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-90- 【設備投資と機械受注の動向】 第14循環(14年4~6月期以降)の設備投資は長期にわたり増勢していたが、19年 4~6月期以降、徐々に低下してきたところに、世界的な景気後退の影響により、輸出の 大幅な減少や生産の低下が加速したため、設備投資はさらに抑制されるのではないか と言われている。 また、設備投資の先行指標とされる機械受注も、今まで比較的順調に伸びてきたもの の、20年10~12月期の機械受注額(船舶・電力を除く民需)は前期比▲16.7%と 過去 最大の減少幅となった。 このため、今回は、機械受注統計を用いて設備投資との関係について、産業別に第 14循環と過去の循環の動向を比較しながら、機械受注からみた設備投資動向につい て検証を行うとともに、経営環境から設備投資動向についても考察したい。 (1) 設備投資の現状 ① 設備投資の推移 ~全産業の設備投資額指数は6期連続低下~ 第14循環(14年4~6月期以降)の設備投資額(全産業(除く金融・保険業)、全規 模)の推移を設備投資額指数(17年=100、季節調整済、後方4期移動平均)でみて みると、全産業は、19年1~3月期に 118.7 と最高水準に達したが、それ以降は6期連 続して低下傾向にあり、20年7~9月期は 107.8 まで低下している。4期前比伸び率も1 9年10~12月期以降はマイナスで推移しており、20年7~9月期は▲8.0 %となってい る。 また、設備投資額指数を産業(製造業、非製造業)別にみてみると、製造業は、20年7 ~9月期に22期ぶりに若干低下し、123.3 となっている。4期前比伸び率は減少傾向に あるものの、20年7~9月期は 0.5 %とかろうじてプラスを維持している。 一方、非製造業(除く金融・保険業)は、20年7~9月期に 99.5 と12期ぶりに 100 下回っている。4期前比伸び率も20年7~9月期は▲12.8 %と第14循環では初めて2 桁台のマイナスとなっており、悪化が顕著となっている(第Ⅱ-2-13図)。

【設備投資 と機械受注 の動向 】 第14循環 (14年4~6月期以降 … · 9年10~12月期以降 はマイナスで 推移 しており、20年7~9月期 は 8.0%となってい

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【設備投資と機械受注の動向】

第14循環(14年4~6月期以降)の設備投資は長期にわたり増勢していたが、19年

4~6月期以降、徐々に低下してきたところに、世界的な景気後退の影響により、輸出の

大幅な減少や生産の低下が加速したため、設備投資はさらに抑制されるのではないか

と言われている。

また、設備投資の先行指標とされる機械受注も、今まで比較的順調に伸びてきたもの

の、20年10~12月期の機械受注額(船舶・電力を除く民需)は前期比▲16.7%と過去

最大の減少幅となった。

このため、今回は、機械受注統計を用いて設備投資との関係について、産業別に第

14循環と過去の循環の動向を比較しながら、機械受注からみた設備投資動向につい

て検証を行うとともに、経営環境から設備投資動向についても考察したい。

(1) 設備投資の現状

① 設備投資の推移

~全産業の設備投資額指数は6期連続低下~

第14循環(14年4~6月期以降)の設備投資額(全産業(除く金融・保険業)、全規

模)の推移を設備投資額指数(17年=100、季節調整済、後方4期移動平均)でみて

みると、全産業は、19年1~3月期に 118.7 と最高水準に達したが、それ以降は6期連

続して低下傾向にあり、20年7~9月期は 107.8 まで低下している。4期前比伸び率も1

9年10~12月期以降はマイナスで推移しており、20年7~9月期は▲8.0%となってい

る。

また、設備投資額指数を産業(製造業、非製造業)別にみてみると、製造業は、20年7

~9月期に22期ぶりに若干低下し、123.3 となっている。4期前比伸び率は減少傾向に

あるものの、20年7~9月期は 0.5%とかろうじてプラスを維持している。

一方、非製造業(除く金融・保険業)は、20年7~9月期に 99.5 と12期ぶりに 100 を

下回っている。4期前比伸び率も20年7~9月期は▲12.8%と第14循環では初めて2

桁台のマイナスとなっており、悪化が顕著となっている(第Ⅱ-2-13図)。

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第Ⅱ-2-13図 設備投資額指数(全規模)の推移

(17年=100、季節調整済、後方4期移動平均、4期前比)

<全産業>

40

60

80

100

120

140

160

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

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1

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2

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3

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2

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3

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4

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5

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6

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7

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8

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9

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0

1

1

1

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5

1

6

1

7

1

8

1

9

20

(%)4期前比 指数(右目盛)

<製造業>

40

60

80

100

120

140

160

▲ 40

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

40

6

1

6

2

6

3

ⅢⅣ

2

ⅢⅣ

3

ⅢⅣ

4

ⅢⅣ

5

ⅢⅣ

6

ⅢⅣ

7

ⅢⅣ

8

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9

ⅢⅣ

1

0

1

1

1

2

1

3

1

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1

5

1

6

1

7

1

8

1

9

20

(%)4期前比 指数(右目盛)

<非製造業>

40

60

80

100

120

140

160

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

6

1

6

2

6

3

ⅢⅣ

2

ⅢⅣ

3

ⅢⅣ

4

ⅢⅣ

5

ⅢⅣ

6

ⅢⅣ

7

ⅢⅣ

8

ⅢⅣ

9

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1

0

1

1

1

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1

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1

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1

5

1

6

1

7

1

8

1

9

20

(%)4期前比 指数(右目盛)

(注)1.設備投資額は、X-12-ARIMA のX-11 デフォルトにより独自に調整している。

2.全産業、及び非製造業には金融・保険業を含まない。

資料:「法人企業統計調査」(財務省)

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② 過去の循環との伸び率比較

~第14循環はサービス業がマイナスに大きく寄与~

次に、設備投資額指数について、景気の山から3期後までの動向を産業別に過去の

循環と比較してみる。

全産業(除く金融・保険業)の設備投資額指数をみてみると、第11循環(3年Ⅰ期→3

年Ⅳ期)は期間平均伸び率(季節調整済値を用いた幾何平均(%/四半期)。以下同

様)1.22%、第12循環(9年Ⅱ期→10年Ⅰ期)は同 0.15%、第13循環(12年Ⅳ期→13

年Ⅲ期)は同 0.84%、第14循環(19年Ⅳ期→20年Ⅲ期)は同▲2.07%と、第14循環

のみマイナスの伸び率となっている。

また、産業別業種別に各循環の期間平均伸び率寄与度をみてみると、製造業は、い

ずれの循環もプラスとなっているものの、第14循環は、過去の景気転換期にはプラスと

なっていた食料品製造業、金属製品業、及び自動車・同付属品製造業が初めてマイナ

スとなっている。

一方、非製造業(除く金融・保険業)は、第11循環以外の全ての循環で期間平均伸

び率寄与度がマイナスとなっているが、第14循環は、特にサービス業の悪化により非製

造業のみならず全産業の伸び率を押し下げている。

これは、リース業の制度改正なども要因の一つと考えられる(産業活動分析20年4~

6月期参照のこと)(第Ⅱ-2-4表)。

第Ⅱ-2-4表 設備投資額指数(全規模)の期間平均伸び率、及び寄与度

(17年=100、季節調整済、後方4期移動平均)3年Ⅰ期 9年Ⅱ期 12年Ⅳ期 19年Ⅳ期

→3年Ⅳ期 →10年Ⅰ期 →13年Ⅲ期 →20年Ⅲ期

1.228 0.157 0.845 ▲ 2.075業種

製造業 合計 0.913 0.603 0.946 0.050

食料品製造業 0.025 0.090 0.006 ▲ 0.072繊維工業 ▲ 0.046 ▲ 0.020 0.022 ▲ 0.006木材・木製品製造業 ▲ 0.044 ▲ 0.006 0.026 ▲ 0.004パルプ・紙・紙加工品製造業 ▲ 0.109 0.023 0.000 ▲ 0.044印刷・同関連業 0.029 ▲ 0.020 0.034 0.060化学工業 0.009 0.137 0.092 0.136石油製品・石炭製品工業 0.047 ▲ 0.035 ▲ 0.013 0.037窯業・土石製品製造業 ▲ 0.003 ▲ 0.013 0.000 0.094鉄鋼業 0.148 ▲ 0.051 0.041 ▲ 0.006非鉄金属製造業 0.061 0.007 0.092 0.041金属製品業 0.124 0.039 0.032 ▲ 0.047一般機械器具製造業 0.072 0.022 0.083 0.042電気・情報通信機械器具製造業 0.365 0.186 0.281 0.010自動車・同付属品製造業 0.166 0.215 0.158 ▲ 0.046その他輸送機械器具製造業 0.010 ▲ 0.009 0.005 0.023精密機械器具製造業 0.036 0.026 0.033 0.033その他製造業 0.033 0.027 0.060 ▲ 0.214

非製造業 合計 0.325 ▲ 0.394 ▲ 0.097 ▲ 2.161

農林水産業 ▲ 0.005 ▲ 0.003 0.013 0.009鉱業 ▲ 0.003 ▲ 0.017 ▲ 0.013 0.015建設業 ▲ 0.065 ▲ 0.147 ▲ 0.014 ▲ 0.162電気業 0.265 ▲ 0.136 ▲ 0.064 0.147ガス・熱供給・水道業 0.025 ▲ 0.012 ▲ 0.010 0.025運輸・情報通信業 0.065 0.030 ▲ 0.163 ▲ 0.293卸・小売業 ▲ 0.086 ▲ 0.016 0.055 0.177不動産業 ▲ 0.138 ▲ 0.292 ▲ 0.049 0.094宿泊業 ▲ 0.026 ▲ 0.072 ▲ 0.224 0.157サービス業 0.297 0.153 0.140 ▲ 2.160

期間平均伸び率寄与度

全産業の期間平均伸び率

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(注)1.設備投資額は、X-12-ARIMA のX-11 デフォルトにより独自に調整している。

2.全産業、及び非製造業には金融・保険業を含まない。

3.「繊維工業」には「衣服・その他の繊維製品製造業」を、「宿泊業」には「飲食店」を含む。

4.産業別業種別の期間平均伸び率寄与度は、全産業の各循環の期間平均伸び率に対す

る伸び率寄与度。

資料:「法人企業統計調査」(財務省)

③ 設備投資マインド

~製造業の生産・営業用設備DIの上昇が顕著~

次に、全国企業短期経済観測調査(短観、20年12月調査)から、生産・営業用設備

DIの推移をみてみる。

先ず、第14循環をみてみると、全産業は、設備過剰が徐々に解消され、17年10~1

2月期から20年1~3月期までは過剰でも不足でもない水準で推移していたものの、20

年4~6月期以降は再び設備過剰と判断する企業が増え始め、21年1~3月期の予測

値では 10%ポイントまで上昇している。

また、産業別に直近の生産・営業用設備DIの推移をみてみると、製造業は、20年10

~12月期以降、急激に生産・営業用設備DIが上昇し、21年1~3月期の予測値は

20%ポイントと、15年頃の水準にまで達している。なお、業種別に21年1~3月期の予

測値をみると、自動車(40%ポイント)、非鉄金属(35%ポイント)、窯業・土石製品(30%

ポイント)の上昇が顕著となっている。

一方、非製造業は、20年4~6月期以降、生産・営業用設備DIが上昇しているが、2

1年1~3月期の予測値は 3%ポイントにとどまっている。なお、業種別に21年1~3月

期の予測値をみると、リース業(10%ポイント)が最も設備過剰となっている。

さらに、過去の傾向をみてみると、いずれの循環も景気の谷、もしくは景気の谷から1

期前後に、生産・営業用設備DIが最も高くなっていることがわかる。

全産業は、各循環で 14~18%ポイント、製造業は 29~31%ポイント、非製造業は 4

~9%ポイントまでそれぞれ上昇している。

このため、過去の傾向から、生産・営業用設備DIは、今後さらに上昇する可能性が高

いと考えられる(第Ⅱ-2-14図)。

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第Ⅱ-2-14図 生産・営業用設備DI(過剰-不足)の推移

▲ 20

▲ 15

▲ 10

▲ 5

0

5

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15

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25

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3

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5

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1

1

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1

6

1

7

1

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1

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20

21

(%ポイント)全産業 製造業 非製造業

(注)1.データの制約上、3年以降のデータを掲載。

2.16年3月調査より調査対象の選定基準が変更になったことに伴い断層が生じている。

3.21年1~3月期は予測値。

資料:「全国企業短期経済観測調査(短観)」(日本銀行)

(2) 機械受注と設備投資の関係

① 機械受注、資本財総供給、設備投資の推移

~20年以降の機械設備類の投資はいずれも低下傾向~

機械設備類の投資に関する統計として、景気動向の先行指標として機械受注統計、

一致指標として鉱工業総供給表・資本財、遅行指標として法人企業統計・設備投資が

あるため、この3者について第14循環の動向をみてみる。

機械受注額指数(民需(除く船舶・電力)、17年=100、季節調整済)は、18年4~6

月期に最高水準に達した後は低下傾向にあり、20年10~12月期は 78.0 と14年1~3

月期と同水準まで低下し、4期前比伸び率も▲23.4%と大幅に低下している。

資本財総供給指数(17年=100、季節調整済)は、19年10~12月期に最高水準に

達した後は低下傾向にあり、20年10~12月期は 91.0 となっており、4期前比伸び率は

▲17.7%と大幅に低下している。

設備投資額指数(全産業(除く金融・保険業)、17年=100、季節調整済)は、19年

1~3月期に最高水準に達した後は低下傾向にあり、20年7~9月期は 99.8 となってお

り、4期前比伸び率は▲13.0%と低下している。

このように、機械受注額指数、資本財総供給指数、設備投資額指数いずれも低下傾

向にある(第Ⅱ-2-15図)。

なお、設備投資額指数と資本財総供給指数の平仄を合わせるため、ここでは設備投

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資額指数を後方4期移動平均しておらず、よって(1)①に記述されている設備投資額指

数とは数値が異なることに注意されたい。

第Ⅱ-2-15図 機械受注額指数、資本財総供給指数、設備投資額指数の推移

(17年=100、季節調整済)

60

70

80

90

100

110

120

130

6

1

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2

6

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2

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3

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4

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5

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6

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7

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9

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1

1

1

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1

3

1

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1

5

1

6

1

7

1

8

1

9

20

資本財総供給指数 設備投資額指数(全産業) 機械受注額指数(民需・除く船舶・電力)

(注)1.設備投資額、及び機械受注額は、X-12-ARIMA のX-11 デフォルトにより独自に調整している。

2.全産業の設備投資額指数には金融・保険業を含まない。

3.機械受注額指数はデータの制約上、62 年Ⅱ期以降を掲載。

資料:「機械受注統計調査」(内閣府)、「法人企業統計調査」(財務省)、「鉱工業総供給表」

② 機械受注の推移

~製造業の悪化が顕著~

次に、第14循環の機械受注額指数に焦点をあてて、その推移をみてみる。

先ず、外需の機械受注額指数をみてみると、過去の循環とは異なり、17年7~9月期

以降一貫して民需(除く船舶・電力)の機械受注額指数を大きく上回る水準で推移して

いた。

しかし、外需の機械受注額指数は、19年10~12月期に 137.8 と最高水準に達した

が、それ以降は低下傾向にあり、20年10~12月期は 84.9 と大幅に低下している。これ

は、世界経済の先行き不安による外需減退の兆しとみられる。

また、民需の機械受注額指数を産業別にみてみると、製造業は、18年4~6月期に

最高水準に達したが、それ以降は低下傾向にあり、20年7~9月期に13期ぶりに 100

を下回った後、同年10~12月には 73.5 まで低下し、4期前比伸び率も▲32.8%と大幅

に低下している。

非製造業(除く船舶・電力)も、製造業と同様に18年4~6月期に最高水準に達した

が、それ以降は低下傾向にあり、20年10~12月期は 81.5、4期前比伸び率は▲

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15.7%となっている。

このように、製造業は非製造業よりも高水準で推移してきたものの、20年10~12月

期の民需の4期前比伸び率▲23.4%に対する寄与度をみてみると、製造業は▲

14.41%ポイント、非製造業は▲8.83%ポイントとなっており、製造業の悪化が顕著となっ

ている(第Ⅱ-2-16図)。

なお、第Ⅱ-2-16図は指数水準を17年=100としているが、第Ⅱ-2-9図は指

数水準を12年=100としているため機械受注の動向の数値が異なることに注意された

い。

第Ⅱ-2-16図 機械受注額指数の推移(17年=100、季節調整済)

<民需(除く船舶・電力)と外需>

40

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

160

▲ 40

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

40

6

2

6

3

ⅢⅣ

2

ⅢⅣ

3

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4

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5

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6

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7

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8

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1

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1

2

1

3

1

4

1

5

1

6

1

7

1

8

1

9

20

(%) 機械受注額指数(民需・除く船舶・電力)4期前比機械受注額指数(民需・除く船舶・電力)(右目盛)

機械受注額指数(外需)(右目盛)

<製造業/非製造業(除く船舶・電力)>

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

6

2

6

3

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2

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3

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4

ⅢⅣ

5

ⅢⅣ

6

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7

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8

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9

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1

0

1

1

1

2

1

3

1

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1

5

1

6

1

7

1

8

1

9

20

製造業 非製造業(除く船舶・電力)

(注)1.機械受注額は、X-12-ARIMA のX-11 デフォルトにより独自に調整している。

2.機械受注額指数はデータの制約上、62 年Ⅱ期以降を掲載。

資料:「機械受注統計調査」(内閣府)

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③ 過去の循環との達成率比較

~電子・通信機械、産業機械ともに達成率が大幅に低下~

次に、機械受注額の見通し(単純集計値)に対する実績値の乖離をみるため、両者

の比を達成率として、第14循環の景気の山から4期後までの動向を産業別に過去の循

環と比較してみる。

民需(除く船舶・電力)の達成率をみてみると、第11循環(3年Ⅰ期→4年Ⅰ期)、第1

2循環(9年Ⅱ期→10年Ⅱ期)、第13循環(12年Ⅳ期→13年Ⅳ期)ともに景気の山を

ピークに達成率が徐々に低下しているが、第14循環(19年Ⅳ期→20年Ⅳ期)は景気の

山から2期後に達成率が一時的に上昇したが、それ以降は低下しており、景気の山から

4期後は 80.0%と、第12循環の景気の山から4期後に次ぐ最低の達成率となっている。

また、産業別に達成率をみてみると、製造業は、第14循環以外はいずれの循環も同

じような水準で推移しており、景気の山から3期後には達成率が 90%を切っているが、

第14循環は、過去の循環と比較して景気の山から3期後までは達成率が高かかったも

のの、景気の山から4期後に 73.0%と大幅に低下しており、過去最低の達成率を記録し

ている。

一方、非製造業(除く船舶・電力)は、製造業と比較すると、いずれの循環も達成率の

低下幅が小さく、第14循環は景気の山から2期後に一時的に上昇したものの、それ以

降は緩やかに低下しており、景気の山から4期後には 86.1%となっている。

さらに、機種別に機械受注額の多い電子・通信機械と産業機械の達成率をみてみる

と、電子・通信機械は、第14循環は景気の山から2期後までは達成率が高かったものの、

それ以降は低下が激しく、景気の山から4期後には 84.0%まで低下し、第12循環の景

気の山から4期後に次ぐ最低の達成率となっている。

また、産業機械も、第14循環は過去の循環と比較して景気の山から2期後までは達

成率が高かったものの、それ以降は低下が激しく、景気の山から4期後には 70.7%と、

過去最低の達成率を記録している。

このように、第14循環は、景気の山から4期後の達成率の落ち込みが大きく、産業別

では製造業、機種別では電子・通信機械、産業機械ともに急速に受注が悪化している

ことがうかがえる(第Ⅱ-2-17図)。

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- 98 -

第Ⅱ-2-17図 機械受注額の達成率の推移

<民需(除く船舶・電力)>

75

80

85

90

95

100

105

110

山 +1期 +2期 +3期 +4期

(%) 第11循環

第12循環

第13循環

第14循環

<製造業> <非製造業(除く船舶・電力)>

70

75

80

85

90

95

100

105

110

山 +1期 +2期 +3期 +4期

(%) 第11循環

第12循環

第13循環

第14循環

75

80

85

90

95

100

105

110

115

120

山 +1期 +2期 +3期 +4期

(%) 第11循環

第12循環

第13循環

第14循環

<電子・通信機械> <産業機械>

80

85

90

95

100

105

110

山 +1期 +2期 +3期 +4期

(%) 第11循環

第12循環

第13循環

第14循環

65

70

75

80

85

90

95

100

105

山 +1期 +2期 +3期 +4期

(%) 第11循環 第12循環

第13循環 第14循環

(注)達成率=実績(原系列)/見通し(単純集計値)

資料:「機械受注統計調査」(内閣府)

④ 設備投資に対する機械受注の時差相関

~第14循環の非製造業は設備投資に慎重~

さらに、設備投資額指数(全産業(除く電気業、金融・保険業))に対する機械受注額

指数(民需(除く船舶・電力、金融・保険業))の時差相関を全期間(第11循環から第14

循環(データの制約上62年Ⅱ期→20年Ⅲ期)まで)と全期間を3区分した期間、第11

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- 99 -

循環(62年Ⅱ期→5年Ⅳ期)、第12~13循環(6年Ⅰ期→14年Ⅰ期)、第14循環(14

年Ⅱ期→20年Ⅲ期)でみてみる。

先ず、全産業で最も相関係数が高いラグとその相関係数をみてみると、全期間では2

期先行の場合で 0.893、第11循環と第14循環ではともに3期先行の場合でそれぞれ

0.978、0.948、第12~13循環では2期先行の場合で 0.920 となっている。

これを産業別にみると、製造業は、いずれの期間も3期先行の場合で相関係数が最

も高く、特に変化はみられない。

一方、非製造業(設備投資額指数:除く電気業、金融・保険業、機械受注額指数:除

く船舶・電力、金融・保険業)は、全期間では2期先行の場合で 0.576 とそれほど相関係

数が高くなかったが、第11循環と第12~13循環ではともに1期先行の場合でそれぞれ

0.919、0.799、第14循環では3期先行の場合で 0.806 となっている。

このように、第14循環の非製造業は、過去の循環と比較して機械受注から設備投資

までの期間が長くなっていることから、設備投資に対する姿勢が慎重になっていると考

えられる(第Ⅱ-2-5表)。

第Ⅱ-2-5表 設備投資額指数に対する機械受注額指数の時差相関

全期間 第11循環 第12~13循環 第14循環 全期間 第11循環 第12~13循環 第14循環 全期間 第11循環 第12~13循環 第14循環

4期先行 0.807 0.972 0.751 0.888 0.900 0.928 0.788 0.958 0.488 0.918 0.655 0.5693期先行 0.871 0.978 0.856 0.948 0.951 0.957 0.946 0.959 0.536 0.911 0.706 0.8062期先行 0.893 0.963 0.920 0.935 0.944 0.911 0.924 0.943 0.576 0.910 0.755 0.7401期先行 0.854 0.895 0.888 0.855 0.901 0.789 0.842 0.901 0.560 0.919 0.799 0.471

一致 0.774 0.707 0.762 0.811 0.811 0.525 0.577 0.842 0.513 0.861 0.650 0.445

製造業 非製造業全産業

(注)1.設備投資額、及び機械受注額は、X-12-ARIMA のX-11 デフォルトにより独自に調整している。

2.全産業、非製造業の設備投資額指数には電気業、金融・保険業を含まない。

3.全産業、非製造業の機械受注額指数には船舶・電力、金融・保険業を含まない。

4.第 11 循環:データの制約上 62 年Ⅱ期→5 年Ⅳ期、第 12~13 循環:6 年Ⅰ期→14 年Ⅰ期、第 14

循環:14 年Ⅱ期→20 年Ⅲ期

5.網掛けは、相関係数が最も高いもの。

資料:「法人企業統計調査」(財務省)、「機械受注統計調査」(内閣府)

(3) 経営環境と設備投資の関係

① 損益分岐点比率

~損益分岐点比率は再び上昇傾向~

第14循環の企業の収益性を評価するため損益分岐点比率の推移をみてみると、全

産業(除く金融・保険業)は、14年7~9月期から損益分岐点比率が低下し始め、19年

4~6月期には 79.1%と最も低い水準に達したが、それ以降は上昇傾向にあり、20年7

~9月期は 81.2%となっている。

これを、固定費(人件費・減価償却費など)、変動費(原燃料費など)などの面からみ

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- 100 -

ると、固定費は横ばいで推移しているものの、変動費は原燃料費の高騰などにより15年

頃から上昇しており、売上高の増加によって収益を上げていたことがうかがえる。

しかし、19年7~9月期以降は、変動費が低下しないまま売上高も横ばいとなってい

ることから、収益が悪化し始め、損益分岐点比率が上昇したと考えられる。

また、産業別に損益分岐点比率の推移をみてみると、製造業は、14年7~9月期から

損益分岐点比率が低下し始め、19年4~6月期には 73.1%と最も低い水準に達したが、

それ以降は再び上昇しており、20年7~9月期は 76.8%となっている。

これを固定費、変動費などの面からみると、固定費、変動費ともに上昇傾向にある上、

売上高の増加も芳しくないことから、損益分岐点比率が上昇したと考えられる。

一方、非製造業(除く金融・保険業)は、14年7~9月期から損益分岐点比率が低下

し始め、19年4~6月期と同年7~9月期には 82.2%と低い水準に達したが、それ以降

は緩やかに上昇しており、20年7~9月期は 83.5%となっている。

これを固定費、変動費などの面からみると、固定費、変動費ともに横ばいに推移して

いるものの、売上高の減少により損益分岐点比率が上昇したと考えられる。

このように、製造業、非製造業ともに損益分岐点比率が上昇しているため、今後は固

定費や変動費の削減がさらに進み、設備投資への影響は避けられない状況にあると考

えられる(第Ⅱ-2-18図)。

第Ⅱ-2-18図 損益分岐点比率の推移(後方4期移動平均)

<全産業>

70

75

80

85

90

95

0

100

200

300

400

6

1

6

2

6

3

ⅢⅣ

2

ⅢⅣ

3

ⅢⅣ

4

ⅢⅣ

5

ⅢⅣ

6

ⅢⅣ

7

ⅢⅣ

8

ⅢⅣ

9

ⅢⅣ

1

0

1

1

1

2

1

3

1

4

1

5

1

6

1

7

1

8

1

9

20

(%)(兆円)固定費 変動費 経常利益 損益分岐点比率(右目盛)

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<製造業>

70

75

80

85

90

95

0

50

100

150

6

1

6

2

6

3

ⅢⅣ

2

ⅢⅣ

3

ⅢⅣ

4

ⅢⅣ

5

ⅢⅣ

6

ⅢⅣ

7

ⅢⅣ

8

ⅢⅣ

9

ⅢⅣ

1

0

1

1

1

2

1

3

1

4

1

5

1

6

1

7

1

8

1

9

20

(%)(兆円)固定費 変動費 経常利益 損益分岐点比率(右目盛)

<非製造業>

70

75

80

85

90

95

0

100

200

300

6

1

6

2

6

3

ⅢⅣ

2

ⅢⅣ

3

ⅢⅣ

4

ⅢⅣ

5

ⅢⅣ

6

ⅢⅣ

7

ⅢⅣ

8

ⅢⅣ

9

ⅢⅣ

1

0

1

1

1

2

1

3

1

4

1

5

1

6

1

7

1

8

1

9

20

(%)(兆円)固定費 変動費 経常利益 損益分岐点比率(右目盛)

(注)1.固定費=人件費+減価償却費+支払利息等

変動費=売上高-経常利益-固定費

損益分岐点=固定費/(1-(変動費/売上高))

損益分岐点比率=損益分岐点/売上高×100

2.全産業、及び非製造業には金融・保険業を含まない。

資料:「法人企業統計調査」(財務省)

② 投資性向

~投資性向は年々低下傾向~

次に、投資性向(設備投資額/キャッシュフロー)の推移をみてみると、全産業(除く

金融・保険業)は、第11循環の4年4~6月期に投資性向が 129.7%と最高水準に達し

たが、6年10~12月期以降は 100%以下で推移している。また、第14循環は17年1~

3月期までは低下していたが、それ以降は上昇し、19年1~3月期には 80.7%となった

が、再び低下し、20年7~9月期は 77.5%となっている。

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- 102 -

これを、産業別にみると、製造業は、2年7~9月期から5年4~6月期までは投資性

向が 100%を超えていたが、それ以降は 100%を下回り、第14循環は 60~70%台で推

移し、20年7~9月期は 75.6%となっている。

一方、非製造業(除く金融・保険業)は、製造業より投資性向が一貫して高水準にあり、

3年1~3月期に 140.8%、4年10~12月期に 141.0%とともに高水準に達し、10年4~

6月期までは 100%を超えていたが、以降は 100%を下回り、第14循環は 70~80%台

で推移し、20年7~9月期は 78.7%となっている。

このように、投資性向は、第11循環に高水準に達し、キャッシュフローを超えて設備

投資が行われていたものの、以降は年々低下傾向にあり、第14循環はキャッシュフロー

の範囲内で堅実に設備投資が行われていたことがわかる(第Ⅱ-2-19図)。

第Ⅱ-2-19図 投資性向の推移(後方4期移動平均)

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

150

6

1

6

2

6

3

ⅢⅣ

2

ⅢⅣ

3

ⅢⅣ

4

ⅢⅣ

5

ⅢⅣ

6

ⅢⅣ

7

ⅢⅣ

8

ⅢⅣ

9

ⅢⅣ

1

0

1

1

1

2

1

3

1

4

1

5

1

6

1

7

1

8

1

9

20

(%)全産業 製造業 非製造業

(注)1.投資性向=設備投資額/キャッシュフロー×100

2.キャッシュフロー=経常利益×0.5+減価償却費

3.全産業、及び非製造業には金融・保険業を含まない。

資料:「法人企業統計調査」(財務省)

さらに、第14循環の設備投資額を要因分解して詳しくみてみると、全産業(除く金

融・保険業)は、キャッシュフローが14年10~12月期から19年10~12月期まではプラ

スで推移していたが、20年以降はマイナスで推移しており、投資性向は17年7~9月期

から19年7~9月期のみプラスで推移している。このため、設備投資額の4期前比伸び

率は、15年10~12月期から19年10~12月期まではプラスで推移しているものの、20

年以降はマイナスで推移している。

これを産業別にみると、製造業は、キャッシュフローが15年1~3月期から20年4~6

月期まではプラスで推移していたが、同年7~9月期にマイナスに転じており、投資性向

は16年1~3月期から19年10~12月期まではほぼプラスで推移していたが、20年に

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- 103 -

入りマイナスに転じたが、20年7~9月期は再びプラスとなっている。このため、設備投

資額の4期前比伸び率は、15年10~12月期以降プラスで推移しているものの、18年7

~9月期以降は伸び率が減少傾向にある。

一方、非製造業(除く金融・保険業)は、キャッシュフローが14年7~9月期から19年

7~9月期まではプラスで推移していたが、19年10~12月期以降はマイナスで推移し

ており、投資性向は、17年10~12月期から19年7~9月期のみプラスに推移している。

このため、設備投資額の4期前比伸び率は、19年1~3月期までは上昇傾向にあった

が、それ以降は急激に低下しており、20年以降はマイナスに推移している。

このように、製造業、非製造業ともにキャッシュフローの悪化が設備投資額を押し下げ

ていることがわかる(第Ⅱ-2-20図)。

第Ⅱ-2-20図 設備投資額の要因分解(4期前比、後方4期移動平均)

<全産業>

▲ 15

▲ 10

▲ 5

0

5

10

15

20

25

1

4

1

5

1

6

1

7

1

8

1

9

20

(%)キャッシュフロー要因 投資性向要因 設備投資額4期前比

<製造業> <非製造業>

▲ 25

▲ 20

▲ 15

▲ 10

▲ 5

0

5

10

15

20

25

1

4

1

5

1

6

1

7

1

8

1

9

20

(%) キャッシュフロー要因 投資性向要因 設備投資額4期前比

▲ 20

▲ 15

▲ 10

▲ 5

0

5

10

15

20

25

1

4

1

5

1

6

1

7

1

8

1

9

20

(%)キャッシュフロー要因 投資性向要因 設備投資額4期前比

(注)1.設備投資額=キャッシュフロー×投資性向

設備投資額の要因分解は以下のとおり。

R=A×B より

ΔR≒ΔA×B + A×ΔB

[キャッシュフロー要因] [投資性向要因]

R:設備投資額 A:キャッシュフロー B:投資性向

2.全産業、及び非製造業には金融・保険業を含まない。

資料:「法人企業統計調査」(財務省)

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- 104 -

(4) 結論

以上みてきたように、第14循環の全産業(除く金融・保険業)の設備投資額指数は、1

9年1~3月期に最高水準に達した後は、堅調に設備投資を続ける製造業とサービス業

の悪化により低下傾向にある非製造業(除く金融・保険業)が混在している状況が続い

ていた。

しかし、20年7~9月期には、順調だった製造業の設備投資額指数が22期ぶりに若

干ではあるが低下しており、世界的な金融危機に伴う景気後退による影響が製造業に

も波及し始めたと考えることができる。

また、日銀短観の生産・営業用設備DIをみてみると、20年10~12月期以降、設備

過剰と判断する製造業が急激に増加しており、過去の傾向から、生産・営業用設備DI

がさらに上昇することも予測される。

さらに、設備投資の先行指標である機械受注(民需・除く船舶・電力)をみてみると、2

0年10~12月期に、産業別では製造業、機種別では電子・通信機械、及び産業機械

が急速に悪化しており、設備投資の抑制を色濃く反映している。

経営環境についても、直近では、製造業、非製造業ともに損益分岐点比率が上昇傾

向にあり、投資性向もキャッシュフローの悪化により低下傾向にある。

このように、底堅く推移していた製造業の設備投資を取り巻く環境に変化がみられるこ

とから、設備投資全体はさらに後押しされ、厳しい状況がしばらく続くと考えられる。