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音楽に秘められた数学 ~音律による和音の違いについて~ 巢山七海 福邑明音 丸山大喜 山田凌大 向井健太郎先生 1.研究の動機 音楽に触れる中で、音楽と数学が深く関係していることを知った。 特に私たちは「音律」に目をつけた。 音律には様々な種類があるが、代表的な3つの音律について調べ、それぞれの音律の特 徴を知った。それを目に見える形にし、比較しようと思った。 2.目的 和音に注目し、純正律、平均律、ピタゴラス音律の違いを調べる。 3.方法 純正律は和音がきれいだと一般的に知られているが、音を聞いただけでは平均律、ピタ ゴラス音律との違いはわからない。以下の実験を行い和音を目に見える形に表し、音律 による違いを考察する。 (1)音律の作り方を知り、ラ(440 ㎐)を基準としてそれぞれの音律のド~ド(1オクター ブ上)までの周波数を求める。 ※基準のラ(440 ㎐)は、ISO で定められている。 (2)(1)の結果を用いて、グラフ作成ソフト「grapes」でリサージュ図形を作る。 ※リサージュ図形…{ x=sinAt y= sin B で表される曲線のこと。A、Bに音の周波数を 入れる。 4.結果 (1)音律と周波数 純正律…自然倍音(基準音の周波数を 整数倍した音)を用いて作られた音階。 平均律…1オクターブの周波数を 12 等分し、音名をつけた音律。 ピタゴラス音律…周波数比 2:3 の音 (完全五度)をド-ソ、ソ-レ、レ-ラ …とつなげ、1オクターブにまとめた 音律。 ③を利用し、ラ(440 ㎐)を基準として 周波数を計算したもの…右表

音楽に秘められた数学...表1 音楽に秘められた数学 ~音律による和音の違いについて~ 巢山七海 福邑明音 丸山大喜 山田凌大 向井健太郎先生

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  • 表1

    音楽に秘められた数学

    ~音律による和音の違いについて~

    巢山七海 福邑明音 丸山大喜 山田凌大

    向井健太郎先生

    1.研究の動機

    音楽に触れる中で、音楽と数学が深く関係していることを知った。

    特に私たちは「音律」に目をつけた。

    音律には様々な種類があるが、代表的な3つの音律について調べ、それぞれの音律の特

    徴を知った。それを目に見える形にし、比較しようと思った。

    2.目的

    和音に注目し、純正律、平均律、ピタゴラス音律の違いを調べる。

    3.方法

    純正律は和音がきれいだと一般的に知られているが、音を聞いただけでは平均律、ピタ

    ゴラス音律との違いはわからない。以下の実験を行い和音を目に見える形に表し、音律

    による違いを考察する。

    (1)音律の作り方を知り、ラ(440 ㎐)を基準としてそれぞれの音律のド~ド(1オクター

    ブ上)までの周波数を求める。

    ※基準のラ(440㎐)は、ISOで定められている。

    (2)(1)の結果を用いて、グラフ作成ソフト「grapes」でリサージュ図形を作る。

    ※リサージュ図形…{x=sinAt

    y= sinBt で表される曲線のこと。A、Bに音の周波数を

    入れる。

    4.結果

    (1)音律と周波数

    ① 純正律…自然倍音(基準音の周波数を

    整数倍した音)を用いて作られた音階。

    ② 平均律…1オクターブの周波数を 12

    等分し、音名をつけた音律。

    ③ ピタゴラス音律…周波数比 2:3 の音

    (完全五度)をド-ソ、ソ-レ、レ-ラ

    …とつなげ、1オクターブにまとめた

    音律。

    ④ ③を利用し、ラ(440 ㎐)を基準として

    周波数を計算したもの…右表

  • (2)リサージュ図形

    tの値を限りなく大きくしたとき、一定の軌道を描き続けるものを線型(図1)、1×1

    の範囲を塗りつぶすものを座布団型とする(図2)。どちらも様々なパターンがある。

    (図1)例:平均律ド-ミ (図2)例:純正律ド-ミ

    ① 純正律

    ・線型、座布団型の両方が表れた。

    ・同じ音の間隔の和音(例:ド-ミ、レ-ファ♯、ミ-ソ♯…などのこと)では、

    できた線型の図形はすべて同じ形になった。

    (例)間隔3

    ②平均律

    ・ド-(上の)ドを除きすべて座布団型になった。

    (例)

  • ③ピタゴラス音律

    ・線型、座布団型の両方が表れた。

    ・完全五度の和音ではすべて線型になった。

    (例)

    ④全体

    5.考察

    ピタゴラス音律の完全5度がすべて線型になったこととピタゴラス音律は完全5度が最

    も美しく聞こえるように作られていることから、美しく聞こえる和音は線型になると推

    測される。その推測から、すべての和音が座布団型となった平均律は和音があまり美し

    くないと考えられる。

    純正律は線型の数が3つの音律の中で一番多いが、座布団型が74%を占めている。こ

    れは美しい音に聞こえるように設定されていた周波数比が転調することで無理数になっ

    てしまったからだと考えられる。

    以上のことから周波数比が有理数になるのは線型となり美しく聞こえ、無理数になるの

    は座布団型となり美しく聞こえないのではないかと考えられる。

    線型 座布団型 全体に対する線型の割合

    純正律 21個 57個 27%

    平均律 0個 78個 0%

    ピタゴラス音律 13個 65個 17%

  • X 軸側 Z 軸側 Y 軸側

    6.発展

    “3和音で3D のリサージュ図形を作ってみる”

    2D の時と同じように、周波数比が有理数の和音は線型、無理数の和音は座布団型にな

    る。

    (例)ドミソ

    x 軸をド、y 軸をミ、z軸をソとしているため、ピタゴラス音律を x 軸側、z軸側から見

    ると座布団型、y軸側から見ると線型になっている。

    7.参考文献

    小方厚「音律と音階の科学」講談社 2007

    桜井進/坂口博樹「音楽と数学の交差」2011

    ピタゴラス音律-大阪教育大学 http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~ybaba/onritsu1.pdf

    純正律と平均律について http://www.hi-ho.ne.jp/tadasu/scale.htm

    Sounds natural「平均律と純正律」http://www.mc-taichi.com/music/theory/scale.html

    12 音階の純正律音階 http://www.moge.org/okabe/temp/scale/node24.html

    純正律 平均律 ピタゴラス音律