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量子科学技術による 量子科学技術: 量研(QST)の取り組み ~調和ある多様性の創造を目指して~ 量子科学技術委員会 国立研究開発法人 子科学技術究開発機構 National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology 理事長 平野俊夫 国立研究開発法人 子科学技術究開発機構 National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology 理事長 平野俊夫 1 資料3 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 量子科学技術委員会(第11回) 平成29年4月28日

量子科学技術:...2017/06/06  · 4)QST放射線医学総合研究所病院を「臨床量子医学・医療研究開発病院」として位置付け、量子線がん治療、被ばく医療、そ

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

量子科学技術:量研(QST)の取り組み~調和ある多様性の創造を目指して~

量子科学技術委員会

国立研究開発法人

量子科学技術研究開発機構National Institutes for

Quantum and Radiological Science and Technology

理事長 平野俊夫

国立研究開発法人

量子科学技術研究開発機構National Institutes for

Quantum and Radiological Science and Technology

理事長 平野俊夫

1

2017年4月28日

資料3科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会

量子科学技術委員会(第11回)平成29年4月28日

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

・QSTの成り立ち

・QST未来戦略

・イノベーション創出への取り組み例

・量子メス ~健康長寿社会に向けて~

・量子生命科学の開拓 ~さらなる未来へ~

目 次

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

放射線医学総合研究所

放射線の医学利用研究

放射線影響・被ばく医療研究

核融合研究

量子科学技術に関する業務の追加と名称変更

日本原子力研究開発機構

量子ビーム研究 平成27年7月1日「国立研究開発法人放射線医学総合研究所法の

一部を改正する法律(平成27年法律第51号)」

成立

国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(量研)National Institutes for Quantum

and Radiological Science and Technology (QST)

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

放射線医学総合研究所

放射線の医学利用研究

放射線影響・被ばく医療研究

核融合研究

量子科学技術に関する業務の追加と名称変更

日本原子力研究開発機構

量子ビーム研究 平成27年7月1日「国立研究開発法人放射線医学総合研究所法の

一部を改正する法律(平成27年法律第51号)」

成立

国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(量研)National Institutes for Quantum

and Radiological Science and Technology (QST)

量子科学技術研究開発機構

量研National Institutes for

Quantum and Radiological Science and Technology

QST2016年4月1日発足

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

○六ヶ所核融合研究所

○高崎量子応用研究所

○本部

○放射線医学総合研究所

高崎那珂

六ヶ所

千葉木津播磨

モノを見る、創る、治す、ための

高性能加速器や放射線源など多様な道具を保有。

また理研や原子力機構が運転するSPring-8、

SACLA、J-PARCも利用。

材料科学 医学・生命科学○那珂核融合研究所

○関西光科学研究所

エネルギー

量研(QST)

核融合研究部門

量子ビーム研究部門

(放射線医学研究開発部門)茨城県東海村、福島県福島市&いわき市、東京、

及びフランスにも拠点等を持つ

フランス

ITER核融合実験炉、建設中

国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(量研)National Institutes for Quantum

and Radiological Science and Technology (QST)

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

生活

トンネルの欠陥をレーザーで安全に素早く発見する技術開発

放射線グラフト重合を利用したセシウム吸着給水器の開発

新産業創成イノベーション

認知症、うつ病の診断技術や治療薬の開発

重粒子線によるガン治療

標的アイソトープ療法によるガン治療

日欧米露中韓印の7極で建設を進める核融合実験炉ITER

日欧で建設を進めるJT-60SA

いのち

エネルギー

超伝導コイル試験装置

人類究極のエネルギー

生理食塩水 211At-MABG

先端的放射線医療・診断

量研(QST)の役割

量子生命科学量子医学・医療

量子材料・物質科学

量子エネルギー理工学

6

次世代燃料電池用高性能電解膜、水素貯蔵材料、スピントロニクス用デバイス等の開発

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

7

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

1)放射線・量子ビームと物質や生命との相互作用における物理過程(エネルギー)、化学過程(生活)、生物過程(命)に関する理解や研究開発において世界トップクラスに位置していることと、量子ビーム関連研究施設・ネットワークや臨床研究病院を有しているというQSTの強みをさらに強化しつつ、拠点や研究分野の壁を乗り越えて、研究開発における「調和ある多様性の創造」をQST内に実現する。「量子エネルギー理工学」、「量子材料・物質科学」、「量子生命科学」、「量子医学・医療」等の分野で世界を先導し、世界トップクラスの量子科学技術研究開発プラットフォーム構築を志す。

2)量子科学技術分野の研究シーズを探索し萌芽的研究として育てる。さらにQST未来ラボを設置し拠点や分野横断的な融合領域、例えば量子生命科学等の新たな研究分野の地平を切り拓き、世界に冠たる“QST”として先導的な役割を果たしていく。

3)得られた成果を広く社会に還元するために、大学や産業界を含む研究機関や行政機関との人材交流や共同研究など、産学官連携活動を積極的に推進しイノベーションハブとしての役割を担い、共創を誘発する場を形成する。

4)QST放射線医学総合研究所病院を「臨床量子医学・医療研究開発病院」として位置付け、量子線がん治療、被ばく医療、そして将来的には、標的アイソトープ治療や精神・神経疾患の診断・治療、ビッグデータや人工知能技術を利用した治療成績予測、さらには革新的な研究成果の臨床応用を推進する。

5)法律に基づく国の指定公共機関等として、これらの調査研究・事業を着実に進めるとともに、人材の枯渇が懸念されているこの分野において人材育成・研修を強化する。

6)量子科学技術による世界中の人々との協同を介して新たな知の創造を築く。また、ITER機構、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)やIAEA(国際原子力機関)などの国際機関、海外大学や研究機関との連携を推進する。これらの活動を介して異文化理解・尊重を育み「調和ある多様性の創造」を推進し、世界のイノベーションを先導するとともに、我が国はもちろん平和で心豊かな人類社会の発展に貢献する。

7)「基礎研究、応用研究、開発研究、社会への還元あるいはそれらのスパイラルな発展、そして基礎研究への再投資」の未来を見据えたポジティブサイクルを確立することにより人材育成・確保や財源確保を図るとともに持続的な発展基盤を築く。そのための財務戦略や知財戦略を策定する。

8)構成員全員が溌剌としてQSTの理念と志を遂行し、個々の構成員の努力が反映されるような評価制度や柔軟な人事制度を確立する。

9)QSTの理念・志・活動や成果が広く社会に認知され、その理解が深まるように社会への情報発信を強化する。また構成員全員がQSTの理念・志・運営方針を共有できるようにQST内への情報発信や闊達な議論を推進する。

10)安全管理やリスク管理なくしてはQSTの理念と志を実現することは不可能である。遵法意識と高いレベルの倫理観、安全重視や地球環境保全に最大限の配慮を行う。

QST未来戦略 10箇条

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

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1)放射線・量子ビームと物質や生命との相互作用における物理過程(エネルギー)、化学過程(生活)、生物過程(命)に関する理解や研究開発において世界トップクラスに位置していることと、量子ビーム関連研究施設・ネットワークや臨床研究病院を有しているというQSTの強みをさらに強化しつつ、拠点や研究分野の壁を乗り越えて、研究開発における「調和ある多様性の創造」をQST内に実現する。「量子エネルギー理工学」、「量子材料・物質科学」、「量子生命科学」、「量子医学・医療」等の分野で世界を先導し、世界トップクラスの量子科学技術研究開発プラットフォーム構築を志す。

2)量子科学技術分野の研究シーズを探索し萌芽的研究として育てる。さらにQST未来ラボを設置し拠点や分野横断的な融合領域、例えば量子生命科学等の新たな研究分野の地平を切り拓き、世界に冠たる“QST”として先導的な役割を果たしていく。

3)得られた成果を広く社会に還元するために、大学や産業界を含む研究機関や行政機関との人材交流や共同研究など、産学官連携活動を積極的に推進しイノベーションハブとしての役割を担い、共創を誘発する場を形成する。

4)QST放射線医学総合研究所病院を「臨床量子医学・医療研究開発病院」として位置付け、量子線がん治療、被ばく医療、そして将来的には、標的アイソトープ治療や精神・神経疾患の診断・治療、ビッグデータや人工知能技術を利用した治療成績予測、さらには革新的な研究成果の臨床応用を推進する。

5)法律に基づく国の指定公共機関等として、これらの調査研究・事業を着実に進めるとともに、人材の枯渇が懸念されているこの分野において人材育成・研修を強化する。

6)量子科学技術による世界中の人々との協同を介して新たな知の創造を築く。また、ITER機構、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)やIAEA(国際原子力機関)などの国際機関、海外大学や研究機関との連携を推進する。これらの活動を介して異文化理解・尊重を育み「調和ある多様性の創造」を推進し、世界のイノベーションを先導するとともに、我が国はもちろん平和で心豊かな人類社会の発展に貢献する。

7)「基礎研究、応用研究、開発研究、社会への還元あるいはそれらのスパイラルな発展、そして基礎研究への再投資」の未来を見据えたポジティブサイクルを確立することにより人材育成・確保や財源確保を図るとともに持続的な発展基盤を築く。そのための財務戦略や知財戦略を策定する。

8)構成員全員が溌剌としてQSTの理念と志を遂行し、個々の構成員の努力が反映されるような評価制度や柔軟な人事制度を確立する。

9)QSTの理念・志・活動や成果が広く社会に認知され、その理解が深まるように社会への情報発信を強化する。また構成員全員がQSTの理念・志・運営方針を共有できるようにQST内への情報発信や闊達な議論を推進する。

10)安全管理やリスク管理なくしてはQSTの理念と志を実現することは不可能である。遵法意識と高いレベルの倫理観、安全重視や地球環境保全に最大限の配慮を行う。

量子科学技術による「調和ある多様性の創造」により、

平和で心豊かな人類社会の発展に貢献する。

QSTの強みをさらに強化しつつ、拠点や研究分野の壁を乗り越えて、研

究開発における「調和ある多様性の創造」をQST内に実現する。

「量子エネルギー理工学」、「量子材料・物質科学」、「量子生命科学」、

「量子医学・医療」、そして安全・安心を支える「放射線影響研究」

等の分野で世界を先導し、

世界トップクラスの量子科学技術研究開発プラットフォーム構築を志す。

QST未来戦略 10箇条

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

~量子科学技術による「調和ある多様性の創造」~

超スマート社会の実現量子エネルギー理工学量子材料・物質科学

量子生命科学量子医学・医療

量子科学技術研究開発プラットフォーム構築

未来を拓くエネルギー・生活・命

に関する研究開発を推進

QST未来ラボ戦略的理事長ファンドイノベーションハブ

産業界

大学

公的研究機関

国際機関

QSTベンチャー

連携大学院

クロスアポイントメント

ガンマ線照射施設 重イオン加速器HIMAC

RI製造用サイクロトロン

マイクロビーム施設

イオン照射施設TIARA

電子加速器施設

高強度レーザー施設J-KAREN

放射光ビームラインSPring-8

J-PARC 研究炉(JAEA)

新治療研究棟 放医研病院

QSTの強み

QST未来戦略2016

Society 5.0

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

量 研

萌芽的研究 創成的研究

戦略的理事長ファンド(ボトムアップによる研究課題提案)

QST未来ラボ(分野横断的な未来志向・挑戦型バーチャル組織)

QSTイノベーション・ハブ(強みを活かし、ハブ機能を強化した産学連携)

産業界 大学等

競争領域と協調領域

我が国におけるイノベーションの創出

インキュベーション

マッチングファンド

新たな強みの創出

世界トップクラスのプラットフォームの形成

イノベーション創出への取り組み

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量子科学技術による調和ある多様性の創造イノベーション創出への取り組み

量 研

萌芽的研究 創成的研究

戦略的理事長ファンド(ボトムアップによる研究課題提案)

QST未来ラボ(分野横断的な未来志向・挑戦型バーチャル組織)

QSTイノベーション・ハブ(強みを活かし、ハブ機能を強化した産学連携)

産業界 大学等

競争領域と協調領域

我が国におけるイノベーションの創出

インキュベーション

マッチングファンド

新たな強みの創出

世界トップクラスのプラットフォームの形成

量子生命科学QST内外の研究者をバーチャルに結集し我が国の量子生命科学の先導役を果たす

量子材料・物質科学先端微細加工プラットフォームの形成や量子機能材料やスピントロニクスの創生

大学との包括協定大阪大学千葉大学東北大学群馬大学福島県立医科大学

産業界との連携量子ビームを利用した革新的機能材料の研究開発認知症やうつ病などの創薬研究開発次世代重粒子線がん治療装置(量子メス)研究開発

萌芽的研究 20件創成的研究 7件

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

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標的アイソトープ療法

限局がんの局所制御

全身に広がる転移がんの治療

転移

薬剤投与

○アルファ線放出核種を利用した体内からの放射線治療の確立

量子メス(次世代重粒子線装置)○量子線を利用した体外からの放射線治療

○レーザー駆動加速器の開発

重粒子線

量子線回転ガントリー

10 m

量子イメージングによる診断・治療

正常高齢者 認知症(アルツハイマー病患者)

○認知症・うつ病等の早期診断や治療法の確立

PETとMRIのイメージング画像を統合

小型化PET装置

MRI

認知症原因タンパク質の画像化

量子医学・医療の研究開発を推進し、健康長寿社会に貢献

放射線防護・放射線被曝 医学・医療

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量子医学・医療

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量子科学技術による調和ある多様性の創造量子線の医学・医療への応用

重粒子線がん治療:炭素原子核の医学利用

1946年(昭和21年) 米国の物理学者 R.R.ウィルソンによって提唱

1975年(昭和50年) 物理学研究用装置で臨床研究の開始(ローレンス・バークレー研究所)

1984年(昭和59年) 国の「第1次対がん10ヵ年総合戦略」の一環として、重粒子線がん治療装置HIMACの建設計画スタート

1993年(平成6年) HIMAC完成

1994年(平成7年) 重粒子線がん治療の臨床研究開始

2016年(平成28年) 放射線医学照合研究所は重粒子線治療のトップランナーとして、これまでに10,000人を超える患者を治療

日本の重粒子線治療施設○放射線医学総合研究所○群馬大学重粒子線医学研究センター○神奈川県立がんセンター○兵庫県粒子線医療センター○九州国際重粒子線がん治療センター

HIMAC(放射線医学総合研究所) 重粒子線照射施設(群馬大学)14

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

疾患別登録患者数(1994年6月~2016年7月)

放医研における重粒子線がん治療の実績

※S:スキャニング

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量子科学技術による調和ある多様性の創造重粒子線がん治療の特徴

物理的に

進行方向の線量分布が良い

(Bragg ピーク)

横方向の線量分布が良い

(散乱が少ない)

生物的に

X線、陽子線と比較して生物学的効果が大きい

低酸素、がん幹細胞など放射線に強い腫瘍にも有効16

重粒子線がん治療は、腫瘍への効果が高く、

正常組織の被ばく量の小さい放射線治療法

進行方向の線量分布

がん病巣に線量を集中できる

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

1回照射による治療効果治療前CT、PET 治療後CT、PET

線量 50GyE 治療例(109例):3年生存率94%、3年局所制御率95%

縦隔リンパ節転移の頻度が減少:10-15% → 5%以下

I 期肺がんに対する重粒子線1回照射治療

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量子科学技術による調和ある多様性の創造がん死ゼロ健康長寿社会実現のための条件

原発腫瘍塊制御

転移巣制御

免疫機能温存

免疫機能活性

QOL維持

→ 働きながらの治療が可能

経済性

→ 普遍的な治療方法(がん感受性)

がん死ゼロ 健康長寿社会

がん死ゼロの健康長寿社会

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

次世代重粒子線治療(量子メス)

分子標的治療

• 標的アイソトープ治療治療抵抗性の多発転移巣にも高い治療効果を期待

• 免疫制御治療併用ブレーキの抑制(免疫チエックポイント療法)やアクセル増強等によりがん免疫を賦活化する

• 分子標的治療微小転移がんをピンポイントに治療

がん死ゼロを目指す

・副作用が少ない

・高いQOL維持

・がんの種類を選ばない

・免疫機能温存

QSTが目指す「がん死ゼロ」健康長寿社会

α線

標的アイソトープ治療

賦活化効果免疫系

ブレーキ阻止or アクセル増強

転移巣

固形がん(原発腫瘍塊)

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

1994年放医研120x65m,320億円

2010年群馬大学60x45m、140億円(1/3)

装置が巨大で高額 (専用建屋建設、運用費)

→費用と大きさを約1/3に出来たが まだまだ高い!

現時点では腫瘍塊の完全除去は完璧ではない

→さらなる高性能化が必要

第1世代 第2・3世代

次世代重粒子線がん治療装置(量子メス)開発プロジェクト

20

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

1994年放医研120x65m,320億円

2010年群馬大学60x45m、140億円(1/3)

装置が巨大で高額 (専用建屋建設、運用費)

→費用と大きさを約1/3に出来たが まだまだ高い!

現時点では腫瘍塊の完全除去は完璧ではない

→さらなる高性能化が必要

第4世代装置より小型化45x34m (1/6程度)

第5世代量子メス

さらなる小型化10x20m (1/40程度)&高性能化

第1世代 第2・3世代

次世代重粒子線がん治療装置(量子メス)開発プロジェクト

21

小型化(既存の病院建屋に設置可能)

高性能化(全てのがんで1回照射が可能)

量子メス

小型化(既存の病院建屋に設置可能)

高性能化(全てのがんで1回照射が可能)

量子メス量子メス 健康長寿社会への貢献

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

マイクロ波による従来技術による加速の限界

高周波電場による加速勾配:107 V/m

QSTのJ-KAREN-Pは

1 PW/0.1 Hzに高度化

超高出力レーザー光の開発

核融合における超伝導コイル技術の導入

ITER(国際熱核融合実験炉) TF(トロイダル磁場)コイル

超伝導素線によるTFコイル導体

超伝導技術・レーザー加速による小型化

レーザー電場による加速勾配:1012 V/m

プラズマ

実験では陽子線は43 MeV鉄イオン線は核子あたり16MeV

のイオンビームが発生

金属薄膜(1ミクロン程度)超高出力

レーザー光レーザー加速技術

開発

パワーレーザーによる新技術

超伝導

レーザー加速

超小型化の実現

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

マルチイオン(He, N, C, O 等)照射により、生物学的効果の制御が可能となり、

がん全体に強い照射が可能となる。

中心部の放射線抵抗性がんに対する治療効果の向上が期待される。

超短期治療(日帰り1回治療)の実現性が高まる。

右図では、がん領域(黄色線)内の生物学的効果が一様に高い

炭素イオン

のみ

マルチイオン照射

マルチイオン

がんに対して与えられた生物学的効果の強度分布

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

量子メス

分子標的治療

• 標的アイソトープ治療治療抵抗性の多発転移巣にも高い治療効果を期待

• 免疫制御治療併用ブレーキの抑制(免疫チエックポイント療法)やアクセル増強等によりがん免疫を賦活化する

• 分子標的治療微小転移がんをピンポイントに治療

がん死ゼロを目指す

α線

標的アイソトープ治療

固形がん

賦活化効果免疫系

ブレーキ阻止Or アクセル増強

転移巣

量子メスによる1回照射治療が可能となる

ー> 働きながらの治療が可能

ー> 治療費抑制が可能

健康長寿社会への貢献

・副作用が少ない

・高いQOL維持

・がんの種類を選ばない

・免疫機能温存

QSTが目指す「がん死ゼロ」健康長寿社会

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

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「がん死ゼロ」健康長寿社会実現を目指して「量子メス」研究開発包括協定を4社と締結

帝国ホテルにて、2016年12月13日

三菱電機柵山社長

日立製作所中西会長

量研平野理事長

東芝綱川社長

住友重機械別川社長

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

新しい観察・計測技術が、いつも生命科学に革新をもたらしてきた。

16世紀末~ 17世紀 顕微鏡の発明、フックによる細胞の観察

生物の基本構造の発見

19世紀 ダーウィンの進化論、メンデルの遺伝実験、フレミングによる染色体の発見

遺伝学の誕生

20世紀 X線結晶構造解析→ ワトソンとクリックによるDNAらせん構造の発見

放射性同位体標識 → 生合成回路の解明、DNA配列の解読電子顕微鏡 → ウイルスの観察

21世紀の観察・計測技術:「量子技術」半導体、蛍光分子、NMR、レーザー、放射光、イオンビーム、中性子ビームなど

量子科学に基づいた多様な先端技術

量子技術×生命科学=量子生命科学量子技術×生命科学=量子生命科学

分子レベルから量子レベルへ

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生命科学は細胞レベルから分子・遺伝子レベルへ:分子生物学の誕生

生命科学の新たなフロンティア~量子医学・医療の更なる発展を目指して~

個体レベルから細胞レベルへ

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

1)渡り鳥はいかに方向を検知するか?

2)臭覚のメカニズムは?

3)酵素反応はなぜ効率よく生じるのか?

4)光合成はなぜ効率よく光エネルギーを化学

エネルギーに変換するか?

5)遺伝情報はなぜ正確に伝わるのか?

6)突然変異が生じるメカニズムは?

8)意識とはなにか?

9)生命とはなにか?

量子生命科学:分子レベルから量子レベルへ

量子力学で生命の謎を解く、ジム・アル=カリーリ、ジョンジョー・マクファデン水谷淳訳、SBクリェイティブ発行

「量子生命科学」とは何か?

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カバーデザイン 米谷テツヤ

Page 28: 量子科学技術:...2017/06/06  · 4)QST放射線医学総合研究所病院を「臨床量子医学・医療研究開発病院」として位置付け、量子線がん治療、被ばく医療、そ

量子科学技術による調和ある多様性の創造「量子生命科学」とは何か?

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1)古典的物理学(熱力学であれ、なんであれ)で、予測可能(無秩序から秩序)なのは、

あくまでも大量の分子の平均的な振る舞いである。ミクロなレベルではこの統計的

な法則は信頼できない。

2)古典物理学で予測される平均的な振る舞いからのズレは、大きさに関係する粒子

の個数の平方根に反比例する。すなわち1兆個の粒子で満たされている風船は気

体の法則が表す厳密な挙動から100万分の1しかずれないが、わずか百個の粒

子しか入っていない小さな風船は10分の1もずれる。

3)このような「無秩序から秩序へ」の原理が生命にも当てはまると仮定すると、遺伝の

正確さを説明できるだろうか? 仮に遺伝子の大きさを1辺が300オングストロー

ムの立方体と仮定すると、この中に存在できる原子の数は約100万個である。10

0万個の平方根は1000なので、ノイズは0.1%の大きさになる。現実はエラーの

率は10億分の1である。いくら修復過程があるとしても「無秩序から秩序へ」により

説明することは不可能。

量子力学で生命の謎を解くより引用(一部改変)

ジム・アル=カリーリ、ジョンジョー・マクファデン

水谷淳訳、SBクリェイティブ発行

量子生命科学:シュレーディンガーの予見

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

4)遺伝の高い忠実性は古典的な法則では説明できない。遺伝子はあまりにも小さい

ので、「無秩序から秩序へ」の法則では規則性は出てこない。遺伝は量子力学に支

配されており「非周期的な結晶」であるはずで、「秩序から秩序」という原理に基づく

はずだ。ーーーワトソンとクリックによるDNA2重らせん構造の発表より実に10年前

の1943年にこの考えをトリニティーカレッジ・ダブリンでの連続講義で披露、翌年

1944年に「生命とは何か」を発表。

「量子生命科学」とは何か?

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量子生命科学:シュレーディンガーの予見

5)生命体はマクロな系のように思えるが、その振る舞いの一部は温度が絶対零度に近

づいた分子の無秩序さが失われたときにあらゆる系が取りうるものに近い。なぜ、生

命は、普通は-273度(絶対零度)の低温でないと通用しないルール(量子力学)に高温

(室温)のようなデコヒーレンスが瞬時に起こる環境で量子状態を維持できるのか?

ーーー>これこそが生命の本態ではないか?

6)さらに、突然変異(非忠実性)は量子ジャンプで説明できるのでは?

量子力学で生命の謎を解くより引用(一部改変)

ジム・アル=カリーリ、ジョンジョー・マクファデン

水谷淳訳、SBクリェイティブ発行

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

単一光子源(SiCナノ結晶)

QSTにおける量子生命科学の取り組み

量子生命科学の拠点形成に向けた取り組みを開始

生物学・医学(放医研)と 量子技術(量子ビーム部門)の融合

●2016年6月30日―7月1日:両部門のグループリーダーによる研究交流会(高崎)

●2016年7月12日ー13日:QST内外の生物学、光源及び物性研究者による「量子生物学合宿勉強会」

(機構内外からの約60名の参加者、於SPring-8)

QST未来ラボ

生体内反応(DNA損傷修復プロセスなど)

を高い時空間分解能で可視化

CATGCATGA

TCATGCATG

重粒子線治療

動物実験、ゲノム解析

新しい量子的観測技術 先端的量子ビーム利用

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●第1回量子生命科学研究会:2017年4月12日@東京大学山上会館

●第1回QST国際シンポジウム:2017年7月25-26日@千葉幕張

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量子科学技術による調和ある多様性の創造第1回量子生命科学研究会

セッション1:量子技術研究者から生命科学者への「メニュー」の提示

セッション2:生命科学者の関心事と量子技術研究者への注文

セッション3:量子技術と生命科学の橋渡し:理論研究と先行的実験研究

パネルディスカッション:

量子生命科学の概念を共有し、今後の課題を抽出し、参加者に結集を呼び掛ける

量研が主催して、量子生命科学という新たな研究分野を立ち上げることを

目的として開催(2017年4月12日、全国から136名が参加)。

量子ライフサイエンス、量子センサー、量子イメージング等、量子生命科学

に関連する分野の最先端の研究者の発表とパネルディスカッションの実施。

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量子科学技術による調和ある多様性の創造第1回量子生命科学研究会

量研が主催して、量子生命科学という新たな研究分野を立ち上げることを

目的として開催(2017年4月12日、全国から136名が参加)。

量子ライフサイエンス、量子センサー、量子イメージング等、量子生命科学

に関連する分野の最先端の研究者の発表とパネルディスカッションの実施。

量子生命科学研究会 設立Japanese Society for Quantum Life Science

2017年4月12日設立

毎年1回量子生命科学研究会を開催第2回の研究会は来年4−6月に開催

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

”Quantum Life Science”- The pathbreaking life-scientists with quantum eyes and hands -

第1回QST国際シンポジウム

この分野の全体像

量子生物学のホットな話題

光シグナルとDNA損傷修復

生体分子における電荷移動と放射線損傷の誘導

放射線によるDNA損傷の物理過程とその生物学的意義

生物学のための量子イメージングのナノ・テクノロジー

細胞内部のナノ・環境とナノ・計測

セッション

Prof. Johnjoe McFadden, University of Surrey, UK“Advances in Quantum Biology” (仮)

基調講演:

「量子の眼と手」

招待講演者

海外:12名

国内:9名

33

プログラム委員長: Jim Al-Khalili and Akinari Yokoya

A New Era of Quantum Life Science is coming !Toshio Hirano, President of QST

2017年 7月25日~26日 千葉・幕張

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

”Quantum Life Science”- The pathbreaking life-scientists with quantum eyes and hands -

第1回QST国際シンポジウム

この分野の全体像

量子生物学のホットな話題

光シグナルとDNA損傷修復

生体分子における電荷移動と放射線損傷の誘導

放射線によるDNA損傷の物理過程とその生物学的意義

生物学のための量子イメージングのナノ・テクノロジー

細胞内部のナノ・環境とナノ・計測

セッション

Prof. Johnjoe McFadden, University of Surrey, UK“Advances in Quantum Biology” (仮)

基調講演:

「量子の眼と手」

招待講演者

海外:12名

国内:9名

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プログラム委員長: Jim Al-Khalili and Akinari Yokoya

A New Era of Quantum Life Science is coming !Toshio Hirano, President of QST

2017年 7月25日~26日 千葉・幕張

カバーデザイン 米谷テツヤ

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量子科学技術による調和ある多様性の創造

夢は叶えるためにある