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逆相TLC/スキャニングデンシトメトリーによる生薬分析 誌名 誌名 愛知県衛生研究所報 ISSN ISSN 05157803 巻/号 巻/号 57 掲載ページ 掲載ページ p. 49-53 発行年月 発行年月 2007年3月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

逆相TLC/スキャニングデンシトメトリーによる生薬 …われは逆相TLCを食品・化粧品中のタール 色素のルーチン検査に用い、逆相TLCは順

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Page 1: 逆相TLC/スキャニングデンシトメトリーによる生薬 …われは逆相TLCを食品・化粧品中のタール 色素のルーチン検査に用い、逆相TLCは順

逆相TLC/スキャニングデンシトメトリーによる生薬分析

誌名誌名 愛知県衛生研究所報

ISSNISSN 05157803

巻/号巻/号 57

掲載ページ掲載ページ p. 49-53

発行年月発行年月 2007年3月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

Page 2: 逆相TLC/スキャニングデンシトメトリーによる生薬 …われは逆相TLCを食品・化粧品中のタール 色素のルーチン検査に用い、逆相TLCは順

愛知衛所報 No.57,49・53,2007

調査研究

逆相 TLC/スキャニングデンシトメトリーによる生薬分析

ーオウゴン、シャクヤク、カンゾウ、アロ工、ボタンピ、

センブリ、オウレン、センナの確認試験一

大野勉、池田清栄、三上栄一

要約

逆相 TLCを用いて、展開溶媒として水、アセトニトリル、 n-ヘキサン、 2-ブタノンの溶媒系

を用い、生薬のオウゴン、シャクヤク、カンゾウ、アロエ、ボタンピ、センブリ、オウレン、セ

ンナについて、それらの主成分(パイカリン、ベオニフロリン、グリチルリチン酸、パルバロイ

ン、 ベオノール、スウェルチアマリン、塩化ベルペリン、センノシド A) の確認を検討したとこ

ろ、他の共存成分と分離された単一なスポット (Rf値 0.32から 0.56)を得ることができた。ま

た、同時にスキャニングデンシトメトリーにより、スベクトルの情報も得られ、生薬の主成分を、

簡易、迅速、確実に同定することが可能であった。

キーワード:逆相 TLC、スキャニングデンシトメトリー、オウゴン、シャクヤク、カンゾウ

目的

薄層プレートにシリカゲ、ルを用いた順相薄

層クロマトグラフィー (TLC)の展開溶媒と

して、従来からクロロホルム、ジクロロメタ

ン等のハロゲン系溶媒が汎用されてきたが、

第 15改正日本薬局方(局方)においてはこ

れら有害試薬使用の低減化の方針が示されて

し、る1)。一方、化学修飾型シリカゲ、ルプレー

トを用いた逆相 TLCは固定相の極性が小さ

いため、展開溶媒として水、アセトニトリル

等を主とした極性の大きい溶媒系を選択でき

るため、低極性ハロゲン系溶媒等の有害試薬

使用を避けることができる。最近では、われ

われは逆相 TLCを食品 ・化粧品中のタール

色素のルーチン検査に用い、逆相 TLCは順

相 TLCに比べて Rf-値の再現性に優れている

ことを報告した 2・6)。そのため、逆相 TLCは

多成分が含まれた生薬成分の分析に有用であ

ると思われた。これらのことから、生薬のオ

ウゴン、シャクヤク、カンゾウ、アロエ、ボ

タンピ、センブリ、オウレン、センナについ

て逆相 TLCを用いた確認試験法を検討した。

また、展開溶媒としてハロゲン系溶媒の有害

試薬を含有しない溶媒系を検討した。さらに

プレート上に展開したスポットの紫外部吸収

スベク トルをスキャニングデンシトメ タで

直接測定することにより、生薬成分の確認を

試みたので報告する。

-49-

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実験の部

1 鼠料

A)オウゴン (LotNo. WH2901C)、B)シ

ャクヤク(LotNo. 2G04)、C)カンゾウ (Lot

No. B718)、D)アロエ(LotNo. A726)、E)

ボタンピ(LotNo. 952084)、F)センブリ(Lot

No. A918)、G)オウレン(LotNo. J422)、

H)センナ (LotNo. B 717) :すべて局方生薬ロ口口。

A) は日本粉末薬品製(大阪、日本)、 B)は

大晃生薬製(名古屋、日本)、 C)、D)、E)、

F)、G)、H)は松浦薬業製(名古屋、日本)。

2. 試料溶液の調製

試料 A) から H) のそれぞれについて、局

方収載の確認試験の項における方法に従い、

試料溶液を調製した 7)。

3. 標準溶液の調製

A) から H) の主成分を標準品とした。す

なわち、 A)はパイカリン、 B)はベオニフロ

リン、 C)はグリチルリチン酸、 D)はパルパ

ロイン、 E)はベオノール、 F)はスウェルチ

アマリン、 G) は塩化ベルベリン、 H) はセ

ンノシドAを標準品とした。標準溶液は局方

の確認試験の項に従い、調製した 7)。

4.測定条件

1)TLC条件プレート:メルク社製 RP-18

F 254S,Art.15389、展開溶媒:却水/アセトニ

トリル混液 (7: 2)、B)・C)・D)水/アセト

ニトリル混液 (3:2)、E)n-ヘキサン/2-ブタ

ノン混液 (10: 1)、 F)水/アセトニトリル混

液 (4: 1)、G)2-ブタノン/水混液 (2: 1)、

H)水/アセトニトリル混液 (7: 3)、スポ ッ

ト量:2"-' lO11L、検出:暗所で紫外線照射 (254

nm、365nm)。

2) スキャニングデンシトメトリー条件

スキャニングデンシトメータ:島津製の 2波

長フライングスポットスキャニングデンシト

メータ CS-9000、波長走査範囲:200-370

nm、スリ ットサイズ:O.4xO.4 mm、測光系;

反射吸光法。

実験結果及び考察

上記逆相 TLCプレートを用いて、A)から

H)の標準溶液及び試料溶液をスポットし、

良好な分離を得るため展開溶媒を種々検討し

た。その結果、A)は水/アセトニトリル混液

(7 : 2)、B)・C)・D)は水/アセトニトリル

混液 (3:2)、E)は n-ヘキサン/2-ブタノン混

液(10:1)、 F)は水/アセトニトリル混液 (4:

1)、 G)は2-ブタノン/水混液 (2: 1)、 H)は

水/アセトニトリル混液 (7: 3)が展開溶媒と

して最適で、あった。分離した標準溶液スポッ

トの Rf値はA)0.32、B)0.56、C)0.45、D)

0.35、E)0.55、F)0.49、G)0.43、H)0.56

であった(図1)。これに対し、それぞれの試

料溶液から分離されたスポ ットも同じ Rf値

に単一なスポ ットがあることが確認された

(図 1)。

展開した標準溶液スポットと Rf値が一致

した試料溶液スポットにスキャニングデンシ

トメータを用いて紫外部吸収スベクトルを測

定した。その結果、それらの極大吸収波長は

A) : 278、313nm、B): 231、274nm、C):

254nm、D):269、296、358nm、E):274、

315 nm、F): 238 nm、G): 275、346nm

H) : 270、334nmであった。また、試料溶

液スポットのスベクトルは、それぞれの標準

溶液スポットのスベクトルと極大吸収波長及

びスベクトルパターンが一致していた(図 2)。

これらのことから、逆相 TLC/スキャニン

グデンシ トメトリ を用いることによ り、試

料に供した生薬 A) オウゴン、 B)シャクヤ

ク、 C)カンゾウ、 D)アロエ、 E)ボタンピ、

F)センブリ、 G) オウレン、H) センナは、

それぞれその主成分として、A)はパイカリン、

B)はベオニフロリン、C)はグリチルリチン酸、

D)はパルバロイン、 E)はベオノ ール、 F)はス

ウェルチアマリン、G)は塩化ベルペリン、 H)

はセンノシドAを含有していることが確認・

同定された。

まとめ

逆相TLCは生薬成分の確認試験に有用で

あった。特に、展開溶媒に水、アセトニト

リル等の高極性の溶媒系を選択することが

できるため、 クロロホノレム、ジクロロメタ

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図1逆相TLCにおけるl標準溶液と2試料抽出液のクロマトグラムA) 1ハゼ イカル2オウコマン B) 1へた7ロニン2汁件。C)lゲリ千ルリチン酸 2カングウ D)lハール'1"ロイン 27ロエ

E) 1へオノィレ2ポわ F)lAウェル千77リン2センプリ G) 1塩化ヘザ l帆、リン2オウレン H) 1 tンノンドA2セ汁

A

iL戸、200 250 300 350 370 200

D

;ト~二~200 250 300 350 370 200

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B c

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250 300 350 370 200 250 300 350 370

E

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250 300

H

(一べべ官ivdedlfnrn)350370200 ねv出 ng:11nm)

図 2スキャニングデンシトメトリーによる紫外部吸収スベクトル一標準溶液試料溶液

A)オウゴン B)シャクヤク C) グリチルリチン酸 D)アロエ

E) ボタンピ F)センブリ G) オウレン H)センナ

Fhu

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ン等の人体及び環境に有害な試薬を排除で

きた。また、同時にスキャニングデンシト

メトリーにより、スベクトルの情報も得ら

れ、本法により、局方生薬の主成分を、簡

易、迅速、確実に同定することが可能であ

った。

文献

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円〆臼

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Analysis of Crude Drugs Using Reversed-Phase TLC/Scanning

Dens i tometry I dent i f i cat i on of Scute I I ar i a Root, Peony Root,

Glycyrrhiza, Aloe, Moutan 8ark, Swertia Herb, Coptis

Rhizome and Senna Leaf

Tsutomu Ohno, Seiei Ikeda, Eiichi Mikami

We performed identification tests of the main components (baicalin, paeoniflorin,

glycyrrhizic acid, barbaloin, paeonol, swertiamarin, berberine chloride and sennoside TJ of

crude drugs in the Japanese Pharmacopoeia直fteenthEdition (JP15) (scutellaria root, peony

root, glycyrrhiza, aloe, moutan bark, swertia herb, coptis rhizome and senna leaD by

reversed-phase TLC using water, acetonitrile, methanol, 2-butanone, and n-hexane as

developing solvents and could obtain a single spot separated from other coexisting

components (Rf value: 0.32-0.56). In addition, spectral information could be

simultaneously obtained by scanning densitometry. Thus, the main components of crude

drugs in the JP15 could be identified by this method simply, rapidly, and accurately.

Key words: reversed-phase TLC, scanning densitometry, scutellaria root, peony root,

glycyrr hiza

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