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難治性疾患における服薬カウンセリングの 患者報告アウトカムに基づく定量的評価に関する研究 川口 東京薬科大学 博士論文 2014 年度)

公表用学位論文刷用論文 (保護)...Treatment of Cancer Core Quality of Life Questionnaire(EORTC QLQ-C30)およびBreast(BR) 23を用いた23)。EORTC QLQ-C30は5つの機能(「身体機能」、「役割機能」、「情緒機能」、「認

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難治性疾患における服薬カウンセリングの

患者報告アウトカムに基づく定量的評価に関する研究

川口 崇

東京薬科大学 博士論文

(2014年度)

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目次 略語一覧 .................................................................. 1 緒言 ...................................................................... 2 第一章 乳がん患者における服薬カウンセリング前の QOL とその決定因子 ........ 3 第一節 序論 ............................................................ 3 第二節 方法 ............................................................ 3 第三節 結果 ............................................................ 7 第四節 考察 ........................................................... 13 第二章 乳がん患者における服薬カウンセリングに対する選好傾向:離散選択実験15 第一節 序論 ........................................................... 15 第二節 方法 ........................................................... 16 第三節 結果 ........................................................... 22 第四節 考察 ........................................................... 30 第三章 がんおよび HIV 感染症患者の治療選択における「意志決定の葛藤」に与える

......................................................................... 33 服薬カウンセリングの影響 ................................................. 33 第一節 序論 ........................................................... 33 第二節 方法 ........................................................... 34 第三節 結果 ........................................................... 38 第四節 考察 ........................................................... 50 総括 ..................................................................... 52 研究結果の掲載誌 ......................................................... 54 謝 辞 ................................................................... 55 引用文献 ................................................................. 56 付録 1 離散選択実験に用いた属性と基準の説明 ............................. 63 付録 2 Decisional Conflict Scale 日本語版 ............................... 64 付録 3 用語について ..................................................... 65

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1

略語一覧

AGFI ; Adjusted goodness of fit index

AIC ; Akaike’s information criterion

AP ; Appetite loss (used in EORTC QLQ-C30)

ART ; Antiretroviral therapy

BRFU ; Future perspectives (used in EORTC QLQ-BR23)

BRST ; Systemic therapy side effects (used in EORTC QLQ- BR23)

C.I. ; Confidential interval

DCE ; Discrete choice experiments

DCS ; Decisional conflict scale

EF ; Emotional functioning (used in EORTC QLQ-C30)

EMA ; European Medicines Agency

EORTC

QLQ-C30

; European Organisation for Research and Treatment of Cancer Core Quality of

Life Questionnaire

FA ; Fatigue (used in EORTC QLQ-C30)

FDA ; Food and Drug Administration

GFI ; Goodness of fit index

GHS ; Global health status (used in EORTC QLQ-C30)

HIV ; Human immunodeficiency virus

IIA ; Independence of irrelevant alternative

OR ; Odds ratio

PRO ; Patient reported outcome

QOL ; Quality of life

RMSEA ; Root mean square error of approximation

S.D. ; Standard deviation

SDM ; Shared decision making

S.E. ; Standard error

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緒言

薬剤師の役割は国際的に大きな変革期にあり、従来の医薬品管理を中心とした業務に加え、

「患者中心の医療」の提供が求められている。「患者中心の医療」という概念は、欧米にお

いて広く浸透しつつあり、新薬開発では患者の声が重要視されるようになっている。患者の

声をデータとして測定すること、つまり、医療者など他者の介入が含まれない、患者から直

接得られた報告に基づく健康状態に関する測定は、患者報告アウトカム(Patient reported

outcome; PRO)と呼ばれている。PROとは、「患者の回答について、臨床医や他の誰の解釈も

介さず、患者から直接得られる患者の健康状態に関するすべての報告である」と定義されて

いる 1)。Baschらの報告によれば、患者は自身の症状を評価するのに最も適した存在であり、

また医療者は、訴えのある症状を患者よりも軽症に評価する傾向がある 2)。そのため、患者の

主観的な症状を対象にした医薬品の承認申請においても、PRO の測定が重要視されている。

PROは生活の質(Quality of Life; QOL)や有害事象、アドヒアランスの評価のみならず、新薬

の価値評価、医薬品の承認申請にも用いられているが、患者主観を評価に取り入れるため、

使用する尺度や試験デザインには注意点があり、アメリカ食品医薬品局(Food and drug

administration; FDA)、欧州医薬品庁(European medicines agency; EMA)は臨床試験における

PRO の使用に関するガイダンスや考察書を公表している。このように、患者中心の医療の普

及に伴い、患者の価値観や患者自身による直接評価の重要性が認知され、臨床試験に用いる

方法論が整備されつつある。

薬剤師が患者に提供する重要なケア、かつ役割の1つに、服薬カウンセリングがある。患

者を中心とした服薬カウンセリングには、単に服薬方法や副作用を伝達するのではなく、心

理・社会的側面に配慮し、治療目標を共有する双方向性のコミュニケーションが必須となる。

この患者中心の服薬カウンセリングが、患者のアドヒアランスや QOLを向上させることがで

きると考えられている。本邦において、がんやヒト免疫不全ウイルス(Human immunodeficiency

virus; HIV)感染症、腎臓病など様々な領域における専門薬剤師・認定薬剤師制度が設立され、

薬剤師の専門的な役割が期待されている。しかし、薬剤師の服薬カウンセリングに関するエ

ビデンスは乏しく、薬剤師—患者間のコミュニケーションなどを含め、その在り方は未だ発展

途上である。

以上の背景から、本論文では薬剤師の重要な職能の1つである服薬カウンセリングについ

て、PRO に基づいた評価法の開発と、その定量的評価を目的とした。第一章では、がん薬物

療法開始前の乳がん患者における QOL を後方視的に解析し、服薬カウンセリング時の QOL

とその決定因子について探索した。第二章では、服薬カウンセリングに対して乳がん患者が

期待する価値観を評価するために、離散選択実験(表明選好法)を用いてその選好傾向を評

価した。更に第三章では、難治性疾患患者に対する服薬カウンセリングの有効性を評価する

ために、がん及び HIV 感染症患者の治療選択における「意思決定の葛藤」を定量化する尺度

の日本語版を開発し、これを用いて薬剤師による服薬カウンセリングの影響を前後比較試験

にて検討した。

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第一章 乳がん患者における服薬カウンセリング前の QOLとその決定因子

第一節 序論

乳がんは本邦の女性において罹患者数が最も多いがんであり、その発症率は世界的に増加

している。新規に乳がんと診断された患者は、2007年時でその 10年前から 60%ほど増加し、

5 万人超となっている 3, 4)。乳がんと診断されることは、近年の臨床試験においてその測定が

必須である QOL に影響し、ストレス要因になると考えられている 5)。実際に、精神的苦痛は

乳がんの死亡率、コンプライアンス、QOL に影響することが報告されている。また、新規に

乳がんと診断された患者の鬱(うつ)の有病率は 1.5〜4.6%とされおり、更に、術後の全身治

療は患者の QOL に悪影響を及ぼすことが明らかとなっている 6-11)。したがって、薬剤師にと

って、患者が治療の意思決定をする前に、薬物療法の QOLに対する影響を情報提供すること

は重要である 12, 13)。

がん領域の薬剤師のコンピテンシー(能力)には、これまでの医薬品管理を中心とした業

務に加え、患者を中心とした医療・ケアが求められるように変化しつつある 14, 15)。2005年に

日本医療薬学会が、がん専門薬剤師認定制度を設立しており、本邦においても他国と同様に、

薬剤師の臨床的な役割が大きくなりつつある 16)。薬剤師−患者のコンコーダンスおよびコミュ

ニケーション、つまり服薬カウンセリングが、患者の薬物療法への理解を改善しうることや17, 18)、薬剤師の介入が患者ケアを改善することが既に報告されている 19)。しかし、実際にはが

ん領域の服薬カウンセリングに関する実践的な科学的根拠が乏しい状況である。

近年、患者の主観的な症状の評価については、PRO の測定が臨床試験および日常診療にお

いて注目されている 20-22)。そこで我々は、服薬カウンセリング前の患者が記載した PROであ

る QOL調査票を解析することによって、服薬カウンセリングをより患者中心にする知見、つ

まり服薬カウンセリング時の QOLとその決定因子に関する科学的根拠が得られると仮定した。

本研究は、服薬カウンセリング実施前の乳がん患者の QOLを解析し、服薬カウンセリングに

関する科学的根拠を探索することを目的に実施した。

第二節 方法

2-1 研究概要と対象

本研究は乳腺クリニックであるナグモクリニック東京院単施設におけるレトロスペクティ

ブ(後方視的)試験である。この施設では、身体機能および症状の評価を目的に、術後治療

を決定する外来前、つまり術後治療に関する服薬カウンセリングが未実施の患者に対し、QOL

調査票の記載を依頼している。本研究では、この QOL調査票を利用して、服薬カウンセリン

グ前の乳がん患者における QOLをレトロスペクティブに調査した。対象は経乳輪皮下乳腺全

摘術または乳房温存術を受けており、病理学的に浸潤性乳がんが確認され、認知障害がなく、

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術後治療を決定する最初の外来である患者を適格とした。日本語が母国語ではない、または

重篤な精神疾患を持つ患者は除外した。

2-2 測定項目

2-2-1 QOL

日本語で信頼性および妥当性が検討されている QOL調査票のうち、QOLとその構成概念で

ある症状および機能との関連性を検討することができる、European Organisation of Research and

Treatment of Cancer Core Quality of Life Questionnaire(EORTC QLQ-C30)および Breast(BR)

23を用いた 23)。EORTC QLQ-C30は 5つの機能(「身体機能」、「役割機能」、「情緒機能」、「認

知機能」、「社会機能」)と 9つの症状/項目(「嘔気/嘔吐」、「倦怠感」、「呼吸困難」、「痛み」、「睡

眠障害」、「食欲不振」、「便秘」、「下痢」、「経済的困難感」)、そして「全般的健康感(Global health

status; GHS)/QOL」の下位尺度で構成された全 30項目の質問票である。BR23は乳がん用の

サブモジュールで、4 つの機能(「容姿」、「性生活」、「性生活の満足度」、「健康の見通しにつ

いての心配」)と、4つの症状/項目(「治療副作用」、「腕」、「乳房」、「脱毛」)の下位尺度で構

成された全 23 項目の質問票である。GHS/QOL は「とても悪い」から「とてもよい」の 7 段

階で評価され、その他の項目は全て「まったくない」、「少しある」、「多い」、「とても多い」

の 4段階で評価される。いずれも EORTCのスコアリングマニュアルに沿って 0 - 100点で得

点化され、機能は得点が高いほど、症状/項目は得点が低いほど良好な状態を示す。

2-2-2 患者背景

患者の年齢、病期、閉経状態、婚姻状態、病理、手術からの経過日は診療録より情報を収

集した。

2-3 研究手順

本研究では、2008年 12月から 2011年 5月にナグモクリニック東京院を受診し、QOL調査

票を記載した患者のうち、適格規準を満たす患者 95名の調査票を対象とした。

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2-4 統計解析

2-4-1 患者背景、EORTC QLQ-C30および BR23のスコア

患者背景および EORTC QLQ-C30および BR23のスコアを要約するために、各項目の平均お

よび標準偏差を算出した。

2-4-2 GHS/QOLを目的変数とした重回帰分析

解析の流れを Figure 1に示した。GHS/QOLと、QLQ-C30および BR23のその他の下位尺度

との相関について、スピアマンの順位相関係数を算出した。重回帰分析に用いる変数につい

て、まず GHS/QOLとの相関が有意水準 5%で有意でない下位尺度を除外した。次に、有意水

準 5%としてステップワイズ法(変数増加法)を実施して、下位尺度の中から解析に用いる変

数を選択して重回帰モデルを作成した。

2-4-3 GHS/QOLの決定因子の探索

重回帰分析で使用した変数と GHS/QOLの因果関係を探索するために、観測変数間の因果モ

デルを検討するパス解析を行った。パス解析では複数のパス図を作成し、適合度として

Goodness of fit index; GFI、Adjusted goodness of fit index; AGFI、平均二乗誤差平方根(Root mean

square error of approximation; RMSEA)、赤池情報量規準(Akaike’s information criterion; AIC)を

総合的に判断し、最適なモデルを選択した。選択されたモデルにおいて、各変数間での標準

化直接効果(原因を表す変数が、結果を表す変数に対して与える直接的な影響)、標準化間接

効果(原因を表す変数が、他の変数を介して結果を表す変数に与える間接的な影響)、標準化

総合効果(直接効果と間接効果の和)を算出した。

2-4-4 必要対象数

解析に必要な対象数は、重回帰分析を 5 つの変数を用いて実施すると仮定し、効果量を

medium、検出力を 80%、有意水準を 5%とすると、93例が必要と推定された。

2-4-5 統計ソフトウェア

変数の因果関係を検討するパス解析には Amos 18® (SPSS Inc. Chicago, IL, U.S.A.)、他の解析

には JMP (version 8.0.2, SAS Institute Inc. Cary, NC, U.S.A.)を用いた。

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EORTC QOL Questionnaire

↓ ↓

EORTC QLQ-C30

5 functions、9 symptoms/items

BR23

4 functions、4 symptoms/items

Function Physical functioning

Role functioning

Emotional functioning

Cognitive functioning

Social functioning

Function Body image

Sexual functioning

Sexual enjoyment

Future perspective

Symptoms

/ Items

Fatigue, Nausea and vomiting

Pain, Dyspnoea, Insomnia,

Appetite loss, Constipation

Diarrhoea,

Financial difficulties

Symptoms

/ Items

Systemic therapy side

effects

Breast symptoms

Arm symptoms

Upset by hair loss

↓ ↓

Exclude the items which correlated weakly with GHS/QOL

Stepwise multiple linear regression analysis and path analysis was conducted to select the

variables and to test the statistical association between selected variables and GHS/QOL

Fig. 1 - Flow of statistical analysis

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2-5 倫理的配慮

本研究はヘルシンキ宣言および疫学研究に関する倫理指針(平成 19年文部科学省告示第 438

号平成 20 年 12 月 1 日一部改正)に従って実施した。本研究に用いた調査票は、外来前に患

者の同意を得て身体および情緒の状態を評価するために用いているものを利用し、倫理委員

会より承認を得て実施した。

第三節 結果

3-1 対象

総じて 95名の患者を対象とした。2名が日本人ではなかったため除外し、最終的に 93名の

調査票を解析対象とした(Table 1)。対象は全て女性で、平均年齢(標準偏差)は 47.3(9.0)

歳であった。64名(68.9%)はステージⅠの乳がんで、69名(72%)が閉経前、62名(67%)

の婚姻状態は結婚であった。リンパ節への転移は 81%が陰性であったが、16%が 1~3個、3%

が 4個かそれ以上に転移を認めた。83%の患者は乳房再建術を施行されており、95%の患者は

術後 2ヶ月以内の来院であった。

3-2 服薬カウンセリング前の QOL

EORTC QLQ-C30と BR23の各項目をスコア化した結果を示した(Table 2)。「GHS/QOL」

の平均値は 68.1(範囲 16.7 – 100)であった。全患者が全身治療開始前であり、「脱毛」の評

価は不可能であった。がん薬物療法の開始前にも関わらず、「治療副作用」の平均値は 11.2

(範囲 0 – 52.4)であった。「性生活」、「性生活の満足度」についてはそれぞれ 8名、76名で

欠測値であった。

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Table 1 - Patient characteristics

Value %

n

93

Age (S.D.) 47.3 (9.0)

Current Menopausal Status

Yes 25 26.9

No 68 73.1

Marital Status

Married 62 66.7

Not Married 23 24.7

Separated 8 8.6

Stage

1 64 68.9

2 24 25.8

3 5 5.3

Positive Lymph Nodes

0 72 77.4

1–3 18 19.3

4–9 3 3.2

Time from surgery to initial ambulatory care

Within 1 month 30 32.2

1 month to 2 months 58 62.4

Over 3 months 5 5,4

Reconstruction

Yes 77 82.8

No 16 17.2

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Table 2 - Results of EORTC QLQ-C30 and BR23 scores

Variable Score

Mean S.D.

EORTC QLQ-C30

Global Health Status/QOL 68.1 21.6

Function

Physical Functioning 87.0 12.8

Role Functioning 82.3 19.6

Emotional Functioning 77.3 15.4

Cognitive Functioning 86.8 14.7

Social Functioning 84.6 20.4

Symptom

Fatigue 28.9 22.7

Nausea/Vomiting 2.7 8.3

Pain 26.7 22.7

Dyspnea 10.7 21.0

Insomnia 19.6 26.2

Appetite Loss 7.2 19.7

Constipation 21.5 27.2

Diarrhea 5.7 12.6

Financial Difficulties 19.0 23.4

EORTC BR23

Body Image 74.1 22.3

Sexual Functioning (n = 85) 90.3 13.7

Sexual Enjoyment (n = 17) 71.6 20.0

Future Perspectives 46.5 28.9

Systemic Therapy Side Effects 11.2 10.9

Breast Symptoms 27.6 19.8

Arm Symptoms 25.8 16.9

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3-3 QOLに影響する因子

「GHS/QOL」との相関が有意水準 5%で統計学的に有意でない変数は、「嘔気/嘔吐」、「便

秘」、「下痢」、「性生活」、「性生活の満足度」であった。これらの変数を除外し、ステ

ップワイズ法により重回帰モデルを作成した結果、「情緒機能」、「倦怠感」、「食欲不振」、「健

康の見通しについての心配」、「治療副作用」の 5つの変数が選択された。モデルの決定係数

および調整決定係数はそれぞれ 0.63および 0.61であった。これは、選択された 5つの変数で

「GHS/QOL」の約 6割を説明することができることを意味している。選択された 5つの変数

の中では、「倦怠感」が最も強く「GHS/QOL」に影響を与えていた(標準化係数 -0.54、p < 0.0001)

「情緒機能」、「食欲不振」、「健康の見通しについての心配」、「治療副作用」の標準化係数は

それぞれ 0.23(p = 0.0092)、 −0.15(p = 0.0471)、0.24(p = 0.0092)、0.19(p = 0.0347)で

あった。この結果から、「倦怠感」は「GHS/QOL」に対し、他の変数より 2倍ほど強い影響

を持っていることが明らかとなった。

3-4 QOLに影響を与える因子の因果関係

パス解析の適合度係数に基づき、最終的なモデルを選択した(Figure 2)。選択されたモデ

ルでは、GFIが 0.997、AGFIが 0.976、RMSEAは 0.000であり、良好なモデルであることが示

された。標準化直接効果,標準化間接効果、標準化総合効果を Table 3に示した。重回帰分析

と同様に、「GHS/QOL」に対する最も強い標準化直接効果を示した変数は「倦怠感」(-0.543)

であった。この「倦怠感」の「GHS/QOL」への影響は、2番目に「GHS/QOL」への影響が大

きい「情動機能」(0.235)より、約 2倍高い値であった。「治療副作用」および「情緒機能」

の「GHS/QOL」に対する総合間接効果はそれぞれ-0.380、0.310であった。標準化直接効果お

よび標準化間接効果の合計である標準化総合効果では、「倦怠感」(0.587)と「情緒機能」

(0.544)の 2つが「GHS/QOL」に最も影響を与えている変数となった。このモデルでは、「情

緒機能」、「治療副作用」、「健康の見通しについての心配」が「倦怠感」の原因となって

いた。これら「倦怠感」の原因の中では、「治療副作用」の標準化総合効果(0.495)が最も高

く、「GHS/QOL」への影響は「健康の見通しについての心配」(-0.221)の約 2倍高かった.「情

緒機能」は「倦怠感」に対して非直接的に、しかし強力に影響をしていた。Table 3では、「情

緒機能」が他の変数に対して均一に影響していることが示されている。「治療副作用」の

「GHS/QOL」に対する影響は、間接効果は負の影響(-0.380)が強く、一方で直接効果は正の

影響(0.189)があった。

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11

Table 3 - Standardized direct, indirect and total effects of path analysis (GFI = 0.997, AGFI = 0.976, and RMSEA = 0.000)

EF BRST BRFU FA AP

Direct Indirect Total Direct Indirect Total Direct Indirect Total Direct Indirect Total

Direct Indirect Total

(A) (B) (A + B) (A) (B) (A + B) (A) (B) (A + B) (A) (B) (A + B)

(A) (B) (A + B)

BRST -0.483 - -0.483 - - - - - - - - - - - -

BRFU 0.508 0.117 0.625 -0.242 - -0.242 - - - - - - - - -

FA - -0.377 -0.377 0.495 0.054 0.549 -0.221 - -0.221 - - - - - -

AP -0.209 -0.115 -0.324 - 0.167 0.167 - -0.067 -0.067 0.304 - 0.304 - - -

GHS/QOL 0.235 0.310 0.544 0.189 -0.380 -0.191 0.237 0.130 0.367 -0.543 -0.045 -0.587 -0.147 - -0.147

GHS = Global health status, QOL = Quality of life, EF = Emotional functioning, BRST = Systemic therapy side effects, BRFU = Future perspectives,

FA = Fatigue, AP = Appetite loss

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12

*e; error variable

Fig. 2 - Path analysis using variables selected by stepwise analysis

Systemic therapy

side effects

Emotional

functioning

Future perspective

Appetite loss

GHS/QOL

Fatigue

e

e

e

e

e

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13

第四節 考察

服薬カウンセリングに関する科学的根拠の探索を目的として、患者の治療を決定する外来

において、術後乳がん患者の QOLに影響を与えている因子を評価した。ステップワイズ法を

用いた重回帰分析において、服薬カウンセリング前の患者の OQLに影響を与える 5つの因子

を、さらに、パス解析において、これら 5つの因子と QOLの因果関係を明らかにした。

本研究の対象となった全ての患者は、既に手術を受けているものの、術後補助療法は提供

されていない状況で調査票の記載をしている。しかしながら、我々の解析では治療による副

作用が QOL に影響を与えていた結果となった。EORTC-BR23 において、「治療副作用」は 7

つの症状(口渇、味覚障害、疼痛、脱毛、気分、ほてり、頭痛)に関する質問項目で構成さ

れている。本結果から、患者に治療による副作用が生じている原因を明らかにすることはで

きないが、乳がんに対する手術、乳がんとは別の薬物療法の施行、閉経状態、うつ、そして

不安などが原因となっている可能性がある。

ステップワイズ法を用いた重回帰分析、およびパス解析において、倦怠感は も強く QOL

に影響する因子であることが明らかになった。がんに伴う倦怠感は、がん患者によく認めら

れる問題であり、身体的な問題のみならず、心理・社会的な問題も原因となる 24)。我々のパ

ス解析によるモデルでは、「治療副作用」と「健康の見通しについての心配」は直接的に「倦

怠感」に影響していた。更に、「情緒機能」は「健康の見通しについての心配」を介して「倦

怠感」に影響を及ぼしていた。本研究において、術後補助療法開始後の QOLを継続的に調査

していないため、治療開始後に QOLを低下させていく要因を示す事はできない。しかしなが

ら、術後補助療法を開始する前から「GHS/QOL」が低下している患者がいること、そしてそ

の「GHS/QOL」は「倦怠感」によって直接的に、そして「情緒機能」により間接的に影響を

受けていることが明らかとなった。これらの因果関係を薬剤師が理解し、服薬カウンセリン

グ時に QOLの低い患者を早期に特定できれば、より効果的な介入が期待できる。

がん化学療法や内分泌療法を含む術後補助療法は、QOLに対して悪影響を及ぼすことが知

られている 6, 25, 26)。QOLへの悪影響は情緒的側面と同様、身体的側面に起因する。服薬カウ

ンセリングによって、術後補助療法による身体的な副作用の発症を変えることはできないが、

心理・精神面への副作用に対する準備を促し、QOLの低下を防ぐことはできる可能性がある。

したがって、術後補助療法を開始する前に、QOLに関連した服薬カウンセリングは重要であ

る。薬剤師によるカウンセリングや介入の効果は既に海外においては研究され、評価されて

いる。Yuanらは、外来における服薬カウンセリングは生存期間を延長させ、また、入院率を

低下させると報告している 27)。Stevensらはヘリコバクター・ピロリの除菌療法に対する薬剤

師の介入効果について、ランダム化比較試験で評価しており、 薬剤師による介入は患者満足

度を改善したが、アドヒアランスには影響しなかったと報告している 28)。しかし、特に日本

のがん領域において、薬剤師による服薬カウンセリングや介入の効果に関する報告は極めて

少ない。本研究のデザインは服薬カウンセリングの QOLに対する影響を評価していないため、

今後、服薬カウンセリングと QOLの決定因子の関係性を評価する更なる研究が必要である。

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14

本研究の限界として、「性生活」、「性生活の満足度」に関する項目の低い回答割合が挙げら

れる。結果的に、本研究はがんと性の問題が QOLに与える影響を評価できていない。がんと

性の問題は、乳がん患者において重要な問題であると広く認識されている 29-31)。欧米と同様に、

本邦における乳がん患者においても様々な性の問題があることが明らかとなっている 32-35)。そ

の上、本邦における患者—医師コミュニケーションには文化的な制約も存在する。本邦におけ

る患者は自己表現を遠慮しがちで、それと同時に医師が耳を傾けないだろうと考えていると

する報告もある 36)。このような文化的な問題が、性的問題に関する質問項目に対する回答割

合が低かった要因となっている可能性がある。

近年、ベースライン QOL の評価は重要になりつつある。EORTC の臨床試験のメタアナリ

シスにおいて、ベースライン QOLは生存期間の予測因子、すなわち予後因子となることが明

らかにされている 37)。更に、適切な情報提供はQOLと正の相関を示すことが示されている 38)。

情報提供の目的は、患者に治療の準備をさせ、アドヒアランスおよび疾患に立ち向かう能力

の向上にある 39)。したがって、ベースライン QOLは服薬カウンセリングにとっても重要な情

報の 1つとなる。本研究によって明らかとなった、術後乳がん患者のベースライン QOLを決

定づける 5つの因子は、低い QOLや生存期間を予測する因子となる可能性がある。適切な情

報提供をするために、また患者の治療選択や意思決定をサポートするために、治療開始前の

服薬カウンセリングではこれら 5つの因子に留意すべきである。

結論として、患者報告アウトカムの 1つである EORTC QLQ-C30および BR23を解析するこ

とにより、我々は 5つの因子(倦怠感、情緒機能、治療副作用、健康の見通しについての心

配、食欲不振)を QOLに影響を与える決定因子として識別した。これらの因子を考慮するこ

とは、治療開始時の服薬カウンセリングを潜在的に支援する可能性があることを示している。

今後、QOLを改善する因子を考慮した服薬カウンセリングに関する研究が必要である。

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15

第二章 乳がん患者における服薬カウンセリングに対する選好傾向:離散選択実験

第一節 序論

前章では、服薬カウンセリング前から乳がん患者の QOLにはばらつきがあり、倦怠感およ

び情緒面の問題がその QOLの決定因子であることを示した。服薬カウンセリング後、多くの

乳がん患者は、外来においてがん化学療法を受け、治療開始後は倦怠感の他にも不眠、口腔

の問題、食欲不振、吐き気、痛みといった更なる症状・問題を有することになる 40, 41)。こう

した問題を抱えることから、75%を超える患者が、がん化学療法期間中の薬剤師によるフォロ

ーアップや、処方薬に関する服薬カウンセリングに期待していることが明らかにされている42)。更に Gourdjiらは、がん患者が外来診療において、処方に関する薬剤師との関わりを好む

ことを報告している 43)。薬剤師の重要な責務であり、がん患者にとって必須のケアである服

薬カウンセリングは、コミュニケーションや QOLの向上にも貢献する 44-46)。

病院薬剤師の業務は国によって異なるが、一般的に、がん領域の薬剤師には医薬品管理の

みならず、患者中心のケアも期待されている 14, 47)。こうした薬剤師の役割の変化に伴い、薬

剤師と患者のコミュニケーションも概念化され、研究されるようになりつつある。薬剤師と

患者の関係性は伝達(transmission)モデルと取引(transactional)モデルとして概念化されて

きた 48)。前者は、医学的側面の情報を薬剤師から患者に対して一方向性に伝えるものである。

後者は、患者の意向や心理・社会的な配慮をする服薬カウンセリングで、患者を中心とした

双方向性のコミュニケーションである。 病院薬剤師は、患者中心のケアを提供できるように

なることに加え、入院患者および外来がん化学療法に対する薬学的ケアの提供も期待されて

いる 49)。

患者中心の服薬カウンセリングを構築するためには、患者の意向、価値観を理解すること

が必須となる。そのため、本研究は離散選択実験(Discrete choice experiment; DCE)を用いて、

薬剤師の服薬カウンセリングに対する患者の選好傾向を探索することを目的とした。本研究

で用いる表明選好法による DCEは、仮想したシナリオの調査票を用いて、患者の服薬カウン

セリングに対する選好を直接的に明らかにすることができる。DCEは経済学において発展し

た手法であり 50, 51)、1990年代初期より医学や薬学領域においても、患者の選好傾向を調査す

るために広く用いられるようになっている。Naik-Panvelkarらの総説によれば、 薬学領域に

おける DCEは欧米でのみ実施されており、アジアまた本邦において、特に病院薬剤師の設定

で行われた研究はない 52)。更に、世界的に薬剤師の役割に大きな変化が起こっているのにも

関わらず、特に本邦においては薬剤師と患者との関係に関する研究は極めて少ない。そこで

本研究は、本邦で初めて、患者が期待する服薬カウンセリングの構成要素を探索した。

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16

第二節 方法

2-1 対象

本研究は東京医科大学病院およびナグモクリニック東京院の 2 施設における、表明選好法

を用いた DCEである。がん化学療法を想起させるシナリオを使用するため、精神的負担を考

慮し、がん化学療法が未施行の患者は除外した。選択規準は 20歳以上で乳がんと診断されて

おり、乳がんに対するがん化学療法を受けている、または受けたことがある外来患者を適格

とした。Eastern Cooperative Oncology Group Performance Statusが 3か 4、認知症/不穏/せん妄等、

重度の精神疾患のある患者、また精神的に問題を抱えている等の理由により医療従事者が調

査票依頼について不適切と判断した患者は除外した。

2-2 離散選択の調査票の作成

2-2-1 属性と基準の選定

外来において、薬剤師が実施する服薬カウンセリングについての DCE は過去に例がない。

しかし、概念的に同様のカウンセリングに関する DCEは実施されている。これらの文献に基

づき、「服薬カウンセリングの頻度」、「カウンセリングの場所」、「カウンセリングに要する時

間」、「かかりつけ薬剤師の存在」、「治療説明」、「カウンセリング費用」、「性生活に対する化

学療法への影響に関する情報」を属性の候補としてリストした。次いで適格規準に適合する

乳がんサバイバー2名に対し、化学療法時の薬剤師による服薬カウンセリングに対する選好傾

向に関して面接調査を実施し、更に病院薬剤師の職能団体の会長、がん専門薬剤師、研究者、

方法論学者らと協議し、以下の 6つの属性を用いるコンセンサスを得た。すなわち、「薬剤師

の態度」、「提供される情報の質」、「一番時間をかけて説明される副作用」、「化学療法開始前

の服薬カウンセリングの頻度」、「服薬カウンセリングの費用」、「化学療法開始後の薬剤師に

よるフォローアップ」の 6 属性である。各属性の基準については、現状および入手不可能で

あっても考えられる代替の選択肢を含ませることが可能だが、妥当かつ臨床的に関連性のあ

るものでなければならないとされている。「薬剤師の態度」、「提供される情報の質」、「化学療

法開始後の薬剤師によるフォローアップ」の基準については、Empelらの報告に基づいて決定

した。「一番時間をかけて説明される副作用」の基準については、情報提供の主な内容として、

既存の研究に基づいて作成した。「服薬カウンセリングの費用」については、本邦における抗

悪性腫瘍剤処方管理加算(治療の開始に当たり投薬の必要性、危険性について文書により説

明を行った上で抗悪性腫瘍剤を処方した場合に算定される診療加算:平成 24年診療報酬参照)

に基づいて決定した(Table 4)。

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17

2-2-2 離散選択の調査票のデザイン

仮想シナリオとして、「あなたは、今日はじめて、乳がんの診断を受け、化学療法が必要で

あることを医師から説明されました。化学療法のくわしいことは、薬剤師から説明される予

定となりました。薬剤師から治療の説明をうけるとき、あなたなら、どちらの薬剤師から説

明を受けたいと思いますか?」という問題を作成した。選択には、離散選択以外に拒絶する

選択(opt-out)、現状のままでよいとする選択(status quo)といった追加の選択肢を提示する

ことがあるが、これは研究のデザインに依存するとされている。本研究においては、薬剤師

の実臨床において、患者が服薬カウンセリングを拒否することは想定しにくいため、追加の

選択肢はなく、離散選択の中から強制的に選択させる強制選択を用いた。属性と基準の組み

合わせは、34 × 22 = 324通り存在する(完全実施要因計画)。この組み合わせで作成される 2

名の薬剤師の服薬カウンセリングから、患者がどちらか 1 名の服薬カウンセリングを選択す

る調査票を作成した(Figure 3)。この 2名の薬剤師から 1名を選択する設問を 1シナリオとし

た場合、これら全ての組み合わせのシナリオを患者にたずねることは実施可能性の側面から

困難である。そこで Bayes の非線形 適計画を用いて、妥当性を保ちつつ質問数を減らした

16 シナリオを作成し、1 名の対象に回答を依頼するシナリオ数が 8 シナリオずつの 2 種類の

調査票を作成した。

2-2-3 患者背景

年齢、再発・転移の有無、がん化学療法による治療歴の有無、内分泌療法による治療歴の

有無は診療録より調査した。性別、婚姻状況、教育歴、就業状態、世帯規模、過去に薬剤師

から服薬説明を受けたことがあるかについては調査票により調査した。

2-3 予備試験

選択規準を満たす 6 名の患者に対して調査票への記載を依頼し、作成された調査票の見や

すさ、理解しやすさを調査するために構造化面接を実施した。更に、属性と基準をどのよう

に考え選択したのか、調査票を変更する必要があるかどうか検討した。予備試験の結果、調

査票で使用されている言葉には問題がなく、変更する必要がないことが示された。しかし、

1人あたり 8 シナリオとなる質問数が患者にとって負担になりうることが示唆された。 終

的に、予備試験の対象者からの推奨を受け、12 シナリオを作成し、1人あたり 6 シナリオと

なる 2種類の調査票を作成し用いることにした。

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18

2-4 本試験

作成された 2 種類の調査票は、対象者数が均等になるように、ブロック無作為化法を用い

て対象者に割付された。外来化学療法室において、薬剤師が対象に対し口頭および書面によ

る同意を取得し、割付された調査票を記載するように依頼した。

2-5 統計解析

2-5-1 患者の選好傾向

離散選択とは、被験者が選択する選択肢の集合の中から1つを選択することである。離散

選択の解析では無関係な選択肢からの独立性(independence of irrelevant alternative; IIA)の条

件によって統計モデルを使い分ける。本邦において、がん化学療法開始前の薬剤師による服

薬カウンセリングが受けられる状況で、患者が服薬カウンセリングを受けないという選択を

することは実際的ではないことから、IIA条件が成立していると仮定した。そのため、調査票

より得られた患者の離散選択の 2値データは条件付きロジットモデルを用いて解析した。

各属性および水準において、それぞれ独立して Wald の χ2値を算出した。基準については、

患者に好まれると予め考えられた基準を対照と設定した。Waldの χ2値が大きいほど、属性に

おいては好まれる属性であることを示し、または基準においては対照と差があることを示し

ている。各基準において、患者の好む程度を表す回帰係数およびオッズ比を算出した。これ

は、回帰係数が高い値を示すほど、患者に好まれる基準であることを示している。各基準の

効用値(選択者が選択肢から得られる満足)を算出し、各属性の相対的重要度(relative

importance)を、各効用値の範囲を全属性の効用値の範囲の合計で除することで算出した。つ

まり、各属性の効用値の範囲が広いほど高い相対的重要度を示す。また、化学療法の有無、

年齢、再発、婚姻状態、過去に薬剤師から服薬説明を受けたことがあるかで層別化し、効用

値および相対的重要度を算出した。

2-5-2 患者背景の要約

患者背景における平均や標準偏差の算出には記述統計を用いた。

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19

2-5-3 必要対象数

DCE における明確な必要対象数の算出方法はないが、Louviere らの報告に基づき、化学療

法が必要となることの多い乳がんのサブタイプである Luminal A以外の割合(true proportion)

を 0.2(20%)、true proportionの relative accuracyを 0.1、probability alphaを 0.95とすると、必

要とする選択肢のシナリオ数は 1537 と算出される。1 名あたり 6 シナリオの選択をするとし

た場合、257 名の評価が必要となる。脱落を考慮し、2 種類の調査票に対しそれぞれ 140 名、

総じて 280名を目標対象数と設定した。

2-5-4 統計ソフトウェア

解析には SAS(version 9.1.3, SAS Institute Inc. North Carolina)を用いた。

2-6 倫理的配慮

本研究はヘルシンキ宣言および疫学研究に関する倫理指針(平成 19年文部科学省告示第 438

号平成 20 年 12 月 1 日一部改正)に従って実施した。全ての患者から口頭および書面による

同意を取得し、各施設の倫理委員会の承認を得てから開始した。

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20

Table 4 - Attributes and levels of oncology pharmacy counselling

Attitude of pharmacist

Unfriendly and uninterested

Friendly but distant

Friendly and interested

Quality of information

Unclear and contradictory information

Only general information

Clear and customized information

Explanation of side effects

Emphasis on life-threatening side effects

Emphasis on effects on normal life style, including cosmetic problems

Frequency of pharmacist counselling before starting chemotherapy

Once

More than once

Cost of pharmacist counselling

0 yen ($0)

250 yen (about $2.5)

500 yen (about $5)

Follow-up with the pharmacist after starting chemotherapy

At physician’s, nurse’s, or pharmacist’s request

At patient’s request

Every time a patient visits

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21

Fig. 3 - An example of one scenario from a DCE questionnaire about patient preferences for pharmacist counselling

When you receive information about chemotherapy for the first time, which pharmacist would you

prefer to receive the information from?

Pharmacist A Pharmacist B

Attitude of pharmacist Unfriendly and uninterested Friendly but distant

Quality of information Unclear and contradictory

information Only general information

Explanation of side effects Emphasis on life-threatening

side effects

Emphasis on effects on

normal lifestyle, including

cosmetic problems

Frequency of pharmacist counselling

before starting chemotherapy More than once Once

Cost of pharmacist counselling 0 yen ($0) 500 yen (about $5)

Follow-up with the pharmacist after

starting chemotherapy Every time a patient visits

At physician’s, nurse’s, or

pharmacist’s request

Which would you prefer? ☐□ □☐

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22

第三節 結果

3-1 対象

2012年 12月より 2013年 4月までに外来を受診した、280名の乳がん患者を対象とした。1

名は同意撤回、もう 1名は調査票への記載がなかったため解析から除外した。また、1シナリ

オの回答忘れがあった 1名は解析に含めた。 終的に、278名を対象とし、1,667シナリオを

解析対象とした(Figure 4)。患者背景は Table 5に示した。平均年齢(標準偏差)は 53.0(10.7)

歳で、その範囲は 28歳から 80歳であった。約半数の患者は局所再発(9.4%)、または遠隔

転移(39.6%)を有していた。164名(59.0%)はがん化学療法施行中で、121名(43.5%)は

内分泌療法を施行中であった。教育歴はほとんどの患者(96.4%)が大学卒か高校卒であった。

就業状態については、92名(33.1%)は常勤、66名(23.7%)が非常勤であり、66.2%の患者

にはパートナーと生活をしていた。また、多数の患者(87.7%)は既に薬剤師による服薬カウ

ンセリングを経験していた。

3-2 服薬カウンセリングの選好傾向を予測する属性と基準

各属性のWaldの χ2値と相対的重要度を Table 6および Table 6に示した。4つの属性、「薬

剤師の態度」(p < 0.0001, relative importance 26.9%)、「提供される情報の質」(p < 0.0001, relative

importance 37.1%)、「服薬カウンセリングの費用」(p < 0.0026, relative importance 7.6%)、「化

学療法開始後の薬剤師によるフォローアップ」(p < 0.0001, relative importance 24.4%)は、患者

の選択にとって有意な予測因子であった。属性の中で、「提供される情報の質」のWaldの χ2

値(157.66)と相対的重要度(37.1%)は も高く、患者が選択する上で「提供される情報の

質」が も重要であることを示していた。「薬剤師の態度」のWaldの χ2値(81.40)と相対的

重要度(26.9%)は、「化学療法開始後の薬剤師によるフォローアップ」のWaldの χ2値(80.92)

と相対的重要度(24.4%)とほぼ同等であった。「服薬カウンセリングの費用」は有意である

ものの、Waldの χ2値(11.94)と相対的重要度(7.6%)は「提供される情報の質」、「薬剤師

の態度」、「化学療法開始後の薬剤師によるフォローアップ」と比して低値であった。

各基準の回帰係数、オッズ比、Waldの χ2値および効用値を Table 10および 11に示した。「薬

剤師の態度」の基準では、「友好的だが距離を感じる」よりも「友好的で気軽に相談ができ

る」(OR 0.49, 95% CI: 0.37–0.64)が、「非友好的で距離を感じる」よりも「友好的だが距離

を感じる」(OR 0.29, 95% CI: 0.22–0.39)が好まれた。「提供される情報の質」では、「一般

的な情報」よりも「的確かつ配慮された情報」(OR 0.35, 95% CI: 0.26–0.46)が、「矛盾を感

じるあいまいな情報」よりも「一般的な情報」(OR 0.18; 95% CI: 0.14–0.25)が好まれた。「一

番時間をかけて説明される副作用」、「化学療法開始前の服薬カウンセリングの頻度」では、

各基準の係数はリファレンスとほぼ同等で、オッズ比はほぼ 1.0であった。これは、「一番時

間をかけて説明される副作用」、「化学療法開始前の服薬カウンセリングの頻度」の両属性に

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23

おける各基準に、患者の選好がほとんどないことを示している。「服薬カウンセリングの費用」

の基準の係数は共に有意で、そのオッズ比は「500円(約 5ドル)」(OR 0.71; 95% CI: 0.58–

0.87)、「250円(約 2.5ドル)」(OR 0.78; 95% CI: 0.64–0.93)となり、ほぼ同等であった。

「服薬カウンセリングの費用」の基準「0円」は「500円(約 5ドル)」及び「250円(約 2.5

ドル)」より好まれた。「化学療法開始後の薬剤師によるフォローアップ」において、「患

者さん(あなた)が必要と考えた時に呼べばくる」の係数は正の値で、オッズ比は 3.00(95%

CI: 2.28–3.96)であり、このことは「治療日ごとに必ず一度は顔を出す」や「治療上必要な時

のみに話しにくる」よりも、患者の要求に応じたフォローアップが好まれていることを示し

ている。

効用値と相対的重要度の患者背景による違いを Table 11に示した。いずれの患者背景によ

らず、「提供される情報の質」は も重視される属性であり、次いで「薬剤師の態度」と「化

学療法開始後の薬剤師によるフォローアップ」がほぼ同等に重視されていた。「一番時間をか

けて説明される副作用」の相対的重要度は患者背景により違いを認めた。例えば、がん化学

療法の治療歴を有する患者は「化学療法開始前の服薬カウンセリングの頻度」(相対的重要度

1.7%)より「一番時間をかけて説明される副作用」(0.3%)を重視しないが、一方でがん化学

療法施行中の患者は「化学療法開始前の服薬カウンセリングの頻度」(2.1%)よりも「一番時

間をかけて説明される副作用」(6.0%)をより重視する傾向にあった。

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24

Fig. 4 - Participants flow

Assessed for eligibility

N= 280 December 2012 to April 2013

Randomization

Questionnaire 1 (6 scenarios)

N = 140

Questionnaire 2 (6 scenarios)

N = 140

Analysis

N= 278, 1,667 scenarios

1 excluded

1 patient did not answer 1 scenario

1 excluded

Informed consent

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25

Table 5 - Patients’ characteristics (N = 278)

Mean S.D.

Age (years) 53.0 10.7

n %

Recurrence or metastasis

None 142 51.1

Regional recurrence 26 9.4

Metastasis 110 39.6

Chemotherapy

Undergoing 164 59.0

Previously experienced 114 41.0

Endocrine therapy

Undergoing 121 43.5

Not experienced 118 42.4

Previously experienced 39 14.0

Marital status

Married 177 63.7

Unmarried 47 16.9

Divorced 38 13.7

Bereaved 16 5.8

Education level

High 69 24.9

Middle 198 71.5

Low 6 2.2

Other 4 1.4

Employment status Full-time 92 33.1

Part-time 66 23.7

Housekeeper 102 36.7

Unemployed or retired 18 6.5

Household Living with a partner 184 66.2

Living alone 72 25.9

Other 22 7.9

Pharmacist counselling Previously experienced 242 87.7

Not experienced 34 12.3

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26

Table 6 - Conditional logistic regression models of patients’ preferences for pharmacist counselling Coefficient Odds ratio (95% CI) Wald chi-square p-value

Attitude of pharmacist 81.40* <.0001 Unfriendly and uninterested -1.2272 0.29 (0.22–0.39) 70.51 <.0001 Friendly but distant -0.7125 0.49 (0.37–0.64) 26.51 <.0001 Friendly and interested Reference

Quality of information 157.66* <.0001

Unclear and contradictory information -1.6912 0.18 (0.14–0.25) 133.45 <.0001 Only general information -1.0579 0.35 (0.26–0.46) 53.17 <.0001 Clear and customized information Reference

Explanation of side effects 2.94* 0.0862

Emphasis on life-threatening side effects -0.1559 0.86 (0.72–1.02) 2.94 0.0862

Emphasis on effects on normal life style, including cosmetic problems Reference Frequency of pharmacist counselling before starting chemotherapy 0.10* 0.7527

Once -0.0305 0.97 (0.80–1.17) 0.10 0.7527

More than once Reference

Cost of pharmacist counselling 11.94* 0.0026

500 yen (about $5) -0.3440 0.71 (0.58–0.87) 11.29 0.0008 250 yen (about $2.5) -0.2547 0.78 (0.64–0.93) 7.24 0.0071 0 yen ($0) Reference

Follow-up with the pharmacist after starting chemotherapy 80.92* <.0001

At physician’s, nurse’s, or pharmacist’s request -0.0125 0.99 (0.82–1.19) 0.02 0.8944 At patient’s request 1.0998 3.00 (2.28–3.96) 61.00 <.0001

Every time a patient visits Reference

* Wald chi-squared values were calculated separately for levels and attributes.

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27

Table 7-1 – Utilities and relative importance

Overall Utility RI(%)

Attitude of pharmacist Unfriendly and uninterested -0.57

26.9 Friendly but distant -0.06 Friendly and interested 0.64

Quality of information Unclear and contradictory information -0.77

37.1 Only general information -0.14 Clear and customized information 0.91

Explanation of side effects Emphasis on life-threatening side effects -0.08

3.4 Emphasis on effects on normal life style, including cosmetic problems 0.08

Frequency of pharmacist counselling before starting chemotherapy Once -0.01

0.6 More than once 0.01

Cost of pharmacist counselling 500 yen (about $5) -0.14

7.6 250 yen (about $2.5) -0.05 0 yen ($0) 0.20

Follow-up with the pharmacist after starting chemotherapy At physician’s, nurse’s, or pharmacist’s request -0.37

24.4 At patient’s request 0.73 Every time a patient visits -0.36

RI; relative importance

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28

Table 7-2 - Utilities and relative importance Chemotherapy Age undergoing previously experienced 50 and less over 50 Utility RI Utility RI Utility RI Utility RI Attitude of pharmacist Unfriendly and uninterested -0.54

23.6 -0.62

30.2 -0.63

24.1 -0.56

29.2 Friendly but distant -0.13 0.01 -0.06 -0.06 Friendly and interested 0.68 0.63 0.69 0.63 Quality of information Unclear and contradictory information -0.86

36.8 -0.69

36.1 -0.95

37.4 -0.65

35.6 Only general information -0.19 -0.10 -0.14 -0.14 Clear and customized information 1.05 0.79 1.09 0.80 Explanation of side effects Emphasis on life-threatening side effects -0.16

6.0 0.01

0.3 -0.12

4.2 -0.05

2.4 Emphasis on effects on normal life style, including cosmetic problems

0.16 -0.01 0.12 0.05

Frequency of pharmacist counselling before starting chemotherapy Once -0.05

2.1 0.04

1.7 -0.02

0.6 -0.02

1.2 More than once 0.05 -0.04 0.02 0.02 Cost of pharmacist counselling 500 yen (about $5) -0.15

7.3 -0.16

8.3 -0.13

9.4 -0.15

6.5 250 yen (about $2.5) -0.08 -0.02 -0.19 0.03 0 yen ($0) 0.23 0.18 0.32 0.12 Follow-up with the pharmacist after starting chemotherapy At physician’s, nurse’s, or pharmacist’s request -0.40

24.2 -0.33

23.4 -0.42

24.2 -0.37

25.2 At patient’s request 0.83 0.63 0.87 0.66 Every time a patient visits -0.42 -0.30 -0.45 -0.29

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29

Table 7-3 - Utilities and relative importance Recurrence or metastasis Marital status

none recurrence or metastasis

married or with partner

not married

Utility RI Utility RI Utility RI Utility RI Attitude of pharmacist Unfriendly and uninterested -0.60

27.7 -0.57

23.3 -0.59

25.8 -0.58

27.8 Friendly but distant -0.12 -0.02 -0.07 -0.07 Friendly and interested 0.72 0.58 0.66 0.65 Quality of information Unclear and contradictory information -0.85

35.8 -0.72

35.2 -0.80

36.3 -0.76

38.0 Only general information -0.02 -0.29 -0.14 -0.16 Clear and customized information 0.86 1.01 0.95 0.92 Explanation of side effects Emphasis on life-threatening side effects 0.04

1.8 -0.22

8.9

-0.15 6.3

0.04 1.9 Emphasis on effects on normal life style, including cosmetic

problems -0.04 0.22

0.15 -0.04

Frequency of pharmacist counselling before starting chemotherapy Once -0.02

1.0 -0.02

0.7 -0.02

0.8 -0.01

0.3 More than once 0.02 0.02 0.02 0.01 Cost of pharmacist counselling 500 yen (about $5) -0.01

5.9 -0.30

11.9 -0.11

6.5 -0.22

9.2 250 yen (about $2.5) -0.14 0.00 -0.10 0.04 0 yen ($0) 0.14 0.29 0.21 0.19 Follow-up with the pharmacist after starting chemotherapy At physician’s, nurse’s, or pharmacist’s request -0.47

27.9 -0.29

19.9 -0.40

24.3 -0.33

22.7 At patient’s request 0.87 0.64 0.78 0.67 Every time a patient visits -0.40 -0.35 -0.38 -0.34

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30

第四節 考察

本研究では、外来がん化学療法における仮定シナリオを用いて、乳がん患者における薬剤

師の服薬カウンセリングに対する選好傾向を検討した。その結果、薬剤師の態度、提供され

る情報の質、服薬カウンセリングの費用、そしてフォローアップの頻度が、薬剤師の服薬カ

ウンセリングに対する患者の選好傾向の予測因子になることが示された。

「提供される情報の質」について、「矛盾を感じるあいまいな情報」のオッズ比は低かっ

た(0.18)が、「一般的な情報」のオッズ比も低かった(0.35)。この結果は、「的確かつ配

慮された情報」を患者が重要視していることを示している。それとは対照的に、「一番時間

をかけて説明される副作用」は患者の選好傾向の予測因子にはならなかった。患者は生活へ

の影響がある副作用の説明を好む傾向にあった(OR 0.86, 95% CI: 0.72–1.02)が、選択に有意

な差は認められなかった。患者の情報ニーズを訊ねる属性である「一番時間をかけて説明さ

れる副作用」に用いられた 2つの基準、「生活にどのような影響がでるかを中心に」と「生

命に影響のある副作用を中心に」の理解しやすさについて、予備試験で特に問題点はなかっ

た。しかし、がん化学療法の期間中では、この項目を訊ねられるタイミング、年齢により、

選好傾向は影響される可能性があるとの指摘があった。患者にとっての情報の重要さは、多

くの情報ニーズに関する研究にて示されている 53-56)。システマティック・レビューによれば、

必要な情報を十分に提供された患者の QOLは高く、不安やうつは少ない 38)。更に、新規で乳

がんと診断された患者は、治癒の可能性、病期、治療選択肢、遺伝的リスク、有害事象に関

する情報を優先順位の高い情報と Degnerらは報告している 13)。こうした情報ニーズは、がん

種、病期によって異なり、治療期間中にも変化するとされている 57, 58)。同様に、満たされて

いないと感じる情報ニーズも変化することになる。患者が満たされていないと感じる情報ニ

ーズは治療中よりも診断時のほうが比較的低いとされている 59)。これらの知見と、「一番時

間をかけて説明される副作用」の 2基準に患者の選好傾向の違いが認められなかった事から、

本研究結果は想起バイアスの影響を受けている可能性が否定できない。更に、基準として用

いられた「生活にどのような影響がでるかを中心に」及び「生命に影響のある副作用を中心

に」は対照的に構成されているものの、ともに患者にとっては重要ともいえる。「一番時間

をかけて説明される副作用」に用いられたこの 2基準によって選択が難しくなっているとす

れば、対象はこの属性を考えずに選択した可能性もある。つまり、この 2基準がともに重要

であるという考えが、患者の選択に影響した可能性がある。

「化学療法開始後の薬剤師によるフォローアップ」については、患者の必要に応じた対応

が好まれた。この結果は、来院毎に薬剤師が訪問しフォローアップされることを患者は好む、

という我々の研究前の考えとは異なっていた。Bakkerらによれば、患者が医療従事者と対峙

するとき、‘doctor talk’と‘comprehensive’の 2つの様式によるコミュンケーションを経験する 60)。

‘Doctor talk’様式はいわゆる型通りの診療で、通常は医師によって開始されるコミュニケーシ

ョンである。患者自身から開始されるようなコミュニケーションは‘comprehensive’様式とされ、

医療従事者が身体状態のみならず心理・社会的状態にも対応するコミュニケーションである。

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31

‘Doctor talk’様式に加え、‘comprehensive’様式を経験した患者は高い満足度を示すとされている。

本研究において、がん化学療法を受けている患者は必要に応じた対応、つまり、‘comprehensive’

様式のコミュニケーションを好む傾向が示された。がん化学療法の入院から外来への移行は、

患者が自身の管理およびモニタリングに責任を持つことを必要とするため、診断時のみなら

ず、治療中も適切な情報が提供されるべきである。実際に、McKeeらの報告によれば、76%

の患者(米国)が薬剤師の訪問を必要としている 42)。本邦の入院患者においては、SDMはま

だ一般的ではないとはいえ、医師、薬剤師、看護師といった医療従事者のチームが協力的に

患者に情報を提供している。それに対し、外来において薬剤師は、副作用のフォローアップ

や相談よりも、抗がん剤の正しい組み合わせや投与量といった医薬品管理の業務が中心であ

る。本邦の薬剤師の日常診療を考慮すると、患者には外来がん化学療法中であっても薬剤師

に相談できる手段が提供されるべきである。本邦のがん患者における情報ニーズは更なる研

究が必要である。

本研究の結果において「薬剤師の態度」と「化学療法開始後の薬剤師によるフォローアッ

プ」の 2属性は、患者にとって同程度の重要さを示した。この結果と同様に、Kameiらは薬剤

師の態度が患者の満足に強く関係していることを報告している 61)。薬剤師の態度は、薬剤師—

患者コミュニケーションの側面から研究されてきたが、その多くは病院薬剤師という設定で

はなく、薬局において実施されたものである 61-63)。これらの研究において、薬局薬剤師は患者

とのコミュニケーションや評価に十分な時間を費やさず、医薬品名と使用法、そして典型的

な副作用情報を提供する傾向があると報告されている 64)。がん化学療法に関する情報は、副

作用だけでなく心理・社会学的要因に配慮すべきであるため、薬剤師は患者の社会的背景や

意向を理解する必要がある。医薬品の持つ心理・社会学的な影響により注意を払い、患者と

の対話を持つ努力をすることによって、薬剤師の態度における関係構築や効果的な変化につ

ながると考えられる。

過去に実施された研究において、患者には薬剤師の服薬カウンセリング等に対して支払い

意思があることが示されている 65-67)。本研究においても、500円という金額は患者の選好傾向

にほとんど影響しないことが示された。これまで、外来がん化学療法における薬剤師の服薬

カウンセリングに対する診療報酬は認められていなかった。しかし、平成 26年度診療報酬改

定において、厚生労働省は一定の基準を満たした専門性を有する薬剤師に対してその診療報

酬を認めた。この改訂において認められたのは、外来または入院患者への薬剤師によるがん

化学療法の説明であり、患者自己負担額は、(2000円の 3割負担として)600円となっている。

本研究における「服薬カウンセリングの費用」は自己負担額として提示しており、研究結果

は一般化して考察することができると考えられる。本研究結果は、がん化学療法開始前に、

積極的な態度で、的確かつ個々に配慮した情報を提供する薬剤師に対しては、支払い意思が

ある患者がいることを示した。更にがん化学療法開始後は、掛かるコストよりも適切なタイ

ミングでの副作用管理を重視することも示している。こうした知見は、平成 26年度診療報酬

改定でも認められたように、薬剤師による服薬カウンセリングのニーズを支持するものであ

る。

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32

本研究にはいくつかの限界がある。第 1に、対象は 2施設のみで集積されているため、一

般化可能性には限界がある。第 2に、用いたシナリオには想起バイアスが生じうる。薬剤師

または腫瘍内科医によるカウンセリングの経験は、患者の選択に影響した可能性があり、こ

の可能性は排除できない。第 3に、「一番時間をかけて説明される副作用」、「化学療法開始

前の服薬カウンセリングの頻度」の 2属性の重要度が低くなったことである。予備試験の対

象が 6名と少なかったことが、これら 2属性とその基準の問題に影響した可能性がある。

結論として、本研究結果により、がん化学療法開始前に薬剤師の服薬カウンセリングを受

ける患者は、友好的で関心を持った態度で、的確かつ配慮された情報をコストなしで提供す

る薬剤師を好むことが明らかとなった。

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33

第三章 がんおよび HIV感染症患者の治療選択における「意志決定の葛藤」に与える

服薬カウンセリングの影響

第一節 序論

第一章、第二章において、服薬カウンセリング前から患者の QOLにはばらつきがあり、積

極的な介入が必要であること、そしてその服薬カウンセリングには情報の質、態度、そして

治療開始後のフォローアップが重要であることを示した。このように、薬剤師によって提供

される情報の質が重視される背景に、難治性疾患患者への「患者中心のケア」及び「意思決

定の共有」がある 68, 69)。治療選択肢が増加し、その選択肢の中には患者の望まない効果やア

ウトカムが含まれていることがあるため、患者は不確かさを経験し、また難しい意思決定に

直面する。この不確かさと難しい選択は、患者に「意思決定の葛藤」を生じさせる 70-76)。O’Connor

らは、意思決定の過程で生じる不確かな状態を「意思決定の葛藤」と定義し、医療において

患者の経験する「意思決定の葛藤」を評価するために「意思決定の葛藤尺度(Decisional Conflict

Scale; DCS)」を作成した 77)。

DCS は 5 段階リッカ―ト尺度(とてもそう思う、そう思う、どちらでもない、そう思わな

い、全くそう思わない)で評価する、全 16項目の設問がある自己記入式調査票である。これ

ら 16項目から、Totalドメインと 5つの下位尺度 である Uncertaintyドメイン, Informedドメ

イン, Values clarityドメイン, Supportドメイン, Effective decisionドメインにおける各スコアを

算出し、「意思決定の葛藤」を評価する。Uncertaintyドメインは意思決定において患者が直面

する不確かさの程度を、Effective decision ドメインは 情報に基づく選択、患者の反応、満足

度をそれぞれ評価する。Informedドメイン、Values clarityドメイン、Supportドメインは 不確

かさに寄与する因子であり、それぞれ情報が不足している感覚、価値観の明確さ、サポート

されていない感覚を評価する。Total ドメインと 5つの下位尺度は 0から 100までの値でスコ

ア化され、スコアが高いほど、患者が高い葛藤状態にあることを示す。Total スコアが 25 を

下回る状態が意思決定の実施と関連するのに対し、37.5 点以上は意思決定の遅延や不確かさ

と関連するとされている。また、臨床的に意義のある差は効果量として 0.3から 0.4とされて

いる 78)。

治療の意思決定において、治療選択肢について患者が必要とする知識を理解することは不

可欠である 79-81)。診断から治療までの過程において、ほとんどの患者が治療、副作用、病期、

予後、セルフケアに関する情報を必要とする 82)。治療が開始されると、治療について、そし

て体調の回復についての情報を必要とするようになる。このように、治療の過程において患

者の必要とする情報は変化しうることが報告されている 58)。本邦において、こうした情報ニ

ーズや患者の治療に対する考え方についての研究は少ない。本邦における医師—患者コミュニ

ケーションには、従来から「おまかせ(委ねる)」モデルと言われる医学的パターナリズム

が存在している 83)。しかしながら、過去 10年でこのコミュニケーションに変化がみられつつ

ある。例えば、Horikawaらの報告によれば、がん患者への告知がなされる割合は、1990年代

前半の 27%から、同年代後半には 71%にまで上昇している 84)。こうした変化に伴い、本邦の

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34

医療従事者においても、患者に提供される情報や意思決定に参加する患者の姿勢が重視され

つつある 85, 86)。提供された情報に対する患者満足度は、患者の治療への関心やアドヒアラン

スに影響し、また、患者に対する情報提供は薬剤師の責務である 87-90)。そこで我々は、薬剤師

による治療に関する服薬カウンセリングが、患者の治療選択における「意思決定の葛藤」に

影響すると仮定した。また、この影響を評価するためには「意思決定の葛藤」を測定する調

査票である、DCS日本語版の開発が必要であると考えた。

本研究の目的は 2 つである。第1に、DCS 日本語版を作成し、その信頼性と妥当性を、難

治性疾患であるがんおよび HIV 感染症患者を対象に評価した。第 2 に、これらの患者に生じ

る「意思決定の葛藤」に服薬カウンセリングがどのように影響するか検討した。

第二節 方法

2-1 研究概要と対象

本研究は、東京医科大学病院単施設における、尺度の信頼性および妥当性評価を含めた、

プロスペクティブ(前方視的)な前後比較試験である。薬剤師が服薬カウンセリングを実施

する新規がん化学療法開始前のがん患者に対し、DCS への記載を依頼した結果を用いて尺度

の妥当性と信頼性を評価した。また、服薬カウンセリング前後における「意思決定の葛藤」

の変化を、プロスペクティブに調査した。がん患者における選択規準は 20 歳以上 75 歳未満

でがんと診断されており、新規薬剤でのがん化学療法開始予定で、かつ、新規薬剤でのがん

化学療法について薬剤師が服薬カウンセリングを実施予定である患者を適格とした。HIV 感

染症患者における選択規準は 20歳以上 75歳未満で HIV感染と診断されており、新規の抗レ

トロウイルス療法(Antiretroviral therapy; ART)開始予定で、かつ、薬剤師が服薬カウンセリ

ングを実施予定である患者を適格とした。両疾患ともに、精神的な疾患を持っている、また

は日本語が母国語ではない患者は除外した。

2-2 測定項目

2-2-1 意思決定の葛藤

患者の抱える「意思決定の葛藤」は、開発した DCS日本語版で評価した。オリジナル版は

英語であり、日本語に翻訳する必要があるが、尺度の翻訳は言語的に翻訳するだけではなく、

文化間の違い等を考慮し、概念的に内容が同等である妥当性も検討する必要がある。本研究

に先立ち、開発者である Ottawa Hospital Research Instituteの許可を得て、標準的な尺度開発の

翻訳手順に基づき、オリジナル(英語)版の順翻訳、逆翻訳を実施し、日本語(暫定)版を

作成した 91)。作成した日本語(暫定)版について、健常者 40 名を対象に予備試験を実施し、

意味、慣用句、そして認知的な問題がないかについて検討し、その結果として作成された DCS

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35

日本語版を、本研究では使用した。

2-2-2 QOL

がん患者における QOL測定には、EORTC QLQ-C30を用いた。なお、複数のがん種を対象

としたため、特定のがん種用のサブモジュールは使用しなかった。EORTC QLQ-C30は 5つの

機能(「身体」、「役割」、「情緒」、「認知」、「社会」)と 9 つの症状/項目(「嘔気/嘔吐」、「倦怠

感」、「呼吸困難」、「痛み」、「睡眠障害」、「食欲不振」、「下痢」、「経済的困難感」)、そして「GHS/QOL」

の下位尺度で構成された 30項目の質問票である 23)。「GHS/QOL」に関する 2項目は「とても

悪い」から「とてもよい」の 7 段階で評価され、その他の項目は全て「まったくない」、「少

しある」、「多い」、「とても多い」の 4段階で評価される。いずれも EORTCのスコアリングマ

ニュアルに沿って 0 - 100点で得点化され、機能は得点が高いほど、症状/項目は得点が低いほ

ど良好な状態を示す。

HIV感染症患者における QOL測定には、Medical Outcome Study 36-item Short-Form Health

Survey version 2; SF-36v2TMを用いた。SF-36v2TMは身体機能、日常役割機能(身体)、体の痛み、

全体的健康感、活力、社会生活機能、日常役割機能(精神)、心の健康の 8つの下位尺度で構

成されている。また、サマリースコアとして「身体的側面の QOL サマリースコア(physical

component summary; PCS)」、「精神的側面の QOLサマリースコア(mental component summary;

MCS)」、「役割/社会的側面の QOLサマリースコア(role/social component summary; RCS)」の

3 スコアが算出できる。SF-36v2TM は日本語版の妥当性・信頼性が検証されている。92, 93)

SF-36v2TMには想起期間が過去 1ヶ月のスタンダード版と過去 1週間のアキュート版があるが、

外来日の影響をより反映するアキュート版を使用した。

2-2-3 患者背景

がん患者におけるがん種、遠隔転移(リンパ節転移のみは含まない)の有無、オピオイド

投与の有無、化学療法の投与歴の有無、治療の分類は診療録より、年齢、性別、婚姻状況、

教育歴、就業状態については診療録または調査票により調査した。HIV 感染症患者における

年齢、性別、教育歴、就業状態については質問票および診療録より調査した。

2-3 手順

本研究は前後比較試験のため、平均への回帰の影響を最小限にする対処が必要であり、薬

剤師による服薬カウンセリング実施前に、DCS の調査を 2 回実施した。平均への回帰とは、

偏った対象の試験では、その平均値は一般集団の平均値に近くなるという統計学的現象のこ

とであり、すなわち、「意思決定の葛藤」が高い状態にある状態から、ランダムな変動として

葛藤が低下することを指す 94)。口頭および書面による同意を取得した後、患者にはまず、DCS

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36

および EORTC QLQ-C30への記載を依頼した。記載終了した約 1時間後、2回目の DCSへの

記載を依頼した。服薬カウンセリングを実施した後に 3回目の DCSへの記載を依頼した。

2-4 統計解析

2-4-1 尺度の信頼性および妥当性

平均への回帰の影響を最小限にするため、服薬カウンセリング前の DCSのスコア算出には

1回目と 2回目の平均値を用いた。5つの下位尺度の信頼性は内部一貫法で評価するため、ク

ロンバックの α係数を算出した。クロンバックの α係数は 0.7以上が適切とされている。構成

概念妥当性は、質問項目と下位尺度の相関と、多特性スケーリング解析により収束的妥当性

と判別的妥当性を確認し、評価した。収束的妥当性は、質問項目とその質問項目が属する下

位尺度の合計点との相関係数が 0.4以上を適切とし、下位尺度ごとにこの基準を満たす質問項

目の割合を算出した。判別的妥当性は、質問項目とその質問項目が属する下位尺度の合計点

との相関係数が、質問項目とその質問項目が属さない下位尺度の合計点との相関係数より大

きいと適切とし、下位尺度ごとに基準を満たす質問項目の割合を算出した。DCS の因子構造

の評価には、クラスター解析を用いた。DCS オリジナル版の下位尺度の数から最適なクラス

ター数を 5と仮定し、SAS(version 9.1.3, SAS Institute Inc. North Carolina)の VARCLUS procedure

を用いて解析した。VARCLUS procedure は変数のクラスタリングのためのプロシジャで、デ

ータの正規性の仮定からのずれには頑健な手法である。

2-4-2 服薬カウンセリングが「意思決定の葛藤」に与える影響

QOL と DCS の各スコアの関連については Spearman の相関係数を算出して検討した。服薬

カウンセリング前後における「意思決定の葛藤」の変化について、DCS の各スコアは対応の

ある t 検定(両側検定)を用いて検定した。2-4-1 と同様に、平均への回帰への対応として、

服薬カウンセリング前の DCSのスコア算出には 1回目と 2回目の平均値を用いた。

2-4-3 患者背景の要約

患者背景における平均や標準偏差の算出には記述統計を用いた。

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37

2-4-4 必要対象数

必要対象数は、Ottawa Hospital Research Instituteの作成した DCSの User Manualを参考に算

出した。がん患者の必要対象数は、服薬カウンセリング前後における DCS の Total スコアの

臨床的に意義ある差を検出できるように有意水準 5%、検出力 80%、効果量を 0.3と設定する

と、88 例が必要となるため、脱落を考慮して 100 例を目標対象数と設定した。HIV 感染症患

者の必要対象数は、有意水準 5%、検出力 80%、効果量を 0.3〜0.4 とした場合、50〜88 例が

必要となる。実現可能性や外来中心となる対象集積の難しさ、脱落を考慮し、目標対象数を

70例と設定した。

2-4-5 統計ソフトウェア

クラスター解析には SAS(version 9.1.3, SAS Institute Inc. North Carolina)を、他の解析には

JMP (version 9.02, SAS Institute Inc. Cary, North Carolina)を用いた。

2-5 倫理的配慮

本研究はヘルシンキ宣言および疫学研究に関する倫理指針(平成 19年文部科学省告示第 438

号平成 20 年 12 月 1 日一部改正)に従って実施した。全ての患者から口頭および書面による

同意を取得し、倫理委員会の承認を得てから開始した。

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38

第三節 結果

3-1 対象

2011年 6月から 2012年 4月までの入院中のがん患者 100名、2011年 7月から 2012年 9月

までの外来の HIV感染症患者 70名を対象とした。100名のがん患者のうち、研究実施計画書

からの逸脱のため 6名のデータを解析から除外し、最終的に 94名(94%)の患者を解析対象

とした(Figure 5)。患者背景を Table 8に示した。平均年齢(標準偏差)は 58.1(11.0)歳で、

範囲は 32〜74歳であった。性別については女性が標本の多数を占めていた。半数の患者は術

後化学療法を奨められており、27%はがん化学療法の既往があった。また、70名の HIV感染

症患者のうち、1名は同意撤回により脱落となり、69名を解析対象とした。平均年齢(標準

偏差)は 34.4(9.5)歳で、68名(98.6%)が男性であった。患者背景を Table 9に示した。

3-2 信頼性

内的一貫性を評価するために、クロンバックの α係数を算出した。がん患者を対象とした

評価では、クロンバックの α係数は 0.84〜0.96となり、全ての下位尺度において内的一貫性

は十分に高い値を示した(Table 10)。同様に、HIV感染症患者を対象にした評価においても、

クロンバックのα係数は 0.78〜0.90と高い値を示した(Table 11)。

3-3 妥当性

がん患者を対象とした評価では、Uncertainty、informed、values clarity、effective decisionの 4

つのドメインについて、質問項目と下位尺度の相関はほぼ同等であった。質問項目 8と support

スコアの相関(0.63)は、質問項目 7(0.70)と質問項目 9(0.80)と比べて低かった。がん患

者、HIV感染症患者において、収束的妥当性、判別的妥当性はあらかじめ設定した基準をと

もに全て満たした。VARCLUSプロシジャによるクラスター解析の結果を Table 12、13に示し

た。がん患者において、Values clarityドメインにおける全ての質問項目はクラスター1に分類

され、一方でクラスター2には uncertaintyドメインと effective decisionドメインの質問項目が

含まれた。クラスター3には質問項目 7、9、13が分類された。クラスター4には質問項目 8

のみが分類された。Informedドメインを構成する質問項目のうち、質問項目 1と質問項目 2

はクラスター5に分類されたが、質問項目 3「各選択肢の危険性と副作用を知っている」はク

ラスター1に分類された。クラスター1−2、1−3、1−5、2−3、2−5、3−5のクラスター間相関は

全て 0.7を越えていた。一方でクラスター4を含むクラスター間相関は、クラスター1−4(0.62)、

クラスター2−4(0.66)、クラスター3−4及びクラスター4−5(0.64)であり、他のクラスター

間相関と比較して低かった。HIV感染症患者において、Informed ドメイン、Supportドメイン

の質問項目はそれぞれ同一のクラスターに分類された。Effective decisionドメインの質問項目

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39

は 13と 14が 1つのクラスターに分類され、質問項目 15、16および Uncertaintyドメインの質

問項目 11、12が同一のクラスターに分類された。Values clarityの質問項目 3つが含まれるク

ラスターに、Uncertaintyの質問項目 10が含まれた。

3-4 DCSスコアと QOLスコアの相関

がん患者におけるベースライン QOLについて、GHS/QOLスコアの平均(標準偏差)は 55.1

(23.2)であった。DCSスコアと EORTC QLQ-C30の各スコアのスピアマン相関係数は全て

0.4以下であり、「意思決定の葛藤」と QOLの各スコアに相関は認められなかった。HIV感

染症患者におけるベースライン QOLの平均(標準偏差)は 身体機能が 91.0(14.9)、日常

役割機能(身体)が 83.4(24.3)、体の痛みが 78.0(24.1)、全体的健康感が 48.8(21.3)、

活力が 49.9(24.1)、社会生活機能が 71.7(26.2)、日常役割機能(精神)が 79.3(23.1)、

心の健康が 63.9(20.9)であった。また、身体的 QOLサマリースコアは 53.0(10.8)、精神

的 QOLサマリースコアは 43.5(10.5)、役割/社会的 QOLサマリースコアは 45.4(11.5)であ

った。このうち DCSの Totalスコアとの相関係数が 0.4以上であったものは Values clarityドメ

インと全体的健康感(Spearman相関係数: 0.4)のみであった。

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40

Fig. 5 - Participants flow

Assessed for eligibility

Patients with cancer N= 100 June 2011 to April 2012

Patients infected with HIV N=70 July 2011 to September 2012

Informed consent

1st DCS, QOL

2nd DCS

Pharmacist counselling

3rd DCS

Analysis

Patient with cancer N = 94

Patient infected with HIV N=69

6 patients with cancer were excluded

Two were not administered the 2nd DCS

Four completed only one side of double-sided questionnaire

1 patient infected with HIV was excluded

Consent withdrawal

at interval of about 1 hour

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41

Table 8 - Patient characteristics (patients with cancer)

Mean S.D. Age Total 58.1 11 Men 62.9 8.4 Women 55.1 11.5 n % Gender Men 37 39.4 Women 57 60.6 Type of cancer Gastroenterological 35 37.2 Gynecological 31 33.0 Lung 16 17.0 Breast 8 8.5 Other 4 4.3 Type of chemotherapy Adjuvant 48 51.1 Palliative 46 48.9 Prior chemotherapy Yes 25 27.0 No 69 73.0 Marital status Married 67 71.3 Unmarried 27 28.7 Employment status Full-time 39 41.5 Part-time 11 16.8 Unemployed 44 51.7 Education level High 45 47.8 Middle 40 45.6 Low 8 8.5 Unknown 1 1.1

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42

Table 9 - Patient characteristics (patients infected with HIV)

Mean S.D.

Age 34.4 9.5

n %

Gender

Men 68 98.6

Women 1 1.4

Employment status

Full-time 45 66.2

Part-time 13 19.1

Unemployed 10 14.7

Education level

High 38 55.1

Middle 29 42.0

Low 1 1.4

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43

Table 10 - Internal consistency of Decisional Conflict Scale domains in patients with cancer

Domain* Item No. Cronbach’s

alpha

Item-domain

correlation

Convergent

validity**

(%)

Discriminant

validity***

(%)

Uncertainty

10

0.91

0.83

100 100 11 0.85

12 0.80

Informed

1

0.90

0.82

100 100 2 0.86

3 0.74

Values

clarity

4

0.96

0.90

100 100 5 0.93

6 0.90

Support

7

0.84

0.70

100 100 8 0.63

9 0.80

Effective

decision

13

0.90

0.74

100 100 14 0.70

15 0.82

16 0.82

* Average score of the DCS before pharmacists’ provision of information.

** The percentage of items that passed the test of convergent validity

*** The percentage of items that passed the test of discriminant validity

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44

Table 11 - Internal consistency of Decisional Conflict Scale domains in patients infected with HIV

Domain* Item No. Cronbach’s alpha Item-domain

correlation

Convergent

validity**

(%)

Discriminant

validity***

(%)

Uncertainty

10

0.84

0.69

100 100 11 0.75

12 0.68

Informed

1

0.90

0.80

100 100 2 0.83

3 0.79

Values

clarity

4

0.89

0.80

100 100 5 0.78

6 0.79

Support

7

0.78

0.64

100 100 8 0.60

9 0.62

Effective

decision

13

0.86

0.59

100 100 14 0.73

15 0.77

16 0.75

* Average score of the DCS before pharmacists’ provision of information.

** The percentage of items that passed the test of convergent validity

*** The percentage of items that passed the test of discriminant validity

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45

Table 12 - Cluster structure of Decisional Conflict Scale items (patients with cancer)

Domain Item No. Cluster Structure

Cluster 1 Cluster 2 Cluster 3 Cluster 4 Cluster 5 Uncertainty 10 0.79 0.89 0.79 0.68 0.77

11 0.66 0.90 0.72 0.60 0.63 12 0.61 0.89 0.61 0.46 0.57

Informed 1 0.78 0.65 0.72 0.63 0.96 2 0.83 0.70 0.75 0.60 0.96 3 0.87 0.54 0.63 0.50 0.74

Values clarity 4 0.94 0.76 0.80 0.60 0.83 5 0.96 0.73 0.76 0.60 0.79 6 0.94 0.69 0.78 0.60 0.75

Support 7 0.69 0.60 0.88 0.53 0.65 8 0.62 0.66 0.64 1.00 0.64 9 0.71 0.71 0.93 0.66 0.73

Effective decision 13 0.76 0.79 0.89 0.54 0.69 14 0.56 0.79 0.54 0.57 0.51 15 0.65 0.89 0.75 0.65 0.59 16 0.60 0.90 0.67 0.55 0.63

Variation explained* (%) 86.3 77.3 81.3 100.0 91.9

Inter-Cluster Correlation

Cluster 1-2 Cluster 1-3 Cluster 1-4 Cluster 1-5 0.73 0.80 0.62 0.84 Cluster 2-3 Cluster 2-4 Cluster 2-5 0.78 0.66 -0.70 Cluster 3-4 Cluster 3-5 0.64 0.77 Cluster 4-5 0.64

Correlation coefficients between each item and each cluster component.

Bold characters indicate the highest correlation coefficients. *Total variation explained = 83.5%

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46

Table 13- Cluster structure of Decisional Conflict Scale items (patients infected with HIV)

Domain Item No. Cluster Structure

Cluster 1 Cluster 2 Cluster 3 Cluster 4 Cluster 5 Uncertainty 10 0.59 0.60 0.70 0.53 0.82

11 0.55 0.54 0.84 0.45 0.63 12 0.50 0.43 0.83 0.38 0.59

Informed 1 0.91 0.54 0.53 0.44 0.67 2 0.93 0.51 0.55 0.42 0.74 3 0.91 0.51 0.55 0.37 0.72

Values clarity 4 0.72 0.48 0.62 0.36 0.90 5 0.77 0.44 0.54 0.36 0.89 6 0.63 0.47 0.58 0.51 0.90

Support 7 0.58 0.85 0.44 0.46 0.53 8 0.32 0.82 0.47 0.53 0.31 9 0.51 0.84 0.54 0.49 0.58

Effective decision 13 0.44 0.47 0.49 0.90 0.45 14 0.37 0.60 0.58 0.90 0.46 15 0.55 0.45 0.87 0.62 0.61 16 0.46 0.58 0.91 0.59 0.58

Variation explained* (%) 86.7 69.6 74.8 81.8 76.7

Inter-Cluster Correlation

Cluster 1-2 Cluster 1-3 Cluster 1-4 Cluster 1-5 0.0.57 0.59 0.45 0.78 Cluster 2-3 Cluster 2-4 Cluster 2-5 0.58 0.59 0.57 Cluster 3-4 Cluster 3-5 0.59 0.69 Cluster 4-5 0.50

Correlation coefficients between each item and each cluster component.

Bold characters indicate the highest correlation coefficients. *Total variation explained = 76.8%

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47

3-5 薬剤師の服薬カウンセリングによる影響

薬剤師による服薬カウンセリング前後におけるがん患者のDCSスコアをTable 14に示した。

ベースラインにおける DCSの Totalスコアの平均(標準偏差)は 40.2(21.1)で、服薬カウン

セリング後には 31.7(20.5)となり、有意な低下を認めた(p < 0.001、対応のある t検定)。

同様に、下位尺度である uncertaintyスコア(45.0 vs. 37.2、差 -8.5、p < 0.0001)、informedス

コア、(40.3 vs. 31.9、差 -7.8、p < 0.0001)、values clarityスコア(44.2 vs. 32.1、差 -12.1、p < 0.0001)、

supportスコア(37.2 vs. 29.4、差 -7.8、p < 0.0001)、及び effective decisionスコア (35.7 vs. 28.7、

差 -7.0、p < 0.0001)も有意な低下を認めた。この傾向は服薬カウンセリングを実施した全て

の薬剤師において認められた。Totalスコアの標準化反応平均および効果量はそれぞれ 0.6、0.4

であった。

HIV感染症患者の DCSスコアを Table 15に示した。服薬カウンセリング前における Total

スコアは 46.3(20.9)であったが、服薬カウンセリング後は 26.5(15.2)と有意に低下した(p <

0.0001)。これと同様に全ての下位尺度において、次のように有意に低下した;Uncertaintyド

メイン(56.6 vs. 33.6、 p < 0.0001)、Informedドメイン(46.0 vs. 22.0、p < 0.0001)、Values clarity

ドメイン(53.3 vs. 26.8、p < 0.0001)、Supportドメイン(36.4 vs. 19.6、p < 0.0001)、Effective

decisionドメイン(41.0 vs. 29.4、p < 0.0001)。標準化反応平均は 0.6~1.0、効果量は 0.5~1.0

を示し、ともに Values clarityドメインが高値で、Effective decisionドメインが最も低い値であ

った。

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48

Table 14 - Differences in Decisional Conflict Scale domain scores between pre- and post-pharmacists’ provision of information in patients with cancer Mean (S.D.) Score Difference Standardized

Effect size** Paired t

statistic p-value***

Pre Post Mean SE response mean*

Total score 40.2 (21.1) 31.7 (20.5) -8.5 1.35 0.6 0.4 -6.3 < .0001

Uncertainty 45.0 (23.6) 37.2 (24.5) -7.8 1.62 0.5 0.3 -4.8 < .0001

Informed 40.3 (23.8) 31.9 (24.0) -8.4 1.74 0.5 0.4 -4.8 < .0001

Values clarity 44.2 (25.2) 32.1 (24.2) -12.1 1.88 0.7 0.5 -6.4 < .0001

Support 37.2 (22.2) 29.4 (21.0) -7.8 1.60 0.5 0.3 -4.9 < .0001

Effective decision 35.7 (22.1) 28.7 (20.8) -7.0 1.46 0.5 0.3 -4.8 < .0001

* (pre-post)/ S.D. (pre-post), ** (pre-post)/ S.D. (pre), *** Paired t-test

S.D.; Standard deviation, SE; Standard error

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49

Table 15 Differences in Decisional Conflict Scale domain scores between pre- and post-pharmacists’ provision of information in patients infected with HIV

Mean (S.D.) Score Difference Standardized Effect size**

Paired t

statistic p-value***

Pre Post Mean SE response mean*

Total score 46.3 (20.9) 26.5 (15.2) -19.9 2.3 1.0 0.9 -8.7 < .0001

Uncertainty 56.6 (25.5) 33.6 (22.7) -23.1 2.9 0.9 0.9 -7.9 < .0001

Informed 46.0 (26.8) 22.0 (14.4) -24.0 3.4 0.8 0.9 -7.0 < .0001

Values clarity 53.3 (27.1) 26.8 (18.9) -26.5 3.3 1.0 1.0 -8.0 < .0001

Support 36.4 (23.5) 19.6 (14.4) -16.8 2.4 0.9 0.7 -7.1 < .0001

Effective decision 41.0 (23.1) 29.4 (17.6) -11.6 2.4 0.6 0.5 -4.8 < .0001

* (pre-post)/ S.D. (pre-post), ** (pre-post)/ S.D. (pre), *** Paired t-test

S.D.; Standard deviation, SE; Standard error

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50

第四節 考察

本研究では、DCS日本語版を作成し、その計量心理学的特性を評価した。次いで、新規が

ん化学療法を推奨されたがん患者、および新規 ARTを開始する予定の HIV感染症患者の抱え

る葛藤を指標とし、薬剤師の服薬カウンセリングが与える影響を評価した。DCS日本語版は

高い信頼性と妥当性を示し、またその葛藤スコアは服薬カウンセリングにより低下すること

を明らかにした。

DCS日本語版は十分な内的一貫性を有しており、また、収束的妥当性および判別的妥当性

はあらかじめ設定した基準を全て満たしていた。しかし、構造概念妥当性について、DCS日

本語版はオリジナル版と同様のクラスター構造を示さなかった。この相違には、いくつかの

潜在的な要因があると考えられる。まず第 1に、がん患者、HIV感染症患者ともに、意思決

定の過程における評価、つまり意思決定がまだ未実施の状態での評価であることが挙げられ

る。Koedootらは、患者の意思決定の過程で、effective decisionドメインを用いる問題点を指

摘している 95)。つまり、意思決定が未実施の患者に対し、意思決定の満足度などをたずねる

effective decisionドメインは、調査のタイミングとして適切でない可能性がある。したがって

クラスター解析の結果は、治療選択肢の問題と、DCSの記載を依頼したタイミングによる影

響を受けている可能性がある。第 2に、本研究の対象には乳がん、肺がん、婦人科がんとい

った様々ながん種と、補助化学療法および緩和的化学療法といった、異なる状況の患者が含

まれている点が挙げられる。治療選択肢の数やがん化学療法の必要性は、がん種と状況によ

って異なる。同様に HIV感染症患者においても、診断から治療開始までの期間は患者によっ

て大きく異なる。こうした多様性が「意思決定の葛藤」に影響しうる。したがって、クラス

ター解析の結果は状況によって異なる「意思決定の葛藤」を反映している可能性がある。第 3

に、本研究では評価していない、意思決定における患者の選好傾向が挙げられる。意思決定

における患者の役割は、その意思決定の難しさと関係し、また治療のエビデンス、治療法な

どによって異なる 96)。Watanabeらは、本邦のがん患者も欧米の患者と同様に、意思決定にお

ける役割について、医師の言う通りにする、医師とともに決定するといった、様々な役割が

あることを報告している 86)。HIV感染症患者においても Kremerらの報告では、59%の患者が

意思決定を医師とともに行ないたいと考えていた一方で、28%は自分自身で決めたい、13%

は医師に決めてもらいたいと考えていた。97)今後、意思決定における患者の選好する役割は、

Degnerらが開発した Control Preferences Scaleなどで評価し、effective decisionドメインとの関

連を検討していく必要がある 13)。

本研究における薬剤師の服薬カウンセリングは、特別な介入ではなく、日々の診療通り実

施しているが、特に values clarityドメインと informedドメインに大きな影響を与えていた。

一方で、服薬カウンセリング後の supportドメイン、effective decisionドメインへの影響は、

values clarityドメインと informedドメインに比べると小さかった。この相違に影響した要因と

しては、薬剤師が情報提供した内容が挙げられる。薬剤師は一般的に、治療効果と副作用に

焦点を置き説明している 14)。しかしながら、患者は治療が社会的側面(例;家族、パートナ

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51

ー、仕事、 家事、社会活動など)に与える影響を副作用と同様に重視している 98)。薬剤師は

医学・薬学的側面の情報に加え、こうした社会的側面に関する情報も提供していくべきであ

る。また、QOLの各スコアと「意思決定の葛藤」に相関は認められなかった。これは、新規

がん化学療法を推奨されたがん患者、および新規 ARTを予定する HIV感染症患者が、QOL

では測定することのできない問題に直面していることを示していると考えられる。

総じて、本研究結果は、薬剤師による服薬カウンセリングが、意思決定の共有(Shared

Decision making; SDM)に貢献することができることを示している。がん領域および HIV感染

領域のチーム医療にあたる薬剤師の役割や責務は発展途上であり、また国によって異なるが、

患者の抱える「意思決定の葛藤」が薬剤師の新たな介入すべき側面となりうることが示され

た。残念ながら、本邦において SDMは広く認識されていないが、「意思決定の葛藤」を改善

し、SDMを促進していくためにも、患者の必要とする情報に関する更なる研究が必要である。

本研究にはいくつかの限界が考えられる。まず、DCS日本語版の基準関連妥当性を評価で

きていない点が挙げられる。これは、本邦において意思決定に関して、DCSの他に代替でき

る尺度が存在しないため、評価できなかった。また、薬剤師の服薬カウンセリング以外によ

る影響を減らすために、薬剤師の服薬カウンセリング後、直ちに患者の「意思決定の葛藤」

を評価した点が挙げられる。DCSには想起期間が設定されていないが、評価のタイミングの

適切性は本研究において検討していない。

結論として、DCS日本語版は、本邦のがん患者および HIV感染症患者における「意思決定

の葛藤」の測定として、信頼でき、かつ妥当であると考えられる。また、薬剤師による服薬

カウンセリングによって、新規治療開始予定の難治性疾患患者の「意思決定の葛藤」を低下

させる可能性が示された。

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52

総括

患者中心の医療の普及に伴い、患者の価値観や患者による直接評価が重視されている。本

研究は、薬剤師の重要な職能である服薬カウンセリングに関するエビデンスの探索を目的に、

PROに基づく服薬カウンセリングの定量的評価を行った。

第一章では、服薬カウンセリングの適切な介入点と影響因子の探索を目的に、がん薬物療

法開始前の乳がん患者における QOL(EORTC QLQ-C30および BR23)を、後方視的に解析し、

以下の知見を得た。

1. 薬物療法開始前の術後乳がん患者の QOLは、服薬カウンセリング前からばらつきがあり、

薬剤師の積極的な介入の必要性が示唆された。

2. 同患者の QOLに対し、倦怠感、情緒機能、食欲不振、将来の見通し、治療の副作用の 5

つの因子が強く影響していることが示された。

3. QOL を決定付ける 5 つの因子の因果関係を明らかにし、倦怠感と情緒機能が QOL を決

定付けていることを明らかとした。

第二章では、服薬カウンセリングに対して患者が期待する価値観を明らかにするために、

DCE(表明選好法)によってその選好傾向を評価し、以下の知見を得た。

1. 薬剤師の服薬カウンセリングおいて、薬剤師の態度、情報の質、費用、そしてフォロー

アップ頻度は、患者の選択における有意な予測因子であることが示された。

2. 患者が も重視するのは情報の質であり、次いで薬剤師の態度、フォローアップが重要

であった。

3. 友好的で関心を持った態度で、的確かつ配慮された情報をコストなしで提供する薬剤師

を患者は好むことが明らかとなった。

第三章では、まず、患者の治療選択における「意思決定の葛藤」を定量化する尺度、DCS

日本語版を開発し、がん患者および HIV 感染症患者における尺度の妥当性および信頼性を評

価した。また、「意思決定の葛藤」に対する服薬カウンセリングの影響を検討し、以下の知

見を得た。

1. DCS日本語版は、がん患者と HIV感染症患者において、十分な信頼性および妥当性を有

していることが示された

2. 薬剤師の服薬カウンセリングは、がん患者と HIV感染症患者が治療選択時に抱える「意

思決定の葛藤」を有意に低下させることが示された。

3. 患者の治療選択時に生じる「意思決定の葛藤」は、薬剤師の服薬カウンセリングの新た

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な介入点になることが示唆された。

以上の研究は、いずれも妥当性を検討した尺度・調査票によって患者自身が直接回答した

ものを解析し、服薬カウンセリングを評価したものである。本研究は、薬剤師による服薬カ

ウンセリングを PROに基づいて、また DCEによって定量的に評価した本邦で 初の報告であ

る。これらの知見から、PROを用いて患者の QOL、「意思決定の葛藤」、価値観などの主観

を定量的に測定し、服薬カウンセリングを評価することができることを示した。このような

エビデンスの蓄積は、医療の質向上に寄与すると同時に薬剤師職能の客観的評価につながる

ものと考えられる。

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研究結果の掲載誌

第一章

Kawaguchi T, Iwase S, Koinuma M, Onodera Y, Takeuchi H, Umeda M, Matsunaga T, Unezaki S,

Nagumo Y. Determinants Affecting Quality of Life: Implications for Pharmacist Counseling for

Patients with Breast Cancer in Japan. Biol Pharm Bull. 2012;35(1):59-64.

第二章

Kawaguchi T, Azuma K, Yamaguchi T, Iwase S, Matsunaga T, Yamada K, Miyamatsu H, Takeuchi H,

Kohno N, Akashi T, Unezaki S. Preferences for pharmacist counseling in patients with breast cancer: a

discrete choice experiment. Biol Pharm Bull. 2014:37(11):1795-1802.

第三章

Kawaguchi T, Azuma K, Yamaguchi T, Soeda H, Sekine Y, Koinuma M, Takeuchi H, Akashi T,

Unezaki S. Development and validation of the Japanese version of the Decisional Conflict Scale to

investigate the value of pharmacists' information: a before and after study. BMC Med Inform Decis

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conflict - Analysis in the patients infected with human immunodeficiency virus -. Jpn. J. Pharm. Health

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謝 辞

本研究を遂行するにあたり、終始御懇切なるご指導、ご鞭撻を賜りました東京薬科大学医

療実務薬学教室 畝﨑 榮 教授に心から感謝の意を表します。また、研究を進めるにあた

りご指導をいただきました東京薬科大学医療実務薬学教室 竹内裕紀 准教授に感謝いたし

ます。

本研究の試験デザイン、統計解析、論文作成など多岐にわたりご協力・ご指導いただきま

した東北大学大学院医学系研究科医学統計学分野、東京大学大学院医学系研究科臨床試験デ

ータ管理学講座 山口拓洋 教授に厚くお礼申し上げます。

研究の機会と場を与えていただきました、東京大学医科学研究所附属病院緩和医療科 岩

瀬 哲 先生、東京医科大学病院薬剤部 明石貴雄 薬剤部長、ナグモクリニック 南雲吉

則 理事長、松永忠東 東京院院長、帝京平成大学薬学部 濃沼政美 教授に深く感謝申し

上げます。研究の立案、施設での実施管理について、東京医科大学病院 東加奈子 先生に

は多大なご協力をいただき、深く感謝申し上げます。

研究の実施にあたり、データの収集や管理など様々な面においてご協力いただきました東

京医科大学病院薬剤部のみなさま、ナグモクリニックのスタッフのみなさま、ならびに医療

実務薬学教室の卒論生諸氏に深く感謝申し上げます。

後に、本研究の趣旨に賛同し、研究にご協力いただいた 500 名を越える患者の皆様に深

くお礼申し上げます。

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Page 65: 公表用学位論文刷用論文 (保護)...Treatment of Cancer Core Quality of Life Questionnaire(EORTC QLQ-C30)およびBreast(BR) 23を用いた23)。EORTC QLQ-C30は5つの機能(「身体機能」、「役割機能」、「情緒機能」、「認

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付録 1 離散選択実験に用いた属性と基準の説明

【薬剤師の態度】

あなたが説明の時に感じる薬剤師の態度・雰囲気

□ 非友好的で距離を感じる

□ 友好的だが距離を感じる

□ 友好的で、気軽に相談ができる

【提供される情報の質】

□ 矛盾を感じるあいまいな情報

薬剤師の説明の中で、また医師と薬剤師の説明に矛盾を感じるような内容 □ 一般的な情報

薬剤師が説明すべき一般的な情報が網羅された内容 □ 的確かつ配慮された情報

一般的な情報に加え、個々の患者さんが必要とする情報をくみ取られた内容 【一番時間をかけて説明される副作用】

□ 生命に影響のある副作用を中心に

感染や肝臓、肺への障害といった治療を要する副作用とその対策を中心に □ 生活にどのような影響がでるかを中心に

家族、仕事、日常生活に影響を与える副作用を中心に 【治療開始前の説明の頻度】

治療開始前に、薬剤師の説明を 1 回だけで終わらせるか、内容がむずかしいので複数回にわ

けて説明を受けるか、という説明の頻度について

□ 初回 1 回で全てを説明する

□ 複数回にわけて説明する

【治療開始前の薬剤師による説明にかかる費用(総額)】

説明に対して支払ってもよいと考える費用をおたずねしています。(現在、外来での薬剤師に

よる説明に診療加算はありません。)

□ 0 円

□ 250 円

□ 500 円

【治療開始後の薬剤師によるフォローアップの頻度】

治療開始後に、どのような頻度で会いに来るのを望むかについて

□ 治療上必要な時のみに話しにくる

□ 患者さん(あなた)が必要と考えた時に呼べばくる

□ 治療日ごとに必ず一度は顔を出す

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付録 2 Decisional Conflict Scale 日本語版

治療を受けるかどうかを決めることについて、あなたの今のお気持

ちをお尋ねします。

以下の質問紙1つ1つについて、ご自分の気持ちに最も当てはまる

と思うもの1つに☑のようにチェックをいれてください。

とてもそう思う

そう思う

どちらでもない

そう思わない

全くそう思わない

[0] [1] [2] [3] [4]

1 私にとってどの選択肢が利用可能であるか知っている □ □ □ □ □

2 各選択肢の有益性を知っている □ □ □ □ □

3 各選択肢の危険性と副作用を知っている □ □ □ □ □

4 どの有益性が自分にとって最も重要であるのか

はっきりしている □ □ □ □ □

5 どの危険性と副作用が自分にとって

最も重要であるのかはっきりしている □ □ □ □ □

6 有益性、危険性と副作用のどれがより重要であるか

はっきりしている □ □ □ □ □

7 選択をするための十分な支援を他者から受けている □ □ □ □ □

8 他者からの圧力を受けることなく選択している □ □ □ □ □

9 選択をするための十分な助言を得ている □ □ □ □ □

10 どの選択肢が自分にとって最良であるのか

はっきりしている □ □ □ □ □

11 何を選択すべきかについて自信がある □ □ □ □ □

12 この決定をするのは、私にとっては容易である □ □ □ □ □

13 十分な情報を得て選択をしたと感じている □ □ □ □ □

14 私の決定は自分にとって何が重要かを示している □ □ □ □ □

15 私の決定は変わることはないと思う □ □ □ □ □

16 自分の決定に満足している □ □ □ □ □

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付録 3 用語について

パス解析

変数間に因果を仮定して、因果推論を行なう統計学的手法

GFI

0〜1 の値をとり、1 の場合にはモデルとデータが完全に適合していることを示す。一般的に

は GFI が 0.9 以下のモデルを除き、残ったモデルの中から AIC の値が 小のモデルを採用す

る。

AGFI

0〜1 の値をとり、1 の場合にはモデルとデータが完全に適合していることを示す。パラメー

タに対する制約の数に影響を受ける GFIの欠点を修正した基準値。

RMSEA

推定するパラメータの数の影響を受ける母乖離度値の欠点を修正した指標。値が 0.05 未満の

場合、自由度に関して適合モデルに近い指標であると判断する。値が小さいモデルではデー

タへの当てはまりが良いと判断し、値が 0.1以上のモデルはあてはまりが悪いとする。

標準化直接効果

原因を表す変数が、結果を表す変数に対して与える直接的な影響

標準化間接効果

原因を表す変数が、他の変数を介して結果を表す変数に与える間接的な影響

標準化総合効果

標準化直接効果と標準化間接効果の和