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Meiji University Title Author(s) �,Citation URL http://hdl.handle.net/10291/19530 Rights Issue Date 2017 Text version ETD Type Thesis or Dissertation DOI https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/

合成樹脂吸着剤の表面改質に関する研究 URL ETD DOI...目次 1 目次 合成樹脂吸着剤の表面改質に関する研究 第1 章 序論 1.1 研究背景 4 1.1.1

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  • Meiji University

     

    Title 合成樹脂吸着剤の表面改質に関する研究

    Author(s) 木下,朋大

    Citation

    URL http://hdl.handle.net/10291/19530

    Rights

    Issue Date 2017

    Text version ETD

    Type Thesis or Dissertation

    DOI

                               https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/

  • 明治大学大学院理工学研究科

    2017年度

    博士学位請求論文 合成樹脂吸着剤の表面改質に関する研究 Studies on the Surface Modification of

    Synthetic Resin Adsorbents

    学位請求者 応用化学専攻 木下 朋大

  • 目次

    1

    目次 合成樹脂吸着剤の表面改質に関する研究 第 1章 序論

    1.1 研究背景 4

    1.1.1 吸着分離 4

    1.1.2 合成樹脂吸着剤 6

    1.1.3 細孔の種類 8

    1.1.4 合成樹脂吸着剤が抱える問題(テーリング) 9

    1.1.5 吸着速度パラメータの測定方法 10

    1.2 本研究の目的と構成 11

    1.3 参考文献 12

    第 2章 合成樹脂吸着剤における細孔容積の簡便な測定法の確立

    2.1 緒言 14

    2.2 物質と操作 15

    2.2.1 吸着剤 15

    2.2.2 吸着質 15

    2.2.3 吸脱着法によるミクロ孔容積(Vmicro)の測定 16

    2.2.4 四塩化炭素の蒸発法によるミクロ孔容積(VCCl4)の測定 19

    2.3 結果と考察 21

    2.3.1 吸脱着法によるミクロ孔容積(Vmicro)の測定 21

    2.3.2 四塩化炭素の蒸発法によるミクロ孔容積(VCCl4)の測定 24

    2.3.3 ミクロ孔容積の比較 25

    2.3.4 最大不可逆吸着量の予測 29

    2.4 結言 31

    2.5 参考文献 32

    第 3章 合成樹脂吸着剤における

    フェノールの不可逆吸着を低減する改質法に関する検討

    3.1 緒言 34

    3.2 物質と操作 36

    3.2.1 吸着剤 36

    3.2.2 試薬 36

    3.2.3 FPX-66の改質 37

    3.2.4 可逆吸着量(RAA)と不可逆吸着量(IRAA)の測定 37

  • 目次

    2

    3.2.5 マクロ・ミクロ孔容積の測定 38

    3.3 結果と考察 40

    3.3.1 スチレン濃度と吸着剤の細孔容積・不可逆吸着量の関係 40

    3.3.2 改質回数と吸着剤の細孔容積・不可逆吸着量の関係 42

    3.3.3 改質条件の最適化 44

    3.4 結言 45

    3.5 参考文献 46

    第 4章 合成樹脂吸着剤とフェノール類の系における

    最適な吸着速度パラメータ推算方法の検討

    4.1 緒言 49

    4.2 物質と操作 50

    4.2.1 試薬 50

    4.2.2 平衡到達率曲線の測定 50

    4.2.3 基礎式 51

    4.3 結果と考察 54

    4.3.1 DPと kFの決定 54

    4.3.2 従来の解析法と本研究の解析法の比較 58

    4.4 結言 60

    4.5 参考文献 61

    第 5章 改質した合成樹脂吸着剤の性能評価と

    フェノールの吸着におけるテーリングの低減

    5.1 緒言 64

    5.2 物質と操作 65

    5.2.1 試薬と吸着質 65

    5.2.2 FPX-66の改質 65

    5.2.3 不可逆吸着量の測定 65

    5.2.4 循環型 Shallow-bed法を用いた濃度減衰曲線(EDC)の測定 66

    5.2.5 計算機シミュレーションによる理論濃度減衰曲線(TDC)の推算 67

    5.3 結果と考察 71

    5.3.1 FPX-66の改質 71

    5.3.2 DPと kFの決定 72

    5.3.3 改質が吸着速度パラメータへ与える影響 76

    5.4 結言 78

    5.5 参考文献 79

  • 目次

    3

    第 6章 結論 82

    付録 1 実験データ(第 2章) 83

    1.1 検量線 83

    1.2 吸脱着実験 91

    1.3 四塩化炭素の蒸発法 130

    1.4 吸着量の吸着時間依存性 132

    1.5 吸脱着法における脱離液による脱着量の違い 133

    付録 2 実験データ(第 3章)

    2.1 吸着等温線 134

    付録 3 実験データ(第 4章)

    3.1 DP, kF導出のためのカーブフィッティング 136

    付録 4 実験データ(第 5章)

    4.1 kF導出のためのカーブフィッティング 167

    謝辞 170

  • 第 1章

    4

    第 1章 序論 1.1 研究背景 1.1.1 吸着分離

    C.W. Sheele[1]によって木炭がガスを吸着するが発見されて以来,様々な種類の気体や

    液体の吸着性に関する研究が行われた。現在では吸着現象は生活や産業に幅広く利用さ

    れ,生活の隅々に浸透し貢献している。[2]例えば,空気中の水蒸気や匂いを取り除く除

    湿剤や消臭剤,水道水から有害な物質を除去するために用いられている濾過器はもっと

    も身近な例である。工業的には,化学製品や医薬品,食品の精製分離,脱色などに広く

    利用されている。

    以下に具体的な吸着操作の工業的,および日常生活への応用の例と,それに用いられる

    操作法や吸着剤をまとめて表に表した。[3]

  • 第 1章

    5

    Table 1.1 Application examples of adsorption process.[3]

    業種または使用法 操作と使用目的 吸着剤 備考

    合成繊維工業 溶剤回収・除去 活性炭,ハイシリカゼ

    オライト

    フィルム製造工業 (トルエン,ケトン,アルコール,炭

    化水素,混合溶剤,有機塩素化

    合物)

    プラスチック工業

    合成ゴム工業

    塗料製造業

    石油精製・石油化学 炭化水素分離,脱水,脱硫 活性炭,ゼオライト

    天然ガス工業 ガソリン分の回収その他 シリカゲル,アルミ

    ナ,ゼオライト

    PSA

    その他一般の化学工

    空気分離(脱湿精製後) ゼオライト,分子ふる

    いカーボン

    PSA

    酸素濃縮,窒素濃縮,水素精製,

    プロセスガスの脱湿,脱硫

    食品工業 ショ糖,調味料,酒製品の脱色 活性炭

    清涼飲料製造業 精製,水の精製

    (呈臭,呈味物質の除去)

    医薬品工業 抗生物質,ビタミンなどの精製 活性炭,吸着樹脂

    塗装 溶剤回収・除去 活性炭,ハイシリカゼ

    オライト

    印刷工業 (ケトン,トルエン,炭化水素,ア

    ルコールなど)

    電子・精密工業 空調(脱湿,空気浄化) ゼオライト,シリカゲ

    ル,アルミナ

    PSA

    有機塩素化合物などの除去 活性炭,ハイシリカゼ

    オライト

    自動制御 制御用空気の脱湿・精製 同上 PSA

    浄水場 水処理(溶存有機物除去) 活性炭

    工場排水処理場 水処理,排気の脱臭 活性炭

    美術館・博物館 空気浄化(エアフィルター) 活性炭,シリカゲル

    大型ビルなど ゼオライト

    食品保存 脱湿,脱酸素 活性炭,シリカゲル

    冷蔵庫の脱臭剤 トリメチルアミン臭などの除去 薬品添着炭とゼオラ

    イト

    小型酸素濃縮器 肺機能補完(病院・家庭) 主にゼオライト PSA

    タバコ用フィルター ニコチン分の除去 粒状活性炭

  • 第 1章

    6

    1.1.2 合成樹脂吸着剤 [4]

    合成吸着剤は従来の吸着剤と異なり,表面積,孔径,細孔の容積などについて変化に

    富んだものが作られている。したがって,吸着する対象によって,それに最も適した吸

    着剤を選ぶことが出来る。

    アンバーライト XADは巨大網目構造をもった合成吸着剤で,アクリルエステルの重

    合体,またはスチレンの単量体と架橋剤であるジビニルベンゼン(DVB)の単量体を水

    中で共重合させて作る。もし,このとき単量体に溶解するような適当な溶媒を加えると,

    重合の過程で相分離が起こり,その結果容易に測定できる程度の多孔度をもった不連続

    の微小粒子からなる共重合体(Fig. 1.1, 1.2)が出来る。一般に DVBの量(架橋度)が多く

    なると,鎖の分岐が多く網目の密な構造になり,DVBの量が少なくなると分岐の少な

    い網目の大きな樹脂が得られる。巨大網目構造樹脂は多孔構造の中で光が散乱するため

    に,不透明ないし半透明の外観を持っている。この樹脂は堅く,不溶性の球状で,化学

    的に安定であるため酸・アルカリどちらの溶液にも安定に存在でき,その特徴は無極性

    または極性を持っていることである。

    合成吸着剤の吸着特性の 1つは様々な異なった固体表面の性質にある。個体への吸着

    現象は固体表面に吸着物を固定させる van der Waals力による。また,細孔分布にある

    程度の広がりを持っているため,平均孔径として示された値よりもかなり大きな分子で

    あっても吸着可能である。

    樹脂吸着剤は薬学や化学製品の製造分野では欠かせないものとなっている。例えば抗

    生物質の抽出やビタミンなどの有効成分の精製,薬品の脱色などその用途はとても幅広

    い。環境汚染が問題となっている地域では,活性炭に取って代わりフェノール類などの

    工業廃液に含まれる有害物質を効率的に回収するために用いられており,より効率的に

    目的物質を回収するために様々な樹脂吸着剤がデザインされている[5–9]。また,それら

    有害物質であるフェノール類の吸着メカニズムや速度パラメータの解析に関しても多

    くの研究が行われている[10–12]。

  • 第 1章

    7

    Fig. 1.1 schematic illustration of synthetic resin adsorbents.

    Fig. 1.2 A structure of synthetic resin adsorbents (styrene-divinylbenzene copolymers).

    micropore

    macropore

    macroparticle

    microparticle

    CH

    H2C

    HC

    H2C

    CH

    CH

    H2C

    HC

    H2C

    HC

    H2C C

    H

    H2C

    HC

    H2C C

    H

    H2C

    HC

    H2C

    CH

    CH

    H2C

    H2C

    HC

    HC

    H2C

    HC

    H2C

    CH

    H2C

    HC

    H2C

    HC

    H2C

    HC

    H2C

    H2C

    CH

    CH

    H2C

    H2C

    HC

    H2C

    HC

    H2C

    HC

    HC

    H2C

    HC

    H2C

    H2C

    H2C

    HC

    H2C

    ~

    入/――¢

    [__〈〉―

    入〗ー〈〉―

    戸―

    -lo―〈〉

    -

  • 第 1章

    8

    1.1.3 細孔の種類 [2]

    吸着剤表面にはいろいろな原因で凹凸が形成されるが,凹部の深さが直径よりも大き

    い孔を細孔(pore)という。細孔を持たない物質を非多孔体(nonporous material),細孔を持

    つ物質を多孔体(porous material)という。多孔体にはいろいろな細孔直径(pore diameter)

    および細孔径分布(pore size distribution),細孔容積(pore volume)がある。

    細孔への吸着の振る舞いはその直径によって異なる。分子直径の数倍の細孔である,

    スーパーミクロ孔やウルトラミクロ孔への吸着では,細孔の壁が吸着分子を取り巻くの

    で,細孔内では van der Waals吸着ポテンシャルが非常に強くなる。そのため,一度吸

    着された分子は容易に脱離することが出来ない。また,孔の直径が吸着分子直径の約

    10倍以上のメソ孔,マクロ孔では古典的な毛細管凝縮が起きる。

    細孔径の範囲の定義は,吸着質窒素分子の有効平均分子径を基準として,IUPAC,

    Manual of Symbols and Termilogy (1972)で提案されたが,国際的には,細孔径を Table 1.2

    のように定義している。

    Table 1.2 Classification of pores.

    Pore name Pore radius [nm]

    Ultra micro pore < 0.5

    Super micro pore 0.5-2.0

    Meso pore 2.0-50

    Micro pore > 50

  • 第 1章

    9

    1.1.4 合成樹脂吸着剤が抱える問題(テーリング)

    合成樹脂吸着剤には微量の吸脱着が長時間に渡り続く,テーリングがしばしば観測さ

    れる[17]。Fig. 1.3は合成樹脂吸着材とフェノールの系における濃度減衰曲線を表してい

    る。プロットが実験値,実線は理論値をそれぞれ表している。吸着過程におけるテーリ

    ングは装置設計時に期待していた効果(理論値)を得られないことで,分離効率の低下

    を招き,不利益を生じさせる現象である。また,脱着過程ではテーリングの影響により

    吸着した物質の一部を回収するのに多大な時間を要する,あるいは回収することができ

    ない,不可逆吸着と呼ばれる現象が発生する。不可逆吸着は目的物質の回収効率を著し

    く低下させる要因となっている。

    Fig. 1.3 An example of the tailing behavior.

    テーリングはミクロ孔内(ミクロ粒子内部)における吸着質分子の拡散速度が非常に

    遅いことに起因していると考えられている。したがって,テーリングについて評価する

    場合,ミクロ孔内の容積が重要となる。一般にミクロ孔容積を求めるための手法として

    は窒素吸着法や水銀圧入法がある。しかしながら,どちらの手法も加圧や減圧,温度を

    一定に保つための装置が必要となり,相応の環境がなくては実験が出来ない。また,樹

    脂吸着剤におけるミクロ孔は活性炭などとは異なりゲル状の細孔であると考えられて

    いるため,圧力の変化によって細孔が変形・破壊する恐れがある。樹脂吸着剤の細孔を

    変形させずに測定する方法として,ある吸着質の吸着量と脱着量の差からミクロ孔内の

    残存物質の量を求め,その物質の体積からミクロ孔容積を求めるといった手法(いわゆ

    る吸脱着法)がある。しかしながらこの方法は誤差の入る余地が多分に存在することに

    加え,大量の溶質を必要とするという欠点を抱えている。

    (c t-c e

    )/(c 0-

    c e)=

    (Ct-C

    e)/(C

    0-Ce)

    [-]

    0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1

    0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1

    Time, t [min]1 10 100

    Dimensionless time, T [-]0.001 0.01 0.1 1

    EDCTDC

    Freundlich n=2.05Bi=47.0(m/V) β=0.36

    T/t=0.0045 [min-1]

    F-1

    Deviation caused by tailing behavior

    (ct-c

    e)/(c

    0-ce)=

    (Ct-C

    e)/(C

    0-Ce)

    [-]

    0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1

    0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1

    Time, t [min]1 10 100

    Dimensionless time, T [-]0.01 0.1 1

    EDCTDC

    Freundlich n=2.03Bi=23.2(m/V) β=0.36

    T/t=0.0078

    No deviationM-1

    Virgin FPX-66 Modified FPX-66

  • 第 1章

    10

    1.1.5 吸着速度パラメータの測定方法

    一般に吸着装置の設計には吸着平衡パラメータと吸着速度パラメータに関する情報

    が不可欠である。液相吸着において吸着平衡パラメータはバッチ法により決定可能であ

    り,吸着速度パラメータの決定には固定層破過曲線法(固定層法)[13,14]や Shallow-bed

    法[15,16],完全混合反応層法(Completely Mixed Batch Reactor, CMBR)[15,17,18]等がある。

    それぞれの測定方法とその特徴は Table 2[19]に示した通りである。

    Table 2 Determination technique of intraparticle diffusivity.[18]

    測定方法 固定層法 Shallow-bed 法 CMBR 法

    測定評価 破過曲線 平衡到達率曲線 濃度減衰曲線

    仮定

    固液体境膜物質移動係数

    は実験的な式により推算で

    きる。

    固液体境膜物質移動抵

    抗は無視することができ

    る。

    固液体境膜物質移動

    抵抗は無視することが

    できる。

    利点 装置が単純で,経験的なデ

    ータが豊富である。

    実験方法と解析方法が

    容易である。

    溶液体積が少なく,解

    析方法が容易である。

    欠点 経験式や推算式に誤差が

    生じてしまう。

    溶液体積が大きく,物

    質移動抵抗を無視して

    いる。

    物質移動抵抗を無視

    している。

    CMBR法は必要な液量が少なく,実験値と理論値のカーブフィッティングにより容易

    に粒子内拡散係数と境膜物質移動係数を導きだせる優れた手法であるが,合成樹脂吸着

    剤の厚い流体境膜の影響を除外するに十分な流速を確保することができないという欠

    点がある。

  • 第 1章

    11

    1.2 本研究の目的と構成 一般的に分離回収プロセスの効率向上を目的とした吸着剤の開発では吸着量を増大

    させることに重点を置いており,テーリングや不可逆吸着量を低減させることで,効率

    増加を狙う試みは報告されていない。そこで本研究では異なった着眼点(すなわちテー

    リングの減少という観点)から工業的な分離回収プロセスの効率増加に寄与するため,

    合成樹脂吸着剤に見られるテーリング現象に纏わる下記の 4つの研究を行った。まず初

    めに,第 2章では合成樹脂吸着剤の新たな細孔容積の測定法として,四塩化炭素の蒸発

    法を検討した。これにより合成樹脂吸着剤の細孔容積に関しての 評価が可能となった。

    第 3 章ではテーリングにより引き起こされる合成樹脂吸着剤の不可逆吸着を低減する

    ための改質方法を検討した。スチレンモノマーを用いた改質による細孔容積の変化を第

    2章で確立した,吸脱着法と四塩化炭素の蒸発法の 2種類により評価し,改質条件の最

    適化を図った。第 4章では合成樹脂吸着剤における吸着速度パラメータ推算のための計

    算モデルに関して検討を行った。Shallow-bed 法により得られたデータを 2 つの計算モ

    デルにより解析し,合成樹脂吸着剤における粒子内拡散係数と境膜物質移動係数推算の

    ための最適な計算モデルを明らかにした。第 5章では第 3章で行った吸着剤の改質がテ

    ーリングと吸着速度パラメータ(粒子内拡散係数,境膜物質移動係数)へ与える影響を

    検討した。第 4章で得た知見を元に Shallow-bed法を改良して解析を行い,これにより

    改質した吸着剤が工業的な用途に適合していることを示した。

  • 第 1章

    12

    1.3 参考文献

    [1] C.W. Sheele, J.R. Forster, J. Priestley, R. Kirwan, T. Bergman, “Chemical observations

    and experiments on air and fire”, J. Johnson (1780)

    [2] 近藤精一, 石川達雄, 安部郁夫, 「吸着の科学 第 2版」, 丸善株式会社 (2001)

    [3] 竹内雍, 「吸着分離—入門から操作設計まで−」, 培風館 (2006)

    [4] オルガノ株式会社,「イオン交換樹脂 その技術と応用」,オルガノ株式会社(1986)

    [5] S.H. Lin, R.S. Juang, Adsorption of phenol and its derivatives from water using synthetic

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    [6] C. Păcurariu, G. Mihoc, A. Popa, S.G. Muntean, R. Ianoş, Adsorption of phenol and

    p-chlorophenol from aqueous solutions on poly (styrene-co-divinilbenzene) functionalized

    materials, Chem. Eng. J. 222 (2013) 218-227

    [7] M.S. Bilgili, Adsorption of 4-chlorophenol from aqueous solutions by xad-4 resin:

    Isotherm, kinetic, and thermodynamic analysis, J. Hazard. Mater. B137 (2006) 157-164

    [8] A. Li, Q. Zhang, G. Zhang, J. Chen, Z. Fei, F. Liu, Adsorption of phenolic compounds

    from aqueous solutions by a water-compatible hypercrosslinked polymeric adsorbent,

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    [11] E.G. Furuya, H.T. Chang, Y. Miura, K.E. Noll, A fundamental analysis of the isotherm for

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    equation constants and molecular orbital properties, Separation and Purification

    Technology 39 (2004) 67-72

    [13] Y. Takeuchi, E. Furuya, A simple method to estimate effective surface diffusivity for

    freundlich isotherm systems from breakthrough curves based on numerical results, J.Chem.

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    adsorption kinetics from a liquid phase fixed-bed breakthrough curve, Chem. Eng.

    Technol. 36 No.2 (2013) 259-267

  • 第 1章

    13

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    [16] N. Sonetaka, H.J. Fan, S. Kobayashi, H.N. Chang, E. Furuya, Simultaneous determination

    of intraparticle diffusivity and liquid film mass transfer coefficient from a

    single-component adsorption uptake curve, J. Hazard. Mater. 164 (2009) 1447-1451

    [17] D.M. Misic, Y. Sudo, Liquid-to-particle mass transfer in a stirred batch adsorption tank

    with non-linear isotherm, J. Chem. Eng. J. 15 (1) (1982) 67-70

    [18] 藤本隆司, 粒子外境膜の影響を除いた樹脂吸着剤粒子内拡散係数 の決定法, 修士

    論文, 明治大学 (2011)

    [19] 和田翔太, 完全混合槽法を用いた境膜物質移動係数の決定, 修士論文, 明治大学

    (2012)

  • 第 2章

    14

    第 2章 合成樹脂吸着剤における細孔容積の簡便な測定法の確立

    2.1 緒言 合成樹脂吸着剤は,工業的に最も利用されている吸着剤の一種である。例えば,抗酸

    化剤や抗生物質などの分離回収に用いられている [1–4]。合成樹脂吸着剤を用いた固定層

    吸着の主たる問題点の一つは,回収効率の低下を招くテーリングにある [5,6]。この現象

    はミクロ粒子内の分子の拡散速度が遅いことに起因していると考えられている[7–9]。し

    たがって,樹脂吸着剤の細孔容積を測定・評価することはとても重要な意味を持つ。一

    般的に細孔容積の測定方法としては水銀圧入法と窒素吸着法が用いられている[11–15]。こ

    れらの手法は細孔容積だけでなくそのサイズによる分布も知ることができる[16–19]。活性

    炭などの多孔体において,それらの手法は非常に有益であるが,合成樹脂吸着剤の細孔

    測定の手段としてはあまり適していない。一般的に合成樹脂吸着剤は厳密な物理的な構

    造(規則的な細孔など)を有しておらず,溶媒中で膨潤する。水銀圧入法と窒素吸着法

    は測定時に加圧を要する。したがって樹脂吸着剤の細孔はその加圧により,変形あるい

    は破損する恐れがあることに加え,窒素吸着の低温化では膨潤状態での最高を測定する

    ことが困難である。したがって,水銀圧入法と窒素吸着法は合成樹脂吸着剤の細孔容積

    を正確に測定するための方法としては不十分であると考えられる。代替手段の一つとし

    て,吸脱着法が挙げられる。これは吸着量と脱着量の差から吸着剤内に残存する物質の

    量を求め,その物質の体積から細孔容積を推定する手法である。しかしこの手法は手間

    とコストが大きい。加えてこの手法では吸着質の大きさにより見積もられる細孔容積が

    異なるという問題も存在する。

    ミクロ孔容積はテーリング問題の最も重要な要素であるため,簡便な測定方法の発展が

    望まれる。したがって本研究では容易に最高容積を測定可能な四塩化炭素の蒸発法を提

    案する。四塩化炭素は揮発性の液体であり,吸脱着量は電子天秤により容易に測定可能

    である。この手法は操作が容易なことと時間及び化学薬品の節約により環境負荷が少な

    いことが利点としてあげられる。したがって合成樹脂吸着剤の細孔容積の測定法として

    は有益なものとなり得る。

  • 第 2章

    15

    2.2 物質と操作

    2.2.1 吸着剤

    スチレン-ジビニルベンゼン共重合体の合成樹脂吸着剤であるXAD-2000,XAD-1180,

    XAD-2(Dow Chemical Company, USA),SYA-2を用いた。全ての吸着剤は事前にメタ

    ノール,イソプロパノール,純水,0.1M水酸化ナトリウム水溶液,再度純水で洗浄し,

    合成過程で吸着剤内部に残存しているモノマーやオリゴマーを取り除き使用した。洗浄

    後の吸着剤は使用するまで純水に浸してガラス瓶で保管した。それぞれの吸着剤の物性

    は Table 2.1に示す。

    Table 2.1 Characteristics of adsorbents.

    Adsorbent Particle size [mm] Pore volume [mL/g] Mean Pore diameter [Å]

    XAD-2000 0.194a 0.73a 45a

    XAD-1180 0.174b 1.68b 300b

    XAD-2 0.157a 0.64a 80a, 90b

    SYA-2 0.138 N/A N/A

    a) Provided by Organo Corporation, Japan with mercury intrusion methods. [20]

    b) Provided by Sigma–Aldrich, USA.

    2.2.2 吸着質

    本実験で用いた吸着質はフェノール(以下 PHL), p-ニトロフェノール(以下 PNP), p-ク

    ロロフェノール(以下 PCP), 安息香酸(以下 BA), 四塩化炭素(以下 CCl4)である。分子

    量 Mw [g/mol], 溶媒を水または 0.1M水酸化ナトリウム水溶液にした場合の特性吸収波

    長,沸点分子容,分子半径をそれぞれ以下にまとめた。

  • 第 2章

    16

    Table 2.5 Characteristics of adsorbates.

    Adsorbate PHL PCP PNP BA CCl4

    Mw [g/mol] 94.11 128.56 139.11 122.12 153.82

    Characteristics wave length (in H2O) [nm]

    (adsorption)

    270.0 225.0 318.0 227.0 –

    Characteristics wave length (in NaOH) [nm]

    (desorption)

    287.0 244.0 399.0 225.5 –

    Molecular volume [mL/mol] 108 125.9 129.6 134.8 101.2

    Mean diameter [Å] 5.91 6.22 6.28 6.36 5.78

    Saturated solubility [g/L] 84 27 11.6 2.9 –

    2.2.3 吸脱着法によるミクロ孔容積(Vmicro)の測定

    合成樹脂吸着剤のような柔らかな吸着剤では,加圧による細孔の変形・破損が問題と

    なる。また,溶媒によって膨潤した際にのみ現れるゲル孔を含むミクロ孔容積は従来の

    測定法では十分に評価できない。そこで樹脂吸着剤の細孔を求める際に代替手段として

    吸脱着法が用いられることがある。

    ミクロ孔内への拡散は非常に遅いため,吸着質と吸着剤を長期間接触させる必要があ

    る。そのため,この測定法における吸着方法はバッチ法が最も適している。吸着質には

    フェノール(PHL),p-クロロフェノール(PCP),p-ニトロフェノール(PNP),安息香

    酸(BA)を用いた。はじめに 0.5gの樹脂吸着剤(XAD-2000,XAD-1180,XAD-2,SYA-2

    のいずれか)と既知の濃度の吸着質水溶液を 1週間接触させた。1週間後に溶液の濃度

    を紫外可視分光光度計により測定した。その後吸着剤を取り出し,吸着剤表面に過剰に

    付着した吸着質を 1mLの純水で洗浄した後,吸引して乾燥させた。得られた吸着剤は

    0.1M の水酸化ナトリウム水溶液(500mL)を用いて 3 時間かけて脱着を行った。脱着

    時に用いた装置の概略を Fig. 2.1に示す。

    ミクロ孔容積を最大限に見積もるためには,不可逆吸着量が最も大きくなる条件を探

    す必要がある。ここで,吸着量 qeと不可逆吸着量 qiには比例関係があることが知られ

    ており,また平衡濃度が大きくなるにつれて吸着量も大きくなる。従って,不可逆吸着

    量を最大にするためには平衡濃度が最大,すなわち飽和溶解度と同じ濃度にする必要が

    ある。しかしながら,初濃度が飽和溶解度である溶液を用いて吸着実験を行ったとして

    も,吸着により吸着後の溶液の濃度(平衡濃度)は初濃度よりも小さくなってしまう。

    この問題を解決するためには 2通りの方法があり,1つは吸着の前後で溶液の濃度変化

    を無視できるくらいの多量の溶液を用いて実験を行う方法,もう 1つは計算により吸着

    量を外挿する方法である。本研究では吸着等温線に Freundlich式を用いた外挿を行った。

  • 第 2章

    17

    Fig. 2.1 Schematic illustration of desorption process

    ミクロ孔容積は下記の式により計算した。

    qe =(c0 − ce )Vm

    (2.1)

    qd =cdVm

    (2.2)

    qi = qe − qd (2.3)

    Vm =qiMv1000Mw

    (2.4)

    ここで,qe [mg/g]は平衡吸着量,c0 [mg/L]は吸着質の初濃度,ce [mg/L]は吸着質の平衡

    濃度,V [L]は溶液量,m [g]は吸着剤質量,qd [mg/g]は脱着量,cd [mg/L]は脱離液濃度,

    qi [mg/g]は不可逆吸着量,Vm [cm3/g]はミクロ孔容積,Mv [mL/mol]は吸着質の沸点分子容,

    Mw [g/mol]は吸着質の分子量を表す。

    また,Mv [mL/mol]は吸着質の沸点分子容, Mw[g/mol]は吸着質の分子量を表している。

    沸点分子容は以下の Table 2.2, 2.3に示す原子容を加算して得ることが出来る。しかし,

    このようにして得られた沸点分子容は必ずしも正確な値ではない,特にシンプルな分子

    では誤差が大きくなるという点に注意しなくてはならない

    0.1 M NaOH aq500 mL

    A

    B

    C

    D

    E

    FF

    G

    B

    A: Polyethylene TankB: Glass columnC: Teflon tubeD: CockE: Erlenmeyer flaskF: Support ringG: Teflon sheet

    Resin adsorbents

  • 第 2章

    18

    Table 2.2 Atom volumes at the boiling point.[21] [mL/mol]

    原 子 原子容 原子 原子容

    C 14.8 As 30.5

    H (化合物) 3.7 Bi 48.0

    (H2分子) 7.15 Br 27.0

    O (二重結合) 7.4 Cr 27.4

    (アルデヒド,ケトン) 7.4 F 8.7

    (メチルエステル) 9.1 Ge 34.5

    (エチルエステル) 9.9 I 37.0

    (高級エステルおよびエーテル) 11.0 P 27.0

    (アルコール,カルボン酸) 12.0 S 25.6

    (S, P, Nとの結合) 8.3 Sb 34.3

    N 15.6 Si 32.0

    (第 1アミン −NH2) 10.5 Sn 42.3

    (第 2アミン −NH) 12.0 Ti 35.7

    (第 3アミン −N−) 14.8 V 32.0

    Cl (末端にあるとき R−Cl) 21.6 Zn 20.4

    (中間にあるとき R−CHCl−R) 24.6

    Table 2.3 Correction value. [21]

    構 造 補正値

    三角環(例:酸化エチレン) -6.0

    四角環(例:シクロブタン) -8.5

    五角環(例:フラン) -11.5

    六角環(例;ベンゼン) -15.0

    ナフタリン環 -30.0

    アンスラセン環 -47.5

  • 第 2章

    19

    2.2.4四塩化炭素の蒸発法によるミクロ孔容積(VCCl4)の測定

    本研究では四塩化炭素の蒸発法(CTVT)をミクロ孔容積の測定法として用いた。吸

    着剤に吸着した四塩化炭素が脱着する際に以下の 3つの過程を経る(Fig. 2.2)。

    i) 大きな表面積をもつ吸着剤表面からの急激な蒸発

    ii) マクロ孔内からの緩やかな蒸発

    iii) ミクロ孔内からのごく僅かな蒸発

    したがって,i)と ii),ii)と iii)の交点をそれぞれ∆W1,∆W2とすると,以下の Eq. (2.5), (2.6)

    によりマクロ孔容積とミクロ孔容積を算出することができる。

    Fig. 2.2 A conceptual plot of CTVT.

    Vmacro =ΔW1 −ΔW2d ×m

    (2.5)

    Vmicro =ΔW2d ×m

    (2.6)

    ここで,Vmacro [cm3/g]はマクロ孔容積,∆W1 [g]はマクロ孔及びミクロ孔内に残存する四

    塩化炭素の質量,∆W2 [g]はミクロ孔内に残存する四塩化炭素の質量,d [1.594 g/cm3] は

    四塩化炭素の密度,m [g]は吸着剤の質量を表す。

    0.6

    0.5

    0.4

    3

    2

    0

    0

    [ 6]M

    1

    0

    83

    00 ゚

    .. 00

    ―・ △ w, ・――-

    50 100 150

    t[min]

    200 250 300

  • 第 2章

    20

    本研究ではキャップ付きの 60mLガラス瓶に乾燥状態の吸着剤 0.1gと四塩化炭素 10mL

    を封入し,20℃の恒温槽中に 1週間静かに置いた。1週間後,あらかじめ質量をはかっ

    ておいた底にろ紙を敷いたるつぼに吸着剤を移し,電子天秤(AUX220,SHIMADZU)

    を用いて質量の変化を 10分おきに記録した。測定は質量の変化がなくなったと判断さ

    れるまで行った。

  • 第 2章

    21

    2.3 結果と考察

    2.3.1 吸脱着法によるミクロ孔容積(Vmicro)の測定

    XAD-2000と PNPを用いた吸脱着実験に置ける結果を例として,下記に解析方法を説

    明する。

    Fig. 2.3 Amount adsorbed and desorbed for XAD-2000−PNP system.

    700 ● q,

    0 qd 600 f- ―------・Freundlich Equation

    k=4.80, n=2.32 542.5

    500 t-

    ↑ ゜゚

    4

    [6l6E]

    ―-―-―-ク―-',

    ----―

    クグ

    ―-

    ’°

    ククククク

    .。ク

    グク

    /グ

    ググ

    f

    / ク

    ・゚ク

    / /

    /.。ノ

    // ‘-/ //

    原)

    ' '

    トー・、Q

    ―-―-――-―

    0

    0

    0

    0

    0

    0

    3

    2

    1

    Pb JO

    •b

    ゜゚

    I

    2,000

    I

    4,000

    .l 6,000

    c. [mg/LI

    I I I I I

    8,000 10,000 12,000

    11600

  • 第 2章

    22

    Fig. 2.4 Dependence of qi on qe for XAD-2000–PNP system.

    Fig. 2.3に示すように,XAD-2000−PNP系における吸着等温線は k=4.80, n=2.32とする

    Freundlich式を用いて表すことが出来る。そこで平衡濃度が飽和濃度 11600mg/Lとなる

    点における吸着量 qe*=542.5[mg/g]を求める。次に Fig. 2.4より qeと qiは直線となり Eq.

    (2.7)のように表されるので (R2=0.98025) (2.7)

    qe*=542.5[mg/g]となる点から,ミクロ孔内の残存量の最大値 qi*=48.6 [mg/g]を得ること

    が出来る。得られた qi*から Eq. (2.4)を用いてミクロ孔容積 Vmicroを求めると Vmicro= 0.045 [cm3/g]となる。同様にして得られた Freundlichパラメータ,qe*, qi*をそれぞれ Table 2.4–

    2.6に示す。また,他の系におけるそれぞれのグラフおよび算出方法は付録に掲載した。

    qi = 0.0895qe

    80

    60

    ------q,=0.0895q, R'=0.98025

    * q

    |L ゜

    4

    [ 6/6 E]'b

    20

    ' '’ ', ' ,' ' 2

    ' '’

    ' ' '

    ゜' ,' ぷ゜

    '’

    ' ' ' Q, '’

    ' ', '’

    ' '

    ' Q ' '’ '

    ゜'

    ' '’

    る,'

    」'’

    '’

    ゜゚

    48.6

    /',/',/',/

    200 400

    q. [mg/g]

    542.5 600 q, *

  • 第 2章

    23

    Table 2.4 Freundlich parameters for each system.

    Resin PHL PNP PCP BA

    k [mg/g] n [-] k [mg/g] n [-] k [mg/g] n [-] k [mg/g] n [-]

    XAD-2000 3.35E+00 2.11E+00 4.80E+00 1.98E+00 1.38E+01 2.56E+00 8.61E+00 2.14E+00

    XAD-1180 4.61E+00 2.36E+00 7.59E+00 2.32E+00 2.77E+01 3.50E+00 8.19E+00 2.12E+00

    XAD-2 5.62E+00 2.90E+00 4.87E+00 2.39E+00 1.70E+01 3.51E+00 5.41E+00 2.21E+00

    SYA-2 7.35E+00 2.45E+00 1.12E+01 2.34E+00 2.12E+01 2.80E+00 5.82E+00 1.82E+00

    Table 2.5 qe* values for each system.

    Resin PHL PNP PCP BA

    qe* [mg/g] qe* [mg/g] qe* [mg/g] qe* [mg/g]

    XAD-2000 720.7 542.5 742.3 355.0

    XAD-1180 562.7 425.3 513.5 350.1

    XAD-2 280.4 245.0 311.8 198.7

    SYA-2 748.3 617.5 815.9 465.6

  • 第 2章

    24

    Table 2.6 qi* values for each system.

    Resin PHL PNP PCP BA

    qi* [mg/g] qi* [mg/g] qi* [mg/g] qi* [mg/g]

    XAD-2000 93.8 48.6 70.1 17.8

    XAD-1180 114.1 46.3 45.0 42.7

    XAD-2 29.7 22.3 20.0 14.1

    SYA-2 215.1 85.2 74.2 56.0

    2.3.2 四塩化炭素の蒸発法によるミクロ孔容積(VCCl4)の測定

    XAD-2000 を用いた場合の四塩化炭素の蒸発過程における吸着剤内の四塩化炭素の

    質量 WCCl4 [g]と時間 t [min]との関係は Fig. 2.5のようになった。

    Fig. 2.5 Weight changes for XAD-2000 during CTVT test.

    したがって,それらの交点を求めると ΔW2=0.036 [g]となり,式(2.25)よりミクロ孔容積

    VCCl4(ここでは吸脱着法で求められたミクロ孔容積と区別するためこのように定義する)

    は VCCl4=0.21 [g/cm3]と求められる。また,XAD-1180, XAD-2, SYA-2の四塩化炭素の蒸

    発法を用いたミクロ孔容積の決定過程は付録に掲載した。

    0.8

    0.6

    4 ゜

    [6]寸一

    uuM

    0.2

    Wce14=-0.002 St+0.3619 R2=0.93357

    WcCl4=-0.0002t+0.0623 R2=0.90645

    0.036← --------------------------------------

    ゜0 50 100 150 t [min] 200 250

  • 第 2章

    25

    2.3.3 ミクロ孔容積の比較

    吸脱着法で得られたミクロ孔容積 Vmicro [cm3/g]および四塩化炭素の蒸発法で得られた

    ミクロ孔容積 VCCl4 [cm3/g]を Table 2.7にまとめた

    Table 2.7 Effect of adsorbate on estimated micropore volumes.

    Resin PHL PNP PCP BA CCl4

    Vmicro [cm3/g] Vmicro [cm3/g] Vmicro [cm3/g] Vmicro [cm3/g] VCCl4 [cm3/g]

    XAD-2000 0.108 0.045 0.069 0.020 0.213

    XAD-1180 0.131 0.043 0.044 0.047 0.122

    XAD-2 0.034 0.021 0.020 0.016 0.048

    SYA-2 0.247 0.079 0.073 0.062 0.335

    Vmicro [cm3/g]を算出する際に用いた,沸点分子容により求めた各吸着質の分子容 Mv

    [cm3/mol],分子モデリングソフトウェア Spartan’10 V1.10 (Wavefunction, Inc.)により求め

    た,1分子の分子体積から導かれる分子径 dn [Å]を以下の表 4-5にまとめた。Spartan’10を用いた分子シミュレーションでは,全ての計算を Hartree-Fock, 3-21Gにより行った。

    また dnは球相当直径[36]に関する式(Eq. (2.8))を用いて 1分子の体積 Vp [Å3]より求めた。

    Table 2.8 Volumes and diameters for each molecule.

    吸着質 Mv [cm3/mol] dn [Å]

    PHL 108 5.87

    PNP 129.6 6.24

    PCP 125.9 6.11

    BA 134.8 6.22

    CCl4 101.2 5.54

    (2.8)

    Table 2.7, 2.8よりミクロ孔容積 VMP (Vmicroと VCCl4) [cm3/g]とMv [cm3/mol]の関係は以下の

    Fig. 2.6になる。

    dn = (6Vp /π )1/3

  • 第 2章

    26

    Fig. 2.6 Dependence of VMP on Mv for various phenolic compounds onto resins.

    Fig. 2.6より,吸脱着法により得られた直線(図中の PHL, PNP, PCP, BAの点)と四塩

    化炭素の蒸発法で得られた点(CCl4)は同一直線上にあることがわかる。このことから,

    四塩化炭素の蒸発法は従来吸脱着により細孔容積を求めるといった手間をかけること

    無く,同様の結果を得られる優れた手法であるといえる。吸着質による細孔容積の違い

    は,分子径の小さな物質ほど細孔に対して密に詰まることが出来るためであると考えら

    れる。それらの模式図を Fig. 2.7に示す。

    0.4

    0.35 t CCI. ゜XAD-2000

    口 XAD-1180

    PHL ◇ XAD-2

    0.3 I ヽ △ SYA-2

    0.25 ~口.

    i 。.2~ ゜.J 0.15 t. \ "'- PCP

    0.1

    0.05

    ゜95 100 105 110 115 120 125 130 135 140 Mv [cm3/mol)

  • 第 2章

    27

    Fig. 2.7 Effect of molecular size on estimated pore volumes.

    また,Fig. 2.8 に示した Spartan’10 により計算された分子径と吸着量の関係も同様の事

    実を示している。

    Fig. 2.8 Effect of mean diameters of adsorbates and type of resins on the micropore volume of

    resins.

    0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25

    0.30

    0.35

    5.54 5.87 6.11 6.22 6.24

    V MP [

    cm3 /g

    ]

    dn [Å]

       SYA-2  XAD-2000 XAD-1180XAD-2

  • 第 2章

    28

    以上により四塩化炭素の蒸発法を用いたミクロ孔容積は従来の吸脱着法で得られる

    容積と同様の傾向を示すことが明らかとなった。したがって,本研究で提案する四塩化

    炭素の蒸発法を用いると,合成樹脂吸着剤のようにゲル状の細孔を持つ吸着剤において

    細孔構造を破壊したり,大掛かりな装置を用いたり複雑な工程を経ることなくミクロ孔

    容積を測定することが可能である。

    また,四塩化炭素の蒸発法で得られたミクロ孔容積と吸脱着実験で得られたミクロ孔

    容積,それと吸着質分子の分子容には直線関係があることが示された。従って,ある吸

    着剤において,吸脱着法により 1点,四塩化炭素の蒸発法により 1点の計 2点があれば,

    他の吸着質に関しては実験を行わずとも,吸着質の分子容(体積比)からその吸着質に

    より得られるミクロ孔容積およびミクロ孔内吸着量(テーリング量)が推測可能となる。

  • 第 2章

    29

    2.3.4 最大不可逆吸着量の予測

    前節では四塩化炭素により得られたミクロ孔容積と吸脱着実験により得られたミク

    ロ孔容積と吸着質の分子容には直線関係があることが示された。その結果同じ種類の吸

    着剤に対して 2点プロットがあれば,他の吸着質によるミクロ孔容積およびテーリング

    量は分子容比から推測可能であるという結論を得た。しかしながら,吸脱着法はそれ自

    体が非常に高精度の実験技量を要求され,あまり手軽な方法とは言えない。そこでこの

    項目では四塩化炭素の蒸発法で得られたミクロ孔容積のみから,吸脱着法で得られる容

    積を推測する方法を検討した。

    両手法により得られるミクロ孔容積は Fig. 2.9に示す通りである。なお,近似曲線は

    原点を通るように引いてある。

    Fig. 2.9 Dependence of Vmicro on VCCl4 for various phenolic compounds onto resins.

    VCCl4と Vmicroは直線関係を示した。ここで,直線の傾きを a [-]とすると VCCl4と Vmicroは

    以下の式(Eq. (2.9))のように表される。

    (2.9)

    Fig. 2.9から得られた aは以下の Table 2.9にまとめた。また,aと Mvの関係は次の Fig.

    2.10のようになった。

    Vmicro = a×VCCl4

    0.3

    0.25

    2

    5

    .

    1

    [ 6/ E

    Eu] g-E> 0.1

    0.05

    L

    P

    P

    H

    N

    C

    A

    P

    P

    P

    B

    〇口◇△

    XAD-1180

    SYA-2

    XAD-2000

    0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4

    Vce14 [cm刃g]

  • 第 2章

    30

    Table 2.9 Dependence of a on each phenolic compound for various resins.

    Adsorbates PHL PNP PCP BA

    a 0.706 0.243 0.259 0.180

    Fig. 2.10 Dependence of a on Mv for various phenolic compounds onto resins.

    グラフより aと Mvとの間に以下の式(Eq. (2.10))に示す関係を得た。

    a = −0.0243Mv +3.3928 (2.10)

    したがって,沸点分子容(表 2-3, 2-4)により吸着質の分子容 Mv [cm3/g]を計算すること

    で式(4.11)を用いると VCCl4 [cm3/g]と Vmicro [cm3/g]の傾き a[-]を求めることが出来る。また,

    その値 aと四塩化炭素の蒸発法によって得られたミクロ孔容積 VCCl4 [cm3/g]には式(4.10)

    の関係が成り立つので,四塩化炭素の蒸発法を用いて容積を測定すれば,吸脱着法を用

    いることなく他の吸着質を用いた場合のミクロ孔容積を求めることが出来る。これは四

    塩化炭素の蒸発法からテーリング量が予測できることを意味している。

    1.2

    卜CCl4

    1

    ゜ヽ0.8

    ゜.-I . 0.6 PHL n:s 0.4

    PNP

    0 ~、 BA02 [

    PCP 0

    I I I I I I I I I I I 0 I 90 100 110 120 130 140

    Mv [cm刃moll

  • 第 2章

    31

    2.4 結言 スチレン−ジビニルベンゼン共重合体の合成樹脂吸着剤とフェノール類を用いた系に

    おいて,従来までの吸脱着法によるミクロ孔容積の測定結果と本実験で提案する新たな

    測定法,四塩化炭素の蒸発法は同様の結果を得ることが出来た。この方法は他の吸着剤

    にも応用が利くと予想される。従って,繊細な細孔構造を持つ樹脂吸着剤のような吸着

    剤に対して,本手法は安価で,大掛かりな実験設備を必要とせず,かつ少ない行程で結

    果を得られる優れた手法であることが示された。また,四塩化炭素の蒸発法と沸点分子

    容を用いて,従来までは実験してみなくては分からなかったテーリングの原因となるミ

    クロ孔内への吸着量を実際に吸脱着せずとも容易に予測することが出来る可能性を見

    いだした。

  • 第 3章

    32

    2.5 参考文献

    [1] H. Hattori, K. Tajima, H.T. Chang, T. Murayama, E. Furuya, Selective adsorption a

    substance derived from saccharine onto synthetic resin particles, Adsorption 11 (2005)

    917–920.

    [2] C.Ma,G.Tao,J.Tang,Z.Lou,H.Wang,X.Gu,L.Hu,M.Yin,Preparativeseparation and

    purification of rosavin in Rhodiolarosea by macroporous adsorption resins, Sep. Purif.

    Technol. 69 (1) (2009) 22–28.

    [3] Y. Liu, J. Liu, X. Chen, Y. Liu, D. Di, Preparative separation and purification of lycopene

    from tomato skins extracts by macroporous adsorption resins, Food Chem. 123 (4) (2010)

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    [4] T.J.Buran,A.K.Sandhu,Z.Li,C.R.Rock,W.W.Yang,L.Gu,Adsorption/desorption

    characteristics and separation of anthocyanins and polyphenols from blueber- ries using

    macroporous adsorbent resins, J. Food Eng. 128 (2014) 167–173.

    [5] E.Furuya,Y.Takeuchi,K.E.Noll,Intraparticlediffusionofphenolswithinbidis- persed

    macroreticular resin particles, J. Chem. Eng. Jpn. 22 (1989) 670–676.

    [6] J.Fujiki,H.J.Fan,H.Hattori,K.Tajima,Y.Tsai,E.Furuya,Computer-aideddesign of surface

    modified adsorbent for adsorption of 5-hydroxy-methyl-furfural, Sep. Purif. Technol. 60

    (2008) 223–229.

    [7] E. Furuya, Y. Takeuchi, K.E. Noll, Studies on diffusion of binary phenol derivatives

    within a porous synthetic adsorbent, in: Stephan E. Scholl (Ed.), Fundamentals of

    Adsorption, Engineering Foundation, 1990, pp. 289–298.

    [8] K. Satoh, H.J. Fan, H. Hattori, K. Tajima, E. Furuya, Simultaneous determination of

    intraparticle diffusivities from ternary component uptake curves using the shallow bed

    technique, J. Hazard. Mater. 155 (3) (2008) 397–402.

    [9] N. Sonetaka, H.J. Fan, S. Kobayashi, H. Chang, E. Furuya, Simultaneous deter- mination

    of intraparticle diffusivity and liquid film mass transfer coefficient from a

    single-component adsorption uptake curve, J. Hazard. Mater. 164 (2009) 1447–1451.

    [10] K.Sing,Theuseofnitrogenadsorptionforthecharacterizationofporousmate- rials, Colloid Surf.

    A 187–188 (2001) 3–9.

  • 第 3章

    33

    [11] P. Kowalczyk, A.P. Terzyk, P.A. Gauden, R. Leboda, E. Szmechtig-Gauden, G. Rychlicki,

    Z. Ryu, H. Rong, Estimation of the pore-size distribution function from the nitrogen

    adsorption isotherm, Comparison of density functional theory and the method of Do and

    co-workers, Carbon 41 (2003) 1113–1125.

    [12] Y. Belmabkhout, M. Frère, G. De Weireld, Structural characterization of porous

    carbonaceous materials using high-pressure adsorption measurements, Stud. Surf. Sci.

    Catal. 160 (2007) 113–120.

    [13] P.I. Ravikovitch, A. Vishnyakov, R. Russo, A.V. Neimark, Unified approach to pore size

    characterization of microporous carbonaceous materials from N2 , Ar and CO2 adsorption

    isotherms, Langmuir 16 (2000) 2311–2320.

    [14] M. Thommes, R. Skudas, K.K. Unger, D. Lubda, Textural characterization of native and

    n-alky-bonded silica monoliths by mercury intrusion/extrusion, inverse size exclusion

    chromatography and nitrogen adsorption, J. Chromatogr. A (2008) 57–66.

    [15] A. Aleghafour, M. Mohsen-Nia, A. Mohajeri, M. Mahdyarfar, M. Asghari, Micro- pore

    size analysis of activated carbons using nitrogen, carbon dioxide and methane adsorption

    isotherms: experimental and theoretical studies, Adsorp- tion Sci. Technol. 30 (2012) 307–

    316.

    [16] N.G. Stanley-Wood, N. Osborne, M. Till, The comparison of porosity measure- ments

    using different instruments and techniques, R. Soc. Chem. 102 (1992) 48–57.

    [17] R. Sánchez, C. Hernández, Physico-chemical characterization of furfuraldehyde resins as

    adsorbents, Eur. Polym. J. 30 (1994) 51–54.

    [18] S.P. Rigby, R.S. Fletcher, S.N. Riley, Characterization of porous solids using inte- grated

    nitrogen sorption and mercury porosimetry, Chem. Eng. Sci. 59 (2004) 41–51.

    [19] K.L. Stefanopoulos, T.A. Steriotis, A.C. Mitropoulos, N.K. Kanellopou- los, W. Treimer,

    Characterization of porous materials by combining mercury porosimetry and scattering

    techniques, Phys. B 350 (2004) E525–E527.

    [20] Organo Corporation Ion Exchange Resins. Those Techniques and Application, Organo

    Corporation, 1986.

    [21] Society for Chemical Engineers, Chemical Engineer’s Handbook, 3rd ed., Society for

    Chemical Engineers, Japan, 1968.

  • 第 3章

    34

    第 3章 合成樹脂吸着剤における

    フェノールの不可逆吸着を低減する改質法に関する検討

    3.1 緒言

    スチレン-ジビニルベンゼンの共重合体から成る合成樹脂吸着剤は医薬品や食品産

    業で広く利用されている。例えば,食品中の殺虫剤の除去[1–4],抗生物質[5–7]やポリフェ

    ノール,ポリペプチド,カロテノイド[8–12]などの抽出及び精製に利用されている。

    合成樹脂吸着剤のマクロ粒子は,多数のゲル状ミクロ粒子の集合体から構成され,巨大

    網目構造を示している。一般的に合成樹脂吸着剤のマクロ粒子が有する細孔は以下の 3

    つに分類することができる[13]。(1)マクロ孔(macro-pore):吸着剤内に存在するミクロ粒

    子間,(2)ミクロ孔(micro-pore):ポリマー鎖の網目によりミクロ粒子内部に存在する細

    孔,(3)ミクロゲル (gel-pore):溶媒により膨潤した場合のみ発現するミクロ粒子内部の

    ゲル状の部分。通常(2)と(3)は区別されず,ミクロ孔として扱われる。以上のように,

    様々な細孔を有する合成樹脂吸着剤は非常に多くのサイズの分子を吸着することがで

    きる。しかしながら,合成樹脂吸着剤には吸着した物質が一部しか脱着しない不可逆吸

    着という現象が起こることが知られている[14–17]。不可逆吸着はミクロ孔内の物質の移動

    が極端に遅いことに起因しており,工業的な分離回収プロセスの効率低下を招く要因と

    なり得る。例えば,固定層吸着操作においてはテーリングがしばしば観測される。その

    結果,主に固定層を用いた脱着操作において効率が低下する。Fig. 3.1 は可逆吸着と不

    可逆吸着の様子を模式的にグラフ化したものである。吸脱着操作を繰り返し行った吸着

    剤は,徐々に不可逆吸着が積み重なり,可逆吸着量(及び総吸着量)が減少していく。

    この現象は不可逆吸着容積(不可逆吸着を引き起こす細孔)が飽和するまで続く。

  • 第 3章

    35

    Fig. 3.1 The relationship between reversible and irreversible adsorption capacity.

    合成樹脂吸着剤の改質により,吸着量を増大させる試みは多数報告されている。例え

    ば,Sukhorukovらは吸着剤粒子を高分子電解質の層で何層にもコーティングを施した[18]。

    Wangらはアセトアミド基を吸着剤の骨格に導入し,その吸着挙動を評価した[19]。また,

    Chao らは金属イオンをポリスチレンタイプの樹脂吸着剤に埋め込み,抗生物質の吸着

    量を増大させ[20],Negreaらもまた,Fe(III)を吸着剤内に埋め込み As(V)の吸着量を増大

    させた[21]。このように総吸着量を増大させることで分離回収効率を増加させる試みは多

    数存在するが,不可逆吸着量を減少させることで分離回収効率を増加させる試みは報告

    されていない。

    そこで本研究ではスチレンモノマーを用いた安価で容易な改質手法により,合成樹脂吸

    着剤の不可逆吸着を減少させ,分離回収プロセスの効率増加を試みる。

    Reversible adsorption capacity, qe*Irreversible adsorption capacity, qi

    Virgin Resin Once used resin Twice used esin

    Tota

    l adso

    rpti

    on c

    apaci

    ty,

    qe0

    q *e 0

    qi0

    e1

    q *e 1

    qi1

    q q e2

    q *e 2

    qi2

    I I

    一(I ハ→

  • 第 3章

    36

    3.2 物質と操作

    本研究ではスチレンモノマーをミクロ孔内で重合させることで不可逆吸着量の低減

    を試みた。マクロ孔とミクロ孔それぞれの容積は四塩化炭素の蒸発法(CTVT)により測

    定を行い,不可逆吸着量は静的な吸脱着操作(ADT)により行った[22]。

    3.2.1 吸着剤

    吸着剤にはスチレン-ジビニルベンゼン共重合体から構成され,巨大網目構造を有す

    る合成樹脂吸着剤,FPX-66 (Dow Chemical Company, USA)を用いた。FPX-66はイソプロピルアルコール(IPA),メタノール,純水,0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液,純水の

    順に十分に洗浄し,吸着剤内部に残存するモノマーやオリゴマーを取り除いた。洗浄後

    の吸着剤は使用直前まで IPAに漬け,ガラス瓶で保存した。FPX-66の物性は下記のTable

    3.1に示す。

    Table 3.1 Characteristics of FPX-66.

    Particle size Surface area Pore volume Mean pore

    (mm) (m2/g) (cm3/g) diameter (Å)

    0.60–0.75a 700a 1.7a 240b

    910b 1.9b aProvided by Dow Chemical, USA. bProvided by Organo Corporation, Japan.

    3.2.2 試薬

    改質操作ではスチレンモノマー(純正化学)と IPA(純正化学),2-2’-アゾビスイソ

    ブチロニトリル(AIBN)(東京化成)をそれぞれ吸着質,溶液,重合開始剤に用いた。ス

    チレンモノマーは同量の 10wt%の水酸化ナトリウム水溶液,純水の順に洗浄し,重合禁

    止剤を取り除いてから使用した。細孔測定に用いた四塩化炭素は和光純薬工業から,不

    可逆吸着量の測定に用いたフェノールと水酸化ナトリウムは純正化学から購入したも

    のを使用した。スチレンモノマー以外のすべての試薬は特別な精製を行わずにそのまま使

    用した。

  • 第 3章

    37

    3.2.3 FPX-66の改質

    改質におけるスチレン濃度の影響:FPX-66 (1 g)と 5 mmol/Lの AIBNを含む IPAとス

    チレンを合計 20mL になるように,30mL の遮光瓶に加えた。サンプルは 20℃で 1 週

    間吸着させた。長期間の吸着によりスチレン分子はミクロ孔に十分に侵入しており,容

    易に脱着することはできない状況を作り出した。1週間後,吸着剤を取り出し,吸着剤

    に過剰付着した分子を脱離させるため,5mLの純水で洗浄を行った。その後吸着剤を 3

    日間 80℃のオーブン(DSR-111, Isuzu Manufacturing)で加熱し,重合を促進させた。得ら

    れた吸着剤は FPX-66-M1と表記する。

    複数回の重合による改質への影響:吸着と重合を複数回繰り返した場合の吸着剤への

    影響を検討は 33vol%のスチレン溶液を用いて行った。FPX-66(64g)と 5 mmol/Lの AIBN

    を含む IPA(200mL),そして 100mL のスチレンモノマーを 400mL のガラス瓶に入れ,

    遮光して 1週間吸着させた。その後同様に数百 mLの純水で洗浄,加熱重合という過程

    を 3回繰り返した。書く回数ごとに少量の吸着剤を取り出し,性能を評価した。この実

    験で得られた吸着剤は FPX-66-M2と表記する。

    3.2.4 可逆吸着量(RAA)と不可逆吸着量(IRAA)の測定

    IRAAは ADTにより測定を行った。吸着過程においては吸着剤(0.1g)とフェノール

    水溶液(0.1M,20mL)をガラス瓶に加え,20℃で 1週間吸着させた。溶液の濃度を測

    定した後,その後取り出した吸着剤表面に付着した過剰な吸着質を 1mLの純水で洗浄

    した後,吸引して乾燥させた。その吸着剤を三角フラスコに入れ,0.1M の水酸化ナト

    リウム水溶液 200mL 中に 2 時間漬け置いて脱着を行った。2 時間後の水溶液の濃度を

    測定し,下記の Eq. (3.1)–(3.3)により不可逆吸着量を決定した。なお,すべての測定は

    紫外可視吸光光度計(UV-1700,SHIMADZU)により測定した。

    qe =(c0 − ce )V

    m (3.1)

    qd =cdVm

    (3.2)

    qi = qe − qd (3.3)

    ここで,qe [mg/g]は吸着量,c0 [mg/L]は溶液の初濃度,ce [mg/L]は溶液の平衡時の濃度

    (=1週間後の濃度),V [L]は溶液量,m [g]は吸着剤の質量,qd [mg/g]は脱着量(=可

    逆吸着量),cd [mg/L]は脱離液濃度,qi [mg/g]は不可逆吸着量を表す。

  • 第 3章

    38

    3.2.5 マクロ・ミクロ孔容積の測定

    水銀圧入法や窒素吸着法はそれぞれマクロ孔及びミクロ孔を測定する際に最も一般

    的に用いられる手法である。しかしながら,ゲル状のミクロ粒子の集合体から成る合成

    樹脂吸着剤では,高圧や低温条件下では細孔が変形あるいは破損する恐れがあるため,

    上記の手法は不適切である。また,溶媒で膨潤させた状態でのみ現れるゲル状の細孔部

    分に関しても上記の手法では適切に測定が行えない恐れがある。そこで本研究では,第

    1部にて確立した合成樹脂吸着剤の細孔容積の測定法,四塩化炭素の蒸発法(CTVT)[22]

    を用いて細孔を評価した。

    まず 0.1g の吸着剤を 10mL の四塩化炭素が入ったガラスボトルに入れ,20℃で 1 週

    間吸着させた。1週間後に吸着剤を取り出し,無風の条件下で吸着剤の質量の変化を電

    子天秤で測定し,吸着剤の重量と時間の関係をグラフ化(Fig. 3.2)した。吸着した CCl4

    が吸着剤から脱離するとき,下記の 3つの蒸発過程を経る。(i)吸着剤表面からの蒸発,

    (ii)マクロ孔からの蒸発(マクロ孔容積),(iii)ミクロ孔からの蒸発(ミクロ孔容積)

    である。したがって,マクロ孔容積(VM)とミクロ孔容積(ゲル孔を含む)(Vm)は Eq.

    (3.4), (3.5)により,それぞれ計算した。

    Fig. 3.2 Vaporization process of CCl4 molecules on FPX-66 by the carbon tetrachloride

    vaporization technique.

    Wei

    ght o

    f CC

    l 4 in

    Adso

    rben

    ts [g

    ]

    0.00

    0.10

    0.20

    0.30

    0.40

    0.50

    0.60

    Time [min]0 50 100 150 200 250

    W1 W2

    0.080.03

    (i)

    (ii)(iii)

  • 第 3章

    39

    VM =ΔW1 − ΔW2d ×m

    (3.4)

    Vm =ΔW2d ×m

    (3.5)

    ここで∆W1 と∆W2 [g]はそれぞれの過程における直線の交点から計算した吸着剤内部に

    存在する CCl4分子の質量,d [1.594 g/cm3]は CCl4の密度,mは吸着剤の質量を表す。

  • 第 3章

    40

    3.3 結果と考察

    3.3.1 スチレン濃度と吸着剤の細孔容積・不可逆吸着量の関係

    フェノールを用いた IRAAとミクロ孔容積に対するスチレン濃度の影響を Fig. 3.3に

    示す。FPX-66 における IRAA とミクロ孔容積は樹脂内部でのスチレン重合の影響を等

    しく受けていることが明らかとなった。この結果は 2つの重要な事実を示している。(1)

    IRAAはミクロ孔容積と関係がある,(2)ミクロ孔容積の変化の傾向は CTVTにより容

    易に評価することができる。したがって,IRAAを減少させるためにはミクロ孔容積の

    減少が重要であり,その傾向は CTVTにより評価可能である。Fig. 3.3によると,スチ

    レンポリマー鎖は樹脂吸着剤のミクロ孔を塞ぎ,30–40vol%のスチレン溶液を用いると

    最も効果があり,半減することが示唆された。

    Fig. 3.3 Effect of styrene concentration on the irreversible adsorption and micropore volume

    (FPX-66-M1)

    また,可逆吸着量(RAA)とマクロ孔容積に対するスチレン濃度の影響を Fig. 3.4に

    示す。グラフから,RAA はマクロ孔の影響を受けていることが明らかとなった。マク

    ロ孔容積は,スチレン濃度が低い部分(0-40vol%)ではほぼ一定であるが,スチレン

    濃度が高い部分(50-85vol%)では減少傾向にある。

    Irrev

    ersi

    ble

    Amou

    nt A

    dsor

    bed

    [mg/

    g]

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    Mic

    ropo

    re V

    olum

    e [c

    m3 /g

    ]

    0.1

    0.12

    0.14

    0.16

    0.18

    0.2

    0.22

    0.24

    Styrene Concentration [vol%]0 10 20 30 40 50 60 70 80

    Irreversible Amount AdsorbedMicropore Volume

    △ △ ° ゜゜

    ゜ ゜△ ゜゜゜゜△

    △ 尺△△

  • 第 3章

    41

    Fig. 3.4 Effect of styrene concentration on the reversible amount adsorbed and macropore

    volume (FPX-66-M1).

    二つの細孔容積,マクロ孔容積とミクロ孔容積,は Fig3.5にて比較を行った。グレー

    とダークの部分はそれぞれ改質前の FPX-66におけるマクロ孔とミクロ孔を表している。

    Fig. 3.5 Dependency of styrene concentration on macro- and micropore volumes (FPX-66-M1).

    Rev

    ersi

    ble

    Amou

    nt A

    dsor

    bed

    [mg/

    g]

    230

    240

    250

    260

    270

    280

    290

    Mac

    ropo

    re V

    olum

    e [c

    m3 /g

    ]

    0.2

    0.3

    0.4

    0.5

    0.6

    Styrene Concentration [vol%]0 10 20 30 40 50 60 70 80

    Reversible Amount AdsorbedMacropore Volume

    Pore

    vol

    ume

    [cm

    3 /g]

    0.1

    0.2

    0.3

    0.4

    0.5

    0.6

    Styrene Concentration [vol%]

    0 10 20 30 40 50 60 70 80

    Macropore, V M

    Micropore, V m

    FPX-66 FPX-66-M1

    △0 △ ゜△ △ △ 0 0 △ ゜

    0゚ 0 △

    o△ △

    ゜△ ゜

    △ 0 0

    △ △ △

    △ △

    △ △

  • 第 3章

    42

    スチレン低濃度域(0-40vol%)では FPX-66-M1のミクロ孔容積は FPX-66に比べて小

    さいが,マクロ孔容積は変化していない。この現象はスチレンのポリマーがミクロ孔内

    だけで形成されたという可能性を示唆している。その結果,スチレン濃度の増加に伴っ

    てミクロ孔容積が減少したと推察される。一方,スチレン高濃度域(50-85vol%)では,

    過剰なスチレンがマクロ・ミクロ孔(ゲル孔を含む)共に残存している。いくつかのス

    チレンが吸着剤の表面で重合した結果,マクロ孔容積はわずかに減少したと推察される。

    スチレン分子は一般的に直線的に重合する[26]が少量のモノマーは枝分かれ構造を生じ

    ることもある[27, 28]。さらに,ミクロ孔のような狭い空間ではスチレン分子の動きに制限

    が生じることもある[29]。したがって,スチレンは分岐やもつれ等によって新たな網目を

    形成した可能性がある。この網目に吸着質が捕捉されたため,ミクロ孔容積とスチレン

    濃度の関係は 2次関数的な様子を示したと推察される。

    3.3.2 改質回数と吸着剤の細孔容積・不可逆吸着量の関係

    33vol%のスチレンを用いて改質を繰り返したことによる細孔容積の変化は Fig. 3.6 に

    示す。グレーとダークの部分はそれぞれ改質前の FPX-66におけるマクロ孔とミクロ孔

    を表している。

    Fig. 3.6 Dependency of number of modifications on macro- and micropore volume

    (FPX-66-M2).

    Pore

    vol

    ume

    [cm

    3 /g]

    0

    0.1

    0.2

    0.3

    0.4

    0.5

    0.6

    0.7

    Number of modifications [-]0 1 2 3

    (Virgin FPX-66)

    Macropore, V M

    Micropore, V m

    FPX-66 FPX-66-M2

    T.△上

    T人了

    T_△|土

  • 第 3章

    43

    2種類の細孔容積,マクロ孔容積とミクロ孔容積,は重合回数が増えるに従って,共に

    減少している。例えば,3回改質を行ったミクロ孔容積は未改質のものに比べて約 50%

    減少している。しかしながらマクロ孔容積も同時に著しく減少している。大部分のスチ

    レンが 1回目の改質ではミクロ孔で重合した。しかし,2回目以降の改質ではスチレン

    分子はミクロ粒子内部だけでなく,表面でも重合を行い,絡まりあったポリマー鎖が増

    大したと推察される。この工程によりマクロ孔及びミクロ孔容積が現象したと推察され

    る。

  • 第 3章

    44

    3.3.3 改質条件の最適化

    ここで再び本研究の目的を確認する。本研究では回収効率を増加させるために,RAA

    を減少させることなく IRAA を低減させることを目的としている。2 種類の改質樹脂,

    FPX-66-M1と FPX-66-M2,は Fig. 3.7で比較している。

    Fig. 3.7 Correlations between irreversible amount adsorbed and RAA for FPX-66-M1 and

    FPX-66-M2.

    30-40vol%のスチレンを用いた FPX-66-M1は RAAの著しい減少を引き起こさずに,

    IRAAを半減させている。一方,FPX-66-M2は 3回の改質の後同じく IRAAを半減する

    ことに成功しているが,RAAの著しい減少が確認された。これは前述の通り,複数回

    の重合によりスチレンポリマー鎖が絡まったためである。したがって,30-40vol%のス

    チレン溶液をミクロ粒子内部で重合させることが,もっとも効果的な改質条件であると

    結論づけられた。

    1

    2

    3

    510 152025

    30

    3540

    50 5560

    7075

    80 85

    Rev

    ersi

    ble

    Amou

    nt A

    dsor

    bed

    [mg/

    g]

    150

    200

    250

    300

    Irreversible Amount Adsorbed [mg/g]

    20 30 40 50 60 70

    Virgin FPX-66FPX-66-M1 (X: styrene concentration [vol%])FPX-66-M2 (Y: number of modification)

    performance improvement(decrease irreversible adsorption)

    perfo

    rman

    ce d

    ecre

    men

    t(d

    ecre

    ase

    reve

    rsib

    le a

    dsor

    ptio

    n)

    performance decrement(increase irreversible adsorption)

    XY

    喝――------------oQJも▲――-----------------------―一9ocP o ,o

    ロ a) i 0

  • 第 3章

    45

    3.4 結言

    本研究では合成樹脂吸着剤を用いた分離回収の効率を増加させるため,スチレン溶液

    をミクロ粒子内部で重合させる改質方法に関して 2つの検討を行った。異なるスチレン

    濃度の溶液を用いた改質方法と特定の濃度で複数回の重合させる方法である。実験の結

    果,スチレンのポリマー鎖はミクロ孔を塞ぎ,ミクロ粒子内部への吸着を妨げることが

    明らかとなった。しかしながら,高濃度のスチレンは RAAまでも減少させてしまうた

    め,効果的ではないということが示唆された。30-40vol%のスチレン溶液を用いて 1

    度だけ重合させた場合は,RAAの著しい減少がなく,IRAAが 50%減少した。しかし

    ながら,スチレン溶液を複数回重合させて同様に 50%減少させた場合は,RAAに著し

    い減少が観測された。したがって吸着剤の改質には適正な濃度のスチレン溶液を用いて,

    1度だけ重合させるのが最も効果的であることが示された。この改質方法は合成樹脂吸

    着剤を用いた回収プロセスにおいて,効率を増加させる有用な方法であると考えられる。

  • 第 3章

    46

    3.5 参考文献

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  • 第 3章

    47

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  • 第 3章

    48

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  • 第 4章

    49

    第 4章 合成樹脂吸着剤とフェノール類の系における

    最適な吸着速度パラメータ推算方法の検討

    4.1 緒言

    合成樹脂吸着剤は植物から有用成分の抽出[1–5]や除草剤の除去[6–9],抗生物質の生成[10–

    12],水処理[13–15]など様々な分野で用いられている。固定槽吸着装置の設計においては,

    吸着剤の内部を吸着室が拡散する速度,すなわち粒子内拡散係数は最も重要なパラメー

    タの一つである。活性炭を用いた系では,Shallow-bed 法[16–20]や完全混合槽(CMBR)

    法[21–23]が粒子内拡散係数の測定によく用いられる手法である。一般的に Shallow-bed法

    は非常に早い流速で吸着剤と溶液を接触させるため,境膜の影響を無視して解析を行う。

    すなわち境膜物質移動係数はパラメータとして考慮されないため,その値を決定するこ

    とはできない。そこで Sonetakaらは Shallow-bedを用いて粒子内拡散係数と境膜物質移

    動係数を同時に算出する新たな解析法を提案した[17–19]。彼らの提案した解析法は動的な

    パラメータである Biot数(Bi)を利用するもので,その解析法は活性炭を用いた CMBR

    法においても良い成果をあげている。

    対照的に,合成樹脂吸着剤は流体境膜の影響が大きく,CMBR の撹拌速度では境膜

    の影響を十分に除外することが難しい。一般的に活性炭を用いた系では粒子内拡散係数

    は 10-8 [cm2/s] 程度であるのに対して、合成樹脂吸着剤を用いた系は 10-6 [cm2/s] と 2桁

    ほど大きい値をとる。したがって、活性炭よりも合成樹脂吸着剤を用いた系では流体境

    膜の影響が現れやすい。前述の CMBR 法が合成樹脂吸着剤に適応できないのはこのた

    めである。そのため,合成樹脂吸着剤を用いた系では Shallow-bed 法による解析を行う

    ことが一般的である。しかしながら,流速の早い液体が合成樹脂吸着剤の境膜を十分に

    低減しているということは実験的に証明されていない。また,従来までの計算モデルで

    は境膜物質移動係数を無視しているが故に求めることができないという問題もある。

    本研究は Shallow-bed 法を用いた合成樹脂吸着剤における従来までの流体境膜の影響

    を除外して計算を行うという仮定の正当性について検討を行うとともに,境膜物質移動

    係数の推算を行うものである。そのために 2 種類の計算モデル(1)吸着は粒子内拡散

    によりコントロールされると(2)吸着は粒子内拡散と境膜物質移動の両方によりコン

    トロールされるを比較した。

  • 第 4章

    50

    4.2 物質と操作

    4.2.1 試薬

    吸着剤に用いた XAD-2000はメタノール,イソプロパノール,純水の順に洗浄を行い,

    内部に残存するモノマーやオリゴマーを取り除いた。洗浄した吸着剤は使用するまでガ

    ラス瓶で保管した。純水に 20wt%のイソプロパノールと所定の量の p-クロロフェノー

    ル(PCP)を加えた溶液を吸着質に用いた。XAD-2000 以外の全ての物質は特別な生成

    を行わずにそのまま使用した。Table 5.1に XAD-2000の物性を示す。

    Table 4.1 Characteristics of XAD-2000

    Average particle radius, rp [cm]a 0.0214

    Porosity [–]b 0.434

    Surface area [m2/g]b 620

    Average pore diameter [nm]b 4.5 aActual value bProvided by Organo Corporation, Japan

    4.2.2 平衡到達率曲線の測定

    粒子内拡散係数の測定には Shallow-bed 法を用いた。吸着剤をガラスカラムに充填し

    (直径 8mm,高さ 1cm),既知の濃度の 20wt%のアルコールを含む PCP 水溶液(100–

    300mg/L)を 4種類の温度(288.2, 298.2, 308.2, 318.2K)に保ち通液した。カラム内の線

    流速は 0.14m/sに設定した。事前に予定した間隔でカラム内の溶液を取り除き,少量の

    水で吸着剤及びカラムを洗浄し,0.1M の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した。吸着質

    がミクロ粒子内部へ侵入している可能性があるため,この時脱着した量を吸着量と定義

    した。以上の手順は過去の報告に習った[24, 25]。

  • 第 4章

    51

    4.2.3 基礎式

    Shallow-bed 法は僅かなベッド長と非常に早い流速が特徴である。そのため,溶液の

    固液界面での濃度はバルクの溶液と同様であるとみなされる。実験的に得られた平衡到

    達曲線(EAUC)と理論曲線(TUC)のカーブフィッティングにより粒子内拡散係数を

    求める手法は活性炭を用いた系ではすでに報告されている[17–19]。

    一般的に合成樹脂吸着剤の粒子内の拡散は細孔拡散が支配的であると考えられている

    [20, 25]。したがって,本研究では基礎式は下記の仮定に基づき立式される。(a)温度が一定

    である,(b)流速が一定で�