すぎだよね……さっきはごめんね? 名前も知らない子。多分、壮馬君の

吉田弥

よしだわたる

付き添いの見学者だよね? 俺はデバッガーチームのチームリーダーの

。まあ、

なんというか、のんびりしていってね」

「おっと、俺も謝らないとな……さっきは済まなかった。俺はプログラマーチームの主

草鹿徹也

くさかてつや

任、

と言う。まあ、ここで何か困った時は頼ってくれてもいいぞ……では、失

礼」

「本当、ごめんね? じゃ、僕も行くね……」

  そう言って、最後に一礼してから彼らはそれぞれの持ち場に戻って行った。

 吉田さんだけは部署が違うようで、彼だけ隣の部屋のようだった。

 「ま、こんなもんだろ。吉田さんとも顔繋ぎ出来たのは予想外だったが……言った通り、

113 夕立(中身転生者)、壮馬達の仕事を知る

Page 118: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

変人ばっかだったろ?」

「確かに、壮馬と負けず劣らずだったっぽい」

「まだ言ってるのかそれ……流石にへこむぞ? ま、いい。次は俺の部署だ。上の階だ

から、またエレベーターで上がるぞ」

「ん」

  用の済んだプログラマーチームの部屋を後にすると、次に向かうは壮馬の職場である

エンジニア達の部署のある部屋。

 エレベーターで上がって、次はどんな修羅場を見せられるのかと身構えていたが、い

ざドアが開くと何事も無かったので、ひとまずは安堵した。

 さっきのプログラマー達はとてつもなくうるさかったが、エンジニアの部屋はいい具

合にうるさくも静かすぎてもおらず、中々和気あいあいとした雰囲気であった。

 至る所にパソコンや複雑に絡み合った線に繋げられた機械が置かれているため仕事

をする場所であるのは分かるのだが、正直、雰囲気だけで見れば仕事場というより何処

ぞの家庭のようにしか見えない和みっぷりである。

  そんな何処かほのぼのとした空気に包まれるエンジニアチームだが、壮馬は構わずそ

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の集団達へと歩み寄った。

 「チーフ、仕事も変わりないようで良かったです」

「あらら、壮馬君……今日は仕事は休みでしょ? どうしたの、そんないきなり皮肉なん

て言って……それと、その子は?」

  チーフと呼ばれた人は、驚いたことに少しだけ熟年の雰囲気を漂わせながらも非常に

やり手そうな長身の美女であった。

 彼女は何故ここに、と言わんばかりの大袈裟なリアクションで壮馬を見て、次に面白

そうに俺へと視線を向けた。

 「ま、確かにそうなんですけどね。今日はこの子、うちの叔父さんが訳あって預かってる

子なんですけど、但野夕って言います。折角だしこの子、夕ちゃんの顔繋ぎに来たって

訳ですよ」

「但野夕っぽい。よろしくお願いします!」

  至る所からよろしく、といった声が聴こえてくる。

115 夕立(中身転生者)、壮馬達の仕事を知る

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 プログラマーチームも人数的には多くなかったが、壮馬の他にも休みの人が居る可能

性も無くはないがエンジニアはもっと少ないようで、壮馬とチーフと呼ばれた女性も合

わせて6人しか居ない様子。

 そんな中、チーフと呼ばれた女性は少し考える素振りを見せた後、不敵な笑みを浮か

べた。

 「ふむふむ、なるほどねぇ……夕ちゃん、いや、夕立ちゃんって言った方がいいかな? 

私・

に・

今はまだこの子を世間に出せないから正体は明かさないでおきつつ、顔繋ぎがてら

会いに来ながらも社会に自然体を晒して存在を匂わせて後から大々的に招待を発表す

ることで後ろ盾を構築しつつ、後腐れなく社会に溶け込ませる、と。そういうことね」

「チーフ、今のでよくそこまで分かりますね……まあ、明言はしません。ただ、この子の

ことは夕、と呼んであげてください」

峰倉紫音

みねくらしおん

「大丈夫、分かっているさ。さて、夕ちゃん。私は

だ。心配しなくても、何も言

わないよ。よろしくね」

「は、はいっぽい……」

  さらっと正体をバラされた挙句、所々知らないところもあったものの、思惑まで片っ

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端からバラされたものだから、俺はこの人の勘の良さは艦娘以上と判断した。

 けど、俺が気になったのはそこではない。

 「この人、チーフは日本経済でもトップ層に君臨する峰倉グループの令嬢でね。この人

と仲良くなっておくと、いざという時本当に頼もしいから顔を合わせることに損は無い

よ。というか、俺が本当に顔繋ぎしたかったのはこの人だし」

  そう言われて、やはり、と俺は思った。

 壮馬は俺が異世界出身だと思っているため知らないと思っているのだろうが、峰倉グ

ループのことはよく知っている。

 何せ、俺のかつての両親が共に働いていた場所がある峰倉グループの総本社だったの

だから。

 更に言うなら両親はたまに試供品やらを持って帰ってきていたため、ある意味では、

うちにとってはものすごく近しい企業でもあった。

 「そういうことは本人の居る前で言うことじゃないよ……まあ、夕ちゃんは可愛いし、

色々と面白そうだから困った時に助けてあげることも吝かではないがね」

117 夕立(中身転生者)、壮馬達の仕事を知る

Page 122: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

  まさに言いたいことを隠そうともしない壮馬に峰倉さんは苦笑しながらも、特に怒っ

た様子もなく、むしろ許容しているように見える。

 令嬢と言う割には親しみやすく、個人的にはかなり好印象を持てる人だ、と俺は思う。

 ただ、それだけ凄い人がなんでこんなところで働いているのか、と正直それが疑問と

言わざるを得ない。

 「夕ちゃんはなんで私がここに? と思っているようだね」

  心が読まれた?と思って驚いていると、峰倉さんは「君は分かりやすいね」と笑った。

 「簡単な話、ここの社長と私は個人的な知り合いでね。それに、彼、壮馬君がどうやらう

ちの社員の息子と親密な関わりがあるようだが、そんな息子さんがいきなり行方不明に

なったって言うじゃないか。あの部下……蒲原夫妻にはうちによく貢献してくれてい

てね。これは私も捜索に手伝わなければ、といつでも連絡がしやすいようにここに異動

してきた、というわけさ」

 

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Page 123: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

 なんと、ここでもまさかの俺の話題が出てきたのだった。

 それも、今回もしっかり俺が直接理由になって人が動く理由になっていた。

 人の繋がりというものは意外と身近に密接しているもんなんだな、と改めて思わせら

れた。

 それにしても、うちの両親、まさか社長の娘である人にまで名前を覚えられていたと

は……本社勤めの時点で凄いとは思っていたが、ここまで凄いとは思わなかったから、

逆に現実感が湧かなくて実感がないな。

  それから、今度は他のエンジニアチームのメンバー達とも自己紹介をしつつ、彼らの

役割について色々と聞かせてもらった。

 この会社のエンジニアはいわゆるなんでも屋であり、ゲームについてのプログラム欠

陥の捜索や修復から、セキュリティ面の構築・点検、更にはゲーム外の会社のあらゆる

セキュリティ面など、他にも色々細かい仕事を担当しているらしい。

 仕事が多くて大変なのではないか、と思ったが実はそうではないらしくて、エンジニ

アチームは基本的に緊急的な案件にしか出張ることはないらしい。

 会社の機械に関する事柄は普通に考えて緊急案件なんて滅多にあるはずもなく、ゲー

ムに関してもなまじ下のプログラマーチーム達があまりにも優秀すぎるために相当な

119 夕立(中身転生者)、壮馬達の仕事を知る

Page 124: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

案件でもない限りは、むしろ暇だということだった。

  なんて、仕事に支障がない程度に当たり障りのないことを聞いたりしていると、不意

に、壮馬のスマホが振動し始めた。

 一言断って壮馬だけ席を外し、そして暫くした後に戻って来ると。

 「すまん、夕。ちょっと想定より早いが、今から寮に行かないか?」

  と、そんなことを言った。

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夕立(中身転生者)、事態が進む

  寮に戻ろう。

 あまりに突発的な提案……いや、既に確定している事項とばかりの物言いに、俺もつ

い怪訝な表情を浮かべる。

 ただ、戻ってきてからの壮馬の表情は差し迫ったという状況といった雰囲気は感じら

れないが、それでいていつものふざけたような、もっと悪く言うなら格好つけたがりの

雰囲気は感じず、真剣であることは理解出来た。

  けど、何故そうなったのか、気になることは気になるのだ。

 「なんでっぽい?」

「叔父さんから連絡が来た。出来るだけ早く、夕に見て欲しいものがある、と。あと、壮

馬に写真を送ってあるから、それは他の人に見せるなよ、とも言ってるな」

  はて、と、それが何故俺に繋がるというのか。

121 夕立(中身転生者)、事態が進む

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 とはいえ、やはり出来るだけ早く、の部分が気にかかる。

 今の時間はまだ晩の点呼にまで至っていない……どころか、そもそもまだ昼飯前と

いってもいい時間だ。

 中途半端と言ってもいいこの時間に……但野2佐が催促まで入れてきたということ

は、やはり予測不能なことがあったのだろう。

 「分かったっぽい。峰倉さん、また今度っぽい!」

「もうちょっと喋りたかったんだけどねぇ。ま、仕方ないわね。元気でやりなよ!」

「チーフ、すみませんが俺もここで退出します。お仕事お疲れ様です」

「そんなの良いって。そもそも元々休みだろう? なら、もう君には用事はないはずだ

からね。じゃあ、夕ちゃん、また今度ね」

  また今度来るっぽい!と返事を返してから、俺達は足早に会社を出た。

 寮はすぐ近くなのですぐに到着はしたのだが、なんというか、壮馬の足が不自然なく

らいに速く、俺が急を要する事態ではないと思っていたのはもしかしたら間違いだった

のかもしれないと今更ながらに思い至った。

 

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 寮は社員証を鍵代わりのカードキーとして使うタイプらしく、カードを通すと、よう

やく壮馬の住んでいるらしい一室へと入ることが出来た。

 彼の住む部屋は1DKのようで、居間を彼の私室にしているらしい。

 私室の中は彼らしいというか、あらゆる軍艦の模型が飾っており、その中でも彼が昔

から好きだと言っていた陽炎型が最も分かりやすい位置に並べられており、あとはベッ

ドに本棚、あとはノートパソコンが置かれた小さな机と椅子が1つあるくらいだった。

 「あれ、思ったより早かったね。ま、いいけど……おかえり」

  そして何故か、あたかも当然のように彼の妹である要ちゃんもその椅子に座って何処

から持ってきたのかお菓子を食みながら寛いでいた。

 要ちゃんは意外そうに目を丸くしながらお菓子を急いで口の中に入れてから駆け

寄ってくる。

 壮馬はと言うと、そういやこいついたな、とばかりにげんなりした表情を浮かべてい

た。

  というか、この子は一体どうやって家に入ったんだ?

123 夕立(中身転生者)、事態が進む

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 「そういや居たなお前……約束を反故にするようで済まないが、今日は帰ってくれない

か? 夕ちゃんと大切な話があるんだ」

「大切な話? ほほう、それは一体どんなことなのかな?」

  壮馬の言ったことで、要ちゃんは不敵な笑みを浮かべる。

 その表情はやはり思春期女性らしい思考をしているのだろうと俺でもはっきり理解

出来たこともあり、壮馬は俺にしか聴こえないだろうほどに小さな声で「だから嫌だっ

たんだ」と呟いていた。

 妹の三波も大体こういった恋愛事情にはやかましかったこともあり、こいつも苦労し

てるんだな、と内心で同情である。

 「要、今はあまり茶化してやれそうもない。俺のじゃない、こいつにとっての緊急事態な

んだ。本当に帰ってくれ」

「……それって、私は聞いちゃ駄目なの?」

「ああ、駄目だ。これは叔父さんの指示なんだよ。分かってくれ」

 

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 続けた壮馬の真剣な声色に、要ちゃんも引っかかったものがあるのか、今度は全くふ

ざけた様子もなく純粋な疑問をもって聞き返すが、壮馬はそれをばっさりと断ち切っ

た。

 ……というか、俺はまだ何も聞かされていないんだが、俺にとっての緊急事態とは一

体……?

  彼の返事が不満だったのか、あからさまに不機嫌そうな表情を浮かべるが、壮馬は毅

然としたまま全く動じる様子はなかった。

 「……けち」

  やがてどうあがいても無理そうだと思ったのか、諦めた様子で要ちゃんはのんびりし

た足取りで玄関のある廊下へと出ると、最後に一度振り向いて、怒り顔で。

 「でも!今度こそは絶対夕ちゃんを借りるんだからね!」

  と叫んだ。

125 夕立(中身転生者)、事態が進む

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 壮馬ははあ、とひとつ溜め息を吐くと俺の方をじっと見るると。

 「俺はいいが、夕ちゃんに頼めよ」

「夕ちゃん、いいよね!?」

「っぽ、ぽい!?」

「よし! 約束だからね!」

  って、まだ何も言ってねえ! 今のは了承の返事じゃないから!

 などと言い返す間もなく、彼女はそのまま逃げるようにして部屋を出て行ってしまっ

た。

  呆然としたまま固まる俺に、壮馬からそっと肩に手を置かれたかと思うと。

 「ま、そっちはそっちで頑張ってくれ……」

  などと言われてしまった。

 全くもって有難くないことだが、もう過ぎたことは仕方がない。

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 壮馬はやれやれ、と首を振って「準備するからちょっと待ってろ」と言った後に何や

らパソコンを起動して何かを始めたので、俺もひとまずベッドに腰掛けて待つことにし

た。

 それから数分程度待った時、ようやく壮馬からこっちに来いとばかりに手を振られた

ので、その指示に従った。

 『聴こえるか、夕』

「但野さん!?」

  不意にパソコンから聴こえてきたその声は、最近になってようやく聴きなれたもの、

但野2佐のものだった。

 画面を覗き込んでみると、どうやらビデオ通話にしているらしく、但野2佐の威圧感

のある顔がはっきりと映し出されていた。

 なんで?と思いながら壮馬の方を見るが、壮馬からは「叔父さんが直接言いたいこと

があるんだと。夕ちゃんのこれからに関わる重大なこととだけ聞いた」と言われたくら

いだったので、壮馬もこれ以上のことはまだ何も聞かされていないらしい。

 

127 夕立(中身転生者)、事態が進む

Page 132: 転生者夕立ぎ現代た帰 還く姿タハハジハケ逆転移ヵシヵハゴケ現代世界ジ生ァボ話ジガく何故ェヤセビタャ書ェきェポダし艦隊ェポィヵヘヤじスわゑぉゐぴいぷぽゼ異世界転生ヵケ主人公ーぎ夕立タききグポビぎ自分ー元け生ァシわケぎ現代タ日本ドスくシわケくきグタ作戦行動中ぎ謎タ光ゼ包ハポケ夕立ダ

『どうやら聴こえているようだな。いきなり呼び出してしまい、申し訳ない……壮馬、先

程送ったものを夕に見せなさい』

「はいはい、自分で送ればいいのに……っと、あった。これだ」

「これ、っぽい?」

  壮馬のSNSの個人チャットに送られていたらしいそれは一枚の写真だった。

 何かの鉄屑だろうか?見た感じでは、元々何かの装甲に使われていたもののように見

える。

 恐らく手痛い何らかの攻撃を受けたのだろうと思わざるを得ないほどにボロボロで

もはや残骸と言ってもおかしくない状態だが、これがどうしたというのだろうか。

 『これは数日前、とある海域で突如発見されたものだ。それも、浮かび上がってくるよう

に、だ。発見したのは護衛艦やまぎり。不審に思った彼らは当物体を引き揚げた後、基

地に持ち帰りとある機関に成分分析を依頼したらしい……のだが、その答えは全く存在

しない物質、いわゆる未知であったということだ』

「待ってくれ叔父さん。俺にはどうにもそれがとんでもない衝撃を受けてひしゃげてい

るように見えるんだが、なんでそんなものが海に?」

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「どうもこうもない。後から私も直接目で確認し、そして触れたりもしたのだが、確かに

お前の言う通り、これは外部からの強い衝撃によって出来たものには違いない。恐らく

だが、魚雷や爆雷のような衝撃兵器を受けでもしない限りはこうはならないだろう……

が、当然のことではあるが、これを回収した海域での戦闘行動、もしくはそれに類似し

たような行動は、横須賀基地の記録を見る限りでも今までに確認されていない。正直な

ところ、私達にも全く分かっていないと言ってもいいだろう」

「おいおい、どういうことだよ……」

  理解不能とばかりに唸る壮馬に反して、但野2佐は変わらぬ冷静なまま、しかし表情

だけは心做しか普段よりも一層厳しめに見えた。

 但野2佐は護衛艦はるさめの艦長だが、実際の所属は横須賀基地ではなく、佐世保基

地である。

 元々演習やその他の要因から偶然横須賀に来ていたわけで本来なら既に佐世保に

戻っているはずなのだが、俺という存在が現れたせいで第一発見者であることと、また

俺が但野2佐に懐いていることから護衛感はるさめは横須賀基地に残留しているとい

うのが現状だ。

 ふと、但野2佐と目が合った。

129 夕立(中身転生者)、事態が進む

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 『話はまだ終わっていないぞ、壮馬。ここからが肝心な部分だ……先程、とある海域で発

見と言ったがな。これが基地からほど近い、横須賀沖150キロ地点で発見されてい

る。夕、今言っていることが分かるか?』

  150キロとなると、言った通り本当に相当近いな……。

 確かにその距離ともなると、少し沖合に出ただけで分かるな。

 俺の時も、割とすぐに見つかったし……。

 と、そこまで考えたところで、但野2佐の言っていることをようやく理解した。

 いや、理解出来てしまったと言うべきか。

 『……夕には分かったようだな。そうだ、この謎の物体が発見されたのは、夕が発見され

た海……それも、夕の立っていた地点から数百メートル程度の距離から発見されてい

る』

  但野2佐は努めて何事もないかのように言っているが、俺がこの鉄屑に関係している

であろうという考えには至っていることだろう。

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 そして俺は、先程の答えに及んだの同時、この鉄屑の正体にも思い至っていた。

思・

い・

出・

し・

て・

い・

た・

 いや、

 「これ……深海棲艦の装甲っぽい」

「ちょ、まじかよ……」

『……やはりか』

  改めて見ると、俺にはそれがとても見慣れているものだということに気が付いた。

 画像に映っている鉄屑の正体は恐らく潜水カ級のものだろう。

 となると、この攻撃跡というのは爆雷攻撃のものであるというのは確か。

  というか……。

 「但野さん、もしかして薄々分かってたっぽい?」

『まあ、そうなるな。とはいえ、この世界では存在しないものであるが故、確証はなかっ

たが』

 

131 夕立(中身転生者)、事態が進む

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 まだ発見されていない未知の物質であるにも関わらず明らかに手が加えられた形状

であり、また俺が転移してきた位置とほとんど距離がなかったことから艦これ世界のも

のであるだろうことは想定済み。

 更に、装甲のような形をしていることからも艦これ世界で艦娘ではなくこのような装

甲を持つ軍艦を海に出すことはどうにも考えられず、消去法から深海棲艦ではないかと

も考えていたらしい。

 流石艦長を務めているだけあって、頭の回転が速かった。

 『それで、この深海棲艦に心当たりは?』

「見た感じではカ級っぽい。けど、ソ級の可能性も無くは無いっぽい。この壊れ具合は

爆雷のせいっぽい」

  まあ、この破損具合からしても十中八九カ級だろうけど。

 そんな推論をしていた俺達の隣で口を噤んでいた壮馬だったが、ついに我慢が出来な

くなったようだ。

 「ちょ、ちょっと待て。こっちに深海棲艦も来たってことじゃねえか! 大丈夫なのか

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!? それに、カ級って潜水艦だろ!? それって、今出てる船は狙われるんじゃないのか

!?」

『落ち着け、壮馬。恐らくそれは無いと思われる』

  矢継ぎ早に言う壮馬を宥める但野2佐に、深海棲艦出現の危機だというのに焦りの表

情は無い。

 その様子を見て、壮馬もすっかり冷静になれたようで、次第に落ち着いてきた。

 『こちらの世界に来たのは深海棲艦ではなく、深海棲艦の残骸だ。やまぎりには少しば

かり対潜装備も積んでいたが、一門も使ってはいない。まだ潜水艦隊による哨戒は行わ

れていないが、恐らく生きた深海棲艦はこちらには来ていない……と信じたい』

  それに、このような非常時のために私達自衛官が居る、と物珍しい笑みを浮かべなが

ら、但野2佐はそこで話を断ち切った。

 対して壮馬は、不満は抱いているようだが、文句自体はなかったようだ。

 「……分かった。まあ、まだ正直その言葉は信じられないが、俺には何も出来ることはな

133 夕立(中身転生者)、事態が進む

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いしな。けど、叔父さん。無理は禁物だからな」

『気持ち命じておく』

「全く……それで、今日の話ってこれで終わりか?」

『いや、まだだ。というよりも、夕立にとってはむしろこれからの方が重要になるかもし

れない』

  やっと話が終わった、と思ったのだが、どうやらまだあったらしい。

 今の話も俺にとってはかなり衝撃的なものだったが、これより上があるのか、と正直

げんなりしてきている。

  しかし、俺はこれからの話でとんでもないことを聞かされることとなった。

 『夕……夕立には、君が着ていたような服に似ているセーラー服を着た、小柄なピンク色

な子が、仲間には居なかっただろうか』

「え? そ、それなら夕立の一つ下の妹の春雨が多分当てはまるっぽい。けど、いきなり

どうしたの?」

『そうか……よく聞いて欲しい』

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  但野2佐は一息分の間を置くと。

 『深海棲艦カ級の残骸を回収する直前、護衛艦やまぎりは海上にて先程言った容姿に酷

似する艦娘と思しき存在と接触した。しかし……』

「えっ」

  呆然とする俺に但野2佐は申し訳さそうな表情を浮かべる。

 『駆逐艦春雨と思われる彼女は数発、主砲を散らしたかと思うと水しぶきに乗じて逃走。

以後、行方不明となった』

  この報告をきっかけに、俺の生活が急変し、日常とは程遠いものとなることを、今は

まだ知らない。

 

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