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1 社)高知県薬剤師会 2012年8月26日 「薬剤師による在宅訪問」 ~役割の理解と依頼の方法~ 一般社団法人 大阪府薬剤師会 平成24年度「健康介護まちかど相談薬局」研修会

一般社団法人大阪府薬剤師会 平成24年度「健康介護まちかど ... · 2012-08-30 · 1 社)高知県薬剤師会 2012年8月26日 「薬剤師による在宅訪問」

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1

社)高知県薬剤師会

2012年8月26日

「薬剤師による在宅訪問」~役割の理解と依頼の方法~

一般社団法人 大阪府薬剤師会

平成24年度「健康介護まちかど相談薬局」研修会

目次Q1)在宅医療における薬剤師の役割は何ですか?

Q2)残薬の整理や服薬支援を薬剤師が行うときのポイントはあるのでしょうか?

Q3)薬によるADLやQOLへの影響をチェックするポイントはありますか?

Q4)すでに限度枠いっぱいです。薬剤師の訪問により「居宅療養管理指導」を使うと限度枠を超えてしまい10割負担になります・・・。

Q5)介護認定を受けていない方への訪問も可能なのですか?

Q6)医師が往診していない患者さんで、服用できていない方がいます。薬剤師は訪問できますか?

Q7)通院困難の基準がわかりません。

Q8)ケアマネジャーや看護師からの提案で薬剤師の訪問が行われたサービスの実例を教えて欲しい。

Q9)薬剤師の訪問はどう依頼すれば始められるのですか?

Q10)どこの薬局が訪問可能ですか?(麻薬、輸液、休日・時間外の対応可否、訪問区域も知りたい)

Q11)薬剤師の訪問業務の全体の流れが知りたい。

Q12)ケアプランへの記載は必要ですか?

Q13)他にどのような役割がありますか? 2

地域医療(在宅医療)は何のため?誰のため?

薬局の生き残り(儲け話)戦略のため

通院困難・服薬困難な患者さんのため

Q1)在宅医療における薬剤師の役割は何ですか?

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Step3 多職種&薬薬連携連携/情報交換/情報共有/チーム医療・介護

Step1薬処方監査、調剤、

服薬支援(十分な説明と管理の支援)※薬学的な知識が必要

Step2 患者

効果、副作用チェック体調チェック

医師、歯科医師、看護師、ケアマネジャー、ヘルパー、病院薬剤師らへ情報をフィードバック

地域医療において薬剤師に求められる3つの視点地域医療において薬剤師に求められる3つの視点

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薬剤師による在宅訪問

対象者

脳梗塞後遺症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、認知症、がんなど様々な疾患がもとで通院が困難となっている方、また通院に介助の手を要する方。

高齢者に限らず、小児も含め全年齢が対象となる。

訪問の効果

□服薬管理ができていなかった方が、きちんとできるようになる。

□薬への理解が十分でなかった方の理解度が深まり、治療への積極性が出る。

結果的として

病状が飛躍的に改善、安定することが多い。6

Q2)残薬の整理や服薬支援を薬剤師が行うときのポイントはあるのでしょうか?

A)はい、あります。

→次ページに解説

7

8

高知県 くろしお薬局提供

全然使っていなかったのに、医師は治らないからと言って出し続けていた。

全然使っていなかったのに、医師は治らないからと言って出し続けていた。

9

PL顆粒 41

アデホスコーワ 84

インタール点眼液 2

塩酸モルヒネ錠「マルピー」10mg 752キネダック錠 40

サンコバ点眼液 7

セレキノン錠 113

ツムラ① 50

ツムラ134 52.5

ツムラ41 70

ノボラピッド30ミックス注フレックスペン 11

ノボラピッド注フレックスペン 4

パタノール点眼液 1

パントシン錠 35

フェロミア錠 188

プルゼニド錠 112

フロモックス錠 26

ペンニードル32Gテーパー 1190

ボルタレンサポ25mg 390

ボルタレン錠 38

マグミット錠330mg 800

ムコスタ錠 79

メリスロン錠6mg 110

ラックビー微粒N 336

ブドウ糖 168g×9個

40g×13個

総額208,735円の残薬高知県あじさい薬局提供

9

使われていないインスリン

残インスリン、針、チップ合計薬価 約13万円(栃木 事例)

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栃木県 大澤調剤薬局提供

使用し始めていないのに、冷蔵庫に保管されていなかった大量のインスリン。すべていったん廃棄となった。

使用し始めていないのに、冷蔵庫に保管されていなかった大量のインスリン。すべていったん廃棄となった。

針や自己血糖測定チップも大量に残っている状態。

針や自己血糖測定チップも大量に残っている状態。

薬剤名 残数ノルバスク5mg錠 423錠サロベール100mg錠 71錠バイアスピリン100mg錠 71錠ハルシオン0.25mg錠 61錠

(合計)約3万円11

神奈川県 タカノ薬局提供

よくある自己調整。血圧コントロールは本人次第となっていた。

よくある自己調整。血圧コントロールは本人次第となっていた。

鹿児島 アクア薬局提供

12

一包化したもの、漢方薬が大量に残薬として存在

一包化したもの、漢方薬が大量に残薬として存在

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Kターミナル期、在宅患者さん初回訪問。

約56日分の残薬

24,224円 埼玉 メローライフ薬局提供

ニトロダームTTS 30枚

ラシックス20 8

ツムラ41 315g

レキップ0.25 27

リーゼ5 140

ノルバスク2.5 17

ナウゼリン10 42

メジコン 137

デカドロン 72

ビオスリー 42

アルダクトンA25 36

ガスモチン5 243

ムコスタ 122

胃の調子が悪い、と言いながら、ガスモチンとムコスタは、たまに頓服で飲む程度にしていた。

胃の調子が悪い、と言いながら、ガスモチンとムコスタは、たまに頓服で飲む程度にしていた。

飲まない(飲めない)理由 対応策

①残薬や併用薬が多くなりすぎ整理がつかなくなった為、飲めない。

残薬を重複や相互作用、併用禁忌などに留意しながら整理する。

②何の薬か理解していない為、飲まない。

薬効を理解できるまで説明。またその理解を助けるための服薬支援する。

③薬の副作用が怖い為、飲まない副作用について、恐怖心をとりつつ対応策を話し合い、納得して服薬できるようにする。

④特に体調が悪くない為、飲まない。(自己調整)

基本的な病識や薬識を再度説明し、服用意義を理解していただく。

⑤錠剤、カプセル、又は粉薬が飲めない。(剤形上の理由)

患者ごとの適切な服用形態の選択と医師への提案。粉砕、嚥下ゼリー、オブラート、簡易懸濁法などの導入提案。

服用状況悪化の理由をしっかり傾聴した後、対応策を薬学的に考える。

服薬支援 例

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医師の処方通りに薬を服用(使用)するための管理。

薬剤師でなくてもできることはある。

医師の処方通りに薬を服用(使用)するための管理。

薬剤師でなくてもできることはある。

薬の管理

服用したあとの

効果、副作用、

そしてADLやQOLへ薬が与える影響を

薬学的な知識に基づいて評価しつつ、服用状

況を管理する。

服用したあとの

効果、副作用、

そしてADLやQOLへ薬が与える影響を

薬学的な知識に基づいて評価しつつ、服用状

況を管理する。

薬学的な管理

膨大な薬の知識が必要。

ポイント:薬の管理だけでなくポイント:薬の管理だけでなく薬学的な管理薬学的な管理を意識するを意識する

Q3)薬によるADLやQOLへの影響をチェックするポイントはありますか?

A)はい、あります。

→次ページに解説

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薬の効果や有害反応のチェック手法

POINT1

•薬学的フィジカルアセスメント

•五感を使って、よく観察する•バイタルサインチェックもその一環

POINT2

•体調チェックの聞き取り

•食事/排泄/睡眠/運動/認知機能など

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医師の行っているフィジカルアセスメントの例医師の行っているフィジカルアセスメントの例

心臓・血管系のアセスメント

心音の聴取

呼吸器系のアセスメント

呼吸音の聴取

リンパ節の触診

腹部のアセスメント

腹部の聴診・打診・触診

眼のアセスメント

眼の対光反射

神経系のアセスメント

深部腱反射

小脳機能 など

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薬学的フィジカルアセスメントの第一歩

五感を用いた薬学的フィジカルアセスメント五感を用いた薬学的フィジカルアセスメント その1その1

チェックポイント アセスメント(すべてに、~などが付きます)

1・挨拶のときに

(視覚、聴覚、嗅覚)

返答:返答有無、誰かわかっているか、意識障害、せん妄、無気力

認知/認識能力低下、意識障害、錯乱、せん妄、精神障害の原因

目:白内障、眼震、目焦点、目やに、眼の粘膜疹

視力、目の状態、SJ症候群

耳:聴こえているか 聴力、耳の状態

顔:表情、笑顔有無、血色、肌荒れ、乾燥 抑うつ、栄養、乾燥状態

唇:チアノーゼ、乾燥、荒れ、口角炎 低栄養、ビタミン不足、口渇、間質性肺炎

口:口内乾燥、口臭、義歯の不具合、虫歯、歯肉炎、歯肉の浮腫、歯肉出血、口内炎、口腔粘膜疹

口腔清掃不足、歯肉肥厚抗がん剤などの影響、SJ症候群

体:身なり、体臭、尿臭、便臭、発汗、けいれん

認知能力低下、尿便失禁、発汗・けいれん:セロトニン症候群

呼吸:R音、呼吸困難、咳、空咳 肺炎、喘息、肺気腫、うっ血性心不全、間質性肺炎

POINT1

チェックポイント アセスメント(すべてに、~などが付きます)

2・握手したときに(触覚)

手指/皮膚:冷感、乾燥、発熱、関節拘縮、筋委縮、ふるえ、しびれ、けいれん

抹消循環不全、脱水、錐体外路症状(薬剤性パーキンソニズム)、悪性症候群、セロトニン症候群、偽アルドステロン症

爪:状態、色 爪白癬、血行/栄養状態

握力:有無、左右差、脱力感、筋力減退、 脳梗塞後遺症/再発、過度の筋弛緩、偽性アルドステロン症

3・歩行時の観察(視覚)

歩行:小股歩行、動作緩慢、しびれ、歩行障害

錐体外路症状(薬剤性パーキンソニズム)、横紋筋融解症、偽アルドステロン症、正常圧水頭症、小脳変性

ふらつき:転倒、運動障害 筋弛緩作用、起立性低血圧

4・食事時の観察

(視覚、味覚)

食事:介助状態、食事内容(普通食、流動食、ゼリー食など)

自立か介助が必要かと、その状態の程度の把握

嚥下状態:嚥下困難/むせこみの有無 加齢による機能低下、錐体外路症状(薬剤性パーキンソニズム)、喉頭筋委縮

食欲/味覚:有無、吐き気 胃炎、胃潰瘍、逆食、味覚異常、SJ症候群、ライエル症候群

ふるえ:茶碗、お箸、スプーン使用状況 本態性振戦、錐体外路症状(薬剤性パーキンソニズム)、悪性症候群、セロトニン症候群

五感を用いた薬学的フィジカルアセスメント五感を用いた薬学的フィジカルアセスメント そのその22POINT1

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食事食欲味覚嚥下状態口腔内清掃口渇吐き気胃痛など

排泄尿の回数、出具合

便の回数、出具合

汗(状態)など

睡眠睡眠の質時間

日中の傾眠不眠の種類など

運動ふらつき、転倒歩行状態めまい

振るえ、すくみ足手指の状態麻痺など

認知機能失認、失行言語障害(失語)

見当識障害、判断力低下、記憶障害など

日常生活・活動観察のチェックポイント

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POINT2

•体調チェックの聞き取り

•食事/排泄/睡眠/運動/認知機能など

じほう社発売開始。生活機能と薬からみる 体調チェック・フローチャート 解説と活用 第2版編集:日本薬剤師会 2100円

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食事食事 質問例

• 食欲はある?• 美味しく食べている?• 飲み込みづらいときやむせこむことはある?

など

食事に関する問題が有ると無いでは、患者の状態に大きな差が出ることは言うまでもない。食欲の有無、味覚や摂食嚥下機能の善し悪しは疾患や加齢に起因するものだけでなく、薬剤の副作用の場合もある。様々な角度からのチェックを怠らないようにしたい。

排泄排泄質問例

・尿の色は?

・トイレの回数は?(日中・夜間)

・便の状態

・発汗状態

など

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排泄領域では、尿、便、汗を対象にチェックしていく。便秘や下痢に関しては患者自らが状態の異常を述べてくれることが多いが、頻尿や尿失禁は自ら相談することを控える方は多い。プライバシーに配慮しつつ、こちらから聞き取ることを心がけたい。また、暑いときにまったく汗をかいていない方もいる。よく観察することが大切である。

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睡眠睡眠 質問例• よく眠れますか?• 熟睡できますか?• 日中眠いですか?• 睡眠薬の効果は?

など

不眠を訴える方は非常に多いが、その原因は多岐に渡り、また不眠症のタイプも様々である。症状に見合う睡眠薬の選択や服用に関する的確なアドバイスに対して薬剤師も責任を持ち、過剰な睡眠薬の使用に陥らないようにチェックしていくようにしたい。

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運動・日常生活動作質問例

• ふらついて転倒しそうになったことは?• 振るえは?• 歩きにくさはないか?• 力が入らないことはないか?• 動作がゆっくりになっていないか? など

運動といっても走る、跳ぶなど激しい運動ではなく、立ち座り、歩き、お箸を使うなど日常生活のごく基本的な動作を想像して欲しい。これら日常生活動作を低下させる疾患や薬剤の副作用を把握しておくことは非常に重要なことである。特に転倒につながる副作用はこまめにチェックしておくことが求められる。

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認知機能認知機能中核症状として

•失認、失行、言語障害(失語)、見当識障害、判断力低下、近時記憶障害など

周辺症状として

•易怒、攻撃性、徘徊、異食、抑うつ、意欲低下などその他

•薬剤性の記憶障害•薬剤の影響による周辺症状の悪化やコントロール不良•アルコール性認知症

Q4)すでに限度枠いっぱいです。薬剤師の訪問により「居宅療養管理指導」を使うと限度枠を超えてしまい10割負担になります・・・。

A)居宅療養管理指導費は、限度枠外サービスです。

限度枠を超えても、1割負担です。

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Q5)介護認定を受けていない方への訪問も可能なのですか?

例)40歳未満、小児など

A)はい、可能です。医療保険にも同様の制度があり、

すべての患者さんを対象としてます。

(次ページ参照)

30

31

訪問薬剤管理指導料は医療保険の呼び名居宅療養管理指導費は介護給付の呼び名介護予防居宅療養管理指導費は予防給付の呼び名この3つが存在しているが、実はやることは同じ。

請求先が「要介護認定の有無」で違ってくる。

要介護度の記載あり 要介護度記載なし

または介護保険被保険者ではない。

介護保険請求医療保険請求

「在宅患者訪問薬剤管理指導料」

予防給付

「介護予防居宅療養管理指導費」

介護給付

「居宅療養管理指導費」

要介護1~5要支援1~2

医療保険 ※16km規制有り(在宅患者訪問薬剤管理指導料)

介護保険 ※16km規制無し(居宅療養管理指導費、介護予防居宅療養管理)

保険薬局薬剤師

月4回(がん末期患者:週2回かつ月8回)

・ 同一建物居住者以外:500点

・ 同一建物居住者:350点

月4回(がん末期患者:週2回かつ月8回

・ 同一建物居住者以外:500単位

・ 同一建物居住者:350単位

病院・診療所

の薬剤師

月2回まで

・ 同一建物居住者以外:550点

・ 同一建物居住者:385点

月2回まで 1回当たり

・ 同一建物居住者以外:550単位

・ 同一建物居住者:385単位

麻薬管理指導加算

100点 100単位

注意事項

・ 算定する日の間隔は6日以上あけること。

・ がん末期、中心静脈栄養法の対象患者:1週に2回かつ1月に8回を限度

(病院・診療所の薬剤師の場合は、算定不可)

・ すでに保険薬局が在宅患者に訪問薬剤管理指導料を算定している場合、病院・診療所の

薬剤師にかかる点数または別の保険薬局における在宅患者訪問薬剤管理指導料は算定不可

・ 同一医療機関に医師が訪問した同日は、病院・診療所薬剤師の訪問にかかる点数は算定不可

H24年度~在宅医療に係わる報酬

項目 算定単位・上限 点数

在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料 月4回まで(16キロメートル以下) 500点

在宅患者緊急時共同指導料 月2回まで(16キロメートル以下) 700点

麻薬指導加算 ー 100点

退院時共同指導料 入院中1回(がん末期患者等の場合は入院中2回まで) 600点

33

A)できます。

前述した「点数」「単位数」を算定できるかどうかについては、

「通院困難であること」そして「医師の指示があること」が必須です。

薬剤師、訪問看護、そしてケアマネジャーからの紹介で始まるケースも増えています。(次ページ参照)

Q6)医師が往診していない患者さんで、服用できていない方がいます。薬剤師は訪問できますか?

医師・歯科医師からの指示

医師・歯科医師からの指示

薬剤師訪問訪問の意義・目的説明

薬剤師訪問訪問の意義・目的説明

薬局窓口で薬剤師が疑問視

薬局窓口で薬剤師が疑問視

退院時に薬局が決定される薬薬連携が重要となる

退院時に薬局が決定される薬薬連携が重要となる

訪問薬剤管理指導(居宅療養管理指導)開始訪問薬剤管理指導(居宅療養管理指導)開始

医師・歯科医師に情報提供⇒薬剤師の訪問の必要性報告⇒訪問指示を出してもらう

医師・歯科医師に情報提供⇒薬剤師の訪問の必要性報告⇒訪問指示を出してもらう

B:薬局提案型B:薬局提案型

ケアマネ、訪問看護など多くの医療・介護職、そして家族からの相談

ケアマネ、訪問看護など多くの医療・介護職、そして家族からの相談

A:医師の指示型A:医師の指示型 C:多職種提案型C:多職種提案型 D:退院時カンファ型D:退院時カンファ型

情報の共有&問題点を相互認識

患者同意患者同意

薬剤師が訪問して状況把握⇒薬剤師介入の必要性があると判断⇒患者に訪問の意義・目的説明ずっと訪問することだけをイメージせず、計画性を持って期間限定で訪問することも一考

薬剤師が訪問して状況把握⇒薬剤師介入の必要性があると判断⇒患者に訪問の意義・目的説明ずっと訪問することだけをイメージせず、計画性を持って期間限定で訪問することも一考

訪問薬剤管理指導(居宅療養管理指導)開始に至る 4つのパターン

情報の共有&問題点を相互認識

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Q7)通院困難の基準がわかりません。

平成20年3月28日 厚生労働省保険局医療課

「診療報酬の算定方法」に係る疑義照会資料

(問86)在宅患者訪問診療料を算定できない通院が容易な者とは、どのような患者か。

(答) 年齢、病状等によるため一概には言えないが、少なくとも独歩で家族等の助けを借りずに通院ができる者などは通院は容易であると考えられる。

解釈の解釈:これらは通院困難と思われる○通院時に家族やヘルパーの付き添いが必要。

○家から出る時、タクシーの運転手などが介助し、病院に着いたら病院職員が介助する。

○独立歩行はできるが、認知機能低下で付き添いが必要。

36

A)4つのケースを紹介いたします。

Q8)ケアマネジャーや看護師からの提案で薬剤師の訪問が行われたサービスの実例を教えて欲しい。

インスリンや飲み薬があるが、状態の悪化が進み、下肢切断を医師から宣告された。

薬剤師はちゃんと薬を使えていないのでは?と想像し患家を訪問し確認。

案の定、インスリン、内服薬ともに散乱。

糖尿病の数値、状態飛躍的に改善。下肢切断もまぬがれた。糖尿病の数値、状態飛躍的に改善。下肢切断もまぬがれた。

以後、服薬支援をし、きちんと薬を使えるようになった。以後、服薬支援をし、きちんと薬を使えるようになった。

事例1事例1 薬局提案型薬局提案型 【【8080歳代女性、糖尿病歳代女性、糖尿病】】

薬剤師が薬局窓口で疑問視薬剤師が薬局窓口で疑問視

事例2事例2 【【7070歳代男性歳代男性】】

居宅介護支援事業所の居宅介護支援事業所の介護支援専門員より介護支援専門員より薬局へ相談薬局へ相談

疾患/相談理由

•疾患 うっ血性心不全、前立腺がん、不眠症

•相談理由 残薬不均等、夜間軟便、不眠、夜間転倒・・・•何とかしてほしい。

薬剤師の訪問後判明したこと

•夜間軟便は酸化マグネシウムを夕食後3gまとめ飲みが原因•夜間頻尿もあり、これらが原因で不眠、夜間転倒の繰り返し

•残薬数量が合わない理由が、介助者の飲ませ間違い。

•夜間軟便は酸化マグネシウムを夕食後3gまとめ飲みが原因•夜間頻尿もあり、これらが原因で不眠、夜間転倒の繰り返し

•残薬数量が合わない理由が、介助者の飲ませ間違い。

薬剤師の対応薬剤師の対応

•納得いくまで説明

•転倒をなくすための軟便、頻尿の改善への関わり•服用間違いをなくすように支援

結果/現在結果/現在

•服用状況改善(納得して服用)、残薬整理完璧

•夜間軟便改善、頻尿少しずつ改善

•夜間睡眠以前より改善、転倒回数減少

事例3事例3 【【8080歳代女性歳代女性】】

地域包括支援センターの地域包括支援センターの介護支援専門員より介護支援専門員より薬局へ相談薬局へ相談

疾患/相談理由

•疾患 本態性高血圧、心筋梗塞、不安神経症循環器と心療内科の2科受診(介護タクシーにて介助必要な通院)

•相談理由 薬の効果を信じきれない、心筋梗塞再発への不安、薬の自己調整

薬剤師の訪問後判明したこと

•食のバランスがよくない、水分摂取少ない。

•薬の内容を十分に理解していないことも不安原因と自己調整の理由の一つ。•じっくり話をすると落ち着いてくる。

•食のバランスがよくない、水分摂取少ない。

•薬の内容を十分に理解していないことも不安原因と自己調整の理由の一つ。•じっくり話をすると落ち着いてくる。

薬剤師の対応薬剤師の対応

•不安な思いをひたすら傾聴

•薬の不明な点は納得いくまで説明•食生活と水分量確保へのアドバイス

•服用間違いをなくすように支援

結果/現在結果/現在

•服用状況改善(納得して服用)•意欲が少しずつ改善

•血圧安定、心臓の苦しさの訴え減少

認知症進行中男性、4ヶ所の医療機関を通院介護のもとで受診

どの薬がどの医療機関のものかすぐにわからなくなる。服用状況かなり悪く大変。

訪問看護より、ひとつの薬局の薬剤師による介入が有効では?と提案される。(医師の指示につなげてくれた)

以後、薬剤師がお薬管理の手伝いをし、服用状況改善。

事例4事例4 【【8080歳代男性、認知症歳代男性、認知症】】

訪問看護師訪問看護師が薬局に相談が薬局に相談

4つの事例から見えてくること

〇「看護師や介護支援専門員による薬剤師への相談」は医療・介護の両面から考えて極めて重要。

〇薬剤師は「飲めていないのでは?」と疑ったら、自ら確かめることが重要。

〇「看護師や介護支援専門員による薬剤師への相談」は医療・介護の両面から考えて極めて重要。

〇薬剤師は「飲めていないのでは?」と疑ったら、自ら確かめることが重要。

まだまだこのような事例は、

たくさんあるに違いない!

まだまだこのような事例は、

たくさんあるに違いない!

このような地域体制にするために必要な要素

具体的な研修およびMAPづくりに加えて顔の見える関係づくり(相談したいと思ったとき、顔が思い浮かぶ関係づくり)もあるとさらによい。

具体的な研修およびMAPづくりに加えて顔の見える関係づくり(相談したいと思ったとき、顔が思い浮かぶ関係づくり)もあるとさらによい。

どの職種が、何ができるのかを知る

(多職種での研修)

どの職種が、何ができるのかを知る

(多職種での研修)

どう頼めばいいのか

を知る

(多職種での研修)

どう頼めばいいのか

を知る

(多職種での研修)

誰に頼めばいいのかを

明確にする

(MAP、住所一覧)

誰に頼めばいいのかを

明確にする

(MAP、住所一覧)

360360度の視野を持つ気持ち度の視野を持つ気持ち

医師、歯科医師、看護師、病院薬剤師

介護支援専門員(包括支援センター含む)

行政、保健所、介護福祉士、歯科衛生士、栄養士、理学・作業療法士、言語聴覚士、家族ら

薬局間連携も大切

多職種&薬薬連携情報のフィードバックと共有

多職種&薬薬連携情報のフィードバックと共有

Q)ケアマネジャーや看護師との連携はどうしたらできるようになるのか?

GIVE and TAKE

GIVEが先!

GIVE and TAKE

GIVEが先!待っていても来ない。

薬剤師から情報提供する。

そのうちきっとケアマネジャーも看護師も振り向いてくれる。

Q9)薬剤師の訪問は、どう依頼すれば始められるのですか?

A)薬局に電話して、ご相談ください。調剤している薬局。(薬袋やお薬手帳に記載がある。)

あるいは患者本人が選んだ店。

45

Q10)どこの薬局が訪問可能ですか?

(麻薬、輸液、休日・時間外の対応可否、訪問区域も知りたい)

A)別紙の一覧をご参照ください。

46

訪問可能 薬局MAP

詳しくは高知県薬剤師会ホームページをご覧ください

詳しくは高知県薬剤師会ホームページをご覧ください

詳しくは高知県薬剤師会ホームページをご覧ください

詳しくは高知県薬剤師会ホームページをご覧ください

訪問可能 薬局MAP

Q11)薬剤師の訪問業務の全体の流れが知りたい。

A)次ページ参照

49

○在宅患者訪問薬剤管理指導料について平成20年3月5日 保医発第0305001号

在宅患者訪問薬剤管理指導は、在宅での療養を行っている患

者であって、通院が困難なものに対して、あらかじめ名称、所在

地、開設者の氏名及び在宅患者訪問薬剤管理指導(以下「訪問

薬剤管理指導」という。)を行う旨を地方厚生(支)局長に届け出

た保険薬局の薬剤師が、医師の指示に基づき、薬学的管理指

導計画を策定し、患家を訪問して、薬歴管理、服薬指導、服薬

支援、薬剤服用状況及び薬剤保管状況の確認等の薬学的管理

指導を行い、当該指示を行った医師に対して訪問結果について

必要な情報提供を文書で行った場合に算定する。

在宅患者訪問薬剤管理指導料算定要件

50

居宅療養管理指導費/介護予防居宅療養管理指導費算定要件

○指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス及び居宅療養管理指導に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に

伴う実施上の留意事項について平成18年3月17日 老計発第0317001号・老振発第0317001号・老老発第0317001号

薬局薬剤師が行う居宅療養管理指導については、医師又は歯科医師が交付した処方せんによる指示に基づき、また、医療機関の薬剤師が行う場合にあっては、医師又は歯科医師の指示に基づき、利用者の居宅を訪問して、薬歴管理、服用指導、薬剤服用状況及び薬剤保管状況の確認等の薬学的管理指導を行い、提供した居宅療養管理指導の内容について、速やかに記録を作成するとともに、医師又は歯科医師に報告することとする。

51

薬剤師

通院困難な在宅療養中の患者(一部の居住系施設入居者にも訪問可)

②○医師の指示、(ケアマ

ネや訪問看護の意見)などに基づき、薬学的管理指導計画を策定

○状態に応じた調剤

②○医師の指示、(ケアマ

ネや訪問看護の意見)などに基づき、薬学的管理指導計画を策定

○状態に応じた調剤

①訪問の指示、

および処方箋

①訪問の指示、

および処方箋

④必要に応じて様々な

職種とも連携

④必要に応じて様々な

職種とも連携

④訪問後情報フィードバック

→報告・計画書の提出

④訪問後情報フィードバック

→報告・計画書の提出

③薬歴管理、服薬指

導、服薬支援、薬剤服用状況及び薬剤保管状況の確認等の薬学的管理指導を実施

③薬歴管理、服薬指

導、服薬支援、薬剤服用状況及び薬剤保管状況の確認等の薬学的管理指導を実施

④介護保険利用者なら

ば介護支援専門員に連絡。ケアプランに記載してもらい、サービス提供表をもらう

④介護保険利用者なら

ば介護支援専門員に連絡。ケアプランに記載してもらい、サービス提供表をもらう

医師または歯科医師

医師または歯科医師

訪問看護師、訪問介護員

PT

、OT

、ST

訪問看護師、訪問介護員

PT

、OT

、ST

居宅介護支援事業所

(介護支援専門員)

居宅介護支援事業所

(介護支援専門員)

訪問業務の流れ

①‐1 処方箋

在宅訪問指示在宅訪問指示

①‐2

医師からの

依頼

&情報提供

②準備(調剤、計画)

電話で患者にアポを取る

③訪問

調剤:一包、ヒート、日付など選択。輸液:混合が必要でないものもある。

初期計画:医師の指示などをもとにするが、最初は「服用状況の把握、薬効、副作用要チェック」で十分な計画と言える。

重要事項説明書重要事項説明書重要事項説明書

契約書契約書契約書

居宅療養管理指導サービスを行うための居宅療養管理指導サービスを行うための

重要事項説明書と契約書の裏側重要事項説明書と契約書の裏側

重要事項説明書重要事項説明書重要事項説明書

契約書契約書契約書

④医師、訪問看護、ケアマネへの

報告&連絡&調整&次回計画(右隅)

参考川添は、この内容を綴じていき、薬歴としている。

報告書記載例~オコシコンチン、オキノーム散~報告書記載例~オコシコンチン、オキノーム散~オピオイドはレスキュー服用時間(回数)は必ずチェック

医師、看護師と情報共有すること

オピオイドはレスキュー服用時間(回数)は必ずチェック

医師、看護師と情報共有すること

Q12Q12)ケアプランへの記載は)ケアプランへの記載は

必要ですか?必要ですか?

• はい。記載をお願いします。(下の実例参照)

60

Q13)他にどのような役割がありますか?

• 疼痛緩和としてのオピオイド(麻薬)の調剤• 輸液の調剤(混注不要な場合、すべての薬局で対応可能)

• 混注が必要な場合の無菌調整(クリーンルーム設置薬局に限る)→現在県内に4薬局ある。

• 輸液のルートや針の払い出し• 夜間、休日における急な薬への対応• 介護用品(おむつ、介護服)の販売や配達• 高専賃、グループホームなど居住系施設への訪問※すべての薬局で行えるわけではありません。必ずご確認ください。

「訪問可能薬局一覧」には可否が記載されています。 61

Q)うちはチェーン店じゃないし、一人薬剤師だから無理でしょう?

A)できます。(多くの薬局がやっています)

□一度に何人もしようとしない。

□一人目の方に集中して全力を尽くす。

□時間は、みなさんが患者さんと相談して作るもの。ちゃんと時間調整をやれば、夜中や休みの訪問は実はほとんど無い。

□薬局間連携

~サポート薬局制度をうまく使う。

在宅最初の一歩と、

薬局間連携を学ぶために

日経BP社から、よい本が出版されています。そちらもご覧ください。

少し宣伝その1

日経DI 薬剤師「心得」帳3

長崎P-ネット式在宅事始め訪問薬剤管理指導

はじめの一歩と次への一歩価格:2,100円(税込み)発行元:日経BP社

発行日:2012/04/23

サポート薬局制度

平成24年4月より。

基幹薬局:メインとなって担当する薬局。患者との契約を交わす。

サポート薬局:基幹薬局のサポート役として登録する薬局。重要事項説明書に必ず薬局名(および連絡先)を明記して患者に了解を得ておく。

基幹薬局 サポート薬局

訪問薬剤管理指導料居宅療養管理指導費

介護予防居宅療養管理指導費

調剤基本料調剤料薬剤料

これにかかる加算点数例)麻薬

これにかかる加算点数

訪問に関する基礎的Q&A 超入門編

じほう社から、在宅訪問Q&Aが出版されています。そちらもご覧ください。

書名在宅医療Q&A 平成23年版

服薬支援と多職種協働・連携のポイント

商品コード 42382

編著 日本薬剤師会/監修

判型 A5発行日 2011年8月

ページ 170

定価(税込) ¥2,415

少し宣伝その2

我々医療人は、地域医療において、

患者人生のどこに、どのように関わろうとするのか?

Last messageLast message

67

中村伸一医師

福井県 名田庄診療所所長

NHKプロフェッショナル

出演時の言葉

オペ執刀医

急性期医療における関わり

病院の専門看護師や専門薬剤師のかかわり

在宅医・訪問看護師らは、

併走・伴走・寄り添うキュア&ケアをする

地域の薬局薬剤師は、

併走、伴走していきたい

みなさんの地域の医療を支えるのはみなさんです

目の前の

たった一人の

患者さんのために

ご意見・ご感想・ご質問は[email protected]

川添哲嗣

ご清聴

ありがとうございました