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大腸癌治療戦略における スチバーガの位置づけと マネジメント 本レポートには国内での承認用法・用量外の情報が含まれています。記載されている医薬品の使用にあたっては、医薬品添付文書等をご参照ください。 板橋 道朗 先生 東京女子医科大学 第二外科学教室 准教授 加藤 健志 先生 関西労災病院 下部消化器外科 部長 ディスカッサント 室 圭 先生 愛知県がんセンター 中央病院 薬物療法部 部長 ディスカッサント 沖 英次 先生 九州大学大学院 外科分子治療学講座 准教授 ディスカッサント 山﨑 健太郎 先生 静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 医長 ディスカッサント MT Pro 2014年6月7日掲載PR(提供:バイエル薬品株式会社)別刷

大腸癌治療戦略における スチバーガの位置づけと マネジメント · まず、スチバーガの治療ラインについ てですが、大腸癌治療ガイドラインでは「切除不能進行再発大腸癌に

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弊社製品情報サイト Stivarga.jp(http://www.stivarga.jp/)をご参照ください

資材番号2014年6月作成

(201406)STI-10.0(DS/DI) STI-14-0103

ス チ バ ー ガ 座 談 会

大腸癌治療戦略におけるスチバーガの位置づけと

マネジメント

本レポートには国内での承認用法・用量外の情報が含まれています。記載されている医薬品の使用にあたっては、医薬品添付文書等をご参照ください。

板橋 道朗 先生 東京女子医科大学 第二外科学教室 准教授司 会

加藤 健志 先生 関西労災病院 下部消化器外科 部長ディスカッサント

室 圭 先生 愛知県がんセンター 中央病院 薬物療法部 部長ディスカッサント

沖 英次 先生 九州大学大学院 外科分子治療学講座 准教授ディスカッサント

山﨑 健太郎 先生 静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 医長ディスカッサント

MT Pro 2014年6月7日掲載PR(提供:バイエル薬品株式会社) 別刷

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01

大腸癌治療戦略におけるスチバーガの位置づけとマネジメント

02

スチバーガの位置づけと適正使用

板橋 本日は大腸癌化学療法に精通した各分野の先生にお集まりいただいておりますので、それぞれのお立場からスチバーガの位置づけ、副作用マネジメントについてお話しいただき、実臨床での一助とさせていただければと思います。 まず、スチバーガの治療ラインについてですが、大腸癌治療ガイドラインでは「切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法のアルゴリズム」が改訂され、3rd-line、4th-lineの選択肢としてスチバーガが記載されました(図1)1)。

 実臨床でスチバーガをどの位置付けで使用されていますか。全員 ガイドライン通り3rd-line、4th-lineで使用しています。板橋 スチバーガの国際共同第Ⅲ相臨床試験であるCORRECT試験における適格基準(図2)2)では、全身状態がECOG PS 0/1に保たれている場合を使用対象としていましたが、実臨床において3rd-line以上の患者さんでは、PS2や3の患者さんも少なくはないですね。そのような場合はどうされていますか。沖 CORRECT試験における適格基準と同様にECOG PSが0/1の患者さんを投与対象としますが、前治療から経過を観察してきた患者さんであれば、急激な全身状態の変化がなく治療意欲が高い場合には、PS2であってもスチバーガの投与を検討します。板橋 3rd-line以降になると、肝機能や腎機能が悪い患者さんもいらっしゃると思うのですが、投与基準はありますか。

室 肝機能が悪く、AST・ALTが200 IU/L以上やビリルビンが2mg/dLの場合は投与しません。AST・ALTが100 IU/L前後やビリルビンが1.5mg/dL前後の場合は、十分に経過観察しながら使用する場合もあります。板橋 基本的には全身状態が保たれている患者さんを選択し、全身状態があまり良くない場合は、患者さんの意欲によっては使用を考慮するということですね。

板橋 スチバーガは、大腸癌治療ガイドラインにおいてベバシズマブやセツキシマブ、パニツムマブなどの分子標的治療薬による標準治療後に使用することになっていますが、このタイミングで使用する意義をどのようにお考えですか。山﨑 ベバシズマブは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、セツキシマブとパニツムマブは上皮増殖因子受容体(EGFR)をそれぞれ阻害するモノクローナル抗体ですが、スチバーガは、マルチキナーゼ阻害剤である点に注目すべきと考えます。大腸癌の発育進展には、複数のシグナル伝達が関与しており、さらに治療を重ねることで新たな伝達経路が発現することが報告されています(図3)3)。そういった点でも血管新生、腫瘍微小環境、腫瘍形成に関わる多様なキナーゼを阻害する(図4)4)スチバーガの有効性が期待できます。実際にCORRECT試験では、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ不応例を含む標準化学療法施行後の患者さんにおいて全生存期間の延長が認められました。板橋 実際に処方されて、有効例などを経験されたことはありますでしょうか。

山﨑 発売後、半年間投与継続できた症例がありますね、有効性としては著明な縮小が得られるということではないんですけれども、投与後、患者さんの自覚症状が軽減したり、画像上もじわじわと腫瘍内部がNecrosisを起こし徐々に小さくなっていくという症例も経験しているので、やはりスチバーガは、実臨床に導入して上手に使っていかなければならないと思う薬です。室 うちでは最近、肺転移がマルチプルにある患者さんで、スチバーガを2コース施行し、Necrosisにより画像上で中が黒く抜けてきた症例があります。山﨑 Necrosisではリング状に抜けてきますね。板橋 RECISTだけでは有効性の判定が困難な形態でしょうか。沖 いわゆるモルホロジックレスポンス(形態学的奏効)というものですね。私はそういう症例はまだ経験していませんが、腫瘍マーカーがよく下がった症例は何例か経験しており、画像上のSDを半年間維持している症例もあります。

図1 切除不能進行再発大腸癌の化学療法のアルゴリズム(大腸癌治療ガイドライン2014年版) CORRECT試験の適格基準

・組織学的または細胞学的に結腸腺癌または直腸腺癌と確認された症例

・以下のような標準療法の投与中/最終投与後3ヵ月以内に進行、 またはこれらの治療に忍容できない症例 -フルオロピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカン -ベバシズマブ -セツキシマブまたはパニツムマブ(KRASが野生型の場合)

・年齢≧18歳以上

・ECOG performance status 0-1

・RECIST第1.1版による測定可能または測定不能病変を有する症例

・十分な骨髄機能、肝機能、腎機能を有する症例

・文書でインフォームドコンセントが得られている症例

図4 スチバーガの作用機序

スチバーガ

Cl

FNH

NH

NH

FF F

生化学的活性 IC50 平均 ± SDnmol/L(n)

VEGFR1

マウスVEGFR2

マウスVEGFR3

TIE2

PDGFR-β

FGFR1

KITRETRAF-1

B-RAF

B-RAFV600E

13 ± 0.4 (2)

4.2 ± 1.6(10)

46 ± 10 (4)

311 ± 46 (4)

22 ± 3(2)

202 ± 18(6)

7 ± 2(4)

1.5 ± 0.7(2)

2.5 ± 0.6(4)

28 ± 10(6)

19 ± 6(6)腫瘍形成の阻害

KITPDGFRαRETBRAFRAF-1

PDGFRβFGFR

VEGFR1‐3TIE2

腫瘍微小環境に関連する

シグナル伝達の阻害血管新生の阻害

N

図3 癌の進行とともに発現する血管新生因子

〈一次治療〉 〈二次治療〉 〈三次治療〉 〈四次治療〉 〈五次治療〉

注 : ‘/(スラッシュ)’は列記したレジメンのいずれかを選択するという意味である。 * PS2以上に適応される。

FOLFOX + Cmab/PmabFOLFIRI + Bmab

orIRIS/IRI

FOLFIRI + Cmab/Pmab

IRI + Cmab/Pmabor

Cmab/PmabFOLFOXIRI

FL/Cape + Bmabor

UFT + LV

上記『強力な治療が適応となる患者』の一次治療の中から最適と判断されるレジメンを選択する。

上記『強力な治療が適応となる患者』の二次治療の中から最適と判断されるレジメンを選択する。

上記『強力な治療が適応となる患者』の三次治療の中から最適と判断されるレジメンを選択する。

FOLFOX/CapeOX + Bmab

FOLFIRI + Bmab

FOLFIRI + Bmabor

IRIS/IRI

FOLFIRI + Cmab/Pmabor

IRI + Cmab/Pmab

IRI + Cmab/Pmabor

Cmab/Pmab

IRI + Cmab/Pmabor

Cmab/Pmab

or 対症療法*

regorafenib

or 対症療法*

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or 対症療法*

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or 対症療法*

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or 対症療法*

regorafenib

or対症療法*

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or 対症療法*

regorafenib

切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法のアルゴリズム〈強力な治療が適応となる患者〉

FOLFOX/CapeOX + Bmab

FOLFOX/CapeOX + Bmab

図2

実臨床におけるスチバーガの有用性

板橋 道朗先生

司 会板橋 道朗先生東京女子医科大学第二外科学教室

准教授

沖 英次先生九州大学大学院外科分子治療学講座

准教授

室 圭先生愛知県がんセンター

中央病院薬物療法部 部長

山﨑 健太郎先生静岡県立

静岡がんセンター消化器内科 医長

加藤 健志先生関西労災病院

下部消化器外科 部長

大腸癌治療戦略におけるスチバーガの位置づけとマネジメント

ス チ バ ー ガ 座 談 会

山﨑 健太郎先生

経口マルチキナーゼ阻害薬のレゴラフェニブ水和物(商品名:スチバーガ)が、治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌の効能・効果で承認され、1年以上が経過した。NCCN、ESMOのガイドラインに加え、2014年1月には日本においても大腸癌治療ガイドライン(医師用2014年版)にも掲載され、標準治療薬としての位置づけが明確となった。国内での使用症例は2014年に入り3,000例を超え、使用経験が蓄積されつつあるスチバーガであるが、実臨床での問題点や副作用のマネジメントの工夫に関する報告などもあり、副作用とその対処法を把握しておく必要がある。本座談会では、大腸癌化学療法に精通した先生方にお集まりいただき、実臨床におけるスチバーガの位置づけ、有効性と安全性、副作用のマネジメントについて討議いただいた。

VEGF:血管内皮増殖因子bFGF:塩基性線維芽細胞増殖因子TGF-β1:トランスフォーミング増殖因子β1PIGF:胎盤増殖因子PD-ECGF:血小板由来内皮細胞成長因子Pleiotrophin:プレイオトロフィン

VEGFの継続的な抑制が、長期的な癌制御の鍵であることが前臨床データで示されている

腫瘍の進展

VEGFbFGF

VEGFTGFβ-1

bFGFTGFβ-1

VEGFPIGF

bFGFTGFβ-1

VEGFPIGFPD-ECGF

bFGFTGFβ-1

VEGFPIGFPD-ECGFPleiotrophin

(大腸癌研究会 大腸癌治療ガイドライン 医師用2014年度版) (Grothey A, et al. Lancet. 2013; 381(9863): 303-12)

(Folkman. Cancer: Principles and Practice of Oncology, 7th ed. 2005)

(Wilhelm SM, et al. Int J Cancer. 2011;129(1): 245-55, Mross K, et al. Clin Cancer Res. 2012; 18(9): 2658-67, Strumberg D, et al. Expert Opin Investig Drugs. 2012; 21(6): 879-89より作図)

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01

大腸癌治療戦略におけるスチバーガの位置づけとマネジメント

02

スチバーガの位置づけと適正使用

板橋 本日は大腸癌化学療法に精通した各分野の先生にお集まりいただいておりますので、それぞれのお立場からスチバーガの位置づけ、副作用マネジメントについてお話しいただき、実臨床での一助とさせていただければと思います。 まず、スチバーガの治療ラインについてですが、大腸癌治療ガイドラインでは「切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法のアルゴリズム」が改訂され、3rd-line、4th-lineの選択肢としてスチバーガが記載されました(図1)1)。

 実臨床でスチバーガをどの位置付けで使用されていますか。全員 ガイドライン通り3rd-line、4th-lineで使用しています。板橋 スチバーガの国際共同第Ⅲ相臨床試験であるCORRECT試験における適格基準(図2)2)では、全身状態がECOG PS 0/1に保たれている場合を使用対象としていましたが、実臨床において3rd-line以上の患者さんでは、PS2や3の患者さんも少なくはないですね。そのような場合はどうされていますか。沖 CORRECT試験における適格基準と同様にECOG PSが0/1の患者さんを投与対象としますが、前治療から経過を観察してきた患者さんであれば、急激な全身状態の変化がなく治療意欲が高い場合には、PS2であってもスチバーガの投与を検討します。板橋 3rd-line以降になると、肝機能や腎機能が悪い患者さんもいらっしゃると思うのですが、投与基準はありますか。

室 肝機能が悪く、AST・ALTが200 IU/L以上やビリルビンが2mg/dLの場合は投与しません。AST・ALTが100 IU/L前後やビリルビンが1.5mg/dL前後の場合は、十分に経過観察しながら使用する場合もあります。板橋 基本的には全身状態が保たれている患者さんを選択し、全身状態があまり良くない場合は、患者さんの意欲によっては使用を考慮するということですね。

板橋 スチバーガは、大腸癌治療ガイドラインにおいてベバシズマブやセツキシマブ、パニツムマブなどの分子標的治療薬による標準治療後に使用することになっていますが、このタイミングで使用する意義をどのようにお考えですか。山﨑 ベバシズマブは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、セツキシマブとパニツムマブは上皮増殖因子受容体(EGFR)をそれぞれ阻害するモノクローナル抗体ですが、スチバーガは、マルチキナーゼ阻害剤である点に注目すべきと考えます。大腸癌の発育進展には、複数のシグナル伝達が関与しており、さらに治療を重ねることで新たな伝達経路が発現することが報告されています(図3)3)。そういった点でも血管新生、腫瘍微小環境、腫瘍形成に関わる多様なキナーゼを阻害する(図4)4)スチバーガの有効性が期待できます。実際にCORRECT試験では、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ不応例を含む標準化学療法施行後の患者さんにおいて全生存期間の延長が認められました。板橋 実際に処方されて、有効例などを経験されたことはありますでしょうか。

山﨑 発売後、半年間投与継続できた症例がありますね、有効性としては著明な縮小が得られるということではないんですけれども、投与後、患者さんの自覚症状が軽減したり、画像上もじわじわと腫瘍内部がNecrosisを起こし徐々に小さくなっていくという症例も経験しているので、やはりスチバーガは、実臨床に導入して上手に使っていかなければならないと思う薬です。室 うちでは最近、肺転移がマルチプルにある患者さんで、スチバーガを2コース施行し、Necrosisにより画像上で中が黒く抜けてきた症例があります。山﨑 Necrosisではリング状に抜けてきますね。板橋 RECISTだけでは有効性の判定が困難な形態でしょうか。沖 いわゆるモルホロジックレスポンス(形態学的奏効)というものですね。私はそういう症例はまだ経験していませんが、腫瘍マーカーがよく下がった症例は何例か経験しており、画像上のSDを半年間維持している症例もあります。

図1 切除不能進行再発大腸癌の化学療法のアルゴリズム(大腸癌治療ガイドライン2014年版) CORRECT試験の適格基準

・組織学的または細胞学的に結腸腺癌または直腸腺癌と確認された症例

・以下のような標準療法の投与中/最終投与後3ヵ月以内に進行、 またはこれらの治療に忍容できない症例 -フルオロピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカン -ベバシズマブ -セツキシマブまたはパニツムマブ(KRASが野生型の場合)

・年齢≧18歳以上

・ECOG performance status 0-1

・RECIST第1.1版による測定可能または測定不能病変を有する症例

・十分な骨髄機能、肝機能、腎機能を有する症例

・文書でインフォームドコンセントが得られている症例

図4 スチバーガの作用機序

スチバーガ

Cl

FNH

NH

NH

FF F

生化学的活性 IC50 平均 ± SDnmol/L(n)

VEGFR1

マウスVEGFR2

マウスVEGFR3

TIE2

PDGFR-β

FGFR1

KITRETRAF-1

B-RAF

B-RAFV600E

13 ± 0.4 (2)

4.2 ± 1.6(10)

46 ± 10 (4)

311 ± 46 (4)

22 ± 3(2)

202 ± 18(6)

7 ± 2(4)

1.5 ± 0.7(2)

2.5 ± 0.6(4)

28 ± 10(6)

19 ± 6(6)腫瘍形成の阻害

KITPDGFRαRETBRAFRAF-1

PDGFRβFGFR

VEGFR1‐3TIE2

腫瘍微小環境に関連する

シグナル伝達の阻害血管新生の阻害

N

図3 癌の進行とともに発現する血管新生因子

〈一次治療〉 〈二次治療〉 〈三次治療〉 〈四次治療〉 〈五次治療〉

注 : ‘/(スラッシュ)’は列記したレジメンのいずれかを選択するという意味である。 * PS2以上に適応される。

FOLFOX + Cmab/PmabFOLFIRI + Bmab

orIRIS/IRI

FOLFIRI + Cmab/Pmab

IRI + Cmab/Pmabor

Cmab/PmabFOLFOXIRI

FL/Cape + Bmabor

UFT + LV

上記『強力な治療が適応となる患者』の一次治療の中から最適と判断されるレジメンを選択する。

上記『強力な治療が適応となる患者』の二次治療の中から最適と判断されるレジメンを選択する。

上記『強力な治療が適応となる患者』の三次治療の中から最適と判断されるレジメンを選択する。

FOLFOX/CapeOX + Bmab

FOLFIRI + Bmab

FOLFIRI + Bmabor

IRIS/IRI

FOLFIRI + Cmab/Pmabor

IRI + Cmab/Pmab

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Cmab/Pmab

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Cmab/Pmab

or 対症療法*

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切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法のアルゴリズム〈強力な治療が適応となる患者〉

FOLFOX/CapeOX + Bmab

FOLFOX/CapeOX + Bmab

図2

実臨床におけるスチバーガの有用性

板橋 道朗先生

司 会板橋 道朗先生東京女子医科大学第二外科学教室

准教授

沖 英次先生九州大学大学院外科分子治療学講座

准教授

室 圭先生愛知県がんセンター

中央病院薬物療法部 部長

山﨑 健太郎先生静岡県立

静岡がんセンター消化器内科 医長

加藤 健志先生関西労災病院

下部消化器外科 部長

大腸癌治療戦略におけるスチバーガの位置づけとマネジメント

ス チ バ ー ガ 座 談 会

山﨑 健太郎先生

経口マルチキナーゼ阻害薬のレゴラフェニブ水和物(商品名:スチバーガ)が、治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌の効能・効果で承認され、1年以上が経過した。NCCN、ESMOのガイドラインに加え、2014年1月には日本においても大腸癌治療ガイドライン(医師用2014年版)にも掲載され、標準治療薬としての位置づけが明確となった。国内での使用症例は2014年に入り3,000例を超え、使用経験が蓄積されつつあるスチバーガであるが、実臨床での問題点や副作用のマネジメントの工夫に関する報告などもあり、副作用とその対処法を把握しておく必要がある。本座談会では、大腸癌化学療法に精通した先生方にお集まりいただき、実臨床におけるスチバーガの位置づけ、有効性と安全性、副作用のマネジメントについて討議いただいた。

VEGF:血管内皮増殖因子bFGF:塩基性線維芽細胞増殖因子TGF-β1:トランスフォーミング増殖因子β1PIGF:胎盤増殖因子PD-ECGF:血小板由来内皮細胞成長因子Pleiotrophin:プレイオトロフィン

VEGFの継続的な抑制が、長期的な癌制御の鍵であることが前臨床データで示されている

腫瘍の進展

VEGFbFGF

VEGFTGFβ-1

bFGFTGFβ-1

VEGFPIGF

bFGFTGFβ-1

VEGFPIGFPD-ECGF

bFGFTGFβ-1

VEGFPIGFPD-ECGFPleiotrophin

(大腸癌研究会 大腸癌治療ガイドライン 医師用2014年度版) (Grothey A, et al. Lancet. 2013; 381(9863): 303-12)

(Folkman. Cancer: Principles and Practice of Oncology, 7th ed. 2005)

(Wilhelm SM, et al. Int J Cancer. 2011;129(1): 245-55, Mross K, et al. Clin Cancer Res. 2012; 18(9): 2658-67, Strumberg D, et al. Expert Opin Investig Drugs. 2012; 21(6): 879-89より作図)

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03 04

大腸癌治療戦略におけるスチバーガの位置づけとマネジメント

スチバーガの副作用マネジメント

板橋 スチバーガ使用時に認められる主な副作用としては、手足症候群(HFS)、疲労、下痢、高血圧、発疹などがあります。CORRECT試験および製造販売後調査において、このような副作用は、1~2サイクル目までの、投与開始初期に発現しやすいことが示されています(図5)5)(図6)6)が、やはり実臨床でもその傾向があるように感じます。先生方はどのようにマネジメントされていますか。山﨑 スチバーガの副作用は、ほとんどの場合1~2サイクル目に発現します。患者さんには少なくとも週に一度は来院していただき、副作用に対しては早めの減量・休薬を考えます。副作用は我慢せず伝えるようにお願いし、つらいときには、患者さん判断による休薬も可能であると説明します。もし、投与4日目に自己判断で休薬したとしても、3日後には来院しますので、その時に症状を確認し、再開の可否、用量を患者さんと相談して決めます。とにかく無理に服薬し続けないように指導しています。室 患者さんに、副作用の可能性をあらかじめ理解していただくことが大事ですね。副作用が起こったとしても、患者さんが自宅から電話などで相談できる体制を整えることも重要だと考えています。しかし、医師のみで対応するのは難しいため、看護師や薬剤師などメディカルスタッフと協力したチーム医療で臨むことも重要です。板橋 患者、医師、メディカルスタッフで副作用を早期に発見すること、早めの休薬、減量で副作用を重篤化させないことが重要ということですね。また、そのためにもスタッフ間の信頼関係の構築が大切ということですね。では次に、スチバーガで発現頻度の高い副作用の具体的な対処についてお聞きしたいと思います。

板橋 スチバーガで発現するHFSは、従来のキナーゼ阻害薬やフッ化ピリミジン系薬剤で発現するHFSとは幾つか異なる点があります(表1)。実臨床ではこのような違いを感じられますか。

山﨑 特に両剤間で違いを感じるのは、「疼痛」です。スチバーガの場合、見た目はそれほど赤くなっていない場合でも、痛みを訴える患者さんが多いと感じます。また、休薬後の回復までの時間はスチバーガのほうが早いですね。Grade2で無理をして減量せずに使用してGrade3になってしまうなら、Grade2と分かった時点ですぐに休薬したほうが良いと思います(図7)7)。回復が早いので、休薬後の再開も早い段階で検討できます。症状出現早期のつらくない時期に減量し、苦痛を体験させないようにすることで、患者さんの治療に対するモチベーションを維持し、治療の継続が容易になると思います。板橋 スチバーガを休薬してから再開するとき、投与量は調整しますか。山﨑 初回投与量は4錠(160mg/日)で始め、再開時は減量します。しかし、発現の時期にもよると思います。サイクルの1週目で発現した場合は、すぐに休薬・減量を考えますが、3週目で発現した場合は4週目が休薬となるので、次のサイクルも同量スタートで継続する場合もあります。板橋 予防や対症療法はどのように行っていますか。加藤 当院では、患者さんに皮膚のケアが重要だという意識を持っていただくために、処方前に皮膚科を受診し、角質のケアをしてもらっています。もともと水虫などがある患者さんでは、事前治療によりHFSの重篤化を防ぐようにします。板橋 薬剤も処方していますか。沖 ステロイド軟膏と尿素製剤クリームを処方し、手足への塗布を指導しています。HFSが発現した場合は、皮膚科でやや強いステロイド軟膏を処方してもらいますが、通常はまず休薬します。板橋 実際に休薬となる患者さんの頻度は高いですか。室 CORRECT試験の結果と同様に、発現頻度は高いと思います。しかし、現在では早めの休薬、減量や予防措置やセルフケアに対する患者教育を十分に行っていますから、HFSだけが原因で投与中止になることは、ほとんど経験がありません。

板橋 CORRECT試験では、日本人症例において死亡例が1例報告されたことから、当初2週間に1回の頻度であったAST、ALT、ビリルビンの検査を、2サイクル目までは週1回に変更しています。実臨床においても、この頻度での検査は必要だと考えられますか。沖 必要だと思います。スチバーガでは肝機能障害は投与開始から2週間ぐらいの間に高頻度で出現します(図8)7)ので、1週間ごとに血液検査を行い、肝機能検査値を注意深くモニタリングすることが重要です。室 実際に、肝機能検査値に異常が認められた場合には、AST、ALTが100 IU/Lを超えたら休薬します。しかし、患者さんによっては肝転移などにより元々の値が100 IU/Lぐらいの方もいますから、その場合には200 IU/L程度に上昇した時点で休薬します。板橋 肝機能障害が原因で休薬した後に、再投与は検討しますか。沖 スチバーガが使えなくなると治療の選択肢はBest Supportive

Care(BSC)しか残っていませんから、休薬して、AST、ALTが投与前の値まで下がった場合は、再投与を検討することもあります。ただし、AST、ALTが1,000 IU/Lを超えたような症例では、スチバーガの再投与は難しいと思います。

キナーゼ阻害薬とフッ化ピリミジン系薬剤の皮膚症状の違い表1

肝機能障害への対処方法

沖 英次先生

加藤 健志先生

発現様式

キナーゼ阻害薬(スチバーガ等) フッ化ピリミジン系薬剤

・限局性の紅斑・通常疼痛を伴う

・びまん性の発赤、紅斑

・手掌、足底・物理的刺激を受けやすい部位

・手掌、足底

①紅斑・腫脹

③過角化(角質増生)・落屑・亀裂④水疱・びらん・潰瘍

①紅斑・腫脹②色素沈着・色素斑③過角化(角質増生)・落屑・亀裂④水疱・びらん・潰瘍

・速やかに回復 ・緩やかに回復

好発部位

所見

回復

HFSへの対処法

(Grothey A, et al. ASCO-GI 2013: J Clin Oncol 30: 2012(suppl 34; abstr 467)) (バイエル薬品社内資料)

(スチバーガ錠40mg 副作用収集状況(6)市販直後調査最終報告)

図5 CORRECT試験でのスチバーガの副作用の発現推移(All Grade)

1 2 3 4 5 6 7 8

500 417 229 193 119 91 55 43

副作用発現割合(%)

50454035302520151050

治療サイクル

■手足症候群■疲労■下痢■高血圧■皮膚/落屑

No. ofpatientsat risk

図6 主要な副作用の発現時期

発現率(%)

観察期間(日)200 40 60 80

(スチバーガ錠40mg 副作用収集状況(6)市販直後調査最終報告)

図7 スチバーガのHFS発現推移と転帰

投与開始からHFSの初発日まで(日) 発現から軽快または回復まで(日)

53.8%は投与開始2週間以内に発現 軽快/回復と報告された患者の58.5%は2週間以内に軽快/回復

発現例数(例)

発現件数(件)

07 14 21 28 35 42 49 56 63 70

10

20

30

40

50

60

70

0

10

20

30

40

50

60

70

7 14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 84 91

不明

0

25

50

100

75

■非重篤■重篤

■非重篤■重篤

HFSの発現時期分布(全418例)

HFSの転帰時期分布(※全446件のうち、転帰が軽快または回復と報告された236件)

図8 スチバーガの肝機能障害発現の推移と転帰

51.0%は投与開始2週間以内に発現 軽快/回復と報告された患者の57.3%は2週間以内に軽快/回復投与開始から肝関連事象の初発日まで(日) 発現から軽快または回復まで(日)

発現例数(例)

■非重篤■重篤

肝機能障害関連事象の発現時期分布(全247例)

50454035302520151050

50454035302520151050

■非重篤■重篤

発現件数(件)

肝機能障害関連事象の転帰時期分布(※全321件のうち、転帰が軽快または回復と報告された164件)

7 14 21 28 35 42 49 56 63不明

7 14 21 28 35 42 49 56 63

手足症候群肝機能障害高血圧疲労・倦怠感

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03 04

大腸癌治療戦略におけるスチバーガの位置づけとマネジメント

スチバーガの副作用マネジメント

板橋 スチバーガ使用時に認められる主な副作用としては、手足症候群(HFS)、疲労、下痢、高血圧、発疹などがあります。CORRECT試験および製造販売後調査において、このような副作用は、1~2サイクル目までの、投与開始初期に発現しやすいことが示されています(図5)5)(図6)6)が、やはり実臨床でもその傾向があるように感じます。先生方はどのようにマネジメントされていますか。山﨑 スチバーガの副作用は、ほとんどの場合1~2サイクル目に発現します。患者さんには少なくとも週に一度は来院していただき、副作用に対しては早めの減量・休薬を考えます。副作用は我慢せず伝えるようにお願いし、つらいときには、患者さん判断による休薬も可能であると説明します。もし、投与4日目に自己判断で休薬したとしても、3日後には来院しますので、その時に症状を確認し、再開の可否、用量を患者さんと相談して決めます。とにかく無理に服薬し続けないように指導しています。室 患者さんに、副作用の可能性をあらかじめ理解していただくことが大事ですね。副作用が起こったとしても、患者さんが自宅から電話などで相談できる体制を整えることも重要だと考えています。しかし、医師のみで対応するのは難しいため、看護師や薬剤師などメディカルスタッフと協力したチーム医療で臨むことも重要です。板橋 患者、医師、メディカルスタッフで副作用を早期に発見すること、早めの休薬、減量で副作用を重篤化させないことが重要ということですね。また、そのためにもスタッフ間の信頼関係の構築が大切ということですね。では次に、スチバーガで発現頻度の高い副作用の具体的な対処についてお聞きしたいと思います。

板橋 スチバーガで発現するHFSは、従来のキナーゼ阻害薬やフッ化ピリミジン系薬剤で発現するHFSとは幾つか異なる点があります(表1)。実臨床ではこのような違いを感じられますか。

山﨑 特に両剤間で違いを感じるのは、「疼痛」です。スチバーガの場合、見た目はそれほど赤くなっていない場合でも、痛みを訴える患者さんが多いと感じます。また、休薬後の回復までの時間はスチバーガのほうが早いですね。Grade2で無理をして減量せずに使用してGrade3になってしまうなら、Grade2と分かった時点ですぐに休薬したほうが良いと思います(図7)7)。回復が早いので、休薬後の再開も早い段階で検討できます。症状出現早期のつらくない時期に減量し、苦痛を体験させないようにすることで、患者さんの治療に対するモチベーションを維持し、治療の継続が容易になると思います。板橋 スチバーガを休薬してから再開するとき、投与量は調整しますか。山﨑 初回投与量は4錠(160mg/日)で始め、再開時は減量します。しかし、発現の時期にもよると思います。サイクルの1週目で発現した場合は、すぐに休薬・減量を考えますが、3週目で発現した場合は4週目が休薬となるので、次のサイクルも同量スタートで継続する場合もあります。板橋 予防や対症療法はどのように行っていますか。加藤 当院では、患者さんに皮膚のケアが重要だという意識を持っていただくために、処方前に皮膚科を受診し、角質のケアをしてもらっています。もともと水虫などがある患者さんでは、事前治療によりHFSの重篤化を防ぐようにします。板橋 薬剤も処方していますか。沖 ステロイド軟膏と尿素製剤クリームを処方し、手足への塗布を指導しています。HFSが発現した場合は、皮膚科でやや強いステロイド軟膏を処方してもらいますが、通常はまず休薬します。板橋 実際に休薬となる患者さんの頻度は高いですか。室 CORRECT試験の結果と同様に、発現頻度は高いと思います。しかし、現在では早めの休薬、減量や予防措置やセルフケアに対する患者教育を十分に行っていますから、HFSだけが原因で投与中止になることは、ほとんど経験がありません。

板橋 CORRECT試験では、日本人症例において死亡例が1例報告されたことから、当初2週間に1回の頻度であったAST、ALT、ビリルビンの検査を、2サイクル目までは週1回に変更しています。実臨床においても、この頻度での検査は必要だと考えられますか。沖 必要だと思います。スチバーガでは肝機能障害は投与開始から2週間ぐらいの間に高頻度で出現します(図8)7)ので、1週間ごとに血液検査を行い、肝機能検査値を注意深くモニタリングすることが重要です。室 実際に、肝機能検査値に異常が認められた場合には、AST、ALTが100 IU/Lを超えたら休薬します。しかし、患者さんによっては肝転移などにより元々の値が100 IU/Lぐらいの方もいますから、その場合には200 IU/L程度に上昇した時点で休薬します。板橋 肝機能障害が原因で休薬した後に、再投与は検討しますか。沖 スチバーガが使えなくなると治療の選択肢はBest Supportive

Care(BSC)しか残っていませんから、休薬して、AST、ALTが投与前の値まで下がった場合は、再投与を検討することもあります。ただし、AST、ALTが1,000 IU/Lを超えたような症例では、スチバーガの再投与は難しいと思います。

キナーゼ阻害薬とフッ化ピリミジン系薬剤の皮膚症状の違い表1

肝機能障害への対処方法

沖 英次先生

加藤 健志先生

発現様式

キナーゼ阻害薬(スチバーガ等) フッ化ピリミジン系薬剤

・限局性の紅斑・通常疼痛を伴う

・びまん性の発赤、紅斑

・手掌、足底・物理的刺激を受けやすい部位

・手掌、足底

①紅斑・腫脹

③過角化(角質増生)・落屑・亀裂④水疱・びらん・潰瘍

①紅斑・腫脹②色素沈着・色素斑③過角化(角質増生)・落屑・亀裂④水疱・びらん・潰瘍

・速やかに回復 ・緩やかに回復

好発部位

所見

回復

HFSへの対処法

(Grothey A, et al. ASCO-GI 2013: J Clin Oncol 30: 2012(suppl 34; abstr 467)) (バイエル薬品社内資料)

(スチバーガ錠40mg 副作用収集状況(6)市販直後調査最終報告)

図5 CORRECT試験でのスチバーガの副作用の発現推移(All Grade)

1 2 3 4 5 6 7 8

500 417 229 193 119 91 55 43

副作用発現割合(%)

50454035302520151050

治療サイクル

■手足症候群■疲労■下痢■高血圧■皮膚/落屑

No. ofpatientsat risk

図6 主要な副作用の発現時期

発現率(%)

観察期間(日)200 40 60 80

(スチバーガ錠40mg 副作用収集状況(6)市販直後調査最終報告)

図7 スチバーガのHFS発現推移と転帰

投与開始からHFSの初発日まで(日) 発現から軽快または回復まで(日)

53.8%は投与開始2週間以内に発現 軽快/回復と報告された患者の58.5%は2週間以内に軽快/回復

発現例数(例)

発現件数(件)

07 14 21 28 35 42 49 56 63 70

10

20

30

40

50

60

70

0

10

20

30

40

50

60

70

7 14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 84 91

不明

0

25

50

100

75

■非重篤■重篤

■非重篤■重篤

HFSの発現時期分布(全418例)

HFSの転帰時期分布(※全446件のうち、転帰が軽快または回復と報告された236件)

図8 スチバーガの肝機能障害発現の推移と転帰

51.0%は投与開始2週間以内に発現 軽快/回復と報告された患者の57.3%は2週間以内に軽快/回復投与開始から肝関連事象の初発日まで(日) 発現から軽快または回復まで(日)

発現例数(例)

■非重篤■重篤

肝機能障害関連事象の発現時期分布(全247例)

50454035302520151050

50454035302520151050

■非重篤■重篤

発現件数(件)

肝機能障害関連事象の転帰時期分布(※全321件のうち、転帰が軽快または回復と報告された164件)

7 14 21 28 35 42 49 56 63不明

7 14 21 28 35 42 49 56 63

手足症候群肝機能障害高血圧疲労・倦怠感

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大腸癌治療戦略におけるスチバーガの位置づけとマネジメント

板橋 CORRECT試験では、約半数の47%の患者さんに疲労が発現しました。実臨床でも多く遭遇すると考えられますが、どのように対処されていますか。加藤 疲労は、スチバーガによる副作用なのか、原疾患に起因するものなのか判断しづらいですが、経口ステロイド(デキサメタゾン2mg)で対処しています。初期の倦怠感は抑えられていると感じています。板橋 疲労が原因でスチバーガの治療中止することはありますか。室 疲労が原因でスチバーガを休薬することはありませんが、患者さんの中には治療モチベーションが低下してしまう方もいますから、やはり対処は必要だと考えています。

板橋 CORRECT試験では、28%の患者さんが高血圧を発現していました。実臨床ではいかがですか。沖 調節基準に従ってコントロールしますが、スチバーガによって高血圧を呈する患者さんは、もともと血圧が高く、降圧薬を服用していることが多い印象です。このような患者さんでさらに血圧が高くなった場合、具体的にはどのような薬剤を選択していますか。山﨑 私の場合、まず最初にARB、1剤でコントロールできない場合はカルシウム拮抗剤、次に利尿剤を処方します。ただし、急激に血圧上昇する場合にはカルシウム拮抗剤を第一選択にします。

板橋 発熱やCRP上昇に対してはどのように対処されますか。室 発熱した症例では感染症を疑う必要がありますが、これまで感染症はほとんど経験がありません。感染症の可能性が除外されれば、解熱剤による対症療法を行います。高熱の場合は休薬しますが、患者さんも繰り返すうちに慣れてきて、あまり気にしなくなります。CRPが上昇しても10mg/dL未満であればスチバーガを継続しています。板橋 対症療法を行い、高熱でなければ中止せずに継続するということですね。

板橋 切除不能な進行・再発大腸癌に対する薬物療法は、新薬の登場や既存薬の効果とバイオマーカーとの相関といった研究により、年々進化を繰り返しています。近年行われたFIRE-3試験では、KRAS野生型の切除不能な進行大腸癌患者に対して、1st-lineでの

FOLFIRI+セツキシマブ投与ではFOLFIRI+ベバシズマブ投与と比較してOS(副次評価項目)の有意な延長を認めました。この結果を受けて、今までの治療方針の変更はありましたか。また、スチバーガ使用時は、前治療を考慮する必要があると考えますか。全員 現時点では、特に治療方針の変更はありません。室 CORRECT試験のサブ解析では、KRAS変異の有無に関わらず、スチバーガの有効性が示されています。スチバーガは前治療であるセツキシマブとベバシズマブの病勢進行後に用いるため、これら2剤の投与順序による影響はないと考えられます。板橋 今後、進行・再発大腸癌の薬剤治療の選択肢がさらに増えることも予想されます。山﨑 そうですね。今年3月に、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩(TAS-102)が製造販売承認を取得しました。スチバーガだけではなく、TAS-102も有用な薬剤なので両薬剤を使いきることが重要だと考えます。板橋 それでは、スチバーガとTAS-102をどのように使い切ればよいのでしょうか。室 基本的には標準治療を先に行うべきだと思います。スチバーガはガイドラインにも掲載されていますが、TAS-102は国内第Ⅱ相臨床試験に基づく承認であり、投与対象も「標準治療が困難な場合に限る」と添付文書の効能効果に記載されていることから、現時点ではTAS-102はスチバーガの後に使用されるべきと考えられます。沖 まずは現在の標準治療であるスチバーガを十分に使いこなすことによって、患者さんの予後の延長に貢献することが重要ではないでしょうか。板橋 スチバーガ投与下では、マネジメントが必要な副作用が発現しています。しかし、多くの先生方が使用経験を蓄積していくことで、発現傾向や副作用対策が明確となり、より適切な副作用マネジメントが可能になると思います。 本日は先生方から、実臨床での経験に基づいた、貴重なご意見をいただきました。この討議内容が日常診療のお役に立てば幸いです。本日はお忙しいところありがとうございました。

1) 大腸癌研究会 大腸癌治療ガイドライン 医師用2014年度版2) Grothey A, et al. Lancet. 2013; 381(9863): 303-123) Folkman. Cancer: Principles and Practice of Oncology, 7th ed. 20054) Wilhelm SM, et al. Int J Cancer. 2011;129(1): 245-55, Mross K, et al. Clin Cancer Res. 2012; 18(9): 2658-67, Strumberg D, et al. Expert Opin Investig Drugs. 2012; 21(6): 879-89より作図

5) Grothey A, et al. ASCO-GI 2013: J Clin Oncol 30: 2012(suppl 34; abstr 467)

6) バイエル薬品社内資料7) スチバーガ錠40mg 副作用収集状況(6)市販直後調査最終報告

高血圧への対処法

発熱、CRP上昇への対処法

疲労への対処法

室 圭先生

今後の展望

05

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大腸癌治療戦略におけるスチバーガの位置づけとマネジメント

板橋 CORRECT試験では、約半数の47%の患者さんに疲労が発現しました。実臨床でも多く遭遇すると考えられますが、どのように対処されていますか。加藤 疲労は、スチバーガによる副作用なのか、原疾患に起因するものなのか判断しづらいですが、経口ステロイド(デキサメタゾン2mg)で対処しています。初期の倦怠感は抑えられていると感じています。板橋 疲労が原因でスチバーガの治療中止することはありますか。室 疲労が原因でスチバーガを休薬することはありませんが、患者さんの中には治療モチベーションが低下してしまう方もいますから、やはり対処は必要だと考えています。

板橋 CORRECT試験では、28%の患者さんが高血圧を発現していました。実臨床ではいかがですか。沖 調節基準に従ってコントロールしますが、スチバーガによって高血圧を呈する患者さんは、もともと血圧が高く、降圧薬を服用していることが多い印象です。このような患者さんでさらに血圧が高くなった場合、具体的にはどのような薬剤を選択していますか。山﨑 私の場合、まず最初にARB、1剤でコントロールできない場合はカルシウム拮抗剤、次に利尿剤を処方します。ただし、急激に血圧上昇する場合にはカルシウム拮抗剤を第一選択にします。

板橋 発熱やCRP上昇に対してはどのように対処されますか。室 発熱した症例では感染症を疑う必要がありますが、これまで感染症はほとんど経験がありません。感染症の可能性が除外されれば、解熱剤による対症療法を行います。高熱の場合は休薬しますが、患者さんも繰り返すうちに慣れてきて、あまり気にしなくなります。CRPが上昇しても10mg/dL未満であればスチバーガを継続しています。板橋 対症療法を行い、高熱でなければ中止せずに継続するということですね。

板橋 切除不能な進行・再発大腸癌に対する薬物療法は、新薬の登場や既存薬の効果とバイオマーカーとの相関といった研究により、年々進化を繰り返しています。近年行われたFIRE-3試験では、KRAS野生型の切除不能な進行大腸癌患者に対して、1st-lineでの

FOLFIRI+セツキシマブ投与ではFOLFIRI+ベバシズマブ投与と比較してOS(副次評価項目)の有意な延長を認めました。この結果を受けて、今までの治療方針の変更はありましたか。また、スチバーガ使用時は、前治療を考慮する必要があると考えますか。全員 現時点では、特に治療方針の変更はありません。室 CORRECT試験のサブ解析では、KRAS変異の有無に関わらず、スチバーガの有効性が示されています。スチバーガは前治療であるセツキシマブとベバシズマブの病勢進行後に用いるため、これら2剤の投与順序による影響はないと考えられます。板橋 今後、進行・再発大腸癌の薬剤治療の選択肢がさらに増えることも予想されます。山﨑 そうですね。今年3月に、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩(TAS-102)が製造販売承認を取得しました。スチバーガだけではなく、TAS-102も有用な薬剤なので両薬剤を使いきることが重要だと考えます。板橋 それでは、スチバーガとTAS-102をどのように使い切ればよいのでしょうか。室 基本的には標準治療を先に行うべきだと思います。スチバーガはガイドラインにも掲載されていますが、TAS-102は国内第Ⅱ相臨床試験に基づく承認であり、投与対象も「標準治療が困難な場合に限る」と添付文書の効能効果に記載されていることから、現時点ではTAS-102はスチバーガの後に使用されるべきと考えられます。沖 まずは現在の標準治療であるスチバーガを十分に使いこなすことによって、患者さんの予後の延長に貢献することが重要ではないでしょうか。板橋 スチバーガ投与下では、マネジメントが必要な副作用が発現しています。しかし、多くの先生方が使用経験を蓄積していくことで、発現傾向や副作用対策が明確となり、より適切な副作用マネジメントが可能になると思います。 本日は先生方から、実臨床での経験に基づいた、貴重なご意見をいただきました。この討議内容が日常診療のお役に立てば幸いです。本日はお忙しいところありがとうございました。

1) 大腸癌研究会 大腸癌治療ガイドライン 医師用2014年度版2) Grothey A, et al. Lancet. 2013; 381(9863): 303-123) Folkman. Cancer: Principles and Practice of Oncology, 7th ed. 20054) Wilhelm SM, et al. Int J Cancer. 2011;129(1): 245-55, Mross K, et al. Clin Cancer Res. 2012; 18(9): 2658-67, Strumberg D, et al. Expert Opin Investig Drugs. 2012; 21(6): 879-89より作図

5) Grothey A, et al. ASCO-GI 2013: J Clin Oncol 30: 2012(suppl 34; abstr 467)

6) バイエル薬品社内資料7) スチバーガ錠40mg 副作用収集状況(6)市販直後調査最終報告

高血圧への対処法

発熱、CRP上昇への対処法

疲労への対処法

室 圭先生

今後の展望

05

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弊社製品情報サイト Stivarga.jp(http://www.stivarga.jp/)をご参照ください

資材番号2014年6月作成

(201406)STI-10.0(DS/DI) STI-14-0103

ス チ バ ー ガ 座 談 会

大腸癌治療戦略におけるスチバーガの位置づけと

マネジメント

本レポートには国内での承認用法・用量外の情報が含まれています。記載されている医薬品の使用にあたっては、医薬品添付文書等をご参照ください。

板橋 道朗 先生 東京女子医科大学 第二外科学教室 准教授司 会

加藤 健志 先生 関西労災病院 下部消化器外科 部長ディスカッサント

室 圭 先生 愛知県がんセンター 中央病院 薬物療法部 部長ディスカッサント

沖 英次 先生 九州大学大学院 外科分子治療学講座 准教授ディスカッサント

山﨑 健太郎 先生 静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 医長ディスカッサント

MT Pro 2014年6月7日掲載PR(提供:バイエル薬品株式会社) 別刷